説明

複層皮膜形成方法及び塗装物品

【課題】本発明は、前処理工程後の水洗を省略して夾雑物として前処理液が電着塗料に持ち込まれても、化成処理液の影響を受けずに仕上り性や防食性が十分な塗装物品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、以下の工程を含む、金属基材に化成処理皮膜(F1)と電着塗装皮膜(F2)を含む複層皮膜を形成する方法を提供する:
工程1:金属基材を皮膜形成剤(1)である化成処理液に浸漬して化成処理皮膜(F1)を形成する工程、
工程2:水洗を施すことなく、カチオン電着塗料(I)である皮膜形成剤(2)を用いて金属基材を電着塗装して電着塗装皮膜(F2)を形成する工程
を含む複層皮膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化成処理後の水洗を省略し、夾雑物として化成処理液が次工程である電着塗料中に持ち込まれても化成処理液の影響を受けずに、仕上り性や防食性に優れた塗装物品が得られる複層皮膜形成方法及び該複層皮膜形成方法を用いた塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用の金属基材には、下地処理として、防食性や付着性の向上を目的にリン酸塩処理が行われている。しかしながら、リン酸塩処理剤による化成処理は、処理剤中にリンや窒素を多量に含んでおり、かつ形成される化成皮膜の性能を向上させるためにニッケル、マンガン等の重金属を多量に含有しているため、環境への影響や、処理後にリン酸亜鉛、リン酸鉄等のスラッジが多量に発生し、産業廃棄物処理などに問題がある。
【0003】
また、工業用の金属基材の防食性向上を目的として、塗装ラインにおいては、図1のように「脱脂−表面調整及び化成処理−水洗−電着塗装−UF水洗−純水水洗−焼付乾燥」等の多くの工程やスペースや時間を要している。
【0004】
特許文献1には、実質的にリン酸イオンを含有せず、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオン、並びにフッ素イオンを含有してなる鉄及び/又は亜鉛系基材用化成処理剤が提案されている。しかし、特許文献1に記載の鉄及び/又は亜鉛系基材用化成処理剤を用いた処理の後に、塗装工程によって塗膜を施さないと、十分な防食性や仕上り性が確保できないという問題がある。
【0005】
特許文献2には、(I)Ti、Zr、Hf及びSiから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む化合物と、(II)フッ素イオンの供給源としてフッ素含有化合物を含有する金属の表面処理用組成物を用いることにより、鉄又は亜鉛の少なくとも1種を含む金属の表面に耐食性に優れる表面処理皮膜を析出させることができ、且つ表面調整(表調)工程を必要としないため処理工程の短縮、省スペース化を図ることが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオン、フッ素イオン、並びに、可溶性エポキシ樹脂を含有し、実質的にリン酸イオンを含有しないpHが2.5〜4.5である鉄系基材用金属表面処理用組成物が開示されている。
他に、特許文献4には、フッ素及びジルコニウム含有化合物からなる化成処理剤による化成処理反応によってアルミニウム系基材表面に化成皮膜を形成させる工程(1)と、親水処理剤を用いて親水皮膜を形成させる工程(2)とからなるアルミニウム系基材の表面処理方法であって、前記化成処理反応は、電解処理によって化成処理を行うことを特徴とするアルミニウム系基材の表面処理方法が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献2〜4に記載の表面処理用組成物を用いた処理の後に、塗装工程によって塗膜を施さないと、十分な防食性や仕上り性が確保できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献5には、被処理物に脱脂処理及び洗浄処理を施した後に、表面調整を施すことなく化成処理液を施し、その後、工業用水による水洗処理及び被処理物の乾燥処理を施すことなく電着塗装を行うことを特徴とする塗装前処理方法であって、さらに化成処理液としてジルコニウムイオンを含むことができる塗装前処理方法が開示されている。明細書中の4〜5頁目には、化成処理液のpHが低い為、化成処理工程〜電着塗装工程の間で発錆を防止するために「水洗工程」が必要であることが記載されている。
【0009】
また、特許文献6には、化成処理液が満たされた化成処理槽に油吸着性樹脂塊体を浮遊させた状態で前記被処理物を化成処理液に浸漬させて処理を施すことを特徴とする塗装前処理方法であって、さらに化成処理液としてジルコニウムイオンを含むことができる塗装前処理方法が開示されており、また明細書中段落[0034]には、化成処理工程の後に工業用水による「水洗工程」も不要となることの記載がある。
しかし特許文献6の樹脂を浮遊させた化成処理液の塗装前処理方法によって皮膜を形成し、水洗を施さず、次いで電着塗膜を施した場合には、化成処理液が電着塗料槽に持ち込まれ、得られた塗膜の仕上り性や防食性が不十分であり改良が求められていた。
【0010】
また、特許文献7には、化成処理を施さない金属基材に、化成処理皮膜を有する塗膜と同等の機能を有する塗膜を形成することができる水性塗料組成物であって、適宜に、水分散性エポキシ樹脂や水に対する溶解度が0.001〜5%の防錆顔料を含む水性塗料組成物を塗装する工程を含むことを特徴とする塗装方法が開示されている。しかし、防食性が十分でない。
【0011】
さらに、特許文献8には、希土類金属(Ce、Y、Nd、Pr、Yb)、適宜に銅や亜鉛も加え、かつカチオン性樹脂を含有する水性被膜組成物を用い、前処理工程にて50V以下で第1層を析出させ、かつ50〜450Vで第2層を析出させる、前処理工程と電着塗装工程の一体化が可能な水性被膜組成物を用いた塗膜形成方法が開示されている。しかし、特許文献8に記載の水性被膜組成物による塗膜では、防食性、特に暴露耐食性などの長期防食性が十分でなかった。
【特許文献1】特開2003−155578号公報
【特許文献2】国際公開第02/103080号パンフレット
【特許文献3】特開2003−253461号公報
【特許文献4】特開2005−2370号公報
【特許文献5】特開2006−28543号公報
【特許文献6】特開2006−28579号公報
【特許文献7】特開2006−239622号公報
【特許文献8】国際公開2006/109862号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、省工程化や省スペースが可能となる塗膜形成方法を見出すことであって、化成処理後の水洗を省略し、夾雑物として化成処理液が次工程である電着塗料中に持ち込まれても化成処理液の混入による電着塗装性や塗膜特性に影響を及ぼさず、仕上り性と防食性に優れる塗装物品を提供することである。
【0013】
本発明の他の課題は、省工程化や省スペースが可能となる工程を見出し、皮膜形成剤の仕上り性と皮膜の防食性に優れる塗膜形成方法を見出し、防食性に優れる塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、金属基材を皮膜形成剤(1)である化成処理液に浸漬して化成処理皮膜(F1)を形成し、水洗を施さないまま、該化成処理皮膜を形成した金属基材上に、特定のカチオン電着塗料(I)を電着塗装して(F2)を形成することを特徴とする複層皮膜形成方法、並びに、特定の皮膜形成剤を収めてなる連続する2つの皮膜形成剤槽(1)(第1槽)と皮膜形成剤槽(2)(第2槽)を用い、金属基材を特定条件下の塗装方法によって得られた複層皮膜が、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、以下の複層皮膜形成方法及び塗装物品を提供するものである。
【0016】
項1. 以下の工程を含む、金属基材に化成処理皮膜(F1)と電着塗装皮膜(F2)を含む複層皮膜を形成する方法
工程1:金属基材を皮膜形成剤(1)である化成処理液に浸漬して化成処理皮膜(F1)を形成する工程、
工程2:水洗を施すことなく、カチオン電着塗料(I)である皮膜形成剤(2)を用いて金属基材を電着塗装して電着塗装皮膜(F2)を形成する工程
を含む複層皮膜の形成方法。
【0017】
項2. 前記皮膜形成剤(1)が、ジルコニウム、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、鉄、ニッケル、マンガン、ガリウム、銀、ランタノイド金属から選ばれる少なくとも1種の金属(m)の化合物からなる少なくとも1種の金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm、並びに水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)0.1〜40質量%とを含む、項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【0018】
項3. 皮膜形成剤(2)が、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネートを含み、カチオン性樹脂組成物とブロック化ポリイソシアネートの合計固形分質量を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)40〜90質量%、好ましくは50〜90質量%とブロック化ポリイソシアネート10〜60質量%、好ましくは10〜50質量%を含む、項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【0019】
項4. カチオン電着塗料(I)が、カチオン電着塗料を構成する樹脂成分の固形分合計を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を40〜80質量%含み、かつアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、該樹脂(A)の樹脂固形分に基づいて、式(1)
【0020】
【化1】

(式(1)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
で表されるポリオキシアルキレン鎖を3〜50質量%含有する、項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【0021】
項5. アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(2)で表されるポリオキシアルキレン類(a11)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である項4に記載の複層皮膜形成方法。
【0022】
【化2】

(式(2)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
項6. アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(3)で表されるビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である項4に記載の複層皮膜形成方法。
【0023】
【化3】

(式(3)中、b個及びb1個の繰り返し単位中の各R、Rは同一又は相異なってもよくR、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、a、a1は同一又は相異なってもよい1〜8の整数、b、b1は同一又は相異なってもよい1〜50の整数を表す)
項7. アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(4)で表されるポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル類(a13)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である項4に記載の複層皮膜形成方法。
【0024】
【化4】

(式(4)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8の整数、bは1〜50の整数を表す)
項8. アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(5)で表されるポリオキシアルキレンジアミン類(a14)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である項4に記載の複層皮膜形成方法。
【0025】
【化5】

(式(5)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8の整数、bは1〜50の整数を表す)
項9. アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(6)で表されるイソシアネート類(a15)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である項4に記載の複層皮膜形成方法。
【0026】
【化6】

【0027】
(式(6)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、Aはアルキレン基またはフェニレン基を表し、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
項10. カチオン電着塗料(I)が、カチオン電着塗料を構成する樹脂成分の固形分合計を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を40〜80質量%含み、かつアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、該樹脂(A)の樹脂固形分に基づいて、式(7)
【0028】
【化7】

(式(7)中、cは1〜50の整数を表す)
で表されるポリグリセリン鎖(a16)を3〜50質量%含有する、項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【0029】
項11. カチオン電着塗料(I)が、カチオン電着塗料を構成する樹脂成分の固形分合計を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を40〜80質量%含み、かつアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、該樹脂(A)の樹脂固形分に基づいて、式(8)
【0030】
【化8】

(式(8)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、dは1〜50の整数を表す)
で表されるポリエチレンイミン鎖(a17)を3〜50質量%含有する、項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【0031】
項12. アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、ポリオキシアルキレン類(a11)とビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)とポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル(a13)とポリオキシアルキレンジアミン類(a14)とイソシアネート類(a15)とから選ばれる少なくとも1種の化合物(a1)と、エポキシ当量170〜500のエポキシ樹脂(a2)とビスフェノール類(a3)を、
化合物(a1)とエポキシ樹脂(a2)とビスフェノール類(a3)の固形分合計質量を基準にして、化合物(a1)が3〜70質量%、エポキシ樹脂(a2)が10〜80質量%、ビスフェノール類(a3)が10〜70質量%の割合で反応させて変性エポキシ樹脂(a4)を得た後、該変性エポキシ樹脂(a4)にアミン化合物(a5)を反応させてなる樹脂である項4に記載の複層皮膜形成方法。
【0032】
項13. 皮膜形成剤槽(1)と皮膜形成剤槽(2)とを連続して具備する皮膜形成設備において、皮膜形成剤(1)を満たした第1段目の皮膜形成剤槽(1)に金属基材を浸漬して通電により金属基材上に皮膜(F1)を形成し、
次いで、水洗を施さないまま、該皮膜(F1)を形成した金属基材を、皮膜形成剤(2)を満たした第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して皮膜形成剤槽(2)を電着塗装することを特徴とする項1に記載の複層皮膜形成方法;
皮膜形成剤(1):ジルコニウム、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属から選ばれる少なくとも1種の金属(m)の化合物からなる金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm、並びにアミノ基含有エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)0.1〜40質量%とを含む皮膜形成剤;
皮膜形成剤(2):カチオン性樹脂組成物とブロック化ポリイソシアネートの合計固形分質量を基準にして、カチオン性樹脂組成物50〜90質量%とブロック化ポリイソシアネート10〜50質量%を含む。
【0033】
項14. カチオン電着塗料(I)が、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネートの合計固形分質量を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)40〜80質量%とブロック化ポリイソシアネート20〜60質量%を含む項1に記載の複層皮膜形成方法。
【0034】
項15. 皮膜形成剤(1)における金属化合物成分(M)が、ジルコニウム化合物を必須成分として含有するものである項13に記載の複層皮膜形成方法。
【0035】
項16. 皮膜形成剤槽(1)のpHが4.5〜8.0の範囲とすることを特徴とする項13に記載の複層皮膜形成方法。
【0036】
項17. 皮膜形成剤槽(1)と皮膜形成剤槽(2)とを連続して具備する皮膜形成設備において、皮膜形成剤(1)を満たした第1段目の皮膜形成剤槽(1)に金属基材を浸漬して、通電を行わずに又は通電を行って、金属基材上に皮膜(F1)を形成し、
次いで、水洗を施さないままセッティングを施し、該皮膜(F1)を形成した金属基材を、皮膜形成剤(2)を満たした第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して電着塗装することを特徴とする項1に記載の複層皮膜形成方法。
【0037】
項18. 金属基材を、第1段目の皮膜形成剤槽(1)に浸漬して1〜50Vの電圧(V)で10〜360秒間通電した後、第2段目の皮膜形成剤槽(2)の電着塗装を50〜400Vの電圧(V)で60〜600秒間の条件で行うことを特徴とする項17に記載の複層皮膜形成方法。
【0038】
項19. 金属基材において、第1段目の皮膜形成剤槽(1)に10〜360秒間通電せずに浸漬した後、次いで、第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して50〜400Vの電圧(V)で60〜600秒間電着塗装することを特徴とする項17に記載の複層皮膜形成方法。
【0039】
項20. 項1〜19のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法を用いた塗装物品。
【発明の効果】
【0040】
本発明の複層皮膜形成方法は、化成処理後の水洗を省略し、化成処理液が夾雑物として電着塗料中に持ち込まれたとしても、仕上り性や防食性に優れた塗装物品が得られる方法である。本発明の塗膜形成方法は、図2で示されるように水洗工程を省略できる為、省工程化や省スペースが可能となる。
これらの効果が得られる1つの理由としては、化成処理液の混入性に優れる特定のアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を一定量含有したカチオン電着塗料(I)を用いることによって達成できるためである。
【0041】
本発明の効果が得られる他の理由は、以下の1〜3の効果が複合することによって成り立つためと考えられる。
1.皮膜形成剤(1)における金属化合物成分(M)の含有量は、合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppmの比較的低含有量にて、防食性に優れる皮膜(F1)を形成できる。よって、次の槽への持込まれる金属化合物成分(M)も比較的少ない量である。
【0042】
2.皮膜形成剤(1)のpHが比較的高く酸化力が穏やかであることと、さらに、樹脂組成物(B)を含む皮膜形成剤(1)である為、被塗物が第1槽から第2槽目までの移送間において被塗物上の発錆を抑制できる。
3.皮膜形成剤(2)は、金属化合物成分(M)の混入性に優れる。
また、従来では図1に示されるライン工程(脱脂−表面調整及び化成処理−水洗−電着塗装−UF水洗−純水水洗−焼付乾燥)が一般的であったが、図2に示されるライン工程(脱脂−皮膜形成剤槽(1槽目)による皮膜形成剤(1)−皮膜形成剤槽(2槽目)による皮膜形成剤(2)−UF水洗−純水水洗−焼付乾燥工程)のように、工程短縮、省スペース化(例えば、水洗設備や排水処理を省略できる)が可能となることも挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明は、金属基材を皮膜形成剤(1)である化成処理液に浸漬して化成処理皮膜を形成した後に、水洗を施すことなく、該化成処理皮膜を形成した金属基材上に、特定のカチオン電着塗料(I)である皮膜形成剤(2)を用いてカチオン電着塗装して塗膜を形成する複層皮膜形成方法、に関する。
なお、本明細書において「水洗を施すことなく」とは、工業用水洗と上水水洗及び純水工程からなる少なくとも1種の水洗工程を省略することが可能であることを意味し、要求される塗膜性能に応じて適宜対応できる。例えば、工業用水洗と上水水洗を省略し、純水水洗を行うことは「水洗を施すことなく」に該当する。
【0044】
本発明の1つの好ましい実施形態は、皮膜形成剤槽(1)と皮膜形成剤槽(2)とを連続して具備する皮膜形成設備において、特定の皮膜形成剤(1)を満たした第1段目の皮膜形成剤槽(1)に金属基材を浸漬し、通電を行わずに又は通電して、金属基材上に皮膜(F1)を形成し、次いで、水洗を施さないまま、該皮膜(F1)を形成した金属基材を、下記特徴の皮膜形成剤(2)を満たした第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して電着塗装することを特徴とする複層皮膜形成方法である。
【0045】
被塗物について
本発明の複層皮膜形成方法に用いる被塗物としては、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材などの金属基材が挙げられる。
[第1段目の皮膜形成について]
皮膜形成剤(1)
上記の方法(1)に用いる皮膜形成剤(1)は、ジルコニウム化合物、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、鉄、ニッケル、マンガン、ガリウム、銀、ランタノイド金属(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)から選ばれる少なくとも1種の金属(m)の化合物とからなる金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm、並びに水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)0.1〜40質量%を含む。
【0046】
金属化合物成分(M)において使用されるジルコニウム化合物は、ジルコニウムイオン、オキシジルコニウムイオン、フルオロジルコニウムイオンなどのジルコニウム含有イオンを生じる化合物であり、ジルコニウムイオンを生じる化合物として、例えば、オキシジルコニウムイオンを生じる化合物としては、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニルなど;フルオロジルコニウムイオンを生じる化合物としては、ジルコニウムフッ化水素酸、フッ化ジルコニウムナトリウム、フッ化ジルコニウムカリウム、フッ化ジルコニウムリチウム、フッ化ジルコニウムアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、特に、硝酸ジルコニル、フッ化ジルコニウムアンモニウムが好適である。
【0047】
チタンイオンを生じる化合物としては、例えば、塩化チタン、硫酸チタン、フルオロチタンイオンを生じる化合物としては、例えば、チタンフッ化水素酸、フッ化チタンナトリウム、フッ化チタンカリウム、フッ化チタンリチウム、フッ化チタンアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、特に、チタンフッ化アンモニウムが好適である。
【0048】
コバルトイオンを生じる化合物としては、例えば、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルトアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、特に、硝酸コバルトが好適である。
【0049】
バナジウムイオンを生じる化合物としては、例えば、オルソバナジン酸リチウム、オルソバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ピロバナジン酸ナトリウム、塩化バナジル、硫酸バナジルなどが挙げられる。これらの中でも、特にメタバナジン酸アンモニウムが好適である。
【0050】
タングステンイオンを生じる化合物としては、例えば、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸ナトリウム、ペンタタングステン酸アンモニウム、ヘプタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、ホウタングステン酸バリウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に、タングステン酸アンモニウムなどが好適である。
【0051】
モリブデンイオンを生じる化合物としては、例えば、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸亜鉛などが挙げられる。
【0052】
銅イオンを生じる化合物としては、例えば、硫酸銅、硝酸銅(II)三水和物、硫酸銅(II)アンモニウム六水和物、酸化第二銅、リン酸銅などが挙げられる。
亜鉛イオンを生じる化合物としては、例えば、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0053】
インジウムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸インジウムアンモニウムなどが挙げられる。
【0054】
ビスマスイオンを生じる化合物としては、例えば、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、臭化ビスマス、ケイ酸ビスマス、水酸化ビスマス、三酸化ビスマス、硝酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、オキシ炭酸ビスマス等の無機系ビスマス含有化合物;乳酸ビスマス、トリフェニルビスマス、没食子酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、メトキシ酢酸ビスマス、酢酸ビスマス、蟻酸ビスマス、2,2−ジメチロールプロピオン酸ビスマスなどが挙げられる。
【0055】
イットリウムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸イットリウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、蟻酸イットリウムなどが挙げられる。
【0056】
鉄イオンを生じる化合物としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、シュウ酸鉄(III)アンモニウム、硝酸鉄(III)、フッ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(III) などが挙げられる。
【0057】
ニッケルイオンを生じる化合物としては、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、クエン酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、スルファミン酸ニッケル(II)、炭酸ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II) などが挙げられる。
マンガンイオンを生じる化合物としては、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、シュウ酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、炭酸マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸マンガン(II)アンモニウムなどが挙げられる。
【0058】
ガリウムイオンを生じる化合物としては、硝酸ガリウムが挙げられる。
【0059】
銀イオンを生じる化合物としては、酢酸銀(I)、塩化銀(I)、硝酸銀(I)、硫酸銀(I)が挙げられる。
【0060】
また、ランタノイド金属化合物において、ランタンイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸ランタン、フッ化ランタン、酢酸ランタン、ホウ化ランタン、リン酸ランタン、炭酸ランタンなど;セリウムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、酢酸セリウム(III)、シュウ酸セリウム(III)、硝酸アンモニウムセリウム(III)、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)など;プラセオジムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸プラセオジム、硫酸プラセオジム、シュウ酸プラセオジムなど;ネオジムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸ネオジム、酸化ネオジウムなどが挙げられる。
【0061】
さらに、皮膜形成剤(1)における金属化合物成分(M)は、必要に応じて、アルミニウム、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)及びアルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物を含有することもできる。これらのうち、ジルコニウム化合物と硝酸アルミニウムが好適である。
【0062】
水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B):
皮膜形成剤(1)は、水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)0.1〜40質量%が含まれる。水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)としては、例えば、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などの水性媒体中でカチオン化可能なカチオン性樹脂組成物が挙げられる。
また、分子中にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの水性媒体中でアニオン化可能な基を有するアニオン性樹脂組成物が挙げられる。該樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリブタジエン樹脂系、アルキド樹脂系、ポリエステル樹脂系などが挙げられる。
【0063】
これらの官能基の中でも、分子中にアミノ基を有するカチオン性樹脂組成物であることが、夾雑物として皮膜形成剤(2)中に混入しても影響を及ぼすことがなく、かつ皮膜形成剤(1)が被覆された金属素材が、皮膜形成剤槽(2)に移送される間に発錆を抑制することや、得られた塗装物品の防食性向上の為にも好ましい。このような面から、該樹脂のアミン価としては、30〜150mgKOH/g樹脂固形分の範囲、さらには60〜130mgKOH/g樹脂固形分がよい。
【0064】
他に、分子中に非イオン性且つ高極性基として水酸基及びオキシエチレン鎖などを含み、かつ水性媒体中で水分散又は水溶化可能な樹脂や化合物を用いることができる。このような樹脂や化合物として、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシプロピレン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。
【0065】
上記に述べた、水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)は、適宜に中和剤を加え、脱イオン水によって水分散して樹脂エマルションとすることによって、皮膜処理剤(1)の調製に用いることができる。
【0066】
皮膜形成剤(1)について:
なお、皮膜形成剤(1)の調製は、例えば、以下に述べる(1)〜(4)の方法により行うことができる。
(1)水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)に、金属化合物成分(M)を加え、適宜に中和剤を添加して樹脂組成物(B)の水分散化又は水溶化を図り、脱イオン水を加えて調整する方法;
(2)金属化合物成分(M)に、水分散化又は水溶化した樹脂組成物(B)を添加し、脱イオン水を加えて調整する方法;
(3)あらかじめ作製した皮膜形成剤の浴に、金属化合物成分(M)、並びに水分散化又は水溶化した樹脂組成物(B)を添加し、脱イオン水を加えて調整する方法;
(4)リン酸亜鉛化成処理、ジルコニウム、チタニウム、モリブデン、タングステン、マンガン及びセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属表面処理剤等の化成処理;
が挙げられる。
【0067】
皮膜形成剤(1)は、金属化合物成分(M)を、合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm、好ましくは50〜10,000ppm、さらに好ましくは100〜5,000ppm含有し、さらに、皮膜形成剤(1)の質量に対して、水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)を1〜40質量%、好ましくは0.5〜20質量%含有することができる。なお、pHは、4.5〜8.0、好ましくは5.0〜7.5の範囲内がよい。
【0068】
pHの範囲を上記範囲内とすることによって、皮膜(F1)を形成した金属基材が皮膜形成剤槽(2)に移送される間に発錆を抑制することができることから、防食性及び仕上り性の向上に寄与できる。
【0069】
皮膜形成剤(1)における金属化合物成分(M)が、ジルコニウム化合物と金属(m)の化合物を含む場合、金属(m)の化合物含有量は、本発明の方法により形成される塗装物品の用途などに応じて変えることができるが、金属化合物成分(M)の質量を基準にて、一般には90質量%以下、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは10〜75質量%の範囲内とすることができる。
【0070】
皮膜形成方法について:
本発明に従う皮膜形成は、金属基材を、皮膜形成剤(1)を満たした皮膜形成剤槽(1)に10〜360秒間、好ましくは50〜300秒間、さらに好ましくは70〜240秒間浸漬して、金属基材上に皮膜(F1)を形成する方法(1)、皮膜形成剤(1)を浴とし且つ金属基材を陰極として、1〜50Vで10〜360秒間、好ましくは2〜30Vで30〜180秒間通電する方法(2)、さらに、一定時間浸漬しその後通電する方法も可能であり、10〜180秒間、好ましくは5〜120秒間浸漬し、さらに1〜100Vで10〜360秒間、2〜60Vで30〜180秒間通電する方法(3)、が挙げられる。
【0071】
なお皮膜(F1)の析出機構としては、浸漬又は通電によって、金属基材近傍のpH上昇により加水分解反応が起こり、皮膜形成剤中の金属イオン種が難溶性の皮膜(F1)(主に、金属酸化物と樹脂組成物(B)の一部)として金属基材上へ析出することにより、金属化合物成分(M)と、樹脂組成物(B)を含んでなる皮膜(F1)が形成される。
【0072】
また、ジルコニウム化合物と金属(m)の化合物とを併用する場合、該併用に代えて、単一の化合物中にジルコニウムとそれ以外の金属(m)とが共存する化合物を使用することができる。また、金属(m)含有化合物として2種もしくはそれ以上の金属(m)含有化合物を併用する場合、該併用に代えて、単一の化合物中に2種もしくはそれ以上の金属(m)と、樹脂組成物(B)が共存する化合物を使用することもできる。
このようにして得られた皮膜(F1)を形成した金属基材は、水洗を施さずに、該皮膜(F1)上に第2段目の皮膜形成を行うことができる。また、該皮膜(F1)を形成した金属基材は、水洗を施さずに、適宜にセッティングを施し、次いで皮膜形成剤(2)を満たした第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して電着塗装することによって、該皮膜(F1)上に第2段目の皮膜形成を行うこともできる。
【0073】
上記セッティングの条件としては、0〜80℃、好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜40℃で、10秒間〜30分間、好ましくは20秒間〜20分間、さらに好ましくは30秒間〜15分間を施すことによって、被塗物に付着した余分な皮膜形成剤(1)を除去することができ、仕上り性がよい皮膜を形成することができる。さらにセッティング中に、被塗物にエアブローや揺動などを施すこともできる。
【0074】
[第2段目の皮膜形成について]
次いで、得られた皮膜(F1)を形成した金属基材を、カチオン電着塗料(I)である皮膜形成剤(2)を満たした第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して通電することによって、該皮膜(F1)上に皮膜(F2)を形成できる。
【0075】
カチオン電着塗料(I)について
カチオン電着塗料(I)は、カチオン電着塗料を構成する樹脂成分の固形分合計を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を通常40〜90質量%、好ましくは55〜85質量%、さらに好ましくは60〜80質量%の範囲内、そしてブロック化ポリイソシアネートは通常10〜60質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%を含む皮膜形成剤であって、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、該樹脂(A)の樹脂固形分に対して、式(1)表されるポリオキシアルキレン鎖を3〜50質量%含有する樹脂(A)を含有してなるカチオン電着塗料である。
【0076】
【化9】

(式(1)中、b個の繰り返し単位中のRは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)は、ポリオキシアルキレン類(a11)とビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)とポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル(a13)とポリオキシアルキレンジアミン類(a14)及びイソシアネート類(a15)から選ばれる少なくとも1種の化合物(a1)を用い、エポキシ樹脂(a2)とビスフェノール類(a3)を反応させて変性エポキシ樹脂(a4)を得た後、アミン化合物(a5)と反応することによって得ることができる。
【0077】
ポリオキシアルキレン類(a11)を用いたアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)
下記式(2)で表されるポリオキシアルキレン類(a11)を反応における構成成分として、アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0078】
【化10】

(式(2)中、b個の繰り返し単位中のRは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
上記式(2)の中でも、ポリエチレングリコール(式(2)において、Rが水素原子、a=1に相当)が、塗料安定性、塗膜の仕上り性と防食性の面から好ましい。その分子量としては、70〜4,000、好ましくは200〜3,000である。
【0079】
ビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)を用いたアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)
下記式(3)で表されるビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)を反応における構成成分として、アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0080】
【化11】

(式(3)中、b個及びb1個の繰り返し単位中のR、Rは同一又は相異なってもよくR、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、a、a1は同一又は相異なってもよい1〜8の整数、b、b1は同一又は相異なってもよい1〜50の整数を表す)
この中でも、ビスフェノールAのエチレングリコール付加物(式(3)において、Rが水素原子、a=1に相当)が、塗料安定性、塗膜の仕上り性と防食性の面から好ましい。数平均分子量としては、300〜2000、好ましくは400〜1500である。
なお、市販品としては、ニューポールBPE−60、ニューポールBPE−180(以上、三洋化成工業社製、商品名)が挙げられる。
【0081】
ポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル類(a13)を用いたアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)
下記式(4)で表されるポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル類(a13)を反応における構成成分として、アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0082】
【化12】

(式(4)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8の整数、bは1〜50の整数を表す)
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(式(4)において、Rが水素原子、a=1に相当)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(式(4)において、Rがメチル基、a=1に相当)が、塗料安定性、塗膜の仕上り性と防食性の面から好ましい。分子量としては、230〜2,000、好ましくは340〜1,200である。
上記ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類の市販品としては、例えば、デナコールEX−810、EX−821、EX−832、EX−841、EX−851、EX−861(以上、ナガセケムテックス株式会社)が挙げられる。上記ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類の市販品としては、デナコールEX−911、EX−920、EX−931、EX−941(以上、ナガセケムテックス株式会社)が挙げられる。
【0083】
ポリオキシアルキレンジアミン類(a14)を用いたアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)
下記式(5)で表されるポリオキシアルキレンジアミン類(a14)を反応における構成成分として、アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0084】
【化13】

(式(5)中、b個の繰り返し単位中の各R、Rは同一又は相異なってもよくR、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8の整数、bは1〜50の整数を表す)
式(5)で表されるポリオキシアルキレンジアミン類の分子量としては、600〜2,000、好ましくは800〜1,000であることが、塗料安定性、仕上り性と防食性の面から好ましい。
【0085】
上記ポリオキシアルキレンジアミン類の市販品としては、例えば、ジェファーミンD400、ジェファーミンD2000(以上、ハンツマン株式会社)を使用することができる。
【0086】
イソシアネート類(a15)を用いたアミノ含有変性エポキシ樹脂(A)
アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(6)で表されるイソシアネート類を構成成分として、反応して得られる樹脂(A)である
【0087】
【化14】

(式(6)中、b個の繰り返し単位中の各R、Rは同一又は相異なってもよくR、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、Aはアルキレン基またはフェニレン基を表し、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す。)
上記のRがメチル基、Rが水素原子、Aがヘキサメチレン基であり、かつ分子量が600〜2,000、好ましくは800〜1,000が、塗料安定性、塗膜の仕上り性と防食性の面から好ましい。
【0088】
ポリグリセリン鎖(a16)を含有するアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)
上記に述べたアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)のほかに、式(7)で表されるポリグリセリン鎖(a16)を3〜50質量%含有するアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A1)も本発明の複層皮膜形成方法に使用可能であり、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)と同様の効果を得ることができる。
【0089】
【化15】

(式(7)中、cは1〜50の整数を表す。)
上記アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A1)中に分子量約800のポリグリセリン鎖を導入するには、例えば、ポリグリセリンとエポキシ樹脂(a2)、ビスフェノール類(a3)を触媒の存在下に、適当な溶媒中で、反応させ、式(7)を部分構造として有する変性エポキシ樹脂を得た後、アミン化合物を反応させて得ることができる。
【0090】
このようにして得られるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A1)は、数平均分子量が600〜3,000、さらに好ましくは1,000〜2,500が適しており、アミン価としては、30〜100mgKOH/g樹脂固形分、好ましくは40〜80mgKOH/g樹脂固形分がよい。
【0091】
ポリエチレンイミン鎖(a17)を含有するアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)
また、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)中に含有されているポリオキシアルキレン鎖のほかに、式(8)で表されるポリエチレンイミン鎖(a17)を3〜50質量%含有するアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A2)も本発明の複層皮膜形成方法に使用可能であり、樹脂(A)と同様の効果を得ることができる。
【0092】
【化16】

(式(8)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、dは1〜50の整数を表す)
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A2)の製造には、例えば、分子量約600のポリエチレンイミンとエポキシ樹脂(a2)、ビスフェノール類(a3)を触媒の存在下に、適当な溶媒中で反応させ、式(8)を部分構造として有する変性エポキシ樹脂を得た後、アミン化合物を反応させて得ることができる。
【0093】
このようにして得られるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A2)は、数平均分子量が600〜3,000、さらに好ましくは1,000〜2,500が適しており、アミン価としては、80〜200mgKOH/g樹脂固形分、好ましくは70〜150mgKOH/g樹脂固形分がよい。
【0094】
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)の製造について
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)の製造は、ポリオキシアルキレン類(a11)とビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)とポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル(a13)とポリオキシアルキレンジアミン類(a14)及びイソシアネート類(a15)から選ばれる少なくとも1種の化合物(a1)、ポリグリセリン鎖(a16)あるいはポリエチレンイミン鎖(a17)に、エポキシ当量170〜500のエポキシ樹脂(a2)、ビスフェノール類(a3)を反応させて変性エポキシ樹脂(a4)を得た後、アミン化合物(a5)を反応させて得ることができる。以下、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)の製造方法について説明する。アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A1)、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A2)についても、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)と同様にして製造することができる。
【0095】
化合物(a1)
上記化合物(a1)として、前記の一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン類(a11)を用いることができる。
【0096】
【化17】

(式(2)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン類(a11)の中でも、特に、ポリエチレングリコール(Rが水素原子、a=1)が、本発明の効果を得るのに好ましい。
【0097】
上記化合物(a1)については、ポリオキシアルキレン類(a11)に代えて、あるいはポリオキシアルキレン類(a11)とともにビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)とポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル(a13)とポリオキシアルキレンジアミン類(a14)とイソシアネート類(a15)から選ばれる少なくとも1種の化合物を適宜適用することができる。
【0098】
エポキシ化合物(a2)
エポキシ化合物(a2)は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物であり、その分子量は340〜1,500、さらに好ましくは340〜1000の「数平均分子量」、及び170〜500、さらに好ましくは170〜400の範囲内の「エポキシ当量」を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
【0099】
ここで「数平均分子量」は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとして「TSK GEL4000HXL」、「TSK GEL3000HXL」、「TSK GEL2500HXL」、「TSK GEL2000HXL」(東ソー株式会社製)の4本を用いて、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレンの検量線から求めた。
【0100】
該エポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物は、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−2もしくは3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックが挙げられる。その他、水添フェノールである、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]等も用いることができる。
【0101】
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式(9)で示されるものが好適である。
【0102】
【化18】

(式(9)中、n=0〜2)
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社からjER828EL、jER1001なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0103】
ビスフェノール類(a3)
ビスフェノール類(a3)には、下記一般式(10)
【0104】
【化19】

(式(10)中、R及びRはそれぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)で示される化合物が包含される。 具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]が挙げられる。
【0105】
なお変性エポキシ樹脂(a4)は、通常、化合物(a1)とエポキシ樹脂(a2)とビスフェノール類(a3)を混合し、適宜、反応触媒として、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミンのような3級アミン、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイドのような4級アンモニウム塩などの存在下、反応温度としては約80〜約200℃好ましくは約90〜約180℃、反応時間として1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間反応することによって得られる。
【0106】
また上記反応において、反応触媒として2級アミンを少量用いることもでき、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、メチルエタノールアミンなどが挙げられる。これらの2級アミンは、エポキシ樹脂(a2)のエポキシ基と反応して3級アミンを生じ、この3級アミンが反応触媒として作用する。
【0107】
変性エポキシ樹脂(a4)は、化合物(a1)とエポキシ樹脂(a2)及びビスフェノール類(a3)の固形分合計質量を基準にして、化合物(a1)が3〜70質量%、好ましくは5〜30質量%、エポキシ樹脂(a2)が10〜80質量%、好ましくは15〜75質量%、ビスフェノール類(a3)が10〜70質量%、好ましくは20〜50質量%である。
【0108】
上記の製造に適宜、溶剤を用いることができる。用いる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。かくして得られたアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)は、エポキシ当量500〜3,000、好ましくは600〜2,500のエポキシ当量である。
【0109】
前記変性エポキシ樹脂(a4)に反応するアミン化合物(a5)は、変性エポキシ樹脂にアミノ基を導入して、該変性エポキシ樹脂(a)をカチオン化するために使用する。
【0110】
そのような目的で使用されるアミン化合物(a5)としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−、もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン及びこれらのポリアミンのケチミン化物;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン、ピラジンなどの環状アミンなどが挙げられる。これら上記のアミンのうち、1級アミンをケチミン化したアミンも併せて用いることができる。
【0111】
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)は、変性エポキシ樹脂(a4)にアミン化合物(a5)を付加反応させることにより製造することができる。上記付加反応における各成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、カチオン電着塗料(I)の用途等に応じて適宜変えることができるが、変性エポキシ樹脂(a4)とアミン化合物(a5)の合計固形分質量を基準にして、変性エポキシ樹脂(a4)が50〜90質量%、好ましくは50〜85質量%、アミン化合物(a5)が5〜25質量%、好ましくは6〜20質量%である。
【0112】
なお上記の付加反応は、通常、適当な溶剤中で、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で0.5〜6時間、好ましくは1〜5時間行う。
上記反応における溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0113】
このようにして得られるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)は、該樹脂(A)の樹脂固形分に対して、ポリオキシアルキレン鎖(i)を3〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは8〜35質量%含有する樹脂(A)である。
【0114】
なお、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)におけるポリオキシアルキレン鎖(i)が50質量%を超えると樹脂(A)の水溶性が著しく高くなる。このため、樹脂(A)を用いたエマルションの製造が困難となる、又は樹脂(A)を用いた塗料の安定性が低下する場合がある為、好ましくない。
【0115】
数平均分子量が600〜3,000、さらに好ましくは1,000〜2,500が適しており、アミン価としては、30〜100mgKOH/g樹脂固形分、好ましくは40〜80mgKOH/g樹脂固形分がよい。
【0116】
上記範囲内であることが、化成処理液が夾雑物として電着塗料中に持ち込まれたとしても、仕上り性や防食性に優れた塗装物品を得るために好ましい。
さらに、従来から公知のカチオン性樹脂組成物を使用することも可能である。カチオン性樹脂組成物としては、例えば、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などの水性媒体中でカチオン化可能な基を有する樹脂が挙げられる。該カチオン性樹脂組成物の樹脂種としては、例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリブタジエン樹脂系、アルキド樹脂系、ポリエステル樹脂系などが挙げられる。
【0117】
皮膜形成剤(2)は、脱イオン水などで希釈して、浴固形分濃度が通常5〜40質量%、好ましくは8〜15質量%、pHが通常1.0〜9.0、好ましくは3〜6の範囲内となるように調整して使用することができる。
【0118】
本発明に従う金属基材の塗装は、皮膜形成剤(2)を満たした皮膜形成剤槽(2)に浸漬して、50〜400V、好ましくは100〜370V、さらに好ましくは150〜350Vで、60〜600秒間、好ましくは120〜480秒間、さらに好ましくは150〜360秒間通電し、皮膜(F1)上に皮膜(F2)を形成することができる。
【0119】
皮膜形成剤槽(2)における通電塗装は、通常0.1〜5m、好ましくは0.2〜3m、さらに好ましくは0.3〜1mの極間距離、及び1/8〜2/1、好ましくは1/5〜1/2の極比(陽極/陰極)で行うことができる。
【0120】
なお、皮膜形成剤の浴温としては、通常5〜45℃、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは20〜35℃の範囲内が適している。析出した皮膜は焼付け硬化させることができる。皮膜の焼き付け温度は、被塗物表面で100〜200℃、好ましくは120〜180℃の範囲内の温度が適しており、焼き付け時間は5〜90分間、好ましくは10〜50分間とすることができる。
架橋剤
本発明の複層皮膜形成方法には、カチオン電着塗料(I)を構成する樹脂成分の固形分合計に対して、アミノ基含有変性樹脂(A)40〜90質量%に加えて、硬化性や塗膜性能の向上のために架橋剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を10〜60質量%含有できる。
【0121】
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂環族又は脂肪族のポリイソシアネート化合物などをブロック剤でブロックしたものが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0122】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−もしくは1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、クルードTDI、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−もしくはp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0123】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、p−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0124】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0125】
また、ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール化合物;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロール吉草酸、グリセリン酸などの水酸基含有化合物を挙げることができる。
【0126】
カチオン電着塗料(I)におけるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネートは、カルボン酸などの中和剤及び脱イオン水によって水分散することによって樹脂エマルションとし、カチオン電着塗料(I)の調製に用いることができる。
【0127】
カチオン電着塗料(I)は、さらに必要に応じて、その他の添加剤、例えば、顔料、触媒、有機溶剤、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤などを通常使用されている配合量で含有することができる。なお、上記の顔料や触媒としては、例えば、チタン白、カーボンブラックなどの着色顔料;クレー、タルク、バリタなどの体質顔料;トリポリリン酸二水素アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどの防錆顔料;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドなどの有機錫化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジベンゾエート、ジブチル錫ジベンゾエートなどのジアルキル錫の脂肪族もしくは芳香族カルボン酸塩などの錫化合物が挙げられる。
【0128】
塗装方法
カチオン電着塗料(I)は、脱イオン水などで希釈して、浴固形分濃度が通常5〜40質量%、好ましくは8〜15質量%、pHが通常1.0〜9.0、好ましくは3.0〜6.0の範囲内となるように調整して使用することができる。
【0129】
本発明は、金属基材を化成処理液に浸漬して化成処理皮膜を形成し、水洗を施さないまま、カチオン電着塗料(I)を電着塗装して塗膜を形成する複層皮膜形成方法である。具体的には、図2に示すように、「湯洗(1)、(2)〜脱脂(3)〜水洗(工業用水水洗(4)、純水水洗(5))〜表面調整(6)〜化成処理(7)」に挙げる工程の後、水洗を施さずに、電着塗装を行う方法である。
【0130】
本方法によって、夾雑物として化成処理液が電着塗料に持ち込まれても、その電着塗料は、化成処理液の影響を受けずに仕上り性や防食性が十分な塗装物品を提供できる。
なお、化成処理後の水洗は、工業用水洗と上水水洗及び純水工程からなる少なくとも1種の水洗を施さずに電着塗装を行うこともでき、例えば、化成処理後、純水水洗のみを施し、電着塗装工程に搬送することもできる。
【0131】
前記カチオン電着塗料(I)は、該塗料を構成する樹脂固形分に対して、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を40〜90質量%、好ましくは55〜85質量%、さらに好ましくは60〜80質量%含有することが、化成処理液が夾雑物としてカチオン電着塗料(I)に持ち込まれたとしても、仕上り性や防食性に優れた塗装物品が得ることができる。
【0132】
なお本発明に従う金属基材の塗装は、カチオン電着塗料(I)を満たした電着塗料槽に浸漬して、50〜400V、好ましくは100〜370V、さらに好ましくは150〜350Vで、60〜600秒間、好ましくは120〜480秒間、さらに好ましくは150〜360秒間通電し、化成処理上に電着塗膜を形成することができる。
【0133】
カチオン電着塗料(I)における通電塗装は、通常0.1〜5m、好ましくは0.2〜3m、さらに好ましくは0.3〜1mの極間距離、及び1/8〜2/1、好ましくは1/5〜1/2の極比(陽極/陰極)で行うことができる。
【0134】
なお、カチオン電着塗料(I)の浴温としては、通常5〜45℃、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは20〜35℃の範囲内が適している。析出した皮膜は焼付け硬化させることができる。皮膜の焼き付け温度は、被塗物表面で100〜200℃、好ましくは120〜180℃の範囲内の温度が適しており、焼き付け時間は5〜90分間、好ましくは10〜50分間程度とすることができる。
【0135】
カチオン電着塗料(I)は、さらに必要に応じて、その他の添加剤、例えば、顔料、触媒、有機溶剤、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤などを通常使用されている配合量で含有することができる。なお、上記の顔料や触媒としては、例えば、チタン白、カーボンブラックなどの着色顔料;クレー、タルク、バリタなどの体質顔料;トリポリリン酸二水素アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどの防錆顔料;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドなどの有機錫化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジベンゾエート、ジブチル錫ジベンゾエートなどのジアルキル錫の脂肪族もしくは芳香族カルボン酸塩などの錫化合物が挙げられる。また、本発明の方法による複層皮膜は、防食性に優れる為、有機錫化合物を配合しなくても複層皮膜の硬化性を確保でき、防食性に優れることがある。
【0136】
カチオン電着塗料(I)は、電着塗装によって所望の基材表面に塗装することができる。カチオン電着塗装は、一般的には、脱イオン水等で希釈して固形分濃度が約5〜40質量%とし、さらにpHを5.5〜9.0の範囲内に調整した電着浴を、通常、浴温15〜35℃に調整し、前記の条件で金属基材を陰極として通電することによって行うことができる。電着塗装後、通常、余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗する。
【0137】
電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5〜40μm、好ましくは12〜30μmの範囲内とすることができる。また、塗膜の焼き付け乾燥は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で110℃〜200℃、好ましくは140〜180℃にて、時間としては10分間〜180分間、好ましくは20分間〜50分間、電着塗膜を加熱して行う。上記焼付け乾燥により塗膜を硬化させることができる。
【0138】
なお複層皮膜の皮膜(F1)においては、第1段目の皮膜形成剤(1)における金属化合物成分(M)のような特定の金属化合物成分を用いることによって、従来にない緻密な皮膜(F1)を形成し、例え皮膜形成剤(2)に夾雑物が混入したとしても、夾雑物の影響を受けることがなく防食性や仕上り性に優れる。
【0139】
一方、皮膜(F2)においては、皮膜(F1)を形成した金属基材を、カチオン性樹脂組成物を主成分とする皮膜形成剤(2)に浸漬し電着塗装することによって、緻密でかつ仕上り性や防食性に優れる皮膜(F2)を形成でき、腐食促進物質(例えば、O、Cl、Na)を遮断するという機能分担が皮膜構造中において付与できていることが防食性に優れる理由と考える。
【実施例】
【0140】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」である。
【0141】
ポリオキシアルキレングリコール類(a11)を用いたアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造例
製造例1A アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.1A
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)602部に、ビスフェノールA 178部、PEG−400(注1A)107部とジメチルベンジルアミン0.2部とを加え、170℃でエポキシ当量が800になるまで反応させた。
【0142】
次に、エチレングリコールモノブチルエーテル250部とジエタノールアミン113部を加え、120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80質量%のアミノ基含有エポキシ樹脂樹脂溶液No.1Aを得た。得られたアミノ基含有エポキシ樹脂は、アミン価60mgKOH/g、数平均分子量1,900、ポリオキシアルキレン鎖の割合(%)は10質量%であった。
【0143】
製造例2A〜3A アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.2A〜No.3A
表1Aの配合内容とする以外は、製造例1Aと同様にしてアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.2A〜No.3Aを得た。
【0144】
【表1A】

(注1A)PEG−400:三洋化成工業株式会社製、商品名、ポリエチレング
リコール、分子量400
ビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)を用いたアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造例
製造例4A アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.4A
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、jER828EL 536部、ビスフェノールA 85部、ニューポールBPE−60(注2A)279部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8部を加え、180℃でエポキシ当量が870になるまで反応させた。
【0145】
次に、エチレングリコールモノブチルエーテル250部とジエタノールアミンを100部を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.4Aを得た。
【0146】
得られたアミノ基含有エポキシ樹脂No.4Aは、アミン価54mgKOH/g、数平均分子量2,000、ポリオキシアルキレン鎖の割合(%)は15質量%であった。
【0147】
製造例5A〜6A アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.5A〜No.6A
表2Aの配合内容とする以外は、製造例4Aと同様にしてアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.5A〜No.6Aを得た。
【0148】
【表2A】

(注2A)
ニューポールBPE−60:三洋化成工業社製、商品名、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、水酸基価228mgKOH/g
(注3A)ニューポールBPE−180:三洋化成工業社製、商品名、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、水酸基価109mgKOH/g
ポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル類(a13)を用いたアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造例
製造例7A アミノ基含有エポキシ樹脂樹脂溶液No.7A
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL 423部に、デナコールEX821(注4A)209部、ビスフェノールA 250部とジメチルベンジルアミン0.2部とを加え、130℃でエポキシ当量900になるまで反応させた。
【0149】
次に、エチレングリコールモノブチルエーテル250部とジエタノールアミン118部を加え、120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80質量%のアミノ基含有エポキシ樹脂樹脂溶液No.7Aを得た。アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.7Aの樹脂固形分は、アミン価63mgKOH/g、数平均分子量1,800、ポリオキシアルキレン鎖の割合(%)は10質量%であった。
【0150】
製造例8A〜9A アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.8A〜No.9A
表3Aの配合内容とする以外は、製造例7Aと同様にしてアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.8A〜No.9Aを得た。
【0151】
【表3A】

(注4A)デナコールEX−821:ナガセケムテックス株式会社製、商品名、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量185
(注5A)デナコールEX−841:ナガセケムテックス株式会社製、商品名、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量372
ポリオキシアルキレンジアミン類(a14)を用いたアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造例
製造例10A アミノ基含有エポキシ樹脂樹脂溶液No.10A
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL 527部にビスフェノールA 169部とジメチルベンジルアミン0.2部とを加え、130℃で1時間反応させた後、ジェファーミンED−600(注6A)152を加えて同温度を保持し、エポキシ当量900になるまで反応させた。
【0152】
次に、エチレングリコールモノブチルエーテル250部とジエタノールアミン107部を加え、120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80質量%のアミノ基含有エポキシ樹脂樹脂溶液No.10Aを得た。アミノ基含有エポキシ樹脂No.10Aは、アミン価57mgKOH/g、数平均分子量2,000、ポリオキシアルキレン鎖の割合(%)は10質量%であった。
【0153】
製造例11A〜12A アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.11A〜No.12A
表4Aの配合内容とする以外は、製造例10Aと同様にしてアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.11A〜No.12Aを得た。
【0154】
【表4A】

(注6A)ジェファーミンED−600:ハンストマン株式会社製、商品名、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジアミン、分子量600
(注7A)ジェファーミンED−900:ハンツマン株式会社製、商品名、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジアミン、分子量900
イソシアネート類(a15)を用いたアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造例
製造例13A TDIプレポリマーの製造
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、コスモネートT−80(注8A)800部にMPG−081(注9A)200.0部とを加え、80℃でNCO当量870mg/eqになるまで反応させて、TDIプレポリマーを得た。
(注8A)コスモネートT−80:三井化学ポリウレタン株式会社製、商品名、トレリンジイソシアネート
(注9A)MPG−081:日本乳化剤株式会社、商品名、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、水酸基価81mgKOH/g
製造例14A
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER828EL 549部にビスフェノールA 217部とジメチルベンジルアミン0.2部とを加え、130℃でエポキシ当量780になるまで反応させた。
【0155】
次に、製造例13Aで得られたTDIプレポリマーを131部を加え、120℃でNCO価が1mgNCO/g以下になるまで反応させた。
【0156】
次に、エチレングリコールモノブチルエーテル250部とジエタノールアミン103部を加え、120℃で4時間反応、樹脂固形分80質量%のアミノ基含有エポキシ樹脂樹脂溶液No.13Aを得た。アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.13Aの樹脂固形分は、アミン価55mgKOH/g、数平均分子量2,000、ポリオキシアルキレン鎖の割合(%)は10質量%であった。
【0157】
製造例15A〜16A アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.14A〜No.15A
表5Aの配合内容とする以外は、製造例14Aと同様にしてアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.14A〜No.15Aを得た。
【0158】
【表5A】

硬化剤の製造
製造例17A 硬化剤No.1Aの製造
イソホロンジイソシアネート222部にメチルイソブチルケトン44部を加え、70℃に昇温した。その後、メチルエチルケトキシム174部を2時間かけて滴下して、この温度を保ちながら経時でサンプリングして赤外吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネートの吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分90%のブロック化ポリイソシアネート化合物の硬化剤No.1Aを得た。
【0159】
エマルションの製造
製造例18A エマルションNo.1Aの製造
上記製造例1Aにて得た樹脂固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂No.1Aを87.5部(固形分70.0部)、製造例17Aにて得た硬化剤No.1Aを33.3部(固形分30.0部)及び10%蟻酸10.7部を混合し、均一に攪拌した後、脱イオン水181部を強く攪拌しながら約15分かけて滴下し、固形分32.0%のエマルションNo.1Aを得た。
【0160】
製造例19A〜32A エマルションNo.2A〜No.15Aの製造
表6A及び表7Aの配合内容とする以外は、製造例18Aと同様にして、固形分32.0%のエマルションNo.2A〜No.15Aを得た。
【0161】
【表6A】

【0162】
【表7A】

製造例33A 顔料分散用樹脂の製造例
jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、商品名、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。
【0163】
次に、ジメチルエタノールアミン134部及び濃度90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂を得た。
【0164】
製造例34A 顔料分散ペーストNo.1Aの製造
製造例33Aで得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5.0部)、JR−600E(注10A)14.0部(固形分14.0部)、カーボンMA−7(注11A)0.3部(固形分0.3部)、ハイドライトPXN(注12A)9.7部(固形分9.7部)、ジオクチル錫オキサイド1.0部(固形分1.0部)及び脱イオン水23.3部を混合分散し、固形分55質量%の顔料分散ペーストNo.1Aを得た。
(注10A)JR−600E:テイカ株式会社製、商品名、チタン白
(注11A)カーボンMA−7:三菱化成株式会社製、商品名、カーボンブラック
(注12A)ハイドライトPXN:ジョージアカオリン株式会社製、商品名、カオリン
製造例35A 化成処理剤A(リン酸亜鉛系化成処理液)の製造
下記組成の化成液Aを調整し、実施例及び比較例の試験に供した。
【0165】
「化成処理剤Aの組成」
Zn2+ 1.5g/l
Ni2+ 0.5g/l
PO3− 13.5g/l
0.5g/l
NO3− 6.0g/l
NO2− 0.1g/l
Na 1.5g/l
製造例36A 化成処理剤B(ジルコニウム系化成処理液)の製造
下記組成の化成液Bを調整し、実施例及び比較例の試験に供した。
【0166】
「化成処理剤Bの組成」
ヘキサフルオロジルコニウム酸、硝酸アルミニウム及び硝酸カルシウムを用いて、金属元素としてジルコニウムが2000ppm、アルミニウムが100ppm、カルシウムが100ppmになるように配合し、フッ化水素酸とアンモニアを用いてpHが4となるように調整した。
製造例37A
製造例18Aで得た固形分32%のエマルションNo.1Aを312.5部(固形分100.0部)、製造例34Aで得た55%顔料分散ペーストNo.1Aを54.5部(固形分30.0部)及び脱イオン水283.0部を混合して固形分20%の電着塗料No.1Aとした。
製造例38A〜46A
下記表8Aに示す配合とする以外は、製造例37Aと同様にして電着塗料No.2A〜No.10Aを得た。
【0167】
【表8A】

製造例47A
固形分32%のエマルションNo.3Aを312.5部(固形分100.0部)、製造例34Aで得た55%顔料分散ペーストを54.5部(固形分30.0部)及び脱イオン水283.0部を混合して固形分20%の電着塗料No.11Aとした。
製造例48A〜51A
下記表9Aに示す配合とする以外は、製造例47Aと同様にして電着塗料No.12A〜No.15Aを得た。
【0168】
【表9A】

(注13A)夾雑イオン混入性:製造例35Aで得た化成処理液を亜鉛金属濃度が0.03g/lとなるように各々の電着塗料へ添加した。
【0169】
上記の電着塗料の浴を28℃に調整し、リン酸亜鉛処理を施した冷延鋼板(パルボンド3020L−SPC)を陰極として浸漬して、乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けして塗面の仕上り性を評価した。
【0170】
○は、塗面良好であった。
【0171】
△は、ツヤムラ、ピンホール、ユズ肌のいづれかの塗膜欠陥が認められる。
【0172】
×は、ツヤムラ、ピンホール、ユズ肌のいづれかの塗膜欠陥が著しい。
[化成処理後の「水洗なし」で電着塗装を施す工程]
実施例1A
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.1Aを得た。
【0173】
工程1(前処理):冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製、アルカリ脱脂剤)を43℃に調整し、120秒間浸漬処理した。
【0174】
プレパレン4040N(日本パーカライジング(株)製表面調整剤)の0.15%水溶液に、常温で30秒間浸漬処理することによって表面調整した。
【0175】
水道水によって30秒間スプレー水洗した。製造例35Aで得られた「化成処理剤A」を用いて43℃に調整して120秒間浸漬して処理した。その後、水洗(工業用水水洗と上水水洗及び純水水洗の全てを行わない)を施すことなく、電着塗装工程に搬送した。
【0176】
工程2(電着塗装):28℃に調整した電着塗料No.1Aの浴に浸漬して、250Vで180秒間(30秒にて昇電圧)にて電着塗装を行った。工程1と工程2の操作を繰り返し、電着塗料中のZn2+の濃度をICP分析法(注14A)によって測定して約0.03g/lとなった時点で、工程3へ移行した。
【0177】
工程3(焼付け乾燥):電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けし、乾燥膜厚20μmを得た。
【0178】
(注14A)ICP分析法:島津製作所製、型式「ICPS−8000」を用いてICP分析法(誘導プラズマ発光分光分析法)により電着塗料中の金属元素濃度を求めた。
【0179】
実施例2A〜10A
表10Aに示す電着塗料及び塗装条件とする以外は、実施例1Aと同様にして、試験板No.2A〜No.10Aを得た。
【0180】
実施例11A
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.11Aを得た。
【0181】
工程1(前処理):冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製、アルカリ脱脂剤)を43℃に調整し、120秒間浸漬処理した。
【0182】
プレパレン4040N(日本パーカライジング(株)製表面調整剤)の0.15%水溶液に、常温で30秒間浸漬処理することによって表面調整した。次いで、水道水によって30秒間スプレー水洗した。
【0183】
製造例36Aで得られた「化成処理剤B」を40℃に調整して120秒間浸漬して処理した。その後、水洗(工業用水水洗と上水水洗及び純水水洗の全てを行わない)を施すことなく、電着塗装工程に搬送した。
【0184】
工程2(電着塗装):28℃に調整した電着塗料No.1Aの浴に浸漬して、250Vで180秒間(30秒にて昇電圧)にて電着塗装を行った。工程1と工程2の操作を繰り返し、電着塗料中のジルコニウム金属濃度をICP分析法(注14A参照)によって測定して約0.03g/lとなった時点で、工程3へ移行した。
工程3(焼付け乾燥):電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けし、乾燥膜厚20μmを得た。
【0185】
実施例12A
表10Aに示す電着塗料及び塗装条件とする以外は、実施例11Aと同様にして、試験板No.12Aを得た。
【0186】
【表10A】

比較例1A
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.13Aを得た。
【0187】
工程1(前処理):冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製、アルカリ脱脂剤)を43℃に調整し、120秒間浸漬処理した。
【0188】
プレパレン4040N(日本パーカライジング(株)製表面調整剤)の0.15%水溶液に、常温で30秒間浸漬処理することによって表面調整した。
【0189】
上水によって30秒間スプレー水洗した。製造例35Aで得られた化成処理剤Aを43℃に調整して120秒間浸漬して処理した。
【0190】
その後、水洗(工業用水水洗と上水水洗及び純水水洗の全てを行わない)を施すことなく、電着塗装工程に搬送した。
【0191】
工程2(電着塗装):28℃に調整した電着塗料No.11Aの浴に浸漬して、250Vで180秒間(30秒にて昇電圧)にて電着塗装を行った。工程1と工程2の操作を繰り返して電着塗料中の亜鉛金属濃度をICP分析法(注14A)によって測定して約0.03g/lとなった時点で、工程3へ移行した。
【0192】
工程3(焼付け乾燥):得られた塗膜を水洗し、電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けし、乾燥膜厚20μmを得た。
【0193】
比較例2A〜5A
表11Aに示すような電着塗料及び工程とする以外は、比較例6Aと同様にして、試験板No.14A〜No.17Aを得た。試験結果も併せて示す。
比較例6A
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.18Aを得た。
【0194】
工程1(前処理):冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製、アルカリ脱脂剤)を43℃に調整し、120秒間浸漬処理した。
【0195】
プレパレン4040N(日本パーカライジング(株)製表面調整剤)の0.15%水溶液に、常温で30秒間浸漬処理することによって表面調整した。次いで、水道水によって30秒間スプレー水洗した。
【0196】
製造例36Aで得られた「化成処理剤B」を40℃に調整して120秒間浸漬して処理した。その後、水洗(工業用水水洗と上水水洗及び純水水洗の全てを行わない)を施すことなく、電着塗装工程に搬送した。
【0197】
工程2(電着塗装):28℃に調整した電着塗料No.11Aの浴に浸漬して、250Vで180秒間(30秒にて昇電圧)にて電着塗装を行った。工程1と工程2の操作を繰り返し、電着塗料中のジルコニウム金属濃度をICP分析法(注14A参照)によって測定して約0.03g/lとなった時点で、工程3へ移行した。
【0198】
工程3(焼付け乾燥):電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けし、乾燥膜厚20μmを得た。
【0199】
比較例7A
表11Aに示す電着塗料及び塗装条件とする以外は、比較例6Aと同様にして、試験板No.19Aを得た。
【0200】
【表11A】

[化成処理後の「水洗を行い」電着塗装を施す工程]
比較例8A
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.20を得た。
【0201】
工程1(前処理):冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製、アルカリ脱脂剤)を43℃に調整し、120秒間浸漬処理した。
【0202】
プレパレン4040N(日本パーカライジング(株)製表面調整剤)の0.15%水溶液に、常温で30秒間浸漬処理することによって表面調整した。
【0203】
水道水によって30秒間スプレー水洗した。製造例35Aで得られた化成処理剤Aを用いて43℃に調整して120秒間浸漬して処理した。
その後、水洗(工業用水水洗と上水水洗及び純水水洗)を施し、電着塗装工程に搬送した。
【0204】
工程2(電着塗装):28℃に調整した電着塗料No.11Aの浴に浸漬し、250Vで180秒間(30秒にて昇電圧)にて電着塗装を行った。そのときの電着塗料中の金属イオン濃度をICP分析法で測定したが、亜鉛金属濃度が検出できなかった。
【0205】
工程3(焼付け乾燥):得られた塗膜を水洗し、電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けし、乾燥膜厚20μmを得た。
【0206】
比較例9A〜17A
表12Aに示すような電着塗料及び工程とする以外は、比較例11Aと同様にして、試験板No.21A〜No.29Aを得た。
比較例18A
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.30Aを得た。
【0207】
工程1(前処理):冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製、アルカリ脱脂剤)を43℃に調整し、120秒間浸漬処理した。
【0208】
プレパレン4040N(日本パーカライジング(株)製表面調整剤)の0.15%水溶液に、常温で30秒間浸漬処理することによって表面調整した。次いで、水道水によって30秒間スプレー水洗した。
【0209】
製造例36Aで得られた「化成処理剤B」を40℃に調整して120秒間浸漬して処理した。その後、水洗を施して電着塗装工程に搬送した。
【0210】
工程2(電着塗装):28℃に調整した電着塗料No.1Aの浴に浸漬して、250Vで180秒間(30秒にて昇電圧)にて電着塗装を行った。工程1と工程2の操作を繰り返し、電着塗料中のジルコニウム濃度をICP分析法(注14A参照)によって測定して約0.03g/lとなった時点で、工程3へ移行した。
工程3(焼付け乾燥):電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けし、乾燥膜厚20μmを得た。
【0211】
比較例19A
表12Aに示す電着塗料及び塗装条件とする以外は、比較例18Aと同様にして、試験板No.31Aを得た。
【0212】
【表12A】

(注15A)防食性: 試験板の素地に達するように電着塗膜にナイフでクロスカット傷を入れ、JISZ−2371に準じて480時間耐塩水噴霧試験を行った。評価はナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
【0213】
◎:錆、フクレの最大幅がカット部より2mm未満(片側)。
【0214】
○:錆、フクレの最大幅がカット部より2mm以上で且つ3mm未満(片側)。
【0215】
△:錆、フクレの最大幅がカット部より3mm以上で且つ4mm未満(片側)。
【0216】
×:錆、フクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)。
(注16A)耐ばくろ性:試験板に、スプレー塗装方法で、WP−300(関西ペイント株式会社製、商品名、水性中塗り塗料)を硬化膜厚が25μmとなるように塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃×30分焼き付けを行なった。さらに、その中塗塗膜上に、スプレー塗装方法で、ネオアミラック6000(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗り塗料)を硬化膜厚が35μmとなるように塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃×30分焼き付けを行ない、暴露試験板を作製した。
【0217】
得られた暴露試験板上の塗膜に、素地に達するようにナイフでクロスカットキズを入れ、千葉県千倉町で、水平にて1年間暴露した後、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
【0218】
◎:錆またはフクレの最大幅がカット部より2mm未満(片側)。
【0219】
○:錆またはフクレの最大幅がカット部より2mm以上で且つ3mm未満(片側)。
【0220】
△:錆またはフクレの最大幅がカット部より3mm以上で且つ4mm未満(片側)。
【0221】
×:錆またはフクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)。
(注17A)仕上り性:
試験板の塗面をサーフテスト301(株式会社ミツトヨ製、商品名、表面粗度計)を用いて、表面粗度値(Ra)をカットオフ0.8mmにて測定し、以下の基準で評価した。
【0222】
○:表面粗度値(Ra)が0.2未満。
【0223】
△:表面粗度値(Ra)が0.2以上でかつ0.3未満。
【0224】
×:表面粗度値(Ra)が0.3以上。
【0225】

製造例1B アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.1B
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、jER1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)708部にエチレングリコールモノブチルエーテル250部を加え、ジエタノールアミン83部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物209部を加え、110℃で4時間反応させ、樹脂固形分80質量%のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.1Bを得た。該アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.1Bの樹脂固形分は、アミン価130mgKOH/g、数平均分子量1,300であった。
【0226】
製造例2B エマルションNo.1Bの製造
上記製造例1Bにて得た80%のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.1Bを125部(固形分100部)、10%蟻酸16.4部を混合し、均一に攪拌した後、脱イオン水860部を強く攪拌しながら約15分かけて滴下し、固形分10%のエマルションNo.1Bを得た。
【0227】
製造例3B 皮膜形成剤No.1Bの製造
フッ化ジルコニウムアンモニウム2.7部に脱イオン水1000部を加えて、次いで固形分10%のエマルションNo.1Bを1000部(固形分100部)を加え、皮膜形成剤No.1Bを得た。皮膜形成剤No.1BのpHは、6.5であった。
【0228】
製造例4B〜15B 皮膜形成剤No.2B〜No.13Bの製造
表1Bの配合内容及び皮膜形成剤のpHとする以外は、製造例3Bと同様に操作によって、皮膜形成剤No.2B〜No.13Bを得た。
【0229】
【表1B】

(注1B)K−90W:固形分20%のポリビニルピロリドン溶液、商品名、日本触媒株式会社製
(注2B)K−17C:固形分20%のポリビニルアルコール溶液、商品名、電気化学工業株式会社製
製造例16B アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.2B
jER1002(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)845部に、エチレングリコールモノブチルエーテル250部、ジエタノールアミンを103部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物52部を加え120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.2Bを得た。該アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.2Bの樹脂固形分は、樹脂アミン価が77mgKOH/g、数平均分子量が1,600であった。
【0230】
製造例17B アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.3B
PP−400(三洋化成株式会社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400部にε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、未反応のε−カプロラクトンが実質的になくなったことを確認した時点で冷却し、変性剤を得た。
【0231】
別に、jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)1000部にビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が750になるまで反応させた。
【0232】
その中にノニルフェノール120部を加え、130℃でエポキシ当量が1000になるまで反応させた。次いで変性剤を200部、ジエタノールアミンを95部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65部加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、樹脂固形分80%のノニルフェノールが付加されたポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.3Bを得た。該アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.3Bの樹脂固形分は、樹脂アミン価が40mgKOH/g、数平均分子量が2,000であった。
【0233】
製造例18B 硬化剤No.1Bの製造
イソホロンジイソシアネート222部にメチルイソブチルケトン44部を加え、70℃に昇温した。その後、メチルエチルケトキシム174部を2時間かけて滴下して、この温度を保ちながら経時でサンプリングして赤外吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネートの吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分90%のブロック化ポリイソシアネート化合物の硬化剤No.1Bを得た。
【0234】
製造例19B エマルションNo.2Bの製造
上記製造例14Bにて得た樹脂固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂No.2Bを87.5部(固形分70.0部)、製造例16Bにて得た硬化剤No.1Bを33.3部(固形分30.0部)及び10%蟻酸10.7部を混合し、均一に攪拌した後、脱イオン水181部を強く攪拌しながら約15分かけて滴下し、固形分32.0%のエマルションNo.2Bを得た。
【0235】
製造例20B エマルションNo.3Bの製造
上記製造例15Bにて得た樹脂固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂No.3Bを用い、上記製造例17Bと同様にして、固形分32.0%のエマルションNo.3Bを得た。
【0236】
製造例21B 顔料分散用樹脂の製造例
jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、商品名、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。
次に、ジメチルエタノールアミン134部及び濃度90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂を得た。
【0237】
製造例22B 顔料分散ペーストNo.1Bの製造
製造例21Bで得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5.0部)、JR−600E(注3B)14.0部(固形分14.0部)、カーボンMA−7(注4B)0.3部(固形分0.3部)、ハイドライトPXN(注5B)9.7部(固形分9.7部)、ジオクチル錫オキサイド1.0部(固形分1.0部)及び脱イオン水23.3部を混合分散し、固形分55質量%の顔料分散ペーストNo.1Bを得た。
【0238】
製造例23B 顔料分散ペーストNo.2Bの製造
表2Bの配合内容とする以外は、製造例22Bと同様にして、顔料分散ペーストNo.2Bを得た。
【0239】
【表2B】

(注3B)JR−600E:テイカ株式会社製、商品名、チタン白
(注4B)カーボンMA−7:三菱化成株式会社製、商品名、カーボンブラック
(注5B)ハイドライトPXN:ジョージアカオリン株式会社製、商品名、カオリン
製造例24B
固形分32%のエマルションNo.2Bを312.5部(固形分100.0部)、製造例21Bで得た55%顔料分散ペーストNo.1Bを54.5部(固形分30.0部)及び脱イオン水283.0部を混合して固形分20%の浴とし、皮膜形成剤No.14Bを得た。
【0240】
製造例25B〜26B
下記表3Bに示す配合とする以外は、製造例22Bと同様にして皮膜形成剤No.15B〜No.16Bを得た。
【0241】
【表3B】

第1槽目に浸漬し通電により皮膜形成する場合
実施例1B
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.1Bを得た。
【0242】
工程1:冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗して試験板とした。皮膜形成剤No.1Bの浴を40℃に調整し、試験板を陰極(極間距離15cm)として浸漬し、5Vで60秒間通電した。
【0243】
工程2:工程1によって得られた試験板を引き上げ、水洗を施すことなく、28℃に調整した皮膜形成剤No.14Bの浴に浸漬して、30秒にて昇圧し260Vで120秒間通電した。
【0244】
工程3:得られた皮膜を水洗し、電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けした。
【0245】
実施例2B〜18B
表4B及び表5Bに示す皮膜形成剤及び塗装条件を使用する以外は、実施例1Bと同様にして、試験板No.2B〜No.18Bを得た。
実施例19B
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.19Bを得た。
【0246】
工程1:冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗して試験板とした。皮膜形成剤No.1Bの浴を40℃に調整し、試験板を陰極(極間距離15cm)として浸漬し、5Vで60秒間通電した。得られた試験板を引き上げて水洗を施すことなく、35℃で10分間のエアブローを施した。
【0247】
工程2:次いで28℃に調整した皮膜形成剤No.14Bの浴に浸漬して、30秒にて昇圧し260Vで120秒間通電した。
【0248】
工程3:得られた皮膜を水洗し、電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けした。
【0249】
【表4B】

【0250】
【表5B】

第1槽目に浸漬し通電なしで皮膜形成する場合
実施例20B
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.20Bを得た。
【0251】
工程1:冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%の「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗し、さらに40℃に調整した皮膜形成剤No.1Bの浴に120秒間浸漬した。
【0252】
工程2:工程1によって得られた試験板を引き上げて水洗を施すことなく、28℃に調整した皮膜形成剤No.14Bの浴に浸漬して、260V(30秒にて昇圧)で150秒間通電した。
【0253】
工程3:得られた皮膜を水洗し、電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けた。
【0254】
実施例21B〜26B
表6Bに示す皮膜形成剤及び塗装条件を使用する以外は、実施例20Bと同様にして、試験板No.21B〜No.26Bを得た。
【0255】
【表6B】

比較例1B
冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%の「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗し、試験板とした。
【0256】
次いで、上記試験板を陰極(極間距離15cm)として40℃に調整した皮膜形成剤No.1Bの浴に浸漬し、5V(30秒にて昇圧)で120秒間通電した。次いで、得られた皮膜を電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けして、乾燥膜厚約1μmの試験板No.27Bを得た。
【0257】
比較例2B
表7Bの工程内容とする以外は、比較例1Bと同様にして、試験板No.28を得た。
【0258】
比較例3B
冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%の「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗し、試験板とした。
【0259】
次いで、上記試験板を陰極(極間距離15cm)として40℃に調整した皮膜形成剤No.1Bの浴に120秒間浸漬し、得られた皮膜を電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けして、乾燥膜厚約1μmの試験板No.29Bを得た。
【0260】
比較例4B
表7Bの工程内容とする以外は、比較例3Bと同様にして、試験板No.30Bを得た。
【0261】
比較例5B
冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%の「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗し、試験板とした。
【0262】
次いで、上記試験板を陰極(極間距離15cm)として、28℃に調整した皮膜形成剤No.14Bの浴に浸漬し、260V(30秒にて昇圧)で150秒間通電して皮膜を得た。次いで、得られた皮膜を電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けして、乾燥膜厚20μmの試験板No.31Bを得た。
【0263】
比較例6B、7B
表7Bの工程内容とする以外は、比較例5Bと同様にして、試験板No.32B、33Bを得た。
【0264】
比較例8B
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.34Bを得た。
【0265】
工程1:冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%の「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗し、試験板とした。
第1槽目の皮膜形成剤として、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、リン酸塩処理)を用い、40℃、120秒浸漬した。
【0266】
工程2:工程1によって得られた試験板を、28℃に調整した皮膜形成剤No.14Bの浴に浸漬して、30秒にて昇圧し260Vで150秒間通電した。
【0267】
工程3:得られた皮膜を水洗し、電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けした。
【0268】
比較例9B
表7Bの工程内容とする以外は、比較例8Bと同様にして、試験板No.35Bを得た。
【0269】
比較例10B
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.36Bを得た。
【0270】
工程1:冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%の「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗し、試験板とした。次いで、上記試験板を陰極(極間距離15cm)として40℃に調整した皮膜形成剤No.1Bの浴に浸漬し、5V(30秒にて昇圧)で60秒間通電した。
【0271】
工程1によって得られた試験板に、水洗を施した。
【0272】
工程2:28℃に調整した皮膜形成剤No.14Bの浴に浸漬して、30秒にて昇圧し260Vで120秒間通電した。
【0273】
工程3:得られた皮膜を水洗し、電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けした。
【0274】
比較例11B
表7Bの工程内容とする以外は、比較例10Bと同様にして、試験板No.37Bを得た。
【0275】
【表7B】

(注6B) 防食性: 試験板の素地に達するように電着塗膜にナイフでクロスカット傷を入れ、JISZ−2371に準じて480時間耐塩水噴霧試験を行った。評価はナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
【0276】
◎:錆、フクレの最大幅がカット部より2mm未満(片側)。
【0277】
○:錆、フクレの最大幅がカット部より2mm以上で且つ3mm未満(片側)。
【0278】
△:錆、フクレの最大幅がカット部より3mm以上で且つ4mm未満(片側)。
【0279】
×:錆、フクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)。
(注7B) 耐ばくろ性:
試験板に、スプレー塗装方法で、WP−300(関西ペイント株式会社製、商品名、水性中塗り塗料)を硬化膜厚が25μmとなるように塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃×30分焼き付けを行なった。さらに、その中塗塗膜上に、スプレー塗装方法で、ネオアミラック6000(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗り塗料)を硬化膜厚が35μmとなるように塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃×30分焼き付けを行ない、暴露試験板を作製した。
【0280】
得られた暴露試験板上の塗膜に、素地に達するようにナイフでクロスカットキズを入れ、千葉県千倉町で、水平にて1年間暴露した後、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
【0281】
◎:錆またはフクレの最大幅がカット部より2mm未満(片側)。
【0282】
○:錆またはフクレの最大幅がカット部より2mm以上で且つ3mm未満(片側)。
【0283】
△:錆またはフクレの最大幅がカット部より3mm以上で且つ4mm未満(片側)。
【0284】
×:錆またはフクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)。
(注8B) 仕上り性:
試験板の塗面をサーフテスト301(株式会社ミツトヨ製、商品名、表面粗度計)を用いて、表面粗度値(Ra)をカットオフ0.8mmにて測定し、以下の基準で評価した。
【0285】
◎:表面粗度値(Ra)が0.2未満。
【0286】
〇:表面粗度値(Ra)が0.2以上でかつ0.25未満。
【0287】
△:表面粗度値(Ra)が0.25以上でかつ0.3未満。
【0288】
×:表面粗度値(Ra)が0.3以上。
【0289】
実施例1C
以下の「工程1〜工程3」によって、試験板No.1Cを得た。
【0290】
工程1:冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を2質量%「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製)で40℃、2分間浸漬処理した後、水道水で30秒間水洗して試験板とした。皮膜形成剤No.1Bの浴を40℃に調整し、試験板を陰極(極間距離15cm)として浸漬し、5Vで60秒間通電した。
【0291】
工程2(電着塗装):28℃に調整したカチオン電着塗料No.1Aの浴に浸漬して、250Vで180秒間(30秒にて昇電圧)にてカチオン電着塗装を行った。工程1と工程2の操作を繰り返し、電着塗料中のZn2+の濃度をICP分析法(注14A)によって測定して約0.03g/lとなった時点で、工程3へ移行した。
【0292】
工程3(焼付け乾燥):電気乾燥機によって170℃で20分間焼付けし、乾燥膜厚20μmを得た。
【0293】
実施例2C〜10C
表1Cに示す電着塗料及び塗装条件とする以外は、実施例1Cと同様にして、試験板No.2C〜No.10Cを得た。
【0294】
【表1C】

【図面の簡単な説明】
【0295】
【図1】図1は、従来からの電着塗装工程を示した概略図である。
【図2】図2は、本発明に関する皮膜形成工程を示した概略図である。
【図3】図3は、本発明に関する皮膜形成方法を用いた塗装ラインのイメージ図である。
【符号の説明】
【0296】
1.脱脂工程を示す
2.表面調整工程と化成処理工程を示す
3.水洗工程を示す
4.電着塗料を収納する電着塗装設備を示す
5.UF水洗工程を示す。
6.純水水洗工程を示す。
7.焼付乾燥工程を示す。
8.皮膜形成剤槽(1槽目)による皮膜形成剤(1)の工程を示す。
9.皮膜形成剤槽(2槽目)による皮膜形成剤(2)の工程を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、金属基材に化成処理皮膜(F1)と電着塗装皮膜(F2)を含む複層皮膜を形成する方法
工程1:金属基材を皮膜形成剤(1)である化成処理液に浸漬して化成処理皮膜(F1)を形成する工程、
工程2:水洗を施すことなく、カチオン電着塗料(I)である皮膜形成剤(2)を用いて金属基材を電着塗装して電着塗装皮膜(F2)を形成する工程
を含む複層皮膜の形成方法。
【請求項2】
前記皮膜形成剤(1)が、ジルコニウム、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、鉄、ニッケル、マンガン、ガリウム、銀、ランタノイド金属から選ばれる少なくとも1種の金属(m)の化合物からなる少なくとも1種の金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm、並びに水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)0.1〜40質量%とを含む、請求項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【請求項3】
皮膜形成剤(2)が、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネートを含み、カチオン性樹脂組成物とブロック化ポリイソシアネートの合計固形分質量を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)40〜90質量%、好ましくは50〜90質量%とブロック化ポリイソシアネート10〜60質量%、好ましくは10〜50質量%を含む、請求項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【請求項4】
カチオン電着塗料(I)が、カチオン電着塗料を構成する樹脂成分の固形分合計を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を40〜80質量%含み、かつアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、該樹脂(A)の樹脂固形分に基づいて、式(1)
【化1】

(式(1)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
で表されるポリオキシアルキレン鎖を3〜50質量%含有する、請求項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【請求項5】
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(2)で表されるポリオキシアルキレン類(a11)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である請求項4に記載の複層皮膜形成方法。
【化2】

(式(2)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
【請求項6】
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(3)で表されるビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である請求項4に記載の複層皮膜形成方法。
【化3】

(式(3)中、b個及びb1個の繰り返し単位中の各R、Rは同一又は相異なってもよくR、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、a、a1は同一又は相異なってもよい1〜8の整数、b、b1は同一又は相異なってもよい1〜50の整数を表す)
【請求項7】
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(4)で表されるポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル類(a13)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である請求項4に記載の複層皮膜形成方法。
【化4】

(式(4)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8の整数、bは1〜50の整数を表す)
【請求項8】
アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(5)で表されるポリオキシアルキレンジアミン類(a14)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である請求項4に記載の複層皮膜形成方法。
【化5】

(式(5)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、aは1〜8の整数、bは1〜50の整数を表す)
【請求項9】
アミノ含有変性エポキシ樹脂(A)が、下記式(6)で表されるイソシアネート類(a15)を反応成分の一部として、反応させて得られる樹脂である請求項4に記載の複層皮膜形成方法。
【化6】

(式(6)中、b個の繰り返し単位中の各Rは同一又は相異なってもよくRは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、Aはアルキレン基またはフェニレン基を表し、aは1〜8、bは1〜50の整数を表す)
【請求項10】
カチオン電着塗料(I)が、カチオン電着塗料を構成する樹脂成分の固形分合計を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を40〜80質量%含み、かつアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、該樹脂(A)の樹脂固形分に基づいて、式(7)
【化7】

(式(7)中、cは1〜50の整数を表す)
で表されるポリグリセリン鎖(a16)を3〜50質量%含有する、請求項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【請求項11】
カチオン電着塗料(I)が、カチオン電着塗料を構成する樹脂成分の固形分合計を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)を40〜80質量%含み、かつアミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、該樹脂(A)の樹脂固形分に基づいて、式(8)
【化8】

(式(8)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、dは1〜50の整数を表す)
で表されるポリエチレンイミン鎖(a17)を3〜50質量%含有する、請求項1に記載の複層皮膜の形成方法。
【請求項12】
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)が、ポリオキシアルキレン類(a11)とビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物(a12)とポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル(a13)とポリオキシアルキレンジアミン類(a14)とイソシアネート類(a15)とから選ばれる少なくとも1種の化合物(a1)と、エポキシ当量170〜500のエポキシ樹脂(a2)とビスフェノール類(a3)を、
化合物(a1)とエポキシ樹脂(a2)とビスフェノール類(a3)の固形分合計質量を基準にして、化合物(a1)が3〜70質量%、エポキシ樹脂(a2)が10〜80質量%、ビスフェノール類(a3)が10〜70質量%の割合で反応させて変性エポキシ樹脂(a4)を得た後、該変性エポキシ樹脂(a4)にアミン化合物(a5)を反応させてなる樹脂である請求項4に記載の複層皮膜形成方法。
【請求項13】
皮膜形成剤槽(1)と皮膜形成剤槽(2)とを連続して具備する皮膜形成設備において、皮膜形成剤(1)を満たした第1段目の皮膜形成剤槽(1)に金属基材を浸漬して通電により金属基材上に皮膜(F1)を形成し、
次いで、水洗を施さないまま、該皮膜(F1)を形成した金属基材を、皮膜形成剤(2)を満たした第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して皮膜形成剤槽(2)を電着塗装することを特徴とする請求項1に記載の複層皮膜形成方法;
皮膜形成剤(1):ジルコニウム、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属から選ばれる少なくとも1種の金属(m)の化合物からなる金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm、並びにアミノ基含有エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールからなる群から選ばれる水分散性又は水溶性の樹脂組成物(B)0.1〜40質量%とを含む皮膜形成剤;
皮膜形成剤(2):カチオン性樹脂組成物とブロック化ポリイソシアネートの合計固形分質量を基準にして、カチオン性樹脂組成物50〜90質量%とブロック化ポリイソシアネート10〜50質量%を含む。
【請求項14】
カチオン電着塗料(I)が、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネートの合計固形分質量を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)40〜80質量%とブロック化ポリイソシアネート20〜60質量%を含む請求項1に記載の複層皮膜形成方法。
【請求項15】
皮膜形成剤(1)における金属化合物成分(M)が、ジルコニウム化合物を必須成分として含有するものである請求項13に記載の複層皮膜形成方法。
【請求項16】
皮膜形成剤槽(1)のpHが4.5〜8.0の範囲とすることを特徴とする請求項13に記載の複層皮膜形成方法。
【請求項17】
皮膜形成剤槽(1)と皮膜形成剤槽(2)とを連続して具備する皮膜形成設備において、皮膜形成剤(1)を満たした第1段目の皮膜形成剤槽(1)に金属基材を浸漬して、通電を行わずに又は通電を行って、金属基材上に皮膜(F1)を形成し、
次いで、水洗を施さないままセッティングを施し、該皮膜(F1)を形成した金属基材を、皮膜形成剤(2)を満たした第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して電着塗装することを特徴とする請求項1に記載の複層皮膜形成方法。
【請求項18】
金属基材を、第1段目の皮膜形成剤槽(1)に浸漬して1〜50Vの電圧(V)で10〜360秒間通電した後、第2段目の皮膜形成剤槽(2)の電着塗装を50〜400Vの電圧(V)で60〜600秒間の条件で行うことを特徴とする請求項17に記載の複層皮膜形成方法。
【請求項19】
金属基材において、第1段目の皮膜形成剤槽(1)に10〜360秒間通電せずに浸漬した後、次いで、第2段目の皮膜形成剤槽(2)に浸漬して50〜400Vの電圧(V)で60〜600秒間電着塗装することを特徴とする請求項17に記載の複層皮膜形成方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法を用いた塗装物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−149974(P2009−149974A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265309(P2008−265309)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】