説明

計測装置

【課題】計測対象である動物のX線CTによる画像データと、この動物の蛍光トモグラフィによる画像データとを重ね合わせることを可能にして、正確な判断を行うことができる計測装置を提供することを課題とする。
【解決手段】計測装置10は、計測対象の検体を保持した検体ホルダ64を移動させる移動ステージ11と、移動ステージ11上の計測対象物を計測するX線CTユニット8と、移動ステージ11上の計測対象物を計測する蛍光トモグラフィユニット6と、を備えている。検体ホルダ64は、光の等方散乱が生じる光学特性を有する材質によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いたトモグラフィー(Tomography)による計測装置に関し、更に詳細には、小動物などの生体を計測対象とするときに、この小動物を保持する計測動物保持具を用いて計測する計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光に対する吸収係数、散乱係数などの光学特性が計測対象と略一致する溶液を満たし、この溶液中に計測対象を漬け、容器を含めた断層情報を取得する提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−173976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このように光を用いて断層情報を得る場合、より正確な判断を行うことができる情報が得られることが求められている。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、計測対象である動物のX線CTによる画像データと、この動物の蛍光トモグラフィによる画像データとを重ね合わせることを可能にして、正確な判断を行うことができる計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、光の等方散乱が生じる光学特性を有する材質によって形成されていて計測対象の動物を保持した計測動物保持具を移動させる移動ステージと、前記移動ステージ上の計測対象物を計測する蛍光トモグラフィユニットと、前記移動ステージ上の計測対象物を計測するX線CTユニットと、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の発明では、計測対象の動物を保持させた計測動物保持具を移動ステージにセットして1回の移動を行わせることで、X線CTユニットによる画像データと、蛍光トモグラフィユニットによる画像データとを得ることができる。
更に、両者の画像データを重ね合わせることで、正確な判断を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記計測動物保持具には、前記動物の計測部位の外形に沿って形成されて前記計測部位を拘束する計測空洞部が形成されている。
請求項2に記載の発明では、光を用いて計測対象である動物(生体)の断層情報の計測を行うときに、計測誤差の少ない断層情報を得ることができる。また、動物の断層情報を得るための計測を行うときに、動物が動いてしまうのを防止できると共に、動物が弛緩した状態であっても、計測部位の外形形状が崩れるのを防止して、動物の臓器などを本来あるべき位置の近くに保持することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記計測動物保持具が、前記計測空洞部を開放するように分割可能とされている。
請求項3に記載の発明では、ブロックを分割可能として、分割することにより計測空洞部を形成する凹部が開放されて、凹部、すなわち計測空洞部内への動物の収容及び取り出しが容易となる。これにより、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、計測対象である動物の形態を計測するX線CTによる画像データと、この動物の機能を計測する蛍光トモグラフィによる画像データとを重ね合わせることにより、正確な判断を行うことができる計測装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る計測装置の全体構成を説明する模式的な斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る計測装置で光断層計測を行う装置部分の構成を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る計測装置で光断層計測を行う制御ユニットを示す概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る計測装置で用いる検体ホルダの展開斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る計測装置で用いる検体ホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
(全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係る計測装置10は、例えば、ヌードマウス等の小動物などの生体を計測対象(以下、検体18とする)として保持した検体ホルダ64(図5も参照)がセットされる移動ステージ11と、移動ステージ11上の検体18の機能を計測する蛍光トモグラフィユニット6と、移動ステージ上の検体18の形態を計測するX線CTユニット8と、を有する。検体ホルダ64は、光の等方散乱が生じる光学特性を有する材質によって形成されている。
【0014】
図2に示すように、蛍光トモグラフィユニット6は、計測部12と、計測部12から出力された電気信号に基づいて画像処理を行う画像処理部14と、を含んで構成されている。なお、図2では、構成を判り易くするために、後述の計測ハウジング6Hを省略して描いている。画像処理部14には、表示手段(表示デバイス)としてCRT、LCDなどのモニタ16が設けられおり、計測部12から出力される電気信号に基づいた画像がモニタ16に表示される。
【0015】
この蛍光トモグラフィユニット6は、検体18へ所定波長の光(例えば、近赤外線)を照射する。検体18では、照射された光が検体18内を散乱しながら透過し、この照射された光に応じた光が検体18の周囲へ射出される。蛍光トモグラフィユニット6では、検体18への光の照射位置を変えながら、それぞれの照射位置で検体18から射出される光(光強度)を検出し、この検出結果に対して所定のデータ処理を施す。蛍光トモグラフィユニット6では、この計測結果から得られる検体18の光断層情報に応じた画像(光断層像)をモニタ16に表示するようになっている。
【0016】
また、検体18に蛍光体を含む物質や薬剤を投与し、この蛍光体に対する励起光を検体18に照射することにより、検体18内での蛍光体の濃度分布に応じた蛍光が検体18の周囲から射出される。この蛍光を検出して、所定のデータ処理(画像処理)を施すことにより、断層情報として検体18中での蛍光体の濃度(蛍光の強度)を含む分布情報が得られる構成となっている。
【0017】
蛍光トモグラフィユニット6は、この蛍光体の分布情報を画像化して、検体18の光断層情報として表示可能とするものであっても良い。なお、以下では、一例として、所定波長の光(以下、励起光とする)が照射されることにより発光する蛍光体(図示省略)を検体18に投与し、この検体18中の蛍光体の濃度分布を取得することにより、検体18中での蛍光体の移動、集積過程などを観察可能とするものとして説明する。
【0018】
計測部12の基台20上には、計測ユニット22が設けられている。この計測ユニット22は、基台20から立設された板状のベース24を備え、このベース24の一方の面にリング状の機枠26が配置され、更に、計測ハウジング6H(図1参照)でこれらが覆われている。
【0019】
機枠26には、励起光を発する光源ヘッド28と、検体18から射出される蛍光を受光する複数の受光ヘッド30が所定の角度間隔で、機枠26の軸心を中心に放射状に配置されている。
【0020】
この光源ヘッド28及び受光ヘッド30は、光源ヘッド28と光源ヘッド28に隣接する受光ヘッド30及び、互いに隣接する受光ヘッド30の間隔が角度θで等間隔となるように配置されている。なお、本実施の形態では、一例として、11台の受光ヘッド30を設け、角度θを30°(θ=30°)としている。
【0021】
蛍光トモグラフィユニット6では、計測ユニット22の機枠26の軸心部に検体18が配置されるようになっている。なお、ベース24には、機枠26と同軸的に開口部が形成されており、これにより、検体18は、機枠26の軸方向に沿って相対移動可能となっている。
【0022】
また、計測ユニット22では、機枠26がその軸心を中心に回転可能となるようにベース24に取付けられている。また、基台20には、回転モータ32が取付けられており、この回転モータ32が駆動されることにより、機枠26が回転される。
【0023】
これにより、蛍光トモグラフィユニット6では、光源ヘッド28から射出される励起光の照射位置を、検体18の周囲で移動させながら、それぞれの照射位置で受光が可能となっている。
【0024】
図1に示すように、X線CTユニット8は、X線を放射するX線管、X線を検体18の計測部位(胴体部18M)に案内するコリメータ、検体18に対するX線の透過量を測定するX線検出器等が設けられた計測部(図示せず)を備えている。計測部から出力された電気信号は画像処理部14へ送信され、この電気信号に基づいた画像がモニタ16に表示される。更に、画像処理部14は、蛍光トモグラフィユニット6の計測部12から出力された電気信号に基づく画像データと、X線CTユニット8から出力された電気信号に基づく画像データと、を重ね合わせる機能を有する。
【0025】
また、X線CTユニット8の外壁8Hなどは、外部にX線が漏れないように鉛等のシールド材によって形成されている。そして、X線CTユニット8に中央には、蛍光トモグラフィユニット6の中央の開口6M(機枠26の開口)と同径の開口8Mが、開口6Mと同軸上に形成されている。
【0026】
一方、計測装置10には、検体18を収容した検体ホルダ64を保持する保持手段として、アーム34が設けられている。
【0027】
また、基台20上には、帯板状のスライド板36が配置されている。ベース24の基台20側の端部には、機枠26の軸方向(基台20の幅方向)の中間部に、矩形形状の開口部24Aが形成さている。スライド板36は、長手方向が機枠26の軸方向に沿って配置されて、ベース24の開口部24Aへ挿通されている。また、スライド板36の長手方向端部には、前述したアーム34の支柱38が取付けられ、基台20には、長手方向に沿ってガイド溝40が形成されている。
【0028】
図2に示されるように、スライド板36には、ガイド溝40の開口幅に合わせた脚部42が取付けられており、この脚部42が、ガイド溝40に挿入されている。これにより、計測部12では、スライド板36が、基台20上を機枠26の軸方向に沿って移動可能となっている。
【0029】
また、基台20内には、送りねじ44及び、この送りねじ44を回転駆動する移動モータ46が配置されている。この送りねじ44には、ガイド溝40に挿通された脚部42が螺合されている。これにより、計測部12では、移動モータ46の駆動によって送りねじ44が回転されると、スライド板36がガイド溝40に沿って移動され、このスライド板36の移動によって、検体18を保持するアーム34が機枠26の軸方向に沿って移動される。すなわち、検体ホルダ64が、蛍光トモグラフィユニット6の計測位置、及び、X線CTユニット8の計測位置を順次通過して、蛍光トモグラフィユニット6による画像データと、X線CTユニット8による画像データとが順次得られる。
【0030】
また、計測装置10には、蛍光トモグラフィユニット6、及び、X線CTユニット8の作動を制御する制御ユニット50が設けられている。以下、制御ユニット50が蛍光トモグラフィユニット6の作動を制御することを説明する。なお、X線CTユニット8の作動の制御は一般的なことなので、ここではその説明を省略する。
【0031】
図3には、計測部12の作動を制御することに関して描いた、制御ユニット50の概略構成が示されている。この制御ユニット50には、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータを備えたコントローラ52が設けされ、このコントローラ52が、予め記憶されているプログラム又は記録媒体を介して入力されるプログラム等に基づいて作動して各種の制御を行う。
【0032】
制御ユニット50には、回転モータ32を駆動する駆動回路54及び、移動モータ46を駆動する駆動回路56が設けられ、これらがコントローラ52に接続されている。コントローラ52では、駆動回路54、駆動回路56の作動を制御することにより、回転モータ32の駆動による機枠26の回転角を制御すると共に、移動モータ46の駆動による機枠26(光源ヘッド28及び受光ヘッド30)に対する検体18の位置を制御する。なお、回転モータ32及び移動モータ46としては、角度や位置を規定し易いパルスモータを適用することが好ましいが、駆動量が適正に制御可能であれば任意のモータを用いることができる。
【0033】
制御ユニット50には、光源ヘッド28を駆動する発光駆動回路58が設けられ、この発光駆動回路58がコントローラ52に接続されている。また、制御ユニット50は、受光ヘッド30から出力される電気信号を増幅する増幅器(Amp)60、増幅された電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器62が設けられている。
【0034】
コントローラ52は、光源ヘッド28の発光(励起光の発光)を制御しながら、受光ヘッド30から出力される電気信号(受光ヘッド30で検出する蛍光の強度に応じた電気信号)を、順にデジタル信号に変換して、計測データを生成する。
【0035】
このコントローラ52によって生成された計測データは、所定のタイミングで画像処理部14(図2参照)に出力される。画像処理部14は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバス(何れも図示省略)によって接続されたコンピュータを含んで構成されている。画像処理部14では、計測部12で生成された計測データを読み込んで、この計測データに基づいた検体18の断層画像(画像データ)を生成する。
【0036】
一方、蛍光トモグラフィユニット6では、励起光として波長が700nm〜1μmの近赤外線を用いており、光源ヘッド28はこの近赤外線を射出する。また、蛍光トモグラフィユニット6で観察される検体18は、この近赤外線が照射されることにより蛍光を発する蛍光体が投与されている。
【0037】
ここで、図1に示されるように、蛍光トモグラフィユニット6及びX線CTユニット8による計測では、計測動物保持具としての検体ホルダ(ジャケット)64が用いられる。そして、検体18がこの検体ホルダ64に収容され、この検体ホルダ64がアーム34に保持されて蛍光トモグラフィユニット6、X線CTユニット8に順次送られて計測されるようになっている。
【0038】
(検体ホルダ)
次ぎに、検体ホルダ64について詳細に説明する。
【0039】
図4に示されるように、この検体ホルダ64は、半円柱状の上型ブロック66と下型ブロック68とからなり、この上型ブロック66及び下型ブロック68を重ね合わせることにより円柱状に形成される。なお、この検体ホルダ64では、後述の計測空洞部74を形成しているブロック部分の外形形状が既知である。
【0040】
詳細には、下型ブロック68の分割面の長手方向略中央部には、上型ブロック66に向けて一対の凸状の係合突起70が形成されている。これに対し、上型ブロック66には、この係合突起70と係合する係合凹部72が形成されており、この係合突起70と係合凹部72を係合させることで、上型ブロック66及び下型ブロック68が重ね合わされて円柱状となる。
【0041】
さらに、上型ブロック66における一対の係合凹部72の間、及び下型ブロック68における一対の係合突起70の間には、計測される検体18の計測部位(本実施形態では腹部)の外形に沿って形成されていて、検体18の腹部を拘束する計測空洞部74が形成されている。つまり、この計測空洞部74は、上型ブロック66に形成される上側計測空洞部74Aと、下型ブロック68に形成される下側計測空洞部74Bとから構成されている。上側計測空洞部74Aは、上型ブロック66に形成された上収容部67によって形成されている。下側計測空洞部74Bは、下型ブロック68に形成された下収容部69によって形成されている。
【0042】
一方、検体18の計測部位である腹部では、励起光や蛍光に対して吸収及び散乱が生じる。つまり、検体18に照射された励起光、及び検体18内の蛍光体から発せられる蛍光は、検体18内で散乱、減衰しながら透過し、検体18の周囲から射出される。
【0043】
一般に、検体18として適用するヌードマウスなどの生体は、光に対して異方性散乱媒質となっている。この異方性散乱媒質は、光浸達長(等価散乱長)に達するまでの前方散乱が支配的な領域であるが、光浸達長を超える領域では、光の散乱が等方的となる(等方散乱領域)。すなわち、異方性散乱媒質では、入射された光が光浸達長に達するまでは波動的な生成が保持されるが、等方散乱領域では光の偏向がランダムな多重散乱(等方散乱)が生じる。
【0044】
光が高密度媒質内で散乱を受けながら伝播するとき、光子のエネルギーの流れを記述する基本的な方程式である光(光子)の輸送方程式は、散乱が等方散乱と近似されることにより、光拡散方程式が導出され、この光拡散方程式を用いて反射散乱光の解を求めることができる。
【0045】
蛍光トモグラフィユニット6では、検体18内の蛍光体から発せられて、検体18の周囲に射出される蛍光を受光し、この光拡散方程式を用いて、検体18内の蛍光体の位置及び蛍光の強度の分布を取得する。なお、光拡散方程式を用いた演算は、公知の構成を適用でき、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
ここで、本実施の形態では、検体ホルダ64(上型ブロック66及び下型ブロック68)を形成する材質として、異方性散乱媒質の一例として、光の等価散乱係数μ’sが1.05mm−1のポリアセタール樹脂(POM)を用いている。また、検体ホルダ64は、計測空洞部74の内面で検体18の表皮に接するが、このときに、上型ブロック66及び下型ブロック68は、励起光が計測空洞部74に達するまで、すなわち、検体18に接する点までに等方散乱となる厚さ(光浸達長以上の厚さ)で形成されたものであればよい。
【0047】
異方性散乱媒質同士が接している場合、一方の異方性散乱媒質で等方散乱を繰り返しながら伝播した光が、他方の異方性散乱媒質に入射されたときには、他方の異方性散乱媒質内で前方散乱が生じずに等方散乱状態が継続される。これにより、検体18と検体ホルダ64を一体で異方性散乱媒質と見なすことができる。
【0048】
図4に示すように、下側計測空洞部74Bと隣接するように下型ブロック68の外表面側には、検体18の脚部が収容される一対の脚部収容部78が形成されている。さらに、一対の脚部収容部78の間には、検体18の尾部が収容され、検体18の排泄物が溜められる排泄物空洞部80が形成されている。
【0049】
一方、計測空洞部74を挟んで排泄物空洞部80の反対側の上型ブロック66及び下型ブロック68には、検体18の頭部が収容され、検体18の呼吸器からから吸入される吸入麻酔薬が循環する麻酔空洞部82が形成されている。
【0050】
さらに、麻酔空洞部82を挟んで計測空洞部74の反対側には、麻酔空洞部82へ吸入麻酔薬を吸入する管形状の吸入口84と、麻酔空洞部82から検体18が呼吸して排出した空気を排出し、麻酔空洞部82で循環する吸入麻酔薬の濃度を決められた値に維持する排出口86とが上型ブロック66及び下型ブロック68に形成されている。
【0051】
(作用、効果)
以下に、本実施の形態の作用、効果を説明する。
【0052】
検体18の計測を行うときに、検体18を検体ホルダ64に収容する。詳細には、上型ブロック66と下型ブロック68を分割して検体ホルダ64を開放した状態で、蛍光体が投与された検体18の計測部位(胴体部18M)が計測空洞部74で拘束されるように、検体18を下型ブロック68に収容する。
【0053】
さらに、下型ブロック68の係合突起70と上型ブロック66の係合凹部72が係合するように、下型ブロック68と上型ブロック66を一体化し、検体18を検体ホルダ64に収容する。なお、この状態で、検体18の頭部は麻酔空洞部82に収容されている。
【0054】
更に、以下のようにして計測を行う。なお、この計測では、吸入口84から麻酔薬を投入して検体18に軽い麻酔をかけて計測するが、麻酔をかけずに計測することも可能である。
【0055】
この計測では、まず、図1、図2に示されるように、この検体ホルダ64を計測部12のアーム34に装着する。そして、検体ホルダ64が蛍光トモグラフィユニット6、X線CTユニット8に順次送られる。
【0056】
蛍光トモグラフィユニット6の計測部12では、検体ホルダ64が装着されると、移動モータ46を駆動して、検体18を機枠26の軸方向に移動し、検体18の計測部位(胴体部18M)に光源ヘッド28及び受光ヘッド30を対向させる。
【0057】
この後、計測部12では、光源ヘッド28を駆動して検体18へ励起光を照射すると共に、この励起光に基づいて検体18から射出される蛍光を、検体18の周囲に配置している受光ヘッド30によって受光して、1回分の計測データを取得する。また、計測部12では、回転モータ32を駆動して、機枠26を回転することにより、光源ヘッド28を次の照射位置へ対向させて励起光を照射し、次の計測データを取得する。
【0058】
計測部12では、光源ヘッド28と受光ヘッド30の移動を繰り返すことにより、励起光の照射位置及び発光の受光位置を相対移動して、検体18の一周分の計測を行うことにより一つの断層情報(検体18の所定位置での断層情報)を得るための計測データを取得する。
【0059】
画像処理部14では、計測部12で検体18の1周分の計測データが生成されると、この計測データを読み込んで、所定のデータ処理(画像処理)を行うことにより、検体18の該当部位に対する断層情報(ここでは、蛍光体の濃度分布)が得られる。なお、計測部12では、移動モータ46の駆動によって検体18を移動することにより、複数位置の断層情報を再構築することができる。
【0060】
詳細には、計測部12では、この検体ホルダ64の外周面へ励起光を照射する。この励起光は、検体ホルダ64内を散乱しながら伝播し、検体18に達すると、この検体18内を散乱しながら伝播する。これにより、励起光が検体18に中に投与されている蛍光体に照射されると、この蛍光体から蛍光が射出される。
【0061】
検体18中の蛍光体から発せられた蛍光は、検体18中を散乱しながら伝播し、検体18の表皮から射出されると検体ホルダ64中を散乱しながら伝播し、検体ホルダ64の外周面から周囲に射出される。
【0062】
前述したように、蛍光トモグラフィユニット6では、検体18から射出される蛍光の強度分布から、数学的モデルを用いた解析を行うことにより、検体18内での蛍光体の濃度分布を示す断層情報を再構築するようになっている。
【0063】
つまり、検体ホルダ64では、外周面から照射された励起光が検体18に達するまでに等方散乱する。これにより、励起光は、検体18へ等方散乱しながら入射される。また、検体18内の蛍光体から発せられる蛍光は、等方散乱しながら表皮から射出されて、この表皮に接している検体ホルダ64内を等方散乱しながら伝播して、検体ホルダ64の外周面から射出される。
【0064】
検体18が収容されている検体ホルダ64は、異方性散乱媒質を用いて形成された上型ブロック66、下型ブロック68を備え、検体18の胴体部18Mが、計測空洞部74に密着されて収容される。これにより、検体18と検体ホルダ64とを一体の異方性散乱媒質とみなすことができる。
【0065】
したがって、検体ホルダ64と検体18の胴体部18Mとの間では、励起光及び蛍光が等方散乱しながら伝播する。これにより、胴体部18Mと検体ホルダ64とが一体で計測対象と見なされ、検体ホルダ64から射出される蛍光から数学的モデルを用いた解析を行うことができる。
【0066】
一方、検体18に投与した蛍光体の移動、蓄積状態を観察するためには、検体18を生かした状態にする必要がある。すなわち、検体18の観察を行うときには、検体18が動いてしまうことがあり、これにより、検体18中での蛍光体の相対位置が変化すると、適正な蛍光体の濃度分布が得られなくなる。
【0067】
蛍光トモグラフィユニット6による計測後、移動ステージ11の移動により検体ホルダ64がX線CTユニット8の計測部へ移動し、続いてX線CTユニット8による計測が開始される。
【0068】
この計測では、蛍光トモグラフィユニット6と同様に種々の角度から計測用のX線を照射し、検体ホルダ64及び検体18を透過したX線量がX線検出器で測定され、画像処理部14へ出力され、X線CT断層像が得られる。
【0069】
更に、画像処理部14は、蛍光トモグラフィユニット6で得られた光断層像と、X線CTユニット8で得られたX線CT断層像とを重ね合わせた像を形成し、モニタ16に表示する。この表示では、光断層像の画像データやX線CT断層像の画像データに倍率をかけて表示することも可能である。
【0070】
本実施形態では、このように、検体18を保持させた検体ホルダ64を移動ステージ11にセットして1回の移動を行わせることで、蛍光トモグラフィユニット6による画像データと、X線CTユニット8による画像データと、を得ることができる。
【0071】
そして、蛍光トモグラフィユニット6による画像データと、X線CTユニット8による画像データとを重ね合わせた像をモニタ16に表示することができる。従って、より正確な判断を行うことができる像を表示することができる。
【0072】
また、検体18の計測部位である胴体部18Mが下収容部69の内壁及び上収容部67の内壁に緊密に接した状態で計測される。従って、蛍光トモグラフィユニット6では、計測誤差の少ない光断層情報を得ることができる。
【0073】
また、上記実施の形態では、計測対象をヌードマウスなどの小動物として説明したが、これに限定されるものではなく、哺乳動物などの任意の脊椎動物を計測対象とすることができる。
【0074】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
6 蛍光トモグラフィユニット
8 X線CTユニット
10 計測装置
11 移動ステージ
18 検体(動物)
18M 胴体部(計測部位)
64 検体ホルダ(計測動物保持具)
74 計測空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の等方散乱が生じる光学特性を有する材質によって形成されていて計測対象の動物を保持した計測動物保持具を移動させる移動ステージと、
前記移動ステージ上の計測対象物を計測する蛍光トモグラフィユニットと、
前記移動ステージ上の計測対象物を計測するX線CTユニットと、
を備えた、計測装置。
【請求項2】
前記計測動物保持具には、前記動物の計測部位の外形に沿って形成されて前記計測部位を拘束する計測空洞部が形成されている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記計測動物保持具が、前記計測空洞部を開放するように分割可能とされている、請求項1又は2に記載の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−236913(P2010−236913A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82624(P2009−82624)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】