説明

計測器の指針検査用画像処理方法

【課題】 照明変化や背景変化等の影響が及びにくくして、メータの指針の検査が容易にできるようにした。
【解決手段】 電流計や電圧計等の計測器本体11はX,Y移動機構に載置されて横方向X、縦方向Yに移動されるように構成される。計測器本体11の指針部分と目盛りなどの背景部分は、カラービデオカメラ12で観測撮影され、撮影されたビデオ信号は画像処理装置13に入力される。この画像処理装置13では、入力されたビデオ信号から背景部分や指針部分の画像処理が行われる。画像処理装置13で処理された画像処理信号は、色抽出部14に入力される。この色抽出部14では、指針部分と背景部分との識別化をUCS色度図と呼ばれる色表現方法を利用して行う。その後、指針部分だけを判定部15で判定して抽出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アナログ計測器における目盛や記号などの背景部分と指針部分との検査を行う場合、指針部分だけを抽出できるように画像処理した計測器の指針検査用画像処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電流計や電圧計等のアナログ指示回転計測器(以下メータと称す)におけるメータ指示検査は従来、検査員が目視によりメータパネルの目盛と指針の指示が所定の規格の範囲に入っているかの検査を行ったり、以下に示すように画像処理を行って自動検査を行う装置があった。
【0003】上記メータパネルの目盛と指針の指示が所定の規格の範囲に入っているかの自動検査装置は、次のように構成されている。すなわち、その装置は、指針を有する計測器本体と、この計測器本体のパネル表面の目盛に近接して設けられた目盛パターンと、前記計測器本体の上方部に配設され、その計測器の指針の動きを観測するテレビカメラと、前記計測器本体の下部に配設され、テレビカメラの観測視野を変更させるための移動機構と、この移動機構を制御する位置決めサーボ装置と、前記テレビカメラからのビデオ信号が入力され、入力された信号から前記目盛パターンの中心位置および前記指針の中心位置の画像の処理を行う画像処理装置とからなるものである。(参考文献:特公平7−117427号)上記のように構成された自動検査装置においては、まず、移動機構を制御して計測器本体の各目盛パターンの中心位置を計測するとともに、これら目盛位置から指針の回転中心を算出する。その後、計測器本体に試験信号発生装置から試験信号を印加して計測器本体の目盛位置と指針の指示位置とが所定の規格の範囲内に入っているか否かを判定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】メータ指示検査を上記画像処理装置により行う場合、指針部分を抽出するには、2値画像を用いた位置計測や濃淡画像を用いた画像間演算による手段が取られている。ところが、上記2つの手段では、以下のような問題点がある。
(1)2値画像を用いた位置計測における指針部分の抽出の問題点指針部分と背景部分(目盛り、記号等)が、影響を受ける場合には指針部分の位置計測が不可能になる。例えば、指針部分と背景部分が同一濃度で、それ以外の部分での計測が困難なとき、あるいは照明変化やメータ表面状態の変化(特に、濃度ムラ)があるときなどである。
(2)濃淡画像を用いた画像間演算による指針部分の抽出の問題点画像間演算による指針部分の抽出を行う場合、テンプレート画像と検査画像とでは、指針以外の部分が同一であることが、前提条件となっている。しかし、現実には、照明変化、表面状態の変化等が発生し、テンプレートと同じような検査画像が得られないことが多いので、指針部分の抽出が困難となる。例えば、水道メータのようにメータの上を水が流れる場合、水の色の違い、気泡の有無、生産ロッドによる背景の色違い等の検査装置では、安定させることが困難なことが多い。
【0005】この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、照明変化や背景変化等の影響が及びにくくして、メータの指針の検査が容易にできるようにした計測器の指針検査用画像処理方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を達成するために、第1発明は、計測器の指針部分と背景部分とをカラービデオカメラで観測撮影し、撮影したビデオ信号から画像を得て、その画像を画像処理装置で処理して指針部分と背景部分とを色抽出工程を用いて指針部分だけの画像を抽出したことを特徴とするものである。
【0007】第2発明は、前記色抽出工程が、計測器の指針部分と背景部分との色度の差を得た後、この色度差が色度点間の距離に比例するように色度座標を1次変換した色度図を用いたことを特徴とするものである。
【0008】第3発明は、前記色度座標(u’,v’)を以下の式で求めた後、X,Y,Zを色の3原色であるR,G,Bに置き換えたことを特徴とするものである。
【0009】u’=4X/(X+15Y+3Z)
v’=9Y/(X+15Y+3Z)
【0010】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態を示すブロック構成図で、11は電流計や電圧計等の計測器本体で、この計測器本体11は図示しないX,Y移動機構に載置されて横方向X、縦方向Yに移動されるように構成されている。計測器本体11の計測部分(指針部分と目盛りなどの背景部分)はカラービデオカメラ12で観測撮影され、撮影されたビデオ信号は画像処理装置13に入力される。この画像処理装置13では、入力されたビデオ信号から計測部分である背景部分や指針部分等の画像処理が行われる。画像処理装置13で処理された画像処理信号は、色抽出部14に入力される。この色抽出部14では、指針部分と背景部分との識別化を行うために、CIE 1976 UCS色度図と呼ばれる色表現方法を利用して指針部分と背景部分に色抽出を行う。その後、抽出された両部分から指針部分だけを、図示しないCPUからなる判定部15で判定して抽出する。
【0011】上記CIE 1976 UCS色度図上の色度座標(u’,v’)は以下の数式で求められる。
【0012】u’=4X/(X+15Y+3Z)
v’=9Y/(X+15Y+3Z)ただし、上記数式において、X,Y,Zは、一般的な色の3原色R,G,Bに置き換える。
【0013】この理由は、XYZ表色系は、もともと、RGB表色系では、等色関数が波長によって負になるため、計算に誤りが生じやすいなど不便である。この関係で、便宜上等色関数がすべて正になるように座標変換を行ったものである。このため、現在、R,G,Bを独立して出力するようなカラーカメラの場合、負の値を出力しないので、XYZをRGBに置き換えるようにした。
【0014】上述したUCS色度図は、XYZ表色系のxy色度図では「2つの色度点間の距離は、感覚的な色の性質に比例しない」ことを改善するために出来たものであり、「感覚的な色度の差が色度点間の距離に比例する」ように色度座標を変換する。このことが、UCS表色系を使用した色抽出を行った場合、照明変化等に影響されにくい画像計測が可能となる。
【0015】次に簡単に上記実施の形態を使用した計測器による計測手順について述べる。
【0016】まず、メータの回転中心を求めた後、指針の色だけの画像を前記UCS表色系より抽出する。この抽出においては、検査画像(RGB)をUCS表色系(u’,v’)に変換して設定した範囲に入る点のみを抽出する。抽出した画像より指針の中心位置を求め、その後、メータ回転中心と指針の中心位置より示度をもとめる。
【0017】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、UCS表色系を使用した色抽出によって指針部分を抽出することにより、照明の変化、背景部分の変化等の影響を受けにくく、検査不可能であった計測器の検査が容易に出来るようになるとともに、検査装置での照明器具の調整や外乱光を遮断する等の作業を不要とすることが出来る等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示すブロック構成図。
【符号の説明】
11…計測器本体
12…カラービデオカメラ
13…画像処理装置
14…色抽出部
15…判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 計測器の指針部分と背景部分とをカラービデオカメラで観測撮影し、撮影したビデオ信号から画像を得て、その画像を画像処理装置で処理して指針部分と背景部分とを色抽出工程を用いて指針部分だけの画像を抽出したことを特徴とする計測器の指針検査用画像処理方法。
【請求項2】 前記色抽出工程は、計測器の指針部分と背景部分との色度の差を得た後、この色度差が色度点間の距離に比例するように色度座標を1次変換した色度図を用いたことを特徴とする請求項1記載の計測器の指針検査用画像処理方法。
【請求項3】 前記色度座標(u’,v’)は、以下の式で求めた後、X,Y,Zを色の3原色であるR,G,Bに置き換えたことを特徴とする請求項2記載の計測器の指針検査用画像処理方法。
u’=4X/(X+15Y+3Z)
v’=9Y/(X+15Y+3Z)

【図1】
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【公開番号】特開2000−321023(P2000−321023A)
【公開日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−128118
【出願日】平成11年5月10日(1999.5.10)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】