説明

親水性部材及びその製造方法

【課題】各種の基材表面に親水性に優れ、且つ、より良好な耐摩耗性を有する、透明性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性に優れた表面親水性層を備えた表面親水性部材及び塗布液の経時安定性に優れるその製造方法を提供することにある。
【解決手段】基材上に、a)親水性ポリマー、b) Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物、c)金属錯体触媒を含有する親水性被膜を塗設したことを特徴とし、該基材上に、a)親水性ポリマー、b) 該金属アルコキシド化合物、c)金属錯体触媒を含有する水溶液を塗布し、加熱、乾燥することにより、親水性皮膜を塗設することにより製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面親水性部材及びその製造方法に関し、詳細には、親水性を保持し、耐久性、透明性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液の経時安定性に優れる表面親水性部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム表面を有する製品・部材は、幅広い分野で用いられ、目的に応じ加工され機能を付与した上で使用されている。但しそれらの表面は、樹脂本来の特性から、疎水性・親油性を示すものが一般的である。従って、これらの表面に汚れ物質として、油分等が付着した場合、容易に除去することができず、また蓄積することにより、該表面を有する製品・部材の機能・特性を著しく低下させることがあった。また高湿度の条件や降雨下に曝される製品・部材では、水滴が付着することにより、透明な機能を有する製品・部材において、光の乱反射により光の透過性が阻害される問題があった。ガラスや金属等の無機表面を有する製品・部材においても、油分等の汚れ物質の付着に対する防汚性は十分とは言えず、水滴の付着による防曇性についても十分ではなかった。特に自動車用ガラス、建材用ガラスでは、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着する場合や、水滴の付着によりガラスを透して(鏡の場合は反射して)視界を確保することが妨げられる場合が多く、防汚性や防曇性の機能付与が強く求められていた。
【0003】
防汚性の観点から、汚れ物質を油分等の有機系物質と想定すると、汚れ防止の為には材料表面との相互作用を低減する、即ち親水化するか、撥油化する必要がある。また防曇性に対しても、付着水滴を表面に一様に拡げる拡張濡れ性(即ち親水性)を付与するか、付着水滴を除去し易くさせる撥水性を付与することが必要となる。従って、現在検討されている防汚・防曇材料は、親水化や撥水・撥油化に依拠しているものが多い。
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(非特許文献1)。この報告によればこの塗膜はある程度の親水性を有するものの、基材との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0004】
その他の表面親水性機能を有する部材として、従来から光触媒として酸化チタンの利用が知られている。これは、光照射による有機物の酸化分解機能と親水化機能に基づくもので、例えば、特許文献1において、基材表面に光触媒含有層を形成すると、光触媒の光励起に応じて表面が高度に親水化されることが開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防曇、防汚等の機能を付与できることが報告されている。酸化チタンをガラス表面にコーティングした部材は、セルフクリーニング材料として、建材用窓ガラスや自動車用フロントガラスに使用されているが、防汚性や防曇性の機能発現には、長時間太陽光の下に曝すことが必要であり、長期経時での汚れの蓄積により、その性質が劣化することは避けられなかった。また膜強度が十分とは言えず、耐久性の向上が必要であった。またプラスチック基板上に酸化チタン層を設けたセルフクリーニングフィルムも自動車用サイドミラー等に使用されているが、同じく十分な膜強度を有さず、より良好な耐摩耗性を有する親水性材料が求められていた。
【0005】
一方、撥水・撥油性に基づく防汚・防曇性材料としては、主にシリコーン化合物やフッ素化合物が使用されている。例えば、基板表面を末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚材料が特許文献2に、ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物を有する材料が特許文献3に、二酸化珪素を主成分とする光学薄膜とパーフルオロアクリレートとアルコキシシラン基を有するモノマーとの共重合体との組合せが特許文献4に開示されている。しかしながらこれらのシリコーン化合物やフッ素化合物を用いた防汚材料は、防汚性が不十分であり、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れを除去し難く、フッ素やシリコーン等の表面エネルギーの低い化合物による表面処理は、経時による機能の低下が懸念され、耐久性の優れた防汚・防曇性部材の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【非特許文献1】化学工業日報、1995年1月30日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、各種の基材表面に親水性に優れ、且つ、より良好な耐摩耗性を有する、透明性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性に優れた表面親水性層を備えた表面親水性部材及び塗布液の経時安定性に優れるその製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、各種の基材の表面に、親水性を保持し、耐久性、透明性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液の経時安定性に優れ、且つ菌類の繁殖を防止し、抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた親水化表面層を備える親水性部材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、親水性グラフトポリマーの特性に着眼し研究を進めた結果、本発明者らは、親水性ポリマーと金属アルコキシドを加水分解、縮重合することにより形成された架橋構造とを備えた表面層により上記目的を達成し得ること、このような架橋構造を有する表面層が反応性基を末端に有する親水性ポリマーあるいは、グラフト鎖を有する親水性ポリマーを架橋剤とを組合せることにより容易に得られること、金属錯体触媒を用いた場合に親水性層形成用塗布液の保存安定性が向上すること、さらには、このような表面層に親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
(1)基材上に、a)親水性ポリマー、b) Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物、c)金属錯体触媒を含有する親水性被膜を塗設したことを特徴とする親水性部材。
(2)前記c)金属錯体触媒が、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成されるものである前記(1)の親水性部材。
(3)前記基材が、ガラス基材またはプラスチック基材である前記(1)の親水性部材。
(4)前記親水性被膜が、さらに抗菌剤を含有する前記(1)の親水性部材。
(5)前記a)の親水性ポリマーが、下記一般式(I)及び(II)から選ばれる少なくともいずれかで表される前記(1)のいずれかに記載の親水性部材。
【0010】
【化1】

【0011】
式(I)および(II)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは反応性基(カルボキシル基、その塩、無水カルボン酸基、アミノ、ヒドロキシル、エポキシ基、メチロール、メルカプト、イソシアナート、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基)を表し、AおよびL1、L2,L3は、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR7、−CONH2、−CON(R72、−COR7、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M又は−N(R731を表し、ここで、R7は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Z1はハロゲンイオンを表し、Bは式(III)を表す。
【0012】
【化2】

【0013】
式(III)中、R1、R2、L1及びYは式(I)および(II)中のものと同じ。
【0014】
(6)自動車用ガラスである、前記(1)の親水性部材。
(7)建材用ガラスである、前記(1)の親水性部材。
(8)基材上に、a)親水性ポリマー、b) Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物、c)金属錯体触媒を含有する水溶液を塗布し、加熱、乾燥することにより、親水性皮膜を塗設する親水性部材の製造方法。
【0015】
その他、以下の態様が好ましい。
(9)前記c)金属錯体触媒が、Ti(acac)である前記(1)の親水性部材。
(10)前記親水性被膜が、さらにd)コロイダルシリカを含有する前記(1)の親水性部材。
(11)前記親水性被膜の表面自由エネルギーが70mN/m〜95mN/mである、前記(1)の親水性部材。
(12)前記a)親水性ポリマーの親水性基の密度が1〜30meq/gである、前記(1)の親水性部材。
(13)前記a)親水性ポリマーの粘度が0.1〜100cPs(5%水溶液)である、前記(1)の親水性部材。
(14)前記親水性被膜の光透過率が100%〜70%である、前記(1)の親水性部材。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、親水性ポリマーが、金属アルコキシドを加水分解、縮重合することにより形成された架橋構造を有しており、該親水性ポリマーは、末端で化学結合しているか、または、架橋構造物に化学結合した主鎖に親水性ポリマーが結合しているグラフトポリマー構造を有しているため、親水性ポリマー鎖の運動性が非常に高く、親水性に優れた表面を提供できる。
また、金属アルコキシドを加水分解、縮重合した架橋構造は、架橋密度の高い硬化膜であり、強度に優れた耐久性の良い皮膜を形成する。そのため、ガラス基板またはプラスチック基板等の基材上に設けた親水性層が、製造時などのハンドリング時における曲げに対して、ひび割れなどの故障を起こすことなく、常に、正常な親水層表面を提供できる。
【0017】
また、本発明では、金属錯体触媒を使用する場合、親水性層皮膜形成するための乾燥温度を低く設定することが可能であり、抗菌剤や基材板上での熱変形を抑制することが可能である。
また、本発明の親水性部材は、表面親水性が非常に高いにもかかわらず、金属アルコキシドの加水分解、重縮合により、架橋密度の高い硬化膜が得られるため、その親水性層は水を含みにくい性質があり、そのため、環境湿度(特に高湿条件下)によるベタツキが抑制され、構造物を重ねて保管したときの、裏面接着防止に効果がある。すなわち、構造物の保存時における、親水性層表面と上に重なった構造物の裏面接着による剥がれなどの故障を抑えることが可能である。
【0018】
更に本発明の親水性部材は、好ましくは親水性、水溶性抗菌剤を用いることにより、表面親水性を損なうことなく優れた抗菌性、防カビ性、防藻性を有することができる。また、光触媒のような酸化分解作用がない親水性部材であるため、長期間に渡って抗菌性、防カビ性、防藻性を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明の表面親水性部材は、ガラス、プラスチック等の適切な基材上に、親水性ポリマー鎖を有し、且つ、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシドを加水分解、重縮合して形成された架橋構造を有する親水性被膜(親水性層または親水層ともいう)を備えるものであるが、このような架橋構造を有する親水性層は、後に詳述する金属アルコキシド化合物と、親水性グラフト鎖を形成しうる親水性の官能基を有する化合物と、適切な触媒とを用いて、適宜、形成することができる。金属アルコキシドのなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましく、具体的には、シランカップリング剤に用いる化合物を好適に使用することができる。
【0020】
前記したような金属アルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では以下、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。このようなポリマー鎖の片末端が固定されずポリマー鎖の運動性が大きい親水性層は、例えば、(A)シランカップリング基等の反応性基を末端に有する一般式(I)で表される高分子化合物、または、該反応性基を幹ポリマーの側鎖として有する一般式(II)で表される高分子化合物と、(B)加水分解性の金属アルコキシド化合物と、該加水分解及び重縮合を生起する金属錯体触媒とを含有する親水性塗布液組成物を調製し、それを塗布、乾燥して表面親水性層を形成することにより容易に形成し得る。以下に、この好ましい態様である親水性層を形成するための親水性塗布液組成物に含まれる各成分について説明する。
【0021】
〔親水性ポリマー〕
本発明に使用される親水性ポリマーは、親水性基を有し、且つSi、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物と、触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマーである。親水性基としては、好ましくはカルボキシ基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、スルホン酸基、スルホン酸基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基等の官能基が挙げられる。これらの基は、ポリマー中のどの位置に存在しても良い。ポリマー主鎖より直接、または連結基を介し結合しているか、ポリマー側鎖やグラフト側鎖中に結合しており、複数個が存在するポリマー構造が好ましい。金属アルコキシド化合物と、触媒の作用により結合を生じる基としては、カルボキシル基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、無水カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和基、エステル基、テトラゾール基などの反応性基が挙げられる。また親水性基、および金属アルコキシド化合物と触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマー構造としては、エチレン性不飽和基(例えばアクリレート基、メタクリレート基、イタコン酸基、クロトン酸基、桂皮酸基、スチレン基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基など)がビニル重合したポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミック酸などのような縮重合したポリマー、ポリウレタンなどのような付加重合したポリマーの他、セルロース、アミロース、キトサンなどの天然物環状ポリマー構造を好ましく挙げることができる。具体的には一般式(I)、(II)で表される構造を挙げられる。
【0022】
【化3】

【0023】
式(I)および(II)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは反応性基(カルボキシル基、その塩、無水カルボン酸基、アミノ、ヒドロキシル、エポキシ基、メチロール、メルカプト、イソシアナート、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基)を表し、AおよびL1、L2,L3は、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR7、−CONH2、−CON(R72、−COR7、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M又は−N(R731を表し、ここで、R7は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Z1はハロゲンイオンを表し、Bは式(III)を表す。
【0024】
【化4】

【0025】
式(III)中、R1、R2、L1及びYは式(I)および(II)中のものと同じ。
【0026】
本発明で用いられる親水性ポリマーは、反応性基と親水性基を有する。反応性基は、主鎖の一つの末端のみに有する場合や、主鎖に複数個有する場合などがある。
「反応性基」は、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる官能基を意味する。また、反応性基同士が化学結合を形成してもよい。親水性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と反応することにより水不溶性になることが好ましい。
化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。化学結合は、共有結合であることが好ましい。
反応性基は、一般には、ポリマーの架橋剤に含まれる反応性基と同様であり、熱または光により架橋を形成できる化合物である。架橋剤について、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載がある。
【0027】
反応性基の例は、カルボキシル(HOOC−)、その塩(MOOC−、Mはカチオン)、無水カルボン酸基(例えば、無水コハク酸、無水フタル酸または無水マレイン酸から誘導される一価の基)、アミノ(H2N−)、ヒドロキシル(HO−)、エポキシ基(例、グリシジル基)、メチロール(HO−CH2−)、メルカプト(HS−)、イソシアナート(OCN−)、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基を含む。反応性基としては、アルコキシシリル基が最も好ましい。片末端には、2以上の反応性基を有していてもよい。2以上の反応性基は、互いに異なっていてもよい。
【0028】
親水性ポリマーの繰り返し単位と反応性基との間や、親水性ポリマーの繰り返し単位と主鎖に連結基が介在していることが好ましい。連結基AおよびL1、L2,L3は、それぞれ独立に単結合または、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、およびそれらの組合せから選ばれることが好ましい。連結基は、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−または−S−または−CO−または−NH−を含む組合せであることが好ましい。
【0029】
(末端に反応性基を有する親水性ポリマー(I))
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter (Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基(例、カルボキシル)を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、2000乃至10万が最も好ましい。
【0030】
この一般式(I)で表される高分子化合物は、末端に反応性基を有する親水性ポリマーである。上記一般式(I)において、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R1、R2は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0031】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0032】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0033】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0034】
AおよびL1は単結合又は有機連結基を表す。ここで、AおよびL1が有機連結基を表す場合、AおよびL1は非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0035】
【化5】

【0036】
また、Yは−NHCOR7、−CONH2、−CON(R72、−COR7、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M又は−N(R731を表し、ここで、R7は、炭素数1〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Z1はハロゲンイオンを表す。また、−CON(R72のように複数のR7を有する場合、R7同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R7はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1、R2がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0037】
7としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。Yとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3-NMe4+、モルホリル基等が好ましい。
【0038】
本発明に好適に用い得るa)親水性ポリマーの具体例(例示化合物1〜例示化合物38)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
【化9】

【0043】
上記に例示した親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0044】
【化10】

【0045】
上記式(i)及び(ii)において、A、R1〜R2、L1、Yは、上記式(I)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0046】
(複数個反応性基を有する親水性ポリマー(II))
上記式(II)で表される反応性基を複数個有する親水性ポリマーは、金属アルコキシドと反応し得る官能基を有する幹ポリマーに親水性ポリマー側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーを用いることができる。
上記式(II)において、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、上記式(I)のR1、R2と同様の置換基を表す。L2、L3は、上記式(I)のL1と同義である。Bは、上記式(III)で表され、式(III)中の、R1、R2、L1及びYは式(I)および(II)中のものと同じである。Xは上記式(I)と同義である。
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、および“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
【0047】
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0048】
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
【0049】
(親水性マクロモノマー)
本発明で使用される親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、およびその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の質量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
【0050】
親水性マクロモノマーと共重合可能でかつ架橋剤と反応し得る官能基(以下、適宜、反応性官能基と称する)を有するモノマーの反応性官能基としては、カルボキシル基あるいはその塩、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、グリシジルなどのエポキシ基、メチル基、(ブロック)イソシアネート基、シランカップリング剤等が挙げられる。一般的なモノマーとしては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊〔1981〕、「紫外線硬化システム」加藤清視著、総合技術センター刊〔1989〕、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」加藤清視著、高分子刊行会〔1985〕、「新・感光性樹脂の実際技術」赤松清著、シーエムシー刊行(102−145頁)〔1987〕等に記載されているモノマーが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ、アミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ、アミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、下記式(1)で表される如きフェノール性水酸基含有モノマー、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、N−メチロールメタクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、また、下記式(2)で例示されるようなブロックイソシアネートモノマー等のブロックイソシアネートモノマー、ビニルアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。
【0051】
【化11】

【0052】
これらのグラフトポリマーとしては、質量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成し易いなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
【0053】
上記、親水性ポリマーは、式中Yで表される親水性を発現する親水性官能基を有しており、この官能基の密度が高いほど表面親水性が高くなり好ましい。親水性官能基密度は、親水性ポリマー1g当たりの官能基モル数で表すことができ、1〜30meq/gが好まく、2〜20meq/gがより好ましく、3〜15meq/gが最も好ましい。
親水性ポリマー(II)の共重合比率は、親水性官能基Yの量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、Bを含有するモノマーのモル比(m)とXを含有するモノマーのモル比(n)が、m/n=30/70〜99/1の範囲が好ましく、m/n=40/60〜98/2がより好ましく、m/n=50/50〜97/3が最も好ましい。mがm/n=30/70以上の比率であれば親水性が不足することなく、一方、nがm/n=99/1以上の比率であれば、反応性基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0054】
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100cPs(5%水溶液、25℃測定)、好ましくは0.5〜70cPs、さらに好ましくは1〜50cPsの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0055】
〔Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物〕
本発明で用いられる金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシド同士が重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、さらに、前記親水性ポリマーとも化学結合する。金属アルコキシドは一般式(IV-1)および一般式(IV-2)で表すことができ、式中、R8は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R9はアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R8及びR9がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
【0056】
(R8m−Z−(OR94-m (IV-1)
Al−(OR93 (IV-2)
【0057】
以下に、一般式(IV-1)および一般式(IV-2)で表される加水分解性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、等を挙げることができる。
【0058】
ZがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、中心金属がAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
【0059】
〔触媒〕
本発明の親水性層の形成において使用できる金属錯体触媒は、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができる。特に好ましい金属錯体触媒としては、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0060】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0061】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0062】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0063】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0064】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol-Gel.Sci.and Tec. 16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0065】
また、上記の金属錯体触媒の他に、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができるものを併用してもよい。このような触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などの酸性を示す化合物、あるいは、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などの塩基性化合物が挙げられる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0066】
〔抗菌剤〕
本発明の親水性部材に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性塗布液組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤または、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
【0067】
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体,イミダゾール誘導体,スルホン誘導体,N・ハロアルキルチオ化合物,アニリド誘導体,ピロール誘導体,第4アンモニウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以後、TBZと表示〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以後、BCMと表示〉、10,10'−オキシビスフェノキシアルシン〈以後、OBPAと表示〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以後、ZPTと表示〉、N,N−ジメチル−N'−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2'−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
【0068】
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀,銀,銅,亜鉛,鉄,鉛,ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。たとえばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0069】
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
本発明には、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、親水層のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散あるいは固体分散可能であり、親水層表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、親水層や塗布液に対して安定に分散することができ、親水層や塗布液の劣化もおこらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亜合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」も好ましい。
【0070】
抗菌剤の含有量は、一般的には0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
【0071】
〔無機微粒子〕
本発明の親水層は、親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる親水性部材を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、
親水層の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0072】
〔その他の成分〕
以下に、必要に応じて本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液に用いることのできる種々の添加剤について述べる。
1)界面活性剤
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0073】
2)紫外線吸収剤
本発明においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0074】
3)酸化防止剤
本発明の親水性部材の安定性向上のため、親水性層形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0075】
4)溶剤
本発明の親水性部材の親水性層形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性層形成用塗布液に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性部材形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0076】
5)高分子化合物
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0077】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0078】
〔基材〕
本発明に用いられる基材は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基材は、ガラス基板またはでプラスチック基板である。
ガラス基板としては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記親水層を塗設できるが、必要に応じ、親水層の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0079】
本発明に用いられるプラスチック基板としては、特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステフィルムが好ましい。なお、光学的には、透明性に優れている方が好ましい場合が多いが、用途によっては半透明、あるいは、印刷されたものも用いられる。プラスチック基板の厚みは、積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられ、あるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが用いられる。
【0080】
基材と親水層の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
更に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることができる。
【0081】
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0082】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m2 が好ましく、0.1〜10g/m2 がより好ましい。
【0083】
〔親水性部材使用時の層構成〕
本発明の親水性部材を、防汚性及び/または防曇性効果の発現を期待して使用する場合、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
1)接着層
本発明の親水性部材を、別の基材上に貼り付けて使用する場合、基材の裏面に、接着層として、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基材における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂およびこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類または混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、さらに好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237 に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
【0084】
2)離型層
本発明の親水性部材が前記の接着層を有する場合には、さらに離型層を付加することができる。離型層には、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤しては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、及びウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子及び/又はケイ素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
【0085】
3)その他の層
親水性層の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷つきや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層や、下塗り層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。保護層は、親水性部材を適切な基材へ貼り付けた後には剥がされる。
【0086】
〔構造体の形態〕
本発明の親水層を有する構造体は、シート状、ロール状あるいはリボン状の形態で供給されてもよく、適切な基材に貼り付けるために、あらかじめカットされたもとして供給することもできる。
【0087】
〔表面自由エネルギー〕
親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、さらに好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0088】
本発明の親水性被膜を塗設した親水性部材は、窓ガラス等に適用(使用、貼り付け)する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。本発明の親水性被膜は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。本発明の親水性被膜の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがさらに好ましく、0.1μm〜20μmが最も好ましい。膜厚が0.01μm以上の場合は、十分な親水性、耐久性が得ら好ましく、膜厚が100μm以下の場合は、クラックが入るなど製膜性に問題を来たすことがなく、好ましい。
透明性は、分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価する。光透過率が100%〜70%が好ましく、95%〜75%がより好ましく、95%〜80%の範囲にあることが最も好ましい。この範囲にあることによって、視界をさえぎることなく、親水性被膜を塗設した親水性部材を各種用途に適用することができる。
【0089】
本発明の親水性部材は、親水性層形成用塗布液組成物を、適切な基材上に塗布し、加熱、乾燥して表面親水性層を形成することで得ることができる。親水性層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から加熱温度は150℃以下であることが好ましく、加熱時間は1時間以内が好ましい。
本発明の親水性部材は、公知の塗布方法で作成することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0090】
本発明の親水性部材が適用可能なものとしては、例えば、防曇効果を期待する場合には透明なものであり、透明なガラス基板または透明なプラスチック基板、レンズ、プリズム、鏡等である。
ガラスとしては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。
防曇効果を有する部材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;その他建材用ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。最も好ましい用途は、自動車用及び建材用のガラスである。
【0091】
また、本発明の表面親水性部材に防汚効果を期待する場合には、その基材は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。
防汚効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。
雪国用屋根材、アンテナ、送電線等への適用も可能であり、その際は、着雪防止性にも優れた特性が得られる。
【実施例】
【0092】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面をグロー処理により親水化した後、下記組成の親水性層塗布液をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成して親水性部材を作成した。この親水性部材の表面自由エネルギーは、87mN/mで、非常に親水性の高い表面であった。親水性層の可視光透過率は、95%であった(日立分光光度計U3000で測定)。
【0093】
<親水性層塗布液(1)>
・コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液(スノーテックスC) 100g
・下記ゾルゲル調製液 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0094】
【化12】

【0095】
<ゾルゲル調製液>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8gと下記の末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー5gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0096】
<末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーの合成>
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリスチレン標準)により、4000の質量平均分子量を有するポリマーであることを確認した。5%水溶液粘度は2.5cPs、親水性基の官能基密度は、13.4meq/gであった。
【0097】
(評価)上記親水性部材について、以下の評価を行った。
親水性:空中水滴接触角の測定(協和界面科学株式会社製DropMaster500で測定)。
耐水性:120cm2サイズの親水性部材を水中で1kgの加重をかけてスポンジ往復10回こすり処理を行い、その前後の質量変化から残膜率を測定した。
耐久性 磨耗試験:不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で500gの加重をかけて100回こすり、その前後の接触角を測定した。こすり後も水滴接触角が低い値を示す場合、耐久性が良好である。
引っかき試験:0.1mm径サファイア針に5gから始めて5gきざみに加重かけて親水層表面を走査し、傷つきが発生した加重を評価(新東科学株式会社製引っかき強度試験機Type18Sで測定)。加重が大きくても傷つきがないほうが耐久性良好。
保存安定性(裏面接着):5cm四方の親水性部材50枚を重ね、万力を使用してトルク300kgで圧着し、45℃75%湿度環境で1日経時させた後の裏面接着性。
【0098】
防曇性:80℃のお湯を入れたポリカップに塗布サンプルをかぶせ、曇り具合を目視評価した。
防汚性:カーボンブラック(FW-200、デクサ社製)5gを水95gに懸濁させたスラリーを調製し、親水性部材の表面に、全体が均一になるようにスプレーコートしたあと、60℃1時間乾燥させた。該、サンプルを流水で流しながら、ガーゼで洗浄し、乾燥させた後のカーボンブラックの付着状況を透過率で測定した(日立分光光度計U3000使用)。透過率の算出は、JIS規格R3106の方法に従った。
可視光透過率:分光光度計(日立分光光度計U3000)を用い、波長380nm〜780nmの可視光透過率を測定した。透過率の算出は、JIS規格R3106の方法に従った。
耐薬品性:10%クエン酸水溶液に1時間、または、10%炭酸水素ナトリウム水溶液に1時間、または、40%エタノール水溶液に1時間浸漬した後、親水塗膜の損傷状態を観察した。
耐候性:サンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機内に親水性部材を500時間曝露し、親水性、耐水性、耐久性、防曇性、防汚性、可視光透過率について前述の方法に従い評価した。
塗布液経時安定性:親水性層塗布液を冷蔵庫で5℃±2℃条件で保管経時して、液がゲル化するまでの日数を計測した。ゲル化するまでの日数が長いほど、経時安定性が良好である。
【0099】
その結果、水滴接触角は、5°以下で非常に親水性が高く、耐水性も残膜率100%で極めて良好な性能を示した。磨耗試験による親水性低下はなく、また引っかき試験では、50gまで傷付きがなく、耐久性に優れていた。保存安定性評価では、親水性層が裏面接着することなく、保存安定性に優れていた。
防曇性は、図1の写真に示すように、全く曇りの発生が認められず、防汚性はカーボンブラックの付着が全く認められず、可視光透過率は88%で素ガラス同等であり、耐薬品性はいずれの条件でも全く損傷が認められず、耐候性はいずれの評価においても耐候処理前後で変化はなく、良好な結果を与えた。また、塗布液は6ヶ月までゲル化せず、安定であった。
【0100】
実施例2
実施例1記載の板ガラスをUVオゾン洗浄したのち、実施例1記載の親水層塗布液を用いて、スピンコートして乾燥塗布量が0.1g/mになるように親水層を形成した以外は、実施例1と同様に親水性ガラス部材を作成し、評価を行った。その結果、実施例1と同様に良好な結果を与えた。
実施例3
実施例1記載の板ガラスをUVオゾン洗浄したのち、実施例1記載の親水層塗布液を用いて、バー塗布したのち、乾燥する前にスピナーで200rpm300秒回転させて製膜し、乾燥塗布量が15g/mになるように親水層を形成した以外は、実施例1と同様に親水性ガラス部材を作成し、評価を行った。その結果、この親水性部材は、引っかき強度が100gまで傷つきがなく、それ以外の性能は実施例1と同様であり、耐傷性に優れた結果を与えた。
【0101】
実施例4
市販の鏡をUVオゾン洗浄したのち、実施例1記載の親水層塗布液を用いて、スピンコートにて乾燥塗布量が0.1g/mになるように親水層を形成した以外は、実施例1と同様に親水性鏡部材を作成し、評価を行った。その結果、実施例1と同様に、防曇性に優れた良好な結果を与えた。
【0102】
実施例5〜6
触媒を下記のものに変更した以外は実施例1と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材は、実施例1のものと同等の親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有していた。
実施例5:エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル(株)製、ALCH)
実施例6:ジルコニウムキレート化合物
撹拌機を備えた反応器に、テトラブトキシジルコニウム50部、アセト酢酸エチル20部を加え、室温で1時間撹拌してジルコニウムキレート化合物を得た。
【0103】
実施例7〜11
親水性ポリマーを下記のものに変更した以外は実施例1と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材は、実施例1のものと同等の親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有していた。
【0104】
実施例7:明細書記載の親水性ポリマー9
実施例8:明細書記載の親水性ポリマー13
実施例9:明細書記載の親水性ポリマー15
実施例10:明細書記載の親水性ポリマー24
実施例11:明細書記載の親水性ポリマー36
【0105】
実施例12:下記の通り合成した複数個反応性基を有する親水性ポリマー
〔複数個反応性基を有する親水性ポリマーの合成〕
(アミドマクロモノマーの合成)
アクリルアミド100g、3−メルカプトプロピオン酸10gをエタノール200gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合開始剤2,2−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)1gを加えて8時間反応した。反応後白色沈殿を濾過しメタノールで十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマーを90g得た(酸価0.80meq/g、分子量1500)。得られたプレポリマー50gをジメチルスルホキシド150gに溶解し、グリシジルメタクリレート20g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)1.2g、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.2gを加え、窒素雰囲気下140℃で10時間反応した。反応溶液をアセトンに加え、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートアクリルアミドマクロモノマーを50g得た(質量平均分子量:1800)。H1−NMR(D2O)6.12、5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークと、酸価の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。
【0106】
(アミドマクロモノマーを用いた親水性グラフトポリマー(1)の合成)
ジメチルスルホキシド120gの入ったフラスコに、上記マクロモノマー8g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2g、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](VA061:商品名、和光純薬工業(株)製)0.2gをジメチルスルホキシド35gに溶解した溶液を窒素雰囲気下60℃で4時間かけて滴下した。滴下終了後引き続き6時間加熱を続けた。反応溶液をアセトンに加えポリマーを沈殿させよく洗浄して、複数個反応性基を有する親水性ポリマー14gを得た(分子量12万、収率94%)。
【0107】
実施例13
親水性層塗布液を塗布した後の乾燥条件を80℃10分に変更した以外は実施例1と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材用の構造体は、実施例1のものと同等の親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有していた。
【0108】
比較例1
触媒を1N硝酸水溶液(硝酸触媒)1.5gに変更した以外は実施例1と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材は、実施例1のものと比較して、磨耗試験により親水性が低下し、また引っかき試験においては、加重15gで傷が付き、耐久性が十分ではなかった。また、磨耗後の防曇性は、図2の写真に示すように、曇りの発生が認められた。
【0109】
比較例2
光触媒親水膜(市販のハイドロテクトフィルム1年タイプ(クリア)、東陶機器株式会社製)は、20J/cm2の紫外線を照射した後の親水性については実施例1のものと同等であったが、磨耗試験では親水性が低下し、また、引っかき試験においては、加重5gで傷がつき、耐久性が劣っていた。
【0110】
実施例14〜23
基材として、板ガラスに代えて、表面をグロー処理により親水化したポリエチレンテレフタレート基板(厚み50μm)を用いた以外は、実施例1、5〜13と同様にして親水性部材用を作製し、同様の評価を行った。その結果、得られた親水性部材は、実施例1のものと同等の親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有していた。
比較例3
基材として、板ガラスに代えて、表面をグロー処理により親水化したポリエチレンテレフタレート基板(厚み50μm)を用いた以外は、比較例1と同様にして親水性部材用を作製し、同様の評価を行った。その結果、得られた親水性部材は、比較例1のものと同等のものであった。
【0111】
実施例24
基材として実施例14〜23で用いたポリエチレンテレフタレート基板(厚み50μm)を用い、親水性層塗布液として2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール1gをさらに添加したものを用いた以外は、実施例1と同様にして親水性層を形成した。形成された親水性層の表面自由エネルギー及び可視光透過率は、実施例1と同様であった。
【0112】
<接着層>
市販のアクリル系エマルション型粘着剤(一方社油脂工業(株)製、エマポール R−140)を上記基板の裏面に、乾燥厚みが約18μmとなるように塗布、乾燥して、接着層を設けた。
<離型層>
ポリグリシジルメタクリレート(ポリスチレン換算分子量は12,000)のメチルエチルケトン50質量%濃度溶液100質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM−309、東亞合成(株)製)150質量部と光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)6質量部と光カチオン重合開始剤(ロードシル2074、ローディア社製)6質量部とメガファック531A(大日本インキ化学工業(株)製)10質量部を30質量部のメチルイソブチルケトンに溶解したものを撹拌しながら混合し、離型層塗布液を作製した。
次に離型層塗布液を 25μmの厚みになるようにエクストルージョン方式で上記粘着層の上に塗布、乾燥し、紫外線を照射(0.8J/cm2)して離型層を形成した。
【0113】
<評価>上記親水性部材について、前記親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性の他に、以下の抗菌性の評価を行った。
(抗菌性)
親水性部材の抗菌性は、大腸菌(Escherichia coli;IFO 3301)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ;IFO 12732 )との2種類の菌株に対して確認した。また、評価試験はフィルム密着法により実施した。試験方法を以下に示す。
(1)各試験菌株を、普通寒天培地において37℃で20時間培養し、1/500普通培地の溶液に懸濁させて菌数を 2.0×105 個/ml に調整する。
(2)親水性部材のそれぞれから表面積が25cm2となるように切り取って試料を作製する。
(3)試料を別々の滅菌シャーレに入れ、それぞれに (1)で調整した菌試験液を0.5ml加えてフィルムを被せる。この際、フィルムの内面に菌試験液が付着しないように注意する。
(4)試料の入った各滅菌シャーレを35℃で24時間保存する。
(5)24時間保存した後、滅菌緩衝生理食塩液で試験菌液を洗い流し、洗い出し液中の生菌数を混釈平板培養法により計測する。
【0114】
その結果、実施例24の親水性部材は、実施例1のものと同等の親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有し、さらに、上記抗菌性試験における生菌数は、ゼロであり、全く菌の繁殖が認められなかった。また、耐水性試験をした後の親水性部材の抗菌性試験においても、生菌数がゼロであり、良好な抗菌作用を示した。
【0115】
〔実施例25〜27〕
抗菌剤を下記のものに変更した以外は実施例24と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材用の構造体は、実施例24のものと同等の抗菌性、親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有していた。
【0116】
実施例25:ZPT
実施例26:酸化銀担持シリカアルミナ「アトミーボールUA」触媒化成工業(株)製
実施例27:銀担持リン酸ジルコニウム「ノバロン」東亜合成(株)製
【0117】
実施例28
基材をフロート板ガラスに置き換えた以外は実施例24と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材は、実施例24と同等の抗菌性、親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有していた。
【0118】
実施例29〜30
触媒を実施例5〜6に使用したたものに代えた以外は実施例24と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材は、実施例24と同等の抗菌性、親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有していた。
【0119】
実施例31〜33
親水性ポリマーを下記のものに変更した以外は実施例28と同様に親水性層を作成した。得られた親水性部材用の構造体は、実施例24と同等の抗菌性、親水性、耐水性、耐久性、耐傷性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性、塗布液経時安定性を有していた。
【0120】
実施例31:明細書記載の親水性ポリマー15
実施例32:明細書記載の親水性ポリマー24
実施例33:下記に示す複数個反応性基を有する親水性ポリマー
【0121】
【化13】

【0122】
比較例4
実施例28の親水性層塗布液を下記光触媒含有の比較用親水性層塗布液(4)に置き換え、ワイヤーバーを用いて塗布し、110℃で20分間乾燥して、塗布量0.5g/m2の親水性層を形成して親水性部材を作成した。得られた親水性部材は20J/cm2の紫外線を照射した後、評価を行った。親水性は実施例28の親水性部材と同等であったが、抗菌性は生菌数が2×103個/mLであり抗菌性に劣る結果であった。また、耐水性においても残膜率85%で、生菌数が5×104個/mLと抗菌性もさらに低下してしまい、耐久性に劣っていた。
【0123】
<比較用親水性層塗布液(4)>
・光触媒酸化チタンゾルST-K211(固形分0.2%、石原産業(株)製)
500g
・2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール 0.02g
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】実施例1の親水性部材の防曇性を示す写真。
【図2】比較例1の親水性部材の防曇性を示す写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、a)親水性ポリマー、b) Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物、c)金属錯体触媒を含有する親水性被膜を塗設したことを特徴とする親水性部材。
【請求項2】
前記c)金属錯体触媒が、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成されるものである請求項1に記載の親水性部材。
【請求項3】
前記基材が、ガラス基材またはプラスチック基材である請求項1または2に記載の親水性部材。
【請求項4】
前記親水性被膜が、さらに抗菌剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項5】
前記a)の親水性ポリマーが、下記一般式(I)及び(II)から選ばれる少なくともいずれかで表される請求項1〜4のいずれかに記載の親水性部材。
【化1】

式(I)および(II)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、Xは反応性基を表し、AおよびL、L,Lは、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH2、−CON(R2、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−POM、−OPOM又は−N(Rを表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表し、Bは式(III)を表す。
【化2】

式(III)中、R1、R2、L及びYは式(I)および(II)中のものと同じ。
【請求項6】
自動車用ガラスである、請求項1〜5のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項7】
建材用ガラスである、請求項1〜5のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項8】
基材上に、a)親水性ポリマー、b) Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物、c)金属錯体触媒を含有する水溶液を塗布し、加熱、乾燥することにより、親水性皮膜を塗設する親水性部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−254265(P2007−254265A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256215(P2006−256215)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】