説明

記録媒体の厚さ計測装置、記録媒体の重送検知装置及び画像形成装置

【課題】計測される記録媒体の厚さの精度を向上する。
【解決手段】画像形成装置10は、搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出し、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された用紙なし時出力値(第1の出力値)と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に検出された用紙あり時出力値(第2の出力値)とに基づいて、記録媒体の厚さを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される記録媒体の厚さを計測する記録媒体の厚さ計測装置、記録媒体の重送検知装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複合機などの画像形成装置が、複数の用紙が重なり合っている状態(重送)を検知することはよく知られている。
特許文献1では、n枚目の用紙の厚さのデータと用紙がないときのデータとの差と、n+1枚目の用紙の厚さのデータと用紙がないときのデータとの差とを比較して、重送の有無を判定する用紙の重送検知装置が開示されている。
特許文献2では、経時的な温度上昇に基づく重送センサの出力値変動を、用紙あり位置データの変動に基づいて、予め記憶した用紙なし位置データに反映させる画像形成装置の用紙搬送管理装置が開示されている。
特許文献3では、最新の用紙あり位置データと、その1回前の用紙あり位置データとを比較して、重送を検知する紙葉体重送検知装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平3−192050号公報
【特許文献2】特開2003−12192号公報
【特許文献3】特公平7−84278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、用紙がないときのデータの更新や重送判定基準値が、用紙があるときのデータに基いて算出されるので、各用紙の厚さのばらつきが影響を及ぼしてしまい、判定の精度が低くなってしまう。また、用紙が搬送される間隔が長い場合には、1回前の用紙あり位置データが検出された後に、センサの出力値が大きく変化してしまうことがある。
【0005】
本発明は、計測される記録媒体の厚さの精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の記録媒体の厚さ計測装置は、搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された第1の出力値と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値とに基づいて、記録媒体の厚さを算出する算出手段とを有する。
【0007】
好適には、前記出力値検出手段により検出された第1の出力値を記憶する出力値記憶手段をさらに有し、前記算出手段は、前記出力値検出手段により検出される出力値が記録媒体の厚さとは異なる要因の影響を受けているか否かを判定し、影響を受けていない場合、前記出力値記憶手段に記憶されている第1の出力値にさらに基づいて記録媒体の厚さを算出する。
【0008】
好適には、前記算出手段は、前記出力値検出手段に通電されてから時間に基づいて判定する。
【0009】
好適には、前記算出手段は、前記出力値記憶手段に記憶されている第1の出力値から算出された値と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出される第1の出力値とに基づいて判定する。
【0010】
好適には、温度を検出する温度検出手段をさらに有し、前記算出手段は、前記温度検出手段により検出された温度に基づいて判定する。
【0011】
好適には、前記出力値検出手段により検出された第1の出力値を記憶する出力値記憶手段をさらに有し、前記算出手段は、前記出力値記憶手段に記憶されており、過去所定時間内に検出された第1の出力値にさらに基づいて、記録媒体の厚さを算出する。
【0012】
好適には、前記出力値検出手段は、揺動部材を有し、搬送路の既定位置を搬送される記録媒体に当接して移動する揺動部材の移動量を検出する。
【0013】
好適には、駆動ロールと、記録媒体の厚さ方向に移動可能に設けられ、当該駆動ロールに従って回転する従動ロールとを含む搬送手段をさらに有し、前記出力値検出手段は、前記搬送手段の従動ロールの移動量を検出する。
【0014】
本発明に係る第2の記録媒体の厚さ計測装置は、搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された出力値を記憶する出力値記憶手段と、前記出力値記憶手段により記憶されている出力値と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出される出力値とに基づいて記録媒体の厚さを算出する算出手段とを有する。
【0015】
本発明に係る第3の記録媒体の厚さ計測装置は、搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値を記憶する第2の出力値記憶手段と、前記出力値検出手段により検出される出力値が記録媒体の厚さとは異なる要因の影響を受けているか否かを判定し、影響を受けていない場合、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された第1の出力値と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値とに基づいて記録媒体の厚さを算出し、影響を受けている場合、前記第2の出力値記憶手段に記憶されている第2の出力値と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出される第2の出力値とに基づいて記録媒体の厚さを算出する算出手段とを有する。
【0016】
本発明に係る記録媒体の重送検知装置は、搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された第1の出力値と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値とに基づいて、記録媒体の厚さを算出して重送の有無を判定する重送判定手段とを有する。
【0017】
本発明に係る画像形成装置は、搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された第1の出力値と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値とに基づいて、記録媒体の厚さを算出して重送の有無を判定する重送判定手段とを有し、前記重送判定手段により重送があると判定された場合、重送がないと判定された場合とは異なる処理を行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、計測される記録媒体の厚さの精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10を示す図である。
図1に示すように、画像形成装置10は、例えば電子写真方式の画像形成部12、原稿読取装置14、用紙が積載された例えば2段の給紙トレイ16a、16b、手差しトレイ18及び制御部60を有する。画像形成装置10は、例えば、印刷機能、複写機能及び読取機能を有する複合機であり、原稿読取装置14により読み取られた読取画像又は外部の端末装置(不図示)から送信された印刷データに基いて描画された画像を、給紙トレイ16a、16b又は手差しトレイ18から用紙搬送路20に供給された用紙に形成する。
【0020】
なお、画像形成装置10は、プリンタやファクシミリであってもよい。また、画像形成部12は、電子写真方式とは異なる方式(例えばインクジェット方式など)であってもよい。用紙は、記録媒体の一例であり、OHPシート、普通紙、厚紙、光沢紙などでもよい。
【0021】
制御部60は、CPU、メモリ、ハードディスクドライブ等の記憶装置、及び外部のコンピュータとの間でデータの送受信を行う通信インタフェースを有する。制御部60は、画像形成装置10に含まれる各構成要素の制御及び各構成要素との間でのデータの入出力を行う。
【0022】
画像形成部12は、像保持体22、この像保持体22を一様に帯電する帯電器24、この帯電器24により一様に帯電された像保持体22に潜像を形成する例えばレーザ走査方式の露光装置26、この露光装置26により形成された像保持体22上の潜像を現像剤で可視化する現像器28、この現像器28により形成された現像剤像を用紙に転写する転写装置30、及び像保持体22に残った現像剤をクリーニングするクリーナ32を有する。したがって、像保持体22が帯電器24により一様に帯電され、潜像が露光装置26により像保持体22に形成され、この潜像が現像器28により現像剤で可視化され、現像剤像が転写装置30により用紙に転写され、定着装置34により定着され、用紙が排出トレイ36に排出される。
【0023】
原稿読取装置14は、原稿の画像を光学的に読み取る光学系42及びADF(Auto Document Feeder)等の自動原稿送り装置44を有する。光学系42は、原稿に光を照射するランプ46、原稿からの光を反射する反射ミラー48a、48b、48c、この反射ミラー48a〜48cからの光を収束させるレンズ50、及びこのレンズ50により収束した光を読み取る読取センサ52を有する。読取センサ52は、例えばCCD(Charge Coupled Devices)から構成されている。この光学系42は、後述する自動原稿送り装置44により送られた原稿を流し読みする機能、及び反射ミラー48a〜48c等を走査してプラテンガラス54上に載置された原稿を読み取る機能を備えている。
【0024】
自動原稿送り装置44は、多数の原稿が載置される原稿載置台56、原稿搬送路58及び画像を読み取った後の原稿が排出される排出台59を有する。なお、自動原稿送り装置44は、開閉可能であり、自動原稿送り装置44の下面は、原稿をプラテンガラス54上に押圧するプラテンカバーとして機能する。
【0025】
用紙搬送路20には、複数の搬送ロール38が設けられている。この搬送ロール38の一つとして、転写装置30上流側近傍には、レジストロール40が配置されている。このレジストロール40は、レジストセンサ62により用紙の先端が検知されたタイミングに基づいて、供給された用紙を一時停止させ、像保持体22に潜像が形成されるタイミングと同期して用紙を転写装置30に供給するように制御される。
【0026】
また、用紙搬送路20には、変動値検出センサ64(出力値検出手段)が、レジストロール40の上流側に設けられている。変動値検出センサ64は、用紙搬送路20を搬送される用紙の厚さにより変動する値を検出し、この検出した値を出力値として制御部60に対して出力する。さらに、用紙搬送路20には、用紙検知センサ66が、変動値検出センサ64とレジストロール40との間に設けられている。用紙検知センサ66は、例えば透過型フォトセンサや反射型フォトセンサであり、用紙検知センサ66の近傍を用紙が通過したことを示す信号を制御部60に対して出力する。例えば、用紙検知センサ66は、用紙通過時にはオン信号を出力し、用紙非通過時にはオフ信号を出力する。したがって、制御部60は、用紙検知センサ66からの出力信号に基づいて用紙通過時と用紙非通過時とを判定し、用紙通過時及び用紙非通過時のそれぞれにおいて変動値検出センサ64からの出力値を入力する。
【0027】
図2は、変動値検出センサ64及び搬送ロール38を中心とした具体的な構成を示す図である。
図2に示すように、画像形成装置10は、駆動モータ76、この駆動モータ76によりギア78を介して駆動されるロールシャフト70a、このロールシャフト70aに設けられ画像形成装置10の本体に固定されたベアリング68、駆動モータ76により駆動される駆動ロールとしての搬送ロール38a、この搬送ロール38aに対向して設けられ搬送ロール38aの回転に従って回転する従動ロールとしての搬送ロール38b、この搬送ロール38bの回転軸であるロールシャフト70b、及びこのロールシャフト70bを指示する揺動規制部材98をさらに有する。
【0028】
ロールシャフト70b及び搬送ロール38bは、搬送ロール38aと搬送ロール38bとの間での用紙のニップにより、図中の矢印に示されるように、揺動規制部材98に従って用紙の厚さ方向に移動する。
【0029】
変動値検出センサ64は、変位センサ72及びセンサアクチュエータ74を有する。センサアクチュエータ74は、ロールシャフト70b及び搬送ロール38bの移動に伴って揺動する。変位センサ72は、センサアクチュエータ74の移動量(即ち、搬送ロール38bの用紙の厚さ方向の移動量)により変動する出力値を検出して制御部60に対して出力する。
【0030】
図3は、変動値検出センサ64の構成を模式的に示す図であって、図3(A)は側面図を示し、図3(B)は上面図を示す。
図3(A)及び図3(B)に示すように、ロールシャフト70bにはベアリング68が設けられており、このベアリング68にはホルダー80が被せられている。センサアクチュエータ74は、ホルダー80に当接するように設けられている。したがって、ホルダー80が、ロールシャフト70b及びベアリング68とともに上下方向に移動すると、この移動に伴って、センサアクチュエータ74は、アクチュエータ回転軸82を中心にして移動する。
【0031】
変位センサ72は、例えばLEDなどの発光素子84及びこの発光素子84に対向して設けられた受光素子86を有する。受光素子86は、発光素子84から発せられた光を受け付け、その光量(受光量)を出力する。即ち、変位センサ72は、受光素子86の受光量を出力値として制御部60に対して出力する。
【0032】
発光素子84と受光素子86との間には、センサアクチュエータ74の一部が位置する。したがって、発光素子84から発せられた光の一部は、センサアクチュエータ74により遮られる。このため、受光素子86の受光量は、センサアクチュエータ74の位置に従って変動する。
【0033】
本実施形態では、用紙が、用紙搬送路20を搬送されて搬送ロール38aと搬送ロール38bとの間を通過している間、この用紙の厚さに応じて、搬送ロール38bが上方へ移動される。センサアクチュエータ74は、この搬送ロール38bの移動に伴って、受光素子86の受光量が増加する方向(遮断量が減少する方向)に移動される。したがって、変動値検出センサ64は、用紙非通過時には所定値を出力し、用紙通過時には当該所定値より大きい値を出力する。また、変動値検出センサ64は、用紙が厚いほど大きい値を出力する。
【0034】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置10において、制御部60のメモリ100に記憶されるデータの内容及び制御部60による重送判定処理を示す図である。
図4(A)は、用紙検知センサ66及び変動値検出センサ64の出力値を示すタイミングチャートである。図4(A)に示すように、用紙検知センサ66は、用紙搬送路20の用紙検知位置を用紙が通過している場合(用紙通過時)にはオン信号を出力し、当該用紙検知位置を用紙が通過していない場合(用紙非通過時)にはオフ信号を出力する。
【0035】
変動値検出センサ64は、用紙の厚さにより変動する出力値を制御部60に対して出力する。制御部60は、用紙検知センサ66の出力値の変化とこの変化からの経過時間とに応じて、変動値検出センサ64からの出力値をメモリ100に記憶させる。
【0036】
より具体的には、制御部60は、用紙搬送路20の用紙検知位置を用紙が通過してからT0時間後、即ち、用紙検知センサ66の出力値がオン信号からオフ信号に変化してからT0時間後、変動値検出センサ64からの出力値をメモリ100に記憶させる。ここで記憶されるデータを、用紙なし時出力値V0(第1の出力値)という。このように、用紙なし時出力値V0は、用紙が用紙検知位置を搬送される前であってその前の用紙が通過した後に、用紙が用紙検知位置にない状態で検出される値である。制御部60は、複数の用紙なし時出力値V0を変動値検出センサ64から取得し、その平均値を算出してメモリ100に記憶させる。例えば、n回目の用紙なし時出力値V0は、複数の出力値の平均値である。
【0037】
また、制御部60は、用紙搬送路20の用紙検知位置を用紙が通過し始めてからT1時間後、即ち、用紙検知センサ66の出力値がオフ信号からオン信号に変化してからT1時間後、変動値検出センサ64からの出力値をメモリ100に記憶させる。ここで記憶されるデータを、用紙あり時出力値V1(第2の出力値)という。制御部60は、複数の用紙あり時出力値V1を変動値検出センサ64から取得し、その平均値を算出してメモリ100に記憶させる。
【0038】
図4(B)は、メモリ100に記憶されるデータの内容及び各重送判定処理を例示する図である。図4(B)に示すように、メモリ100には、用紙あり時出力値V1、この用紙あり時出力値V1が検出される直前の用紙なし時出力値V0、複数(例えば6回分)の用紙厚データd、及びこの複数の用紙厚データの平均値dが記憶される。
【0039】
重送判定処理において、まず、制御部60は、用紙なし時出力値V0を取得し、メモリ100に記憶させる。次に、制御部60は、用紙あり時出力値V1を取得し、メモリ100に記憶させる。制御部60は、用紙あり時出力値V1と用紙なし時出力値V0との差分から、用紙厚データdを算出する。さらに、制御部60は、過去5回分の用紙厚データの平均値dを算出し、算出された用紙厚データdと過去の用紙厚データとの平均値dとに基づいて、用紙の重送の有無を判定する。具体的には、制御部60は、過去の用紙厚データの平均値dに所定値αを掛けた結果を閾値とし、用紙厚データdが閾値より小さい場合には用紙の重送はないと判定し、用紙厚データdが閾値より大きい場合には重送が発生したと判定する。
【0040】
例えば、図4(B)に示されるn−1回目の重送判定処理では、用紙なし時出力値V0n−1は71であり、用紙あり時出力値V1n−1は81である。この場合、用紙厚データdn−1は、81−71=10である。また、過去の用紙厚データ(dn−6〜dn−2の5回分)の平均値dは、10.8と求められる。ここでα=1.5とすると、閾値は、10.8×1.5=16.2である。したがって、用紙厚データdn−1(10)は、閾値(16.2)より小さいので、制御部60は重送はないと判定する。
【0041】
また例えば、n回目の重送判定処理では、用紙なし時出力値V0は68であり、用紙あり時出力値V1は78である。この場合、用紙厚データdは10である。また、過去の用紙厚データ(dn−5〜dn−1の5回分)の平均値dは、10.8と求められる。したがって、n−1回目の判定処理と同様に、閾値は16.2であり、用紙厚データd(10)は閾値(10.8)より小さいので、制御部60は重送はないと判定する。
【0042】
また例えば、n+1回目の重送判定処理では、用紙なし時出力値V0n+1は65であり、用紙あり時出力値V1n+1は86である。この場合、用紙厚データdn+1は21である。また、過去の用紙厚データ(dn−4〜dの5回分)の平均値dは、10.6と求められる。閾値は10.6×1.5=15.9であり、用紙厚データdn+1(21)は閾値(10.6)より大きいので、制御部60は重送が発生したと判定する。
【0043】
制御部60は、重送が発生したと判定した場合、重送はないと判定した場合とは異なって、重送が発生した場合に対応する例外処理を実行する。この例外処理には、メモリ100の内容(又はその一部)のクリアなどが含まれる。重送が発生した場合、例えば、制御部60は、用紙なし時出力値V0、用紙あり時出力値V1、及びV0とV1とから算出される用紙厚データdをクリアし、印刷ジョブを停止する。
【0044】
また、制御部60は、先行紙重送を判定してもよい。ここで、先行紙重送の判定処理は、n回目の判定処理において、それ以前の重送の有無を判定するものである。例えば、制御部60は、算出された用紙厚データdに所定値αを掛けた結果を閾値とし、過去の用紙厚データの平均値dが閾値より小さい場合には先行紙重送はないと判定し、過去の用紙厚データの平均値dが閾値より大きい場合には先行紙重送が発生したと判定する。制御部60は、先行紙重送が発生したと判定した場合、先行紙重送が発生した場合に対応する例外処理を実行する。
【0045】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S10)を示すフローチャートである。
図5に示すように、ステップ100(S100)において、画像形成装置10の制御部60は、上述したタイミングで取得された用紙あり時出力値V1とその直前の用紙なし時出力値V0との差分の絶対値を算出し、算出された値を用紙厚データdとしてメモリ100に記憶させる。
【0046】
図6は、本実施形態に係る画像形成装置10の重送検知処理(S20)を示すフローチャートである。なお、図6では、n回目の重送検知処理を例として説明する。また、以降のフローチャートにおいても、n回目の処理を例とする。
図6に示すように、画像形成装置10の制御部60は、用紙検知センサ66からの出力値がオフ信号であるか否かを判定する。画像形成装置10は、出力値がオフ信号である場合にはS202の処理に進み、そうでない場合にはS200の処理に戻る。なお、印刷ジョブが開始された直後(例えばn=1である場合)、用紙検知センサ66からの出力値がオフ信号ではない場合、制御部60は、前回処理時の用紙が残留していることを示す残留エラーを検知し、残留エラーに対応する処理を行う。
【0047】
ステップ202(S202)において、制御部60は、時間カウンタtを初期化する(t=0)。
ステップ204(S204)において、制御部60は、時間カウンタtが既定時間T0を超えたか否かを判定する。画像形成装置10は、tがT0を超えた場合にはS208の処理に進み、そうでない場合にはS206の処理に進む。
【0048】
ステップ206(S206)において、制御部60は、時間カウンタtを1増加させ、S204の処理に戻る。
ステップ208(S208)において、制御部60は、変動値検出センサ64からの出力値を取得し、用紙なし時出力値V0としてメモリ100に記憶させる。なお、V0は、取得された複数の出力値の平均値である。
【0049】
ステップ210(S210)において、制御部60は、用紙検知センサ66からの出力値がオン信号であるか否かを判定する。画像形成装置10は、出力値がオン信号である場合にはS212の処理に進み、そうでない場合にはS210の処理に戻る。
【0050】
ステップ212(S212)において、制御部60は、時間カウンタtを初期化する(t=0)。
ステップ214(S214)において、制御部60は、時間カウンタtが既定時間T1を超えたか否かを判定する。画像形成装置10は、tがT1を超えた場合にはS218の処理に進み、そうでない場合にはS216の処理に進む。
【0051】
ステップ216(S216)において、制御部60は、時間カウンタtを1増加させ、S214の処理に戻る。
ステップ218(S218)において、制御部60は、変動値検出センサ64からの出力値を取得し、用紙あり時出力値V1としてメモリ100に記憶させる。なお、V1は、取得された複数の出力値の平均値である。
【0052】
V0及びV1が取得されると、制御部60は、用紙厚データの算出処理S10(図5)を実行する。用紙厚データの算出処理S10の終了後、ステップ220(S220)において、制御部60は、過去の用紙厚データの平均値dを算出し、メモリ100に記憶させる。
【0053】
ステップ222(S222)において、制御部60は、用紙厚データdと、過去の用紙厚データの平均値d及びαから算出された閾値とを比較し、用紙厚データdが閾値より小さいか否かを判定する。画像形成装置10は、用紙厚データdが閾値より小さい場合にはS224の処理に進み、そうでない場合にはS230の処理に進む。
【0054】
ステップ224(S224)において、制御部60は、過去の用紙厚データの平均値dと、用紙厚データd及びαから算出された閾値とを比較し、用紙厚データの平均値dが閾値より小さいか否かを判定する。画像形成装置10は、用紙厚データの平均値dが閾値より小さい場合にはS226の処理に進み、そうでない場合にはS232の処理に進む。
【0055】
ステップ226(S226)において、制御部60は、印刷ジョブが終了したか否かを判定する。画像形成装置10は、印刷ジョブが終了した場合にはS228の処理に進み、そうでない場合にはS200の処理に戻る。
【0056】
ステップ228(S228)において、制御部60は、メモリ100に記憶されている用紙なし時出力値V0及び用紙あり時出力値V1をクリアし、重送判定処理を終了する。
【0057】
ステップ230(S230)では、制御部60は、重送が発生した場合に対応する例外処理を実行する。具体的には、制御部60は、タッチパネルや液晶ディスプレイなどの表示装置(不図示)に重送が発生した旨のメッセージを表示したり、当該メッセージを含む電子メールを管理者など所定のユーザに対して送信するなどして重送の発生を通知する。さらに、制御部60は、印刷ジョブを停止し、メモリ100に記憶されている用紙なし時出力値V0、用紙あり時出力値V1、及びV0とV1とから算出される用紙厚データdをクリアする。
【0058】
ステップ232(S232)では、制御部60は、先行紙重送が発生した場合に対応する例外処理を実行する。制御部60は、重送が発生した場合と同様にして、先行紙重送の発生を通知し、印刷ジョブを停止し、メモリ100に記憶されている所定のデータをクリアする。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置10は、用紙通過時の出力値とその直前の用紙非通過時の出力値とに基づいて用紙の厚さを計測する。したがって、画像形成装置10は、出力値が取得される以前に、温度など周囲環境が変化した場合においても、この変化に影響を受けずに用紙の厚さを計測することができる。また、画像形成装置10は、周囲環境の変化の影響を受けずに計測された用紙の厚さに基づいて重送の有無を判定することができる。
【0060】
次に、本発明の第2の実施形態〜第5の実施形態に係る画像形成装置10を説明する。
本発明の第2の実施形態〜第5の実施形態に係る画像形成装置10は、変動値検出センサ64の出力値が、周囲環境の変化など用紙の厚さとは異なる要因の影響を受けているか否かを判定した上で用紙厚データを算出する点で、第1の実施形態に係る画像形成装置10とは異なる。なお、以降、用紙の厚さとは異なる要因の影響を受けていることを、出力変動の影響を受けているとも表現する。
【0061】
本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置10は、過去の用紙なし時出力値V0をメモリ100に記憶させ、この過去の用紙なし時出力値V0の平均値と、用紙が通過する直前の用紙なし時出力値V0とに基づいて、変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けているか否かを判定する。
【0062】
図7は、本実施形態に係る画像形成装置10において制御部60のメモリ100に記憶されるデータの内容及び制御部60による各重送判定処理を例示する図である。
図7に示すように、メモリ100には、図4(B)に示されるデータに加えて、過去の複数(例えば4回分)の用紙なし時出力値V0が、さらに記憶される。
【0063】
重送判定処理において、制御部60は、用紙なし時出力値V0及び用紙あり時出力値V1を取得しメモリ100に記憶させると、出力変動の有無の判定処理を行う。具体的には、制御部60は、メモリ100に記憶されている過去複数回分の用紙なし時出力値V0の平均値を算出し、この平均値と今回取得された用紙なし時出力値V0との差分を算出し、算出値が予め決められた既定の閾値βより小さいか否か判定し、算出値が閾値βより小さい場合には変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けていないと判定し、そうでない場合には変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けていると判定する。
【0064】
制御部60は、用紙あり時出力値V1と、メモリ100に記憶されている用紙なし時出力値V0の平均値との差分から、用紙厚データdを算出する。より具体的には、出力変動の影響を受けていないと判定された場合、制御部60は、メモリ100に既に記憶されている複数回分の用紙なし時出力値V0及びメモリ100に今回記憶された用紙なし時出力値V0の平均値を算出する。また、出力変動の影響を受けていると判定された場合、制御部60は、メモリ100に既に記憶されている複数回分の用紙なし時出力値をクリアし、メモリ100に今回記憶された用紙なし時出力値V0を用いる。
【0065】
例えば、図7に示されるn−1回目の重送判定処理では、用紙なし時出力値V0n−1は70であり、用紙あり時出力値V1n−1は81である。また、用紙なし時出力値V0n−5〜V0n−2は、それぞれ75,73,71,71である。この場合、既に記憶されている出力値V0n−5〜V0n−2の平均値は、72.3である。したがって、この平均値と用紙なし時出力値V0n−1との差分の絶対値は、72.3−70=2.3である。ここで閾値β=2.0とすると、2.3>閾値β(2.0)であるので、制御部60は、変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けていると判定する。
【0066】
この場合、制御部60は、メモリ100に記憶されているV0n−5〜V0n−2をクリアする。ここで、用紙厚データdn−1は、81−70=11と求められる。また、過去の用紙厚データ(dn−6〜dn−2の5回分)の平均値dは、10.7と求められる。α=1.5とすると、閾値は、10.7×1.5=16.1である。したがって、用紙厚データdn−1(11)は、閾値(16.1)より小さいので、制御部60は重送はないと判定する。
【0067】
また例えば、n回目の重送判定処理では、用紙なし時出力値V0は69であり、用紙あり時出力値V1は80である。既に記憶されている出力値V0(本例ではV0n−1のみ)の平均値は70であるので、この平均値と用紙なし時出力値V0との差分の絶対値は、70−69=1であり、閾値βより小さい。よって、制御部60は、変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けていないと判定する。
【0068】
この場合、制御部60は、用紙あり時出力値V1(80)と、メモリ100に記憶されている用紙なし時出力値V0(70,69)の平均値との差分から、用紙厚データdが10.5であると算出する。また、過去の用紙厚データの平均値は、10.8と求められる。α=1.5とすると、閾値は、10.8×1.5=16.2である。したがって、用紙厚データd(10.5)は、閾値(16.2)より小さいので、制御部60は重送はないと判定する。
【0069】
また例えば、n+1回目の重送判定処理では、用紙なし時出力値V0n+1は68であり、用紙あり時出力値V1n+1は89である。この場合、既に記憶されている出力値V0(本例ではV0n−1,V0)の平均値は69.5であるので、この平均値と用紙なし時出力値V0n+1との差分の絶対値は、69.5−68=1.5であり、閾値βより小さい。よって、制御部60は、変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けていないと判定する。
【0070】
この場合、制御部60は、用紙あり時出力値V1n+1(89)と、メモリ100に記憶されている用紙なし時出力値V0(70,69,68)の平均値との差分から、用紙厚データdが20であると算出する。また、過去の用紙厚データの平均値は、10.8と求められる。α=1.5とすると、閾値は、10.8×1.5=16.2である。したがって、用紙厚データd(20)は、閾値(16.2)より大きいので、制御部60は重送が発生したと判定する。
【0071】
図8は、本実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S30)を示すフローチャートである。なお、図8に示された各処理のうち、図5に示された処理と実質的に同一のものには同一の符号が付されている。
図8に示すように、ステップ300(S300)において、画像形成装置10の制御部60は、メモリ100に記憶されているn−1回目から過去a回の用紙なし時出力値V0n−a〜V0n−1の平均値を算出する。
【0072】
ステップ302(S302)において、制御部60は、算出された平均値と用紙なし時出力値V0との差分の絶対値が閾値βより小さいか否かを判定する。画像形成装置10は、平均値が閾値βより小さい場合にはS304の処理に進み、そうでない場合にはS306の処理に進む。
【0073】
ステップ304(S304)において、制御部60は、取得された用紙あり時出力値V1と、メモリ100に記憶されている用紙なし時出力値V0n−a〜V0との差分の絶対値を算出し、算出された値を用紙厚データdとしてメモリ100に記憶させる。
【0074】
ステップ306(S306)において、制御部60は、メモリ100に記憶されているn−1回目から過去a回の用紙なし時出力値V0n−a〜V0n−1をクリアする。さらに、S100の処理で、制御部60は、用紙あり時出力値V1とその直前の用紙なし時出力値V0との差分の絶対値を算出し、算出された値を用紙厚データdとしてメモリ100に記憶させる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置10は、既に記憶されている過去の用紙非通過時の出力値を用いて、変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けているか否かを判定し、判定結果に応じて異なる手法で用紙厚データを算出する。したがって、画像形成装置10は、出力変動の影響を受けている場合には、直近のデータだけを用いて用紙の厚さを計測することができる。
【0076】
次に、本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置10を説明する。
本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置10は、変動値検出センサ64に通電してからの経過時間に基づいて、変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けているか否かを判定する点で、第2の実施形態に係る画像形成装置10とは異なる。
【0077】
図9は、本実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S40)を示すフローチャートである。なお、図9に示された各処理のうち、図8に示された処理と実質的に同一のものには同一の符号が付されている。
図9に示すように、ステップ400(S400)において、画像形成装置10の制御部60は、変動値検出センサ64に通電してから既定時間T3が経過したか否かを判定する。画像形成装置10は、既定時間T3が経過した場合にはS304の処理に進み、そうでない場合にはS306の処理に進む。以降、第2の実施形態に係る画像形成装置10と同様にして、用紙厚データdが算出され、メモリ100に記憶される。
【0078】
なお、本実施形態に係る画像形成装置10における判定基準は、第2の実施形態に係る画像形成装置10に併せて設けられてもよい。具体的には、S400の処理の判断基準が、第2の実施形態に係る画像形成装置10に設けられる。例えば、S400の処理が、図8に示される用紙厚データの算出処理S30において、S300の前処理として追加される。この場合、画像形成装置10は、まずS400の処理を実行し、既定時間T3が経過したと判定された場合にはS300の処理に進み、そうでない場合にはS306の処理に進む。
【0079】
したがって、本実施形態に係る画像形成装置10は、変動値検出センサ64に通電してから所定時間が経過していない場合には、直近のデータだけを用いて用紙の厚さを計測するので、電源供給直後に周辺環境の温度変化が顕著である場合においても、ばらつきが少ない状態で用紙の厚さを計測することができる。
【0080】
次に、本発明の第4の実施形態に係る画像形成装置10を説明する。
本発明の第4の実施形態に係る画像形成装置10は、変動値検出センサ64の近傍に設けられた温度センサ(不図示)を有し、この温度センサにより検出される温度の変化量に基づいて、変動値検出センサ64の出力値が出力変動の影響を受けているか否かを判定する点で、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る画像形成装置10とは異なる。
【0081】
図10は、本実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S50)を示すフローチャートである。なお、図10に示された各処理のうち、図8に示された処理と実質的に同一のものには同一の符号が付されている。
図10に示すように、ステップ500(S500)において、画像形成装置10の制御部60は、温度センサから出力される温度情報を受け付け、基準時(例えば、前回判定時)から既定時間T4が経過後の温度変化量が予め決められた閾値以上であるかないかを判定する。画像形成装置10は、温度変化量が閾値以上である場合にはS304の処理に進み、そうでない場合にはS306の処理に進む。以降、第2の実施形態に係る画像形成装置10と同様にして、用紙厚データdが算出され、メモリ100に記憶される。
【0082】
なお、本実施形態に係る画像形成装置10における判定基準は、第2の実施形態及び第3の実施形態に係る画像形成装置10に併せて設けられてもよい。具体的には、S500の処理の判断基準が、第2の実施形態に係る画像形成装置10に設けられる。例えば、S500の処理は、時間T4が経過する毎に実行される。
【0083】
このように、本実施形態に係る画像形成装置10は、温度センサを有するので、変動値検出センサ64近傍の温度を、出力変動の影響の有無の判定に用いることができる。したがって、本実施形態に係る画像形成装置10は、変動値検出センサ64近傍の温度変化による影響を低減することができる。
【0084】
次に、本発明の第5の実施形態に係る画像形成装置10を説明する。
本発明の第5の実施形態に係る画像形成装置10は、過去の所定時間内に変動値検出センサ64により検出された値を用いて用紙厚データを算出する点で、第1の実施形態〜第4の実施形態に係る画像形成装置10とは異なる。
【0085】
図11は、本実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S50)を示すフローチャートである。
図11に示すように、ステップ600(S600)において、画像形成装置10の制御部60は、n回目の用紙なし時出力値V0が取得された時点(用紙あり時出力値V1が取得された時点でもよい)から過去T5時間以内に取得された用紙なし時出力値V0n−b+1〜V0の平均値を算出する。
【0086】
ステップ602(S602)において、制御部60は、取得された用紙あり時出力値V1と、算出された平均値との差分の絶対値を算出し、算出された値を用紙厚データdとしてメモリ100に記憶させる。
【0087】
このように、本実施形態に係る画像形成装置10は、限定された時間内に取得された用紙なし時出力値V0を用いて用紙厚データを算出するので、これらの用紙なし時出力値V0が取得される以前に、温度など周囲環境が変化した場合においても、この変化に影響を受けずに用紙の厚さを計測することができる。
【0088】
次に、本発明の第6の実施形態に係る画像形成装置10を説明する。
本発明の第6の実施形態に係る画像形成装置10は、用紙なし時出力値V0を記憶せず、用紙あり時出力値V1だけを記憶して用紙厚データを算出する点で、第1の実施形態〜第5の実施形態に係る画像形成装置10とは異なる。
【0089】
図12は、本実施形態に係る画像形成装置10において制御部60のメモリ100に記憶されるデータの内容及び制御部60による各重送判定処理を例示する図である。
図12に示すように、メモリ100には、用紙あり時出力値V1、過去の複数(例えば4回分)の用紙あり時出力値V1及びこの過去の複数の用紙あり時出力値V1の平均値が記憶される。
【0090】
重送判定処理において、制御部60は、用紙あり時出力値V1を取得しメモリ100に記憶させると、出力変動の有無の判定処理を行う。具体的には、制御部60は、メモリ100に記憶されている過去複数回分(本例では4回分)の用紙あり時出力値V1の平均値を算出し、この平均値と今回取得された用紙あり時出力値V1との差分の絶対値を算出し、算出された値が予め決められた既定の閾値より小さいか否か判定し、算出値が閾値より小さい場合には変動値検出センサの出力値が出力変動の影響を受けていないと判定し、そうでない場合には変動値検出センサの出力値が出力変動の影響を受けていると判定する。
【0091】
制御部60は、用紙あり時出力値V1と、既定の用紙なし時出力値V0との差分から、用紙厚データdを算出する。より具体的には、出力変動の影響を受けていないと判定された場合、制御部60は、メモリ100に既に記憶されている複数回分の用紙あり時出力値V1及びメモリ100に今回記憶された用紙あり時出力値V1の平均値を算出し、この算出された値と既定の用紙なし時出力値V0との差分を算出する。また、出力変動の影響を受けていると判定された場合、制御部60は、メモリ100に既に記憶されている複数回分の用紙あり時出力値をクリアし、メモリ100に今回記憶された用紙あり時出力値V1と既定の用紙なし時出力値V0との差分を算出する。
【0092】
したがって、本実施形態に係る画像形成装置10は、出力変動の影響を受けている場合には、直近のデータだけを用いて用紙の厚さを計測することができる。
【0093】
本実施形態に係る画像形成装置10における出力変動の影響の判定基準は、第1の実施形態に係る画像形成装置10に併せて設けられてもよい。この場合、画像形成装置10の制御部60は、用紙なし時出力値V0及び用紙あり時出力値V1の双方を取得し、既定の用紙なし時出力値V0の代わりに、取得された用紙なし時出力値V0を用いて用紙厚データdを算出する。
【0094】
次に、本発明の第7の実施形態に係る画像形成装置10を説明する。
本発明の第7の実施形態に係る画像形成装置10は、第1の実施形態〜第6の実施形態に係る画像形成装置10において、変動値検出センサ64が変動値検出センサ88に置き換えられた構成を有する。
【0095】
図13は、変動値検出センサ88の構成を模式的に示す図であって、図13(A)は側面図を示し、図13(B)は上面図を示す。
図13(A)及び図13(B)に示すように、変動値検出センサ88は、ホルダー80に当接するセンサアクチュエータ74、アクチュエータ回転軸82及び変位センサ90を有する。変位センサ90は、センサアクチュエータ74の移動量(アクチュエータ回転軸82を中心として回転する回転量)を検出し、検出された値を制御部60に対して出力する。
【0096】
例えば、図13で示される構成では、センサアクチュエータ74は、搬送ロール38bの上方への移動に伴って、反時計回りの方向へ移動される。当該方向を正方向とすると、変動値検出センサ88は、用紙非通過時には所定値を出力し、用紙通過時には当該所定値より大きい値を出力する。また、変動値検出センサ88は、用紙が厚いほど大きい値を出力する。
【0097】
次に、本発明の第8の実施形態に係る画像形成装置10を説明する。
本発明の第8の実施形態に係る画像形成装置10は、第1の実施形態〜第6の実施形態に係る画像形成装置10において、変動値検出センサ64が変動値検出センサ92に置き換えられた構成を有する。
【0098】
図14は、本発明の第8の実施形態に係る画像形成装置10を示す図である。なお、図14に示された各構成のうち、図1に示された構成と実質的に同一のものには同一の符号が付されている。
図14に示すように、本実施形態に係る画像形成装置10の用紙搬送路20には、変動値検出センサ64の代わりに、変動値検出センサ92が設けられている。変動値検出センサ92は、用紙搬送路20を搬送される用紙に当接可能に配置されており、当接する用紙の厚さにより変動する値を検出し、この検出した値を出力値として制御部60に対して出力する。
【0099】
図15は、変動値検出センサ92及び搬送ロール38を中心とした具体的な構成を示す図である。なお、図15に示された各構成のうち、図2に示された構成と実質的に同一のものには同一の符号が付されている。
図15に示すように、変動値検出センサ92は、センサアクチュエータ74及び変位センサ90を有し、センサアクチュエータ74の反回転軸側の端部が、用紙搬送路20の上面を構成するフレーム94bに設けられた開口部96を介して用紙搬送路20に位置するように設けられている。
【0100】
図16は、変動値検出センサ92の構成を模式的に示す側面図である。
図16に示すように、変動値検出センサ92は、センサアクチュエータ74の反回転軸側の端部が、用紙搬送路20の下面を構成するフレーム94aに当接するように設けられている。変位センサ90は、センサアクチュエータ74の移動量を検出し、検出された値を制御部60に対して出力する。
【0101】
例えば、図16で示される構成では、センサアクチュエータ74は、搬送される用紙に当接し、この用紙の厚さに応じて、反時計回りの方向へ移動される。当該方向を正方向とすると、変動値検出センサ92は、用紙非通過時には所定値を出力し、用紙通過時には当該所定値より大きい値を出力する。また、変動値検出センサ92は、用紙が厚いほど大きい値を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10の変動値検出センサ64及び搬送ロール38を中心とした具体的な構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10の変動値検出センサ64の構成を模式的に示す図であって、図3(A)は側面図を示し、図3(B)は上面図を示す。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10において、制御部60のメモリ100に記憶されるデータの内容及び制御部60による重送判定処理を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S10)を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10の重送検知処理(S20)を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置10において制御部60のメモリ100に記憶されるデータの内容及び制御部60による各重送判定処理を例示する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S30)を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S40)を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S50)を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る画像形成装置10の用紙厚データの算出処理(S50)を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第6の実施形態に係る画像形成装置10において制御部60のメモリ100に記憶されるデータの内容及び制御部60による各重送判定処理を例示する図である。
【図13】本発明の第7の実施形態に係る画像形成装置10の変動値検出センサ88の構成を模式的に示す図であって、図13(A)は側面図を示し、図13(B)は上面図を示す。
【図14】本発明の第8の実施形態に係る画像形成装置10を示す図である。
【図15】本発明の第8の実施形態に係る画像形成装置10の変動値検出センサ92及び搬送ロール38を中心とした具体的な構成を示す図である。
【図16】本発明の第8の実施形態に係る画像形成装置10の変動値検出センサ92の構成を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0103】
10 画像形成装置
12 画像形成部
20 用紙搬送路
38 搬送ロール
40 レジストロール
60 制御部
62 レジストセンサ
64 変動値検出センサ
66 用紙検知センサ
68 ベアリング
70 ロールシャフト
72 変位センサ
74 センサアクチュエータ
80 ホルダー
82 アクチュエータ回転軸
84 発光素子
86 受光素子
88 変動値検出センサ
90 変位センサ
92 変動値検出センサ
94 フレーム
96 開口部
98 揺動規制部材
100 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、
搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された第1の出力値と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値とに基づいて、記録媒体の厚さを算出する算出手段と
を有する記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項2】
前記出力値検出手段により検出された第1の出力値を記憶する出力値記憶手段をさらに有し、
前記算出手段は、前記出力値検出手段により検出される出力値が記録媒体の厚さとは異なる要因の影響を受けているか否かを判定し、影響を受けていない場合、前記出力値記憶手段に記憶されている第1の出力値にさらに基づいて記録媒体の厚さを算出する
請求項1に記載の記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記出力値検出手段に通電されてから時間に基づいて判定する
請求項2に記載の記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記出力値記憶手段に記憶されている第1の出力値から算出された値と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出される第1の出力値とに基づいて判定する
請求項2又は3に記載の記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項5】
温度を検出する温度検出手段をさらに有し、
前記算出手段は、前記温度検出手段により検出された温度に基づいて判定する
請求項2乃至4のいずれかに記載の記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項6】
前記出力値検出手段により検出された第1の出力値を記憶する出力値記憶手段をさらに有し、
前記算出手段は、前記出力値記憶手段に記憶されており、過去所定時間内に検出された第1の出力値にさらに基づいて、記録媒体の厚さを算出する
請求項1に記載の記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項7】
前記出力値検出手段は、揺動部材を有し、搬送路の既定位置を搬送される記録媒体に当接して移動する揺動部材の移動量を検出する
請求項1乃至6のいずれかに記載の記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項8】
駆動ロールと、記録媒体の厚さ方向に移動可能に設けられ、当該駆動ロールに従って回転する従動ロールとを含む搬送手段をさらに有し、
前記出力値検出手段は、前記搬送手段の従動ロールの移動量を検出する
請求項1乃至6のいずれかに記載の記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項9】
搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、
搬送路の既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された出力値を記憶する出力値記憶手段と、
前記出力値記憶手段により記憶されている出力値と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出される出力値とに基づいて記録媒体の厚さを算出する算出手段と
を有する記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項10】
搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、
搬送路の既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値を記憶する第2の出力値記憶手段と、
前記出力値検出手段により検出される出力値が記録媒体の厚さとは異なる要因の影響を受けているか否かを判定し、影響を受けていない場合、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された第1の出力値と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値とに基づいて記録媒体の厚さを算出し、影響を受けている場合、前記第2の出力値記憶手段に記憶されている第2の出力値と、搬送路の既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出される第2の出力値とに基づいて記録媒体の厚さを算出する算出手段と
を有する記録媒体の厚さ計測装置。
【請求項11】
搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、
搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された第1の出力値と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値とに基づいて、記録媒体の厚さを算出して重送の有無を判定する重送判定手段と
を有する記録媒体の重送検知装置。
【請求項12】
搬送路の既定位置を搬送される記録媒体の厚さにより変動する出力値を検出する出力値検出手段と、
搬送路の既定位置を記録媒体が搬送される前であってその前の記録媒体が通過した後に前記出力値検出手段により検出された第1の出力値と、当該既定位置を記録媒体が搬送されている間に前記出力値検出手段により検出された第2の出力値とに基づいて、記録媒体の厚さを算出して重送の有無を判定する重送判定手段と
を有し、
前記重送判定手段により重送があると判定された場合、重送がないと判定された場合とは異なる処理を行う
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−249074(P2009−249074A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95963(P2008−95963)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】