説明

複数の基材を処理するための広域高周波プラズマ装置

【課題】複数の半導体基盤に同時にアッシングまたはエッチング処理を行うのに最適な広域高周波プラズマ供給源を提供する。
【解決手段】高周波プラズマ処理室のアンテナアレイ30は、電極アレイ36と、各電極チューブと個別に同心円状に配置された誘電体チューブからなる誘電体チューブアレイ36と、気密シール40とを有している。各電極チューブの外面と、当該電極チューブに対応する誘電体チューブの内面とによって、大気圧の空洞が形成される。気密シール40が各誘電体チューブと処理室との間にあることによって、処理室の内部を真空圧または低圧にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関連し、特に、複数の半導体基板に同時にアッシングまたはエッチング処理を行うのに最適な広域高周波プラズマ供給源に関する。
【背景技術】
【0002】
アッシングおよびエッチングには、高周波(RF)またはマイクロ波が一般に利用されている。誘導高周波プラズマ処理器において、金属の励磁器−すなわち電極(一般にコイル状)−を用いてプラズマを放電することによって、RFによる誘導が起こる。一般に、容量放電では、ウェーハホルダは対向電極として機能し、同時に、基板を一定温度に保つための加熱/冷却テーブルとして機能する。高周波エネルギーが結合可能な、ある種の誘電体窓によって、金属励磁器はプラズマ放電から物理的に離される。金属励磁器にプラズマが衝突し、励磁器から金属が放出されると、その金属がウェーハ上に沈積され、ウェーハの欠陥を招いてしまう。また、励磁器の寿命も短くなる。これを防ぐために、金属励磁器をプラズマ放電から離すことは重要である。本文書内で用いられている「ウェーハ」とは、シリコンウェーハ、ガラスパネル、誘電体、金属フィルム、またはその他の半導体材料等のあらゆる基板材料を示しており、これらに限定されるものではない。
【0003】
13.56MHzのRFは、主にプラズマ反応器において使用される。この周波数が、ISM(産業的、科学的、医学的)標準周波数であるためである。政府によって定められた放射線の制限は、特に通信帯域において、非ISM周波数に比べれば厳密ではない。ISM標準に基づいて、多くの機器が13.56MHzで使用可能であるため、この周波数の一般的な使用がさらに促進されている。他のISM標準周波数は、27.12MHzおよび40.68MHzであり、これらはISM標準周波数である13.56MHzの第二次および第三次の高調波である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体産業において、スループットはしばしば大変な重要事項である。大量生産かつ低利益の競合領域において、スループットを漸進的に向上させていくことが、競争に勝つために必要な地位をもたらす。製造費を減らし、スループットを増やすために、1つ以上のウェーハを同時に処理することが有効である。加工処理を行う装置の維持費が削減できるだけでなく、プラズマを発生させる費用も複数のウェーハによって償却できる。したがって、ウェーハ1枚当たりの製造費を減らすことが可能にある。複数のウェーハを同時にRF処理器によって加工処理する際には困難な点が一つあり、それは機械上の大きなトラブルが生じることである。例えば、複数のウェーハが同じ真空室内で加工処理されていて、1つのRF励磁器を使用している場合、励磁範囲は直径およそ70cmである。この場合、真空を作るために、大型の、厚く、かつ重い誘電体が必要である。3つのウェーハ用の真空室では、1つの石英板は厚さおよそ8cmであり、重さ90kg以上であるため、非常に高価である。さらに、RF反応器において加工処理される面積を単純に増加させた場合、プラズマの均一性が通常問題になる。
【0005】
したがって、複数のウェーハを同時に加工処理する、改良された装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に開示されているのは、プラズマを発生するための部品、装置およびプラズマを発生させる方法である。一実施形態において、金属電極アレイと、各電極チューブに個別に同心円状に配置され、各電極チューブの外表面と、当該電極に対応する誘電体チューブの内表面との間に大気圧の空洞を作る誘電体チューブからなる誘電体チューブアレイと、プラズマ処理室と各誘電体チューブとの間にあり、プラズマ処理室の内部を真空圧または低圧にさせる気密シールとを備えている。
【0007】
他の実施形態では、1つの真空処理室において1つ以上の基板を同時に処理するプラズマ発生装置は、ガス供給源と、1つ以上の基板を同時に処理するように適合された真空処理室とを備え、真空処理室は、最上壁、最下壁およびそれらの間に張り巡らされた側壁を有しており、最上壁には、ガス供給器の流体連通機構である開口部が1つ以上備えられており、1つ以上の開口部とウェーハ架台との間にアンテナアレイがあり、アンテナアレイは、密封して接着されかつ連続して接続された複数の導体セグメントを備えており、各導体セグメントは、電極と、当該電極に同心円状に配置された誘電体材とを備えており、アンテナアレイに電源が電気的に接続されている。
【0008】
処理室において複数のウェーハを同時にプラズマ処理する方法は、処理室に供給ガスを導入する工程と、処理室内の圧力を変動させ、かつ導体セグメント内を大気圧に維持する工程と、電源からアンテナアレイの導体セグメント内に電流を流すことによって、処理室内にプラズマを発生させる工程とを有する。処理室は、最上壁、最下壁およびそれらの間に張り巡らされた側壁を有している。最上壁には、ガス供給器の流体連通機構である開口部が1つ以上備えられている。1つ以上の開口部とウェーハ架台との間にアンテナアレイがある。アンテナアレイは、密封して接着されかつ連続して接続された複数の導体セグメントを備えている。各導体セグメントは、電極と、当該電極に同心円状に配置された誘電体材とを備えている。アンテナアレイには電源が電気的に接続されている。
【0009】
上述した内容およびその他の特徴点は、後述する図面および詳細な説明によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下に示す図面は、本発明に係る実施形態の例である。なお、同一機能を有するものには同一符号を付けている。
【図1】4つのウェーハを同時に加工処理できる広域高周波プラズマ処理装置の一部分を示す斜視図である。
【図2】図1の高周波プラズマ処理装置を示す分解斜視図である。
【図3】導体セグメントの一例の横断面を示す図である。
【図4】処理室においてプラズマを発生させるアンテナ機構を示す斜視図である。
【図5】導体セグメントを接続する冷却チューブの接続部の断面を示す図である。
【図6】他の実施形態に係るRFプラズマ反応器の上面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および図2は、複数のウェーハを同時にアッシングまたはエッチング処理を行うのに適した広域高周波プラズマ処理装置10を示す図である。簡単に述べると、誘電体チューブ内に備えられた高周波励磁部材を真空処理室内(すなわち、プラズマ内)に設置すると、広域プラズマ供給源を発生させることができる。この際、背景技術で述べたような、大型および高価である誘電体窓またはガラス鐘は必要としない。このようにして、プラズマが励磁器部材に接触することを防いでいる。一実施形態では、4つのウェーハを同時に加工処理するために、真空の接続部には広い表面が求められる。これは、例えば、厚さ2cm未満の金属芯を用いれば実現される。さらに、アンテナ機構と総称される励磁部材は、適用条件に見合ったプラズマの領域に従って、複数の直線状のチューブに分割することができる。本実施形態に係るプラズマ発生装置は、標準のプラズマ発生装置に比べて軽量かつ低価格である。
【0012】
図1および図2に示すように、広域高周波プラズマ処理装置10は、処理室12、電源14、および排気集合部16を有している。図1に示した装置10の形状は四角であるが、本発明および所望のプラズマの表面領域を考慮した技術に見合った適当な形状にすることも可能である。また、「a」「an」および「the」は、量を限定するものではなく、少なくとも1つの参考例を示すものである。
【0013】
処理室12は、最上壁18、最下壁20およびそれらの間に張り巡らされた側壁22を有している。最上壁は、少なくとも1つのガス投入フランジ(開口部)24を有しており、本実施形態では4つのフランジを有している。処理室12は、その内部にウェーハ架台26を備えている。加熱されたテーブルがウェーハを加熱し、冷却されたテーブルがウェーハから熱を取り除くことによって、ウェーハ架台26はウェーハの温度を制御する。一実施形態では、ウェーハ架台26の数をガスフランジの数と対応させて同じにしても良い。同様に、ガスフランジの直径はウェーハ架台26の直径とほぼ同等、またはそれ以上としても良い。
【0014】
上述した実施形態では、処理室12を封じた際、ガス投入フランジ24とそれに対応するウェーハ架台26とが同軸上に位置するように、各ガス投入フランジ24を配置している。実際には、ガス投入フランジの数は架台と同軸上であること、およびガス投入フランジの数と架台の数とが同等であることは必要でないことは明らかである。ガス供給器(図示せず)は、ガス投入フランジ24と共に流体連通機構に配置させても良い。アッシングおよびエッチング処理の両方を考慮し、プラズマ発生に適用できるガスは、酸素、酸素を含んだガス、フッ素を含んだガス、水素、水素を含んだガス、ヘリウム、アルゴン、ネオン、その他の不活性ガス、炭化水素、または前述したガスのうち1種以上を含む混合ガスである。適用できるガスの例を挙げたが、これらに限定されるものではない。ウェーハ基板架台26には、加熱されたウェーハチャックおよびリフトピン等のように土台として適しているものを使用する。
【0015】
処理室12は、アンテナ機構をさらに有している。アンテナ機構は、複数の単アンテナ導体30を互いに接続させた平面アレイ28を有しており、電源14および個別の電気部材と電気的に接続されている。各導体30は、隣接する導体と実質的に平行状態にある。本実施形態における平面アレイ28は、側壁から反対側の側壁まで伸びており、格子を成している。また、平面アレイ28は、ガスフランジ24とその下のウェーハ架台26との間に配置されている。平面アレイ28では、処理室12内のガスフランジ24を流れているガスがプラズマを発生させるための励磁エネルギーを提供する。これについては、後ほど詳しく説明する。
【0016】
従来一般に知られた目的、例えば、処理中に放出されたガス成分を分析する質量分光計の入口部、終点探知、およびその他の目的のため、追加の開口部19を処理室12内に配置しても良い。さらに、処理室12は、使用条件に応じた追加の機能を有していてもよい。例えば、アッシング処理においては、石英窓を搭載し、UV光源をウェーハに近接して設置しても良い。このような非円柱状の光源は、UV励起レーザーと類似した波長を持っている可能性がある。UV励起レーザーの波長は、フォトレジストを大きく剥離する際に効果的であることが報告されている。このようにして、非円柱状の光源は、プラズマを発生させる反応性ガスと平行して使用可能である。さらに、フォトレジスト剥離の前後において光源にさらすことは、残りの除去、および埋め込まれたレジストの除去の効果がある。処理室12と共に、オーバーヘッドRF供給源、光入出口、ガス分析器および追加の光源等を、単独で使用するか、または組み合わせて使用することによって、きわめて融通の利く処理台を提供できる。その他の開口部には、基板を処理室12に搬入および搬出するための1つ以上の切り込み弁(図示せず)が側壁22に配置されている。
【0017】
処理室12は、最下壁に排気口(図示せず)を設け、処理室12内に軸流を生み出している。排気管32の入口は、処理室内の各ウェーハチャック下の排気口に流体的に接続されている。本実施形態に直接関連する部材のみを図示することを意図し、排気管32を簡易的に図示したことを理解されたい。当業者ならば、プラズマ発生装置10には他の構成要素が必要であることが分かる。しかし、それらの部材については既に公知であり、本実施形態を理解する上で必要ないので、これらの部材に関する説明は省く。
【0018】
実行する処理(すなわちエッチング、アッシング)に応じて、処理室12内の圧力はおよそ1ミリtorrから3torrであることが望まれる。より推奨される圧力範囲は、およそ200ミリtorrから2torrであり、最も推奨されるのはおよそ500ミリtorrから1.5torrである。処理室内の圧力は、ガス供給源からガスを適当な方法で供給することによって調節される。この際、排気管24と排気口との間の流体連結部においてスロットルまたは蝶バルブを使用している。電力はおよそ100ワット未満から数1000ワットまでの間であり、周波数はおよそ0.5MHzから30MHzである。
【0019】
図3には、アンテナアレイ28の単一の導体セグメント30が図示されている。導体セグメント30はチューブ状の金属電極34を有している。一実施形態では、金属電極34は固体棒でも良い。電極チューブとして外直径が0.25インチまでのものを採用しても良い。電極34を取り囲んでいるのは誘電体材36である。誘電体材36はチューブ状であり、電極チューブ34の外面と誘電体チューブ36の内面との間に空洞を成すようにして、電極34を自身の内部に保持している。冷却を目的として、2つのチューブ間の空洞を介して、空気または低損失性の誘電流体のような流体を陽圧下で投入することができる。
【0020】
電極34と誘電体チューブ36との間に、洗浄器35が配置されている。洗浄器35は、セラミック、フルオロポリマー等から成っている。洗浄器35の内直径は、電極34の外直径よりも大きいが、誘電体チューブ36の内直径よりも小さく。洗浄器35は、電極34を浮遊させることによって、低温の電極34が高温の誘電体チューブ36に接触することを妨げ、熱衝撃が生じるのを防いでいる。各誘電体チューブ36の一端に配置された気密シール40は、誘電体チューブ36を処理室12の特定の壁部22に接着されている。結果的に、処理室12は所望の真空圧に保たれる。この際、アンテナアレイ28は真空圧下にさらされているが、誘電体チューブ36内の電極34は大気圧下のままである。電極34は、銅製であることが好ましいが、アルミニウム、真鍮またはベリリウム銅等のようなプラズマ発生の電極として一般的に使用されている金属によって構成してあれば良い。誘電体チューブ36は、石英ガラスによって構成されていることが好ましい。しかし、サファイアまたはセラミック材のような他の誘電体材を使用しても良い。さらに、電極34にも上記したような誘電体材を用いても良い。この際、外面上をアルミニウム、銀または銅等のような導体金属によって覆っている。他の実施形態においては、電極34は誘電体チューブ36の内面に電気伝導性被覆をしたものでも良い。また、プラズマ発生中における導体セグメントの冷却を目的に、水等の冷却流体を電極チューブ34の中に通しても良い。
【0021】
図4には、アンテナアレイ28の斜視図が示されている。本実施形態では、アンテナアレイ28は、個々に分かれた16個の導体セグメント30を有している。本実施形態では、各導体セグメント30は5cm間隔に配置されており、一つの処理室に標準の300mmのウェーハを4つまで収めることができるように、アンテナアレイ28は設計されている。「N」個の導体セグメント30を使用可能であり、本実施形態において「N」とは1より大きい整数であると想定して成されたものであると理解されたい。導体セグメントの数および互いの間隔が異なるアンテナ機構は、特定の作業機構および所望のプラズマの表面領域において適用しても良い。また、当業者であれば、上記したようなアンテナ機構を適用できることが理解できるであろう。アンテナアレイ28には、各導体セグメント30の各電極チューブ34を通っている電源14(図1参照)からエネルギーが供給される。プラズマを発生させるために、ガスを高周波電力と誘導性結合させる方法を示したが、容量性励起またはそれらの方法を組み合わせる等、他の方法を利用しても良い。また、ISM帯域における他の周波数は、所望の機構によってプラズマの励磁に使用しても良い。器具からの放射線の放射レベルがFCC規制内に収まるように、迷放射線を適切にシールドすれば、ISM帯域外の周波数も利用できる。米国特許第6,305,316号に開示されているような可変周波数装置も電源として使用できる。しかし、これに限定されるものではない。このような可変周波数装置では、電力リアクタンスは動作上の周波数を決定するタンク回路の一部である。また、電力が例えば基板からフォトレジストを除去する間に変動するにつれ、当該電力に応じて周波数が変わる。本実施形態の効果は、周波数の変動をモニタリングすることによって、ウェーハへの処理が終了したことを大変効果的かつ信頼性高く判断することができる点である。この際、追加費用および表面上の反応産物のためのプラズマ発光を光学的にモニタリングする複雑さはない。
【0022】
電気的に連続して誘導するアンテナアレイは、プラズマ発生のための励磁を処理室12内にもたらす。
【0023】
他の実施形態においては、各導体セグメント30はアレイ28内で冷却チューブ42と共に隣接の導体セグメントに接続されていても良い。冷却チューブ42は、RFに適合した材料から構成されており、冷却流体をすべてのアンテナアレイ28内に通過させることによって、プラズマ発生中の装置を効果的に冷却する。冷却チューブ42は、誘電性の取付部品44によって各導体セグメントに接続されている。取付部品44および冷却チューブ42は、テフロン(登録商標)または他の融和性の誘電体によって構成されていることが好ましい。図5は、冷却チューブの接続部を示している。
【0024】
アンテナアレイ28内の導体セグメント30の数が増えるほど、電源14から供給される電流が通過する長さが長くなる。そのため、アンテナアレイ28内に渡って、大きな電位差が生じる可能性がある。アンテナアレイ28内における低い電位は、プラズマの不均一性を招いてしまうので、高い電位の方がよりエネルギーを容量的にプラズマに結合させる。電位差の問題を解消するために、アレイ28内の導体セグメントはコンデンサ(図示せず)内に連続して接続されており、2つの導体セグメントは電源の外部に接続されている。
【0025】
本実施形態におけるアンテナアレイ28は、次に示す方法によって作動する。時間依存性の電流は電源14を経由して、導体セグメント30内で発生される。時間変動性電流は、導体セグメントを囲む磁場をファラデーの法則に従って生じさせる。電流は時間変動性を有しているため、生じた磁場も時間変動性を有している。マクスウェルの方程式に従って、時間変動性磁場は時間変動性電界を平常な状態に誘導する。その際、時間変動性電界は導体セグメント30に沿って広がっており、そこから離れて広がるにしたがって減少する。この時間変動性電界は、時間変動性磁場に誘導されて以後誘導電場の成分を指す。
【0026】
時間変動性の誘導電場は、導体セグメント30の近くの空洞において、自由電子等の電荷分子を加速させる。さらに、導体セグメントは、加速された電荷分子の速度が、時間変動性の電流のピリオド(T)よりも短時間で、導体と関連する領域を通過するのに十分な速度となるように設定されている。したがって、電荷分子は、十分に安定した一帯を臨みながら導体セグメント30に沿って通過する。そのため、処理室12内の衝突によって、ガス原子をイオン化するための十分なエネルギーを有するために、時間変動性電場は電荷分子を「加熱」する。ガス原子の衝突によるイオン化によって、プラズマは発生する。そのようなプラズマ発生は、アンテナアレイ28の設定と一致して実質的に対称である。
【0027】
アンテナアレイ28には、電極チューブ34の長さに沿って空間的に異なる電位が導体セグメントに渡って存在している。したがって、異なる電荷の導体セグメント30に沿った分配は、導体セグメントから外向きに広がる静電界を生む。また、電界の強さは、電極チューブ34の長さに沿って空間的に異なる。この静電界の成分は、静電容量電界の成分を指す。この電界は均一ではないため、この電界の成分のプラズマ発生に対する寄与は不均一である。このことから、この電界の成分をできるだけ多く縮小することが望まれる。
【0028】
ファラデーシールドを、静電容量電界の成分を阻害または最小にするために使用しても良い。このような解決策では、ファラデーのシールドは導体とプラズマとの間に配置される。しかし、このような解決策では回路での損失を増やし、なおかつ実際に設定するのが難しい。本実施形態におけるアンテナアレイ28は、先行技術の問題点を克服するものであり、かつ十分に静電容量電界の装置に対する寄与をファラデーのシールドを使用せずに十分に縮小することができる構造物を提供できる。詳細を以下に示す。
【0029】
アンテナアレイ28は、従来の一つの導体を「N」個の導体セグメント30に分割し(N=16の例を図4に示す)、各導体セグメント30は直流であり、互いに隔離されているが、コンデンサへ直列に接続されている。このような改良点は、Nという要素によって静電容量電界の素子のピークを縮小できる。L(導体30と関係)、C(コンデンサ)およびf(電源14からの信号の周波数)は、誘導分のリアクタンス(2πfL)と容量分のリアクタンス(1/2πfC)との大きさが等しくなるように適当な値を選択する。上記の方法では、各誘導素子Lに渡って電圧降下が等しく、なおかつ各容量素子Cに渡る電圧降下とは正反対である共振回路が存在する。このようにして、容量素子なしにN個の誘導素子が連続している場合と比較して、「N」という要素によって最大の電圧降下は縮小される。さらに、それでも導体セグメント30の長さに沿って変化がみられるが、それは従来の配置よりもN倍小さい。また、図4に示すように、そのような変化は、導体セグメントの配置によってそれ自身対称となっている。
【0030】
アンテナアレイ28は、このようにして処理室12内において、対称プラズマを発生させる。プラズマの対称性は、ウェーハに対して空間的に均一な電流をもたらす効果がある。さらに、プラズマ処理を処理室の特定の一部で行うためのアンテナアレイ28の部位を選択的に停止および/または開始するように電気機械的に制御する装置を採用しても良い。
【0031】
他に詳細を示さない限り、種々の構成要素を構成する材料は金属、セラミック、ガラス、石英、ポリマー、複合材料、またはこれらの材料のうち少なくとも1つを含んだ混合物である。適当な金属の例としては、酸化処理されたアルミニウム、および/またはステンレススチールを含むものがある。適当なセラミック材料の例としては、シリコンの炭化物またはアルミニウム酸化物(例えば、単結晶または多結晶)を含むものがある。
【0032】
前述したように、本文書内に開示されているプラズマ発生部品および装置には、製造費および材料費を低減でき、かつ、従来のプラズマ処理装置に比べて動作寿命を延長できる効果がある。特に本実施形態では、導電素子が不様であり、高価な誘電体窓の外部上に配置せずに、プラズマ真空室内に配置している。これによって、複数のウェーハ基板を同時に処理する際に、従来の処理装置よりも対費用効果を高めることができる。また、本文書内に開示されているアンテナシステムは、複数のウェーハを同時にアッシングまたはエッチング処理できる均一のプラズマを発生できる。したがって、プラズマ処理の質を低下することなく、スループットの向上と、ウェーハ一枚あたりの製造費の削減とを実現できる。
【0033】
本発明を具体的な実施形態を参照して説明したが、本文書内で開示されている技術は、本発明の範囲を逸脱しない程度に様々な変更が可能であり、同等のもので構成要素の代替が可能である。さらに、特定の状況または材料を本発明の教示に適応させるために、本発明の範囲を逸脱せずに変更可能である。したがって、本開示は、本発明を実施するのに最適な形態として記載された特定の例に限定されるものではなく、本発明は添付されている請求項の範囲内のあらゆる実施形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの真空処理室において1つ以上の基板を処理するプラズマ発生装置であって、
ガス供給源と、
1つ以上の基板を処理するように適合された前記真空処理室とを備え、
当該真空処理室は、最上壁、最下壁およびそれらの間に張り巡らされた側壁を有し、複数のウェーハ架台を備えており、
当該最上壁には、前記ガス供給源との流体連通機構である開口部が1つ以上備えられており、
当該1つ以上の開口部と前記複数のウェーハ架台との間にアンテナアレイがあり、
当該アンテナアレイは、複数のコンデンサを介して連続して接続された複数の導体セグメントを備えており、
当該各導体セグメントは、浮遊している電極と、当該電極に同心円状に配置された誘電体チューブとを備えており、
当該電極は、前記誘電体チューブと接触しておらず、自身と前記誘電体チューブとの間に配置された洗浄器の内部で浮遊しており、
当該誘電体チューブの両端が前記真空処理室の前記側壁に対して密封して接着されていることによって、前記電極が大気圧下にある間、前記真空処理室の動作中にその内部を真空にすることが可能であり、
2つの前記導体セグメントに電源が電気的に接続されていることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記電極は、チューブであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記各導体セグメントは、流動的および連続的に冷却チューブに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記各導体セグメントの両端にさらに導体を備えていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記電源は高周波電源であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記真空処理室は、前記最下壁に排気口を設置していることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
前記アンテナアレイは、実質的に平面であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項8】
前記各導体セグメントは、互いに等距離の間隔を空けて設置されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項9】
前記電極は銅製であり、前記誘電体チューブは石英製であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項10】
前記各導体セグメントは直流であり、互いに隔離されており、かつ前記コンデンサに直列に接続されていることによって、動作周波数に実質的に等しい共振周波数を有する共振回路構成することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項11】
前記アンテナアレイの部位を選択的に停止および開始するように電気機械的に制御される装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−238881(P2012−238881A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164911(P2012−164911)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【分割の表示】特願2009−540238(P2009−540238)の分割
【原出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(505413587)アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド (53)
【Fターム(参考)】