複雑な形状寸法を有する複合積層材を形成及び適用するための方法と装置
【課題】ダブラーのような積層を形成してマルチ輪郭を含む複雑な表面形状を有する複合構造に適用するための方法と装置の提供
【解決手段】複合積層材20がツール26上に形成されて、凹凸を有する部品の上に配置される。ツールは、部品の輪郭とほぼ一致する凹凸を有している。空間内におけるツールに対する部品の位置を表わす一組の位置データ45aが生成される。自動マニピュレータ36は、この位置データを使用して、部品の近くへとツールを動かし、凹凸を有する積層材を部品の上に配置する。
【解決手段】複合積層材20がツール26上に形成されて、凹凸を有する部品の上に配置される。ツールは、部品の輪郭とほぼ一致する凹凸を有している。空間内におけるツールに対する部品の位置を表わす一組の位置データ45aが生成される。自動マニピュレータ36は、この位置データを使用して、部品の近くへとツールを動かし、凹凸を有する積層材を部品の上に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して複合部品の作製に関し、具体的には、ダブラーなどの複合積層材を形成して、複雑な形状寸法を有する部品の表面に適用するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一又は複数の方向に向く繊維からなる複数のプライを含む複合積層構造を積み上げるために、自動積層成形(AFP)装置を使用することができる。構造全体がAFP装置を使用して作製される場合、プライは通常連続的に形成されるため、積み上げ速度はAFP装置の速さに依存する。積み上げプロセスを加速するために、構造の特定のセグメントを手動で積層し、事前にアセンブルされたキットとして構造に適用することができる。例えば、ダブラーを事前にアセンブルして、AFP積層シーケンスの間にサブタスクとして手動で適用することができる。しかしながら、ダブラー積層材を手動で事前にアセンブルすることは、特に、マルチ輪郭を有する航空機の機首又は尾部といった、表面の形状寸法が複雑な構造にダブラーを適用しなければならない場合、長時間を要し、困難でありうる。自動化された設備を使用してダブラーを事前にアセンブルするためのこれまでの試みは、平坦な積層材、又は一次元に一定の曲率を有する積層材に限られていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、ダブラーのような積層を形成してマルチ輪郭を含む複雑な表面形状を有する複合構造に適用するための方法と装置に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示される実施形態は、マルチ輪郭部品のような複雑な形状を有する複合構造上において、積層を形成及び適用するための方法と装置を提供する。積層、適用、及び圧密化の要件は、単一のツールを使用することができる一のプロセスに統合される。積層材は、部品表面とほぼ一致するマルチ輪郭ツール面を有するツール上に複合材料を積層するためのAFP装置を使用して、部品表面の寸法形状と一致するように迅速に形成することができる。このツールは、部品表面上に積層を配置して圧密化するために使用することもできる。開示される方法と装置により、ダブラーのような積層をメインアセンブリラインの外で作製することが可能となり、したがって、メインアセンブリプロセスの速度を落とすことなく、必要に応じた積層の再加工、及び検査を行うことができる。
【0005】
開示される一実施形態によれば、凹凸を有する部品上に複合積層材を形成及び配置する方法が提供される。本方法は、部品の輪郭とほぼ一致する輪郭を有するツールの上に、凹凸を有する複合積層材を形成することを含む。本方法は、ツールに対する部品の位置を表わす一組の位置データを生成することも含む。本方法は、部品の近くにツールを動かして、部品上に、凹凸を有する積層材を配置するために、マニピュレータ及び位置データを使用する。凹凸を有する複合積層材の形成は、ツール上に自動的に複合材料を配置する自動積層成形装置を使用して行うことができる。積層材は、ツール上でブラダーを膨張させること、及び/又はツール上でバッグを膨張させることにより、部品に対して圧密化することができる。バッグは、減圧することにより、圧密化された積層材から分離することができる。位置データの生成は、共通の三次元(3D)座標系において、部品の輪郭の3D位置に対するツール輪郭の3D位置を決定することにより、実行することができる。
【0006】
別の実施形態によれば、マルチ輪郭の表面を有する部品上に複合ダブラーを適用する方法を提供することができる。本方法は、部品表面の輪郭にほぼ一致する、ツールのマルチ輪郭面上に、真空バッグを引き付けることを含む。ツール面の上には、バッグの上から複合プライが積層される。本方法は、部品の表面に対するツール面の位置を表わす一組の位置データを生成することを含む。本方法は、更に、位置データとマニピュレータとを使用して、ツールを自動的に部品の近くへと動かし、部品表面に対して積層材を配置することを含む。本方法は、バッグを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化することも含む。ツール面上にバッグを引き付けることは、バッグを真空引きすることにより行われる。
【0007】
また別の実施形態によれば、マルチ輪郭表面を有する部品上に積層材を適用する方法が提供される。本方法は、部品表面の輪郭にほぼ一致する、ツールのマルチ輪郭面上に、柔軟なバッグを引き付けることを含む。本方法は、バッグで覆われたツール面上に複合積層材を配置すること、及びツールを部品の近くに動かして、ツールを使用して部品表面上に積層材を配置することを含む。本方法はまた、バッグを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化すること、及びバッグを真空引きすることにより、圧密化された積層材からバッグを引き離すことを含む。本方法は、更に、ツール面とバッグとの間でブラダーを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化することを含むことができる。
【0008】
また別の実施形態によれば、凹凸を有する基板上に複合積層材を適用するための装置が提供される。本装置は、ツールと、第1及び第2コのンパクタと、第1及び第2のコンパクタを制御する手段とを含む。ツールは、基板の近くにツールを動かすためのマニピュレータに取り付けられており、基板の輪郭とほぼ一致する輪郭を有するツール面を含んでいる。第1の柔軟なコンパクタはツール面を覆っており、コンパクタの上には複合積層材が配置される。第2の柔軟なコンパクタは、第1のコンパクタと、基板上に積層材を圧密化するためのツール面との間に配置される。第1のコンパクタは、ツールにシールされた真空バッグを含むことができ、第2のコンパクタは、柔軟で膨張させることが可能なブラダーを含むことができる。第1及び第2のコンパクタを制御する手段は、圧力源と、真空源と、圧力源及び真空源を使用して第1及び第2のコンパクタを選択的に与圧及び減圧するためのコントローラとを含むことができる。
【0009】
別の実施形態によれば、マルチ輪郭表面を有する部品上において、複合積層材を形成及び適用するための装置が提供される。本装置は、部品表面の凹凸とほぼ一致するマルチ輪郭面を有するツールと、ツール上の柔軟なバッグと、マニピュレータと、コントローラとを含んでいる。柔軟なバッグは、ツール面の凹凸を覆ってそのような凹凸に適合しており、バッグ上には積層材が配置されて、柔軟なバッグが与圧されることにより部品表面に対して積層材が圧密化される。マニピュレータは、部品の近くへとツールを動かし、部品表面上に積層材を配置する。コントローラは、マニピュレータの動作及びバッグの与圧を制御する。本装置は、更に、ツール面と、部品表面に対して積層材を圧密化するためのバッグとの間に、膨張させることが可能なブラダーを含むことができる。一実施形態では、ツールは構造用発泡材から形成される。
【0010】
また別の実施形態によれば、マルチ輪郭表面を有する部品上において複合積層材を形成及び適用するための装置が提供される。本装置は、ツールと、ロボットマニピュレータと、複合繊維自動積層成形装置と、ロケータシステムと、コンパクタと、制御手段とを含んでいる。ツールは、部品表面の輪郭とほぼ一致するマルチ輪郭面を含む。ロボットマニピュレータの上には、ツールを操作するためのツールが搭載される。複合繊維自動積層成形装置は、ツール面上にマルチプライ複合積層材を形成するための繊維配置ヘッドを含む。ロケータシステムは、繊維配置ヘッドと、ツール面と、部品表面とを、共通の空間座標系において互いに対して位置決めする一組の位置データを生成する。ツール上のコンパクタは、部品表面に対して積層材を圧密化し、制御手段は、マニピュレータ、自動積層成形装置、及びコンパクタの動作を、位置データに基づいて制御する。
【0011】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する部品上に複合ダブラーを適用する方法にも関し、本方法は、
部品表面の輪郭とほぼ一致する、ツールのマルチ輪郭面上に、真空バッグを引き付けること、
バッグの上からツール面上に複合プライを積み上げること、
部品の表面に対するツール面の位置を表わす一組の位置データを生成すること、
位置データとマニピュレータとを使用して、自動的にツールを部品の近くへと移動させ、部品表面に対して積層材を配置すること、並びに
バッグを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化すること
を含む。
【0012】
上述の方法では、ツール面上にバッグを引き付けることを、バッグを真空引きすることにより実行することができる。
【0013】
本方法は、更に、
バッグを真空引きすることにより、圧密化された積層材からバッグを引き離すこと
を含むことができる。
【0014】
本方法は、更に、
バッグとツール面との間でブラダーを膨張させることにより、部品に対して積層材を圧密化すること
を含むことができる。
【0015】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する部品の上に積層材を適用する方法にも関し、本方法は、
部品表面の輪郭とほぼ一致するツールのマルチ輪郭面上に柔軟なバッグを引き付けること、
バッグで覆われたツール面の上に、複合積層材を配置すること、
部品の近くにツールを移動させ、ツールを使用して部品表面上に積層材を配置すること、
バッグを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化すること、並びに
バッグを真空引きすることにより、圧密化された積層材からバッグを引き離すこと
を含む。
【0016】
上述の方法は、更に、
ツール面とバッグとの間でブラダーを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化すること
を含むことができる。
【0017】
本方法では、
ツール面上にバッグを引き付けることが、バッグを真空引きすることを含むことができ、且つ
部品の近くにツールを移動させることが、空間内において部品の位置をツール面の位置に関連付ける一組のデータによりプログラムされたコントローラによって操作されるマニピュレータを用いて実行することができる。
【0018】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する部品上において複合積層材を形成及び適用するための装置にも関し、本装置は、
部品表面の輪郭とほぼ一致するマルチ輪郭面を有するツール、
ツール面の輪郭を覆ってそのような輪郭に適合するツール上の柔軟なバッグであって、その上に積層材が配置されて、与圧されると部品表面に対して積層材を圧密化するバッグ、
ツールを部品の近くへと動かして、部品表面上に積層材を配置するマニピュレータ、並びに
マニピュレータの動作及びバッグの与圧を制御するコントローラ
を備えている。
【0019】
上述の装置は、更に、
部品表面に対して積層材を圧密化するための、ツール面とバッグとの間に配置されて膨張させることが可能なブラダー
を備えることができる。
【0020】
本装置では、ツールは構造用の発泡材とすることができる。
【0021】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する部品の上において、複合積層材を形成及び適用するための装置にも関し、本装置は、
部品表面の輪郭とほぼ一致するマルチ輪郭面を有するツール、
その上に搭載されたツールを操作するためのロボットマニピュレータ、
ツール面上にマルチプライ複合積層材を形成するための繊維配置ヘッドを含む複合繊維自動積層成形装置、
繊維配置ヘッド、ツール面、及び部品表面を、共通の空間座標系内で互いに対して位置決めする一組の位置データを生成するためのロケータシステム、
部品表面に対して積層材を圧密化するための、ツール上のコンパクタ、並びに
位置データに基づいて、マニピュレータ、自動積層成形装置、及びコンパクタの動作を制御する制御手段
を備えている。
【0022】
上述の装置では、コンパクタは、ツールに対してシールされてツール面を覆う与圧可能なバッグを含むことができ、このバッグは与圧されると部品表面に対して積層材を押し付ける。
【0023】
本装置は、更に、
ツール面と、積層材に圧密化のための圧力を印加するバッグとの間に配置された、バッグを介して与圧可能なツール上のブラダー
を含むことができる。
【0024】
本装置は、更に、
圧力源、
真空源、並びに
制御手段により動作されて、バッグ及びブラダーの各々と、圧力源及び真空源とを選択的に連結する一組のバルブ
を含むことができる。
【0025】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する航空機の複合部品上において、複合ダブラーを形成及び適用するための装置にも関し、本装置は、
部品表面の輪郭とほぼ一致するマルチ輪郭面を有する構造用発泡材ツール、
ツールを操作するためのロボットマニピュレータ、
マニピュレータ上にツールを取り外し可能に取り付けて、マニピュレータ上のツールの交換を可能にする取り付けアダプタ、
ツール面上にマルチプライ複合積層材を形成するための繊維配置ヘッドを含む複合繊維自動積層成形装置、
繊維配置ヘッド、ツール面、及び部品表面を共通の空間座標系に位置決めする一組の位置データを生成するためのロケータシステム、
ツール面を覆い、且つツールに対してシールされた、部品表面に対して積層材を圧密化するための、膨張させることが可能なバッグ、
部品表面に対して積層材を圧密化するための、ツール面上及びバッグ内部において膨張させることが可能なブラダー、
圧力源、
真空源、
圧力源及び真空源の各々をバッグ及びブラダーと選択的に連結するためのバルブシステムを含む、バッグ及びブラダーの各々を別々に膨張及び減圧する手段、並びに
マニピュレータ、自動積層成形装置、及びバルブシステムの動作を調節及び制御するためのコントローラ
を備えている。
【0026】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する航空機の複合部品上において複合ダブラーを形成及び適用する方法にも関し、本方法は、
部品表面の輪郭にほぼ一致する、ツールのマルチ輪郭面上に、柔軟なバッグを配置すること、
ツールに対してバッグをシールして、ほぼ気密なチャンバを形成すること、
真空チャンバを真空引きすることにより、ツール面上にバッグを引き付けること、
自動積層成形装置を使用して、バッグの上に複合積層材を形成し、ツール面の輪郭に適合させること、
自動制御されるマニピュレータにツールを取り付けること、
3D空間座標系において部品表面に対してツール面を位置決めする一組の位置データを生成すること、
マニピュレータを使用して、部品の近くへとツールを動かし、部品表面上に積層材を配置すること、
ツール面とバッグとの間でバッグを膨張させて、部品表面に対して積層材を圧密化すること、
部品表面に対して積層材を更に圧密化するために、バッグを膨張させること、
バッグを真空引きすることによりバッグを減圧すること、並びに、
プログラムされたコントローラを使用して、自動積層成形装置、バッグ、ブラダー、及びマニピュレータの動作を調節及び制御すること
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、複雑な寸法形状を有する複合積層材を形成及び適用するための装置の機能的ブロック図を示している。
【図2】図2は、開示された実施形態による航空機のマルチ輪郭機首セクションの斜視図であり、マルチ輪郭機首セクションの上に複合ダブラーが適用及び圧密化されている。
【図3】図3は、図2に示されるダブラーを形成及び適用するために使用されるツールの等角図であり、明瞭性のために圧密化バッグ及びブラダーは省略されている。
【図4】図4は、複雑な寸法形状を有する複合積層材を形成して、図2に示す機首セクションに適用するための装置の側面図である。
【図5】図5は、ツール及びロケータシステムの断面図及び線図の組み合わせを示している。
【図6A】図6Aは、最初に組み立てられたときのツールの断面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示すツールの斜視図である。
【図7A】図7Aは、図6Aに似ているが、バッグがツール表面に引き付けられている。
【図7B】図7Bは、図6Bに似ているが、バッグがツール表面に引き付けられている。
【図8A】図8Aは、ツールの断面図であり、ツール面上に積層材を形成する自動繊維配置ヘッドを示している。
【図8B】図8Bは、ツールの斜視図であり、ツール面上に部分的に形成された積層材を示している。
【図9A】図9Aは、ツールの断面図であり、ツール面上に配置された積層と、部品表面に対して積層材を圧密化するために膨張させたツールブラダーとを示している。
【図9B】図9Bは、部品表面上に積層材を配置するツールを示す斜視図である。
【図10】図10は、図9Aに似ているが、ツール上のバッグが膨張させられて、部品表面に対して積層材を更に圧密化している。
【図11】図11は、図10に似ているが、バッグが真空引きされたことにより積層材からバッグが分離している。
【図12】図12は、マルチ輪郭部品表面上において、複雑な寸法形状を有する積層を形成及配置する方法を示すフロー図である。
【図13】図13は、航空機の製造及び整備方法のフロー図である。
【図14】図14は、航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0028】
まず図1〜3を参照すると、開示される実施形態は、複雑な寸法形状を有する基板22の上に複合積層材20を形成及び配置する方法と装置とに関し、このような複雑な寸法形状は、図2に示す部品24のマルチ輪郭表面22を含みうる。図示の実施形態では、部品24は航空機の機首セクションを含み、積層材22は、機首セクション24の領域34を補強するダブラー20を含んでいる。この装置は、一又は複数のコントローラ35によって操作される適切なマニピュレータ36の上に取り付けられたツールアセンブリ25を含んでいる。マニピュレータ36は、コントローラ35によって使用されるプログラムされた一組の指令に基づいて座標系55の複数の軸に沿ってツールアセンブリ25を動かすロボット又は同様の自動装置を含むことができる。
【0029】
ツールアセンブリ25は、部品24に積層材20が適用される領域34内のマルチ輪郭部品表面22とほぼ一致するマルチ輪郭ツール面28を有するツール26を含む。ツールアセンブリ25は、それぞれ部品表面22に対して積層材20を圧密化するための第1及び第2のコンパクタ54、56も含んでいる。ツールアセンブリ25は、更に、ツール26が取り付けられるツール基部30を含む。コンパクタ54、56の各々は、コントローラ35によって操作される圧力源62及び真空源64をそれぞれ使用して、それぞれ膨張及び減圧される。
【0030】
積層材20は、自動積層成形装置(AFP)42によってマルチ輪郭ツール面28上に形成することができ、AFP装置42はコントローラ35によって操作することもできる。ロケータシステム34は、特定の三次元座標系55において、部品表面22に対するツール面28の位置及び方向を位置決めする一組の位置データ45aを生成する。同様に、ロケータシステム45をコントローラ35が使用して、ツール面28に対するAFP装置42の運動を位置決め及び調節することができる。
【0031】
次に、装置の更なる詳細を示す図4及び5を参照する。この実施形態では、マニピュレータ36は、一対のレール38に沿った線形運動を行なうように取り付けられたロボット36を含んでいる。ロボット36はロボットアーム40を含み、アーム40の端部には、素早く切替えられるアダプタ32によってツールアセンブリ25が取り付けられている(図5)。素早く切替えられるアダプタ32は、寸法形状の異なる部品24の様々な領域に様々に構成された積層材20を配置するために、様々に構成されたツール26をアーム40に素早く取り付けることを可能にする。上述のように、ロボット36は、一又は複数のプログラムされたコントローラ35(図1)によって操作されて、空間座標系55(図5)内の複数の軸に沿ってツールアセンブリ25を配置することができる。ロボット36は、ツールアセンブリ25を動かして、部品24のマルチ輪郭表面22上の標的領域34にダブラー又はその他の積層材20を配置する。
【0032】
AFP装置42は、レール38に沿って線形運動するために取り付けられた第2ロボットデバイス42aを含むことができ、且つロボットアーム46の端部に取り付けられた自動繊維配置ヘッド44を含んでいる。後述するように、ヘッド44が複合繊維からなるテープ又はトウの複数のストリップ又はコースをツール面28の上に敷くことにより、マルチ輪郭積層材20が形成され、次いでこの積層材20は、ロボット36によって配置されたツールアセンブリ25によって、ツール表面22上に配置及び圧密化される。別の実施形態では、積層材20は、適切に装備して、コンベヤ(図示しない)又は回転トレイ(図示しない)上のロボットに送達することができる。
【0033】
ロケータシステム45(図1)は、部品24、詳細には部品表面22に対するツール26の位置、即ちツール面28(図1)の位置を、監視及び更新する。ロケータシステム45を使用することにより、ツールアセンブリ25及びロボット36は、固定位置に取り付けられるのではなく、可動とすることができる。このような可動性は、配置精度を向上させると同時に、リーン生産方式に寄与することができる。上述のように、ロケータシステム45(図1)は、AFP装置42、ツールアセンブリ25、及び部品24の動きを、共通の空間座標系55(図5)内で調節するために、一組の位置データ45a(図1)を生成する。位置データ45aを常に更新し、それをコントローラ35が閉フィードバックループにおいて使用することにより、部品表面上22における積層材20の配置精度を達成することができる。
【0034】
ロケータシステム45は、一又は複数のレーザートラッカー48を含むことができる。このレーザートラッカー48は、ツールアセンブリ25及び部品24の上に配置された反射標的50上にレーザー光線52を向けることにより、位置データを発生させる。ロケータシステム45は、随意で、反射体50によって反射されたレーザー光線の位置を記録する写真測量カメラ33を更に含むことにより、空間座標系55において部品表面22に対するツールアセンブリ25の位置を測定することができる。写真測量カメラ33は、限定しないが、例えば市販のV−Starカメラといった市販のカメラを含むことができる。複数の標的50のレーザートラッカー測定値と写真測量との組み合わせを使用することにより、共通の空間座標系55において部品表面22に対するツール面20aの位置を決定することができる。標的50の位置のレーザー追跡測定値と写真測量とは、コントローラ35の一部を含みうる一又は複数のコンピュータ及びソフトウェアプログラムを利用して統合することができる。反射標的50を含むロケータシステム45は、2009年9月8日発行の米国特許第75897258号に開示されているものに類似していてよく、ここで参照したことによりこの米国特許全体を本明細書に包含する。
【0035】
次に、図5を詳細に参照する。ツール26は、限定しないが、例えば軽量の構造用発泡材を含むことができ、この場合ツール面28は、限定しないが、機械加工及びモールディングといった複数の周知の加工技術のいずれかによって形成することができる。ツール26は、安価な加工方法を使用した他の安価な材料から作製することができ、それによりツール26の費用を低減することができる。第1のコンパクタ54は、膨張させることが可能なブラダー54を含むことができ、このブラダーは、54aに示すように、ツール面28上か、又はツール面28内部のやや窪んだ部分に配置できる。第2のコンパクタ56は柔軟な真空バッグ56を含むことができ、この真空バッグの周囲56aはツール26に対してシールされていることにより、ツール面28上に、与圧されたほぼ気密なチャンバ65を形成している。ツール面28とバッグ56との間に通気口58を設けることにより、減圧排気の間にバッグ56の下方で空気を移動させることができる。バッグ56及び通気口58の両方がツール面28をカバーしているので、ツール面28が損傷から保護されており、ツール26から積層材20を除去し易い。バッグ56は、積層プロセスの間に複合積層プリプレグがバッグ56の表面に歪みなく接着することが可能であるが、部品表面22上において積層材料を膨張させ、圧密化し、そして解放するのに十分な弾性を有する表面組成を有することができる。バッグ56は、限定しないが、例えばラテックスフィルム、ポリ包装フィルム、或いはテクスチャー構造又は非テクスチャー構造を有するウレタンから形成することができる。
【0036】
図5、6A、7A、8A、9A、及び10に示す実施形態では、ブラダー54は、概ね平行で、別個であるが、相互に接続されて、単一のブラダーとして動作する一連のブラダー54bとして図示されている。しかしながら、他の実施形態では、ブラダー54は、ツール面28のほぼ全体に亘って延びる単一のブラダーを含んでもよい。ブラダー54の形状、大きさ、及び膨張シーケンスは、部品表面22に対する圧密化を最適化するように決定することができる。ブラダー54及びバッグ56は、それぞれ、一連のフロー制御バルブ72及び三方向制御バルブ70を介して、圧力源62及び真空源64に接続される。制御バルブ70は、上述のコントローラ35(図1)と同じ又は異なるコントローラ74によって動作して、圧力源62及び真空源64のいずれかをブラダー54及びバッグ56に選択的に連結するように機能する。このように、自動的に動作する制御バルブ70は、ブラダー54及びバッグ58の一方又は両方を、圧力源62に接続することにより、ブラダー54又はバッグ56を与圧して膨張させることができる。同様に、制御バルブ70は、ブラダー54又はバッグ56に真空源64を連結することにより、ブラダー54を減圧するか、又はバッグ56を減圧排気することができ、これによりバッグ56がツール面28上に引き付けられる。幾つかの実施形態では、ツール面28に真空溝60を設けることができ、この真空溝は、チャンバ65の与圧/減圧のために、制御バルブ70にも連結できる。
【0037】
図6〜11は、ツールアセンブリ25の使用と、マルチ輪郭積層材24を形成し、次いで部品表面22上において積層材24を配置及び圧密化するために使用される一連のステップを示している。まず、図6A及び6Bに示すように、ツール26をツール基部30上に固定した後で、バッグ56及び通気口58をツール面28上にインストールしてバッグ56の周囲56aをツール26にシールすることにより、バッグ56とツール26との間にほぼ気密で与圧可能なチャンバ56(図5及び6)を形成する。次いで真空ライン66及び圧力ライン68(図5)をインストールし、ブラダー54及びバッグ58の両方に接続する。この時点で、ライン75及びライン71のいずれもが、制御バルブ70(図5)によって圧力源62又は真空源64に接続されておらず、大気に開放されているので、ブラダー54及びチャンバ65はほぼ大気圧である。
【0038】
図7A及び7Bに示すように、ツールアセンブリ25は、制御バルブ70を用いて真空源64をライン75及び77の両方に接続することにより準備され、その結果、ブラダー54のほぼ完全な減圧が行われ、チャンバ65から空気が排出される。チャンバ65からの空気の排出により、ツール表面28上にバッグ56が引き付けられ、バッグ56がツール面28のマルチ輪郭にほぼ適合する。
【0039】
図8A及び8Bに示すように、ツール面28上にバッグ56が引き付けられると、繊維配置ヘッド44は、所定のプライスケジュールに従って、バッグ56上への複合繊維材料の敷設を開始することができる。プライは、AFP装置42によって形成されるにつれてツール面28の輪郭に適合するので、積層材20の輪郭は結果として部品表面22の輪郭とほぼ一致する。ライン75及び77は、ツール面28上に積層材20が形成されている際に、真空源64と連結されたままである。
【0040】
図9A及び図9Bに示すように、積層材20がツール26上に形成された後、ロボット36は、ツールアセンブリ25を部品24の近くへと動かして、部品表面22上の所望の位置34(図4参照)に積層材20を適用する。部品表面22に積層材20が適用されて表面と接触している状態で、圧力源62はライン75と連結されており、一方真空源64はライン77と連結されたままである。ライン75を与圧することによりブラダー54が膨張し、それによりブラダー54は膨張して積層材20に圧力を印加する。これにより、部品表面22に対して積層材が圧密化される。ブラダー54による積層材20のこのような圧密化の間に、ライン77を介して真空引きされる結果、バッグ56は減圧されたままである。
【0041】
次に、図10に示すように、バッグ56を与圧して膨張させるライン77に圧力源62を連結すると、バッグが拡張して積層材20に圧力を加え、部品表面22に対して積層材20を更に圧密化させる。
【0042】
図11は、本プロセスの次のステップを示している。このステップでは、真空源64がライン75及び77の両方に連結されることにより、ブラダー54及びバッグ56の両方が減圧される。バッグ56が減圧されると、バッグ56は積層材20から離れて後退する。バッグ56が積層材20から分離すると、ロボット56が、次の積層/適用サイクルの準備が整った待機位置(図示しない)へとツールアセンブリ25を戻す。
【0043】
次に図12を参照する。図12は、複合積層材を形成してマルチ輪郭部品表面に適用する方法のステップを示している。まずステップ76においてツール26を作製する。これは、図示の実施例では、構造用発泡材を、部品表面22とほぼ一致するマルチ輪郭面26を有する所望の形状に形成することにより行うことができる。上述のように、構造用発泡材は、限定しないが、機械加工及びモールディングを含む種々の既知の加工方法のいずれかを使用して所望のツール形状に形成することができる。次に、ステップ78では、真空/圧力ライン75、77をツール26に配置し、流れ制御バルブ72に連結する。ステップ80では、上述の写真測量及び/又はレーザー追跡技術、或いは他の技術を使用して一組の位置データを生成することにより、部品表面22に対してツール面26を位置決めする。ステップ82では、ブラダー54及びバッグ56の両方を真空引きすることにより、バッグ56をマルチ輪郭ツール面26上に引き付ける。ステップ83では、AFP装置42を使用して、ツール面26と適合するバッグ56の上に一又は複数のプライを形成することにより、複合積層材をツール面26上に形成する。
【0044】
マルチ輪郭積層材20を形成したら、次いで、ステップ84において、ロボット36又はその他のマニピュレータがツールアセンブリ25を部品24の近くに動かし、積層材20を部品表面22の上に配置する。次に、ステップ86に示すように、ブラダー54を与圧することにより、ブラダー54を膨張させて積層材20に圧密化のための圧力を印加する。この間、真空バッグ56は減圧したままとする。次いで、ステップ88では、バッグ56も与圧することにより、バッグ56を膨張させて、積層材20に対して圧密化圧力を更に加える。これにより、部品表面22に対して積層材20が更に圧密化される。圧密化の後、まずバッグ56を真空引きし、次いでブラダー54を真空引きすると、それらの各々が減圧されて積層材20から離れる。本方法の実用的な一実施形態では、ブラダー54を一分間に亘って膨張させる間に、バッグ56を真空引きする。次いで、バッグ56を一分間に亘って膨張させ、その後バッグ56を真空引きする。これにより、圧密化された積層材20からバッグ56が離れ易くなる。最後に、ステップ92において、ツールアセンブリ25を待機位置に後退させ、積層材の形成及び配置サイクルを繰返す準備が整う。
【0045】
本発明の実施形態は、様々な用途、特に、例えば航空、船舶、及び自動車の分野を含む輸送産業に使用することが可能である。したがって、図13及び14に示すように、本発明の実施形態は、図13に示す航空機の製造及び整備方法94と、図14に示す航空機96に使用することができる。本発明の実施形態の航空機への応用例には、例えば、限定しないが、構造用部材及び内装用コンポーネントといった広い種類のアセンブリ及びサブアセンブリが含まれうる。製造前の段階では、例示的方法94は、航空機96の仕様及び設計98と、材料調達100とを含むことができる。製造段階では、航空機96の、コンポーネント及びサブアセンブリの製造102と、システムインテグレーション104とが行われる。その後、航空機96は、認可及び納品106を経て就航108される。顧客により就航される間、航空機96は、定期的な保守及び整備110(改修、再構成、改装なども含む)を受ける。
【0046】
方法94の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者及び主要なシステム下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0047】
図14に示すように、例示的な方法94によって製造された航空機96は、複数のシステム114及び内装116と共に機体112を含むことができる。ハイレベルシステム114の実施例には、推進システム118、電気システム120、油圧システム122、及び環境システム124の内の一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。本発明の方法は、内装116又は機体112に使用されるコンポーネント、構造用部材、一又は複数のサブアセンブリを作製するために利用することができる。航空産業の実施例を示したが、本発明の理念は、船舶及び自動車産業といった他の産業に適用可能である。
【0048】
本明細書に具現化したシステム及び方法は、製造及び整備方法94のいずれかの一又は複数の段階において利用することができる。例えば、製造段階102に対応するコンポーネント、構造用部材、アセンブリ、又はサブアセンブリは、航空機96が就航中に製造されるものと同様の方式で作製又は製造することができる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせは、例えば、航空機96の、アセンブリの実質的な効率化又はコストダウンによって、製造段階102及び104の間に利用することができる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせの内の一又は複数を、航空機96が就航している間に、限定しないが、例えば保守及び整備110に、利用することができる。
【0049】
特定の例示的な実施形態に関して本発明の実施形態を説明したが、これら特定の実施形態は説明を目的としているのであって、限定を目的としているのではなく、したがって当業者には他の変形例が自明であろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して複合部品の作製に関し、具体的には、ダブラーなどの複合積層材を形成して、複雑な形状寸法を有する部品の表面に適用するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一又は複数の方向に向く繊維からなる複数のプライを含む複合積層構造を積み上げるために、自動積層成形(AFP)装置を使用することができる。構造全体がAFP装置を使用して作製される場合、プライは通常連続的に形成されるため、積み上げ速度はAFP装置の速さに依存する。積み上げプロセスを加速するために、構造の特定のセグメントを手動で積層し、事前にアセンブルされたキットとして構造に適用することができる。例えば、ダブラーを事前にアセンブルして、AFP積層シーケンスの間にサブタスクとして手動で適用することができる。しかしながら、ダブラー積層材を手動で事前にアセンブルすることは、特に、マルチ輪郭を有する航空機の機首又は尾部といった、表面の形状寸法が複雑な構造にダブラーを適用しなければならない場合、長時間を要し、困難でありうる。自動化された設備を使用してダブラーを事前にアセンブルするためのこれまでの試みは、平坦な積層材、又は一次元に一定の曲率を有する積層材に限られていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、ダブラーのような積層を形成してマルチ輪郭を含む複雑な表面形状を有する複合構造に適用するための方法と装置に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示される実施形態は、マルチ輪郭部品のような複雑な形状を有する複合構造上において、積層を形成及び適用するための方法と装置を提供する。積層、適用、及び圧密化の要件は、単一のツールを使用することができる一のプロセスに統合される。積層材は、部品表面とほぼ一致するマルチ輪郭ツール面を有するツール上に複合材料を積層するためのAFP装置を使用して、部品表面の寸法形状と一致するように迅速に形成することができる。このツールは、部品表面上に積層を配置して圧密化するために使用することもできる。開示される方法と装置により、ダブラーのような積層をメインアセンブリラインの外で作製することが可能となり、したがって、メインアセンブリプロセスの速度を落とすことなく、必要に応じた積層の再加工、及び検査を行うことができる。
【0005】
開示される一実施形態によれば、凹凸を有する部品上に複合積層材を形成及び配置する方法が提供される。本方法は、部品の輪郭とほぼ一致する輪郭を有するツールの上に、凹凸を有する複合積層材を形成することを含む。本方法は、ツールに対する部品の位置を表わす一組の位置データを生成することも含む。本方法は、部品の近くにツールを動かして、部品上に、凹凸を有する積層材を配置するために、マニピュレータ及び位置データを使用する。凹凸を有する複合積層材の形成は、ツール上に自動的に複合材料を配置する自動積層成形装置を使用して行うことができる。積層材は、ツール上でブラダーを膨張させること、及び/又はツール上でバッグを膨張させることにより、部品に対して圧密化することができる。バッグは、減圧することにより、圧密化された積層材から分離することができる。位置データの生成は、共通の三次元(3D)座標系において、部品の輪郭の3D位置に対するツール輪郭の3D位置を決定することにより、実行することができる。
【0006】
別の実施形態によれば、マルチ輪郭の表面を有する部品上に複合ダブラーを適用する方法を提供することができる。本方法は、部品表面の輪郭にほぼ一致する、ツールのマルチ輪郭面上に、真空バッグを引き付けることを含む。ツール面の上には、バッグの上から複合プライが積層される。本方法は、部品の表面に対するツール面の位置を表わす一組の位置データを生成することを含む。本方法は、更に、位置データとマニピュレータとを使用して、ツールを自動的に部品の近くへと動かし、部品表面に対して積層材を配置することを含む。本方法は、バッグを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化することも含む。ツール面上にバッグを引き付けることは、バッグを真空引きすることにより行われる。
【0007】
また別の実施形態によれば、マルチ輪郭表面を有する部品上に積層材を適用する方法が提供される。本方法は、部品表面の輪郭にほぼ一致する、ツールのマルチ輪郭面上に、柔軟なバッグを引き付けることを含む。本方法は、バッグで覆われたツール面上に複合積層材を配置すること、及びツールを部品の近くに動かして、ツールを使用して部品表面上に積層材を配置することを含む。本方法はまた、バッグを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化すること、及びバッグを真空引きすることにより、圧密化された積層材からバッグを引き離すことを含む。本方法は、更に、ツール面とバッグとの間でブラダーを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化することを含むことができる。
【0008】
また別の実施形態によれば、凹凸を有する基板上に複合積層材を適用するための装置が提供される。本装置は、ツールと、第1及び第2コのンパクタと、第1及び第2のコンパクタを制御する手段とを含む。ツールは、基板の近くにツールを動かすためのマニピュレータに取り付けられており、基板の輪郭とほぼ一致する輪郭を有するツール面を含んでいる。第1の柔軟なコンパクタはツール面を覆っており、コンパクタの上には複合積層材が配置される。第2の柔軟なコンパクタは、第1のコンパクタと、基板上に積層材を圧密化するためのツール面との間に配置される。第1のコンパクタは、ツールにシールされた真空バッグを含むことができ、第2のコンパクタは、柔軟で膨張させることが可能なブラダーを含むことができる。第1及び第2のコンパクタを制御する手段は、圧力源と、真空源と、圧力源及び真空源を使用して第1及び第2のコンパクタを選択的に与圧及び減圧するためのコントローラとを含むことができる。
【0009】
別の実施形態によれば、マルチ輪郭表面を有する部品上において、複合積層材を形成及び適用するための装置が提供される。本装置は、部品表面の凹凸とほぼ一致するマルチ輪郭面を有するツールと、ツール上の柔軟なバッグと、マニピュレータと、コントローラとを含んでいる。柔軟なバッグは、ツール面の凹凸を覆ってそのような凹凸に適合しており、バッグ上には積層材が配置されて、柔軟なバッグが与圧されることにより部品表面に対して積層材が圧密化される。マニピュレータは、部品の近くへとツールを動かし、部品表面上に積層材を配置する。コントローラは、マニピュレータの動作及びバッグの与圧を制御する。本装置は、更に、ツール面と、部品表面に対して積層材を圧密化するためのバッグとの間に、膨張させることが可能なブラダーを含むことができる。一実施形態では、ツールは構造用発泡材から形成される。
【0010】
また別の実施形態によれば、マルチ輪郭表面を有する部品上において複合積層材を形成及び適用するための装置が提供される。本装置は、ツールと、ロボットマニピュレータと、複合繊維自動積層成形装置と、ロケータシステムと、コンパクタと、制御手段とを含んでいる。ツールは、部品表面の輪郭とほぼ一致するマルチ輪郭面を含む。ロボットマニピュレータの上には、ツールを操作するためのツールが搭載される。複合繊維自動積層成形装置は、ツール面上にマルチプライ複合積層材を形成するための繊維配置ヘッドを含む。ロケータシステムは、繊維配置ヘッドと、ツール面と、部品表面とを、共通の空間座標系において互いに対して位置決めする一組の位置データを生成する。ツール上のコンパクタは、部品表面に対して積層材を圧密化し、制御手段は、マニピュレータ、自動積層成形装置、及びコンパクタの動作を、位置データに基づいて制御する。
【0011】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する部品上に複合ダブラーを適用する方法にも関し、本方法は、
部品表面の輪郭とほぼ一致する、ツールのマルチ輪郭面上に、真空バッグを引き付けること、
バッグの上からツール面上に複合プライを積み上げること、
部品の表面に対するツール面の位置を表わす一組の位置データを生成すること、
位置データとマニピュレータとを使用して、自動的にツールを部品の近くへと移動させ、部品表面に対して積層材を配置すること、並びに
バッグを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化すること
を含む。
【0012】
上述の方法では、ツール面上にバッグを引き付けることを、バッグを真空引きすることにより実行することができる。
【0013】
本方法は、更に、
バッグを真空引きすることにより、圧密化された積層材からバッグを引き離すこと
を含むことができる。
【0014】
本方法は、更に、
バッグとツール面との間でブラダーを膨張させることにより、部品に対して積層材を圧密化すること
を含むことができる。
【0015】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する部品の上に積層材を適用する方法にも関し、本方法は、
部品表面の輪郭とほぼ一致するツールのマルチ輪郭面上に柔軟なバッグを引き付けること、
バッグで覆われたツール面の上に、複合積層材を配置すること、
部品の近くにツールを移動させ、ツールを使用して部品表面上に積層材を配置すること、
バッグを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化すること、並びに
バッグを真空引きすることにより、圧密化された積層材からバッグを引き離すこと
を含む。
【0016】
上述の方法は、更に、
ツール面とバッグとの間でブラダーを膨張させることにより、部品表面に対して積層材を圧密化すること
を含むことができる。
【0017】
本方法では、
ツール面上にバッグを引き付けることが、バッグを真空引きすることを含むことができ、且つ
部品の近くにツールを移動させることが、空間内において部品の位置をツール面の位置に関連付ける一組のデータによりプログラムされたコントローラによって操作されるマニピュレータを用いて実行することができる。
【0018】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する部品上において複合積層材を形成及び適用するための装置にも関し、本装置は、
部品表面の輪郭とほぼ一致するマルチ輪郭面を有するツール、
ツール面の輪郭を覆ってそのような輪郭に適合するツール上の柔軟なバッグであって、その上に積層材が配置されて、与圧されると部品表面に対して積層材を圧密化するバッグ、
ツールを部品の近くへと動かして、部品表面上に積層材を配置するマニピュレータ、並びに
マニピュレータの動作及びバッグの与圧を制御するコントローラ
を備えている。
【0019】
上述の装置は、更に、
部品表面に対して積層材を圧密化するための、ツール面とバッグとの間に配置されて膨張させることが可能なブラダー
を備えることができる。
【0020】
本装置では、ツールは構造用の発泡材とすることができる。
【0021】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する部品の上において、複合積層材を形成及び適用するための装置にも関し、本装置は、
部品表面の輪郭とほぼ一致するマルチ輪郭面を有するツール、
その上に搭載されたツールを操作するためのロボットマニピュレータ、
ツール面上にマルチプライ複合積層材を形成するための繊維配置ヘッドを含む複合繊維自動積層成形装置、
繊維配置ヘッド、ツール面、及び部品表面を、共通の空間座標系内で互いに対して位置決めする一組の位置データを生成するためのロケータシステム、
部品表面に対して積層材を圧密化するための、ツール上のコンパクタ、並びに
位置データに基づいて、マニピュレータ、自動積層成形装置、及びコンパクタの動作を制御する制御手段
を備えている。
【0022】
上述の装置では、コンパクタは、ツールに対してシールされてツール面を覆う与圧可能なバッグを含むことができ、このバッグは与圧されると部品表面に対して積層材を押し付ける。
【0023】
本装置は、更に、
ツール面と、積層材に圧密化のための圧力を印加するバッグとの間に配置された、バッグを介して与圧可能なツール上のブラダー
を含むことができる。
【0024】
本装置は、更に、
圧力源、
真空源、並びに
制御手段により動作されて、バッグ及びブラダーの各々と、圧力源及び真空源とを選択的に連結する一組のバルブ
を含むことができる。
【0025】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する航空機の複合部品上において、複合ダブラーを形成及び適用するための装置にも関し、本装置は、
部品表面の輪郭とほぼ一致するマルチ輪郭面を有する構造用発泡材ツール、
ツールを操作するためのロボットマニピュレータ、
マニピュレータ上にツールを取り外し可能に取り付けて、マニピュレータ上のツールの交換を可能にする取り付けアダプタ、
ツール面上にマルチプライ複合積層材を形成するための繊維配置ヘッドを含む複合繊維自動積層成形装置、
繊維配置ヘッド、ツール面、及び部品表面を共通の空間座標系に位置決めする一組の位置データを生成するためのロケータシステム、
ツール面を覆い、且つツールに対してシールされた、部品表面に対して積層材を圧密化するための、膨張させることが可能なバッグ、
部品表面に対して積層材を圧密化するための、ツール面上及びバッグ内部において膨張させることが可能なブラダー、
圧力源、
真空源、
圧力源及び真空源の各々をバッグ及びブラダーと選択的に連結するためのバルブシステムを含む、バッグ及びブラダーの各々を別々に膨張及び減圧する手段、並びに
マニピュレータ、自動積層成形装置、及びバルブシステムの動作を調節及び制御するためのコントローラ
を備えている。
【0026】
本発明は、マルチ輪郭表面を有する航空機の複合部品上において複合ダブラーを形成及び適用する方法にも関し、本方法は、
部品表面の輪郭にほぼ一致する、ツールのマルチ輪郭面上に、柔軟なバッグを配置すること、
ツールに対してバッグをシールして、ほぼ気密なチャンバを形成すること、
真空チャンバを真空引きすることにより、ツール面上にバッグを引き付けること、
自動積層成形装置を使用して、バッグの上に複合積層材を形成し、ツール面の輪郭に適合させること、
自動制御されるマニピュレータにツールを取り付けること、
3D空間座標系において部品表面に対してツール面を位置決めする一組の位置データを生成すること、
マニピュレータを使用して、部品の近くへとツールを動かし、部品表面上に積層材を配置すること、
ツール面とバッグとの間でバッグを膨張させて、部品表面に対して積層材を圧密化すること、
部品表面に対して積層材を更に圧密化するために、バッグを膨張させること、
バッグを真空引きすることによりバッグを減圧すること、並びに、
プログラムされたコントローラを使用して、自動積層成形装置、バッグ、ブラダー、及びマニピュレータの動作を調節及び制御すること
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、複雑な寸法形状を有する複合積層材を形成及び適用するための装置の機能的ブロック図を示している。
【図2】図2は、開示された実施形態による航空機のマルチ輪郭機首セクションの斜視図であり、マルチ輪郭機首セクションの上に複合ダブラーが適用及び圧密化されている。
【図3】図3は、図2に示されるダブラーを形成及び適用するために使用されるツールの等角図であり、明瞭性のために圧密化バッグ及びブラダーは省略されている。
【図4】図4は、複雑な寸法形状を有する複合積層材を形成して、図2に示す機首セクションに適用するための装置の側面図である。
【図5】図5は、ツール及びロケータシステムの断面図及び線図の組み合わせを示している。
【図6A】図6Aは、最初に組み立てられたときのツールの断面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示すツールの斜視図である。
【図7A】図7Aは、図6Aに似ているが、バッグがツール表面に引き付けられている。
【図7B】図7Bは、図6Bに似ているが、バッグがツール表面に引き付けられている。
【図8A】図8Aは、ツールの断面図であり、ツール面上に積層材を形成する自動繊維配置ヘッドを示している。
【図8B】図8Bは、ツールの斜視図であり、ツール面上に部分的に形成された積層材を示している。
【図9A】図9Aは、ツールの断面図であり、ツール面上に配置された積層と、部品表面に対して積層材を圧密化するために膨張させたツールブラダーとを示している。
【図9B】図9Bは、部品表面上に積層材を配置するツールを示す斜視図である。
【図10】図10は、図9Aに似ているが、ツール上のバッグが膨張させられて、部品表面に対して積層材を更に圧密化している。
【図11】図11は、図10に似ているが、バッグが真空引きされたことにより積層材からバッグが分離している。
【図12】図12は、マルチ輪郭部品表面上において、複雑な寸法形状を有する積層を形成及配置する方法を示すフロー図である。
【図13】図13は、航空機の製造及び整備方法のフロー図である。
【図14】図14は、航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0028】
まず図1〜3を参照すると、開示される実施形態は、複雑な寸法形状を有する基板22の上に複合積層材20を形成及び配置する方法と装置とに関し、このような複雑な寸法形状は、図2に示す部品24のマルチ輪郭表面22を含みうる。図示の実施形態では、部品24は航空機の機首セクションを含み、積層材22は、機首セクション24の領域34を補強するダブラー20を含んでいる。この装置は、一又は複数のコントローラ35によって操作される適切なマニピュレータ36の上に取り付けられたツールアセンブリ25を含んでいる。マニピュレータ36は、コントローラ35によって使用されるプログラムされた一組の指令に基づいて座標系55の複数の軸に沿ってツールアセンブリ25を動かすロボット又は同様の自動装置を含むことができる。
【0029】
ツールアセンブリ25は、部品24に積層材20が適用される領域34内のマルチ輪郭部品表面22とほぼ一致するマルチ輪郭ツール面28を有するツール26を含む。ツールアセンブリ25は、それぞれ部品表面22に対して積層材20を圧密化するための第1及び第2のコンパクタ54、56も含んでいる。ツールアセンブリ25は、更に、ツール26が取り付けられるツール基部30を含む。コンパクタ54、56の各々は、コントローラ35によって操作される圧力源62及び真空源64をそれぞれ使用して、それぞれ膨張及び減圧される。
【0030】
積層材20は、自動積層成形装置(AFP)42によってマルチ輪郭ツール面28上に形成することができ、AFP装置42はコントローラ35によって操作することもできる。ロケータシステム34は、特定の三次元座標系55において、部品表面22に対するツール面28の位置及び方向を位置決めする一組の位置データ45aを生成する。同様に、ロケータシステム45をコントローラ35が使用して、ツール面28に対するAFP装置42の運動を位置決め及び調節することができる。
【0031】
次に、装置の更なる詳細を示す図4及び5を参照する。この実施形態では、マニピュレータ36は、一対のレール38に沿った線形運動を行なうように取り付けられたロボット36を含んでいる。ロボット36はロボットアーム40を含み、アーム40の端部には、素早く切替えられるアダプタ32によってツールアセンブリ25が取り付けられている(図5)。素早く切替えられるアダプタ32は、寸法形状の異なる部品24の様々な領域に様々に構成された積層材20を配置するために、様々に構成されたツール26をアーム40に素早く取り付けることを可能にする。上述のように、ロボット36は、一又は複数のプログラムされたコントローラ35(図1)によって操作されて、空間座標系55(図5)内の複数の軸に沿ってツールアセンブリ25を配置することができる。ロボット36は、ツールアセンブリ25を動かして、部品24のマルチ輪郭表面22上の標的領域34にダブラー又はその他の積層材20を配置する。
【0032】
AFP装置42は、レール38に沿って線形運動するために取り付けられた第2ロボットデバイス42aを含むことができ、且つロボットアーム46の端部に取り付けられた自動繊維配置ヘッド44を含んでいる。後述するように、ヘッド44が複合繊維からなるテープ又はトウの複数のストリップ又はコースをツール面28の上に敷くことにより、マルチ輪郭積層材20が形成され、次いでこの積層材20は、ロボット36によって配置されたツールアセンブリ25によって、ツール表面22上に配置及び圧密化される。別の実施形態では、積層材20は、適切に装備して、コンベヤ(図示しない)又は回転トレイ(図示しない)上のロボットに送達することができる。
【0033】
ロケータシステム45(図1)は、部品24、詳細には部品表面22に対するツール26の位置、即ちツール面28(図1)の位置を、監視及び更新する。ロケータシステム45を使用することにより、ツールアセンブリ25及びロボット36は、固定位置に取り付けられるのではなく、可動とすることができる。このような可動性は、配置精度を向上させると同時に、リーン生産方式に寄与することができる。上述のように、ロケータシステム45(図1)は、AFP装置42、ツールアセンブリ25、及び部品24の動きを、共通の空間座標系55(図5)内で調節するために、一組の位置データ45a(図1)を生成する。位置データ45aを常に更新し、それをコントローラ35が閉フィードバックループにおいて使用することにより、部品表面上22における積層材20の配置精度を達成することができる。
【0034】
ロケータシステム45は、一又は複数のレーザートラッカー48を含むことができる。このレーザートラッカー48は、ツールアセンブリ25及び部品24の上に配置された反射標的50上にレーザー光線52を向けることにより、位置データを発生させる。ロケータシステム45は、随意で、反射体50によって反射されたレーザー光線の位置を記録する写真測量カメラ33を更に含むことにより、空間座標系55において部品表面22に対するツールアセンブリ25の位置を測定することができる。写真測量カメラ33は、限定しないが、例えば市販のV−Starカメラといった市販のカメラを含むことができる。複数の標的50のレーザートラッカー測定値と写真測量との組み合わせを使用することにより、共通の空間座標系55において部品表面22に対するツール面20aの位置を決定することができる。標的50の位置のレーザー追跡測定値と写真測量とは、コントローラ35の一部を含みうる一又は複数のコンピュータ及びソフトウェアプログラムを利用して統合することができる。反射標的50を含むロケータシステム45は、2009年9月8日発行の米国特許第75897258号に開示されているものに類似していてよく、ここで参照したことによりこの米国特許全体を本明細書に包含する。
【0035】
次に、図5を詳細に参照する。ツール26は、限定しないが、例えば軽量の構造用発泡材を含むことができ、この場合ツール面28は、限定しないが、機械加工及びモールディングといった複数の周知の加工技術のいずれかによって形成することができる。ツール26は、安価な加工方法を使用した他の安価な材料から作製することができ、それによりツール26の費用を低減することができる。第1のコンパクタ54は、膨張させることが可能なブラダー54を含むことができ、このブラダーは、54aに示すように、ツール面28上か、又はツール面28内部のやや窪んだ部分に配置できる。第2のコンパクタ56は柔軟な真空バッグ56を含むことができ、この真空バッグの周囲56aはツール26に対してシールされていることにより、ツール面28上に、与圧されたほぼ気密なチャンバ65を形成している。ツール面28とバッグ56との間に通気口58を設けることにより、減圧排気の間にバッグ56の下方で空気を移動させることができる。バッグ56及び通気口58の両方がツール面28をカバーしているので、ツール面28が損傷から保護されており、ツール26から積層材20を除去し易い。バッグ56は、積層プロセスの間に複合積層プリプレグがバッグ56の表面に歪みなく接着することが可能であるが、部品表面22上において積層材料を膨張させ、圧密化し、そして解放するのに十分な弾性を有する表面組成を有することができる。バッグ56は、限定しないが、例えばラテックスフィルム、ポリ包装フィルム、或いはテクスチャー構造又は非テクスチャー構造を有するウレタンから形成することができる。
【0036】
図5、6A、7A、8A、9A、及び10に示す実施形態では、ブラダー54は、概ね平行で、別個であるが、相互に接続されて、単一のブラダーとして動作する一連のブラダー54bとして図示されている。しかしながら、他の実施形態では、ブラダー54は、ツール面28のほぼ全体に亘って延びる単一のブラダーを含んでもよい。ブラダー54の形状、大きさ、及び膨張シーケンスは、部品表面22に対する圧密化を最適化するように決定することができる。ブラダー54及びバッグ56は、それぞれ、一連のフロー制御バルブ72及び三方向制御バルブ70を介して、圧力源62及び真空源64に接続される。制御バルブ70は、上述のコントローラ35(図1)と同じ又は異なるコントローラ74によって動作して、圧力源62及び真空源64のいずれかをブラダー54及びバッグ56に選択的に連結するように機能する。このように、自動的に動作する制御バルブ70は、ブラダー54及びバッグ58の一方又は両方を、圧力源62に接続することにより、ブラダー54又はバッグ56を与圧して膨張させることができる。同様に、制御バルブ70は、ブラダー54又はバッグ56に真空源64を連結することにより、ブラダー54を減圧するか、又はバッグ56を減圧排気することができ、これによりバッグ56がツール面28上に引き付けられる。幾つかの実施形態では、ツール面28に真空溝60を設けることができ、この真空溝は、チャンバ65の与圧/減圧のために、制御バルブ70にも連結できる。
【0037】
図6〜11は、ツールアセンブリ25の使用と、マルチ輪郭積層材24を形成し、次いで部品表面22上において積層材24を配置及び圧密化するために使用される一連のステップを示している。まず、図6A及び6Bに示すように、ツール26をツール基部30上に固定した後で、バッグ56及び通気口58をツール面28上にインストールしてバッグ56の周囲56aをツール26にシールすることにより、バッグ56とツール26との間にほぼ気密で与圧可能なチャンバ56(図5及び6)を形成する。次いで真空ライン66及び圧力ライン68(図5)をインストールし、ブラダー54及びバッグ58の両方に接続する。この時点で、ライン75及びライン71のいずれもが、制御バルブ70(図5)によって圧力源62又は真空源64に接続されておらず、大気に開放されているので、ブラダー54及びチャンバ65はほぼ大気圧である。
【0038】
図7A及び7Bに示すように、ツールアセンブリ25は、制御バルブ70を用いて真空源64をライン75及び77の両方に接続することにより準備され、その結果、ブラダー54のほぼ完全な減圧が行われ、チャンバ65から空気が排出される。チャンバ65からの空気の排出により、ツール表面28上にバッグ56が引き付けられ、バッグ56がツール面28のマルチ輪郭にほぼ適合する。
【0039】
図8A及び8Bに示すように、ツール面28上にバッグ56が引き付けられると、繊維配置ヘッド44は、所定のプライスケジュールに従って、バッグ56上への複合繊維材料の敷設を開始することができる。プライは、AFP装置42によって形成されるにつれてツール面28の輪郭に適合するので、積層材20の輪郭は結果として部品表面22の輪郭とほぼ一致する。ライン75及び77は、ツール面28上に積層材20が形成されている際に、真空源64と連結されたままである。
【0040】
図9A及び図9Bに示すように、積層材20がツール26上に形成された後、ロボット36は、ツールアセンブリ25を部品24の近くへと動かして、部品表面22上の所望の位置34(図4参照)に積層材20を適用する。部品表面22に積層材20が適用されて表面と接触している状態で、圧力源62はライン75と連結されており、一方真空源64はライン77と連結されたままである。ライン75を与圧することによりブラダー54が膨張し、それによりブラダー54は膨張して積層材20に圧力を印加する。これにより、部品表面22に対して積層材が圧密化される。ブラダー54による積層材20のこのような圧密化の間に、ライン77を介して真空引きされる結果、バッグ56は減圧されたままである。
【0041】
次に、図10に示すように、バッグ56を与圧して膨張させるライン77に圧力源62を連結すると、バッグが拡張して積層材20に圧力を加え、部品表面22に対して積層材20を更に圧密化させる。
【0042】
図11は、本プロセスの次のステップを示している。このステップでは、真空源64がライン75及び77の両方に連結されることにより、ブラダー54及びバッグ56の両方が減圧される。バッグ56が減圧されると、バッグ56は積層材20から離れて後退する。バッグ56が積層材20から分離すると、ロボット56が、次の積層/適用サイクルの準備が整った待機位置(図示しない)へとツールアセンブリ25を戻す。
【0043】
次に図12を参照する。図12は、複合積層材を形成してマルチ輪郭部品表面に適用する方法のステップを示している。まずステップ76においてツール26を作製する。これは、図示の実施例では、構造用発泡材を、部品表面22とほぼ一致するマルチ輪郭面26を有する所望の形状に形成することにより行うことができる。上述のように、構造用発泡材は、限定しないが、機械加工及びモールディングを含む種々の既知の加工方法のいずれかを使用して所望のツール形状に形成することができる。次に、ステップ78では、真空/圧力ライン75、77をツール26に配置し、流れ制御バルブ72に連結する。ステップ80では、上述の写真測量及び/又はレーザー追跡技術、或いは他の技術を使用して一組の位置データを生成することにより、部品表面22に対してツール面26を位置決めする。ステップ82では、ブラダー54及びバッグ56の両方を真空引きすることにより、バッグ56をマルチ輪郭ツール面26上に引き付ける。ステップ83では、AFP装置42を使用して、ツール面26と適合するバッグ56の上に一又は複数のプライを形成することにより、複合積層材をツール面26上に形成する。
【0044】
マルチ輪郭積層材20を形成したら、次いで、ステップ84において、ロボット36又はその他のマニピュレータがツールアセンブリ25を部品24の近くに動かし、積層材20を部品表面22の上に配置する。次に、ステップ86に示すように、ブラダー54を与圧することにより、ブラダー54を膨張させて積層材20に圧密化のための圧力を印加する。この間、真空バッグ56は減圧したままとする。次いで、ステップ88では、バッグ56も与圧することにより、バッグ56を膨張させて、積層材20に対して圧密化圧力を更に加える。これにより、部品表面22に対して積層材20が更に圧密化される。圧密化の後、まずバッグ56を真空引きし、次いでブラダー54を真空引きすると、それらの各々が減圧されて積層材20から離れる。本方法の実用的な一実施形態では、ブラダー54を一分間に亘って膨張させる間に、バッグ56を真空引きする。次いで、バッグ56を一分間に亘って膨張させ、その後バッグ56を真空引きする。これにより、圧密化された積層材20からバッグ56が離れ易くなる。最後に、ステップ92において、ツールアセンブリ25を待機位置に後退させ、積層材の形成及び配置サイクルを繰返す準備が整う。
【0045】
本発明の実施形態は、様々な用途、特に、例えば航空、船舶、及び自動車の分野を含む輸送産業に使用することが可能である。したがって、図13及び14に示すように、本発明の実施形態は、図13に示す航空機の製造及び整備方法94と、図14に示す航空機96に使用することができる。本発明の実施形態の航空機への応用例には、例えば、限定しないが、構造用部材及び内装用コンポーネントといった広い種類のアセンブリ及びサブアセンブリが含まれうる。製造前の段階では、例示的方法94は、航空機96の仕様及び設計98と、材料調達100とを含むことができる。製造段階では、航空機96の、コンポーネント及びサブアセンブリの製造102と、システムインテグレーション104とが行われる。その後、航空機96は、認可及び納品106を経て就航108される。顧客により就航される間、航空機96は、定期的な保守及び整備110(改修、再構成、改装なども含む)を受ける。
【0046】
方法94の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者及び主要なシステム下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0047】
図14に示すように、例示的な方法94によって製造された航空機96は、複数のシステム114及び内装116と共に機体112を含むことができる。ハイレベルシステム114の実施例には、推進システム118、電気システム120、油圧システム122、及び環境システム124の内の一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。本発明の方法は、内装116又は機体112に使用されるコンポーネント、構造用部材、一又は複数のサブアセンブリを作製するために利用することができる。航空産業の実施例を示したが、本発明の理念は、船舶及び自動車産業といった他の産業に適用可能である。
【0048】
本明細書に具現化したシステム及び方法は、製造及び整備方法94のいずれかの一又は複数の段階において利用することができる。例えば、製造段階102に対応するコンポーネント、構造用部材、アセンブリ、又はサブアセンブリは、航空機96が就航中に製造されるものと同様の方式で作製又は製造することができる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせは、例えば、航空機96の、アセンブリの実質的な効率化又はコストダウンによって、製造段階102及び104の間に利用することができる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせの内の一又は複数を、航空機96が就航している間に、限定しないが、例えば保守及び整備110に、利用することができる。
【0049】
特定の例示的な実施形態に関して本発明の実施形態を説明したが、これら特定の実施形態は説明を目的としているのであって、限定を目的としているのではなく、したがって当業者には他の変形例が自明であろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有する部品の上に複合積層材を形成及び配置する方法であって、
部品の凹凸とほぼ一致する輪郭を有するツールの上に、凹凸を有する複合積層材を形成すること、
ツールに対する部品の位置を表わす一組の位置データを生成すること、並びに
マニピュレータ及び位置データを使用して、部品の近くへとツールを動かし、凹凸を有する部品の上に、凹凸を有する積層材を配置すること
を含む方法。
【請求項2】
凹凸を有する複合積層材を形成することを、ツール上に複合材料を自動的に配置する自動積層成形装置を使用して実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ツール上でブラダーを膨張させることにより、部品に対して積層材を圧密化すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ツール上でバッグを膨張させることにより、部品に対して積層材を更に圧密化すること
を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
バッグを減圧することにより、圧密化された積層材からバッグを後退させること
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
位置データを生成することを、共通の三次元(3D)座標系において、部品の輪郭の3D位置に対するツールの輪郭の3D位置を決定することにより実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
凹凸を有する基板上に複合積層材を適用するための装置であって、
基板の近くへとツールを動かすためのマニピュレータに取り付けられるツールであって、基板の輪郭とほぼ一致する凹凸を有するツール面を含むツール、
基板上に積層材を圧密化するための、ツール上の第1の柔軟なコンパクタであって、ツール面を覆い、上に複合積層材が配置されるよう適合された第1の柔軟なコンパクタ、並びに
第1及び第2のコンパクタを制御する手段
を備える装置。
【請求項8】
第1のコンパクタと、基板上に積層材を圧密化するためのツール面との間に配置される、ツール上の第2の柔軟なコンパクタ
を更に備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
第1のコンパクタが、ツールにシールされた真空バッグを含んでおり、
第2のコンパクタが、柔軟で膨張させることが可能なブラダーを含んでおり、且つ
第1及び第2のコンパクタを制御する手段が、圧力源と、真空源と、圧力源及び真空源をバッグ及びブラダーと選択的に連結させるためのコントローラとを含んでいる、
請求項7に記載の装置。
【請求項1】
凹凸を有する部品の上に複合積層材を形成及び配置する方法であって、
部品の凹凸とほぼ一致する輪郭を有するツールの上に、凹凸を有する複合積層材を形成すること、
ツールに対する部品の位置を表わす一組の位置データを生成すること、並びに
マニピュレータ及び位置データを使用して、部品の近くへとツールを動かし、凹凸を有する部品の上に、凹凸を有する積層材を配置すること
を含む方法。
【請求項2】
凹凸を有する複合積層材を形成することを、ツール上に複合材料を自動的に配置する自動積層成形装置を使用して実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ツール上でブラダーを膨張させることにより、部品に対して積層材を圧密化すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ツール上でバッグを膨張させることにより、部品に対して積層材を更に圧密化すること
を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
バッグを減圧することにより、圧密化された積層材からバッグを後退させること
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
位置データを生成することを、共通の三次元(3D)座標系において、部品の輪郭の3D位置に対するツールの輪郭の3D位置を決定することにより実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
凹凸を有する基板上に複合積層材を適用するための装置であって、
基板の近くへとツールを動かすためのマニピュレータに取り付けられるツールであって、基板の輪郭とほぼ一致する凹凸を有するツール面を含むツール、
基板上に積層材を圧密化するための、ツール上の第1の柔軟なコンパクタであって、ツール面を覆い、上に複合積層材が配置されるよう適合された第1の柔軟なコンパクタ、並びに
第1及び第2のコンパクタを制御する手段
を備える装置。
【請求項8】
第1のコンパクタと、基板上に積層材を圧密化するためのツール面との間に配置される、ツール上の第2の柔軟なコンパクタ
を更に備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
第1のコンパクタが、ツールにシールされた真空バッグを含んでおり、
第2のコンパクタが、柔軟で膨張させることが可能なブラダーを含んでおり、且つ
第1及び第2のコンパクタを制御する手段が、圧力源と、真空源と、圧力源及び真空源をバッグ及びブラダーと選択的に連結させるためのコントローラとを含んでいる、
請求項7に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−251525(P2011−251525A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−95584(P2011−95584)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95584(P2011−95584)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
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