説明

計測システム

【課題】
測定モジュール毎に任意のサンプリング周波数が設定可能な計測システムにおいて、測定モジュールに設定したサンプリング周波数でデータの取りこぼしを無くす。
【解決手段】
計測システムは、通信ネット11cを介して遠隔地に設けた供試体と計測・制御室内に設けた制御手段8とを接続する。供試体側にはこの供試体の温度,ひずみ,加速度の少なくともいずれかを測定するセンサ1が接続される測定モジュール12〜17を複数個有するモジュール型計測器9a,9bを配置する。制御手段はパーソナルコンピュータとこのパーソナルコンピュータに付設する記憶手段とを有する。パーソナルコンピュータは、モジュール型計測器9a,9bに設けたブロックバッファへの計測データの格納時間と、ブロックバッファからパーソナルコンピュータに付設した記憶手段への計測データの格納時間との比を演算して計測データの格納漏れの有無を表示する表示手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測システムに係り、特にひずみや加速度や温度等の物理量を計測するのに好適な計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の計測システムの例が、特許文献1および特許文献2に記載されている。特許文献1に記載のプログラマブルコントローラでは、オプションモジュールの実装枚数に制限を加えることなく、確実にコントローラと制御機器間でデータを受け渡すようにするために、プログラマブルコントローラ(PLC)モジュールは第1の割り込み信号と、オプションモジュールに出力する第2の割り込み信号を発生する手段を有している。
【0003】
そして、第1の割り込み信号が入力されると、第2の割り込み信号を発生させる手段を起動し、データ格納完了信号が設定されるとユーザプログラムを実行している。オプションモジュールには第3の割り込み信号生成手段を設け、第2の割り込み信号が入力されると、データ格納後にデータ格納完了信号をセットし、第3の割り込み信号生成手段を起動して第3の割り込み信号を生成し、制御機器にデータを出力する。
【0004】
特許文献2には、多種類,長時間にわたる膨大な量の計測データを、少ない記憶容量のメモリー装置に記録再生するために、サンプリング制御装置がバッファメモリーのデータを1サンプリング周期ごとに前のデータと入れ替えている。そして、マイクロコンピュータは、膨大な量の計測データを厳粛記録するための処理手段を含んでいる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−79480号公報
【特許文献2】特開平6−111030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の計測システムは複数のオプションモジュールを増設可能にしているので、大量のデータや多種のデータを計測記録するのに好適である。しかしながら、この計測システムでは、データ送信間隔についての記載がなく、サンプリング周波数が異なるデータを時間軸を統一して、同期したデータとして取り扱うことについては、十分に考慮されていない。
【0007】
多種のデータを処理するシステムでは、サンプリング周波数が異なるデータを取り扱うときに、時間軸が異なっていれば、測定データを同じファイルに格納することが困難である。そのため、サンプリング周波数が違うデータを含むときは、サンプリング周波数の数だけ測定データ格納用のファイルが必要になる。つまり、データ取得の際のサンプリング周波数の設定の仕方によっては、測定データを格納するファイル数が膨大となり、データ処理するパーソナルコンピュータ(PC)の負荷が増大する。そして、PCの負荷がおおきすぎて、測定データが処理データに含まれない、いわゆる取りこぼしが発生するおそれがある。
【0008】
上記特許文献2に記載のものは、膨大なデータを処理可能であるが、前回の測定データとの差が予め定めた値以下の場合は、データとして記録しないので、微小なデータの変動等についての記録が失われるとともに、データ取得の際のサンプリング周波数の不一致等に起因するデータの取りこぼしについては、十分には考慮されていない。
【0009】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、測定モジュール毎に任意のサンプリング周波数が設定可能な計測システムにおいて、測定モジュールに設定したサンプリング周波数でデータの取りこぼしを無くすことにある。また、計測データを取りこぼし無く表示することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の特徴は、通信ネットを介して遠隔地に設けた供試体と計測・制御室内に設けた制御手段とを接続する計測システムにおいて、前記供試体側にはこの供試体の温度,ひずみ,加速度の少なくともいずれかを測定するセンサが接続される測定モジュールを複数個有するモジュール型計測器を配置し、前記制御手段はパーソナルコンピュータとこのパーソナルコンピュータに付設する記憶手段を有し、前記パーソナルコンピュータは、前記モジュール型計測器に設けたブロックバッファへの計測データの格納時間と、前記ブロックバッファからパーソナルコンピュータに付設した記憶手段への計測データの格納時間との比を演算して計測データの格納漏れの有無を表示する表示手段を有することにある。
【0011】
そしてこの特徴において、測定対象である温度,ひずみ,加速度すくなくともいずれかを複数の測定モジュールで測定し、この複数の測定モジュールで測定した同一種類の計測データを結合して論理モジュールを構成し、この論理モジュールごとに計測データを送信するのがよく、モジュール型計測器は、前記ブロックバッファが満杯になったことをパーソナルコンピュータに通知する割り込み信号を出力するのがよい。また、パーソナルコンピュータは、前記2つの格納時間の比が1以下であれば、測定モジュールが測定した計測データの格納漏れが無いことを前記表示手段に表示することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信の開始から次の通信までの時間、すなわちブロックバッファが満杯になる時間と、パーソナルコンピュータが計測データを格納する時間を比較することにより、万一、測定モジュールに設定したサンプリング周波数で計測データの取りこぼしがあってもその取りこぼしを事前に検出でき、測定モジュールに設定したサンプリング周波数で計測データの取りこぼしを回避できる。また、計測データを取りこぼしなく、表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る計測システムの一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、計測システム50をブロック図で示す。本実施例では、加振装置における計測を例にとる。計測システム50では、計測・制御室内に主たる制御手段を、この計測・制御室に配置した主たる制御手段とLAN用光ケーブル11cで接続された測定用制御手段を測定対象物の近傍に配置している。
【0014】
具体的には、計測・制御室にパーソナルコンピュータ(以下PCとも称す)8を1台設置する。PC8は、本計測システムの主たる制御手段を構成する。PC8には、スイッチング・ハブ(以下SW−HUBとも称す)10を介して、モジュール型計測器9aが1台接続されている。このモジュール型計測器9aは、加振指令信号等を入力するのに用いられる。PC8に接続されたSW−HUB10には、メディア・コンバータ(以下E/O−CNVとも称す)11aが複数台、接続されている。本実施例では、メディア・コンバータ11aを4台設けている。
【0015】
計測・制御室から遠隔にある試験対象物が置かれた試験室には、計測・制御室に配置した複数のメディア・コンバータ11aのそれぞれに対応して、メディア・コンバータ(E/O−CNV)11bが、配置されている。各メディア・コンバータ11bには、モジュール型計測器9bが1台ずつ接続されている。ここで、メディア・コンバータ11a,
11b間を、光ケーブル11cで接続している。
【0016】
メディア・コンバータ11bは、モジュール型計測器9bとスイッチング・ハブ10間を高速に信号伝送するために、モジュール型計測器9bから送られた信号を、LAN用光ケーブル11cで送信する信号に変換する。これは、試験室からのデータにノイズが乗るのを防止するためである。同様に、メディア・コンバータ11aは、モジュール型計測器9bから光ケーブル11cで送られた信号を、スイッチング・ハブ10で受け入れ可能な信号に変換する。
【0017】
光ケーブル11cでの伝送では、イーサネット(登録商標)を使用する。イーサネットを使用しているので、試験室が遠隔地(例えば、100m〜500m離れた位置)であっても、高速(通信速度100Mbps)に信号を伝送できる。スイッチング・ハブ10は、試験室にある4台のモジュール型計測器9bおよび計測・制御室に配置されたモジュール型計測器9aからの信号またはこれらのモジュール型計測器9a,9bへの信号を、解析して宛先を検出し、指定された宛先にだけデータを送信する。
【0018】
これにより、ネットワーク全体の負荷を軽減する。なお、スイッチング・ハブ10は、宛先解析のために一時的にデータを貯える機能も有しており、速度の違うネットワークの接続にも対応できる。試験室に置かれた各モジュール型計測器9bは、コントロールPC8により制御される。
【0019】
図1に示した計測システムに用いるモジュール型計測器9a,9bの詳細構成を、図2に示す。試験室に設けた各モジュール型計測器9bには、ひずみを測定するための専用のひずみ測定モジュール12が3枚、加速度を測定するための専用の加速度測定モジュール
13が3枚、温度を測定するための専用の温度測定モジュール14が1枚実装されている。さらに、電圧出力を有する各種センサ1に汎用的に対応するために、電圧を測定する4チャンネル・ディジタイザモジュール15が1枚実装されている。
【0020】
各測定モジュール12〜14には、それぞれの測定モジュール12〜14に応じたセンサ1が接続可能になっている。4チャネル・ディジタイザモジュール15には、上述したように電圧出力を有する各種センサ1が接続可能であり、4チャネル・ディジタイザモジュール15はこれらセンサ1が検出したアナログ信号を、ディジタル様式でサンプリングし、量子化する。計測・制御室に設けたモジュール型計測器9aには、電圧出力データが入力される8チャネル・ディジタイザモジュール16が2枚、入力されたデータを電圧として出力する4チャネル・ディジタル/アナログ変換モジュール17が2枚実装されている。
【0021】
図1に示した計測システム50を用いて、対象試験物を試験する際に用いる計測用ソフトウェアの具体的な構成を、図3に示す。PC8に格納された計測用ソフトウェア30は、オンライン処理に用いるソフトウェア32とデータ処理に用いるソフトウェア32から構成されており、これらが統合されてメイン制御ソフトウェア31となっている。オンライン処理用ソフトウェア32は、システム管理ソフトウェア34および計測条件設定ソフトウェア35,計測処理ソフトウェア36を有している。データ処理ソフトウェア33は、ファイル管理ソフトウェア44およびデータ編集ソフトウェア45,信号解析処理ソフトウェア46を有している。
【0022】
さらに、システム管理ソフトウェア34は、計測ログソフトウェア37とチャネル情報設定ソフトウェア38を有している。計測ログソフトウェア37は、モジュール型計測器9a,9bに接続したセンサ1を用いて、ひずみや加速度,温度を計測するときに、その計測案件である試験名と計測の開始時刻データおよび終了時刻データを、モジュール型計測器9a,9bが備える記憶手段又はPC8が備える記憶手段に保存するためのソフトウェアである。チャネル情報設定ソフトウェア38は、各モジュール型計測器9a,9bに搭載するひずみ測定モジュール12や加速度測定モジュール13等の各測定モジュール
12〜17に固有の設定値を設定するためソフトウェアである。
【0023】
試験条件設定ソフトウェア35は、試験諸元設定ソフトウェア39および計測条件設定ソフトウェア40,モニタリング条件設定ソフトウェア41を有している。試験諸元設定ソフトウェアは、計測ログソフトウェア37で使用する試験名や試験者,試験日時等を設定するためのソフトウェアである。計測条件設定ソフトウェア40は、モジュール型計測器9a,9bが備える各測定モジュール12〜17をグループ分けし、各グループのサンプリング周波数を設定するのに用いられる。モニタリング条件設定ソフトウェア41は、センサ1が取得した計測データを、波形イメージでグラフ表示するウェーブスコープと瞬時値を表示するデジタルモニタに表示するチャネルを設定するためのソフトウェアである。
【0024】
計測処理ソフトウェア36は、計測・記録処理ソフトウェア42とオンラインモニタ制御ソフトウェア43とを有している。計測・記録処理ソフトウェア42は、モジュール型計測器9a,9bが備える各測定モジュール12〜17から計測データを受信し、グループ単位で集計し、モジュール型計測器9a,9bまたはPC8が備える記憶手段に作成したファイルにグループ毎格納するためのソフトウェアである。オンラインモニタ制御ソフトウェア43は、センサ1を用いて測定した計測データを、波形イメージでウェーブスコープにグラフ表示するためのソフトウェアであり、表示された瞬時値のデータをディジタルでモニタするのに用いられる。
【0025】
一方、データ処理ソフトウェア33が備えるファイル管理ソフトウェア44は、センサ1を用いて測定した計測データが格納されている、モジュール型計測器9a,9bまたはPC8の記憶手段に作成したファイルを、コピーしたり削除するのに用いられる。データ編集ソフトウェア45は、モジュール型計測器9a,9bまたはPC8に記憶した計測データを統計処理したり,切り出したり,間引いたり,演算処理したり,移動平均化処理したり,フィルタリングするのに用いられる。信号解析処理ソフトウェア46は、モジュール型計測器9a,9bまたはPC8記憶手段に作成したファイルに記憶された計測データについて、リニアスペクトルやパワースペクトル,パワースペクトル密度,クロススペクトルを求めるか、または周波数応答処理するのに用いられる。
【0026】
次に、図2に示したモジュール型計測器9a,9bが備えるディジタイザモジュールの詳細を、図4を用いて説明する。図4には、計測・制御室側に設けたモジュール型計測器9aが有する8チャネル・ディジタイザモジュール16のブロック図を示しているが、試験室側に設けた4チャネル・ディジタイザモジュール15も同様の構成になっている。
【0027】
8チャネル・ディジタイザモジュール16では、測定入力チャネル41は8チャネルで、各チャネル41は同時サンプリングで動作する。各チャネル41には、例えば加振指令信号が電圧波形として入力される。各チャネル41に入力された電圧信号は、以下のように処理される。
【0028】
AC/DCカップリング回路(AC/DC)18で、ACカップリングが選択されたときは、DC(直流)成分を通過させず、AC(交流)成分だけを通過させる。その際、オフセットされた信号が入力されたら、オフセット成分を除去する。AC/DCカップリング回路(AC/DC)18でDCカップリングが選択されたら、入力された信号をそのまま通過させる。そして、飽和を防ぐために、信号を減衰させる。この処理を、アッテネータ(ATT)19で実行する。
【0029】
減衰された信号は、プログラマブルゲインアンプ(PGA)20に入力される。プログラマブルゲインアンプ(PGA)20では、チャネル情報設定ソフトウェア38で設定した測定モジュールの固有の設定値にあわせて、電圧および振幅を調整する。電圧および振幅が調整された加振指令信号を、ローパスフィルタ(LPF)21に通して、高周波成分を取り去る。
【0030】
ノイズ成分である高調波成分が取り去られた入力信号は、A/D変換器(ADC)22に入力される。A/D変換器(ADC)22では、クロック信号に同期して入力信号をサンプリングし、ディジタルデータに変換する。変換されて発生したディジタルデータは、アイソレーション23で絶縁されてアクイジション制御部24に取り込まれる。アクイジション制御部24に取り込まれたディジタル化された加振指令信号は、予め定めたサンプリング周波数に従い、アクイジションメモリ25に格納される。アクイジションメモリ
25に格納したディジタル化された指令信号を、計測・制御室に設けたPC8に呼び出すために、バスインターフェース26とバス27を用いる。バス27から、SW−HUB
10を介して、PC8に加振指令信号が送信される。
【0031】
試験室側に設けたモジュール型計測器9bが備える測定モジュール12〜14や4チャネル・ディジタイザモジュール15も、センサ1が測定した計測データを、設定したサンプリング周波数に従い、アクイジションメモリ25に格納する。アクイジションメモリ
25は、加振指令信号の場合と同様に、格納された計測データを計測・制御室側のPC8へ、バスインターフェース26とバス27を介してPC8に送信する。
【0032】
ここで、本実施例に記載の計測システム50では、PC8と各測定モジュール12〜
17間の通信のタイミングを同一とするために、アクイジションメモリ25に格納する計測データの大きさ(以下、レコード長と称す)を、計測条件設定で設定されたサンプリング周波数に応じて変えている。
【0033】
モジュール型計測器9a,9b内では、モジュール結合機能を利用して、同一種類の測定モジュール12〜17を結合する。モジュール結合することにより複数個ある測定モジュールがあたかも1台の測定モジュールのように取り扱える。同一種類の測定モジュール12〜17を結合したものを論理モジュールと称す。論理モジュール毎のアクイジションメモリ25内に設けられているレコード長の領域を、ブロックバッファと称する。同一種類の測定モジュール12〜17を結合した論理モジュールでは、アクイジションメモリ
25からPC8に計測データを送信する際に、計測データを1つにまとめたブロックバッファ単位で、送信する。
【0034】
このように構成した計測システム50における、計測および記録処理を、以下に示す。図5に、計測および記録処理時のタイムチャートを示す。横軸は時間であり、縦軸はそれぞれの状態を示している。
(1)各種設定が完了したら、計測を開始する。計測が開始されると、各センサ1が計測した計測データは、アクイジションメモリ25内のブロックバッファにいったん格納される。1個のブロックバッファが満杯になると、次のブロックバッファに計測データを格納する。このようにして、計測データ量に応じて、次々と数値の大きいブロックバッファに計測データが格納される。図5の最上段では、初めにBlock1で示したブロックバッファにデータが格納され、次いでBlock2,Block3のブロックバッファに計測データが格納される。つまり、ブロック番号が1増えれば、1個のブロックバッファが満杯になっている。
(2)各論理モジュールはブロックバッファが満杯になるとPC8に割り込み信号を出力し、割り込み信号を受信したPC8は、どの論理モジュールのブロックバファが満杯になったのか認識する。このようにして、ブロックバッファを監視する。
(3)PC8は、計測データで埋められたブロックバッファを有する論理モジュールから、測定データを読み込む。つまり、図5の上から3段目に示したように、ブロック番号の小さいブロックバッファから順に計測データを読み出し、ブロックバッファからデータを掃き出させる。さらに、PC8に付設する記憶手段内のファイル数を低減するために、計測条件設定グループ分けしたグループ毎に、すなわち同一サンプリング周波数毎に、計測データを結合する。
(4)グループ内の計測データが全てそろった段階でグループ毎に、計測データをPC8に付設する記憶手段に格納する。
【0035】
上記手順(1)から(4)を、計測開始指令が送信されてから計測終了指令が送信されるまで、繰り返す。
【0036】
ところで、上記計測および記録処理で、手順(2)〜(4)の処理を終えた時点で、次のブロックバッファが満杯になっていなければ、測定データは取りこぼし無く確実に計測・制御室側の記憶手段に格納される。逆に、手順(2)〜(4)の処理を終えた時点で、すでに次のブロックバッファが満杯になっていれば、測定データの一部が計測・制御室側の記憶手段に格納漏れになる。
【0037】
手順(1)の処理時間は、計測条件設定で設定したサンプリング周波数でレコード長を変化させているので一定である。そこで、手順(2)〜(4)の処理時間が計測する前に分かっていれば、計測データの記憶手段への格納漏れが発生するか否かを事前に把握できる。使用するチャネル数やサンプリング周波数,グループ分け等の計測条件により、PC8の負荷は変動し、手順(2)〜(4)の処理時間も変動する。また、種々の条件での計測が必要であるから、計測条件は無数となる。そのため、事前に手順(2)〜(4)の処理時間を把握するのが困難である。
【0038】
そこで、手順(2)〜(4)の処理時間を実測し、手順(1)の処理時間との割合を表示させる表示手段を本計測システムは有している。すなわち、PC8が有する手順(1)の処理時間と、手順(2)〜(4)の実測時間の比を演算する。この演算手段が演算して得られた値が1以下の場合には、手順(1)の処理時間内に手順(2)〜(4)の処理を終えていることをPC8の画面上に表示する。これにより、測定モジュール12〜17に設定したサンプリング周波数でも、計測データが取りこぼし無く記憶手段に格納されていることが分かる。
【0039】
上記比が1より大きい場合は、測定モジュール12〜17に設定したサンプリング周波数を下げる等の計測条件の見直しをする。本実施例では、表示手段にこの比を表示するようにしたので、計測データの格納漏れを防止できる。また、計測条件を変えて、必要な計測データのサンプリング周波数を優先し、監視的なデータのサンプリング周波数を低下させれば、全体の計測データ量が低下し、試験を継続できる時間を長くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係わる計測システムの一実施例のブロック図。
【図2】図1に示した計測システムに用いる測定モジュールの構成図。
【図3】本発明に係る計測システムのソフトウェアの構成図。
【図4】図1に示した計測システムに用いる電圧測定モジュールのブロック図。
【図5】計測および記録処理のタイムチャート。
【符号の説明】
【0041】
1 センサ
8 パーソナルコンピュータ(PC)
9a,9b モジュール型計測器
10 スイッチング・ハブ(SW−HUB)
11 メディア・コンバータ(E/O−CNV)
12 ひずみ測定モジュール
13 加速度測定モジュール
14 温度測定モジュール
15 4チャネル・ディジタイザモジュール
16 8チャネル・ディジタイザモジュール
17 ディジタル/アナログ変換モジュール
18 AC/DCカップリング回路
19 アッテネータ
20 プログラマブルゲインアンプ
21 ローパスフィルタ
22 A/D変換器
23 アイソレーション
24 アクイジション制御部
25 アクイジションメモリ
26 バスインターフェース
27 バス
50 計測システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットを介して遠隔地に設けた供試体と計測・制御室内に設けた制御手段とを接続する計測システムにおいて、前記供試体側にはこの供試体の温度,ひずみ,加速度の少なくともいずれかを測定するセンサが接続される測定モジュールを複数個有するモジュール型計測器を配置し、前記制御手段はパーソナルコンピュータとこのパーソナルコンピュータに付設する記憶手段とを有し、前記パーソナルコンピュータは、前記モジュール型計測器に設けたブロックバッファへの計測データの格納時間と、前記ブロックバッファからパーソナルコンピュータに付設した記憶手段への計測データの格納時間との比を演算して計測データの格納漏れの有無を表示する表示手段を有することを特徴とする計測システム。
【請求項2】
測定対象である温度,ひずみ,加速度少なくともいずれかを複数の測定モジュールで測定し、この複数の測定モジュールで測定した同一種類の計測データを結合して論理モジュールを構成し、この論理モジュールごとに計測データを送信することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記モジュール型計測器は、前記ブロックバッファが満杯の状態になったときに前記パーソナルコンピュータに割り込み信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項4】
前記パーソナルコンピュータは、前記2つの格納時間の比が1以下であれば、測定モジュールが測定した計測データの格納漏れが無いことを前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−224340(P2008−224340A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61184(P2007−61184)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】