説明

複合流体機械

【課題】回転電機部の冷却効率を向上させることができる複合流体機械を提供する。
【解決手段】ハウジング12内において、第1収容空間15aと第2収容空間15bとは隔壁部15によって隔離されるとともに、第1収容空間15aにはモータ・ジェネレータ17が収容されている。さらに、センタハウジング13の周壁における第1収容空間15aと対応する位置には、冷凍サイクルを循環した冷媒を第1収容空間15aを介して圧縮機部31へ吸入するための吸入孔13bが、隔壁部15と隣接する位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクル用作動流体の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機部と、冷凍サイクル用作動流体を圧縮する圧縮機部と、発電機又は電動機として機能する回転電機部とをハウジング内に備えた複合流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の複合流体機械として、例えば特許文献1の流体機械が挙げられる。この流体機械は、流体を圧縮する圧縮機部と、エンジン(外部駆動源)の廃熱(排熱)エネルギーによって回転駆動力を発生する膨張機部と、電動機及び発電機の両機能を備えるモータ(回転電機部)とを備えている。さらに、流体機械はプーリを介してエンジンと連結され、流体機械には、プーリ、モータ及び圧縮機部の間における動力伝達経路を切替えるとともに、その回転動力の回転数を減速または増速して伝達する変速機構が設けられている。そして、流体機械におけるこれら各機器の配列は、ハウジング内において、プーリ側から膨張機部、モータ、変速機構、圧縮機部の順になっている。
【0003】
このような流体機械では、その駆動部となるモータの冷却が重要になっている。そして、特許文献1の流体機械では、ハウジングの周壁における膨張機部よりもプーリ側に低圧ポート(吸入孔)を形成し、低温の冷媒を低圧ポートからハウジング内へ吸引するとともに、膨張機部、モータ、変速機構を横切るようにハウジング内を通過させて、圧縮機部へ吸入させるようにしている。これにより、低温の冷媒、及び冷媒に含まれるオイルがモータの周りを通過することでモータが冷却されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−307951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の流体機械では、低圧ポートから吸入された冷媒は、モータを通過する前に膨張機部を通過するため、冷媒が膨張機部からの熱を受けて温められてしまう。よって、モータは、この温められた冷媒によって冷却されることになり、モータの冷却効率が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、回転電機部の冷却効率を向上させることができる複合流体機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ランキンサイクル用作動流体の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機部と、冷凍サイクル用作動流体を圧縮する圧縮機部と、発電機又は電動機として機能する回転電機部と、をハウジング内に備え、前記ハウジング内では、前記圧縮機部、前記回転電機部、及び前記膨張機部が並設され、前記ハウジングには、前記回転電機部が収容される第1収容空間と、前記膨張機部が収容される第2収容空間とを隔離する隔壁部が設けられるとともに、前記冷凍サイクル用作動流体を、前記第1収容空間を介して前記圧縮機部へ吸入するための吸入孔が、前記第1収容空間と対応する位置に形成されていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、圧縮機部へ冷凍サイクル用作動流体が吸入されるとき、低温の冷凍サイクル用作動流体が吸入孔を介して回転電機部が収容された第1収容空間に吸入され、低温の冷凍サイクル用作動流体によって回転電機部が冷却される。このとき、第1収容空間と第2収容空間とは隔壁部によって隔離されているため、第1収容空間に吸入された冷凍サイクル用作動流体は、第2収容空間に収容された膨張機部の熱を受け難い。よって、冷凍サイクル用作動流体は、膨張機部の熱によって温められることなく回転電機部を冷却することができ、膨張機部の熱によって温められた冷凍サイクル用作動流体により回転電機部を冷却する場合に比べて、回転電機部の冷却効率を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ハウジング内では、前記回転電機部の駆動軸及び前記圧縮機部の圧縮機軸の軸方向に沿って、前記圧縮機部、前記回転電機部、及び前記膨張機部がこの順序で並設され、前記吸入孔は、前記軸方向において、前記圧縮機部よりも前記隔壁部寄りに形成されていることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、吸入孔から第1収容空間に吸入された冷凍サイクル用作動流体が、第1収容空間における隔壁部側から圧縮機部側に向かって流れる。よって、第1収容空間全体に亘って冷凍サイクル用作動流体が行き渡り、冷凍サイクル用作動流体によって回転電機部全体を冷却することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ハウジング内には、前記回転電機部の駆動軸と前記圧縮機部の圧縮機軸とを、接続状態又は切断状態に切り替える切替手段が、前記圧縮機部と前記回転電機部との間に設けられていることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、吸入孔から第1収容空間に吸入された冷凍サイクル用作動流体は、圧縮機部に向かって流れる際に、切替手段を横切って流れるため、この冷凍サイクル用作動流体によって回転電機部に加えて切替手段も冷却することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、回転電機部の冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における複合流体機械を示す縦断面図。
【図2】車両用排熱回収システムを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
まず、本実施形態の複合流体機械11を備えた車両用排熱回収システム10の全体構成について説明する。
【0016】
図2に示すように、車両用排熱回収システム10は、排熱源としてのエンジンEgを備えるとともに、別々のサイクルで構成された冷凍サイクル30と、ランキンサイクル20とを併せ持つ。冷凍サイクル30内は、車両空調用のために冷凍サイクル用作動流体としての冷媒が循環し、ランキンサイクル20内は、エンジンEgからの排熱によって加熱されるランキンサイクル用作動流体としての冷媒が循環する。そして、車両用排熱回収システム10において、複合流体機械11は、ランキンサイクル20の一部及び冷凍サイクル30の一部を構成している。
【0017】
次に、複合流体機械11について説明する。なお、以下の説明において、複合流体機械11の「前」及び「後」は、図1に示す矢印Yの方向を前後方向とする。
図1に示すように、複合流体機械11はハウジング12を備えている。ハウジング12は、筒状をなすセンタハウジング13と、このセンタハウジング13の前端(一端)に接合されたフロントハウジング14と、センタハウジング13の後端(他端)に隔壁部15を介して接合されたリヤハウジング16とから形成されている。
【0018】
センタハウジング13の中央部における内周面には、センタハウジング13の内側へ延びる区画形成部13aが設けられている。そして、ハウジング12内には、センタハウジング13、隔壁部15、及び区画形成部13aによって第1収容空間15aが区画形成されるとともに、リヤハウジング16と隔壁部15とによって第2収容空間15bが区画形成されている。第1収容空間15a及び第2収容空間15bは、隔壁部15により互いに隔離された状態になっている。さらに、ハウジング12内には、センタハウジング13、フロントハウジング14、及び区画形成部13aによって第3収容空間15cが区画形成されるとともに、第1収容空間15a及び第3収容空間15cは、区画形成部13aにより互いに隔離された状態になっている。
【0019】
センタハウジング13の周壁における第1収容空間15aと対応する位置であって、且つ隔壁部15と隣接する位置には、吸入孔13bが形成されている。また、区画形成部13aには連通孔13cが形成されるとともに、この連通孔13cにより第1収容空間15aと第3収容空間15cとが連通している。
【0020】
第1収容空間15aには回転電機部としてのモータ・ジェネレータ17が収容されている。モータ・ジェネレータ17は駆動軸18を有している。区画形成部13aには駆動軸18の前端側(一端側)が挿通可能な挿通孔13eが形成されている。そして、駆動軸18の前端側が、挿通孔13e内に設けられた軸受24によって回転可能に支持されるとともに、後端側(他端側)が、隔壁部15に設けられた駆動軸用軸受25によって回転可能に支持されている。したがって、駆動軸18は、軸受24及び駆動軸用軸受25によって軸方向(図1に示す軸線Lの方向)の両側が回転可能に支持されている。
【0021】
駆動軸18には、モータロータ17aが駆動軸18と一体回転可能に固定されている。また、センタハウジング13の内周面には、ステータ17bがモータロータ17aを取り囲むように固定されている。そして、モータ・ジェネレータ17は、ステータ17bのコイル17cへの通電によりモータロータ17aを回転させる電動機としての機能と、モータロータ17aが回転されることでステータ17bのコイル17cに電力を生じさせる発電機としての機能とを併せ持つ。
【0022】
図2に示すように、モータ・ジェネレータ17にはインバータ19を介してバッテリ19aが接続され、モータ・ジェネレータ17で生じた電力はインバータ19を介してバッテリ19aに蓄電されるようになっている。また、インバータ19には、複合流体機械11を全般に亘って制御する制御部21が接続されている。
【0023】
図1に示すように、センタハウジング13内の前側には支持ブロック13dが固設されている。支持ブロック13dには、圧縮機軸22の軸方向中央部が圧縮機軸用軸受23によって回転可能に支持されるとともに、この圧縮機軸22は駆動軸18と同軸上に配置されている。また、駆動軸18及び圧縮機軸22は、駆動軸18の前端面(軸方向一端面)と、圧縮機軸22の後端面(軸方向他端面)とが互いに対向するように配置されている。
【0024】
圧縮機軸22の後端には突起部22aが設けられるとともに、この突起部22aには第1クラッチ板26が嵌着されている。また、駆動軸18の前端には突起部18aが設けられるとともに、この突起部18aには第2クラッチ板27が嵌着されている。第1クラッチ板26と第2クラッチ板27とは互いに対向した状態となっている。第2クラッチ板27は、区画形成部13aの前面と対向する位置に配置されている。
【0025】
また、支持ブロック13dの後端側には電磁コイル28が、第1クラッチ板26と対向するように配設されている。そして、電磁コイル28に対して通電が行われると、電磁コイル28が励磁されて第1クラッチ板26と第2クラッチ板27とが互いに吸着して接続状態になる一方で、電磁コイル28に対する通電が行われなくなると、第1クラッチ板26と第2クラッチ板27とが離間して切断状態になる。よって、第1クラッチ板26、第2クラッチ板27及び電磁コイル28によって切替手段としての電磁クラッチ29が構成されている。
【0026】
第3収容空間15cにはスクロール式の圧縮機部31が設けられている。圧縮機軸22の前端には、圧縮機軸22の中心軸に対して偏心した位置に偏心軸22bが設けられるとともに、偏心軸22bは圧縮機軸22の回転により圧縮機軸22の中心軸周りを公転するようになっている。
【0027】
偏心軸22bにはブッシュ32が固定されるとともに、ブッシュ32は偏心軸22bとともに圧縮機軸22の中心軸周りを公転するようになっている。このブッシュ32には軸受装置33を介して可動スクロール34が回転可能に支持されるとともに、カウンタウェイト35が固定されている。可動スクロール34は、軸受装置33に支持された円盤状をなす可動側端板34aと、この可動側端板34aから突設された渦巻状の可動側渦巻壁34bとからなる。
【0028】
また、センタハウジング13内における前端には、固定スクロール36が可動スクロール34と対向するように固設されている。固定スクロール36は、円盤状をなす固定側端板36aと、この固定側端板36aから可動スクロール34に向けて突設された渦巻状の固定側渦巻壁36bとからなる。そして、可動スクロール34の可動側渦巻壁34bと、固定スクロール36の固定側渦巻壁36bとは互いに噛み合わされて容積変更可能な作動室37を区画する。
【0029】
また、固定スクロール36における固定側端板36aの中央部には吐出口36cが形成されるとともに、この吐出口36cは吐出弁38により開閉可能になっている。固定側端板36aとフロントハウジング14との間には、吐出チャンバ39が区画されるとともに、この吐出チャンバ39には吐出口36cを介して圧縮後の作動室37に連通している。また、フロントハウジング14には、吐出チャンバ39に連通する吐出孔14aが形成されている。さらに、固定スクロール36の内周面と、可動スクロール34における可動側渦巻壁34bの最外周面との間には吸入チャンバSが区画形成されている。
【0030】
リヤハウジング16内には、隔壁部15に対向するように第1サイドプレート41が固設されるとともに、第2サイドプレート42が第1サイドプレート41と対向するように、ハウジング12の後側(軸方向他側)へ間隔を空けて固設されている。そして、駆動軸18は、隔壁部15、第1サイドプレート41、及び第2サイドプレート42を貫通している。また、隔壁部15と第1サイドプレート41との間には、ポンプ室43が区画されるとともに、ポンプ室43内には従動軸(図示せず)に取着された従動ギヤ(図示せず)と、駆動軸18に取着された主動ギヤ44が配設されている。そして、ポンプ室43と、従動ギヤと、主動ギヤ44とからギヤポンプ45が形成されている。
【0031】
第2収容空間15bには膨張機部51が収容されている。リヤハウジング16において、第1サイドプレート41と第2サイドプレート42との間には筒状をなすシリンダブロック46が収容されている。シリンダブロック46内において、駆動軸18には円筒状をなすロータ47が駆動軸18と一体回転可能に止着されるとともに、ロータ47の外周面には、ロータ47の軸方向全体に亘って延びるベーン48が出没可能に収容されている。そして、駆動軸18の回転に伴うロータ47の回転によってベーン48の先端面がシリンダブロック46の内周面に接触すると、ロータ47の外周面と、シリンダブロック46の内周面と、隣り合うベーン48と、第1及び第2サイドプレート41,42との間に作動室49が区画されるようになっている。
【0032】
また、膨張機部51において、リヤハウジング16と第2サイドプレート42との間には吐出空間52が区画されるとともに、リヤハウジング16には吐出空間52に連通する吐出ポート16aが形成されている。また、膨張機部51において、リヤハウジング16には作動室49に連通する吸入ポート(図示せず)が形成されている。
【0033】
そして、上記構成の複合流体機械11において、ハウジング12内では、駆動軸18及び圧縮機軸22の軸方向に沿って前側から後側に向かって圧縮機部31、電磁クラッチ29、モータ・ジェネレータ17、及び膨張機部51の順序で並設されている。
【0034】
次に、上記複合流体機械11を備えた車両用排熱回収システム10におけるランキンサイクル20及び冷凍サイクル30について説明する。
図2に示すように、冷凍サイクル30は、複合流体機械11における圧縮機部31、凝縮器C、膨張弁V、及び蒸発器Eが環状に接続されて形成されている。冷凍サイクル30において、圧縮機部31の吐出孔14aには圧縮側吐出流路R1を介して凝縮器Cが接続されている。そして、圧縮機部31で高温高圧に圧縮された冷媒は圧縮側吐出流路R1を介して凝縮器Cに導入されるとともに凝縮器Cで冷却される。凝縮器Cの吐出側には流路R2を介して蒸発器Eが接続されるとともに、流路R2上には膨張弁Vが設けられている。そして、膨張弁Vは、凝縮器Cで冷却された冷媒を減圧膨張させ、蒸発器Eは膨張弁Vによって減圧された冷媒を蒸発させる。
【0035】
また、蒸発器Eの吐出側は圧縮側吸入流路R3を介して吸入孔13bに接続されるとともに、圧縮側吸入流路R3上には逆止弁Gが設けられ、逆止弁Gは蒸発器E側から吸入孔13b側のみに冷媒が流れることを許容する。そして、冷媒は、圧縮機部31で圧縮された後、吐出孔14aから凝縮器C、膨張弁V、蒸発器E及び逆止弁Gを通過して吸入孔13bを介して第1収容空間15aに吸入されるようになっている。さらに、第1収容空間15aに吸入された冷媒は、連通孔13cから第3収容空間15cを介して圧縮機部31に吸入され、冷凍サイクル30を循環するようになっている。
【0036】
一方、ランキンサイクル20は、複合流体機械11の膨張機部51、凝縮器53、複合流体機械11のギヤポンプ45、及び第1ボイラ54、第2ボイラ55が環状に接続されて形成されている。
【0037】
ランキンサイクル20を詳細に説明すると、ギヤポンプ45におけるポンプ室43の吐出側には第1流路56aを介して第1ボイラ54の吸熱器54aが接続されている。また、第1ボイラ54は、吸熱器54aに加え放熱器54bを備えている。この放熱器54bは、エンジンEgに接続された冷却水循環経路57上に設けられている。冷却水循環経路57上にはラジエータ57aが設けられている。そして、車両のエンジンEgを冷却した冷却水(高温流体)は、冷却水循環経路57を循環して放熱器54b及びラジエータ57aで放熱する。
【0038】
第1ボイラ54において、吸熱器54aの吐出側には接続通路56bを介して第2ボイラ55の吸熱器55aが接続されている。また、第2ボイラ55は、吸熱器55aに加え放熱器55bを備えている。この放熱器55bは、エンジンEgに接続された排気通路58上に設けられている。そして、エンジンEgからの排気は、放熱器55bで放熱した後、マフラ59から排気される。よって、ギヤポンプ45から吐出された冷媒は、第1及び第2ボイラ54,55の吸熱器54a,55aと放熱器54b,55bとの間での熱交換によりエンジンEgからの排熱によって加熱される。
【0039】
第2ボイラ55において、吸熱器55aの吐出側には、膨張側吸入流路56cを介して膨張機部51における吸入ポートが接続されるとともに、第1及び第2ボイラ54,55で加熱された高温高圧の冷媒は、膨張側吸入流路56cを介して膨張機部51に導入されるようになっている。膨張機部51の吐出ポート16aには、膨張側吐出流路56dを介して凝縮器53が接続されている。そして、膨張機部51で膨張した低圧の冷媒は、膨張側吐出流路56dを介して凝縮器53へ吐出されるようになっている。凝縮器53の吐出側には、第2流路56eを介してギヤポンプ45のポンプ室43が接続されている。
【0040】
そして、ランキンサイクル20内の冷媒は、ギヤポンプ45のポンプ作用により、膨張機部51、凝縮器53、ポンプ室43、第1ボイラ54、及び第2ボイラ55を通過してランキンサイクル20を循環するようになっている。
【0041】
次に、上記車両用排熱回収システム10の作用について説明する。
車両のエンジンEgが駆動されると、第1ボイラ54及び第2ボイラ55において、吸熱器54a,55aと放熱器54b,55bとの間での熱交換により、冷媒がエンジンEgからの排熱によって加熱される。加熱後の高圧の冷媒は、膨張側吸入流路56cを介して吸入ポート(図示せず)から膨張機部51の作動室49に導入されて膨張し、この膨張により膨張機部51が機械的エネルギー(駆動力)を出力する。すなわち、この駆動力によってロータ47が回転し、モータ・ジェネレータ17の駆動軸18が回転されるとともにギヤポンプ45が駆動される。
【0042】
このとき、エンジンEgからの排熱量が大きく、膨張機部51からの出力により、駆動軸18が予め設定された所定回転数を越えて回転する場合には、モータ・ジェネレータ17を発電機として機能させて駆動軸18の回転数を抑えるようにする。そして、所定回転数を越えさせた出力は電力に変換され、インバータ19を介してバッテリ19aに充電される。
【0043】
膨張を終えて圧力が低下した冷媒は、吐出空間52に吐出された後、吐出ポート16aを介して膨張側吐出流路56dへ吐出される。膨張側吐出流路56dへ吐出された冷媒は、凝縮器53を通過し、第2流路56eを介してポンプ室43に導入される。そして、膨張機部51からの出力により駆動されるギヤポンプ45により、ポンプ室43に導入された冷媒は第1ボイラ54及び第2ボイラ55へ供給される。したがって、エンジンEgが駆動されている間は、冷媒はランキンサイクル20を循環する。
【0044】
ランキンサイクル20を冷媒が循環している状態において、エアコンスイッチ(図示せず)をONする。すると、制御部21は、電磁コイル28に給電し、第1クラッチ板26と第2クラッチ板27とを連結させ、駆動軸18と圧縮機軸22とを接続状態とし、圧縮機部31が駆動される。駆動軸18と圧縮機軸22とを接続状態としたとき、その接続による負荷によりモータ・ジェネレータ17の回転数が低下しようとする。このとき、エアコン要求を満たすため、圧縮機軸22を要求された回転数で回転させるために、制御部21は、バッテリ19aからインバータ19を介してモータ・ジェネレータ17に給電し、モータ・ジェネレータ17を電動機として機能させる。
【0045】
すると、モータ・ジェネレータ17の駆動力によって駆動軸18が回転されるとともに圧縮機部31がエアコン要求を満たすための回転数で回転し圧縮機部31が駆動される。すなわち、圧縮機部31が駆動される際、必要とされる動力の一部がモータ・ジェネレータ17により負担される。なお、膨張機部51からの出力により、圧縮機部31がエアコン要求を満たすための回転数で回転可能になると、制御部21は、モータ・ジェネレータ17への給電を停止し、その後、圧縮機部31は膨張機部51からの出力により駆動される。
【0046】
そして、圧縮機部31が駆動されると、可動スクロール34が固定スクロール36に対して旋回して圧縮側吸入流路R3から吸入孔13bを介して第1収容空間15aに冷媒が吸入される。第1収容空間15aに吸入された冷媒は、第1収容空間15aにおいて、隔壁部15側から区画形成部13a側(圧縮機部31側)に向かって流れるため、第1収容空間15a全体に亘って冷媒が行き渡り、この冷媒によってモータ・ジェネレータ17全体が冷却される。
【0047】
第1収容空間15aにおいて区画形成部13a側に流れた冷媒は、連通孔13cを介して第3収容空間15cに流入するとともに、電磁クラッチ29を横切って圧縮機部31の吸入チャンバS内に吸入される。この電磁クラッチ29を横切る冷媒によって電磁クラッチ29全体が冷却される。
【0048】
さらに、可動スクロール34の旋回に伴い作動室37の冷媒が圧縮される。そして、圧縮機部31の作動室37で圧縮された冷媒は、所定の圧力まで圧縮されると吐出弁38を押し退けて吐出口36cから吐出チャンバ39に吐出される。さらに、圧縮された冷媒は、圧縮側吐出流路R1を介して凝縮器Cへ吐出され、凝縮器Cで凝縮された後、膨張弁Vで減圧される。さらに、膨張弁Vを通過した冷媒は、蒸発器Eで気化され、逆止弁Gを経由して圧縮側吸入流路R3から吸入孔13bを介して第1収容空間15aに還流される。
【0049】
エアコンスイッチがOFFされる、又はエアコンによる圧縮機部31の駆動要求がない場合は、制御部21は電磁コイル28への通電を止めて、第1クラッチ板26と第2クラッチ板27との接続状態を解除する。すると、圧縮機部31の駆動が停止される。
【0050】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)センタハウジング13の周壁における第1収容空間15aと対応する位置には吸入孔13bが形成されている。よって、冷凍サイクル30を循環した冷媒を吸入孔13bから第1収容空間15aを介して圧縮機部31へ吸入させ、低温の冷媒によりモータ・ジェネレータ17を冷却することができる。そして、モータ・ジェネレータ17が収容された第1収容空間15aは、隔壁部15により膨張機部51が収容された第2収容空間15bと隔離されているため、第1収容空間15aに吸入された冷媒が膨張機部51の熱を受け難くなり、第1収容空間15aの冷媒によりモータ・ジェネレータ17を効率良く冷却することができる。その結果、膨張機部51の熱によって温められた冷媒によりモータ・ジェネレータ17を冷却する場合に比べて、モータ・ジェネレータ17の冷却効率を向上させることができる。
【0051】
(2)吸入孔13bは、センタハウジング13において、連通孔13c(圧縮機部31)側よりも隔壁部15側に形成され、しかも隔壁部15と隣接する位置に形成されている。よって、吸入孔13bから第1収容空間15aに吸入された冷媒が、第1収容空間15aにおける隔壁部15側から区画形成部13a側に向かって流れる。したがって、第1収容空間15a全体に亘って冷媒が行き渡り、この冷媒によってモータ・ジェネレータ17全体を冷却することができる。
【0052】
(3)電磁クラッチ29は、ハウジング12内において圧縮機部31とモータ・ジェネレータ17との間に設けられている。よって、吸入孔13bから第1収容空間15aに吸入された冷媒が、モータ・ジェネレータ17及び電磁クラッチ29を横切って圧縮機部31に向かうように流れるため、この冷媒によってモータ・ジェネレータ17に加えて電磁クラッチ29全体も冷却することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、ハウジング12内において、駆動軸18及び圧縮機軸22の軸方向に沿って前側から後側に向かって圧縮機部31、電磁クラッチ29、モータ・ジェネレータ17、及び膨張機部51の順序で並設されていたが、これに限らない。例えば、ハウジング12内において、駆動軸18及び圧縮機軸22の軸方向に沿って前側から後側に向かってモータ・ジェネレータ17、圧縮機部31及び膨張機部51の順序で並設されていてもよい。この場合、圧縮機部31をベーンタイプで構成し、その圧縮機部31の圧縮機軸22を中空状に形成するとともに駆動軸18を貫挿させ、圧縮機軸22の前端に一方のクラッチ板を固定するとともに、一方のクラッチ板と対向するように他方のクラッチ板を駆動軸18の外周に固定する。よって、圧縮機部31とモータ・ジェネレータ17との間に、電磁コイル28への通電を制御することで一方のクラッチ板と他方のクラッチ板とを吸着させたり離間させたりして、駆動軸18と圧縮機軸22との間を接続状態又は切断状態に切り替える切替手段としての電磁クラッチ29が設けられている。また、この場合、隔壁部15は、圧縮機部31と膨張機部51との間、又はモータ・ジェネレータ17と圧縮機部31との間に設けられている。
【0054】
○ 実施形態において、切替手段を、圧縮機軸22に固定された第1クラッチ板26と、駆動軸18に固定された第2クラッチ板27とを、電磁コイル28の励磁によって吸着させるタイプの電磁クラッチ29に具体化したが、これに限らず、例えば、スプリングクラッチや、他のタイプの電磁クラッチに具体化してもよい。
【0055】
○ 実施形態において、吸入孔13bは、センタハウジング13の周壁における第1収容空間15aと対応する位置であって、且つ隔壁部15と隣接する位置に形成されていたが、これに限らず、センタハウジング13の周壁における第1収容空間15aと対応する位置であれば、吸入孔13bの形成位置は特に限定されない。
【0056】
○ 実施形態において、圧縮機部31は可動スクロール34と固定スクロール36とで構成されるタイプに限らず、例えば、ピストンタイプやベーンタイプなどであってもよい。
【0057】
○ 実施形態において、膨張機部51はベーンタイプに限らず、他のタイプの圧縮機構であってもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0058】
(イ)前記切替手段は、前記圧縮機軸に固定された第1クラッチ板と、前記駆動軸に固定された第2クラッチ板とを電磁コイルの励磁によって吸着させる電磁クラッチであることを特徴とする請求項3に記載の複合流体機械。
【0059】
(ロ)前記吸入孔は、前記隔壁部と隣接する位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3、及び前記技術的思想(イ)のいずれか一項に記載の複合流体機械。
【符号の説明】
【0060】
12…ハウジング、13b…吸入孔、15…隔壁部、15a…第1収容空間、15b…第2収容空間、17…回転電機部としてのモータ・ジェネレータ、18…駆動軸、22…圧縮機軸、29…切替手段としての電磁クラッチ、31…圧縮機部、51…膨張機部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランキンサイクル用作動流体の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機部と、
冷凍サイクル用作動流体を圧縮する圧縮機部と、
発電機又は電動機として機能する回転電機部と、をハウジング内に備え、
前記ハウジング内では、前記圧縮機部、前記回転電機部、及び前記膨張機部が並設され、
前記ハウジングには、前記回転電機部が収容される第1収容空間と、前記膨張機部が収容される第2収容空間とを隔離する隔壁部が設けられるとともに、前記冷凍サイクル用作動流体を、前記第1収容空間を介して前記圧縮機部へ吸入するための吸入孔が、前記第1収容空間と対応する位置に形成されていることを特徴とする複合流体機械。
【請求項2】
前記ハウジング内では、前記回転電機部の駆動軸及び前記圧縮機部の圧縮機軸の軸方向に沿って、前記圧縮機部、前記回転電機部、及び前記膨張機部がこの順序で並設され、
前記吸入孔は、前記軸方向において、前記圧縮機部よりも前記隔壁部寄りに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合流体機械。
【請求項3】
前記ハウジング内には、前記回転電機部の駆動軸と前記圧縮機部の圧縮機軸とを、接続状態又は切断状態に切り替える切替手段が、前記圧縮機部と前記回転電機部との間に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合流体機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−80444(P2011−80444A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235230(P2009−235230)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】