説明

触媒製造方法

金系の不均質触媒系を製造するための方法は、酸化雰囲気中で物理的気相堆積法によりナノ粒子状支持媒質上に微細ナノスケール金を堆積させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金系触媒系製造のための方法、それによって製造される触媒系、その触媒系を含む物品、及び触媒方法における触媒系の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノスケールの金粒子は、通常の粗さの金粒子とは異なる物理的特性及び化学的特性を示す。特に、ナノスケールの金は触媒活性を有し、一酸化炭素を酸化して二酸化炭素を形成するための触媒として使用することができる。触媒活性金は、例えば、ディーゼル排気流における炭素質の煤の酸化、不飽和及び飽和炭化水素の酸化、並びに同等反応のような、その他の酸化反応の触媒における使用もこれまでに提案されている。
【0003】
一般に金ナノ粒子は非常に流動性が高く、大きな表面エネルギーを有し、容易に融合する傾向がある。融合を防止することは難しく、このことが金をナノ粒子形態に維持することを困難なものにしている。金の触媒活性はその粒径が大きくなるほど低下する傾向にあるので、このような融合は望ましくない。この問題は、金に対して比較的特異的なものであり、プラチナ及びパラジウムなどのその他の貴金属に関しては問題ははるかに小さい。よって、担体上に均一に分散された状態に金ナノ粒子を堆積及び不動化する方法が、これまで探求されている。
【0004】
これまでに開発された、触媒活性金を様々な支持体に堆積させる主要な方法としては、(i)支持体と金前駆物質を、例えば水酸化物などとしての溶液に、例えば炭酸ナトリウムなどの塩基を加えることによって析出させる、共沈方法、(ii)金前駆物質を、pHを上げることにより、形成済み支持体の懸濁液の上に沈殿させる、堆積−沈殿方法、並びに(iii)金ホスフィン錯体(例えば[Au(PPh)]NO)を生成し、沈殿したばかりの支持体前駆物質と反応させる方法、が挙げられる。コロイド、移植、及び気相堆積の利用などの他の方法では、これまでの成功の度合は様々である。
【0005】
しかしながら上記の方法では、深刻な再現性の問題を抱えていた。この再現性の問題は、金の粒径の制御困難性、塩化物イオンなどのイオンによる金触媒の性能低下、支持体の孔に活性金が失われること、金触媒を活性化するのに場合によっては熱処理が必要であること、熱処理による特定の触媒部位の不活性化、金酸化状態の制御の欠落、及び水性塩基を追加することによる金溶液加水分解の不均一性、に起因している。
【0006】
上記の堆積−沈殿方法で製造された金触媒は通常、空気中での熱処理によって活性化されている。少なくとも1つの事例において、この熱処理はオゾンを含む雰囲気中で実施されている。後者の方法では、空気中で活性化された同様の触媒に比べ、より安定であるが活性は低い触媒が得られた。
【0007】
物理的気相体積(PVD)法は、例えばナノ孔を生じないような条件下で製造したチタン酸塩セラミックなど、様々な非ナノ多孔質の支持媒質上に金を堆積させるのに用いられている。更に最近では、ナノ多孔質支持体上に触媒活性金を供給することにより、有効な不均質触媒系が製造されている。これには、より大きなアルミナ又は活性炭粒子(ホスト材料と呼ばれる)の表面を少なくとも部分的にコーティングする、比較的小さなチタニア粒子(ゲスト材料と呼ばれる)から誘導された、複合支持体が挙げられる。これらの複合体系は、一酸化炭素の酸化に関して、効果的な触媒性能を提供している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
要約すれば、金は触媒として素晴らしい可能性を有しているが、金をナノ粒子形態に製造及び維持することの難しさにより、これまで、商業的に実行可能な金系触媒系の開発が妨げられ続けてきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このように我々は、改善された金系触媒系及びその製造のための方法が必要とされていることを認識している。特に我々は、強化された触媒活性を提供でき、又は、金が比較的高価であることを考慮し、現行の系及び方法よりも低コストで同等又はより良い触媒活性を提供できる、金系系及び方法の必要を認識している。
【0010】
端的には、1つの態様において、本発明は金系不均質触媒系の製造方法を提供する。この方法には、酸化雰囲気中で物理的気相堆積法によりナノ粒子状支持媒質上に微細ナノスケール金を堆積させることが含まれる。好ましくは、この酸化雰囲気には少なくとも1つの酸素含有気体が含まれる(より好ましくは、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択される酸素含有気体が含まれる)。
【0011】
ナノ粒子状支持媒質(例えば、ナノ粒子の多孔質凝集塊、比較的高表面積のゾル−ゲル由来材料、比較的高表面積のガンマアルミナ及び同等物)上に微細ナノスケール金を堆積させる物理的気相堆積(PVD)を使用することで、触媒活性を有する金の使用が劇的に容易になる可能性があり、及び、金系触媒系の開発、製造、及び使用に顕著な改善をもたらし得ることが見出されている。特に、酸化雰囲気中でナノ粒子状基材上への微細ナノスケール金の物理的気相堆積法を(例えばスパッタリングにより)実施することにより、驚異的に強化された触媒活性を示す金系触媒系が提供され得ることが明らかになっている。
【0012】
本発明の方法は、所定の量の堆積金について、非酸化雰囲気中(例えばアルゴンガスのみから構成される)で調製された同等系に比べ、酸化方法(例えば一酸化炭素の酸化)により高い触媒を達成する触媒系を提供することができる。これは、効果的な酸化触媒活性が、より少量の金堆積で得ることができるということを意味する。比較的高い活性に必要なのは、一般に、少量の金だけである。よって、本発明の方法の少なくともいくつかの実施形態が、現行の系及び方法よりも低コストで同等又はより良い触媒活性を示す金系触媒系を提供する方法に対する、上記のニーズを満たすことができる。
【0013】
本発明の方法は、丈夫で(例えば、比較的長期間にわたって触媒活性を有する)、安定しており、たとえ不均一又は非均質の支持表面を利用した場合であっても、比較的均一(例えば、粒子当たりの金の濃度、粒子サイズ、及び粒子サイズ分布に関して)である触媒系を提供することができる。本方法に使用されるナノ粒子状支持媒質は、高表面積を有するだけでなく、金不動化を明らかに支援するナノスケール特性をも含み、これにより、そうでなければ触媒性能を失う原因となり得る金粒子の融合を防ぐことができる。
【0014】
好ましい支持媒質には、ゲスト材料(例えばチタニアナノ粒子)をホスト材料(例えば、より粗い活性炭粒子)の表面の少なくとも一部の上に堆積させた、複合支持媒質が挙げられる。微細ナノスケール金(例えば、分離性の粒子又は原子クラスタ)のサイズ、サイズ分布、及び性質は、支持体の表面の性質及び金堆積中のスパッタリング条件を制御することによりコントロールすることが可能である。
【0015】
本発明の方法は、PVDによる堆積によって活性化される金を提供することができる。一般に、他の一部の方法のように触媒を活性化するのに加熱処理を行う必要がないため、この方法は、酸化に感受性の高い支持体の使用に好適である(例えば、炭素は他の方法ではしばしば還元雰囲気の使用が必要となる)。結果として得られる触媒系は、高湿度環境で有効であり得、室温(例えば約22℃〜約27℃)及びより低温(例えば約5℃未満)を含む幅広い温度範囲で機能することができる。
【0016】
溶液状態の方法と違い、物理的気相堆積法は非常にクリーンであり、触媒系には不純物が実質的に導入されない。一般に、塩化物又はその他の好ましくないイオン、分子、又は反応副生成物を除去するための洗浄工程も不要である。所望される場合には、他の金属を同時又は連続的に堆積させることにより、1つ以上の反応の触媒を実現することができる(例えば、一酸化炭素と、SOなどの他の空気中汚染物質とを同時に酸化するなど)。
【0017】
本発明の方法により製造される金系触媒系は、コスト効率の良い一酸化炭素低減を提供することができる(例えば、個人用呼吸保護具、並びに車両及び建造物の保護に使用)。更に、この系は、内燃エンジンからの排気ガスの浄化、燃料セル供給原料からの一酸化炭素の除去、並びに、ディーゼル排気流中の炭素質の煤の酸化、及び有機化合物の選択的酸化(例えば不飽和及び飽和炭化水素)などのその他の酸化反応の触媒に使用することができる。
【0018】
別の態様において、本発明は更に、ナノ粒子状チタニア上に微細ナノスケール金を含む触媒系を提供し、その微細ナノスケール金は、微細ナノスケール金とナノ粒子状チタニアとの総重量を基準として約1重量パーセントを超える量(好ましくは、約10重量パーセント未満)で存在し、そのナノ粒子状チタニア上の微細ナノスケール金は、CIE色座標L、a、及びbのセットで記述される色を呈し、そのL色座標は約64を超え、a色座標は約ゼロ未満であり、及びb色座標は約ゼロ未満であり、これらはd/8°幾何条件を使用する総反射率測定値によって定量される。
【0019】
更に別の態様において、本発明は更に、本発明の上記記載の触媒系を含む呼吸器保護具を提供する。
【0020】
また更に別の態様において、本発明は、(a)本発明の上記記載の触媒系、又は本発明の上記記載の方法により調製された触媒系を提供すること;及び(b)この触媒系を用いて、触媒系に接触する物質を酸化すること、を含む触媒のための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のこれら及びその他の特徴、態様及び利益は、次の説明、添付した請求項及び添付図面でより良く理解されるであろう。
【図1】本発明の方法の1つの実施形態を実施するための装置の側方断面図。
【図2】図1の装置の透視図。
【図3】後述の「実施例」の項で記述される方法によって調製される触媒系の一酸化炭素酸化触媒特性を評価するのに用いられた試験システム。
【図4】3つのCIE色座標(L、a、及びb)のプロットによる色の配置を構成する色立体の概略図。
【図5】後述の「実施例」の項で記述される方法によって調製される触媒系の色特性を評価するのに用いられた、総反射率測定幾何条件(d/8°)の概略図。
【0022】
これらの図は、理想化されており、一定の縮尺で描かれてはおらず、単に例証であり、かつ非制限的であることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0023】

本発明の方法は、ナノ粒子状支持体上に微細ナノスケールの金を供給し、不均質な触媒系を形成することができる。金は、帯黄色の、比較的不活性な金属である貴金属として公知である。しかしながら、金の特性は、ナノスケール(100ナノメートル未満)領域(特にナノスケールの下端で;例えば、少なくとも1つの次元のサイズが約10ナノメートル(nm)未満である特徴を有するサイズ範囲)において劇的に変化し、金が触媒活性を有することができる。本明細書で使用する時、用語「微細ナノスケール金」は、全ての次元のサイズが5ナノメートル(nm)以下である金物体(例えば、粒子又は原子クラスタ)を意味する。
【0024】
触媒活性金は、特定のサイズ、色、及び/又は電気的特性などの1つ以上の特性によって同定することができる。一般的に、金試料が、これらの必要特性のうち1つ以上、好ましくは、これらの特性のうち2つ以上を有する場合、本発明の方法の実施において触媒活性があると見なされる。
【0025】
ナノスケールサイズは、触媒活性金に関する1つの特性である。これは、金の触媒活性は、金試料の少なくとも1つの次元のサイズがナノスケールの範囲(例えば、粒径、繊維径、フィルム厚さ、又は同等物)であるかどうかにより、大幅に異なるためである。より小さなサイズを有する物体(文献上で時にクラスタとも呼ばれる)は、より高い触媒活性を有する傾向にある。サイズが大きくなると、触媒特性は一般に急速に低下する。
【0026】
したがって、触媒活性金の好ましい実施形態は、前述の範囲の微細ナノスケールサイズを有することができ、高活性が望まれる場合には、より小さなサイズがより好ましい。好ましくは、触媒活性金は、全ての次元の平均サイズ(例えば、粒子のサイズ又は原子クラスタのサイズ)が最大約5nm(5nm以下)の範囲である(より好ましくは、最大約4nmであり、更に好ましくは最大約3nmである)。最も好ましくは、個々の金ナノ粒子においてあらゆる次元のサイズが、約2nm以下である。好ましい実施形態には、少なくとも1つの次元で少なくとも約0.1nmで、かつ上記の全ての次元における上限値以下である、ナノ粒子が含まれ得る。
【0027】
最も好ましい実施形態において、金の少なくとも一部分が超ナノスケールである(すなわち、少なくとも2つの次元においてサイズが0.5nm未満であり、全ての次元においてサイズが1.5nm未満である)。個々の金ナノ粒子のサイズは、当該技術分野において周知であるように、透過電子顕微鏡(TEM)分析によって定量することができる。
【0028】
支持体上に供給される金の量は、幅広く変化し得る。金は高価であるため、望ましい触媒活性程度を達成するのに妥当に必要な量を超える金は使用しないのが望ましい。更に、ナノスケール金は非常に流動性が高いため、PVDを使用して堆積する際に、金の使用量が多すぎると、大きい物体に金の少なくとも一部が融合して、触媒活性が損なわれる可能性がある。
【0029】
これらの理由から、ナノ粒子状支持体上の金の荷重は、ナノ粒子状支持体と金との総重量を基準として、好ましくは約0.005(より好ましくは0.05)〜約10重量パーセント、より好ましくは約0.005(更に好ましくは0.05)〜約5重量パーセント、及び更に好ましくは約0.005(最も好ましくは0.05)〜約2.5重量パーセントである。ナノ粒子状支持体が2つ以上の構成成分からなる複合体(例えば、後述のように、1種以上のホスト粒子上に1種以上の複数個のゲスト粒子を供給することによって形成された複合体)である場合、ナノ粒子状支持体の総重量は、結果として得られた複合支持媒質の総重量を意味する。よって、このような複合支持体を使用する場合、金の好ましい荷重は、上記範囲の下端であり得る(例えば、約0.005〜約1重量パーセント、より好ましくは、約0.005〜約0.5重量パーセント)。本発明の方法は、堆積した金の所定の量について、触媒活性の強化を達成し、これによりより低いコストで同等又はより良い性能を提供するのに、使用することができる。
【0030】
金はPVD技法(例えばスパッタリング)により堆積させて、ナノ粒子状支持体表面上に、触媒活性を有する微細ナノスケール粒子又は原子クラスタを形成することができる。金は、主に元素形態で堆積すると考えられる(ただし、他の酸化状態が存在する場合もある)。金は流動性が高く、表面の低エネルギー部分に蓄積する傾向があるが、本発明の方法における支持体のナノ粒子特性と活性化試薬の好ましい使用が、明らかに、金を不動化するのに役立ち、並びに、堆積した金粒子及びクラスタを個別又は別々の状態に保ち、好ましくは不連続に維持するのに役立っている。このことは触媒活性を保持するのに役立ち得、そうでなければこの触媒活性は金が融合して大きなサイズの物体になった場合には低下してしまうであろう。
【0031】
金に加え、1種以上の他の金属を、同じナノ粒子状支持体及び/又は金含有支持体と混合したその他の支持体の上に提供することもできる。このような他の金属の例としては、銀、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウム及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの他の金属を使用した場合は、使用する金供給源標的と同一又は異なる標的供給源から、支持体上に共沈させることができる。又は、このような金属は、金を堆積させた前又は後のいずれかで、支持体上に供給され得る。有利な活性化のための熱処理を必要とする他の金属は、金を堆積させる前に支持体に適用し、熱処理することもできる。
【0032】
支持媒質
本発明の方法における使用に適した支持媒質には、ナノ粒子であるものが挙げられる。本明細書で使用する時、用語「ナノ粒子状支持媒質」は、平均直径が50ナノメートル(nm)未満のナノ粒子を含む支持媒質を意味し、「直径」はほぼ球形の粒子の直径だけでなく、非球形粒子の最長サイズをも意味する。好ましくは、このナノ粒子は少なくとも2つの次元のサイズが約30nm以下である(より好ましくは約15nm以下、最も好ましくは約10nm以下である)。ナノ粒子状支持媒質は所望により更に、より大きい粒子(例えば、平均直径が50nm超で100nm未満のナノ粒子、又は更に大きい粒子)を少量含むことができ(すなわち、ナノ粒子状支持媒質の総重量の50パーセント未満;より好ましくは約20パーセント未満;最も好ましくは10パーセント未満)、あるいは、複合体支持媒質(後述)を使用する場合は、少量を超える量を含むことができる。
【0033】
このような支持体を使用すると、より小さなサイズの粒子の金と、より高い触媒活性が観察できることから、この支持体のナノ粒子特性は、支持体表面に堆積した金の不動化を支援すると見られる。更に金は、一般に、活性化のための追加加熱又はその他の処置を必要とせずに、触媒活性状態においてPVDを使用したナノ粒子状支持体上に堆積させることができる。
【0034】
ナノ粒子状支持媒質のナノ粒子は、好ましくは、何らかの形で会合して、凝集塊を形成している。例えば、ナノ粒子は物理的(例えばロンドン力又は水素結合により)又は化学的(例えば共有結合又はイオン結合により)に会合し得る。結果として得られる凝集塊は好ましくは、全ての次元の平均サイズが約0.1マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲である。この凝集塊は更に会合して、(例えば、堆積剤の使用の有無を問わず、噴霧乾燥、ゾル−ゲル方法、又はコーティングなどの方法により)、凝集塊ネットワークを形成し得る。
【0035】
この凝集塊は一般に、形成の元となるナノ粒子が不完全に充填されていることから、(たとえ非多孔質のナノ粒子から形成されたとしても)多孔質であり得る。好ましくは、ナノ粒子又は結果として得られる凝集塊のいずれか(又は両方とも)が多孔質である。この凝集塊は比較的強靱であり得(例えば、ナノ粒子状ゾル前駆体を用いたゾル−ゲル方法により形成した場合)、又は比較的脆い性質(例えば、乾燥粉末ベッド内で形成した場合、又は液体中の凝集塊分散液の乾燥により形成した場合)であり得る。ゾル−ゲル形成方法には、乾燥及び/又は熱処理を含めることができ、これにより、中間体ゲル内のナノ粒子の不完全な充填によって生じた多孔性を除去することなく、ナノ粒子同士を固着させることができる。
【0036】
好ましくは、本発明の方法に使用されるナノ粒子状支持媒質は、約0.4を超える(好ましくは約0.5を超える)多孔率(すなわち、支持媒質の総体積に対する孔空隙の体積比)を有する。多孔率は、透過電子顕微鏡(TEM)によって観察及び測定が可能である。
【0037】
より好ましくは、ナノ粒子状支持媒質はナノ多孔質である(すなわち、多孔率が約0.4を超え、かつ孔の直径サイズが約1nm〜約100nmの範囲である)。最も好ましくは、ナノ粒子状支持媒質は、下記の式を使用して計算(例えばTEMによって得られたデータで計算)した場合に、サイズ1〜10nmの範囲の孔のナノ多孔質総容量が、サイズ1〜100nmの範囲の孔の総容量の約20パーセントを超える(すなわち、下記の式を使用して約0.20を超える)。
【0038】
【数1】

【0039】
式中、NPCは支持媒質のナノ多孔質総容量を示す;CPvは、孔の半径nでの蓄積孔容量を示し、1グラム当たり立方センチメートル(cm/g)単位である;及びnはナノメートル単位での孔の半径である。
【0040】
好ましいナノ粒子状支持媒質には、支持媒質の外側表面領域がナノ多孔質であり、その深さが、PVDによって堆積される金原子の浸透深さ以上であるものが含まれる。通常、低表面積の非ナノ多孔質材料は、様々な方法によるナノ多孔率によって特徴付けられる外表面を有するよう、作製することができる(例えば、より大きなホスト材料の表面上にナノ粒子サイズのコロイドのようなナノ多孔質材料を吸着させて複合体を形成することによる;材料の表面上で金属アルコキシド又は金属塩を加水分解することによる;及び、材料の表面上で、アルミニウム、チタン、スズ、アンチモン又は同等物の金属薄膜を酸化することによるなど)。後者の場合、金属薄膜はPVD法により堆積させることが可能であり、酸化は、ナノ多孔質被膜を材料上に生成するため、乾燥した、又は湿った空気により行うことが可能である。
【0041】
有用なナノ粒子状支持媒質は、支持材料の様々な形態又は形状(例えば粉末、粒子、ペレット、顆粒、押出成形体、繊維、シェル、ハニカム、プレート、スクリム、布、紙及び同等物、並びにこれらの組み合わせ)を含み得る。粒子は、規則正しい形、不規則のもの、デンドライト状のもの、デンドライト状ではないもの又は同等物があり得る。好ましい支持体には、粒子、粉末、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
ナノ粒子に加え、ナノ粒子状支持媒質の粒子の実施形態には、幅広い粒子サイズの範囲のいずれかの粒子が含まれ得る。例えば、ナノ粒子及び/又はナノ粒子凝集塊は、他の粒子状触媒又は吸着材と組み合わせ、ナノ粒子状支持媒質の特性を更に改変することができる。このような添加剤は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集塊の平均サイズの約10分の1未満〜約10倍の平均サイズ範囲であり得る。しかしながら、しばしば、この添加剤は、ナノ粒子又はナノ粒子凝集塊に匹敵する平均サイズを有する。適切なサイズを選択するには、空気流抵抗に対する密度及び触媒速度のバランスをとることが含まれ得る。一般に、サイズが小さいほど(すなわち粒子サイズが小さいほど)、より高い触媒速度及び濾過性能が得られるだけでなく、より高い空気流抵抗が得られる。
【0043】
好ましいナノ粒子状支持体には、多相(例えば二相)表面を有するナノ粒子状支持媒質が含まれる。多相とは、その支持体の表面に1つを超える相がある(例えばTEMで判定される)、支持体表面を意味する。このような支持体は、PVDによる金堆積によって、触媒活性の強化を示し得る。
【0044】
ナノ粒子状支持媒質として有用な材料(単独で、又は他の材料と組み合わせて)の代表的な例としては、炭素質材料、ケイ素質材料(シリカ、シリカ−チタニア(シリカナノ粒子とチタニアナノ粒子の混合物、ケイ素とチタンの両方を含む酸化物のナノ粒子及び同等物)、及びシリカ−アルミナ及び同等物)、及び金属化合物(例えば金属酸化物及び同等物)及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。有用な金属酸化物としては、セリウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、鉄、スズ、アンチモン、ランタン、タングステン、及びこれらの組み合わせのうち、1種以上の酸化物が挙げられる。カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、バリウム、ハフニウム、タリウム、レニウム、白金、及びこれらの組み合わせのうち1種以上の酸化物も、前述の酸化物の1種以上との混合剤として有用であり得る。
【0045】
有用な炭素質物質の例には、活性炭及びグラファイトが挙げられる。適した活性炭粒子は、石炭、ココナツ、泥炭、任意の原料からの任意の活性炭、及び同等物、並びにこれらの組み合わせを含む幅広い原料から誘導することができる。
【0046】
ナノ粒子状支持媒質としての使用に好ましい材料(単独又は他の材料と組み合わせて)には、アルミニウム酸化物、チタニア、チタニア−アルミナ、シリカ、チタニア−シリカ、活性炭、ホプカライト(CuMnO)などの二元系酸化物、分子ふるい、及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうち、アルミニウム(好ましくはアルミナ)、チタン(好ましくはチタニア)、及びこれらの組み合わせを含む酸化物が、特に好ましい。チタニア及びアルミナは、ナノ粒子形態で市販されている。チタニアがより好ましい(最も好ましくは、チタニアの少なくとも一部分がアナターゼ結晶形状になっている)。
【0047】
これらの酸化物に加えて、活性炭は、ナノ粒子状支持媒質の追加構成成分として有用であり得る。これは、触媒活性のための支持媒質を提供し比較的長い耐用期間を示すことに加え、炭素が有害なガスの吸収材として機能し得るからである。濾過能力を増大させる含浸剤も、従来の実施に従って、容易に炭素質物質に取り込むことができる。活性アルミナは一般に、エージング及び熱に対して非常に強靱であり得、したがって高温において有用であり得る。
【0048】
本発明の方法における使用に特に好ましいナノ粒子状支持媒質は、複合支持媒質であり、これは第一の材料(例えば、多孔質又は非多孔質ナノ粒子を含む比較的微細な材料;好ましくは、多孔質ナノ粒子、又は、多孔質又は非多孔質ナノ粒子の多孔質凝集塊)を、第一の材料より粗い又は平均サイズが大きい(例えば大きな粒子、繊維、ハニカム材料、及び同等物、並びにこれらの組み合わせ)第二の材料(これは第一の材料と化学的に同じでも又は異なっていてもよい)の上に吸着又は接着させることによって調製することができる。第一の材料は本明細書において「ゲスト」材料と呼ばれ、第二の比較的粗い材料は本明細書において「ホスト」材料と呼ばれる。ゲスト材料の量は一般に、複合支持媒質のゲスト材料とホスト材料との総重量を基準として、約3重量パーセント〜約40重量パーセント(好ましくは約8重量パーセント〜約20重量パーセント)であり得る。1つの選択肢として、触媒活性金は、ゲスト材料がホスト材料と結合する前に、ゲスト物質上に堆積させておくことができる。別の選択肢として、触媒活性金は、複合支持媒質の形成中又は形成後に、結果として得られる複合支持媒質上に堆積させることができる。
【0049】
このゲスト/ホスト複合体構造は、供給される総外表面積を劇的に増大させることができ、同時に、粗い材料の所望されるガス透過特性(すなわち、圧力低下が小さい)が保持される。更に、これにより、触媒床の体積嵩に、より安価な粗い粒子(非多孔質でもよい)を含めることができる。しかしながら、好ましくは、ホスト材料は多孔質であり、これによりゲスト材料の適用が促進され、触媒床の加熱及び冷却が促進される。ゲスト材料とホスト材料の両方とも、非多孔質であり得、多孔性は粒子充填のみによって提供され得るが、最も好ましくは、ゲスト材料が多孔質凝集塊の形態であり、ホスト材料が多孔質である。
【0050】
一般的に、複合支持媒質を作製するために、様々な方法が使用できる。1つの方法では、多孔質又は非多孔質のゲスト粒子を、溶液中で1種以上の堆積剤と混合し、この結果得られた混合物を、次に、より粗いホスト粒子と合わせることができる。ホスト粒子が多孔質の場合、この混合物は、ホスト粒子を初期湿潤技術によって導入することができる。ホスト粒子が多孔質でない場合は、この混合物をホスト粒子と混合することが可能であり、この溶液を、混合と同時又は混合の後のいずれかで除去することが可能である。
【0051】
いずれの場合でも、ゲスト粒子、堆積剤、及びホスト粒子を組み合わせ、その溶液から液体を除去した後、結果として得られる混合物を乾燥させ、所望により焼成ないしは別の方法で加熱処理することにより、ホスト粒子の表面の少なくとも一部分の上にゲスト粒子が接着又はコーティングされた複合支持媒質が供給され得る。焼成温度は、堆積剤と粒子との間の結合を生成するのに充分であり、ただし多孔質粒子がその多孔性を失う温度よりは低い温度に選択することができる。通常、焼成温度は約200℃〜約800℃の範囲であり得る。一般に、低い温度が好ましいことがあり得る。炭素を含む支持媒質は一般に、より穏やかな温度(例えば約120℃〜約140℃)に加熱することができる。
【0052】
堆積剤は、一般的に、100重量部のゲスト物質に対して、約0.1〜約50重量部の量で含まれ得る。堆積剤の例としては、塩基性金属塩、部分的加水分解されたアルコキシドなどの部分的加水分解された金属錯体、水性オキシ水酸化金属のナノ粒子、その他の金属塩、及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。部分的加水分解されたアルコキシドの溶液は、ゾル−ゲル技術分野において周知である方法によって調製することができる。有用な金属アルコキシドには、チタン、アルミニウム、ケイ素、スズ、バナジウムのアルコキシド、及びこれらの混合物が挙げられる。塩基性金属塩には、チタン及びアルミニウムの、硝酸塩及びカルボン酸塩が挙げられる。ナノ粒子サイズのコロイド材料には、アルミニウム及びチタンの、酸化物及びオキシ水酸化物、並びにシリコン、スズ及びバナジウムの酸化物の、コロイドが挙げられる。
【0053】
更に別の構成方法において、複合支持媒質は、ゲスト粒子とホスト粒子の物理的な混合によって(例えば、機械的及び/又は静電的混合を含む技法によって)調製可能である。このような混合の結果として、ゲスト粒子とホスト粒子は会合して所望の秩序立った混合物になる傾向にあり、これにおいてゲスト粒子が実質的に均一にホスト粒子の表面をコーティング又はそうでなければ会合している。溶媒をわずかしか使用しない又は溶媒を使用しない乾燥混和で、適した複合体を提供することができるが、所望により、1種以上の液体成分を、この混合物に含めることができる。秩序立った混合物及びそのような混合物の作製方法は、フェファー(Pfeffer)ら著、「乾燥粒子コーティングを使用した改変された特性を伴う工学的微粒子の合成(Synthesis of Engineered Particulates with Tailored Properties Using Dry Particle Coating)」、「パウダーテクノロジー(Powder Technology)」117巻、40〜67頁(2001年);及びハーシー(Hersey)著、「秩序立った混合:粉末混合の実施における新概念(Ordered Mixing: A New Concept in Powder Mixing Practice)」、「パウダーテクノロジー(Powder Technology)」11巻、41〜44頁(1975年)に記載されており、それぞれの記述は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
ゲスト材料は、好ましくは、物理的、化学的、静電堆積、又はその他の方法により、ホスト材料の表面の全体又は一部を被覆ないしは別の方法でこれに会合することが可能であるような、多孔質粒子、多孔質凝集塊、又は粉末を含む。適したゲスト粒子の代表的な例としては、例えばチタニア(好ましくはチタニアの少なくとも一部がアナターゼ結晶形状になっているもの)、酸化亜鉛、酸化鉄、アルミナ、及び酸化スズなどの金属酸化物;酸化ケイ素;ゾル−ゲル由来粒子;ゼオライト;エアロゲル粒子;及び同等物;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。金属酸化物及びその組み合わせが好ましいものであり得る(チタンとその組み合わせを含む酸化物がより好ましく、チタニアが最も好ましい)。
【0055】
好ましくは、ゲスト材料は平均直径約1nm〜約30nmのナノ粒子を含む(より好ましくは約3nm〜約30nm、更に好ましくは約3nm〜約15nm、最も好ましくは約3nm〜約10nm)。ゲスト材料は好ましくは、BET(ブルナウワー・エメット・テラー(Brunauer-Emmett-Teller))法(窒素ガス分子の物理吸着による固体の表面積計算)によって測定される高表面積を有する。ゲスト材料のナノ粒子部分の表面積は、好ましくは1グラム当たり約35平方メートル(m/g)を超え、より好ましくは約150m/gを超え、最も好ましくは約300m/gを超える。
【0056】
ゲスト材料は、多孔質(好ましくはナノ多孔質)凝結物、又は多孔質若しくは非多孔質ナノ粒子の凝集塊の形態で存在し得る。この多孔質凝結物は、全ての次元における平均サイズが約0.1マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲であり得る(より好ましくは約0.2マイクロメートル〜約3マイクロメートルの範囲、更に好ましくは約0.2マイクロメートル〜約1.5マイクロメートルの範囲、最も好ましくは約0.2マイクロメートル〜約1.0マイクロメートルの範囲)。
【0057】
ゲスト粒子及び/又は凝結ゲスト粒子は、金気相堆積のためのホスト粒子上に、多孔質の、露出した、高表面積コーティングを提供し得る。結果として得られる複合支持媒質は、複数レベルの多孔率を示し得る(例えば、ゲスト粒子自体の多孔率、並びに粒子間の隙間による多孔率)。
【0058】
複合支持媒質のホスト材料としては、単独又は組み合わせにより、様々な材料を使用することができる。例としては、粒子、粉末、ペレット、顆粒、押出成型物、繊維、シェル、ハニカム、プレート、及び同等物、並びにこれらの組み合わせなど、幅広い形態又は形状が含まれる。ホスト粒子は、規則正しい形、不規則のもの、デンドライト状のもの、デンドライト状ではないもの、又は同等物であり得る。複合支持媒質の好ましい実施形態は更に多孔質ゲスト材料を取り込むため、このホスト材料は必ずしも多孔質である必要はないが、所望される場合には多孔質(好ましくはナノ多孔質)であり得る。
【0059】
有用なホスト材料には、金属酸化物(例えばアルミナ)、炭素質材料(例えば活性炭)、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、遷移金属酸化物、及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。金属酸化物(例えばアルミナ)及び炭素質材料(例えば活性炭)、並びにこれらの組み合わせが好ましいものであり得、炭素質材料がより好ましい。
【0060】
ホスト材料が粒子構成要素を含む実施形態において、1つ以上の種類のホスト粒子は、使用されるゲスト材料より大きくなることができ、通常、平均粒径(直径)がそれぞれ独立に約3マイクロメートル〜約5000マイクロメートルの範囲、より好ましくは、約5マイクロメートル〜約2000マイクロメートルの範囲であり得る。しかし、より大きなホスト粒子を、一部の用途において使用することができる。そのような範囲内において、ホスト及びゲスト粒子の相対的サイズは、秩序立った混合物の形成に適していることも望ましいものであり得る。つまり、ホスト粒子のゲスト粒子に対する体積平均粒径の比は、約3:1を超えることが好ましく、より好ましくは約10:1を超え、最も好ましくは約20:1を超える。
【0061】
ホスト粒子の好ましい実施形態は、クラレケミカル株式会社(Kuraray Chemical Co., Ltd.)(日本)から、「クラレGG(Kuraray GG)」という商標表記で市販されている活性炭を含む。この材料は多孔質であり、炭酸カリウムを含有するが、ハロゲン化物の含有率は低い。この材料は、ココナツに由来する。
【0062】
上述のナノ粒子状支持媒質の構成成分の粒径は、現在又は今後実施される従来からの実施方法に従い、適切な任意の方法で測定することができる。例えば、ナノ粒子の平均直径は、TEM情報の検査によって定量することができ、約0.1マイクロメートル〜約25マイクロメートルの範囲のナノ粒子凝集塊の平均直径は、走査電子顕微鏡(SEM)によって決定することができ、より大きな(約5マイクロメートルを超える)粒子又は凝集塊の平均直径は、光学顕微鏡によって定量することができる。
【0063】
本発明の方法における使用に特に好ましいナノ粒子状支持媒質には、ナノ粒子状金属酸化物(好ましくはチタニア)が含まれ、ゲスト材料として、ナノ粒子状金属酸化物(好ましくはチタニア)を含む複合支持媒質が含まれ、ホスト材料として活性炭が含まれ、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0064】
堆積方法
物理的気相堆積とは、金含有供給源又は金含有標的から支持媒質への金の物理的な移動を意味する。物理的気相堆積は、原子単位での堆積を伴うものとして見ることができる。ただし実際の実施では、金が、物体当たり1つ以上の原子から構成される超微細体として移送される場合もある。堆積した金は支持媒質の表面と物理的、化学的、イオン的、及び/ないしは別の方法で相互作用を起こし得る。
【0065】
物理的気相堆積は好ましくは、金の移動性が高く、何らかの方法(例えば、支持体表面上又は非常に近くの場所に堆積)で不動化されるまでは、支持媒質の表面上を移動しやすい傾向にある。堆積する部位は、表面欠損などの欠陥、段差及び転位などの構造上の不連続性、並びに相の境界面、又は小さな金クラスタのような結晶若しくはその他の金形態を含むことができる。本発明の方法によって堆積した金は明らかに、金が高レベルの触媒活性を維持できる、十分な不動化が行われている。これに対し、従来の方法ではしばしば、金が融合して大きな形状になり、触媒活性が低下する又は失われることさえあり得る。
【0066】
物理的気相堆積は、様々な方法で実施することができる。代表的な方法としては、スパッタ堆積法(好ましい)、蒸着法、及び陰極アーク堆積法が挙げられる。本発明の方法には、これら又は他のPVDアプローチのいずれかを用いることができる。ただし、PVD技法の性質が、結果として得られる触媒活性に影響を及ぼす可能性がある。
【0067】
例えば、物理的気相堆積法のエネルギーは、堆積する金の流動性に影響を与え、融合しやすくなる傾向を生じ得る。エネルギーが高くなると、これに応じて金の融合傾向が増大する傾向がある。融合が増大すると、これに応じて、触媒活性が低下する傾向がある。通常、堆積形態のエネルギーは、蒸着法が最も低く、スパッタ堆積法(衝突金属形態のごく一部はイオン化されており、ある程度のイオン量を含み得る)はより高く、陰極アーク堆積法(イオン量は、数十パーセントの場合がある)が最も高い。したがって、特定のPVD技法が、所望されるよりも大きな流動性を有する堆積金を生じる場合、代わりにより少ないエネルギーのPVD技法を使用することが有用であり得る。
【0068】
物理的気相堆積法は、支持体表面の適切な処理が行われるよう、好ましくは処理する支持媒質が十分に混合された状態で実施される(例えば、混転、流動化、粉砕、又は同等の処理)。PVDによる堆積の粒子混転方法は、米国特許第4,618,525号(チャンバレン(Chamberlain)ら)に記述されており、この記述は参照により本明細書に組み込まれる。特に触媒用に記述された方法については、ワイズ(Wise)著、「RFスパッタリングによる高分散白金触媒(High Dispersion Platinum Catalyst by RF Sputtering)」、「ジャーナル・オブ・カタリシス(Journal of Catalysis)」83巻、477〜479頁(1983年)及び米国特許第4,046,712号(ケアンズ(Cairns)ら)を参照されたい。これらの記述は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
微粒子又は微粒子凝集塊(例えば、平均直径が約10マイクロメートル未満)にPVDを実施する際、支持媒質は好ましくは、PVD方法の少なくとも一部の実施中に、混合及び微粉砕の両方が行われている(例えば、ある程度まですり潰され、又は粉砕されている)。これは、堆積の際に粒子又は凝集塊の分離と自由流を維持するのに役立ち得る。
【0070】
しかしながら、このような微粉砕は、前述の複合支持媒質上に金を堆積する実施形態においては所望されない可能性がある。すり潰しにより、これらの複合系触媒系の活性が低下する傾向がある。よって、複合支持媒質に対してPVDを実施する際、攪拌の速度は通常、他の支持媒質(例えば、微細な粒子又は微細な粒子凝集塊)にコーティングを行う際に使用されるものよりも遅くなり得る。微細な粒子又は微細な粒子凝集塊の場合、金の堆積制御を依然として維持しながら、できるだけ激しく素早く粒子を混合することが有利であり得る。
【0071】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態を実施するための装置10を図1及び図2に示す。装置10には、粒子攪拌機16を擁する真空槽14を有するハウジング12がある。このハウジング12は、所望によりアルミニウム合金で製造することができ、垂直方向の中空なシリンダである(例えば、高さ45cm、直径50cm)。基部18には、高真空ゲートバルブ22用のポート20が含まれ、このバルブの次には15.2cm(6インチ)の拡散ポンプ24と、粒子攪拌機16用の支持体26が含有される。真空槽14は、1333−800Pa(10−6Torr)の範囲で、背景圧力に排気することができる。
【0072】
ハウジング12の上端部は、外部搭載の直径7.6cm(3インチ)の直流(dc)マグネトロンスパッタ堆積供給源30(USガンII(US Gun II)、US社(US, INC.)(カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)))と嵌合する、取り外し可能なゴム製Lガスケット密閉プレート28を擁する。スパッタ堆積ソース30内に、金スパッタ標的32(例えば、直径7.6cm(3.0インチ)×厚さ0.48cm(3/16インチ))が固定される。スパッタ堆積供給源30は、スパークル(Sparc-le)アーク抑制システム(アドバンスト・エナジー・インダストリーズ社(Advanced Energy Industries, Inc)、コロラド州フォートコリンズ(Fort Collins))が装填された、MDX−10マグネトロンドライブ(Magnetron Drive)(アドバンスト・エナジー・インダストリーズ社(Advanced Energy Industries, Inc)、コロラド州フォートコリンズ)により作動する。
【0073】
粒子攪拌器16は、長方形の開口部34(例えば6.5cm×7.5cm)を有する中空円筒(例えば長さ12cm×水平直径9.5cm)である。開口部34は金スパッタ標的32の表面36のすぐ下約7cmの位置にあり、これにより、スパッタリングされた金原子が攪拌機容積38に入ることができる。攪拌機16は、軸を揃えてシャフト40に取り付けられる。シャフト40は、混転する支持体粒子のための攪拌機構又はパドルホイールを形成する、4つの長方形状のブレード42がボルトで固定される長方形状の断面(例えば1cm×1cm)を有する。ブレード42にはそれぞれ2つの孔44(例えば直径2cm)があり、ブレード42と粒子攪拌機16によって形成される4区分それぞれに含有される粒子容量の間を行き来するのを促進している。ブレード42の次元は、攪拌機の壁48との側方及び末端の隙間が2.7mm又は1.7mmのいずれかになるよう選択される。この装置の好ましい使用モードは、後述の実施例において記述される。
【0074】
物理的気相堆積法は、本質的には、非常に幅広い範囲にわたって、任意の所望される温度で実施することが可能である。しかしながら、金を比較的低い温度(例えば、約150℃未満、好ましくは約50℃未満、より好ましくは室温(例えば約20℃〜約27℃)以下)で堆積すれば、その堆積した金はより高い触媒活性を有することができる(おそらくは、より構造欠陥が多いため、及び/又は流動性と融合性がより低いため)。周囲条件において実施すると、堆積中に加熱又は冷却が不要となり、有効かつ経済的であるため、一般的に好ましい可能性がある。
【0075】
物理的気相堆積法は酸化雰囲気中で実施される。好ましくは、この酸化雰囲気には少なくとも1種の酸素含有ガスが含まれる(より好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択される;更に好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、及びこれらの組み合わせから選択される;最も好ましくは酸素である)。酸化雰囲気には更に、不活性スパッタリングガスが含まれ、これには例えばアルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれらの2つ以上の混合物がある(好ましくはアルゴン)。PVD方法中の真空槽内の総気体圧力(全てのガス)は、約0.13kPa〜約3.3kPa(約1mTorr〜約25mTorr)(好ましくは約0.6kPa〜約2kPa(約5mTorr〜約15mTorr))である。酸化雰囲気は、真空槽内の全てのガスの総重量を基準にして、約0.05重量パーセント〜約60重量パーセントの酸素含有ガス(好ましくは、約0.1重量パーセント〜約50重量パーセント、より好ましくは約0.5重量パーセント〜約25重量パーセント)を含み得る。
【0076】
任意の方法工程
上記に述べたように、PVD方法は、(金以外にも)他の金属を同時、又は連続的に堆積するために、あるいは金属の混合物を堆積するために、使用することが可能である。これは多相の標的を使用することによるものであって、その結果、多相ナノ粒子(例えば、M1及びM2(M1及びM2は、異なる金属を示す)の原子混合物を含むナノ粒子)を含む触媒系を形成することができ、又は、1つ以上の反応を触媒することができる多機能触媒のための金属ナノ粒子の組み合わせ(例えば、分離性のM1粒子及び分離性のM2粒子の混合物)を含む触媒系を形成することができる。これらの異なる触媒機能は、実用上同時に実施させることができる。つまり、例えば、触媒系はSOを効果的に酸化すると同時にCOを酸化するように調製できる。
【0077】
いくつかの実施のモード、特に少ない量の堆積金を利用する場合は、1種以上の活性剤及び/若しくはその他の含浸剤により支持媒体を含浸させ、乾燥し、所望により焼成し、又は熱処理した後にのみ、PVDによる金堆積を行う。PVDの使用は、PVDを使用せずに金を堆積するのに湿式方法を使用した場合に溶液と反応してしまうような物質や溶解度が高すぎる物質も含めるように、触媒活性金と組み合わせて使用できる活性剤の範囲を大きく拡大する。
【0078】
よって、本発明の方法は所望により、支持媒質に対し1種以上の活性剤の適用を含むことができ、これにより結果として得られる触媒系の触媒性能を強化することができる。本明細書で使用する時、活性剤とは、一般的に、それ自体では触媒ではないが、活性剤と触媒の両方が系に組み入れられた場合に、触媒の性能を向上することができる、任意の物質を意味する。
【0079】
好ましい実施形態において、活性剤は、金堆積前、堆積中、又は堆積後に、所望の支持体に組み入れることができる。好ましくは、この組み入れは、金の堆積前に行う。複合支持媒質が、ホスト材料上に供給されるゲスト材料を含む場合、活性剤は、ホスト物質及び/又はゲスト物質に組み込むことができる。
【0080】
好ましい活性剤の部類としては、1種以上の金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩などの水溶性塩は、安価であり、容易に入手可能であり、触媒系に簡単に組み込まれる。これらの塩は、特に多孔質炭素支持媒質を活性化するのに使用すると、金系触媒に対して強力な活性剤となり得る。
【0081】
有用な金属塩の例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩(例えばリチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、及び/又はバリウム)が挙げられる。他の有用な金属にはCs、Rb、及び同等物が挙げられる。これらの金属塩の任意の組み合わせを使用することができる。いくつかの実施形態において、活性剤は、少なくとも1種のアルカリ金属塩、及び少なくとも1種のアルカリ土類金属塩を含み、アルカリ金属塩のアルカリ土類金属塩に対する重量比は、約1:19〜約19:1、好ましくは、約1:3〜約3:1の範囲である。
【0082】
金属塩には、任意の好適な対アニオンを含めることも可能である。この例には、硝酸塩、水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。炭酸塩及び水酸化物は、一般的に安全であり、非常に活性の高い支持体を取り扱い形成するのに便利であるため、好ましいアニオンであり得る。硝酸アニオンが含まれている場合、その基材は望ましくは、支持体を活性化するために硝酸アニオンを分解するのに十分高温に焼成することができる。炭酸塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と併用して使用される場合、更に有効である。したがって、好ましい活性剤は、炭酸塩(より好ましくは、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩)を含む。炭酸カリウムは、金触媒と共に活性炭に使用した場合、並びに他のタイプの支持体(例えばアルミナ)に使用した場合、非常に効果的であり得るため、好ましい塩である。
【0083】
別の有利な活性剤の部類としては、アルコキシド、特に、より多孔性の低いホスト粒子上のナノ多孔質表面機能の形成に関しては、上記に記載の金属アルコキシドが挙げられる。好ましいアルコキシドとしては、チタン及びアルミニウムのアルコキシドが挙げられる。アルコキシドは、1種以上の上記の水溶性塩と組み合わせて使用することができる。2種類の物質が併用される場合、これらは、同時又は任意の順に連続で、支持体に含浸させることができる。ただし、塩の含浸後に支持体に含浸させるのが好ましい。
【0084】
不均質触媒系に使用される活性剤の量は、幅広い範囲にわたって変えることができ、活性剤の性質、触媒系に組み込まれる金の量、及び支持体の性質などを含む、様々な要素に依存する。一般的に、使用される活性剤が少なすぎる場合、活性剤を使用する潜在的利益は、完全に実現されない場合がある。一方、ある点を超えて追加活性剤が使用される場合、十分な追加利益を提供せず、触媒性能がある程度低下する場合がある。
【0085】
したがって、提案されるガイドラインとして、本発明の方法の代表的な実施形態には、例えば、活性剤と支持媒質との総重量を基準として、約0.25〜約15重量パーセント(好ましくは約1〜約5重量パーセント)の活性剤の使用が含まれ得る。1種以上の水溶性塩及び1種以上のアルコキシドが組み合わせて使用される場合、塩の、アルコキシドに対するモル比は、例えば、約1:100〜約100:1(好ましくは約1:5〜5:1)であり得る。
【0086】
活性剤は、不均質触媒系に様々な異なる形で組み込まれている場合がある。例えば、支持媒質が内在的に、好適な活性剤を含んでいる場合がある。ココナツの殻に由来する活性炭は、構成要素として、自然に炭酸カリウムを含んでいる。この種の活性炭(例えば、クラレケミカル株式会社(Kuraray Chemical Co., Ltd.)(日本)から市販されているクラレGG炭素)は、活性剤の追加を必要とせず、金触媒用の優れた支持体を提供することができる。
【0087】
クラレGG炭素とは異なり、他の多くの望ましい支持体は、活性剤を自然には含まない。したがって、1種以上の構成要素を含む活性剤を、要望の支持体に組み入れることが望ましい場合がある。そのような組み込みは、任意の所望の手法によって行うことが可能である。初期湿潤含浸は、好適な技法の1つである。この方法には、所望される活性剤を含む溶液をゆっくりと添加し、混合して支持媒質を乾燥させることが含まれ得る。1つ以上の種類の活性剤が添加される場合、それらは同時に、別々に、又は重複して添加され得る。含浸後、支持媒質を乾燥させ、所望により焼成(熱処理)することができる。
【0088】
1種以上の含浸剤又は他の薬剤をナノ粒子状支持媒質に組み込んで、結果として得られる触媒系の濾過性能を向上させることができる。複合支持媒質を利用する場合、このような含浸剤はゲスト及び/又はホスト材料内に組み込むことができる。最も好ましくは、特にホストが、活性炭粒子などの炭素質材料を含む場合、その含浸剤が、少なくとも炭素質材料に組み込まれている。
【0089】
有用な含浸剤の例としては、1種以上の金属、合金、金属間化合物、及び/又は1種以上のCu、Zn、Mo、Cr、Ag、Ni、V、W、Y、Co、及び同等物、並びにその組み合わせを含有する化合物、が挙げられる。金属は通常、塩として浸透させることができ、含浸中に他の形態(例えば酸化物)に変換してもよい。
【0090】
様々な遷移金属が、それぞれ特定の空気汚染物に対する防御を提供する傾向にあるため、触媒系に組み込むための1種以上の遷移金属化合物の選択は、所望される濾過能力の範囲に依存する。例えば、Mo、V、及びY若しくはWは、独立に、Cu含浸剤と組み合わせて使用すると、空気流から塩化シアノゲン及びシアン化水素などの気体を濾過するのに役立つ。
【0091】
含浸剤は、従来の実施法に準じる触媒系に組み込むことができる。そのような含浸剤は、通常、塩、酸化物、炭酸塩、及び同等物として供給することができ、溶液処理、昇華処理、流動床処理、及び同等の方法により、含浸させることができる。好ましくは、この含浸は、金堆積前に行う。利用する含浸剤の量は、含浸剤の性質、支持体の性質、及び所望される特性によって大きく異なり得る(例えば、含浸した支持媒質の総重量を基準として、約0.01〜約20重量パーセント)。
【0092】
金堆積は、好ましくは、含浸(行う場合)の後、少なくとも1種のゲスト物質を伴うホスト材料若しくは構造のコーティング(複合支持媒質を使用する場合、これに関して)の後、乾燥(必要又は所望に応じて)の後、及び所望による焼成の後に、PVDにより実施される。金はPVDで堆積すると直ちに活性を有するため、一部の他の方法の場合のように金堆積後に系を加熱処理する必要はない。ただし、このような加熱処理又は焼成は、触媒活性を高めるために所望される場合には実行できる。
【0093】
一般に、熱処理は、含浸支持体を、任意の適した大気中、例えば、空気、不活性雰囲気(窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、還元性雰囲気(水素など)、及び同等物の中で、約125℃〜約1000℃の範囲の温度で、約1秒間〜約40時間、好ましくは約1分間〜約6時間の加熱を伴い得る。使用する具体的な熱条件は、支持体の性質、及び含浸剤の性質を含む要素に依存し得る。
【0094】
一般に、熱処理は、含浸した支持体の構成要素が分解するか、劣化するか、又は過度の熱により損傷する温度よりも下の温度で、実施され得る。支持体の性質、活性剤、金の量、及び同等物などの要素に依存して、触媒活性は、高すぎる温度で熱処理されると、ある程度低下する可能性がある。
【0095】
触媒系とその特徴付け
触媒系の特徴付けは、触媒技術分野において既知の、透過電子顕微鏡を使用して行うことができる。TEM分析により、金原子は、ナノ粒子状支持体上に堆積すると、不動化される前に支持体内をある程度の距離で、拡散又は他のメカニズムにより移動し得る。これにより、支持体の孔の中に金ナノ粒子及び/又は原子クラスタが供給される。
【0096】
最も好ましい実施形態において、少なくとも1つの次元で約1.5nmを超え、全ての次元で5nm以下である金ナノ粒子が高い数密度で存在する触媒系の領域が存在する。例えば、透過電子顕微鏡(後述の説明を参照)によって測定されるナノ粒子の数密度が、100nm領域内に約3個を超えるナノ粒子であり、より好ましくは100nm領域内に約4個を超えるナノ粒子であり、最も好ましくは100nm領域内に約5個を超えるナノ粒子であり得る。理論に拘束されるものではないが、ナノ粒子が密に充填されていることにより、より活性の高いナノ粒子が、使用中に比較的活性の低いナノ粒子において活性を起こすことが可能になり得る。
【0097】
複合支持媒質上に微細ナノスケール金を含む実施形態において、金はいくつかの異なる形態で存在し得る。顆粒状複合支持媒質を、そのゲストナノ粒子コーティングに対して垂直に切った薄い断片をTEM検査することにより、ナノ粒子のゲストコーティング内に様々な深さで(最大でホスト粒子の表面まで、及び場合によってはホスト粒子の表面も含め)ナノ粒子金の存在が示されている。しかしながら金は一般に、ゲストナノ粒子コーティング全体にわたって均一に分布してはいない。
【0098】
そのような実施形態において、金はしばしば、ゲストナノ粒子コーティングの最も外側領域を含むこれらのゲストナノ粒子及びゲストナノ粒子凝集塊上に濃縮させることができる。ゲストナノ粒子凝集塊内で、金ナノ粒子の分布もまた、一般に均一ではない。各ゲストナノ粒子凝集塊上の金の大半は、凝集塊の外側領域に見出すことができ、金の密度が最も高いのは、通常、ホスト粒子から離れた側の表面上である。
【0099】
このような実施形態において、ゲストナノ粒子コーティングの外側周囲上の、ゲストナノ粒子凝集塊表面の大半は、平均粒径が直径約3nm未満の分離性金ナノ粒子を含み得る。これらの表面領域には、超ナノスケール金も観察され得る。特定のゲストナノ粒子凝集塊の表面に、より大きな金の荷重を有する薄い領域(通常、厚さ約3〜約10nm、及び、比較的稀なケースとして厚さ最大約20nm)が存在し得る。この表面で、金ナノ粒子が結合して顆粒状金被膜を形成する。多くの場合、これらの顆粒状被膜は幅が約200nm未満であり得るが、時にはより幅広の被膜となり、幅が最高約400nmを有するものも観察されている。
【0100】
色に関しては、大きなスケール条件での金は、帯黄色を有する。しかしながら、金が一般に触媒活性を有するナノスケールサイズの状況においては、白色光の下で肉眼で観察すると、金の色は赤っぽいピンクになり、それから紫がかった青になり得るが、非常に小さい金のクラスタ及び金表面種は無色である可能性がある。そのような無色の種は、非常に触媒性が強い可能性があり、そのような無色種の存在は通常、いくらかの有色の金ナノ粒子を伴う。したがって、金試料が赤っぽいピンクから紫がかった青い色を示し、及び/又は無色である場合は、その試料は触媒活性を有する可能性がある。
【0101】
比色計測定を使用して、人間の色の知覚を定量化及び記述することができる。よって、本発明の方法によって製造される触媒系の色彩特性は、色測定標準を参照することによって定量的に記述することができる。
【0102】
比色計の基本は、CIE(Commission Internationale de l’Eclairage、国際照明委員会)によって制定されており、色測定で唯一国際的に認められている測定基準であり続けている。人間の目には3種類の錐体があり、これらが赤(R)、緑(G)、及び青(B)(RGB基準値)に対応するスペクトル感度を有している。CIEは、RGB基準値を仮想三刺激基準値(XYZ)に変換する。これは、反射率(又は透過率)曲線での可視光スペクトルをカバーする3つの分布関数の積分値を数学的に算出したRGB基準値と、光源のエネルギー分布とを組み合わせたものである。
【0103】
この三刺激基準値を用いて、色は、色度と呼ばれる二次元平面で表現することができる。しかしながら、物体の色の正確な情報を得るために、CIEでは、色度平面に「明度」を組み入れた三次元均等色空間を推奨している。
【0104】
この3つの色属性、色相(主な色又は色名)、彩度(色の純度に関する)、及び明度(表面で反射される入射光の割合;すなわち、色の黒さ、灰色度、又は白さ)は色座標群「CIELAB」(L、a、b)によって指定することができ、この座標は業界標準の色記述子として使用されている。色空間において、座標Lは明度を表わし、a及びbは色度座標を表わす。aの正の値が増大することは、赤色相の彩度が深まることを意味し、aの負の値が増大することは、緑色相の彩度が深まることを意味する。b軸に沿って、正の値が増大することは、黄色相の彩度が深まることを意味し、負の値が増大することは、青色相の彩度が深まることを意味する。この3つのCIE色座標のプロット(図4に示す)が、三次元色空間、又は「色立体」を形成する。
【0105】
彩度をもたない色(白色、灰色、及び黒色)はa=b=0である。彩度(Cab)及び色相角(hab)は、a及びbの値から、次の式を用いて計算できる:
ab=(a*2+b*21/2
ab=tan−1(b/a
物体の色は、反射率測定値の総和(拡散と反射の和)で決定され、3つのCIE色座標で表現することができる。分光反射率計は、所与の幾何学的条件群の下で、試料の総反射率を測定することができる。CIEは、色及び/又は外観の評価に関して、4つの測定形状を定めている。表面の平滑度特性(これは物体の外観に影響を与え得る)の影響を排除するため、色測定は、積分球型の形状を用いて行うことができる。異なる物体又は試料の間の色比較を行うには、「d/8°」形状構成(図5に示す、拡散半球形照明と視角8°)が一般的に利用される。
【0106】
驚くべきことに、本発明の方法によって製造される、好ましい金含有チタニア触媒系(特に、酸素又はオゾンを含む雰囲気中で酸化された場合)(ナノ粒子チタニア上に少なくとも約1重量パーセント(好ましくは、金とチタニアの総重量を基準として、少なくとも約10重量パーセント)の微細ナノスケール金を含む)は、酸化雰囲気を使用しないこと以外は同じPVD方法(同量の金、同種同量のチタニア、同じ堆積法を同じ時間適用)によって製造される対応する触媒系に比べ、紫色又は青色の度合が劇的に低下し、より灰色に近い色を呈した。このように、本発明のこの好ましい金含有チタニア触媒系は、対応する触媒系に比較して(また、当該技術分野において青色から紫色を有すると記述されている、非PVD方法で製造される、従来の金含有チタニア触媒系に比較して)、より大きなL値(明度又は輝度が大きい;Lが約64を超える)と、より小さなa及びb値(両方とも約ゼロ未満)を有している。本発明の好ましい金含有チタニア触媒系は、更に炭素などのホスト材料を含む場合であっても、酸化雰囲気を使用しないこと以外は同じPVD方法(同量の金、同種同量のチタニア及びホスト材料、並びに同じ堆積法を同じ時間適用)によって製造される対応する触媒系に比べ、同様の灰色シフトを示す(ただし、ホスト材料が存在するため、3つの座標値は異なる値を示す)。
【0107】
TEM試験では、スパッタリングがアルゴン中で実施されたか、それとも酸化雰囲気中で実施されたかを問わず、ナノ粒子チタニア上に金をスパッタリングすることによって生成された触媒系は、微細ナノスケール金及び超ナノスケール金の両方を含むことが示されている。更に、両方の種の雰囲気中で製造される触媒系を、X線光電子分光法で調べたところ、カチオン性の金の存在の証拠は示されていない。よって、理論に束縛されるものではないが、上記の色の違いは、酸化雰囲気中においてナノ粒子チタニアに金をスパッタリングすると、酸化雰囲気なしでスパッタリングを実施した場合には生成されないような金とチタニアとの間の独特の相互作用が生じることが示されている可能性がある。本明細書に記述されている、観察された性能向上は、この相互作用によるものである可能性がある。
【0108】
触媒系を含む物品
本発明の方法の実施により製造される触媒系は、自動車の排気処理、水素化触媒、炭化水素の酸化の触媒、窒素の酸化物除去の触媒、気体及び蒸気の検出及び測定用のセンサー、居住区域のCO除去、並びに同様物を含む、数多くの用途を見出すことができる。特に、この触媒系は、呼吸空気から危険なCO又は他の気体を除去するための呼吸保護具(例えばレスピレータ、フェースマスク、様々な保護装備、室内エアフィルタ、防災ずきん、及び同様物)に有用であり得る。
【0109】
このような呼吸保護具の1つの実施形態は、一般に少なくとも着用者の鼻と口を覆う内部領域、その内部領域に周囲空気を供給する流入経路、及びその空気流入経路を横断して配置され供給空気を濾過する多孔質シート物品を有する呼吸保護装備であって、その呼吸保護装備は更に、空気流入経路を横断して配置され供給空気と相互作用を行うための、本発明の触媒系(又は、本発明の方法により製造される触媒系)を含む。このような呼吸保護具の別の実施形態には、呼吸装置用の交換可能なフィルタエレメントが挙げられ、このエレメントはその装置上にエレメントを取り付けるための支持構造、ハウジング、及び装置に流入する空気を濾過することができるようにそのハウジングに配置される多孔質シート物品を含み、その交換可能なフィルタエレメントは更に、装置への流入空気及び装置内の空気流と相互作用を行うことができるようにハウジングに配置された、本発明の触媒系(又は、本発明の方法によって生成された触媒系)を含む。
【0110】
例えば、好ましい装置において、前述の複合支持媒質は、濾過媒体配列の表面の少なくとも一部をコーティングするのに用いることができる。これには例えば、米国特許第6,752,889号(インスリー(Insley)ら;この記述は参照により本明細書に組み込まれる)に記述されているもの、又は3M(商標)ハイエアフロー(High Air Flow)(HAF)フィルタ(ミネソタ州セントポールのスリーエム社(3M Company)社より入手可能)がある。この濾過媒体配列は通常、複数個の開経路、又は流路を含み、媒体の片側から反対側まで延在している。複合支持媒質がこれらの経路の表面だけをコーティングし、気流が通るための通路を通る大きな開口量を残していても、濾過媒体を通る気流における実質的に全てのCOが、実質的に圧力低下を伴わずに触媒酸化され得るということが明らかとなった。最も好ましくは、この複合支持媒質は、炭素ホスト粒子(前述のクラレGG活性炭粒子など)上にコーティングされたチタニアゲスト粒子を含む。
【実施例】
【0111】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。
【0112】
特性付けと試験方法
透過電子顕微鏡(TEM)
複合支持媒質を含む触媒系の試験試料は、次の方法で調製された:使い捨て埋め込みカプセル内の触媒粒子を3M(商標)スコッチキャスト(Scotchcast)(商標)エレクトリカル・レジン5番(Electrical Resin #5)エポキシ樹脂(3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール)から入手可能)に触媒粒子を埋め込み、その樹脂を真空浸透させ、室温に24時間置いて硬化させた。
【0113】
それぞれの試料に関して、ランダムに埋め込まれた顆粒は、ほとんどの顆粒が片側で切り落とされ、もう一方の側にエポキシを残すように、顆粒の表面領域の中央まで切り落とされた(事前にイソプロピルアルコールで清拭されたステンレススチール製かみそりを使用)。小さな台形状の面(一辺が0.5ミリメートル未満)が選択され、エポキシ/顆粒境界面の原型を保つように、切り落とされた。この境界面の長い方向は、切断方向でもあった。ライカ製ウルトラカットUCTミクロトーム(Leica Ultracut UCT microtome)(ライカマイクロシステムズ社(Leica Microsystems Inc.)、イリノイ州バノックバーン(Bannockburn))が面の切断に使用された。この面は、最初に、顆粒表面が刃の縁部に対して垂直になるように整列された。約70nmの厚さの部分は、0.08mm/秒の速度で切削された。これらの部分は脱イオン水に浮かせることによって分離され、ミクロトームヘアツールを使用して集められ、「パーフェクトループ(Perfect Loop)」(エレクトロンマイクロスコーピーサイエンス社(Electron Microscopy Sciences)(ペンシルベニア州フォートワシントン(Fort Washington))販売のループ)を使用して拾われた。試料は、このループを通じて、炭素/フォルムバールレーシー基材を有する、直径3mmの300メッシュ銅TEMグリッドへ移された。基材の穴上に位置する関心領域(原型を保っている、きれいに切断された界面領域を示す例)を撮像し、分析した。
【0114】
TEM検査のため、非複合のナノ粒子粉末支持媒質を含む触媒系を調製するには、この粉末をメタノール中に分散させ、この分散液の小さな1滴をTEMグリッドに接触させた。過剰なメタノールを除去し、結果として得られた触媒系の試験試料を完全に乾燥させてから試験を行った。
【0115】
ガタンCCDカメラ及びデジタルマイクログラフソフトウェア(ガタン社(Gatan Inc.)、ペンシルベニア州ウォレントン(Warrenton))を使用して、300KVの加速電圧で、透過電子顕微鏡(TEM、H−9000、日立ハイテクノロジーズアメリカ社(Hitachi High Technologies America)、カリフォルニア州プレザントン(Pleasanton))で、様々な倍率(50,000倍及び100,000倍)での画像が撮られた。代表的な領域(例えば、触媒表面の境界面が試料の表面に対して垂直に鮮明に表示された、選択された領域)を撮像した。数多く(例えば10を超える数)の界面領域が試験された。
【0116】
金ナノ粒子数密度は、TEMで、測定された面積の、非常に薄い試料部分にある金ナノ粒子の数を数えることによって、決定された。この測定を行うため、試料面積は、適切な薄さで(約10nm未満)、その面積が200,000倍以上で撮像されるように選択された。幾何学的に測定された領域内で、全ての次元のサイズが5nm以下の、明確に定義された金ナノ粒子数が計測され、面積100nm当たりで観察されたナノ粒子の数が決定された。金ナノ粒子数密度は、領域100nmにおいて計数されたナノ粒子の数として定義された。各測定について、測定の最小面積は300nmであった。
【0117】
測色
触媒系試料の示すCIE L、a、及びb値が、マイクロフラッシュモデル(Microflash Model)No.100分光光度計(データカラー・インターナショナル(Datacolor International)、ニュージャージー州ローレンスビル(Lawrenceville))を用いて測定された。この分光光度計は標準白背景(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末圧縮を含む、データカラー・インターナショナル(Datacolor International)白色較正標準シリアル番号2508)を反射率標準として用いて較正された。各試料は、白色の紙シート上に塗り広げられ、ガラスプレートで押し付けて比較的平らになるようにされた。各試料は厚さが少なくとも約5nmであり、分光光度計の開口部を実質的に完全にカバーするのに十分な大きさであった(これにより、測定された反射率が、背景の紙によるものではなく、試料によるものとなるようにした)。総反射率測定は、各試料について、d/8°形状構成(図5に示す)を用いて少なくとも3つの異なる位置において行われ、測定値は平均された。分光光度計は、明度値(L)0〜100(値0は黒色、値100は白色)、色度座標値aが−60〜+60(値−60は緑色、値+60は赤色)、及び色度座標値bが−60〜+60(値−60は青色、値+60は黄色)の値を提供する。
【0118】
一酸化炭素(CO)負荷試験
図3は、CO酸化触媒としての性能を評価するために、対象となる触媒系試料にCO負荷を行うために使用した、試験システム50を示す。供給ライン52からの高圧圧縮空気を、調節器54(3M(商標)モデルW−2806空気濾過調節パネル(Air Filtration and Regulation Panel)(3M、ミネソタ州セントポール)を用いて、減圧、調節、及び濾過を行い、微粒子及び油を除去した。調節バルブ36(ホーク社(Hoke Inc.)、サウスカロライナ州スパータンバーグ(Spartanburg))を使用して望ましい主空気流量を設定し、この流量はギルモント(Gilmont)(商標)流量計38(バーナント社(Barnant Co)、イリノイ州バーリントン(Barrington))によって0〜90リットル/分(LPM)の範囲で測定された。流量計38を、乾燥ガス試験測定器(アメリカンメーター(American Meter)社製、モデルDTM−325、図示なし)を使用して較正した。特に記載のない限り、使用した主空気流量は64リットル/分(LPM)であった。
【0119】
主空気流が、容器64の、加熱蒸留水浴62の上にあるヘッドスペースを通り抜け、次にライン57及び73を通って500mL混合フラスコ66に入った。混合フラスコ内の相対湿度(RH)はRHセンサー68(タイプ850−252、ゼネラル・イースタン(General Eastern)、マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington))を用いて監視された。RHセンサー68は、湿度制御器70(オメガ・エンジニアリングPID制御器シリーズCN1200(オメガ・エンジニアリング社(Omega Engineering Inc.)、コネチカット州スタムフォード(Stamford)))に電気信号を提供し、相対湿度を設定値に維持するため、ライン71を介して、水中ヒーター72に電力を送達した。特に記載のない限り、この相対湿度は90パーセント(%)を超えるように制御された。
【0120】
一酸化炭素(エアリフォーム(Aeriform)、テキサス州ヒューストン、98.5%)シリンダ74には、CO供給に適した調節バルブ36が備えられ、ライン73を通じて、調節された流量のCOガスが供給された。ギリブレーター(Gilibrator)(商標)バブル流量計(センシダイン社(Sensidyne, Inc.)、フロリダ州クリアウォーター(Clearwater))が、20mL/分〜6L/分の範囲の体積CO流量を測定した。ステンレススチールの精密測定弁78(スウェージロック社(Swagelok Co)、部品SS−SS2、オハイオ州ソロン(Solon))を使用し、望ましいCO流量を設定した。測定したCOは、混合フラスコ66内で、加湿された空気と混合された。この系は、COと加湿された空気の混合物を、約1000パーツ・パー・ミリオン(ppm)〜約20,000ppmのCO濃度、流量が約15L/分〜約80L/分、相対湿度が約5%〜約95%で、供給することができた。検出器較正のためには、一酸化炭素シリンダ74を、COと空気又は窒素の認証済み混合物のシリンダ(典型的には500〜5000ppmのCO;クオリティ・スタンダーズ(Quality Standards)、テキサス州パサデナ(Pasadena))に入れ替えて、より希薄な混合物が生成された。
【0121】
混合された気体流が次に、逆さまになった12クオート容量のステンレススチール製ビーカー81内に流入し、これには29/42外側継手が、上側が閉じられるようにはめ込む支持プラットフォーム83に溶接され、試験チャンバー80が形成された。ビーカー81の内側には試験固定具82が配置された。ビーカー81は、フォームガスケット(図示なし)を用いて、支持プラットフォーム83に密閉された。2つのクランプ(図示なし)が、支持プラットフォーム83の気密性を確保した。ビーカー81は取り外し可能であり、これにより触媒系試験試料を試験のために中に入れ、また試験完了後に取り出すことができるようになっていた。支持プラットフォーム83は、内部29/42先細接続金具(図示なし)を備え、その上には、試験する触媒試料を含む固定具82が搭載された。固定具82の図は、活性炭の気相吸着試験のためのASTM標準ガイド(ASTM Standard Guide for Gas-Phase Adsorption Testing of Activated Carbon)D5160−95の図2に示されている。
【0122】
ガスサンプリングバルブ及びメタナイザー/水素炎イオン化検出器を備えたSRI 8610Cガスクロマトグラフ(SRIインストルメンツ(SRI Instruments)、カリフォルニア州トランス(Torrance))を使用して、試験チャンバー80の流出口でのCO濃度が測定された。ダイアフラムポンプ(UNMP 830 KNI、KNFニューバーガー社(KNF Neuberger Inc.)、ニュージャージー州トレントン(Trenton))で連続的に約50mL/分の気体を、ガスクロマトグラフ(GC)のガスサンプリングバルブの流出口から吸引した。定期的に、このバルブからガス試料が、91.4cm(3ft)13Xのナトリウムアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブカラムに注入された。メタナイザー/水素炎イオン化検出器によって、COが空気から分離され、その濃度が測定された(検出可能な最小CO濃度は1ppm未満)。GCを、上記に記載の試験システムを使用して生成される空気混合物内のCOを使用して、較正した。この較正の結果は、CO濃度500〜5000ppmの範囲の空気又は窒素混合物中の認証標準CO(クオリティ・スタンダーズ(Quality Standards)、テキサス州パサデナ(Pasadena))と3%以内で一致した。各CO分析にかかる時間は、約3分間であった。分析終了後、別の試料がカラムに注入され、分析が繰り返された。
【0123】
触媒系試料はふるいにかけられ、微細な粒子を除去してから試験が行われた。特に記載のない限り、試料はふるいにかけられ、ASTM E 1 1U.S.標準シーブを用いて、25メッシュ(0.707mm)より微細な粒子は除去された。100%未満のCO変換を維持するため、触媒系は、試験条件下においてCO酸化に関し触媒的に不活性な物質で希釈された。使用された物質は、顆粒活性炭(タイプGGカーボン12×20USメッシュ(1.68mm×0.841mm)、クラレケミカル株式会社(Kuraray Chemical Co., Ltd.)、日本、大阪)であった。活性炭の見かけ密度のためのASTM標準ガイドD2854−96(ASTM D2854-96 Standard Method for Apparent Density of Activated Carbon)に記載されている方法を使用して、触媒系15mLをメスシリンダに入れた。次に、この触媒系試料15mLを、活性炭10.0gが入っている500mL三角フラスコに加えた。フラスコにキャップをし、2つの物質を振り混ぜた。次に、結果として得られた混合物を、内径8.89cm(3.5インチ)のアルミニウム製試験固定具82に搭載した。スノーストーム充填技法(スクリーンを含む搭載カラムを通り抜けることにより、試験固定具82に降り積もって、試験固定具82の表層全体に混合物が均一に分散される)を用いて、固定具に混合物を搭載した。典型的な表層の深さは約0.6cm(0.25インチ)であった。試験を開始するには、混合物を含む試験固定具82を、支持プラットフォーム83の29/42継手上に置いた。ビーカー81を元に戻し、支持プラットフォーム83に対し密閉した。CO/空気混合物を試験チャンバー80に導入した時点で、流出口CO濃度測定が開始された。測定は、指定された時間、典型的には30分間継続された。
【0124】
実施例1〜6及び比較例1
ナノ粒子状支持媒質の調製
複合ナノ粒子状支持媒質は、国際特許公報WO 2006/074126 A2号(3Mイノベーティブ・プロパティーズ社(3M Innovative Properties Company)、ブレイディ(Brady)ら)に記載されている方法に本質的に従って調製された。約3.4kgのアナターゼTiO(ホンビファインN(Hombifine N);ザハトレーベン・ケミー社(Sachtleben Chemie GmbH)、ドイツ、平均主粒径10nm未満、平均表面積300m/g超;平均凝集塊大きさ約1マイクロメートル)を、脱イオン水35kg中に分散させた。結果として得られたスラリーを、25kgの12×20メッシュ(1.68mm×0.841mm)活性炭顆粒(クラレGG(Kuraray GG);クラレケミカル株式会社(Kuraray Chemical Co., Ltd.)、日本、大阪)と混合し、スチール製リアクター内で毎分1回転(rpm)で回転させ、ヒーターを用いて乾燥した。結果として得られた乾燥支持媒質は、比較的大きな表面積の、活性炭顆粒上にコーティングされたTiOを含んでいた(乾燥支持媒質の総重量を基準として、約10〜13重量パーセントのTiO)。
【0125】
金堆積
乾燥支持媒質の一連の試料(それぞれ約140g)を更に、150℃で24時間乾燥させ、残留する水分を除去した。結果として得られた各乾燥試料が熱いうちに、本明細書で前述した、ブレード隙間が2.7mmの粒子攪拌機を有するPVD装置に入れた。この装置の真空槽を、約6.67mPa(5×10−5Torr)の背景圧力まで排気し、アルゴンスパッタリングガスを含む気体をこの真空槽内に約1.3kPa(10mTorr)の圧力で導入した。
【0126】
比較例1の試料に使用したガスは、アルゴンスパッタリングガスのみであり、実施例1〜6の試料には、アルゴンを含む様々な酸化雰囲気が使用された。酸化雰囲気は、アルゴンスパッタリングガスと共に酸素を真空槽に導入することによって生成された。読み取り付きのマスフローコントローラー(MKSインストルメンツ社(MKS Instruments, Inc.)(マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington))より入手可能)を使用して、真空槽へのアルゴン及び酸素の流量を制御した。アルゴン流量は毎分100標準立方センチメートル(sccm)に保持された。実施例1〜6の酸素流量はそれぞれ、1.0、3.0、5.0、7.0、9.0、及び10.0sccmであった。スパッタリング方法中の総気体圧力は、真空(拡散)ポンプに開口するゲートバルブの調節により、1.3kPa(10mTorr)に維持された。結果として得られた酸化雰囲気は、酸素濃度が最大8重量パーセント(酸素及びアルゴンの総重量を基準として)であった。
【0127】
次に金堆積方法が実施された。0.12kWの制御電力で、金のDCマグネトロンスパッタコーティング中、粒子攪拌機シャフト及び穴あきブレードを4rpmで回転させながら、所定の時間、装置のカソードに電力を印加した。スパッタコーティングの持続時間は1時間であった。スパッタコーティングの完了後、真空槽を、周囲環境との通気を行い、結果として得られた金コーティング試料をPVD装置から取り出し、25メッシュ(0.707mm)スクリーンのふるいにかけて、方法中に生じた微細粒子を分離した。試料に堆積した金の量は、使用した金スパッタリングのターゲットを秤量(堆積方法の前と後の両方)することにより決定された。一般に、ターゲットの重量損失の約20パーセントは、試料に堆積した金の量となる(誘導結合プラズマ分析に基づく)。
【0128】
色分析
前述の手順を用いて、各金コーティング試料について、比色計測定が実施された。結果を下記の表1に示す。酸素導入濃度が低い場合(例えば実施例1)であっても、aパラメータは、酸素が存在しない場合の試料(比較例1)に比べ、有意に低下した。実施例1〜6では、酸素濃度が増加するにつれて、全般的に、明度(L)の単純増加、aの減少、及びbの増加が観察された。
【0129】
【表1】

【0130】
一酸化炭素試験
各金コーティング試料に、前述の手順を用いて、一酸化炭素(CO)酸化触媒試験を行った。これは、3600ppmのCO負荷、流量毎分64リットル、相対湿度92パーセントで実施された。それらの結果を下記の表2に示す。酸化環境において堆積した金の量は少なかったと見られるにもかかわらず、酸化環境でスパッタリングされた試料(実施例1〜6)については、アルゴンのみの中でスパッタリングされたもの(比較例1)に比べ、全般に触媒性能が向上していることが観察された。
【0131】
【表2】

【0132】
TEM分析
実施例5の金コーティング試料が、試料調製のミクロトーム手法を用いてTEMで調べられた。試料は、ナノ粒子チタニア凝集塊の表面の多くの領域において、平均粒径3nm未満の金ナノ粒子を含んでおり(特定の領域に、50個を超える粒子が計数され、大きさが測定された)、金ナノ粒子の数密度は100nm当たりナノ粒子5個を超え、場所によっては、100nm当たりナノ粒子7個を超えていた。
【0133】
実施例7及び8並びに比較例1
触媒系は、実施例3及び6並びに比較例1について上記記載と本質的に同様に調製され、ただし、スパッタ電力は0.24kWに増加して、より多い金負荷を有する試料を生成した。各試料について、上記と本質的に同様にして、比色計測定及び一酸化炭素試験が実施された。その結果を下の表3及び4に示す。上記と同様の色の傾向が観察された。酸化環境において堆積した金の量は少なかったと見られるにもかかわらず、酸化環境でスパッタリングされた試料(実施例7及び8)については、アルゴンのみの中でスパッタリングされたもの(比較例2)に比べ、全般に触媒性能が向上していることが再び観察された。
【0134】
【表3】

【0135】
【表4】

【0136】
(実施例9〜11)
触媒系は、実施例1〜6について上記記載と本質的に同様に調製され、ただし、酸素を水蒸気、過酸化水素、及びオゾンにそれぞれ置換することにより、その酸化環境の性質を変化させた。実施例9の試料については、アルゴンスパッタガスと共に、水蒸気が真空槽に導入された。25℃に保持された液体の水を中に含む密閉フラスコ(公称直径33mm及び長さ152mmを有する密閉ガラス管から形成)を、水蒸気源として使用した。このフラスコを最初に脱気して、溶解している気体を全て除去した。次にフラスコからの水蒸気を真空槽に導入し、槽内の圧力を調節する手動制御バルブを使用して、水蒸気含有雰囲気(真空槽内の全ての気体の総重量を基準にして、約50重量パーセントの水蒸気)を生成した。アルゴン流量は100sccmに維持され、真空ポンプに開口するゲートバルブを調節して、スパッタリング方法中の総気体圧力を1.3kPa(10mTorr)に維持した。実施例10の試料については、水の代わりに過酸化水素(H)液体を使用して、本質的に同様の方法で、過酸化水素を含む雰囲気を生成した(真空槽内の全ての気体の総重量を基準にして、約50重量パーセントの過酸化水素)。
【0137】
実施例11の試料については、下のコンパートメント内に一定の10sccm酸素流量を維持することができるように、2コンパートメントのステンレススチール製タンク(直径25.4cm(10インチ)及び高さ30cm(12インチ))が設計された。オゾン発生器(XT−120、エアゾーン社(Air-Zone Inc.)、バージニア州サフォーク(Suffolk))を上のコンパートメントに設置し、これら2つのコンパートメントを分離するプレートに直径5.08センチメートル(2インチ)の穴を1つあけた。この穴が、下のコンパートメントからの酸素が上のコンパートメントに入る開口部となり、これにより、オゾンが多い領域が上のコンパートメント内に形成することができた。両方のコンパートメントとも最初に排気してから、酸素を下のコンパートメントに導入した。15分後、オゾン発生器をオンにして、結果として生じるオゾンが上のコンパートメントから真空槽へと供給され、手動制御バルブによってオゾン含有雰囲気が生成される(真空槽内の全ての気体の総重量を基準にして、約40重量パーセントのオゾン)。
【0138】
実施例1〜6について上記記載と本質的に同様に金スパッタリングを実施した後、上記記載と本質的に同様に、比色計測定及び一酸化炭素試験が実施された。その結果を下の表5及び6に示す。
【0139】
【表5】

【0140】
【表6】

【0141】
比較例3
300立方センチメートル(cc;135g)のホンビカット(Hombikat)UV−100チタニア(シェラー(Scherer)法による平均主クリスタライトサイズが10nm未満;平均表面積が250m/g超)を、150℃で24時間乾燥させた。結果として得られた乾燥粉末を、本明細書で前述した、ブレード隙間が1.7mmの粒子攪拌機を有するPVD装置に入れた。次に装置の真空槽を一晩排気し、背景圧力1×10−4Torrとした。アルゴンスパッタガスを流量100sccmで真空槽に導入し、真空(拡散)ポンプに開口するゲートバルブにより、方法圧力1.3kPa(10mTorr)に調節された。電力レベル0.10kWで金スパッタリングが開始され、ブレード回転速度6rpmを使用して、本質的に上記記載と同様に実施された。スパッタリングの持続時間は5時間であった。比色測定を、本質的に上記記載と同様に実施した。それらの結果を下記の表7に示す。
【0142】
(実施例12)
300cc(126g)のホンビカット(Hombikat)UV−100チタニア粉末を、150℃で24時間乾燥させた。結果として得られた乾燥粉末を、比較例3において上記記載と本質的に同様に、金でスパッタリングを行い、ただし、スパッタガスには酸素並びにアルゴンが含まれた。アルゴンの流量は100sccmに維持され、酸素の流量は5sccmに維持された。総気体圧力は1.3kPa(10mTorr)であり、スパッタ電力は0.12kWが使用された。比色測定を、本質的に上記記載と同様に実施した。それらの結果を下記の表7に示す。
【0143】
実施例12及び比較例3の金コーティング試料のTEM試験では、両方の試料とも、微細ナノスケール金、並びに超ナノスケール金が含まれていることが示された。実施例12の平均金ナノ粒子サイズは1.9nmであり、比較例3の平均金ナノ粒子サイズは1.7nmであることが示された。両方の試料とも、主にナノスケール金を含み、多くの領域で金ナノ粒子数密度が100nm当たりナノ粒子5個を超えることが示された。
【0144】
(実施例13)
300cc(121g)のホンビカット(Hombikat)UV−100チタニア粉末を、150℃で24時間乾燥させた。結果として得られた乾燥粉末を、比較例3において上記記載と本質的に同様に、金でスパッタリングを行い、ただし、スパッタガスには水蒸気並びにアルゴンが含まれた。アルゴンの流量は100sccmに維持され、水蒸気は、実施例9において上記記載と本質的に同様に、生成されて真空槽に導入された。総気体圧力は2kPa(15mTorr)であり、スパッタ電力は0.12kWが使用された。比色測定を、本質的に上記記載と同様に実施した。それらの結果を下記の表7に示す。
【0145】
比較例4
チタニアナノ粒子上に支持されている金ナノ粒子から構成される触媒試料が、ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council)(英国、ロンドン)(試料85A、#02−06;ズードケミー(日本)製造)から入手された。メーカーの記述によれば、この試料は、デグサ(Degussa)P25チタニア(アナターゼ及びルチル結晶質形状の3:1の比率での混合物;純度99パーセント;平均比表面積50m/g;平均クリスタライトサイズ25〜35nm;平均凝集塊サイズ約500nm)上の、約1.5重量パーセントのナノ粒子金(平均粒子サイズ3.6nm、標準偏差0.28nm)であるとされていた。触媒は、化学堆積−沈殿方法によって調製されたとされ、これにおいてチタニアは、pH7に固定された、適切な量のHAuCl水溶液(Au含有量は3重量パーセント)中に分散された。結果として得られた分散液は、70℃で1時間置き、蒸留水で数回洗浄されたとされている。結果として得られた固体物質は分離され、120℃で5時間乾燥され、次に空気中400℃で4時間焼成された。
【0146】
上記記述と本質的に同様に、触媒試料について比色測定を実施した。それらの結果を下記の表7に示す。
【0147】
【表7】

【0148】
走査電子顕微鏡(SEM)
実施例1、2、3、4、6、7、9、10、及び11のチタニアコーティング炭素顆粒の表面を、走査電子顕微鏡を用いて調べた。顆粒の表面は、全ての実施例において非常に似通っていた。その表面は、不定形のチタニアナノ粒子凝集塊の開放網状組織を含んでいることが見出された。最小の凝集塊は直径0.1マイクロメートル未満であり、大きい凝集塊はサイズ(最長サイズ)が5〜6マイクロメートルであった。凝集塊は、自然に顆粒状であるように見え、多くの顆粒はサイズが0.25〜1マイクロメートルであった。開放網状組織の大きい孔はサイズ2〜5マイクロメートルであり、0.2〜0.5マイクロメートルのサイズ範囲にある多くの孔が、この開放網状組織全体に分散されていた。高い倍率において、非常に小さい孔(サイズ0.1マイクロメートル未満)が凝集塊全体に観察された。低い倍率(例えば1000X)において、チタニアナノ粒子コーティングは、厚さが不均一であり、厚さの大きな変動が3〜12マイクロメートルごとに生じており、厚さ1〜4マイクロメートルの厚さのランダムな変化を伴う表面トポグラフィーが生成されていることが観察された。
【0149】
実施例12及び13並びに比較例3のチタニア粉末も、SEMで調べられた。試験試料は、アクリル接着剤で前処理されたアルミニウムSEMスタブ上に粉末を振りかけることによって調製された。SEM試験により、全ての試料が形態学的に本質的に同一であることが見出された。粉末は、主に0.2〜1.0マイクロメートルのチタニアナノ粒子凝集塊と、これら凝集塊のより大きなクラスタからなっていた。小さな凝集塊は、サイズ約0.05〜約0.2マイクロメートルと見られる小さな粒子からなっていた。凝集塊の大きなクラスタは、サイズが約2〜25マイクロメートルの範囲であった。大小を問わず全ての凝集塊において、孔の格子構造が観察された。凝集塊の大きなクラスタの場合、0.1〜1マイクロメートルの孔が観察され、これらはクラスタを構成する小さな凝集塊の充填によって生成されたものであった。小さな凝集塊において、サイズ0.1マイクロメートル未満の孔が観察された。
【0150】
実施例14及び15並びに比較例5及び6
複合ナノ粒子状支持媒質を含む4つの触媒系(各触媒系は、触媒系の総重量を基準として11重量パーセントの金含有チタニアを有する)が次のように調製された:前述の比較例3及び4並びに実施例12及び13でそれぞれ記載されている触媒系(金含有チタニア)2.14gを、17.86gの12×20USメッシュ(1.68mm×0.841mm)活性炭顆粒(クラレGG(Kuraray GG);クラレケミカル株式会社(Kuraray Chemical Co., Ltd.)より入手、日本、大阪;炭酸カリウム含有)と混合した。この混合は、約10分間、又は、金含有チタニア粒子が本質的に全て活性炭顆粒上にコーティングされたことを目視で確認できるまで、100mLガラスバイアル内で激しく振盪(バイアルに蓋をしてから手で行う)することによって実施された。本質的に上記記載と同様に、結果として得られた複合触媒系について、比色計測定及び一酸化炭素試験(3600ppmのCO負荷、流量毎分64リットル、相対湿度92パーセントの条件下)が実施された。その結果を下の表8及び9に示す。
【0151】
【表8】

【0152】
比較例7〜9
比較例3並びに実施例12及び13の金コーティングチタニア粉末をオゾンで処理し、触媒活性に対するオゾン後処理の影響を測定した(それぞれ比較例7〜9)。オゾンはXT−800オゾン発生器(エアゾーン社(Air-Zone Incorporated)、バージニア州サフォーク(Suffolk))で生成された(890mg/hr、毎分1.05立方メートル(37 CFM))。空気/オゾンの流れを4リットルビーカーに導き、この中には比較例3並びに実施例12及び13の各粉末3.0gの入った開放バイアルが保持された。粉末をオゾン流に30分間曝露させてから、クラレGGカーボンに載せ(本質的に実施例14及び15の上記記載と同様に)、上記記載と同様に触媒活性の試験を行った。3600ppmのCO負荷、流量毎分64リットル、相対湿度92パーセントの条件下で実施されたCO試験の結果を、下の表9に示す。
【0153】
【表9】

【0154】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において次の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する、本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化雰囲気中で物理的気相堆積法によりナノ粒子状支持媒質上に微細ナノスケール金を堆積させることを含む方法。
【請求項2】
前記堆積が、スパッタ堆積法、蒸着法、陰極アーク堆積法、及びこれらの組み合わせから選択される技法によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化雰囲気が、少なくとも1種の酸素含有気体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸素含有気体が、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸素含有気体が、前記酸化雰囲気中の全ての気体の総重量を基準として、0.05重量パーセント〜60重量パーセントの量で存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記微細ナノスケール金が、全ての次元においてサイズが4ナノメートル以下である金物体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記微細ナノスケール金と前記ナノ粒子状支持媒質との総重量を基準にして、結果として得られる触媒系が0.005〜10重量パーセントの金を含むような条件下において、前記微細ナノスケール金が、前記ナノ粒子状支持媒質上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記微細ナノスケール金と前記ナノ粒子状支持媒質との総重量を基準にして、前記触媒系が、0.005〜5重量パーセントの金を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子状支持媒質が、少なくとも2つの次元のサイズが30ナノメートル以下であるナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子状支持媒質が、平均直径が50ナノメートルを超え100ナノメートル未満であるナノ粒子を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ粒子状支持媒質が、ナノ粒子の凝集塊を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記凝集塊が、全ての次元において平均サイズが0.1マイクロメートル〜15マイクロメートルの範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子状支持媒質が、0.4を超える多孔率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子状支持媒質が、ナノ多孔質である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子状支持媒質において、サイズ範囲1ナノメートル〜10ナノメートルの孔のナノ多孔質総容量が、サイズ範囲1ナノメートル〜100ナノメートルの孔の総容量の約20パーセントを超える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子状支持媒質が、粉末、粒子、ペレット、顆粒、押出成型物、繊維、シェル、ハニカム、プレート、スクリム、布、紙、及びこれらの組み合わせから選択される形態である支持媒質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記支持媒質の前記形態が、粉末、粒子、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子状支持媒質が、炭素質材料、ケイ素質材料、金属酸化物、及びこれらの組み合わせから選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子状支持媒質が、ホスト材料の粒子上に付着したゲスト材料の粒子を含み、前記ホスト材料の粒子の平均直径が前記ゲスト材料の粒子よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲスト材料の粒子の平均直径が1ナノメートル〜30ナノメートルであり、及び、前記ホスト材料の粒子の平均直径が3マイクロメートル〜5000マイクロメートルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲスト材料の粒子が多孔質である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲスト材料が金属酸化物を含み、前記ホスト材料が炭素質材料、金属酸化物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲスト材料が、チタン、セリウム、又はこれらの組み合わせを含む酸化物を含み、前記ホスト材料が炭素質材料を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プロセスが更に、前記ナノ粒子状支持媒質に活性剤を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記プロセスが更に、前記ナノ粒子状支持媒質を加熱処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子状支持媒質が、前記付着の少なくとも一部の実施中に、混合及び微粉砕される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記ナノ粒子状支持媒質上の前記微細ナノスケール金に加え、少なくとも1種の金属を供給することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ナノ粒子金属酸化物、複合支持媒質(ナノ粒子金属酸化物ゲスト材料及び活性炭ホスト材料を含む)、及びこれらの組み合わせから選択されるナノ粒子状支持媒質上に、微細ナノスケール金を堆積させることを含む方法であって、前記堆積が、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の酸素含有気体を含む酸化雰囲気中におけるスパッタ堆積法によって実施される、方法。
【請求項29】
前記金属酸化物が、チタンの酸化物及びこれらの組み合わせから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記酸素含有気体が、酸素、水、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記酸素含有気体が酸素である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ナノ粒子チタニア上に微細ナノスケール金を含む触媒系であって、前記微細ナノスケール金は、前記微細ナノスケール金と前記ナノ粒子チタニアとの総重量を基準として1重量パーセントを超える量で存在し、並びに、前記ナノ粒子チタニア上の前記微細ナノスケール金は、CIE色座標L、a、及びbのセットで記述される色を呈し、前記L色座標は64を超え、前記a色座標はゼロ未満であり、及び前記b色座標はゼロ未満であり、これらはd/8°幾何条件を使用する総反射率測定値によって定量される、触媒系。
【請求項33】
請求項32に記載の触媒系を含む、呼吸器保護具。
【請求項34】
(a)請求項1に記載の方法によって製造される触媒系を提供すること、及び(b)前記触媒系を使用して前記触媒系に接触する物質を酸化することを含む、触媒方法。
【請求項35】
(a)請求項28に記載の方法によって製造される触媒系を提供すること、及び(b)前記触媒系を使用して前記触媒系に接触する物質を酸化することを含む、触媒方法。
【請求項36】
(a)請求項32に記載の触媒系を提供すること、及び(b)前記触媒系を使用して前記触媒系に接触する物質を酸化することを含む、触媒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−536556(P2010−536556A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521927(P2010−521927)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/072867
【国際公開番号】WO2009/026035
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】