説明

視覚検査装置の評価システム

【課題】実際の検査設備がなくても視覚検査装置が評価可能であり、検査条件の変化に対する検査結果の変化の傾向の取得が容易な視覚検査装置の評価システムを提供する。
【解決手段】2Dカメラ画像作成部23は、3D画像生成部22において擬似的に生成したワークの疑似3D画像から疑似2D画像を生成する。画像処理を実施する場合、実際に撮影した画像と、擬似的に作成した疑似2D画像とはほぼ同一となる。そのため、カメラで撮影した画像に代えて疑似2D画像を用いても、視覚検査装置の評価性能は確保される。これにより、条件を種々変更することにより、実際の検査設備を必要とすることなく、幅広い検査条件でワークの検査結果が取得される。疑似2D画像を利用して得られた検査結果は、検査条件および検査結果と関連づけられて表示装置15に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚検査装置の評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばロボットのアームの先端に取り付けたカメラや検査設備に固定されたカメラによって検査対象であるワークを撮影し、この撮影した画像を用いてワークを検査する視覚検査装置が公知である。このような視覚検査装置は、実際の使用時の検査設備において適正な検査結果が得られるように事前に検査結果の評価、および判断基準の調整をする必要がある。例えば、特許文献1の場合、実際の検査設備にワークを設置し、このワークを撮影することにより、視覚検査装置の評価を実施している。
【0003】
しかしながら、このように実際の検査設備を用いる場合、この検査設備が竣工するまでワーク、光源および設備などの検査条件が決定されない。そのため、検査設備の設計の早期に視覚検査装置の評価を実施することは困難である。また、従来の場合、実際の検査設備を用いるため、想定される検査条件を任意に変更することは困難である。その結果、検査条件の変化に応じて視覚検査装置の検査結果がどのように変化するかを把握することも困難である。検査条件に対する視覚検査装置の検査結果の変化が把握できなくなると、実際の検査の段階で厳密な検査が困難となり、良品または不良品の判断性能が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−213929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、実際の検査設備がなくても視覚検査装置が評価可能であり、検査条件の変化に対する検査結果の変化の傾向の取得が容易な視覚検査装置の評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、カメラによる撮影で取得した画像を検査用として画像処理する場合、実際にカメラで撮影して取得した画像と、擬似的に作成した疑似2D画像とがほぼ同一であることを見出した。請求項1記載の発明では、擬似的に生成したワークの疑似3D画像を撮影して疑似2D画像を生成している。3D画像生成手段は、実際の検査設備においてワークをカメラで撮影することなく、検査設備を想定した仮想的な検査装置を用いてワークの疑似3D画像をシミュレートして生成している。そして、2Dカメラ画像作成手段は、生成したワークの疑似3D画像を、検査と同一の条件で撮影したとして疑似2D画像を作成している。画像処理を実施した場合、上述のように実際にワークをカメラで撮影した画像と疑似3Dとして作成されたワークを擬似的に撮影した疑似2D画像とはほぼ同一である。そのため、実際にカメラで撮影した画像に代えて疑似2D画像を用いる場合でも、視覚検査装置の評価は同等の性能が確保される。これにより、検査条件すなわち3D画像および疑似2D画像のシミュレート条件を種々変更することにより、実際の検査設備を必要とすることなく、幅広い検査条件でワークの検査結果が取得される。また、疑似2D画像を利用して実施した検査の結果は、作成した検査対象疑似2D画像およびその作成条件データとともに記憶手段に記憶される。そして、表示手段は、記憶手段に記憶されている検査対象疑似2D画像およびその作成条件データと検査対象疑似2D画像の検査結果とを関連づけて表示する。そのため、疑似2D画像のシミュレート条件を種々変更した結果として得られた検査結果は、疑似2D画像と対比しながら確認される。その結果、疑似2D画像とともに表示される作成条件データや検査結果を参考にして、検査条件の変化の傾向は容易に把握される。したがって、実際の検査設備がなくても視覚検査装置を評価することができるとともに、検査条件を変化させつつ検査結果の変化の傾向を容易に取得することができる。また、検査条件は、例えばキー操作などの簡単な操作で次々と入力可能である。そのため、比較の対象となる検査結果は、簡単な操作によって多数得られる。したがって、検査設備が竣工する前に多数の検査結果を利用して視覚検査装置を評価することができ、視覚検査装置の立ち上がりを早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態による視覚検査装置の評価システムを示すブロック図
【図2】本発明の一実施形態による視覚検査装置の評価システムにおいて検査結果データファイルの構造を示す模式図
【図3】本発明の一実施形態による視覚検査装置の評価システムにおける処理の流れを示す概略図
【図4】本発明の一実施形態による視覚検査装置の評価システムにおけるデータの流れを示す説明図
【図5】本発明の一実施形態による視覚検査装置の評価システムにおいて表示装置の表示の一例を示す模式図
【図6】実画像と疑似2D画像との一致度を説明するための図
【図7】視覚検査装置の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明による視覚検査装置の評価システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
(視覚検査装置)
まず、図7に示す視覚検査装置100について説明する。なお、図7に示す視覚検査装置100は、実体的なものであり、本実施形態の視覚検査装置の評価システムと直接の関係はないが、以降の理解を容易にするために説明する。視覚検査装置100は、検査設備101、カメラ102および処理装置103を備えている。検査設備101では、実際に検査対象となるワーク104が検査される。カメラ102は、検査設備101に設けられている。カメラ102は、検査設備101に固定、または検査設備101に設けられているロボット105に取り付けられている。カメラ102を検査設備101に固定することにより、ワーク104は常に一定の位置から撮影される。一方、カメラ102をロボット105に取り付けることにより、ワーク104は周囲の任意の位置から撮影される。カメラ102を検査設備101に固定するか、ロボット105に取り付けるかは、ワーク104の検査の種類に応じて任意に選択することができる。
【0009】
処理装置103は、例えばパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」)などで構成されており、カメラ102で撮影したワーク104の撮影画像に基づいてワーク104の検査を実施する。処理装置103は、予め設定されている視覚検査プログラムにしたがってワーク104の検査を実施する。具体的には、処理装置103は、視覚検査プログラムを実行することにより、カメラ102で撮影したワーク104の平面画像すなわち2D画像を取得する。この場合、処理装置103は、カメラ102で撮影した実際のワーク104の画像すなわちワーク104の実像を取得する。そして、処理装置103は、取得したワーク104の2D画像を二値化処理し、二値化処理した画像に基づいてワーク104の検査を実施する。ここで検査項目としては、例えばワーク104の傷の有無、ワーク104の全体および各部の寸法、ならびにワーク104の形状などが含まれる。
【0010】
以上のような視覚検査装置100は、実際にカメラ102でワーク104を撮影する。そのため、視覚検査装置100を評価する場合、視覚検査装置100を実際に構築し、ワーク104の実物を利用した実像の2D画像を取得する必要がある。その結果、竣工する前に視覚検査装置100の検査結果を評価したり、視覚検査装置100の周囲の環境と検査結果との因果関係を評価することは困難である。視覚検査装置100は、例えば製造設備の一角に設けられる。そのため、視覚検査装置100は、例えば外界の光量や光の入射角度、すなわち時刻や天候によって変化する太陽光の量や角度などによって周囲の環境が刻々と変化する。このような環境の変化は、視覚検査装置100による検査に影響を与える。しかしながら、竣工前に視覚検査装置100の検査結果を評価したり、周囲の環境によって種々変化する検査条件に応じて視覚検査装置100の検査結果を評価するのは困難である。
そこで、以下に説明する本実施形態の視覚検査装置の評価システムは、実際の視覚検査装置100を構築しなくても検査結果の評価することを目的としている。
【0011】
(本実施形態による評価システム)
図1に示すように本実施形態の評価システム10は、制御装置11、画像生成装置12、検査手段としての検査装置13、記憶手段としての記憶装置14および表示手段としての表示装置15を備えている。評価システム10は、図7に示すような視覚検査装置100を仮想的な世界に擬似的に構築し、この構築した仮想的な視覚検査装置100の評価を実施する。
【0012】
評価システム10は、例えばパソコンにおいて、評価プログラムを実行することによりソフトウェア的に実現される。なお、評価システム10は、ソフトウェア的な実現だけでなく、ハードウェア的に実現してもよい。制御装置11は、例えばCPU、ROMおよびRAMなどを有するマイクロコンピュータで構成されており、上述の評価プログラムを実行することにより、評価システム10の全体を制御する。
【0013】
画像生成装置12は、基礎データ取得部21、3D画像生成部22、2Dカメラ画像作成部23、2D画像送信部24および記憶データ送信部25を有している。基礎データ取得部21は、ワークデータおよび周辺データを取得する。基礎データ取得部21は、入力部26から入力されたワークデータおよび周辺データを取得する。入力部26は、ワークデータおよび周辺データがこれらを構成する各種のパラメータとして入力される。入力部26は、例えばキーボードやマウスなどによる機械的な入力、およびCDやHDDなどによる光学的または磁気的な入力が行われる。基礎データ取得部21で取得されるワークデータは、検査対象となるワークを擬似的に形成する基礎となるデータである。ワークデータは、例えばワークの形状、寸法および表面の状態などを含んでいる。ワークデータは、例えばワークの3D−CADによるデータによって3次元のデータとして入力される。一方、周辺データは、検査設備における検査条件を擬似的に形成する基礎となるデータである。上述のように、検査設備の検査条件すなわち周辺の環境は、刻々と変化する。そのため、検査設備の周辺の環境に応じて変化する任意の検査条件が周辺データとして入力される。
【0014】
3D画像生成部22は、基礎データ取得部21で取得したワークデータおよび周辺データから、ワークの疑似3D画像を生成する。すなわち、3D画像生成部22は、ワークデータに基づいてワークの3D画像を再現するとともに、再現した3D画像に対し周辺データに基づいて陰影や光源からの光に対する反射などを付加する。これにより、3D画像生成部22は、実際の検査設備で検査される対象となるワークに近似した疑似3D画像を生成する。すなわち、3D画像生成部22は、ワークデータおよび周辺データに基づいてシミュレートしたワークを疑似3D画像として生成する。
【0015】
2Dカメラ画像作成部23は、3D画像生成部22で生成した疑似3D画像から疑似2D画像を作成する。具体的には、2Dカメラ画像作成部23は、生成した疑似3D画像を、実際の視覚検査装置100のカメラ102による撮影範囲と一致する指定範囲から擬似的に撮影する。この場合、2Dカメラ画像作成部23は、疑似3D画像を実際のカメラ102で撮影するのではなく、あくまでも擬似的に作成した疑似3D画像を、カメラ102の撮影範囲と一致する指定範囲から擬似的に撮影する。これにより、2Dカメラ画像作成部23は、疑似3D画像を擬似的に撮影した疑似2D画像をソフトウェア的に作成する。これら、3D画像生成部22による疑似3D画像の生成、および2Dカメラ画像作成部23による疑似2D画像の作成は、いずれもソフトウェア的に一連の処理として作成される。
【0016】
2D画像送信部24は、2Dカメラ画像作成部23で作成した疑似2D画像を疑似2D画像データとして検査装置13へ送信する。また、記憶データ送信部25は、2Dカメラ画像作成部23で作成した疑似2D画像データ、およびこの疑似2D画像の作成条件データを記憶装置14へ送信する。作成条件データは、2Dカメラ画像作成部23で疑似2D画像を作成するために使用したワークデータおよび周辺データである。これにより、2Dカメラ画像作成部23で疑似2D画像が作成されると、2D画像送信部24はこの疑似2D画像の疑似2D画像データを検査装置13へ送信し、記憶データ送信部25はこの疑似2D画像データを作成条件データとともに記憶装置14へ送信する。
【0017】
検査装置13は、検査プログラム取得部31、プログラム実行部32、2D画像付与部33および検査結果送信部34を有している。検査プログラム取得部31は、例えば制御装置11の図示しない記憶部に記憶されている検査プログラムを取得する。検査プログラムは、実際の視覚検査装置100におけるワーク104の検査のために予め設定されている。そのため、検査プログラム取得部31は、予め設定され、図示しない記憶部に記憶されている検査プログラムを取得する。また、検査プログラムは、評価プログラムに含まれるサブルーチンの一つとして設定されている場合もある。この場合、検査プログラム取得部31は、評価プログラムから検査プログラムを取得する。
【0018】
プログラム実行部32は、検査プログラム取得部31で取得した検査プログラムを実行する。2D画像付与部33は、プログラム実行部32で実行される検査プログラムへ疑似2D画像を検査対象疑似2D画像として与える。すなわち、2D画像付与部33は、画像生成装置12の2D画像送信部24から送信された疑似2D画像データを、プログラム実行部32で実行されている検査プログラムへ、検査対象疑似2D画像データとして与える。プログラム実行部32は、検査プログラムを実行することにより、2D画像付与部33から与えられた検査対象疑似2D画像データに基づいて検査対象疑似2D画像を検査する。そして、検査結果送信部34は、検査プログラムの実行の結果として得られた検査結果を記憶装置14へ送信する。すなわち、検査結果送信部34は、検査プログラムの実行によって検査対象疑似2D画像が検査されると、この検査結果を検査結果データとして記憶装置14へ送信する。
【0019】
記憶装置14は、記憶領域部41、受理部42および対応部43を有している。記憶領域部41は、例えばHDDなどの大容量記憶手段で構成されており、画像生成装置12および検査装置13から送信された各種のデータを記憶する。受理部42は、画像生成装置12の記憶データ送信部25および検査装置13の検査結果送信部34から各種のデータを取得し、取得した各種のデータを記憶領域部41に書き込む。具体的には、受理部42は、画像生成装置12の記憶データ送信部25から疑似2D画像データおよび作成条件データを取得する。また、受理部42は、検査装置13の検査結果送信部34から検査結果データを取得する。
【0020】
対応部43は、受理部42で取得した各種のデータを対応させる、すなわち関連づけをする。具体的には、対応部43は、画像生成装置12の記憶データ送信部25から送信された疑似2D画像データおよび作成条件データに、検査装置13の検査結果送信部34から送信されたその疑似2D画像すなわち検査対象疑似2D画像に対応する検査結果データを関連づけて記憶領域部41に記憶する。つまり、図2に示すように、検査装置13における検査対象となった検査対象疑似2D画像51の疑似2D画像データ52、この検査対象疑似2D画像51の作成条件データ53、およびこの検査対象疑似2D画像51の検査結果データ54を一つの検査データファイル55として記憶領域部41に記憶する。
【0021】
表示装置15は、例えば液晶ディスプレイなどで構成されている。表示装置15は、記憶装置14に記憶されている検査データファイル55に基づいて画像や文字を表示する。具体的には、表示装置15は、図2に示す検査データファイル55を構成する対象疑似2D画像データ52に基づく画像、作成条件データ53に基づく作成条件、および検査結果データ54に基づく検査結果を表示する。
【0022】
次に、上記の構成による評価システム10の処理の流れについて図3に基づいて説明する。以下の説明は、検査条件の一つとして検査設備における光源である照明の照度と判定結果との関係をシミュレートする例である。
評価システム10によって視覚検査装置の評価を開始すると、画像生成装置12の基礎データ取得部21は入力部26を経由して基礎データであるワークデータおよび周辺データを取得する(S101)。このとき、画像生成装置12は、基礎データ取得部21において、図4に示すようにワークデータ71および周辺データ72を取得する。ワークデータ71は、ワークの形状などが三次元で表現されている。周辺データ72は、擬似2D画像の撮影条件となる。例えば照明の照度と判定結果との関係をシミュレートする場合、周辺データ72は、これを構成する照度データLが種々の値に変更されつつ入力される。
【0023】
基礎データ取得部21でワークデータ71および周辺データ72が取得されると、画像生成装置12の3D画像生成部22は取得したワークデータ71および周辺データ72からワークの疑似3D画像73を生成する(S102)。3D画像生成部22は、例えば図4に示すように仮想的な検査設備74を構築し、この仮想的な検査設備74でワークデータ71および周辺データ72に基づいてシミュレートを実行することにより、ワークの疑似3D画像73を生成する。この疑似3D画像73は、ワークデータ71に基づいて実際の検査設備74で検査対象となるワークが忠実に再現されているとともに、周辺データ72に基づいてワークに生じる例えば陰影や表面の反射などが忠実に再現されている。なお、この疑似3D画像73や検査設備74は、あくまでも仮想的なデータとして生成されるものであり、可視的に生成されるとは限らない。
【0024】
疑似3D画像73が生成されると、2Dカメラ画像作成部23は生成された疑似3D画像73に基づいて疑似2D画像51を作成する(S103)。2Dカメラ画像作成部23は、例えば図4に示すように仮想的な検査設備74で再現された疑似3D画像73を所定のカメラ位置から仮想的に撮影した画像をシミュレートして疑似2D画像51を作成する。すなわち、2Dカメラ画像作成部23は、図7に示す実際の検査設備101のカメラ102でワーク104を撮影する位置と同じ位置から疑似3D画像73を仮想的に撮影する。そして、2Dカメラ画像作成部23は、仮想的に撮影した画像を疑似2D画像51として作成する。この疑似2D画像51も仮想的なワークの疑似3D画像73に基づいてシミュレートによって作成されるものであり、実際にカメラ102を用いて撮影することはない。この疑似2D画像51は、疑似3D画像73に基づくシミュレートによって可視的な画像として作成される。
【0025】
一方、検査装置13は、評価システム10による視覚検査装置の評価の開始とともに、検査プログラムを取得する(S201)。検査プログラム取得部31は、図示しない記憶部に記憶されている既定の検査プログラムを取得する。そして、プログラム実行部32は、検査プログラム取得部31で取得された検査プログラムを起動する(S202)。プログラム実行部32で検査プログラムが実行されると、2D画像付与部33は画像生成装置12から疑似2D画像51の送信があったか否かを判断する(S203)。2D画像付与部33は、画像生成装置12から疑似2D画像51の送信がない場合(S203:No)、疑似2D画像51の送信があるまで待機する。
【0026】
また、記憶装置14は、評価システム10による視覚検査装置の評価の開始とともに、起動される(S301)。そして、記憶装置14の受理部42は、画像生成装置12から疑似2D画像51の疑似2D画像データ52、およびこの疑似2D画像51の作成条件データ53が送信されたか否かを判断する(S302)。受理部42は、画像生成装置12からこれらのデータの送信がない場合(S302:No)、これらのデータの送信があるまで待機する。
【0027】
S103において2Dカメラ画像作成部23で疑似2D画像51を作成すると、画像生成装置12の2D画像送信部24は作成された疑似2D画像51、すなわちこの疑似2D画像51のデータである疑似2D画像データ52を検査装置13へ送信する(S104)。また、画像生成装置12の記憶データ送信部25は、作成された疑似2D画像51の疑似2D画像データ52および作成条件データ53を記憶装置14へ送信する(S105)。S104において2D画像送信部24から検査装置13へ疑似2D画像データ52が送信されると、検査装置13の2D画像付与部33はこの疑似2D画像データ52を取得する(S204)。また、S105において記憶データ送信部25から記憶装置14へ疑似2D画像データ52および作成条件データ53が送信されると、記憶装置14の受理部42はこの疑似2D画像データ52および作成条件データ53を取得する(S303)。そして、記憶装置14の受理部42は、検査装置13から疑似2D画像51の検査結果データ54が送信されたか否かを判断する(S304)。受理部42は、検査装置13から検査結果データ54の送信がない場合(S304:No)、検査結果データ54の送信があるまで待機する。
【0028】
検査装置13の2D画像付与部33は、S204において画像生成装置12の2D画像送信部24から疑似2D画像51の疑似2D画像データ52を取得すると、取得した疑似2D画像データ52をプログラム実行部32で実行されている検査プログラムへ検査対象疑似2D画像データとして与える(S205)。これにより、プログラム実行部32は、既定の検査プログラムに基づいて、与えられた検査対象疑似2D画像データに基づく疑似2D画像51の検査を実行する(S206)。プログラム実行部32は、疑似2D画像51とマスター画像77とを比較することにより、疑似2D画像51の検査を実行する。マスター画像77は、検査の基準となる画像であり、予め設定された条件で作成されている。プログラム実行部32は、S206で検査を実行すると、検査の結果として検査結果データ54を作成する(S207)。検査結果データ54は、例えば検査の対象となったワークの疑似2D画像51が良品または不良品のいずれであるかを示す判定結果などを含んでいる。
【0029】
S207においてプログラム実行部32で検査結果データ54が作成されると、検査装置13の検査結果送信部34は作成された検査結果データ54を記憶装置14へ送信する(S208)。S208において検査結果送信部34から記憶装置14へ検査結果データ54が送信されると、記憶装置14の受理部42はこの検査結果データ54を取得する(S305)。記憶装置14は、受理部42において検査装置13から検査結果データ54を取得すると、対応部43においてS303で画像生成装置12から取得した疑似2D画像データ52および作成条件データ53とS305で取得した検査結果データ54とを対応づけて検査データファイル55として記憶領域部41に記憶させる(S306)。対応部43は、S303において取得した疑似2D画像データ52および作成条件データ53と、S305において取得した検査結果データ54とを、一つの検査データファイル55として記憶領域部41に書き込む。画像生成装置12は、S105において疑似2D画像データ52および作成条件データ53を記憶装置14へ送信した後、次の作成条件が設定されているか否かを判断する(S106)。画像生成装置12は、次の作成条件が設定されているとき(S106:Yes)、S101へリターンし、S101以降の処理を繰り返す。画像生成装置12は、次の作成条件が設定されていないとき(S106:No)、処理を終了する。
【0030】
表示装置15は、評価システム10による視覚検査装置の評価が開始されると、必要な情報を表示する。そして、S306において記憶された検査データファイル55に基づいて画像や文字を評価画面78として表示する。すなわち、表示装置15は、疑似2D画像データ52、作成条件データ53および検査結果データ54に基づく画像や文字を評価画面78として表示する。さらに、表示装置15は、S101でワークデータ71や周辺データ72が変更されるたびに疑似2D画像データ52、作成条件データ53および検査結果データ54を蓄積する。そして、表示装置15は、これら蓄積された疑似2D画像データ52、作成条件データ53および検査結果データ54から、作成条件と検査結果との相関図を表示する。例えば、照明の照度と検査結果、特に判定結果との相関を評価する場合、表示装置15は、例えば図5に示すように照度ごとの疑似2D画像51の変化を示す評価画像81、および照度と判定結果との関係をグラフ82として表示する。
【0031】
ユーザは、表示装置15に表示された相関性を示すグラフ82や、疑似2D画像51、作成条件データ53および検査結果データ54を含む評価画像81などを参照することにより、所望の作成条件における疑似2D画像51や検査条件の相関性を確認することができる。
【0032】
(画像の精度)
次に、実際にカメラ102を用いて撮影したワーク104の実画像に対する上述の画像生成装置12で生成したワークの疑似2D画像51の精度について図6に基づいて説明する。
疑似2D画像51の精度を検証するために、図6に示すように同一のワーク104を同一の条件で撮影した実画像91および実画像92と、画像生成装置12で生成した疑似2D画像51を対比した。実画像91および実画像92は、実際の視覚検査装置100のカメラ102を用いて同一の撮影条件で異なるタイミングで撮影した画像である。一方、疑似2D画像51は、この視覚検査装置100をシミュレートし、実画像91および実画像92と同一の撮影条件で画像生成装置12において擬似的に生成した画像である。
【0033】
これら実画像91、実画像92および疑似2D画像51は、いずれも256階調のグレースケールレベルで画像処理ライブラリ(OpenCV)のテンプレートマッチング(Template Maching)手法を利用して画像の一致度(正規化相関値)を算出した。この検証では、実画像91に対する実画像92の一致度M1、実画像91に対する疑似2D画像51の一致度M2、実画像92に対する実画像91の一致度M3、実画像92に対する疑似2D画像51の一致度M4、疑似2D画像51に対する実画像91の一致度M5、および疑似2D画像51に対する実画像92の一致度M6をそれぞれ算出した。一致度M=1のとき、二つの画像は完全に一致する。
【0034】
上記の一致度M1〜M6の算出の結果、一致度M1=0.958、一致度M2=0.932、一致度M3=0.972、一致度M4=0.981、一致度M5=0.952、一致度M6=0.983となった。これにより、実画像91と実画像92との間で算出した一致度M1および一致度M3は、それぞれ0.958、0.972となった。一方、実画像91と疑似2D画像51との間で算出した一致度M2および一致度M5はそれぞれ0.932、0.952となり、実画像92と疑似2D画像51との間で算出した一致度M4および一致度M6はそれぞれ0.981、0.983となった。このように、実画像91または実画像92と疑似2D画像51との間の一致度M2、M4、M5、M6は、実画像91と実画像92との間の一致度M1、m3と大差がない。これらの結果、視覚検査装置100の評価について画像生成装置12で生成した疑似2D画像51を用いても、検査の精度は維持されることが検証された。
【0035】
以上説明した一実施形態では、3D画像生成部22において擬似的に生成したワークの疑似3D画像73を撮影して疑似2D画像51を生成している。カメラによる撮影で取得した画像を検査用として画像処理する場合、図6に示すように、実際にカメラ102で撮影して取得した実画像91、92と、擬似的に作成した疑似2D画像51とは、二値化することによってほぼ一致する。そのため、実際の検査設備101においてワーク104をカメラ102で撮影しなくても、検査設備101を想定した仮想的な検査設備74を用いてワークの疑似3D画像73をシミュレートして生成することにより、実際のワーク104をカメラ102で撮影した場合と同様の疑似2D画像51が得られる。すなわち、画像生成装置12は、生成したワークの疑似3D画像73を、検査と同一の条件で撮影したとして、疑似2D画像51を生成している。画像処理を実施する場合、上述のようにワーク104をカメラ102で実際に撮影した画像すなわち実画像91、92と疑似3D画像73として作成されたワークを擬似的に撮影した疑似2D画像51とはほぼ同一となる。そのため、実際にカメラ102で撮影した実画像91、92に代えて疑似2D画像51を用いる場合でも、検査装置13による検査結果は実際の視覚検査装置100を用いた場合と同等となり、評価性能は確保される。これにより、検査条件すなわち疑似3D画像73および疑似2D画像51のシミュレート条件を種々変更することにより、実際の検査設備101を必要とすることなく、幅広い検査条件でワークの検査結果が取得される。また、疑似2D画像51を利用して得られた検査結果データ54は、作成した疑似2D画像データ52およびその作成条件データ53とともに記憶装置14に記憶される。そして、表示装置15は、記憶装置14に記憶されている疑似2D画像51およびその作成条件データ53と検査結果データ54とを関連づけて表示する。そのため、疑似2D画像51のシミュレート条件を種々変更した結果として得られた検査結果は、疑似2D画像51と対比しながら確認される。その結果、疑似2D画像51とともに表示される作成条件や検査結果を参考にして、検査条件の変化の傾向は容易に把握される。したがって、実際の検査設備101がなくても視覚検査装置100を評価することができるとともに、検査条件を変化させつつ検査結果の変化の傾向を容易に取得することができる。
【0036】
以上説明した本発明の一実施形態では、入力部16から入力する周辺データとして照度を適用する例について説明した。しかし、この照度は周辺データの一例であって、周辺データには検査条件に影響を与えるおそれがある要素であれば照度に限らず種々のデータを適用することができる。
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
図面中、10は評価システム、13は検査装置(検査手段)、14は記憶装置(記憶手段)、15は表示装置(表示手段)、21は基礎データ取得部、22は3D画像生成部、23は2Dカメラ画像作成部、100は視覚検査装置、101は検査設備、102はカメラ、104はワークを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査設備に設けられているカメラで検査対象であるワークを撮影して、前記カメラで撮影した撮影画像に基づいて前記ワークを検査する視覚検査装置を評価する評価システムであって、
前記ワークを擬似的に形成する基礎となるワークデータ、および前記検査設備における検査条件を擬似的に形成する基礎となる周辺データを取得する基礎データ取得手段と、
前記基礎データ取得手段で取得した前記ワークデータおよび前記周辺データから、前記ワークの疑似3D画像を生成する3D画像生成手段と、
前記3D画像生成手段で生成した前記疑似3D画像を、前記カメラによる撮影範囲と一致する指定範囲から擬似的に撮影した疑似2D画像を作成する2Dカメラ画像作成手段と、
前記2Dカメラ画像作成手段で作成した前記疑似2D画像を検査対象疑似2D画像として取得し、予め設定されている検査プログラムにしたがって前記検査対象疑似2D画像から前記ワークの検査結果を作成する検査手段と、
前記2Dカメラ画像作成手段から前記検査対象疑似2D画像およびその作成条件データを取得し、前記検査手段から前記検査対象疑似2D画像の検査結果を取得して、前記検査対象疑似2D画像およびその作成条件データと前記検査対象疑似2D画像の検査結果とを関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記検査対象疑似2D画像およびその作成条件データと前記検査対象疑似2D画像の前記検査結果とを関連づけて表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする視覚検査装置の評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−217136(P2010−217136A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67462(P2009−67462)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【出願人】(390001052)財団法人機械振興協会 (21)
【Fターム(参考)】