説明

計装機器を備えた、流体表面を有する電極

電気化学装置(例えば、バッテリー)は、流体表面を有する少なくとも1つの電極と、上記装置の動作状態を検出するように構成された1つ以上のセンサとを備えている。流体案内構造が、上記センサに応じて流動を調整、または、流体を保持してもかまわない。上記装置内の電解液が、イオン搬送流体(例えば、多孔性固体支持部中に浸潤させたイオン搬送流体)をさらに備えていてもかまわない。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願件に関する記述〕
本願は、以下に列挙する特許出願(“関連出願”と表記する)に関連し、且つ、最先の効力のある有効な出願日の利益を主張する(例えば、関連出願の任意かつ全ての親出願、親出願の親出願、親出願の親出願の親出願などの出願については、仮特許出願以外の特許出願の最先の効力のある有効な優先日を主張し、または、合衆国連邦法典第35巻第119(e)章に拠り仮特許出願の特典を主張する)。関連出願、および、関連出願の任意かつ全ての親出願、親出願の親出願、親出願の親出願の親出願などの出願の全ての主題は、主題がここで一貫性を欠くことがない限りにおいて、参照によってここに引用されるものとする。
【0002】
〔関連出願〕
米国特許庁の特別な法的要件に関する限りにおいて、本願は、現在同時係属中の米国特許出願第12/462,205号(発明の名称:“LUID-SURFACED ELECTRODE”、発明者:Geoffrey F. Deane, Bran Ferren, William Gates, W. Daniel Hillis, Roderick A. Hyde, Muriel Y. Ishikawa, Edward K.Y. Jung, Jordin T. Kare, Nathan P. Myhrvold, Clarence T. Tegreene, David B. Tuckerman, Thomas A. Weaver, Charles Whitmer, Lowell L. Wood, Jr., Victoria Y.H. Wood、出願日2009年7月29日)の一部継続出願を構成するか、あるいは、現在同時係属中の出願が出願日の特典を享受する出願である。
【0003】
米国特許庁は、米国特許庁のコンピュータプログラムは、特許出願人が、出願番号を記載し、かつ、出願が継続出願であるのか、または、一部継続出願であるのかを示唆することことを要求するという旨の通知を発表している。Stephen G. Kunin, Benefit of Prior-Filed Application, USPTO Official Gazette、2003年3月18日(http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/og/2003/week11/patbene.htmにおいて閲覧可能)。本出願人(以下の記載では“出願人”と表記する)は、法令が定めるところにしたがって、優先権を主張している出願への参照について上記において具体的に記載した。出願人は、上記法令の具体的な参照の記載に関する文言が明瞭であって、米国特許出願の優先権を主張するためには、出願番号もいかなる特定(例えば「継続出願」や「一部継続出願」などの)も不要であると理解している。ただし、出願人は、米国特許庁のコンピュータプログラムにはあるデータ入力要件があることを理解しており、したがって、出願人は上述のように本願を親出願の一部継続出願であると記載するが、このような記載が、本願が親出願の事項以外の任意の新規事項を含むかどうかということに関する、いかなる種類の注釈および/または容認であると決して解釈されるべきでないことを明記する。
【0004】
〔背景技術〕
最近の“グリーン”なエネルギー生成に寄せられる関心は、電力を提供するためのさまざまな新しいプロセスおよび既存の方法の改良を創造してきた。しかしながら、多数の再生可能なエネルギー源(例えば、太陽エネルギーや風力エネルギー)は断続的にしか利用可能ではなく、したがって、需要に応じて電気を供給するためには、高い蓄電能力が必要とされることがある。たとえ連続的に利用可能な電力源(例えば、核エネルギー)であっても、連続的に利用可能な平均容量を超える断続的なピーク負荷を許容できる蓄電によって恩恵を受けることもある。これらの目的にはふさわしいと言われている既存のバッテリーは時に運転コストが高く、特に単位当たりエネルギーの総コストに基づいて考えると(資本コストおよびサイクル寿命、特にディープサイクル寿命が限定されていることを考慮すると)運転コストが高い。
【0005】
さらに、既存のバッテリーのエネルギー密度は、化石燃料のエネルギー密度に比べてはるかに低い。したがって、炭化水素の使用には公知の負の効果があるにもかかわらず、個々の移動のために、主に炭化水素燃料を引き続き使用しようと考える要因になっている。バッテリー技術が向上すれば、“グリーン”なエネルギー生成によって後押しされた電気自動車のより広範囲な使用が可能になり得る。
【0006】
〔発明の概要〕
1つの態様では、電気化学装置が、2つの電極、電解液、および、センサを備えている。この電解液は、上記電極のうちの一方に接触している第1の電解液表面から上記電極のうちのもう1つの電極に接触している第2の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導するように構成されている。上記電極のうちの少なくとも一方が、上記電解液に接触している表面を有する電気化学活性流体層を有している。上記センサは、上記電解液に接触している電気化学活性流体層の表面の近傍において電気化学装置の動作状態を検出するように構成されている。上記装置はコントローラをさらに備え、このコントローラは、上記センサからの信号に応じて、上記電気化学装置の動作パラメータを修正するように構成されていてもよい。上記コントローラがメモリまたは送信機を備えていてもよく、また、上記センサからの信号の履歴に対応するように構成されていてもよい。上記装置が複数のセンサを備えていてもよく、この複数のセンサが、上記装置内の同じまたは異なる場所において、同じまたは異なる動作状態(例えば、電気化学活性流体層の化学組成、化学活性、イオン密度、密度、温度、流動速度、流動方向、粘性、もしくは、表面張力、または、温度、磁場の強さ、磁場の向き、電気化学ポテンシャル、電流、電流密度、上記装置の2つの表面間の距離、上記電子装置の表面の一部の位置、もしくは、これらの動作状態のうちのいずれかの勾配)を検出するように構成されていてもよい。上記電極のうちの少なくとも一方が固体支持部を備えていてもよく、上記電気化学活性流体層が、表面エネルギーの作用によってこの固体支持部に付着してもよい。上記固体支持部が流体案内構造を有してもよく、この流体案内構造が、上記センサが検出する動作状態に応じて、上記電気化学活性流体層の流動パラメータを調節するように構成されていてもよい。さらに、上記電解液が、上記第2の電解液表面から第1の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導するように構成されていてもかまわない(つまり、逆向きに延びている)。上記電解液が、(例えば、上記電気化学活性流体に対して不浸透性を有する)固体表面、または、上記イオン電流を発生させるために、イオンが内部を移動できるイオン搬送流体を含んでいてもかまわない。上記電気化学活性流体が、液体金属、イオン流体、微小分散金属、微小分散半金属、微小分散半導体、または、微小分散誘電体を含んでいてもかまわない。少なくとも1つの電極が、リチウム、ナトリウム、水銀、スズ、セシウム、ルビジウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウム、カリウム、ガリウム、鉄、水銀、スズ、硫黄、酸素、フッ素、または、塩素のうちの1つ以上の元素を含んでいてもよく、また、上記電解液が、過塩素酸塩、エーテル、テトラヒドロフラン、グラフェン、ポリイミド、サクシノニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、エチレンカーボネート、βアルミナ、イオン伝導性ガラス、または、イオン伝導性セラミックを含んでいてもかまわない。
【0007】
別の態様では、電気化学エネルギーを供給する方法が、第1の電極に接触している第1の電解液表面から第2の電極に接触している第2の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導するように構成された電解液によって分離された、上記第1の電極および上記第2の電極に電気的負荷を接続し、上記第1の電解液表面または第2の電解液表面の近傍において電気化学装置の動作状態を検出するように構成されたセンサをモニターすることを含む。上記第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも一方が、上記電解液に接触している電気化学活性流体層を有している。上記センサのモニタリングには、上記センサからの信号に応じて電気化学装置の動作パラメータ(例えば、流体の流動パラメータ)を調節することを含んでもかまわない(例えば、センサの局部的な状態をモニターし、これに応じて、上記センサの局部的なパラメータを調節する)。
【0008】
別の態様では、電気化学装置が、2つの電極と、電解液と、上記電気化学装置の動作状態を検出するように構成された複数の局部センサとを備えている。この電解液は、上記電極のうちの一方に接触している第1の電解液表面から上記電極のうちのもう1つの電極に接触している第2の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導するように構成されている。上記電極のうちの少なくとも一方が、上記電解液に接触している表面を有する電気化学活性流体層を有している。各局部センサが、上記動作状態を上記装置内の所定の場所(例えば、上記装置内の複数の場所)において検出するように構成されている。上記装置は、上記複数の局部センサのうちの1つ以上のセンサからのデータを使用して、上記電気化学装置の動作パラメータの調節を指示するように構成されたコントローラをさらに備えていてもかまわない。
【0009】
別の態様では、電気化学装置が、2つの電極と、電解液と、上記電気化学装置の動作状態を検出するように構成された第1のセンサとを備えている。この電解液は、上記電極のうちの一方に接触している第1の電解液表面から上記電極のうちのもう1つの電極に接触している第2の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導するように構成される。上記電極のうちの少なくとも一方が、上記電解液に接触している表面を有する電気化学活性流体層と、電気的に異なる2つの領域を分離する電気制御領域を有する固体支持部とを備えた流体表面を有する電極である。上記電気制御領域が、受動素子もしくは能動素子を備えていてもよく、または、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、ダイオード、トランジスタ、集積回路、スイッチ、もしくは、メモリを備えていてもよい。
【0010】
別の態様では、電気化学活性流体層を有する電気化学装置を維持する方法が、上記電気化学装置の動作状態を検出するように構成されたセンサをモニターし、上記センサからの信号に応じて電気化学活性流体層(例えば、電極層または電解液層)の流動パラメータを調節することを含む。上記流動パラメータの調節には、例えば、上記電気化学活性流体層内における流動を開始もしくは終了させること、または、流量、流動方向、もしくは、上記電気化学活性流体層の流体の特性(例えば、粘性、温度、化学組成、化学活性、イオン密度、密度、もしくは、表面張力)を調節することを含んでもかまわない。
【0011】
別の態様では、電気化学活性流体層を有する電気化学装置を動作させる方法が、上記電気化学装置の動作状態を検出するように構成された複数の各センサから信号を受信し、この受信した信号を用いて、上記装置の性能パラメータを求め、上記電気化学装置の求めた性能パラメータに関するデータを伝送、表示、または、実体のある記憶媒体に記憶することを含む。
【0012】
別の態様では、電気化学活性流体層を有する電気化学装置を動作させる方法が、上記電気化学装置の少なくとも1つの動作状態を検出するように構成されたセンサ群から第1の信号を受信し、上記少なくとも1つの動作状態が所望の値または所望の値の範囲と一致するまで、上記電気化学装置の動作パラメータを調節し、上記動作パラメータを調節した後の、上記少なくとも1つの動作状態の任意の変化を反映する第2の信号を上記センサ群から受信することを繰り返すことを含む。
【0013】
発明の概要は例示にすぎず、いかなる限定を加えるものでもない。上述の例示としての各態様、実施形態、および、特徴に加えて、さらにさまざまな態様、実施形態、および、特徴があることは、図面および以下の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。
【0014】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、2つの流体表面を有する電極を備えた電気化学装置の概略図である。
【0015】
図2は、密度が層化された3つの流体層を備えた電気化学装置の概略図である。
【0016】
図3は、隣り合って並べられた流体電極を備えた電気化学装置の概略図である。
【0017】
図4は、流体表面を有する2つの電極および流体電解液を有する電気化学装置の概略図である。
【0018】
図5は、電気化学装置とともに使用可能なDC/DCコンバータの回路図である。
【0019】
図6は、複数のDC/DCコンバータを備えた電気化学装置の概略図である。
【0020】
〔詳細な説明〕
以下の詳細な説明では、詳細な説明の一部をなす添付の図面を参照する。図面中では、類似の符号は、特に明記しないかぎり一般に類似の部材を特定する。詳細な説明、図面、および、請求項において記載する例示としての実施形態は、限定を加えるものではない。他の実施形態を用いてもよく、他の変更を加えてもよく、これらは、ここに提示する主題の精神または技術的範囲から逸脱するものではない。
【0021】
ここでは、「流体」という用語は、各種液体、ペースト、ゲル、乳濁液、および、超臨界流体などの、剪断強度をほぼ持たない任意の凝縮相を含む。特に明記しないかぎり、「流体」と記載されている電気化学装置内の物質は、装置の運転温度(例えば室温などの温度(例えば、0℃、25℃、50℃、75℃、100℃、200℃、400℃、800℃、または、任意の他の適切な温度))および圧力(周囲圧力などの適した運転圧力)において流体性の形質を有している。
【0022】
ここでは、「平滑」という用語は、流体層によって濡れた表面について記載するために使用された場合には、曲率半径を測定した位置において、流体層の厚さに比べてかなり大きな局部的な曲率半径を有する表面を含む。
【0023】
ここでは、「付着」という用語は、固体に接触している流体について記載するために使用された場合には、上記固体を濡らす、または、他の様態で(例えば、重力にある程度逆らって固体との接触を維持するために十分な力で)上記固体にほぼ接着する流体を含む。
【0024】
ここでは、「イオン電流」という用語は、バルク拡散またはイオンの流動によって生成される、電荷の任意の移動を含む。「イオン電流」は、たとえ、一部または全体が(負に帯電した)イオンの反対方向の運動によって生成されたとしても、正の電位から負の電位へ流れると表現される。イオンが物質を通過し、全体として電荷の流れが生成できる場合に、上記物質がイオン電流を「伝導」すると表現する。これらのイオンは上記物質中にすでに存在していてもよく、境界面を介して供給されてもよい。
【0025】
ここでは、「マイクロパターンが形成された」という用語は、所定の形状を形成する、または、近傍の流体の厚さもしくは流動に対して所定の作用を及ぼす、凡そ1mm未満のサイズの構造(マイクロメートルスケールの構造およびナノメートルスケールの構造を含める)を有する表面を含む。マイクロパターンが形成された表面が特徴的構造の繰り返しパターンを有していてもよいが、必ずしも必須ではなく、例えば、マイクロ機械加工、リソグラフィー、成型(押し出しを含む)、印刷、打ち出し、レプリカ印刷(replica−printing)、または、その他のプロセスを実施することによって作製されてもかまわない。
【0026】
ここでは、「マイクロ構造を有する」という用語は、凡そ1mm未満のサイズの構造(マイクロメートルスケールの構造およびナノメートルスケールの構造を含める)を有する表面を含み、この構造の形状または流動特性がランダムな成分、確率的な成分、または、非周期的な成分を含んでいてもよいが、必ずしも必須ではない。
【0027】
ここでは、「不浸透性を有する」という用語は、指定された流体の流動または貫入に抵抗する物質を含む。物質が流体によって経時的に徐々に劣化する場合にも、上記流体に対して「不浸透性を有する」と表現する。
【0028】
ここでは、「導体」という用語は、特に明記しないかぎり、電子伝導体、イオン伝導体、または、半導体を含む。
【0029】
図1は、電解液16によって分離された2つの流体表面電極(陰極12および陽極14)を備えた、計装機器を備えた電気化学装置10の概略図である。図示した実施形態では、電解液16が、イオン搬送流体に浸潤させた多孔性支持体を含んでいるが、他の実施形態では、他の電解液(例えば、固体電解液または完全な流体電解液)を含んでいてもよく、または、上記電解液層が互いに異なる形質を有する複数の領域(例えば、2つの不混和性流体、または、イオン伝導性膜によって分離された2つの流体)を含んでいてもかまわない。上記2つの電極は、それぞれ、固体支持部22、24に付着する電気化学活性流体層18、20を有している。一部の実施形態では、固体支持部22、24は、対応する電気化学活性流体層18、20と化学的に類似、または、同一であり、他の実施形態では、これらの構造は化学的に異なる。図示した実施形態では、使用中に、電気化学活性流体層18、20は、固体支持部22、24の表面にそって流動する。他の実施形態では、電気化学活性流体18、20は、動作中に流動しなくてもよく、または、動作時の選択された期間中だけ流動してもよい(例えば、大きな出力を引き出す期間と期間との間)。いくつかの実施形態(図示せず)では、電気化学活性流体層18、20は、主に固体支持部22、24の表面にそって流動するのではなく、上記支持部を介して(少なくとも部分的には)流動してもよく、または、上記支持部を介した流動と上記表面にそった流動とを組み合わせて利用してもよい。例えば、一方または両方の電極が、図示した電解液16と同様の電気化学活性流体を浸潤させた多孔性支持体を含んでいても、または、表面にそって延びる、もしくは、内部を貫通する微小溝などの流体案内構造を有する支持体を含んでいてもかまわない。流体案内構造は、受動的(例えば、微小溝)であっても、能動的(例えば、ポンプなどの流体運搬装置)であってもかまわない。
【0030】
電気化学装置10は、電極12、14と電解液16との境界面に位置するセンサ26、28をさらに備えている。図示した実施形態では、センサ26、28はこれらの境界面に位置しているが、この構成に加えて、あるいは、この構成の代わりに、センサが、装置の他の場所(例えば、電気化学活性流体層とその固体支持部との境界面、流体層の内部、固体支持部の内部、電解液の内部、または、装置の動作状態もしくは動作パラメータを検出もしくは測定するためには望ましいと考えられる装置内の他の場所)に配置されてもかまわない。図示したセンサ26、28は、装置10内で起きる電気化学反応に関連する化学種(例えば、キャリアイオン、反応物、または、反応生成物)の局部的な化学活性を検出する。他の実施形態では、適切に配置されたセンサが、化学組成、イオン密度、物質の密度、流動速度、流動方向、粘性、温度、圧力、磁場の強さ、磁場の向き、電気化学ポテンシャル、境界面の位置、表面張力、または、これらの特性のうちの任意の特性の勾配を検出してもかまわない。
【0031】
電極12、14は、流体案内構造30、32をさらに備えている。これらの構造は、(例えば、流量または方向を調節することで、流体特性(例えば表面張力、粘性、もしくは、温度)を局部的に変更することによって、または、(例えば、ある量のドーパントを流体に混合することで)装置内を流動する流体の組成を調節することによって)流体の流動を構造30、32の近傍において変更するように構成されている。流体案内構造30、32は可動型(例えば、流量または方向を変更するように構成されたMEMS)であってもよく、固定型(例えば、局部的な流体特性もしくは動作パラメータを調節するために、電場または磁場を印加するように構成された導電性グリッドもしくはコイル、または、熱を印加もしくは除去する加熱器もしくは冷却器)であってもよい。使用時には、装置10は、流体案内構造30、32を使用して、流体の流動パラメータを、センサ26、28が検出した化学活性に応じて局部的に調節してもかまわない。例えば、陰極流体18の1つの領域で反応物種が枯渇していると判断されると、その領域への流体の流動を増加させて、枯渇した反応物を補充してもかまわない。他の実施形態では、上記において詳細したように、流体の流動をその他の感知した状態に応じて変更してもよく、複数の異なるタイプのセンサを使用していてもよい。後者の場合には、この異なるタイプのセンサのうちの任意のセンサ、または、これらの組み合わせが検出した特性に応じて流動を調節すればよい。例えば、センサ26、28で組成をモニターすることに加えて、追加的なセンサ(図示せず)によって、出力電圧(または、局部的な内部電圧)をモニターしてパラメータ(例えば、局部的な流体の組成)を調節し、所望の空間的または時間的電圧プロファイル(例えば、一定電圧)を維持してもかまわない。一部の実施形態では、コントローラ34(例えば、フィードバックコントローラ、つまり、外部入力に対して部分的に作用を及ぼすコントローラ)が、センサ26または28からの入力を受け、流体案内構造30または32に制御信号を出力して、(例えば、流体の流動の方向、速さ、体積、流路、または、流体の特性を変更することによって)流体の流動または位置を局部的に調節してもかまわない。一部の実施形態では、コントローラ34が、1つ以上のセンサ26、28からの履歴データを、瞬間的なデータとともに、または、瞬間的なデータの代わりに使用してもかまわない。一部の実施形態では、さらに流体案内構造(図示せず)を設けて、電解液16を通るイオン移送流体の流動を調節してもかまわない。
【0032】
電気化学装置10をバッテリーとして使用してもかまわない。その場合、電気的な負荷を陰極12および陽極14の両端に接続してもかまわない。上記装置をこのように使用する場合、電気化学活性流体層16、18、20のうちの少なくとも1つにおいて、上記電気化学反応に関与する種が枯渇する、または、電気化学反応の生成物種が濃縮する可能性がある。一部の実施形態では、電気化学活性流体層16、18、20を流動させ、枯渇または濃縮した流体を新しい流体と置き換えることによって、この種を補充または除去すればよい。ただし、多数の実施形態では、枯渇または濃縮した流体を装置10内または外部で再生成することが望ましい。一実施形態によれば、起電力を外部から印加して上記種を枯渇した流体へ向けて逆に駆動し、こうしてバッテリーを逆動させ、電気エネルギーを化学的エネルギーに変換することによって、枯渇した流体を装置10内で再生成してもかまわない。同様に、バッテリーを逆動させることによって、濃縮した流体を装置10内で再生成してもかまわない。ただし、この場合には、起電力を外部から印加して上記生成物種を濃縮した流体から除去し、こうしてバッテリーを逆動させ、電気エネルギーを化学エネルギーに変換する。上記装置がこれらの形態のいずれか一方または両方において使用される実施形態では、センサ26、28(または、他の適切に配置されたセンサ)を使用して、逆反応の進行状況をモニターし、モニターした進行状況に応じて、流動パラメータ、電流、または、電圧を調節してもかまわない。一部の実施形態では、充電時および放電時に(例えば、同じ電気化学活性を有する種を含む)別々の電極流体を採用し、さらに、これら2つの異なる流体を電極の同じまたは異なる部分に配置してもかまわない。
【0033】
化学組成、密度、温度、圧力、粘性、流量に依存する剪断特性、および、ベクトル速度を全て使用して、バッテリーまたはその他の電気化学装置の流体成分の状態の特性(例えば、ある任意の化学反応に対して相対的な、流体成分のエネルギー蓄積能力)を特定してもかまわない。コロイド、乳濁液、または、スラリーである流体成分が、さらに別の特性特定パラメータを有している可能性もある。これらのパラメータの空間的な勾配も、不適切な間隔を有する電極領域の位置を特定、または、理想的な化学組成からの局部的なずれの位置を特定するために役立つかもしれない。一般に、電極の表面にそった勾配は、少なくとも電極の縁から離れた領域(例えば、電極の縁からは、電極間の局部的な間隙、または、その数倍程度より遠いところ)においては、不可逆性を最小化するために、大きさが最小であると考えられる。化学組成は、例えば物理的な手段(例えば、粒子または光子の公報散乱、単線または多重線X線伝送などの伝送、音波または超音波センシング)または化学的な手段(例えば、参照基準に対して相対的な電気化学ポテンシャル、質量密度、熱伝導率、導電率、粘性、または、音の速さなどの1つ以上の搬送特性の測定)によって推察可能である。局部的な反応特性を推察するためには、境界面の位置(例えば、電極流体層の厚さや表面の空間座標)も利用可能である。
【0034】
電解液層中の電位場のマップ、および、関連するイオン密度のマップを使用して、内的不可逆性、および、その結果加熱に起因して発生するエネルギーの損失を算出してもかまわない。一部の実施形態では、この算出をすることによって、温度測定法で作成したエネルギー損失のマッピングが補充できる。このような空間マップは、例えば、先端部以外は絶縁された導体の露出している先端部とある電位の参照基準との間の電圧を測定することによって求めることができる。この露出した先端部は、一箇所に配置してもよく、(例えば、被駆動ブームによって)既知の複数の場所の間で移動してもよい。また、上記電気化学装置は、1つ以上のこのようなセンサ(例えば、センサアレイ)を備えていてもよく、さらに、このセンサの一部または全てが個別にアドレス可能であってもよい。このような素子は(基準電位を単純に測定する)受動素子であっても、(例えば、例えば、電圧波形を印加し、続いて起こる局部的な電気化学系の反応および緩和を観察し、その結果得られるポーラログラフィ信号を分析することによって近接する媒体の組成物を測定する)能動素子であってもかまわない。電流測定装置(例えば、既知サイズ、形状、および、向きを有する導体の絶縁ループ、ホール効果電流センサ、または、電場測定装置)、または、このような装置からなるアレイを使用して、局部的な電流密度を受動的または能動的に測定してもかまわない。測定した電流密度のセットを使用して、例えば、セル全体の電流分布を推察することができる。例えば、測定した電流密度(および、随意的に、例えば装置の当上記部分を流れる全電流などの、他の利用可能な情報)を用いて、セル内部の三次元磁場を推定することができる。あるいは、ホール効果磁場センサ、または、その他の磁場センサを配置して局部的な磁場を測定することもでき、さらに、この測定結果を使用して局部的な電流密度を算出することもできる。
【0035】
上述の測定結果のうちの任意の測定結果を用いて、電気化学装置の瞬間的および/または局部的な熱力学的効率を推察してもかまわない。例えば、電気化学活性を有する成分を使い尽くしてしまったために、例えば、上記電気化学活性流体のうちの1つ以上を置き換える必要性が存在し得ることを示唆するために(または、同時に行われる流体をリフリッシュするためのプロセスを変更するために、または、セルの電気的な動作状態変更するために、上記効率を使用してもかまわない。
【0036】
上述のセンサのうちの任意のセンサを(例えば、絶縁済み導線で)繋いでも、繋がなくても(例えば、データを無線で伝送しても、または、たまに直接接触することによって伝送し情報をダウンロードしても)かまわない。
【0037】
上記電気化学装置において使用可能な電気化学活性流体としては、他の金属(例えば、リチウム、マグネシウム、または、カルシウム)に対してキャリアとして機能する、例えば、水銀、ガリウム、ナトリウム、カリウム液体、または、金属合金(例えば、GALINSTAN(商標)、ガリウム、インジウム、および、スズの近共融合金、または、ナトリウムとカリウムとの合金)などの金属(特に、室温または室温より少し高い温度では液体である金属);各種有機溶媒および無機溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、または、フッ化炭素);誘電性流体中において十分な導電性を有する物質のスラリーまたは懸濁液;イオン性液体(例えば、Armand, et al., “Ionic-liquid materials for the electrochemical challenges of the future," Nature Materials 8:621-629 (2009)に記載されているイオン性液体(なお、この文献は参照によって引用されるものとする))などがあげられる。これらはいずれも、溶解塩もしくはその他の化合物、または、上記装置に電力を供給する、または、イオン電流を補助する電気化学反応に関与する他の種(例えば、金属、メタロイド、半導体、または、誘電体の粒子が分極した誘電性流体の懸濁液)を含んでいてもかまわない。一部の実施形態では、電気化学種(例えば、リチウム金属)を収納する“塩塊(salt lick)”貯蔵部(例えば、固体表面、ハニカムなどの体積に対する表面の比が大きな構造、流体表面など)の上にキャリア流体(例えば、GALINSTAN)を流して、電気化学種の一部を溶解させ、溶解した物質を装置へ搬送する。このような実施形態では、上記装置を電気的に逆に作動させて、電気化学種を貯蔵部(例えば、貯蔵部のいくつかの内部部材の中または上)に再び溜めることによって、上記貯蔵部を再生することがある。いずれの動作モードにおいても、(例えば温度または圧力を変化させて、遠心分離または重力駆動分離によって、または、濾過によって)物質の溶解/懸濁および沈殿/堆積状態の化学ポテンシャルレベルを変えることによって、貯蔵部を通る流体に対して上記物質を添加または除去してもかまわない。他の実施形態では、キャリア流体に上記電気化学反応に後に関与する溶解気体(例えば、酸素)を添加してもよく、キャリア流体を適切な気体と反応させてもよい。この添加または反応は、通常、上記流体が反応室に入る前、または、電極表面に到達する前に実施されるが、必ずしもそうしなければならないわけではない。
【0038】
一実施形態によれば、電気化学種が枯渇した流体または部分的に電気化学種が枯渇した流体(電極もしくは電解液流体のいずれか一方または両方)を、上記装置から除去して、例えば、少なくとも1つの保持タンクまたは貯蔵部(図示せず)に移動させてもかまわない。(この文脈では、反応物の濃度が減少するとともに、反応生成物の濃度が増加すれば、流体は「枯渇した」と見なされる。)流体の活性成分が完全に消費されていなければ、いくつかの実施形態では、もう一度この流体を、装置を介して再循環させることが望ましく、この再循環は、随意的に、ある程度の加熱、冷却、または、化学的な改質の後に実施することが望ましい。上記流体を貯蔵部に保存しておいて、その後、上述のように装置10内で、または、別の装置(この装置は別の場所にあってもよい)内で再生成してもかまわない。例えば、装置10をバッテリーとして使用して、固定型電力の消費者(例えば、ビル)または移動型電力の消費者(例えば、車両)に電力を提供してもかまわない。また、電気化学種が枯渇した流体または部分的に枯渇した流体を貯蔵部から除去して、新しい流体と置き換えることによって、装置10を“再充電”してもかまわない。そして、この電気化学種が枯渇した流体を、例えば、再充電設備(遠隔地にあってもかまわない)へ運んで再充電し、こうすることによって再利用できるようにしてもかまわない。一部の実施形態では、例えば、電気化学種が枯渇した流体中の電気活性種の濃度および新しい流体のいずれか一方または両方に部分的によって変わる新しい流体のコストを、電力の消費者が負担してもかまわない。(置き換え流体の単位価格に影響する可能性があると思われる他のパラメータとしては、一日のうちの時刻、曜日、または、一般的な電気代、人件費などがあげられる。)一部の実施形態では、上記電力の消費者および流体の供給者が、お互いが承諾できる置き換え流体の価格および特性(例えば、電気活性種の組成や濃度)を交渉すればよく、この交渉(および、随意的に支払い)の一部または全体を所定の(例えば、ソフトウェア)アルゴリズムによって消費者側もしくは供給者側のいずれか一方または双方で実施すればよい。
【0039】
一部の実施形態では、1つ以上の流体の除去(例えば、排出)を、さらに電気化学装置の温度調整システムとして機能させてもかまわない。この場合、除去した流体を(受動的にまたは能動的に)加熱または冷却した後で、上記装置へ再循環させることが望ましいと思われる。
【0040】
一部の実施形態では、センサ26、28(または、その他の適切に配置されたセンサ)を使用して、1つ以上の電気化学装置10の潜在的な安全上の問題(例えば、1つ以上の流体の、設計上の位置に対して相対的な配置の間違いにつながりかねない状態、高すぎる化学反応速度または流体運動速度、過度な圧力、高すぎる温度、火事、または、爆発)についてモニターし、これらの装置のうちの1つ以上を、迅速に駆動を停止し、または使用不可能にして、安全を維持してもかまわない。例えば、電気化学セルアレイの中の1つのセルの過熱が検出されれば、その問題のセルが(さらに)自己の構造もしくは隣接するセルの構造を損傷、流体を汚染、または、他の形態でシステム全体を劣化させてしまう前に、上記アレイの中で上記セルをスイッチオフし、その電気化学活性流体のうちの少なくとも1つを(例えば、重力排出、例えば圧力差などの印加応力の結果発生するポンプの作用、または、ローレンツ力によって)迅速に除去できるように、制御回路を設けてもかまわない。あるいは、例えば、非導電性シートを流体間に挿入することによって、または、所定の位置の1組の“ベネチアンブラインド”型のバリアを回転させることによって、物理的なバリアで、部分的にまたは完全に、流体を互いに単離して、上記セルの機能を迅速に停止してもかまわない。(一部の実施形態では、このようなバリアが、装置の動作中にバッフルとしての二つの目的を果たしてもかまわない。このようなバッフルについては、例えば図2との関連において別に記載する。)一部の装置またはある装置の一部の領域の潜在的な機能停止の目安とするためにモニターする状態としては、電流、電圧、磁場、圧力、温度、流体のレベル、流体の位置、流体の構成、流体の運動、音、または、光の異常などがあげられる。これらのうちの1つ以上の状態をモニターし、誤動作が検出された場合には、損傷を抑制またはリスクを軽減するサブシステムの動作を開始または案内または制御してもかまわない。
【0041】
一部の実施形態では、装置10が温度調整システム(図1には図示せず)を備えていてもよく、さらに、この温度調整システムが、流体もしくは気体を装置の一部に流すことによって、装置の1つ以上の電気化学活性流体の温度を変化させることによって(例えば、流体の一部もしくは全てを熱交換体を通して循環させることによって)、または、外部の表面の少なくとも一部の周囲で、例えば、自由対流、通気滞留(drafted convection)、もしくは、強制対流で流体もしくは気体(例えば、空気)を受動的にもしくは能動的に流すことによって、例えば温度を制御してもよい。この外部の表面は、その少なくとも一部が、装置に出入りする熱の流れの調整において補助できるように、絶縁機能を有する物質または構造物で被覆されてもかまわない。この構成に加えて、あるいは、この構成の代わりに、上記装置の加熱または冷却を、例えば、抵抗加熱法によって、または、熱電効果(例えば、ペルチェ・ゼーベック効果)を利用して電気的に実現してもかまわない。一部の実施形態では、コントローラ34が、例えば、装置の動作状態に応じて(例えば、センサ26、28、または、その他の適切に配置されたセンサに応じて)、熱制御を操作または命令してもかまわない。一部の実施形態では、装置10の内部または外部の異なる部分を、異なる温度で維持してもかまわない。
【0042】
図2は、2つの流体電極(陰極50および陽極52)ならびに流体電解液54を備えた電気化学装置の概略図である。3つの密度層化流体層を有するバッテリーが、例えば、米国特許出願公開第2008/0044725号(“High-Amperage Energy Storage Device and Method”)に示されている。上記特許出願は参照によってここに引用されるものとする。導電性容器56および蓋58は、上記装置の電気的な接触部として作用する。加熱部60は、バッテリーを適切な運転温度で維持するように機能する。
【0043】
図示した実施形態では、抗流動板70が、電気活性流体50、52、54の過度な運動を防止するように機能する、随意的な挿入支持部である。一部の実施形態では、例えば、上記装置全体が加速度の影響を受けるために、または、装置内の熱機械的もしくは電気力学的な力のために、電気活性流体が使用中に移動する傾向がある可能性がある。場合によっては、セルの流体、または、これらの電気活性流体間の境界面が、循環、振動、もしくは、“波”を発生させることがある。例えば、陽極流体および陰極流体が互いに接近すると、両流体間で局部的な電流密度が増加する。さらに、この増加した電流密度と全体的な陽極・陰極間の電流によって発生する周囲の磁場との相互作用に起因するローレンツ力が、このような変動を不安定に助長する傾向がある。特に、隣り合う流体間の密度差が非常に小さい場合には、このような傾向がある。バッフル70はこのような振動(または、他の発生源からの振動)を減衰させて、過度な変動を最小化する。図示したバッフル70は鉛直であるが、他の実施形態では、バッフルが水平にまたは斜めを向いていてもかまわない。バッフルがハニカムまたはウェブ(例えば、解放気泡発泡体)を形成してもよく、開口部を有していても、または、過度な流体運動(例えば、流動を引き起こす可能性のある流体運動)を依然阻止しながら、いくらかの横断する方向の流動を別の態様で可能にするように構成されてもよい。あるいは、図4との関連において下記において記載するように、1つ以上の導電性グリッドに(一過的または継続的に)選択的にバイアスを加えることによって、流体運動を減衰させて(図2には図示せず)、局部的な電流密度の発生を抑制しても、または、電気力学的に励起される流体運動を能動的に減衰させてもかまわない。あるいは、電気活性流体50および54(または、52および54)を、イオン搬送に対しては浸透性を有するが、バルク流体の搬送に対しては浸透性を有しないように構成された膜によって分離してもかまわない。また、この膜は、いくつかの実施形態では、張力を受けても、または、別の態様である程度の機械的支持が提供できるように構成されてもかまわない。一部の実施形態では、このような膜を使用して、比較的重い流体が比較的軽い流体の上に位置する流体構成の採用を可能にしても、または、流体の水平な構成の代わりに鉛直(または、斜め)の構成を可能にしてもかまわない。
【0044】
センサ62、64は、それぞれ、陰極と電解液との境界面、および陽極と電解液との境界面に配置される。図示した実施形態では、バッテリーが放電するにつれて電解液層の厚さは増加し、バッテリーが充電されるにつれて電解液層の厚さは減少するので、これらの境界面は可動である。他の実施形態(図示せず)では、これらのセンサを、例えば、多孔性ウェブ状構造物を用いて固定することによって、または、抗流動板70に固着させることによって、導電性容器56に対して相対的に固定された位置に配置してもかまわない。あるいは、これらのセンサを、例えば、被駆動ブームに固着させて、可動型としてもかまわない。図示した実施形態では、センサ62、64は、例えば表面エネルギーの作用または密度勾配を利用して、それぞれ対応する境界面に留まるように構成される。(明瞭性を重んじて比較的少数のセンサしか図示していないが、一部の実施形態では、さらに多数のセンサを使用してもかまわないことは理解できるであろう。)これらのセンサは、注目している1つ以上の境界面動作パラメータ、例えば、注目している種の局部的な濃度または化学活性を検出ように機能する。異なるセンサが、同じまたは異なる動作パラメータを検出してもかまわない。
【0045】
図示した実施形態では、センサ66が、上記装置の内壁に配置されている。これらのセンサも、注目している1つ以上の動作パラメータを検出するように機能する。一部の実施形態では、センサ66を使用して、陰極と電解液との境界面、または陽極と電解液との境界面の位置を検出してもかまわない。また、図示した実施形態では、流体案内構造68も装置の壁に配置されている(これは必要に応じて設けられればよい)。いくつかの実施形態(図示せず)では、流体案内構造も上記装置内に配置されている。一部の実施形態では、流体案内構造が、センサ62、64、66のいずれかが検出した動作状態に対応したものであってもかまわない。
【0046】
一部の実施形態では、動作中に、液体を図2の装置に対して導入または除去することが望ましい。例えば、上述の米国特許出願公開第2008/0044725号に記載のバッテリーでは、放電時に、電解液層54の厚さが増加する一方で、陰極層50および陽極層52の厚さ減少小する。電極と電解液との境界面を既知の位置で維持することが所望であれば、バッテリーの動作中に別の陰極流体および陽極流体を導入し、電解液流体を除去することが望ましいと考えられる。流体の導入および除去は、例えば、センサ62、64、66のいずれかから得られる境界面の位置に関する情報を用いて、コントローラによって制御すればよい。一部の実施形態では、電極と電解液との境界面の位置を推察するために、除去した流体(例えば、電解液流体)の組成または量を、上記装置の外部でモニターしてもかまわない。
【0047】
図3は、隣り合って並べられた流体電極を備えた電気化学装置を示す概略図である。陰極流体71および陽極流体72は、容器75内の電解液流体74に沈めた不浸透性容器73に収納されている。複数の固体ロッド76は、電気化学活性流体電極71、72に対する接触部として作用する。抗流動板77は、図2との関連において上述したように、装置内における過度な流体運動を防止するように作用する。他の実施形態(図示せず)では、1つ以上の導電性グリッド、または、その一部(図3には図示せず)に(一過的または継続的に)選択的にバイアスを加えることによって、流体運動を減衰させて、図4との関連において下記において記載するように局部的な電流密度を抑制してもかまわない。
【0048】
図示した実施形態では、センサ78が、容器73、75の予想される流体の境界面の位置の近くに配置されているが、図1および図2との関連において上述したように、センサは、動作状態を測定しようとする、上記装置の中または周囲のどの位置に配置してもかまわない。随意的な流体案内構造79も、図示した実施形態では容器73、75の壁に配置されているが、流体の流動を制御しようとする、上記装置内のどこに配置してもかまわない。一部の実施形態では、流体案内構造79が、センサ78、80に対応したものであってもかまわない。図示した実施形態では、センサ80は、電極流体71、72と電解液流体74との境界面に配置されているが、他の実施形態(図示せず)では、これらのセンサを、例えば、多孔性ウェブ状構造物を用いて固定することによって、または、抗流動板77に固着させることによって、容器73に対して相対的に固定された位置に配置してもかまわない。あるいは、これらのセンサを例えば被駆動ブームに固着させて、可動型としてもかまわない。
【0049】
図4は、計装機器を備えた電気化学装置81を示す概略図である。この装置81は、図1の装置と同様であるが、液体電解液82を備え、流体を減衰させる能力を有する。液体電解液82、陰極流体18、および、陽極流体20は、陰極固体支持部および陽極固体支持部22、24にそって流動する。図示した実施形態では、電解液82と陰極流体および陽極流体18、20との間の境界面が完全に平坦ではない。なお、説明を明瞭にするために、境界面のばらつきは誇張して図示している。制御可能な導電性グリッド84、86は、それぞれ、固体支持部22、24の表面にそって配置されている。上記装置の長さ方向にそった電流の変動は、例えば、電解液82と電気活性流体18、20との間の境界面、または、回路内の別の位置、例えば図5および図6に示すDC/DCコンバータにおいて固体支持部22、24に配置されたセンサ(図示せず)によってモニターされる。1つの領域における電流が、測定の結果、隣接する領域に比較して増加したのであれば、点88に示すように、流体境界面にばらつきがあるために、陰極層18および陽極層20が互いに対して接近した可能性がある。場合によっては、このようなばらつきは準安定または不安定であり、陰極流体18と陽極流体20との間で接触が発生させてしまう可能性がある。このような場合、過度に迅速な反応または加熱が始まり、さらに、セルが電気的に短絡することもあり得る。このような接触が起こるリスクを回避するために、導電性グリッド90、92に対してバイアスを(例えば、一過的に)加えて局部的な電流密度の発生を抑制し、こうすることによって、陽極流体および陰極流体をともに移動させる力を抑制してもかまわない。陽極接触部および陰極接触部との間の局部的な接触を防止する他の手段としては、(例えば、磁場コイルを用いて)上記陽極流体および/または陰極流体に力を印加することや、(例えば、電極支持部に開けたポートを介して)流体を局部的に追加または除去すること、さらに、非導電性の流体または気体(例えば、気泡)を導入することによって、または、上記電極間に固体バリアを挿入する(例えば、上記電極間にプレートを挿入する、既存の多孔性バリアの細孔を閉鎖する、または、図1との関連において記載した「ベネチアンブラインド」を設置する)ことによって局部的な導電率を低減することなどがあげられる。一部の実施形態では、例えば、上記局部的な電極または電解液流体の組成、温度、または、電圧が、異常に高いことを示唆している上記装置の領域において局部的な反応速度を低下させることによって、流体層の化学組成における空間的な非均質性の作用を最小化するために、グリッドの選択された一部を分極させることも望ましいと考えられる。いくつかの実施形態(図示せず)では、導体性グリッドを電解液内に配置してもよく、また、上記グリッドに対して選択的にバイアスを加えて、電解液内の電位またはイオン電流を調整してもよい。
【0050】
図5は、1つ以上の電気化学セルと組み合わせて使用可能なDC/DCコンバータ100の電気回路図である。図6は、複数のDC/DCコンバータ100を備えた電気化学装置を示しており、DC/DCコンバータ100は、図5に示すタイプのものであっても、例えば、スイッチコンデンサ電圧コンバータ(switch−capacitor voltage converter)、絶縁コンバータ(フライバック型または変圧器結合型)コンバータ(この場合、直列に接続しても並列に接続してもよい)、多段階コンバータなどの、別の適切なコンバータであってもかまわない。さまざまな使用可能なコンバータが、“Switching Regulators," National Semiconductor, Linear and Switching Voltage Regulator Fundamentals(http://www.national.com/appinfo/power/files/f5.pdfで入手可能)、および、Horowitz & Hill, The Art of Electronics, Cambridge University Press, 1989, pp. 355-365, and Lenk, Simplified Design of Switching Power Supplies Newnes, 1995, (特にpp. 1-23)に記載されている。なお、これらの各文献は参照によってここに引用されるものとする。図6に示す本実施形態では、陰極102および陽極104は、それぞれ、固体支持部および電気化学活性流体層(図示せず)を備えている。陰極102および陽極104は、例えば、流体、固体、または、混合相である電解液(図示せず)によって分離されている。図示した実施形態では、陰極102および陽極104の複数の対応する各領域(例えば、電解液を鋏んで互いに対向する領域)が、DC/DCコンバータ100に接続される。このDC/DCコンバータ100は、出力電圧を生成するために接続される。一部の実施形態では、この構成によって、上記電気化学セルは、ある任意の出力に対して、瞬間的な起電力に対応する電圧より高い(または、低い)電圧を生成できるようになる。DC/DCコンバータ100は、陰極102および陽極104内の固体支持部に接続されても、または、その流体層に接続されてもかまわない。一部の実施形態では、コンバータエレクトロニクス100の温度を、例えば、電気化学活性流体を流動させることによって、他の流体または気体を流動させることによって、または、空気の対流(例えば、強制対流、通気対流、または、自由対流)によって調整してもかまわない。
【0051】
図示した実施形態では、陽極104は、接続領域間に随意的な制御領域106を有している。一部の実施形態では、これらの領域が絶縁体であってもかまわない。また、他の実施形態では、上記領域が能動素子、例えばダイオードを備えていてもかまわない。制御領域106は、上記陽極および陰極のいずれか一方または両方に設けられてもよく、あるいは、上記陽極および陰極には全く設けられなくてもよい。
【0052】
多数のスイッチングコンバータ(例えば、図5に示すスイッチングコンバータ)が、時間とともに変化する電流を、電力源から引き出す。上記電気化学セル(または、その一部)に対して比較的安定した電気的負荷を維持することが望ましい実施形態では、複数の電圧コンバータが、異なる相対的位相で切り替わって、任意の時刻において、いくつかは増加しつつある電流を引き出し、いくつかは減少しつつある電流を引き出すことができるように、並列に配置されてもかまわない。このタイプの動作は、(通常多位相であるが、必ずしも多位相ではない)電力供給線またはグリッドに直接接続している場合に、特に便利であると思われるが、その他の状況においても有用であると考えられる。(例えば、拡散効果があるので、または、装置内の樹枝状結晶の形成、成長、または、持続を抑制するために)上記電気化学セルをパルスモードで動作させることが好ましい実施形態では、上記コンバータを、上記のように配置する代わりに、電極の特定の部分がパルス状電流を発信するが、アッセンブリー全体は大まかには一定である平均電流を発信するように構成してもかまわない。
【0053】
一部の実施形態では、上記コンバータは、交流電圧出力の生成のために使用されてもよい。例えば、時間に関して周期的な、互いに位相が一致していない1対の直流電圧を、上記コンバータを使用して切り替えることによって交流電圧出力を生成し、これらの一方または他方を負荷に交互に接続してもかまわない(図示せず)。このように、上記装置がAC出力の供給源であってもかまわない。同様に、AC出力を上記装置の外側の端子に直接印加して適切なDC電圧に変換(必要に応じて電圧レベルをシフトすることも含める)し、装置の充電に使用してもかまわない(図示せず)。いくつかのこのような実施形態では、上記回路構成に電力を供給するAC出力回路の位相は、バッテリーシステムによって電力の提供を受けるAC出力回路の位相と異なっていてもよく、その結果、バッテリーシステムは、電気化学的な同期コンデンサとして作用し、これと同時に、AC出力の位相を制御しながら変化させ、また、その一部を(例えば、入力電圧の位相および振幅、または、所望の電圧の位相および振幅に応じて)供給または消費することができる。このような実施形態は、特に、上記装置を電気的な一部として備えた電気供給グリッドまたはシステムの動作の安定性を支持するために有用である可能性がある。
【0054】
一部の実施形態では、これらの方法を用いて、放電する電圧よりいくぶん低いグリッド電圧で充電し、上記グリッドとの境界面における双方向の電圧降下の和(aggregated bidirectional voltage drops)が部分的または完全に、自動で補償されるように、バッテリーシステムを設計してもかまわない。このような実施形態では、上記バッテリーシステムは、上記グリッド内の物理的および電気的な位置に関わらず電気エネルギーの理想的な貯蔵部として電力グリッドが機能するように構成されていてもかまわない。
【0055】
ここで説明した電気化学装置では、多種多様な化学反応を使用してもかまわない。EMFにしたがって並べた表で大きく離れている反応の方が、高い装置電圧を得られるので一部の実施形態にとっては好ましいが、原則として、標準的な半セル電気化学ポテンシャルの表に記載した半反応の任意の対を陰極および陽極において使用してもかまわない。(標準的な半セル電位の一例としての表を補遺Aとして添付する。ただし、補遺Aにあげていない多数の電気化学的半反応のうちの任意の半反応を、ここで説明した装置において利用してもかまわない。)一部の実施形態では、装置の運転温度では液体である反応物(例えば、液体金属および液体金属の合金)が好ましい。陽極物質の例としては、リチウム、ナトリウム、水銀、スズ、セシウム、ルビジウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、および、これらのうちのいずれかを含む化合物などがあげられる。一方で、陰極物質の例としては、ガリウム、鉄、水銀、硫黄、スズ、塩素、酸素、フッ素、および、これらのうちのいずれかを含む化合物などがあげられる。一般的な適切な電解液物質としては、選択した陽極物質および陰極物質に合った塩などの化合物や、随意的に、いずれかの電極流体と特に反応性を有していない他の物質などがあげられる。一部の実施形態では、上記電解液が、容認できない程度の混合の発生は阻止するが、少なくとも1つの電気化学活種の通過は許容するバリアによって(または、相互的な不混和性によって)互いに分離された2つ以上の異なる物質を含んでいてもかまわない。上記物質のうちの任意の物質が、いくつかの実施形態では、上記電気化学反応全体に関与する可能性がある溶解気体(例えば、酸素)を含んでいてもかまわない。
【0056】
ここで説明した実施形態の多数において、単一の装置またはセルに言及してきた。一部の実施形態では、これらの装置のうちの任意の装置を、アレイ、積層構造、または、その他の適切な構成で設けてもよく、さらに、電気的に直列、並列、または、直列接続と並列接続との組み合わせで接続してもよい。
【0057】
ここでは、電気化学装置および方法の各種実施形態について説明してきた。一般に、1つの特定の実施形態との関連において記載した特徴を、特に明記しないかぎり、他の実施形態において使用してもかまわない。例えば、図1との関連において記載した再充電設備を、図2との関連において記載した装置において採用しても、ここで説明した各実施形態のうちのいずれにおいて採用してもかまわない。このような特徴の記載は、簡潔に記載するために繰り返しはしなかったが、ここで説明したさまざまな態様および実施形態に含められるものであることは理解できるであろう。
【0058】
一般に、ここで使用した用語、特に添付の請求項で使用した用語が、一般に“オープン”な用語として用いられていることは理解できるであろう(例えば、「...を含める」という用語は「...を含めるが、これらの例に限定されるものではない」と解釈すべきであり、「...を有する」という用語は「少なくとも...を有する」と解釈すべきであり、「...を備えている」という用語は「...を備えているが、これらの例に限定されるものではない」と解釈すべきである)。さらに、請求項において導入された構成要素について具体的な個数が意図されているのであれば、このような意図は請求項中で明示的に記載されるのであって、このような明示的な記載が存在しなければ、このような意図が一切存在しないのであることも理解できるであろう。理解の一助として例をあげると、下記の添付の請求項において、請求項の構成要素を導入するために、例えば、「少なくとも1つの」や「1つ以上の」という導入表現を使用することがある。しかし、このような表現を使用していたとしても、不定冠詞「a」または「an」によって請求項の構成要素を導入していることが、請求項においてこうして導入された構成要素を含む任意の特定の請求項を、上記構成要素を1つしか含まない発明に限定していることを暗示するものであると解釈すべきではない。このような解釈は、たとえ、「1つ以上の」または「少なくとも1つの」という導入表現と「a」または「an」などの不定冠詞とが、同一請求項に含まれている場合であっても、するべきではない(例えば、「電極」は通常「少なくとも1つの電極」を意味していると解釈すべきである)。同じことが、請求項の構成要素を導入するために使用される定冠詞の用法にも当てはまる。さらに、たとえ請求項において導入された構成要素について具体的な個数が明示的に記載されていたとしても、このような記載は、通常、少なくとも記載された個数が含まれていることを意味していると解釈すべきであることが理解できるであろう(例えば、他の修飾語を使わずに単に「2つの流体案内構造」または「複数の流体案内構造」と記載されている場合、通常、少なくとも2つの流体案内構造を意味する)。さらに、例えば、「A、B、および、Cのうちの少なくとも1つ」、「A、B、または、Cのうちの少なくとも1つ」、または、「A、B、および、Cからなる群より選択される」などの表現が使用されている場合、一般に、このような表現構造は、択一的であることを意図している(例えば、これらの表現はいずれも、Aだけを有するシステム、Bだけを有するシステム、Cだけを有するシステム、AおよびBをともに有するシステム、AおよびCをともに有するシステム、BおよびCをともに有するシステム、または、A、B、および、Cをともに有するシステムを含めるが、これらのシステムに限定されるものではない。さらに、同表現はいずれも、A、B、または、Cのうちの2つ以上を含めることもある。例えばA、A、および、Cをともに有するシステム、A、B、B、C、および、Cをともに有するシステム、または、BおよびBをともに有するシステムを含めることもある)。また、選択肢となる2つ以上の用語を提示する択一的な言葉または表現は、実質的にいずれも、その言葉または表現が明細書、請求項、または、図面のいずれにおいて記載されているのであっても、これらの複数の用語のうちの1つを含める可能性、複数の用語のうちの一方を含める可能性、および、複数の用語をともに含める可能性について考慮しているものであると理解すべきであることが理解できるであろう。例えば、「AまたはB」という表現は、「A」である可能性、または、「B」である可能性、または、「AおよびB」である可能性を含めるものであると理解できるであろう。さらに、「...してもよい」や「随意的に」などの許可を示す用語は、ここでは、各種実施形態の必須ではない特徴について記載するために使用している。これらの用語は、特に明記しないかぎり、同様に、選択可能または構成可能な特徴について一般的に説明している。
【0059】
ここに記載した態様は、異なる部材内に設けられた、または、このような部材に接続された他の異なる部材を示す。このように記載した構成は単なる一例であって、実際には、同じ機能性を達成する多数のその他の構成が実施可能であることは理解されるべきである。発想に関する限り、同じ機能性を達成する部材のどの構成も、実質的には、所望の機能性が達成できるように互いに「関連している」のである。よって、特定の機能性を達成するためにここでどの2つの部材を組み合わせたとしても、これらの部材は、構成または中間部材とは関係なく、所望の機能性が達成できるように互いに「関連している」と考えることができる。同様に、このように関連するどの2つの部材も、所望の機能性が達成できるように、互いに対して「作動可能に接続されている」または「作動可能に結合されている」と見ることができる。このように関連付けることができるどの2つの部材成分も、所望の機能性が達成できるように、互いに対して「作動可能に結合可能である」と見ることができる。作動可能に結合可能である具体的な例としては、物理的に嵌合可能、または、相互作用する部材、または、無線で相互作用部材などがあげられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0060】
当業者であれば、回路設計の現在の技術的状況が、通常、ハードウェアによるシステムの態様の実施とソフトウェアによるシステムの態様の実施との間にはほとんど区別が残っていない段階にまで発展していることは理解できるであろう。ハードウェアまたはソフトウェアのどちらを使用するかということは、一般には、コスト、効率、柔軟性、および、その他の実施上考慮すべき事項についてどう折り合いをつけるかという問題によって代表される設計上の選択なのである。当業者であれば、ロジックまたは回路の使用をともなうプロセス、システム、または、その他の各種技術(例えば、ハードウェア、ソフトウェア、または、ファームウェア)を実施することのできる手段は多種多様であること、さらに、好ましい手段は、プロセス、システム、または、その他の各種技術を利用する場合に応じて異なることが理解できるであろう。例えば、実施者が速さがもっとも重要であると決定すれば、実施者は主にハードウェアまたはファームウェア手段を選択すればよい。あるいは、柔軟性がもっとも重要であれば、実施者は主にソフトウェアによる実施態様を選択すればよい。これらの状況、または、その他の状況において、実施者がハードウェア、ソフトウェア、または、ファームウェアのある組み合わせを選択することも可能である。よって、ここで説明したロジックまたは回路を利用するプロセス、装置、または、その他の技術を実施する可能な手段は、複数存在し、どの手段も他の手段に比べて本質的に優れているというわけではない。当業者であれば、実施の光学的な態様には、光学用ハードウェア、ソフトウェア、および、ファームウェアが必要なことがあることが理解できるであろう。
【0061】
ここで説明した本主題の特定の態様について図示し記載してきたが、当業者には、ここに記載した教唆事項に基づいて、ここで説明した本主題およびより広い態様から逸脱することなく、変更および修正を加えることができ、したがって、添付の請求項が、このような変更および修正を全てその技術的範囲に、さらに、ここで説明した本主題の真の精神および技術的範囲に含むものであることは明らかであろう。
【0062】
ここでは各種態様および実施形態について開示してきたが、当業者であれば、他の態様および実施形態も可能であることは明らかであろう。ここで開示した各種態様および実施形態は、例示を目的とするものであって、限定を加えることを目的とするものではなく、真の技術的範囲および精神は以下の請求項に記載する。
【0063】
【表1】













【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、2つの流体表面を有する電極を備えた電気化学装置の概略図である。
【図2】図2は、密度が層化された3つの流体層を備えた電気化学装置の概略図である。
【図3】図3は、隣り合って並べられた流体電極を備えた電気化学装置の概略図である。
【図4】図4は、流体表面を有する2つの電極および流体電解液を有する電気化学装置の概略図である。
【図5】図5は、電気化学装置とともに使用可能なDC/DCコンバータの回路図である。
【図6】図6は、複数のDC/DCコンバータを備えた電気化学装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極と、
上記電極の一方に接触する第1の電解液表面から、上記電極の他方に接触する第2の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導する電解液とを備え、
上記電極の少なくとも一方は、上記電解液に接触する表面を有する電気化学活性流体層を含み、
上記電解液に接触する上記電気化学活性流体層の表面の近傍において、電気化学装置の動作状態を検出する第1のセンサをさらに備えていることを特徴とする電気化学装置。
【請求項2】
上記第1のセンサからの信号に応じて、上記電気化学装置の動作パラメータを修正するコントローラをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
上記コントローラは、メモリを備えていることを特徴とする請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
上記コントローラは、送信機を備えていることを特徴とする請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項5】
上記コントローラは、上記第1のセンサからの信号の履歴に応じて、上記電気化学装置の動作パラメータを修正することを特徴とする請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項6】
上記電気化学装置の動作状態を検出する第2のセンサをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
上記第1のセンサおよび第2のセンサは、異なる動作状態を検出することを特徴とする請求項6に記載の電気化学装置。
【請求項8】
上記第1のセンサおよび第2のセンサは、同じ動作状態を検出することを特徴とする請求項6に記載の電気化学装置。
【請求項9】
上記第1のセンサおよび第2のセンサは、上記装置内の異なる場所において動作状態を検出することを特徴とする請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
上記第2のセンサは、上記電解液に接触する上記電気化学活性流体層の表面の近傍において動作状態を検出することを特徴とする請求項6に記載の電気化学装置。
【請求項11】
上記動作状態は、化学組成、化学活性、イオン密度、密度、温度、流動速度、流動方向、粘性、および、表面張力からなる群より選択される電気化学活性流体層の状態であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項12】
上記動作状態は、温度、磁場の強さ、磁場の向き、電気化学ポテンシャル、電流、電流密度、および、上記装置の2つの表面間の距離からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項13】
上記動作状態は、上記電気化学活性流体層の表面の一部の位置であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項14】
上記動作状態は、化学組成、イオン密度、密度、温度、流動速度、流動方向、粘性、および、表面張力からなる群より選択される、上記電気化学活性流体層の状態の勾配であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項15】
上記動作状態は、温度、磁場の強さ、磁場の向き、電気化学ポテンシャル、電流、および、上記装置の2つの表面間の距離からなる群より選択される状態の勾配であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項16】
上記動作状態は、上記装置の部材に対する、上記電気化学活性流体層の表面の局部的な傾きであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項17】
上記電極の少なくとも一方は、固体支持部を備え、
上記電気化学活性流体層は、表面エネルギーの作用によってこの固体支持部に付着することを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項18】
上記固体支持部は、流体案内構造を備えていることを特徴とする請求項17に記載の電気化学装置。
【請求項19】
上記流体案内構造は、上記第1のセンサが検出する動作状態に応じて、上記電気化学活性流体層の流動パラメータを調節することを特徴とする請求項18に記載の電気化学装置。
【請求項20】
上記電解液は、上記第2の電解液表面から上記第1の電解液表面へ向けて、イオン電流をさらに伝導することを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項21】
上記電解液は、上記電気化学活性流体に対して不浸透性を有する固体表面を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項22】
上記電解液は、上記イオン電流を発生させるために、イオンが内部を移動できるイオン搬送流体を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項23】
上記電解液は、固体構造をさらに備えていることを特徴とする請求項22に記載の電気化学装置。
【請求項24】
上記電気化学活性流体層は、液体金属、イオン流体、微小分散金属、微小分散半金属、微小分散半導体、または、微小分散誘電体を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項25】
上記電極の一方は、リチウム、ナトリウム、水銀、スズ、セシウム、ルビジウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウム、および、カリウムからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項26】
上記電極の一方は、ガリウム、鉄、水銀、スズ、硫黄、酸素、フッ素、および、塩素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項27】
上記電解液は、過塩素酸塩、エーテル、テトラヒドロフラン、グラフェン、ポリイミド、サクシノニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、エチレンカーボネート、βアルミナ、イオン伝導性ガラス、および、イオン伝導性セラミックからなる群より選択される少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項28】
第1の電極に接触する第1の電解液表面から、第2の電極に接触する第2の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導する電解液によって分離された、上記第1の電極および上記第2の電極に電気的負荷を接続し、
上記第1の電解液表面または第2の電解液表面の近傍において、電気化学装置の動作状態を検出するセンサのモニタリングを含み、
上記第1の電極および第2の電極の少なくとも一方は、上記電解液に接触する電気化学活性流体層を備えていることを特徴とする電気化学エネルギーを供給する方法。
【請求項29】
センサのモニタリングには、上記センサからの信号に応じて、電気化学装置の動作パラメータを調節することを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記センサは、上記センサの局部的な動作状態を検出するように構成され、
動作パラメータの調節には、上記センサの局部的な動作パラメータを調節することを含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
動作パラメータの調節は、流体の流動パラメータを調節することを含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
2つの電極と、
上記電極の一方に接触する第1の電解液表面から、上記電極の他方に接触する第2の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導する電解液とを備え、
上記電極の少なくとも一方は、上記電解液に接触する表面を有する電気化学活性流体層を含み、
電気化学装置の動作状態を検出する複数の局部センサをさらに備え、各局部センサは、上記装置内の所定の場所において上記動作状態を検出することを特徴とする電気化学装置。
【請求項33】
上記複数の局部センサの少なくとも一部は、上記装置内の複数の場所において上記動作状態を検出することを特徴とする請求項32に記載の電気化学装置。
【請求項34】
上記複数の局部センサからのデータを使用して、上記電気化学装置の動作パラメータの調節を指示するコントローラをさらに備えていることを特徴とする請求項32に記載の電気化学装置。
【請求項35】
上記コントローラは、上記複数の局部センサのうち、少なくとも2つの局部センサからのデータを使用して、上記電気化学装置の動作パラメータの調節を指示することを特徴とする請求項34に記載の電気化学装置。
【請求項36】
2つの電極と、
上記電極の一方に接触する第1の電解液表面から、上記電極の他方に接触する第2の電解液表面へ向けて、イオン電流を伝導する電解液と、
電気化学装置の動作状態を検出する第1のセンサとを備え、
上記電極の少なくとも一方は、上記電解液に接触する表面を有する電気化学活性流体層および固体支持部を含む、流体表面を有する電極であり、
上記固体支持部は、電気的に異なる2つの領域を分離する電気制御領域を備えていることを特徴とする電気化学装置。
【請求項37】
上記電気制御領域は、受動素子を備えていることを特徴とする請求項36に記載の電気化学装置。
【請求項38】
上記電気制御領域は、能動素子を備えていることを特徴とする請求項36に記載の電気化学装置。
【請求項39】
上記電気制御領域は、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、ダイオード、トランジスタ、集積回路、スイッチ、および、メモリからなる群より選択される素子を備えていることを特徴とする請求項36に記載の電気化学装置。
【請求項40】
電気化学活性流体層を備えた電気化学装置を維持する方法であって、
上記電気化学装置の動作状態を検出するセンサをモニタリングし、
上記センサからの信号に応じて、上記電気化学活性流体層の流動パラメータを調節することを含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
上記流動パラメータの調節は、上記電気化学活性流体層内における流動を開始させることを含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
上記流動パラメータの調節は、上記電気化学活性流体層内における流動を終了させることを含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項43】
上記流動パラメータの調節は、上記電気化学活性流体層の流量または流動方向を調節することを含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項44】
上記流動パラメータの調節は、上記電気化学活性流体層の流体の特性を調節することを含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項45】
上記流体の特性は、粘性、温度、化学組成、化学活性、イオン密度、密度、および、表面張力からなる群より選択されることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
上記電気化学活性流体層は、電極として機能することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項47】
上記電気化学活性流体層は、電解液として機能することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項48】
電気化学活性流体層を備えた電気化学装置を動作させる方法であって、
上記電気化学装置の動作状態を検出する複数の各センサから信号を受信し、
この受信した信号を用いて、上記装置の性能パラメータを求め、
上記電気化学装置の求めた性能パラメータに関するデータを伝送、表示、または、実体のある記憶媒体に記憶することを含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
電気化学活性流体層を備えた電気化学装置を動作させる方法であって、
a)上記電気化学装置の少なくとも1つの動作状態を検出するセンサ群から、第1の信号を受信するステップと、
b)上記電気化学装置の動作パラメータを調節するステップと、
c)上記動作パラメータを調節した後の、上記少なくとも1つの動作状態の任意の変化を反映する第2の信号を上記センサ群から受信するステップと、
d)上記少なくとも1つの動作状態が所望の値または所望の値の範囲と一致するまで、ステップb)およびステップc)を繰り返すステップとを含むことを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−500577(P2013−500577A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522807(P2012−522807)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/002101
【国際公開番号】WO2011/014243
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508156546)シーレイト リミテッド ライアビリティー カンパニー (54)
【氏名又は名称原語表記】SEARETE LLC
【住所又は居所原語表記】1756−114th Ave.Se,Suite 110,Bellevue,WA 98004,United States of America
【Fターム(参考)】