説明

複合電源システム

【課題】従来回路では、交流入力電圧が高い時、昇降圧チョッパの降圧比と昇圧比が大きくなり、発生損失が特定の半導体素子に偏り、素子コストと冷却装置が大型で、高コストとなる。
【解決手段】交流電源電圧が高い(例えば400V)場合、電動機からの回生電力を第2の昇降圧チョッパで一旦CVCFインバータの直流入力に放電し、放電した電力を第1の昇降圧チョッパで蓄電手段に充電する。また、交流電源の停電時や電圧低下時には、蓄電手段から第1の昇降圧チョッパでCVCFインバータの直流入力へ放電し、この直流電力を第2の昇降圧チョッパで直流中間コンデンサへ放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータからの回生電力を蓄電池に充電し、交流電源の停電時や電圧低下時に蓄電池からインバータへ直流電力を放出して有効利用する電源システムの回路構成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に、特許技術文献1に示された従来の技術に無停電電源回路を付加した電源システムを示す。回生電力を蓄積する蓄電池から無停電の電源(制御電源)を作る従来技術は特許文献2に記載されている。
【0003】
交流電源ACPをAC/DCコンバータCNVで直流に変換し、コンデンサC1で平滑した後、交流電動機ACMを制御するための可変電圧・可変周波数制御のVVVFインバータINV1に供給する一般的な電動機駆動用インバータにおける回生電力活用システムである。
【0004】
直流中間回路のコンデンサC1と並列に、ダイオードD1を逆並列接続したIGBTT1とダイオードD2を逆並列接続したIGBTT2との直列回路と、一端が前記直列回路の直列接続点に接続されたリアクトルL1とからなる第2の昇圧チョッパ回路が接続され、さらにリアクトルL1の他端とIGBTT2のエミッタとの間には蓄電池BATが接続される。ここで、蓄電池BATの電圧としては、コストパフォーマンスの観点から100V程度が選択される。
【0005】
また、ダイオードD3を逆並列接続したIGBTT3とダイオードD4を逆並列接続したIGBTT4との直列回路と、一端が前記直列回路の直列接続点に他端が蓄電池に各々接続されたリアクトルL2とからなる第1の昇圧チョッパ回路が、CVCFインバータINV2の直流入力及びコンデンサC2と並列に接続される。CVCFインバータINV2は蓄電池BATから無停電化された定電圧・定周波数の交流電圧を作り出す。CVCFインバータINV2の出力は、交流入力が停電した場合や電圧低下した場合にも安定な電力を要求される負荷LDに供給される。特許文献2では、蓄電池から専用のインバータで制御回路の電源を供給している。
【0006】
このような電源システムにおいて、電動機からの回生電力は昇降圧チョッパ2の降圧動作により、蓄電池BATに蓄積される。また、交流電源ACPが停電した時は、昇降圧チョッパ2を昇圧動作させてVVVFインバータINV1に直流電力を供給し、無停電化を達成する。
【0007】
このような構成における各部の電圧変動範囲は以下となる。交流電源ACPとしてAC200V系の電源に対応する場合、直流中間電圧(コンデンサC1の電圧)変動範囲は例えばDC240V〜430V程度、交流電源ACPとしてAC400V系の電源に対応する場合、例えばDC480V〜860V程度になる。また、CVCFインバータINV2の直流入力電圧は、交流出力電圧としてAC200Vを確保するため、例えばDC350V程度が選択される。
上述の電圧変動範囲に対応するための、昇降圧チョッパ回路2の昇降圧比は下記となる。
交流電源ACPがAC200V系の時、降圧動作では降圧比が0.42〜0.23、昇圧動作では約2.7となる。また、交流電源ACPがAC400V系の時、降圧動作では降圧比が約0.21〜0.12、昇圧動作では昇圧比が約5.4となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−289950号公報
【特許文献2】特開平7−232872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、半導体素子として2アーム入りのモジュールを使用する場合、降圧比が0.5程度、昇圧比が2程度が発生損失を各アームでバランスさせるのに適しており、コスト、冷却装置の小型化などの点で有利である。本発明が対象とする電源システムでは、蓄電池電圧は交流電源ACPの電圧に依存せず、コストの制約からDC100V程度に選択される。このため、従来回路では、交流電源電圧がAC400V系の場合、降圧比が約0.21〜0.12と小さく、かつ昇圧比が約5.4と大きく、昇降圧チョッパ回路の特定の半導体素子を大型化する必要がある。また、発生損失が特定の素子に偏り、半導体素子と冷却装置が大型で、電源装置が高価格となる。従って、本発明の課題は、交流電源電圧がAC400V系でも、小型化、低損失化が図れる電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明においては、交流入力を直流に変換するコンバータと、この直流を平滑する直流中間コンデンサと、この直流を可変電圧・可変周波数の交流に変換し負荷に供給するVVVFインバータと、負荷からの回生電力を蓄電する蓄電手段と、前記蓄電手段から無停電化された定電圧・定周波数の交流電圧を作り出すCVCFインバータとを有する電源システムにおいて、前記CVCFインバータの直流入力間に接続したそれぞれダイオードを逆並列接続した第1及び第2の半導体スイッチ同士を直列接続した第1の半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点に一端を、前記蓄電手段の一方の端子に他端を、各々接続した第1のリアクトルとからなる第1の昇降圧チョッパと、前記直流中間コンデンサの正極と負極との間に接続したそれぞれダイオードを逆並列接続した第3及び第4の半導体スイッチ同士を直列接続した第2の半導体スイッチ直列回路と、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点に一端を、前記CVCFインバータの直流入力の一方の端子に他端を、各々接続した第2のリアクトルとからなる第2の昇降圧チョッパと、を備える。
【0011】
第2の発明においては、第1の発明における前記第2の昇降圧チョッパのリアクトルの他端を前記CVCFインバータの直流入力の一方の端子又は前記蓄電手段の一方の端子に接続変更する接続変更手段を備える。
【0012】
第3の発明においては、第1又は第2の発明における前記CVCFインバータの交流出力から制御回路の電源を得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、交流電源の電圧が高い(例えば400V)場合、電動機からの回生電力を第2の昇降圧チョッパで一端CVCFインバータの直流入力に放電し、この放電した電力を第1の昇降圧チョッパで蓄電手段に充電する。また、交流電源が停電した時や電圧低下した時には、蓄電手段から第1の昇降圧チョッパでCVCFインバータの直流入力へ放電し、この直流電力を第2の昇降圧チョッパで直流中間コンデンサへ放出する構成としている。
【0014】
この結果、従来に比べて、第2の昇降圧チョッパの降圧比を、より0.5に近い値に、昇圧比を、より2に近い値にすることが可能で、チョッパ回路を構成する半導体素子の発生損失を分散させることが可能となり、半導体素子と冷却装置の小型化と低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す回路図である。
【図3】本発明の第3の実施例を示す回路図である。
【図4】本発明の第4の実施例を示す回路図である。
【図5】従来例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の要点は、交流電源の電圧が高い(例えば400V)場合、電動機からの回生電力を第2の昇降圧チョッパで一旦CVCFインバータの直流入力に放電し、この放電した電力を第1の昇降圧チョッパで蓄電手段に充電する。また、交流電源が停電した時や電圧が低下した時には、蓄電手段から第1の昇降圧チョッパでCVCFインバータの直流入力へ放電し、この直流電力を第2の昇降圧チョッパで直流中間コンデンサへ放出する点である。
【実施例1】
【0017】
図1に、本発明の第1の実施例を示す。交流電源ACPの交流をAC/DCコンバータCNVで直流に変換し、コンデンサC1で平滑した後、電動機ACMを制御するための可変電圧・可変周波数制御のVVVFインバータINV1に供給する一般的な電動機駆動用インバータにおける回生電力活用システムである。
【0018】
直流中間回路のコンデンサC1と並列に、ダイオードD1を逆並列接続したIGBTT1とダイオードD2を逆並列接続したIGBTT2との直列回路と、一端が前記直列回路内部の直列接続点に接続されたリアクトルL1とからなる第2の昇降圧チョッパ回路が接続され、さらにリアクトルL1の他端はCVCFインバータINV2の直流入力コンデンサC2の正極に接続される。
【0019】
また、ダイオードD3を逆並列接続したIGBTT3とダイオードD4を逆並列接続したIGBTT4との直列回路と、一端が前記直列回路内部の直列接続点に他端が蓄電池に各々接続されたリアクトルL2とからなる第1の昇圧チョッパ回路が、CVCFインバータINV2の直流入力及びコンデンサC2と並列に接続される。CVCFインバータINV2は蓄電池BATから無停電化された定電圧・定周波数の交流電圧を作り出す。CVCFインバータINV2の出力は、交流入力が停電した場合や電圧低下した場合にも安定な電力を要求される負荷LDに供給される。
【0020】
このような電源システムにおいて、電動機からの回生電力は昇降圧チョッパ2の降圧動作により、CVCFインバータINV2の直流入力のコンデンサC2に放出され、さらに昇降圧チョッパ1の降圧動作により、蓄電池BATに充電される。ここで、蓄電池BATの電圧としては、コストパフォーマンスの観点から100V程度が選択される。また、交流電源ACPが停電或いは電圧低下した時は、昇降圧チョッパ1を昇圧動作させて蓄電池BATからCVCFインバータINV2の直流入力コンデンサC2を充電し、さらに昇圧チョッパ2を昇圧動作させて、直流中間コンデンサC1に直流電力を供給し、無停電化を達成する。
【0021】
このような構成における各部の電圧変動範囲は以下となる。交流電源ACPとしてAC400V系の電源に対応する場合、直流中間コンデンサC1の電圧変動範囲は例えばDC480V〜860V程度になる。また、CVCFインバータINV2の直流入力電圧は、交流出力電圧としてAC200Vを確保するため、例えばDC350V程度が選択される。
上述の電圧変動範囲に対応するための、昇降圧チョッパ回路2の昇降圧比は下記となる。
降圧動作では降圧比が約0.72〜0.41、昇圧動作では昇圧比が約1.54となる。
従来例では、降圧比が0.21〜0.12であったが、本実施例では0.72〜0.41で、より0.5に近い値であり、半導体素子の発生損失を分散させることができる。
また、昇圧比は従来例では5.4であったが、本実施例では1.54であり、より2に近い値となり、半導体素子の発生損失を分散させることができる。
【実施例2】
【0022】
図2に、本発明の第2の実施例を示す。第1の実施例との違いは、昇降圧チョッパ2のダイオードD1を逆並列接続したIGBTT1とダイオードD2を逆並列接続したIGBTT2との直列回路と、一端が前記直列回路内部の直列接続点に接続されたリアクトルL1の他端をCVCFインバータの直流入力の正極又は蓄電池BATの正極に切替えるための切替器S1が接続されている点である。この構成例は、運転開始前に交流電源ACPの電圧を検出し、交流電源電圧が200V系の場合には切替器を蓄電池BATの正極側に、400V系の場合にはCVCFインバータの直流入力の正極側に、各々切替える例である。CVCFインバータの直流入力の正極及び蓄電池BATの正極に構造的に端子を設けて、別の切替手段を接続しても同様の機能を達成できる。
【実施例3】
【0023】
図3に、本発明の第3の実施例を示す。第1の実施例は蓄電池の負極をCVCFインバータの直流入力の負極及びVVVFインバータの直流中間電圧の負極に、各々接続した場合の構成であるが、本実施例は蓄電池の正極をCVCFインバータの直流入力の正極及びVVVFインバータの直流中間電圧の正極に接続した場合の構成である。リアクトルL2はIGBTT3とT4の直列接続点と蓄電池BATの負極端子間に、リアクトルL1はIGBTT1とT2の直列接続点とCVCFインバータ直流入力の負極との間に、各々接続される。
【0024】
第1の実施例では、降圧動作では第2の昇降圧チョッパではIGBTT1が、第1の昇降圧チョッパではIGBTT3がオンオフ制御しているが、本発明の構成では、各々IGBTT2又はIGBTT4がオンオフ制御する点が違う。その他の動作は第1の実施例と同様である。
【実施例4】
【0025】
図4に、本発明の第4の実施例を示す。第2の実施例に第3の実施例を付加した構成である。第2の実施例は蓄電池の負極をCVCFインバータの直流入力の負極及びVVVFインバータの直流中間電圧の負極に、各々接続した場合の構成であるが、本実施例は蓄電池の正極をCVCFインバータの直流入力の正極及びVVVFインバータの直流中間電圧の正極に接続した場合の構成である。一端がIGBTT1とT2の直列接続点接続されたリアクトルL1は切替器S1を介して蓄電池BATの負極又はCVCFインバータ直流入力の負極に切替えることができる。第2の実施例では、降圧動作では第2の昇降圧チョッパではIGBTT1が、第2の昇降圧チョッパではIGBTT3がオンオフ制御しているが、本発明の構成では、各々IGBTT2又はIGBTT4がオンオフ制御する点が違う。
この構成例は、運転開始前に交流電源ACPの電圧を検出し、交流電源電圧が200V系の場合には切替器を蓄電池BATの負極側に、400V系の場合にはCVCFインバータの直流入力の負極側に、切替える例である。
尚、上記実施例には、蓄電手段として蓄電池を用いた例を示したが、蓄電池の代わりに大容量のキャパシタなどでも実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、交流電源の入力電圧対応範囲が広く要求される場合の電動機回生電力の有効活用に関する発明であり、力行、回生を頻繁に繰り返す電動機駆動装置、無停電化の必要な電動機駆動装置などへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0027】
ACP・・・交流電源 ACM・・・交流電動機 LD・・・負荷
BAT・・・蓄電池 CNV・・・AC/DCコンバータ
INV1・・・VVVFインバータ INV2・・・CVCFインバータ
S1・・・切替スイッチ L1、L2・・・リアクトル
T1〜T4・・・IGBT D1〜D4ダイオード
C1、C2・・・コンデンサ CNT・・・制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流入力を直流に変換するコンバータと、この直流を平滑する直流中間コンデンサと、この直流を可変電圧・可変周波数の交流に変換し負荷に供給するVVVFインバータと、負荷からの回生電力を蓄電する蓄電手段と、前記蓄電手段から無停電化された定電圧・定周波数の交流電圧を作り出すCVCFインバータとを有する電源システムにおいて、
前記CVCFインバータの直流入力間に接続したそれぞれダイオードを逆並列接続した第1及び第2の半導体スイッチ同士を直列接続した第1の半導体スイッチ直列回路と、前記第1の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点に一端を、前記蓄電手段の一方の端子に他端を、各々接続した第1のリアクトルとからなる第1の昇降圧チョッパと、
前記直流中間コンデンサの正極と負極との間に接続したそれぞれダイオードを逆並列接続した第3及び第4の半導体スイッチ同士を直列接続した第2の半導体スイッチ直列回路と、前記第2の半導体スイッチ直列回路内部の直列接続点に一端を、前記CVCFインバータの直流入力の一方の端子に他端を、各々接続した第2のリアクトルとからなる第2の昇降圧チョッパと、を備えたことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記第2の昇降圧チョッパの第2のリアクトルの他端を前記CVCFインバータの直流入力の一方の端子又は前記蓄電手段の一方の端子に接続変更する接続変更手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記CVCFインバータの交流出力から制御回路の電源を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−100500(P2012−100500A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248354(P2010−248354)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】