説明

親水性部材

【課題】親水性、防汚性、耐アルカリ性、耐酸性、及び耐熱水性に優れる親水性部材を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート等の基板上に、表面の水滴接触角が45°以上であり、表面自由エネルギーが65mN/m以下である疎水性下塗り層を有し、かつ該疎水性下塗り層上に、水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を有する親水性ポリマーを含む親水性組成物から形成された親水性層を有することを特徴とする親水性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性部材に関し、より詳細には、基材上に疎水性下塗り層を有し、かつ該疎水性下塗り層上に親水性層を有する親水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
防曇性、及び防汚性等の付与を目的として各種基材上に親水性膜を有する親水性部材が種々提案されている。
特許文献1には、ポリエチレンテレフタレート基板上に、水系樹脂組成物から形成される下塗り層と、該下塗り層上に、主鎖末端又は側鎖に加水分解性シリル基を含有する親水性ポリマーから形成される親水性層を有する親水性部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討の結果、特許文献1に記載の親水性層は、ガラスや金属などの無機材料からなる基材には優れた密着性を有し、耐アルカリ性にも優れるが、樹脂などの有機材料からなる基材に対しては密着性が低く、アルカリにより親水性層が剥離してしまう問題があることがわかった。また、一般的に親水性層はアルカリや酸などの水溶性の液体を吸水するため、汎用樹脂等と比較すると耐アルカリ性、耐酸性に劣る。
また、特許文献1に記載の親水性層は、耐熱水性についても改善が求められている。
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、親水性、防汚性、耐アルカリ性、耐酸性、及び耐熱水性に優れる親水性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは以下の手段により上記課題を解決した。
1.
基板上に疎水性下塗り層を有し、かつ該疎水性下塗り層上に親水性層を有することを特徴とする親水性部材。
2.
前記疎水性下塗り層の表面の水滴接触角が45°以上であることを特徴とする上記1に記載の親水性部材。
3.
前記疎水性下塗り層の表面自由エネルギーが65mN/m以下であることを特徴とする上記1又は2に記載の親水性部材。
4.
前記疎水性下塗り層が、架橋性基を有する疎水性ポリマーを含む疎水性組成物から形成されたことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の親水性部材。
5.
前記架橋性基が水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を含むことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の親水性部材。
6.
前記親水性層が、水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を有する親水性ポリマーを含む親水性組成物から形成されたことを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の親水性部材。
7.
前記親水性ポリマーが、
下記一般式(I−1)で表される構造単位と下記一般式(I−2)で表される構造単位とを含む親水性ポリマー(I)、及び
下記一般式(II−1)で表される部分構造と下記一般式(II−2)で表される構造単位とを有し、かつポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有する親水性ポリマー(II)
の少なくともいずれか1種であること特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の親水性部材。
【0007】
【化1】

【0008】
{一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【0009】
【化2】

【0010】
{一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
8.
前記疎水性下塗り層を形成するための疎水性組成物、及び前記親水性層を形成するための親水性組成物の少なくともいずれかに、更に触媒を含有することを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の親水性部材。
9.
前記触媒が不揮発性の触媒であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の親水性部材。
10.
前記親水性組成物中に、前記親水性ポリマー(I)、及び前記親水性ポリマー(II)を含み、親水性ポリマー(I)と親水性ポリマー(II)の質量比(親水性ポリマー(I)/親水性ポリマー(II))が95/5〜50/50の範囲内であることを特徴とする上記7〜9のいずれかに記載の親水性部材。
11.
前記疎水性組成物及び前記親水性組成物のうち少なくともいずれかが、更にSi、Ti、Zr、Alから選択される少なくともいずれかの元素のアルコキシド化合物を含有することを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の親水性部材。
12.
前記疎水性組成物及び前記親水性組成物のうち少なくともいずれかが、更に界面活性剤を含有することを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の親水性部材。
13.
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする上記12に記載の親水性部材。
14.
前記疎水性下塗り層の膜厚が10nmより大きく、1μmより小さいことを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載の親水性部材。
15.
前記親水性層の膜厚が10nmより大きく、1μmより小さいことを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載の親水性部材。
16.
前記疎水性下塗り層が、疎水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで形成され、前記親水性層が、親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで形成されたことを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の親水性部材。
17.
前記基板が樹脂を含むことを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載の親水性部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、親水性、防汚性、耐アルカリ性、耐酸性、及び耐熱水性に優れる親水性部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の親水性部材は、基板上に疎水性下塗り層を有し、かつ該疎水性下塗り層上に親水性層を有することを特徴とする。
本発明では、基材と親水性層との間に下塗り層として疎水性の被膜を形成することでアルカリ及び酸の浸透を抑制し、耐アルカリ性、耐酸性を向上させることができる。なお、一般的に、親水性層を有する親水性部材を形成する際には、下塗り層、中間層、又はプライマー層は、濡れ性、及び密着性の低下の懸念から、疎水性の層とすることは考えにくい。
【0013】
<疎水性下塗り層>
本発明の親水性部材は、基材上に疎水性下塗り層を有する。
疎水性下塗り層は1層でもよいし、2層以上有してもよい。
疎水性下塗り層は表面が疎水性であるが、膜表面の疎水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。本発明における疎水性下塗り層は、水(又は水溶液)の吸収を抑制する観点から、45°以上であることが好ましく、50°以上110°以下であることがより好ましく、55°以上100°以下であることが更に好ましく、60°以上90°以下であることが特に好ましい。
また、他にも、膜表面の疎水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、例えば、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定することができる。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
疎水性下塗り層の表面自由エネルギーは、水(又は水溶液)との親和性が低いという理由から、65mN/m以下であることが好ましく、18mN/m以上60mN/m以下であることがより好ましく、20mN/m以上55mN/m以下であることが更に好ましく、25mN/m以上50mN/m以下であることが特に好ましい。
【0014】
疎水性下塗り層を形成するための材料は特に限定されないが、疎水性ポリマーを含む疎水性組成物が好ましく、疎水性下塗り層が前記水滴接触角及び表面自由エネルギーの好ましい範囲となるような疎水性ポリマーを含む疎水性組成物であることが好ましい。上記疎水性下塗り層を形成するために、疎水性ポリマーに用いられる官能基の例としては、炭化水素系官能基が好ましく、様々な置換基を有してもよいが、無いほうがより好ましい。
疎水性下塗り層は、基材上に疎水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで形成されることが好ましい。
また、本発明の親水性部材は、疎水性下塗り層が、疎水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで形成され、親水性層が、親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで形成されることが好ましい。
【0015】
(疎水性組成物)
疎水性下塗り層を形成するための疎水性組成物について説明する。
疎水性組成物は、疎水性ポリマーを含むことが好ましく、疎水性下塗り層の膜強度を向上させる観点から、該疎水性ポリマーは、架橋性基を有する疎水性ポリマーであることが好ましい。
前記架橋性基としては、水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を含む基(加水分解性シリル基、シラノール基など)、カルボキシル基(HOOC−)、その塩(MOOC−、Mはカチオン)、無水カルボン酸基(例えば、無水コハク酸、無水フタル酸又は無水マレイン酸から誘導される一価の基)、アミノ基(HN−)、ヒドロキシル基(HO−)、エポキシ基(例、グリシジル基)、メチロール基(HO−CH−)、メルカプト基(HS−)、イソシアナート基(OCN−)、ブロックイソシアナート基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合を含む基、エステル結合を含む基、テトラゾール基等が挙げられ、水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を含む基、エポキシ基(例、グリシジル基)、が好ましく、耐酸性及び耐アルカリ性を特に向上させることができるという理由から、水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を含むものが更に好ましい。
【0016】
水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を含む疎水性ポリマーとしては、シラノール基及び加水分解性シリル基の少なくともいずれかを有するものが好ましい。
親水性ポリマーは、ポリマーの末端部、及び側鎖のうち少なくともいずれかに、シラノール基及び加水分解性シリル基の少なくともいずれかを有するものであることが好ましい。
加水分解性シリル基とは、水と反応してシラノール(Si−OH)生成するものであって、例えば、珪素に1つ以上のメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、等のアルコキシ基、塩素等が結合したものを指す。
加水分解性シリル基は、好ましくは下記一般式(a)で表される。
一般式(a): −Si(R103−a−(OR11
一般式(a)中、R10は水素原子、又はアルキル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基、R11は水素原子又はアルキル基、aは1〜3の整数を示す。R10及びR11は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0017】
10がアルキル基を表す場合は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、アリール基を表す場合は炭素数6〜25のアリール基が好ましく、アラルキル基を表す場合は炭素数7〜12のアラルキル基が好ましい。R11がアルキル基を表す場合は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
【0018】
加水分解性シリル基は、後述するSi、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシドの加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる。また、加水分解性シリル基同士が化学結合を形成してもよい。この場合の化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。該化学結合は、共有結合であることが好ましい。
【0019】
疎水性ポリマーの質量平均分子量は製膜性の観点から1,000以上1,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは2,000以上800,000以下、更に好ましくは3,000以上500,000以下、特に好ましくは5,000以上100,000以下である。
以下に、疎水性ポリマーの具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに示すが、これらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体又はブロック共重合体であることを意味する。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
疎水性組成物の固形分濃度は20〜0.5質量%が好ましく、15〜1質量%がより好ましい。
【0026】
疎水性下塗り層の膜厚は、5nmより大きく、5μmより小さいことが好ましく、より好ましくは0.01μm〜3μmである。厚すぎると膜にひび割れが生じやすくなり、薄すぎると性能不足が生じやすい。厚みは組成物の固形分濃度、バーコータのコイル径等で調整することができるほか公知の方法で可能である。
【0027】
疎水性下塗り層の表面の中心平均粗さRaは、1nm〜10nmであることが好ましい。また、疎水性下塗り層のTgは、塗膜強度の観点から、40℃〜150℃が好ましい。また、疎水性下塗り層の弾性率は1GPa〜7GPaが好ましい。
なお、上記疎水性下塗り層の表面性状は、基材の表面粗さ、組成物の粘度、加熱温度、速度などを調節することによって制御できる。
【0028】
〔疎水性組成物の調製〕
疎水性組成物の調製は、疎水性ポリマー、適宜、金属アルコキシド、触媒、界面活性剤、及びその他の添加剤を溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。硬化触媒を用いる場合は基材に塗設する直前に混合してもよい。具体的には硬化触媒の混合直後〜1時間以内で塗設することが好ましい。
硬化触媒を混合し、長時間放置したのちに塗設すると組成物の粘度があがり、塗布むら等の欠陥を生じることがある。
その他の成分も塗設直前に混合することが好ましいが混合後、長時間保存してもかまわない。
調製における反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により架橋性基を有する疎水性ポリマー及び金属アルコキシドの加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0029】
疎水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、各成分を均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、エタノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールが好ましい。
【0030】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により皮膜を形成するための有機無機複合体ゾル液の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において組成物の調製に適用することができる。
このような組成物を含む溶液を、基材上に塗布し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。
【0031】
乾燥温度は10℃〜250℃が好ましく、より好ましくは70℃〜220℃である。乾燥温度が低すぎると十分に乾燥されず膜強度が低くなる。温度が高すぎると膜のひび割れを生じやすい。
乾燥時間は10秒〜200分間が好ましい。更に好ましくは15秒〜90分間である。乾燥時間が短すぎると乾燥不十分により膜強度が低下することがある。必要以上に乾燥時間を長くしすぎると膜にひび割れが生じることがある。
【0032】
<親水性層>
本発明の親水性部材は、前記疎水性下塗り層上に親水性層を有する。
親水性層は1層でもよいし、2層以上有してもよい。
親水性層を形成するための材料は特に限定されないが、親水性ポリマーを含む親水性組成物が好ましい。
親水性層は、前記疎水性下塗り層上に親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで形成されることが好ましい。
【0033】
(親水性ポリマー)
親水性層を形成するための親水性組成物に含まれる親水性ポリマーは特に限定されないが、好ましい主鎖構造としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル系樹脂、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられ、特にアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂がより好ましい。親水性ポリマーは共重合体であってもよく、該共重合体はランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
また、本発明における親水性組成物は親水性ポリマーを1種含んでいても良いし、2種以上含んでいても良い。
【0034】
親水性層の膜強度を向上させる観点から、架橋性基を有する親水性ポリマーであることが好ましい。
前記架橋性基としては、前記疎水性ポリマーにおいて挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様であり、特に水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を含むものが好ましい。
【0035】
水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を含む親水性ポリマー(以下、親水性ポリマーともいう)としては、シラノール基及び加水分解性シリル基の少なくともいずれかを有するものが好ましい。
親水性ポリマーは、ポリマーの末端部、及び側鎖のうち少なくともいずれかに、シラノール基及び加水分解性シリル基の少なくともいずれかを有するものであることが好ましい。
加水分解性シリル基とは、水と反応してシラノール(Si−OH)生成するものであって、例えば、珪素に1つ以上のメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、等のアルコキシ基、塩素等が結合したものを指す。
加水分解性シリル基は、好ましくは下記一般式(a)で表される。
一般式(a): −Si(R103−a−(OR11
一般式(a)中、R10は水素原子、又はアルキル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基、R11は水素原子又はアルキル基、aは1〜3の整数を示す。R10及びR11は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0036】
10がアルキル基を表す場合は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、アリール基を表す場合は炭素数6〜25のアリール基が好ましく、アラルキル基を表す場合は炭素数7〜12のアラルキル基が好ましい。R11がアルキル基を表す場合は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
【0037】
加水分解性シリル基は、好ましくは炭素原子に結合した加水分解性シリル基である。
加水分解性シリル基は、ポリマー主鎖の末端に一つ又は複数有する場合や、側鎖に一つ又は複数有する場合などがある。2以上の加水分解性シリル基を含む場合、該2以上の加水分解性シリル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0038】
加水分解性シリル基は、後述するSi、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシドの加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる。また、加水分解性シリル基同士が化学結合を形成してもよい。親水性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と反応することにより水不溶性になることが好ましい。この場合の化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。該化学結合は、共有結合であることが好ましい。
【0039】
親水性ポリマーは、親水性基を含むことが好ましい。親水性基としては、例えば、−NHCOR、−NHCOR、−NHCONR、−CONH、−NR、−CONR、−OCONR、−COR、−OH、−OR、−OM、−COM、−COR、−SOM、−OSOM、−SOR、−NHSOR、−SONR、−POM、−OPOM、−(CHCHO)H、−(CHCHO)CH又は−NRなどが挙げられる。ただし、Rは複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基)、アリール基、又はアラルキル基を表し、Mは水素原子、アルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、nは整数(好ましくは1〜100の整数)を表し、Zはハロゲンイオンを表す。また、−CONRのように複数のRを有する場合、R同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。Rは更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、後述する一般式(I−1)で表される構造におけるR101、R102がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げるものを同様に挙げることができる。
【0040】
前記Rとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
【0041】
親水性基としては、−OH、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−COOH、−SONMe、−SO、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−OH、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−COOH、−SO、−(CHCHO)H、であり、更に好ましくは、−OH、−COOH、−CONH、である。
【0042】
親水性ポリマーとしては、下記一般式(I−1)で表される構造及び下記一般式(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)、下記一般式(II−1)で表される部分構造と下記一般式(II−2)で表される構造単位とを有し、かつポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有する親水性ポリマー(II)、又は下記一般式(III−1)で表される構造及び下記一般式(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)のいずれか少なくとも1種が好ましい。
【0043】
【化8】

【0044】
{一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【0045】
【化9】

【0046】
{一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【0047】
【化10】

【0048】
{一般式(III−1)及び(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【0049】
〔一般式(I−1)で表される構造及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)〕
【0050】
【化11】

【0051】
{一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【0052】
上記一般式(I−1)及び(I−2)において、R101〜R108はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R101〜R108は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0053】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0054】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0055】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R101〜R108において挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(GCO−)におけるGとしては、水素、並びに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0056】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0057】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、より好ましくは炭素原子数1から12まで、更に好ましくは炭素原子数1から8の直鎖状、より好ましくは炭素原子数3から12までの、更に好ましくは炭素原子数3から8までの分岐状並びにより好ましくは炭素原子数5から10まで、更に好ましくは炭素原子数5から8までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0058】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0059】
親水性の観点から上記のなかでもヒドロキシメチル基が好ましい。
【0060】
101〜L102は単結合又は有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。
101〜L102が有機連結基を表す場合、L101〜L102は非金属原子からなる多価の連結基を表し、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。具体的には、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せから選ばれることが好ましく、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−又は−S−又は−CO−又は−NH−を含む組合せで、2価の連結基であることが好ましい。
より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0061】
【化12】

【0062】
一般式(I−1)において、L101は単結合、又は、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。
【0063】
一般式(I−2)中、A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rは更に置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0064】
〜Rにおいて、直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
また、R〜Rにおいて、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム又はカリウム等、アルカリ土類金属としてしはバリウム等、オニウムとしてはアンモニウム、ヨードニウム又はスルホニウム等が好適に挙げられる。
ハロゲンイオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンを挙げることでき、無機アニオンとしては硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等が、有機アニオンとしてはメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等が好適に挙げられる。
【0065】
101としては、具体的には、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−COOH、−SONMe、−SO、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−SO、−(CHCHO)H、である。なお、上記において、nは1〜100の整数を表すことが好ましい。
【0066】
pは1〜3の整数を表し、好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0067】
一般式(I−1)で表される構造及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーにおいて、x及びyは親水性ポリマーにおける、一般式(I−1)で表される構造単位と一般式(I−2)で表される構造単位の組成比を表す。xは0<x<100、yは0<y<100である。xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることが更に好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることが更に好ましい。
【0068】
一般式(I−1)で表される構造及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(I−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(I−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基を有する一般式(I−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0069】
一般式(I−1)で表される構造及び(I−2)で表される構造を含むポリマーの質量平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、1,000〜1,000,000がより好ましく、1,000〜500,000が更に好ましく、1,000〜200,000が特に好ましく、2,000〜50,000が最も好ましい。
【0070】
以下に、一般式(I−1)で表される構造及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーの具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体又はブロック共重合体であることを意味する。
【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

【0075】
【化17】

【0076】
【化18】

【0077】
【化19】

【0078】
【化20】

【0079】
【化21】

【0080】
一般式(I−1)で表される構造及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するための各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
一般式(I−1)で表される構造及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。
具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(1996年、共立出版)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、1992年、共立出版)、新実験化学講座19(1978年、丸善)、高分子化学(I)(日本化学会編、1996年、丸善)、高分子合成化学(物質工学講座、1995年、東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0081】
〔一般式(II−1)で表される構造及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)〕
【0082】
【化22】

【0083】
{一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【0084】
一般式(II−1)で表される構造及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)は、上記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、かつ、ポリマー鎖の末端に上記一般式(II−1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0085】
前記一般式(II−1)で表される構造及び(II−2)において、R201〜R205は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R201〜R205が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201、L202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA201及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L201、L202が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
qは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0086】
201及びL202は、より好ましくは、−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−、−CH−である。
【0087】
一般式(II−1)で表される構造及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter(Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
【0088】
一般式(II−1)で表される構造及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0089】
【化23】

【0090】
上記式(i)及び(ii)において、R201〜R205、L201、L202、A201、qは、上記一般式(II−1)中のものと同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーは親水性基A201を有しており、このモノマーが親水性ポリマーにおける一構造単位となる。
【0091】
一般式(II−1)で表される構造及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)において、加水分解性シリル基を有する一般式(II−1)の構造単位のモル数に対して、一般式(II−2)の構造単位のモル数が、1000〜10倍の範囲が好ましく、500〜20倍の範囲がより好ましく、200〜30倍の範囲が最も好ましい。30倍以上であれば親水性が不足することなく、一方、200倍以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0092】
一般式(II−1)で表される構造及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)の質量平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、1,000〜1,000,000がより好ましく、1,000〜500,000が更に好ましく、1,000〜200,000が特に好ましく、5,000〜50,000が最も好ましい。
【0093】
本発明に好適に用い得る親水性ポリマー(II)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。具体例中、*はポリマーへの結合位置を表す。
【0094】
【化24】

【0095】
【化25】

【0096】
【化26】

【0097】
【化27】

【0098】
【化28】

【0099】
【化29】

【0100】
【化30】

【0101】
【化31】

【0102】
【化32】

【0103】
【化33】

【0104】
【化34】

【0105】
〔一般式(III−1)で表される構造及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)〕
親水性ポリマー(III)は、下記一般式(III−1)で表される構造及び(III−2)で表される構造を含む。親水性ポリマー(III)は、反応性基を有する幹ポリマーに親水性基を有する側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーであることが好ましい。
【0106】
【化35】

【0107】
{一般式(III−1)及び(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【0108】
上記一般式(III−1)及び(III−2)において、R301〜R311は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R301〜R311が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
301、L302及びL303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA301、側鎖及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L301、L302及びL303が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
rは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0109】
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、及び“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
【0110】
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に、1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0111】
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と反応性基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
【0112】
親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の質量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
【0113】
一般式(III−1)で表される構造及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)において、xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることが更に好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることが更に好ましい。
【0114】
親水性ポリマー(III)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(III−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(III−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基を有する一般式(III−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0115】
親水性ポリマー(III)は、質量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、更に好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成し易いなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
【0116】
以下に、一般式(III−1)で表される構造及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)の具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体又はブロック共重合体であることを意味する。
【0117】
【化36】

【0118】
【化37】

【0119】
【化38】

【0120】
【化39】

【0121】
【化40】

【0122】
前記親水性ポリマー(I)、親水性ポリマー(II)及び親水性ポリマー(III)のうち、成膜性という理由から、親水性ポリマー(I)、及び親水性ポリマー(II)がより好ましく、一分子当たりの加水分解性シリル基を数多く導入することができ、常温乾燥で非常に良好な硬化性を得ることができることから、親水性ポリマー(I)が更に好ましい。
また、親水性ポリマー(I)及び(II)を含む場合も好ましく、親水性ポリマー(I)と親水性ポリマー(II)の質量比(親水性ポリマー(I)/親水性ポリマー(II))が95/5〜50/50の範囲内であることが好ましい。
【0123】
親水性ポリマー(I)、親水性ポリマー(II)、又は親水性ポリマー(III)は、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0124】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−又はi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0125】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−又はi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0126】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0127】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0128】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0129】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量であることが好ましいが、親水性層としての機能が十分であり、親水性ポリマー(I)、親水性ポリマー(II)、又は親水性ポリマー(III)を添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、親水性ポリマー(I)、親水性ポリマー(II)、又は親水性ポリマー(III)中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは50質量%以下である。
【0130】
親水性ポリマー(I)、親水性ポリマー(II)、及び親水性ポリマー(III)の共重合比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
【0131】
親水性ポリマーは、後述する金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。親水性ポリマーは、親水性膜の強度や膜の柔軟性に対して関与しており、特に、加水分解性シリル基を含む親水性ポリマーの粘度が0.1〜100mPa・s(5%水溶液、20℃測定)、好ましくは0.5〜70mPa・s、更に好ましくは1〜50mPa・sの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0132】
本発明における、疎水性組成物及び親水性組成物は、各々疎水性ポリマー及び親水性ポリマー以外にも他の成分を含んでいても良い。
以下、疎水性組成物及び親水性組成物が含んでいてもよい成分について説明する。
【0133】
[Si、Ti、Zr、Alから選択されるいずれかの元素を含むアルコキシド化合物]
疎水性組成物及び親水性組成物の少なくともいずれかにSi、Ti、Zr、Alから選択されるいずれかの元素を含むアルコキシド化合物(金属アルコキシドともいう)を含有してもよい。親水性部材により高い膜強度を付与するためには疎水性組成物中に金属アルコキシドを含有してもよく、特に親水性組成物が前記親水性ポリマー(I)を含有する場合は、良好な硬化性を得るために金属アルコキシドを含有することが好ましい。また、親水性組成物中に前記親水性ポリマー(II)又は(III)を含有する場合は金属アルコキシドを含有しない場合でも良好な硬化性を得ることはできるが、膜強度が非常に優れた塗膜を得るためには金属アルコキシドを含有してもよい。
【0134】
金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシド同士が重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、更に前記親水性ポリマーとも化学結合することができる。金属アルコキシドは一般式(V−1)又は一般式(V−2)で表すことができ、式中、R20は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R21及びR22はアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R20、R21及びR22がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
【0135】
(R20−Z−(OR214−m (V−1)
Al−(OR22 (V−2)
【0136】
以下に、一般式(V−1)又は一般式(V−2)で表される金属アルコキシドの具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
【0137】
ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中に珪素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、等を挙げることができる。
【0138】
ZがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、中心金属がAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
【0139】
上記のなかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0140】
金属アルコキシド化合物は、親水性組成物の全固形分に対して、0〜60質量%使用されることが好ましく、10〜50質量%使用されることがより好ましい。金属アルコキシド化合物が多くなると、親水性は高くなるが、膜にひび割れが生じてしまい、成膜性に劣る。また金属アルコキシド化合物は疎水性組成物の全固形分に対して、0〜30質量%使用されることが好ましく、5〜20質量%使用されることがより好ましい。金属アルコキシド化合物が多くなると疎水性下塗り層の疎水性が低下し、耐酸性、耐アルカリ性が劣化してしまう。
【0141】
〔触媒〕
疎水性組成物及び親水性組成物の少なくともいずれかには触媒を含有してもよい。特に、親水性組成物が水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を有する親水性ポリマーを含む(更に必要に応じて金属アルコキシドも含む)場合は、溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性層が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために触媒を用いることが好ましい。触媒を使用することにより、親水性層を形成するための乾燥温度を低く設定することが可能であり、抗菌剤や基材上での熱変形を抑制できる。
硬化触媒は、不揮発性の触媒であることが好ましい。ここで、不揮発性の触媒とは、沸点が125℃未満のもの以外の触媒を意味し、換言すれば、沸点が125℃以上のものや、そもそも沸点がないもの(熱分解など、相変化を起こさないものを含む)等が含まれる。
好ましくは、硬化触媒は架橋剤を加水分解、重縮合し、珪素を含む親水性ポリマーと結合を生起させる反応を促進する、酸性触媒又は塩基性触媒を用いることができる。
【0142】
本発明で用いることができる触媒としては、前記金属アルコキシドを加水分解、重縮合し、親水性ポリマーと結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、あるいは塩基性化合物を水又はアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0143】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0144】
また、金属錯体からなるルイス酸触媒もまた好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0145】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0146】
好ましい配位子はアセチルアセトン又はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0147】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。
【0148】
中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0149】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0150】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0151】
触媒は、本発明の疎水性組成物及び親水性組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%使用されるのが好ましく、0.05〜10質量%使用されるのが更に好ましい。
【0152】
〔界面活性剤〕
疎水性組成物及び親水性組成物の少なくともいずれかには、被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0153】
本発明に用いられるノニオン性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0154】
本発明に用いられるアニオン性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0155】
本発明に用いられるカチオン性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0156】
本発明に用いられるフッ素系界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又はフッ素系界面活性剤であることがより好ましく、アニオン性界面活性剤であることが更に好ましい。
界面活性剤は、本発明の疎水性組成物及び親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0157】
好ましい界面活性剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0158】
【化41】

【0159】
界面活性剤と前記親水性ポリマー(II)を併用することでより高い親水性表面を形成することができる。十分にメカニズムは解明されていないが、これは塗膜が乾燥する過程で低分子量化合物である界面活性剤が塗膜表層にマイグレートする作用に伴いポリマーセグメント中の親水性セグメントが界面活性剤の親水性部位に引き寄せられることで高い親水性が得られたと推測する。
【0160】
〔無機微粒子〕
本発明の疎水性組成物及び親水性組成物は、親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子は粒子の中でも親水性が高いため特に好ましい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が10nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、塗膜中に安定に分散して、塗膜の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる塗膜を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、本発明の疎水性組成物及び親水性組成物の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0161】
〔酸化防止剤〕
本発明の親水性部材の安定性向上のため、本発明の疎水性組成物及び親水性組成物に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0162】
〔抗菌剤〕
本発明の疎水性組成物及び親水性組成物に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、抗菌剤を含有させることができる。親水性膜の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた部材が得られる。
抗菌剤としては、部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤又は、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
上記抗菌剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、本発明の親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%が一般的であり、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ膜強度に悪影響を及ぼさない。
【0163】
〔高分子化合物〕
本発明の疎水性組成物及び親水性組成物には、皮膜の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、カルボキシル基含有モノマー、メタクリル酸アルキルエステル、又はアクリル酸アルキルエステルを構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0164】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基材への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0165】
〔親水性組成物の調製〕
本発明の親水性組成物の調製は、親水性ポリマー、適宜、金属アルコキシド、触媒、界面活性剤、及びその他の添加剤を溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。触媒を基材に塗設する直前に混合することが好ましい。具体的には触媒の混合直後〜1時間以内で塗設することが好ましい。
触媒を混合し、長時間放置したのちに塗設すると組成物の粘度があがり、塗布むら等の欠陥を生じることがある。
その他の成分も塗設直前に混合することが好ましいが混合後、長時間保存してもかまわない。
調製における反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により架橋性基を含む親水性ポリマー及び金属アルコキシドの加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0166】
親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、各成分を均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0167】
以上述べたように、親水性組成物により皮膜を形成するための有機無機複合体ゾル液の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において組成物の調製に適用することができる。
このような親水性組成物を含む溶液を、前記疎水性下塗り層上に塗布し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。
乾燥温度は10℃〜250℃が好ましく、より好ましくは70℃〜220℃である。乾燥温度が低すぎると十分に乾燥されず膜強度が低くなる。温度が高すぎると膜のひび割れを生じやすい。
乾燥時間は10秒〜200分間が好ましい。更に好ましくは15秒〜90分間である。乾燥時間が短すぎると乾燥不十分により膜強度が低下することがある。必要以上に乾燥時間を長くしすぎると膜にひび割れが生じることがある。
【0168】
親水性組成物の固形分濃度は20〜0.5質量%が好ましく、15〜1質量%がより好ましい。
【0169】
親水性層の膜厚は10nmより大きく、1μmより小さいことが好ましく、より好ましくは20nm〜0.8μmである。厚すぎると膜にひび割れが生じやすくなり、薄すぎると性能不足が生じやすい。厚みは組成物の固形分濃度、バーコータのコイル径等で調整することができるほか公知の方法で可能である。
【0170】
親水性層の表面の中心平均粗さRaは、1nm〜10nmであることが好ましい。また、親水性層のTgは、塗膜強度の観点から、40℃〜150℃が好ましい。また、親水性層の弾性率は1GPa〜7GPaが好ましい。
なお、上記の親水性層の表面性状は、基材の表面粗さ、組成物の粘度、加熱温度、速度などを調節することによって制御できる。
【0171】
親水性層は表面が親水性であることが好ましい。膜表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。本発明における膜は、好ましくは表面の水滴接触角が40°以下であり、より好ましくは、30°以下であり、更に好ましくは20°以下であり、特に好ましくは15°以下である。
また、他にも、膜表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、更に好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある膜が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0172】
本発明における疎水性組成物及び親水性組成物は、公知の塗布方法で塗布することが可能であり、特に限定がなく、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0173】
〔基材〕
本発明の親水性部材は、基材上に疎水性下塗り層を有し、該疎水性下塗り層上に親水性層を有する。基材としては、特に限定されないが、ガラス、樹脂、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、タイル、ゴム、ラテックス、それらの組合せ、それらの積層体などを挙げることができる。好ましい基材は、樹脂、金属等の柔軟性のあるフレキシブルな基材である。フレキシブルな基材を用いることで、部材の変形などが自由に可能になり、取り付け作業や取り付け場所の自由度が増すばかりでなく、耐久性も増すことができる。特に樹脂を含む基材が好ましい。
【0174】
樹脂を含む基材としては、特に制限はないが、光学部材として使用される基材は、透明性、屈折率、分散性などの光学特性を考慮して選択され、使用目的により、種々の物性、例えば、耐衝撃性、可撓性など強度をはじめとする物理的特性や、耐熱性、耐候性、耐久性などを考慮して選択される。樹脂を含む基材としてはプラスチックからなる基材が好ましく、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルム若しくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステフィルムが好ましい。これらは、使用目的に応じて、単独で用いられてもよく、或いは、2種以上を混合物、共重合体、積層体などの形態で組み合わせて用いることもできる。プラスチック基材の厚みは、積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられ、あるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが用いられる。
【0175】
基材とその上にある層の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0176】
アルミニウム製基材としては、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものなどが挙げられる。アルミニウム合金に含まれる異元素には、珪素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0177】
基材の厚さは0.05〜0.6mmであるのが好ましく、0.08〜0.2mmであるのがより好ましい。
基材は、表面の中心線平均粗さが0.01〜1.2μmであるのが好ましい。
【0178】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、基材の親水性の向上、及び下塗り層と基材との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。アルミニウム製基材の処理方法は公知の方法で行うことができる。
【0179】
基材としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基材そのままでも良いが、上層との接着性の一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
たとえば封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
【0180】
<封孔処理>
封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、中でも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理及び熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0181】
<無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理>
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0182】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0183】
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、更に、リン酸塩化合物を含有するのが好ましい。リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組合せは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
【0184】
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
【0185】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回又は複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0186】
<水蒸気による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧又は常圧の水蒸気を連続的に又は非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.00×10〜1.043×10Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0187】
<熱水による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)又は有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0188】
<親水化処理>
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0189】
ガラス製基材としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属性酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板を挙げることができる。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記下塗り層及び上塗り層を塗設できるが、必要に応じ、下塗り層及び上塗り層の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0190】
無機化合物層は、単層あるいは多層構成とすることができる。無機化合物層はその厚みによって、光透過性を維持させることもでき、また、反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層の形成方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0191】
(中間層)
本発明の親水性組成物から形成された膜と基材との間に1層以上の中間層を有していても良い。
中間層としては、特に限定されないが、加水分解性アルコキシシリル基を有する化合物を含有する組成物(中間層用組成物ともいう)を用いて形成されたものが好ましい。
中間層用組成物は、中でもテトラメトキシシラン、モノアルキルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
【0192】
中間層用組成物は、公知の塗布方法で塗布することが可能であり、特に限定がなく、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0193】
中間層の厚さは、厚過ぎると割れが生じ、薄すぎると密着性、耐食性が下がるという理由から、5nm〜1000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましい。
【0194】
(接着層)
本発明の親水性部材を、別の基材上に貼り付けて使用する場合、基材の裏面に、接着層として、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基材における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂及びこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類又は混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、更に好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
【0195】
(離型層)
本発明の親水性部材が前記の接着層を有する場合には、更に離型層を付加することができる。離型層には、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤しては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、及びウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子及び/又は珪素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
【0196】
その他、表面に保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷つきや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層に用いたポリマー層を使用することができる。保護層は、部材を適切な基材へ貼り付けた後には剥がされる。
【0197】
本発明の親水性部材は、シート状、ロール状あるいはリボン状の形態で供給されてもよく、適切な基材に貼り付けるために、あらかじめカットされたもとして供給することもできる。
【0198】
本発明の親水性組成物及び部材が適用可能な用途を例示するが、これらに限定されるものではない。
車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;その他建材用ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ等の種々の乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ等の種々の乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、エアコン室内機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、雪国用屋根材、アンテナ、送電線、医療用診断装置の各部材、医療用のカテーテル、パソコンやテレビのディスプレイ、化粧品の容器、フィルター、自動車用アルミホイール、カメラのファインダー、CCDのカバーガラス、印刷装置の各部材、及び上記物品表面に貼着可能なフィルム、ワッペン等。
【実施例】
【0199】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0200】
(親水性ポリマー(I−2)の合成)
500ml三口フラスコにアクリルアミド56.9g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル55.1g、及び1−メトキシ−2−プロパノール(以下MFGと略すこともある)260gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.7gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。n−ヘキサン5リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をn−ヘキサンにて洗浄後、前記例示化合物(I−2)である親水性ポリマー(I−2)を得た。乾燥後の質量は80.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量22,000のポリマーであった。
【0201】
(親水性ポリマー(II−1)の合成)
200ml三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて65℃窒素気流下、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻し、メタノール1.5L中に投入したところ固体が析出した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、前記例示化合物(I−1)である親水性ポリマー(I−1)を得た。乾燥後の質量は21.7gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量9,000のポリマーであった。
【0202】
(疎水性ポリマー(1)の合成)
500ml三口フラスコにスチレン50g、イソプロピルメタクリレート17g、MFG270gを入れて80℃窒素気流下、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.0g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した。室温まで冷却し、固形分濃度20%の前記例示化合物の疎水性ポリマー(1)を得た。GPC(ポリスチレン標準)により質量平均分子量20,000のポリマーであった。
【0203】
(疎水性ポリマー(A−1)の合成)
500ml三口フラスコにスチレン20.8g、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート49.7g、MFG282gを入れて80℃窒素気流下、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.4g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した。室温まで冷却し、固形分濃度20%の前記例示化合物の疎水性ポリマー(A−1)を得た。GPC(ポリスチレン標準)により質量平均分子量30,000のポリマーであった。
実施例で使用したその他の親水性ポリマー及び疎水性ポリマーも同様に合成できる。
【0204】
(実施例1)
〔疎水性組成物〕
ラテックス(1)(日本ゼオン製:Nipol LX430)を10g、精製水240gを混合し、室温で1時間撹拌し、疎水性組成物とした。
〔親水性ゾルゲル液〕
精製水90g中に、親水性ポリマーとして、親水性ポリマー(I−2)10gを混合し、室温で2時間撹拌して、親水性ゾルゲル液を調製した。
〔親水性組成物〕
前記親水性ゾルゲル液に精製水400g、下記構造を有する界面活性剤(1)の5質量%水溶液2gを混合し、親水性組成物を作製した。
〔塗布方法〕
表面をグロー処理により親水化したポリエチレンテレフタレート基板(厚み50μm)に、前記疎水性組成物をバー塗布し、180℃、30秒でオーブン乾燥して、厚さ50μm、塗布乾燥量0.05g/mの疎水性下塗り層を形成した。更にその上に前記親水性組成物をバー塗布し、180℃、30秒でオーブン乾燥して、厚さ50μm、塗布乾燥量0.05g/mの親水性層を形成した。このようにして親水性部材を作製した。
【0205】
【化42】

【0206】
(実施例2)
実施例1の親水性ゾルゲル液に触媒として1N塩酸水溶液0.05gを添加した以外は実施例1と同様に実施例2の親水性部材を作製した。
【0207】
(実施例3)
実施例2の疎水性組成物中のラテックス(1)をラテックス(2)(日本ゼオン製:Nipol LX435)に変更し、親水性ゾルゲル液の触媒をチタンアセチルアセトナート1gに変更した以外は実施例2と同様に実施例3の親水性部材を作製した。
チタンアセチルアセトナートはアセチルアセトン(東京化成工業製)0.5g、オルトチタン酸テトラエチル(東京化成工業製)0.5gを親水性ゾルゲル液に加えて調製した。
【0208】
(実施例4)
実施例3の疎水性組成物中のラテックス(2)をラテックス(3)(日本ゼオン製:Nipol 1571H)に変更し、親水性ゾルゲル液の触媒をチタンアセチルアセトナート1gに変更した以外は実施例3と同様に実施例4の親水性部材を作製した。
【0209】
(実施例5)
〔疎水性組成物〕
MFG90g、前記例示化合物に記載の疎水性ポリマー(1)の20%MFG溶液10gを混合し、室温で1時間撹拌し、疎水性組成物とした。
〔塗布方法〕
表面をグロー処理により親水化したポリエチレンテレフタレート基板(厚み50μm)に、上記疎水性組成物をバー塗布し、180℃、30秒でオーブン乾燥して、厚さ50μm、塗布乾燥量0.05g/mの疎水性下塗り層を形成した。更にその上に実施例3で使用した親水性組成物をバー塗布し、180℃、30秒でオーブン乾燥して、厚さ50μm、塗布乾燥量0.05g/mの親水性層を形成した。このようにして親水性部材を作製した。
【0210】
(実施例6、7)
実施例5の疎水性組成物中の疎水性ポリマー(1)20%MFG溶液を下記疎水性ポリマーに変更した以外は実施例5と同様に実施例6、7の親水性部材を作製した。
実施例6:前記例示化合物に記載の疎水性ポリマー(2)の20%MFG溶液
実施例7:前記例示化合物に記載の疎水性ポリマー(3)の20%MFG溶液
【0211】
(実施例8)
実施例3の親水性ゾルゲル液にテトラメトキシシラン(東京化成工業製)2.0gを添加した以外は実施例3と同様に実施例8の親水性部材を作製した。
【0212】
(実施例9〜12)
実施例3の親水性ゾルゲル液中の親水性ポリマー(I−2)を下記親水性ポリマーに変更した以外は実施例3と同様に実施例9〜12の親水性部材を作製した。
実施例9:前記例示化合物に記載の親水性ポリマー(I−5)
実施例10:前記例示化合物に記載の親水性ポリマー(I−12)
実施例11:前記例示化合物に記載の親水性ポリマー(I−82)
実施例12:前記例示化合物に記載の親水性ポリマー(II−1)
【0213】
(実施例13)
実施例8の親水性ゾルゲル液中の親水性ポリマー(I−2)を前記例示化合物に記載の親水性ポリマー(II−3)に変更した以外は実施例8と同様に実施例13の親水性部材を作製した。
【0214】
(実施例14)
実施例3の親水性ゾルゲル液中の親水性ポリマー(I−2)10gを前記例示化合物に記載の親水性ポリマー(I−2)7.5g及び親水性ポリマー(II−1)2.5gに変更した以外は実施例3と同様に実施例14の親水性部材を作製した。
【0215】
(実施例15)
実施例3の親水性組成物中の界面活性剤(1)を下記構造を有する界面活性剤(2)に変更した以外は実施例3と同様に実施例15の親水性部材を作製した。
【0216】
【化43】

【0217】
(実施例16)
実施例14の親水性組成物中の界面活性剤(1)を下記構造を有する界面活性剤(3)に変更した以外は実施例14と同様に実施例16の親水性部材を作製した。
【0218】
【化44】

【0219】
(比較例1)
エチルアルコール14.2g、精製水50g中に、テトラメトキシシラン8.0g、アセチルアセトン0.5g、オルトチタン酸テトラエチル0.5gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。そこに実施例1で使用した界面活性剤(1)の5質量%水溶液2.2g、精製水490gを混合し、塗布液とした。
表面をグロー処理により親水化したポリエチレンテレフタレート基板(厚み50μm)に、上記塗布液をバー塗布し、180℃、30秒でオーブン乾燥して、厚さ50μm、塗布乾燥量0.05g/mの下塗り層を形成した。更にその上に実施例3で使用した親水性組成物の親水性ポリマー(I−2)を例示化合物に記載の親水性ポリマー(I−9)に変更した親水性組成物をバー塗布し、180℃、30秒でオーブン乾燥して、厚さ50μm、塗布乾燥量0.05g/mの親水性層を形成した。このようにして比較例1の親水性部材を作製した。
【0220】
(比較例2)
比較例1のテトラメトキシシラン8.0gをテトラメトキシシラン5.6g、メチルトリメトキシシラン(東京化成工業製)2.4gに変更した以外は同様に比較例2の親水性部材を作製した。
【0221】
(比較例3)
比較例1のテトラメトキシシラン8.0gをテトラメトキシシラン4.0g、メチルトリメトキシシラン4.0gに変更した以外は同様に比較例3の親水性部材を作製した。
【0222】
(比較例4)
比較例1の下塗り層の構成を下記に記載のPVA架橋膜に変更した以外は同様に比較例4の親水性部材を作製した。
PVA架橋膜:ポリビニルアルコール(クラレ製、クラレポバールPVA105)+グリオキザール(日本合成化学製)
【0223】
(実施例17)
実施例5の疎水性組成物中の疎水性ポリマー(1)20%MFG溶液を前記例示化合物に記載の疎水性ポリマー(A−1)20%MFG溶液に変更し、触媒を添加しない以外は実施例5と同様に実施例17の親水性部材を作製した。
【0224】
(実施例18)
実施例5の疎水性組成物中の疎水性ポリマー(1)20%MFG溶液を前記例示化合物に記載の疎水性ポリマー(A−1)20%MFG溶液に変更した以外は実施例5と同様に実施例18の親水性部材を作製した。
【0225】
(実施例19〜21)
実施例18の疎水性組成物中の疎水性ポリマー(A−1)20%MFG溶液を下記疎水性ポリマーに変更した以外は実施例18と同様に実施例19〜21の親水性部材を作製した。
実施例19:前記例示化合物に記載の疎水性ポリマー(A−2)の20%MFG溶液
実施例20:前記例示化合物に記載の疎水性ポリマー(A−10)の20%MFG溶液
実施例21:前記例示化合物に記載の疎水性ポリマー(A−18)の20%MFG溶液
【0226】
(実施例22)
実施例18の親水性ゾルゲル液にテトラメトキシシラン2.0gを添加した以外は実施例18と同様に実施例22の親水性部材を作製した。
【0227】
(実施例23〜26)
実施例18の親水性ゾルゲル液中の親水性ポリマー(I−2)を下記親水性ポリマーに変更した以外は実施例18と同様に実施例23〜26の親水性部材を作製した。
実施例23:親水性ポリマー(I−5)
実施例24:親水性ポリマー(I−12)
実施例25:親水性ポリマー(I−82)
実施例26:親水性ポリマー(II−1)
【0228】
(実施例27)
実施例22の親水性ゾルゲル液中の親水性ポリマー(I−2)を親水性ポリマー(II−3)に変更した以外は実施例22と同様に実施例27の親水性部材を作製した。
【0229】
(実施例28)
実施例18の親水性ゾルゲル液中の親水性ポリマー(I−2)10gを前記例示化合物に記載の親水性ポリマー(I−2)7.5g及び親水性ポリマー(II−1)2.5gに変更した以外は実施例18と同様に実施例28の親水性部材を作製した。
【0230】
(実施例29)
実施例18の親水性組成物中の界面活性剤(1)を界面活性剤(2)に変更した以外は実施例18と同様に実施例29の親水性部材を作製した。
【0231】
(実施例30)
実施例28の親水性組成物中の界面活性剤(1)を界面活性剤(3)に変更した以外は実施例28と同様に実施例30の親水性部材を作製した。
【0232】
(実施例31)
〔疎水性組成物〕
疎水性ポリマー(A−1)20%MFG溶液10g、精製水2.0g、MFG88g、触媒として1N塩酸水溶液0.1gを混合し、室温で2時間撹拌し、疎水性組成物とした。
〔塗布方法〕
表面をグロー処理により親水化したポリエチレンテレフタレート基板(厚み50μm)に、上記疎水性組成物をバー塗布し、180℃、30秒でオーブン乾燥して、厚さ50μm、塗布乾燥量0.05g/mの疎水性下塗り層を形成した。更にその上に実施例1の親水性組成物をバー塗布し、180℃、30秒でオーブン乾燥して、厚さ50μm、塗布乾燥量0.05g/mの親水性層を形成した。このようにして親水性部材を作製した。
【0233】
(実施例32)
実施例31の触媒を実施例3で使用したチタンアセチルアセトナート2.0gに変更し、親水性組成物を実施例2で使用した親水性組成物に変更した以外は、実施例31と同様に実施例32の親水性部材を作製した。
【0234】
(実施例33)
実施例32の親水性組成物を実施例3で使用した親水性組成物に変更した以外は、実施例32と同様に実施例33の親水性部材を作製した。
【0235】
(実施例34)
実施例33の親水性組成物を実施例14で使用した親水性組成物に変更した以外は、実施例33と同様に実施例34の親水性部材を作製した。
【0236】
(実施例35)
実施例33の疎水性組成物にテトラメトキシシラン0.2gを添加した以外は、実施例33と同様に実施例35の親水性部材を作製した。
【0237】
(実施例36、37)
実施例35の疎水性組成物中の疎水性ポリマー(A−1)20%MFG溶液を下記疎水性ポリマーに変更した以外は、実施例35と同様に実施例36、37の親水性部材を作製した。
実施例36:疎水性ポリマー(A−2)20%MFG溶液
実施例37:疎水性ポリマー(A−10)20%MFG溶液
【0238】
(実施例38)
実施例35の親水性組成物を実施例14で使用した親水性組成物に変更した以外は、実施例35と同様に実施例38の親水性部材を作製した。
【0239】
(実施例39)
実施例35の疎水性組成物中に実施例1で使用した界面活性剤(1)5質量%水溶液0.4gを添加した以外は、実施例35と同様に実施例39の親水性部材を作製した。
【0240】
(実施例40)
実施例33の疎水性組成物中に実施例1で使用した界面活性剤(1)5質量%水溶液0.4gを添加した以外は、実施例33と同様に実施例40の親水性部材を作製した。
【0241】
(実施例41)
実施例40の疎水性ポリマー(A−1)を疎水性ポリマー(A−2)に変更した以外は、実施例40と同様に実施例41の親水性部材を作製した。
【0242】
(実施例42)
実施例40の親水性組成物を実施例14で使用した親水性組成物に変更した以外は、実施例40と同様に実施例42の親水性部材を作製した。
【0243】
(実施例43、44)
実施例40の界面活性剤(1)を下記界面活性剤に変更した以外は、実施例40と同様に実施例43、44の親水性部材を作製した。
実施例43:実施例15で使用した界面活性剤(2)
実施例44:実施例16で使用した界面活性剤(3)
【0244】
実施例1〜44、比較例1〜3の各成分を表1〜3に示す。
【0245】
【表1】

【0246】
【表2】

【0247】
【表3】

【0248】
ラテックス(1): 組成 スチレン/1,3−ブタジエン/メタクリル酸
ラテックス(2): 組成 スチレン/1,3−ブタジエン/アクリルアミド/アクリル酸/メタクリル酸
ラテックス(3): 組成 アクリロニトリル/1,3−ブタジエン/メタクリル酸
【0249】
また、表中、「TMOS」はテトラメトキシシラン、「MTMS」はメチルトリメトキシシラン、「PVA架橋膜」はポリビニルアルコールの架橋膜、「HCl」は塩酸、「Ti」はチタンアセチルアセトナートを表す。
【0250】
(親水性部材の評価)
〔表面自由エネルギー〕
前記した方法(Zismanプロット法)により表面自由エネルギーを測定した。
【0251】
〔水滴接触角〕
疎水性下塗り層及び親水性層の表面の水滴接触角を協和界面科学(株)製DropMaster500にて測定した。
水滴接触角が低いほど親水性が高くで、水滴接触角が高いほど疎水性が高い。
【0252】
〔耐酸性〕
得られた親水性部材を10%塩酸水、及び10%硫酸水に浸漬し、流水で洗浄後、膜の劣化として膜の有無(一部分が無い場合も含む)を目視で観察し、浸漬開始から膜の劣化が現れた時までの時間を求めた。該時間が長いほど耐酸性が良好である。
【0253】
〔耐アルカリ性〕
得られた親水性部材をマジックリン(登録商標)(花王(株)製)、カビキラー(登録商標)(ジョンソン(株)製)に浸漬し、流水で洗浄後、膜の劣化として膜の有無(一部分が無い場合も含む)を目視で観察し、浸漬開始から膜の劣化が現れた時までの時間を求めた。該時間が長いほど耐アルカリ性が良好である。
【0254】
〔防汚性の評価(1)〕
得られた親水性部材表面に油性インク(三菱鉛筆株式会社製油性マーカー)で線を書き、水を掛け続け、流れ落ちるかを下記三段階で官能評価した。
○:インクが1分以内に取れる
△:1分を経過した後インクが取れる
×:2分を超え10分間にわたり実施してもインクがとれない
【0255】
〔防汚性の評価(2)〕
得られた親水性部材表面にメリット(花王(株)製)の原液を5%に希釈した水溶液を滴下し、風乾した。その後、流水で洗浄し乾燥したあとの水滴接触角を測定した。
○:接触角が25°未満
△:接触角が25°以上45°未満
×:接触角が45°以上
【0256】
〔密着性評価〕
得られた親水性部材を精製水に200時間浸漬し、乾燥した後に膜の剥れが無いか目視観察した。
○:剥れなし
△:部分剥れ
×:全体剥れ
【0257】
〔耐沸騰水性評価〕
上記で得られた親水性部材を95℃の水に3時間浸漬し、乾燥した後に膜の剥れが無いか目視観察した。
○:剥れなし
△:部分剥れ
×:全体剥れ
【0258】
以上の評価結果を下記表4〜6に示す。
【0259】
【表4】

【0260】
【表5】

【0261】
【表6】

【0262】
以上より、本発明の実施例の親水性部材は、親水性、防汚性、耐アルカリ性、耐酸性、及び耐熱水性に優れる親水性部材であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に疎水性下塗り層を有し、かつ該疎水性下塗り層上に親水性層を有することを特徴とする親水性部材。
【請求項2】
前記疎水性下塗り層の表面の水滴接触角が45°以上であることを特徴とする請求項1に記載の親水性部材。
【請求項3】
前記疎水性下塗り層の表面自由エネルギーが65mN/m以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の親水性部材。
【請求項4】
前記疎水性下塗り層が、架橋性基を有する疎水性ポリマーを含む疎水性組成物から形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項5】
前記架橋性基が水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項6】
前記親水性層が、水酸基及び加水分解性官能基の少なくともいずれかを有する珪素原子を有する親水性ポリマーを含む親水性組成物から形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項7】
前記親水性ポリマーが、
下記一般式(I−1)で表される構造単位と下記一般式(I−2)で表される構造単位とを含む親水性ポリマー(I)、及び
下記一般式(II−1)で表される部分構造と下記一般式(II−2)で表される構造単位とを有し、かつポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有する親水性ポリマー(II)
の少なくともいずれか1種であること特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の親水性部材。
【化1】

{一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【化2】

{一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。}
【請求項8】
前記疎水性下塗り層を形成するための疎水性組成物、及び前記親水性層を形成するための親水性組成物の少なくともいずれかに、更に触媒を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項9】
前記触媒が不揮発性の触媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項10】
前記親水性組成物中に、前記親水性ポリマー(I)、及び前記親水性ポリマー(II)を含み、親水性ポリマー(I)と親水性ポリマー(II)の質量比(親水性ポリマー(I)/親水性ポリマー(II))が95/5〜50/50の範囲内であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項11】
前記疎水性組成物及び前記親水性組成物のうち少なくともいずれかが、更にSi、Ti、Zr、Alから選択される少なくともいずれかの元素のアルコキシド化合物を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項12】
前記疎水性組成物及び前記親水性組成物のうち少なくともいずれかが、更に界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項13】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項12に記載の親水性部材。
【請求項14】
前記疎水性下塗り層の膜厚が10nmより大きく、1μmより小さいことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項15】
前記親水性層の膜厚が10nmより大きく、1μmより小さいことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項16】
前記疎水性下塗り層が、疎水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで形成され、前記親水性層が、親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することで形成されたことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項17】
前記基板が樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の親水性部材。

【公開番号】特開2011−73359(P2011−73359A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228688(P2009−228688)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】