説明

記録装置

【課題】縦置き設置と横置き設置が自在な記録装置において、画像記録時の紙送りを正確に行うことができる。
【解決手段】印刷時の用紙Pの送り姿勢が上下向きの起立姿勢となる縦置き設置と、当該送り姿勢が横倒し姿勢となる横置き設置と、が自在な記録装置であって、送り経路Rに沿って用紙Pを所定の送り量で送る搬送ローラー42と、搬送ローラー42の駆動に同期し、送られていく用紙Pに画像を記録する印刷部3と、設置姿勢が、縦置き設置であるか、横置き設置であるかを検出する姿勢検出機構6と、姿勢検出機構6による検出結果に応じて、送り量を補正する送り量補正手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録時の記録媒体の送り姿勢が上下向きの起立姿勢となる縦置き設置と、当該送り姿勢が横倒し姿勢となる横置き設置と、が自在な記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録装置として、キャリッジに支持された印刷ヘッドと、印刷ヘッドに対向するプラテンと、記録ヘッドの上流側に配置され、プラテンに用紙(記録媒体)を送る紙送りローラーと、記録ヘッドの下流側に配置され、プラテンから用紙を排紙する排紙ローラーと、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。この記録装置では、紙送りローラーおよび排紙ローラーによって用紙を搬送すると共に、記録ヘッドを、紙送り方向と直交する方向(主走査方向)に往復動しつつ駆動することで、用紙に印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−19204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記記録装置は、印刷時の用紙の送り姿勢が横倒し姿勢である横置き設置の装置であるが、設置面積を小さくする目的で、横置き設置に加え、当該送り姿勢が上下向きの起立姿勢である縦置き設置を自在とすることが求められている。
しかしながら、縦置き設置と横置き設置とが自在な記録装置では、装置姿勢によって、紙送り時に用紙に作用する重力方向が異なるため、ローラーによる送り量に差が生じてしまうという問題があった。例えば、縦置き設置において、起立姿勢で上向きに紙送りをすると、用紙の自重により、用紙とローラーとの間で微小なスリップが生じやすい。そのため、横置き設置に比べ、送り量が低下する傾向にある。このように、ローラーによる送り量に差が生じると、用紙を正確に紙送りすることができないので、用紙に対し適切な印刷処理ができず、また装置姿勢で印刷結果が異なってしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、縦置き設置と横置き設置が自在な記録装置において、画像記録時の紙送りを正確に行うことができる記録装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、画像記録時の記録媒体の送り姿勢が上下向きの起立姿勢となる縦置き設置と、送り姿勢が横倒し姿勢となる横置き設置と、が自在な記録装置であって、送り経路に沿って記録媒体を所定の送り量で送る媒体送り手段と、媒体送り手段の駆動に同期し、送られていく記録媒体に画像を記録する画像記録手段と、設置姿勢が、縦置き設置であるか、横置き設置であるかを検出する設置姿勢検出手段と、設置姿勢検出手段による検出結果に応じて、送り量を補正する送り量補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、設置姿勢に応じて、設計上の目標送り量(所定の送り量)を補正することにより、設置姿勢による実送り量(実際に送られる量)との差をほぼゼロとすることができる。例えば、縦置き設置にすると実送り量が低下する場合、その低下分だけ、縦置き設置時の目標送り量を高くする補正をすることにより、低下分を相殺することができる。このように、画像記録時の紙送りを正確に行うことができるので、用紙に対し適切な画像記録処理を行うことができる。また、装置姿勢で記録結果が異なってしまうということがない。すなわち、横置き、縦置きに係わらず、印刷品質を良好に維持することができる。なお、縦置き設置時に、上向きに記録媒体を送る構成であっても良いし、縦置き設置時に、下向きに記録媒体を送る構成であっても良い。
【0008】
上記の記録装置において、送り量補正手段は、設置姿勢別の補正データを格納した制御テーブルに基づいて、送り量の補正を行うことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、予め記憶した設置姿勢別の補正データに基づいて、送り量の補正を行うため、補正時点で補正値を演算するのに比べ、演算処理を省略することができる。
【0010】
この場合、補正データには、記録媒体の種別毎の媒体別補正データが含まれていることが好ましい。
【0011】
記録媒体の種別によって、記録媒体の重量が大きく変わるため、上記送り量差も大きく変動する。
これに対し、上記の構成によれば、記録媒体の種別を加味した補正データを用いるため、記録媒体の種別を変更したとしても、紙送りを正確に行うことができる。
【0012】
また、送り経路における記録媒体の先端位置および/または後端位置を検出する媒体位置検出手段を、更に備え、補正データには、送り経路を分割した複数の分割区間に対し、先端位置および/または後端位置が属する分割区間毎の区間補正データが含まれていることが好ましい。
【0013】
送り経路上における記録媒体の位置によって、媒体送り手段にかかる記録媒体の重量(荷重)が大きく変わるため、上記送り量差も大きく変動する。
これに対し、上記の構成によれば、記録媒体の先端位置および/または後端位置を加味した補正データを用いるため、記録媒体の位置が変化しても、紙送りを正確に行うことができる。
【0014】
上記の記録装置において、送り量補正手段は、縦置き設置における単位送り量当りの実送り量と横置き設置における単位送り量当りの実送り量との関係を示した関係式に基づいて、前記送り量の補正を行うことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、補正時点で、関係式を用いて補正値を演算し、送り量の補正を行うため、予め補正データを記憶しておくのに比べ、記録容量を削減することができる。
【0016】
この場合、関係式は、記録媒体の種別毎の重量を、変数として含んでいることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、記録媒体の種別毎の重量を加味した関係式を用いるため、記録媒体の種別を変更したとしても、紙送りを正確に行うことができる。なお、記録媒体個別の重量を検出し、関係式において、記録媒体個別の重量を変数として含める構成であっても良い。
【0018】
一方、画像記録手段は、インクジェット方式で画像を記録し、設置姿勢検出手段による検出結果に基づいて、吐出データを補正する吐出データ補正手段を、更に備えたことが好ましい。
【0019】
インクジェット方式の記録処理では、インク滴を吐出着弾して、画像を形成するため、重力方向の影響を大きく受ける。例えば、縦置き設置時には、重力の影響でインク滴が目標位置からズレて着弾されてしまう(いわゆる着弾ズレ)。
これに対し、上記の構成によれば、設置姿勢に応じて、吐出データを補正することにより、設置姿勢による着弾ズレを相殺することができる。また、装置姿勢で記録結果が異なってしまうということがない。なお、他の方式で画像を記録する場合であっても、設置姿勢の影響で記録処理が変化するのであれば、当該構成を適用する。
【0020】
この場合、吐出データを補正するための補正データには、記録媒体の種別毎の媒体別補正データが含まれていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、記録媒体の種別を加味した補正データを用いるため、記録媒体の種別を変更したとしても、適切な記録処理を行うことができる。
【0022】
また、設置姿勢検出手段は、周方向における一の位置に配設された錘部と、周方向における一の位置に配設された検出マークとを有すると共に、自由回転自在に配設された回転体と、縦置き設置時に錘部の重量によって回転した回転体の検出マークに対峙するように配設され、検出マークの有無を検出する縦設置検出センサーと、を有することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、縦置き設置時には、検出マークが縦設置検出センサーに対峙するため、縦置き設置であることが検出される。一方、横置き設置時には、検出マークが縦設置検出センサーに対峙しないため、横置き設置であることが検出される。このように、一般的なジャイロ(3軸加速度センサー)を用いる場合に比して、簡単な構成によって、設置姿勢を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る記録装置を示した外観斜視図である。
【図2】記録装置の内部構造を示した側方断面図である。
【図3】(a)は、縦置き設置時の記録装置における姿勢検出機構を示した斜視図である。(b)は、横置き設置時の記録装置における姿勢検出機構を示した斜視図である。
【図4】記録装置の制御構造を示した制御ブロック図である。
【図5】縦置き設置と横置き設置との、単位送り量当りの実送り量の差の実測データを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る記録装置について説明する。この記録装置は、縦置き設置と横置き設置とが自在な記録装置である。縦置き設置は、幅(Y軸方向)に対し高さ(Z軸方向)に長くなる設置姿勢であり、起立姿勢で保持した用紙(記録媒体)を搬送しながら印刷を行い、排紙した印刷済みの用紙を起立姿勢で重ねて保持する設置姿勢である。一方、横置き設置とは、縦置き設置の状態からYZ平面において横倒しし、高さ(Z軸方向)に対し幅(Y軸方向)が長くなる設置姿勢であり、横倒し姿勢で保持した用紙を搬送しながら印刷を行い、排紙した印刷済みの用紙を横倒し姿勢で重ねて保持する設置姿勢である。なお、各図に示す通り、X軸(左右)方向、Y軸(前後)方向およびZ軸(上下)方向を規定して、以降説明する。また、以降の説明では、基本的に縦置き設置で設置した場合について説明する。
【0026】
図1は、記録装置1を示した外観斜視図である。図1に示すように、記録装置1は、X軸およびY軸方向よりもZ軸方向の寸法が大きく形成された薄型の箱状体を成す筐体2によって外観が構成されている。筐体2の上面には、操作ボタン等が配置された操作パネル21と、PC等に接続するためのケーブルが接続されるケーブル端子22と、複数のインクカートリッジ(図示省略)を着脱可能に装着するカートリッジ装着部(図示省略)を開閉するカートリッジカバー23と、が設けられている。また、筐体2の上面には、印刷が行われた用紙Pを排出するための用紙排出口24(図2参照)を開閉する用紙排出口カバー25が設けられている。なお、用紙排出口カバー25は、ユーザーによって開閉されるものであるが、仮に閉じた状態で印刷が実行された場合でも、図外の開閉機構によって自動的に開くようになっている。さらに、筐体2の前面には、後述の用紙カセット5を着脱自在に装着するためのカセット装着部26が広く設けられている。
【0027】
ここで図2を参照して、記録装置1の内部構造について詳細に説明する。図2は、記録装置1の内部構造を示した側方断面図である。図2に示すように、記録装置1は、内部構造として、カセット装着部26に対し着脱自在に装着されると共に、枚葉の用紙Pを起立状態で収容する用紙カセット5と、記録装置1の下部で用紙Pを反転させて上方に送る送り経路Rに沿って、収容された用紙Pを送る搬送部4と、送り経路Rに面し且つ記録装置1の上下中間位置に配設されると共に、用紙Pにインクジェット方式で画像を印刷(記録)する印刷部(画像記録手段)3と、搬送部4および印刷部3を支持する装置フレーム(図示省略)と、を備えている。また、記録装置1は、本装置の設置姿勢を検出する姿勢検出機構(設置姿勢検出手段)6(図3参照)と、各部を制御する制御部7(図4参照)を備えている。詳細は後述するが、制御部7は、姿勢検出機構6によって検出した設置姿勢に応じて、各部の駆動制御を行う。
【0028】
印刷部3は、装置フレームに支持されると共に、X軸方向に幅一杯に延在するキャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36と、キャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36に往復動自在に支持されたキャリッジユニット30と、キャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36に沿って、キャリッジユニット30を往復動させるキャリッジ移動機構(図示省略)と、を備えている。キャリッジガイド軸34は、キャリッジユニット30の下端を支持し、キャリッジガイド板36は、キャリッジガイド軸34を中心として回動しようとする力に抗して、キャリッジユニット30の上端を支えている。すなわち、キャリッジユニット30は、キャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36によって、傾斜姿勢に保持されている。
【0029】
キャリッジユニット30は、キャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36に往復動自在に支持された箱状のキャリッジ31と、キャリッジ31に搭載されたインクジェットヘッド32と、インクジェットヘッド32に上側から接続されると共に、インクチューブを介してインクカートリッジに接続された接続アダプター(図示省略)と、を備えている。インクジェットヘッド32は、用紙Pに対し所定のギャップを介して対面するノズル面32aを有しており、ノズル面32aには、複数色のインク滴を吐出する複数のノズル列(図示省略)が形成されている、なお、インクジェットヘッド32は、横向きに配設されており、複数のノズル列は、高さ方向に延在している。
【0030】
なお、本実施形態は、インクカートリッジがキャリッジ31から独立して設けられたいわゆるオフキャリッジ型であるが、インクカートリッジがキャリッジ31に搭載された、いわゆるオンキャリッジ型であってもよい。また、本実施形態では、キャリッジ31がX軸方向に移動しながら印刷を行ういわゆるシリアルプリンターであるが、用紙P幅をカバーする固定式のインクジェットヘッド32を用いてもよい。さらに、インクジェット方式に限らず、その他の記録方式であってもよい。
【0031】
用紙カセット5は、未印刷(未記録)の用紙Pを起立姿勢で収容するカセット本体51と、カセット本体51の外面(装置内部側)に設けられ、印刷済み(記録済み)の用紙Pを起立姿勢で且つ保持面61に重ねて保持する排紙保持部52と、を備えている。すなわち、カセット本体51から未印刷の用紙Pが供給され、排紙保持部52に印刷済みの用紙Pが排出される。そして、用紙カセット5を装置本体から取り外すことで、カセット本体51と共に、保持した印刷済みの用紙Pを取り出すことができる。また、用紙カセット5を取り外すことで記録装置1の内部が露出させることができ、ジャミング発生時の用紙P除去に寄与する。なお、図示は省略するが、用紙カセット5は、筐体2に対してZ軸方向にスライド自在に構成されており、その着脱操作は、用紙カセット5をスライドさせることで行われる。
【0032】
カセット本体51は、装着時に筐体2の前面と面一になり(図1参照)、記録装置1の外観をなすカセット筐体部53と、カセット筐体部53側を収容面とし、全体としてトレイ状に形成された本体トレイ54と、本体トレイ54の上部に対面し、用紙Pを収容する用紙収容空間を開閉する上部カバー55と、本体トレイ54の下部に位置し、用紙収容空間に収容した用紙Pの先端を揺動させる可動トレイ59と、を備えている。
【0033】
可動トレイ59は、用紙カセット5が装着された状態において用紙送り方向下流側となる本体トレイ54の下側に設けられ、いわゆるホッパーとして機能するものである。可動トレイ59は、本体トレイ54の上下方向略中央部に設けられた左右一対の揺動支点59aを中心に回動可能になっており、図外の駆動機構により揺動するようになっている。これにより、収容された用紙Pの先端を、後述の給送ローラー41に圧接させる状態(図2参照)と、離間させる状態(図示省略)と、にすることができる。
【0034】
排紙保持部52は、上部カバー55の外面(装置内部側)によって構成された保持面61と、排紙された用紙Pの下端部を受容する受容部62と、保持面61に設けられ、用紙Pを起立姿勢に保持するホルダー63と、を有している。
【0035】
搬送部4は、可動トレイ59の先端部に対向し、収容された用紙Pに転接して引き出すと共に、用紙Pを湾曲反転させて上方に送る大形の給送ローラー41と、給送ローラー41に対向し、反転送りをガイドする反転ガイド部材45および補助従動ローラー46と、給送ローラー41からの用紙Pを印刷部3に送る搬送ローラー(媒体送り手段)42と、搬送ローラー42の下流側に配設され、印刷部3に対面する案内部材33と、案内部材33の下流端部に対峙し、用紙Pの上反りを矯正する拍車状のガイドローラー43と、ガイドローラー43の下流側に配設され、用紙Pを排紙保持部52に排紙する排紙ローラー44と、を備えている。また、搬送部4は、用紙Pの先端および尾端を検出する先端検出センサーや、搬送駆動ローラー42aのエンコーダー等で構成され、送られる用紙Pの先端位置等の位置情報を取得する用紙位置取得部(媒体位置検出手段)47(図4参照)を備えている。
【0036】
給送ローラー41は、駆動ローラーで構成されており、カセット本体51から引き出した用紙Pを、外周面に沿って円弧状に搬送する。反転ガイド部材45は、給送ローラー41の外周面に対面して湾曲形状に形成され、用紙Pを外側からガイドする。補助従動ローラー46は、自由回転ローラーで構成されており、用紙Pを挟んで給送ローラー41に転接して、反転送りを補助する。
【0037】
搬送ローラー42は、前方側の搬送駆動ローラー42aと当該搬送駆動ローラー42aに転接する後方側の搬送従動ローラー42bとを有するニップローラーで構成されており、用紙Pの送り(副走査)を制御するメインローラーとして機能する。具体的には、搬送駆動ローラー42aおよび搬送従動ローラー42bにより、用紙Pを挟持しながら回転送りして案内部材33上に送り込み、さらに送り経路Rに沿って所定の送り量(後述の目標送り量)で搬送する。なお、記録装置1を当該縦置き設置した際には、印刷時(画像記録時)における用紙Pの送り姿勢が、上向きの起立姿勢となっているが、横置き設置した際には、当該送り姿勢が、横倒し姿勢となる。
【0038】
案内部材33は、送り経路Rの一部を構成すると共に、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド32との間のギャップ(ペーパーギャップ)を、所定のギャップに規制(ガイド)する(いわゆるプラテンとして機能する)。また、案内部材33には、インクジェットヘッド32と対向する位置に、縁無し印刷の際、用紙P端から外れた領域に吐出されるインクを受ける凹部が形成されている。この凹部の中には、インクを吸収するインク吸収材(図示省略)が設けられている。そして更に、案内部材33の下方には、打ち捨てられたインクを貯留する廃液タンク(図示省略)が配置されている。なお、案内部材33は、記録装置1を当該縦置き設置した際には、起立姿勢となっており、横置き設置した際には、横倒し姿勢となっている。
【0039】
排紙ローラー44は、前方側の排紙駆動ローラー44aと後方側の排紙従動ローラー44bとを有するニップローラーで構成されており、案内部材33上の用紙Pに張力を付与するテンションローラーとして機能する。なお、給送ローラー41、搬送従動ローラー42b、ガイドローラー43および排紙ローラー44(排紙駆動ローラー44aおよび排紙従動ローラー44b)は、それぞれ用紙Pの幅方向(X軸方向)に適宜の間隔で配設された複数個の分割ローラーで構成されている。
【0040】
給送ローラー41により下方へと引き出された用紙Pは、給送ローラー41、反転ガイド部材45および補助従動ローラー46によって上向きに反転させられ、搬送ローラー42へと送られる。さらに、用紙Pは、搬送ローラー42の間に挟圧搬送されて、印刷部3に送られる。印刷部3で印刷の行われた用紙Pは、ガイドローラー43および排紙ローラー44を介して、用紙カセット5の排紙保持部52に排紙される。
【0041】
印刷処理では、印刷部3は、搬送ローラー42の駆動に同期し、送られていく用紙Pに画像を記録する。具体的には、搬送ローラー42によって用紙Pを略Z軸方向に間欠送り(副走査)すると共に、インクジェットヘッド32を駆動しつつ、キャリッジ移動機構によって、キャリッジユニット30をX軸方向に往復させて(主走査)、用紙Pに画像を印刷する。
【0042】
次に図3を参照して、姿勢検出機構6について説明する。図3(a)は、縦置き設置時の記録装置1における姿勢検出機構6を示した斜視図である。図3(b)は、横置き設置時の記録装置1における姿勢検出機構6を示した斜視図である。図3に示すように、姿勢検出機構6は、YZ平面における設置姿勢を検出するYZ姿勢検出部71と、XZ平面における設置姿勢を検出するXZ姿勢検出部72と、を有しており、両検出部の検出結果に基づいて、本装置の現在の設置姿勢(XYZ空間の設置姿勢)が、縦置き設置であるか、横置き設置であるか、を検出する。
【0043】
YZ姿勢検出部71は、装置フレームに回転自在に配設され、YZ平面において自由回転する第1回転体(回転体)81と、第1回転体81に面して配設された第1光センサー(縦設置検出センサー)82と、を備えている。一方、XZ姿勢検出部72は、装置フレームに回転自在に配設され、XZ平面において自由回転する第2回転体83と、第2回転体83に面して配設された第2光センサー84と、を備えている。
【0044】
各回転体81、83は、周方向における一の位置(偏心位置)に配設された錘部91と、周方向における錘部91に対称をなす一の位置に配設された検出マーク92と、を有している。また、各検出マーク92は、開口孔により構成されている。一方、各光センサー82、84は、透過型のフォトセンサー(フォトインタラプター)で構成されており、検出マーク92に対峙すると、発光素子の光を受光素子が受光し、ON検出する構成となっている。そして、各光センサー82、84は、縦置き設置時に錘部91の重量によって回転した各回転体81、83の検出マーク92に対峙するように配設され、検出マーク92の有無を検出する。なお、各回転体81、83は、錘部91の重量によって回転自在で且つ、設置姿勢を変えたときの振動程度では、各回転体81、83の軸と軸受けとの間の摩擦により回転しないように支持されている。
【0045】
姿勢検出機構6は、両光センサー82、84が共にON検出した場合には、設置姿勢が縦置き設置であると検出する。一方、第1光センサー82がOFF検出し、第2光センサー84がON検出した場合には、縦置き設置の状態からYZ平面において横倒しになったものであるため、装置姿勢が、横置き設置であると検出する。姿勢検出機構6は、これらの検出結果(装置姿勢が、縦置き設置であるか、横置き設置であるかという情報)を、随時制御部7に送信する。なお、第2光センサー84がOFF検出した場合には、XZ平面において横倒しになった異常姿勢であるため、エラー信号を制御部7に送信する構成であっても良い。
【0046】
ここで図4を参照して制御部7について説明する。図4は、記録装置1の制御構造を示した制御ブロック図である。図4に示すように、制御部7は、用紙種別取得部101と、搬送データ生成部103と、搬送データ補正部(送り量補正手段)104と、搬送制御部105と、吐出データ生成部106と、吐出データ補正部(吐出データ補正手段)107と、吐出制御部108と、を有している。用紙種別取得部101は、ユーザーによる入力情報から、用紙Pの種別を取得する。搬送データ生成部103は、目標送り量を含む搬送データを生成する。搬送データ補正部104は、生成した搬送データを補正する。搬送制御部105は、補正後の搬送データに基づいて、搬送駆動ローラー42aの駆動を制御する。吐出データ生成部106は、インクジェットヘッド32の各ノズルの吐出タイミングを含む吐出データを生成する。吐出データ補正部107は、生成した吐出データを補正する。吐出制御部108は、補正後の吐出データに基づいて、インクジェットヘッド32の駆動を制御する。なお、目標送り量とは、設計上の目標送り量であり、搬送データ補正部104は、設計外の送り量の誤差を補正するものである。
【0047】
搬送データ補正部104は、姿勢検出機構6により検出した設置姿勢と、用紙位置取得部47により取得した用紙Pの先端位置と、用紙種別取得部101により取得した用紙Pの種別と、図5に示すような実測データから得られた搬送制御テーブル(制御テーブル)T1と、に基づいて補正を行う。図5に実測データの一例を示す。当該実測データは、縦置き設置と横置き設置との、用紙P毎の単位送り量当りの実送り量の差を示したデータである。用紙Pを上流側から、「C」、「A1」、「A2」、「A」、「A3」、「B」の区間にわけ、それぞれの領域が搬送ローラー42を通過する際の送り量の差を示すデータとなっている。よって、当該実測データに基づく搬送制御テーブルT1は、設置姿勢別の補正データを格納しており、各設置姿勢別の補正データは、用紙Pの種別毎且つ用紙Pの分割区間毎の補正データ(媒体別補正データおよび区間補正データ)を含んでいる。搬送データ補正部104は、搬送制御テーブルT1から、上記条件に該当する補正値を抽出し、抽出した補正値分だけ、目標送り量を加減算して搬送データを補正する。
【0048】
吐出データ補正部107は、姿勢検出機構6により検出した設置姿勢と、用紙種別取得部101により取得した用紙Pの種別と、実測データ(図示省略)から得られた吐出制御テーブルT2と、に基づいて、吐出データを補正する。具体的には、実測データは、縦置き設置と横置き設置との着弾位置ズレ量(吐出したインクの着弾位置のズレ量)を示したデータであり、吐出制御テーブルT2は、用紙Pの種別による吐出量、用紙Pの厚みによる吐出の距離等によって変わる着弾位置のズレ量に基づいた設置姿勢別の補正データを格納している。また、各設置姿勢別の補正データは、用紙Pの種別毎の補正データ(媒体別補正データ)を含んでいる。吐出制御テーブルT2から、用紙種別取得部101から検出した用紙の種別と、検出した設置姿勢とに該当する補正値を抽出し、補正値分だけ、吐出データを補正する。なお、吐出データは、各ノズルの吐出タイミングを有したデータであるため、吐出データ補正部107は、主走査方向の着弾ズレ量に対し、吐出タイミングを補正し、副走査方向の着弾ズレ量に対し、吐出するノズルを変更する。
【0049】
以上のような構成によれば、設置姿勢に応じて、設計上の目標送り量(所定の送り量)を補正することにより、設置姿勢による実送り量(実際に送られる量)との差をほぼゼロとすることができる。そのため、印刷時の紙送りを正確に行うことができるので、用紙Pに対し適切な印刷処理を行うことができる。また、装置姿勢で印刷結果が異なってしまうということがない。すなわち、横置き、縦置きに係わらず、印刷品質を良好に維持することができる。
【0050】
また、予め記憶した設置姿勢別の補正データに基づいて、送り量の補正を行うため、補正時点で補正値を演算するのに比べ、演算処理を省略することができる。
【0051】
さらに、用紙Pの種別を加味した補正データを用いるため、用紙Pの種別を変更したとしても、紙送りを正確に行うことができる。
【0052】
またさらに、用紙Pの先端位置を加味した補正データを用いるため、用紙Pの位置が変化しても、紙送りを正確に行うことができる。
【0053】
また、吐出データ補正部107により、設置姿勢に応じて、吐出データを補正することにより、設置姿勢による着弾ズレを相殺することができる。また、装置姿勢で記録結果が異なってしまうということがない。
【0054】
さらに、姿勢検出機構6を、回転体81、83と光センサー82、84とによって構成することにより一般的なジャイロ(3軸加速度センサー)を用いる場合に比して、簡単な構成によって、設置姿勢を検出することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、予め記憶した補正データ(搬送制御テーブルT1)から、補正値を抽出する構成であったが、補正時点で、補正値を演算する構成であっても良い。具体的には、搬送データ補正部104は、縦置き設置における単位送り量当りの実送り量と横置き設置における単位送り量当りの実送り量との関係を示した関係式に基づいて、目標送り量の補正を行うようにしても良い。かかる場合、用紙Pの種別毎の重量を、変数として含むものとする。例えば、実験の結果、用紙Pの種別毎の重量Iとしたごき、縦置き設置と横置き設置との、単位送り量当りの実送り量の差Jが、「J=998.75×I÷1950.8」との関係式が得られたら、当該関係式を演算式に含めて、補正値を算出する。このような構成によれば、補正時点で、関係式を用いて補正値を演算し、送り量の補正を行うため、予め補正データを記憶しておくのに比べ、記録容量を削減することができる。また、用紙Pの種別毎の重量を加味した関係式を用いるため、用紙Pの種別を変更したとしても、紙送りを正確に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態においては、用紙Pの先端位置を取得し、先端位置の属する分割範囲毎の補正データを用いたが、用紙Pの後端位置を取得し、後端位置の属する分割範囲毎の補正データを用いても良い。
【0057】
さらに、本実施形態においては、縦置き設置を、印刷時の用紙Pの送り姿勢が上向き起立姿勢となる設置姿勢としたが、縦置き設置を、当該送り姿勢が下向き起立姿勢となる設置姿勢としても良い。
【符号の説明】
【0058】
1:記録装置、 3:印刷部、 6:姿勢検出機構、 42:搬送ローラー、 47:用紙位置取得部、 81:第1回転体、 82:第1光センサー、 91:錘部、 92:検出マーク、 104:搬送データ補正部、 107:吐出データ補正部、 P:用紙、 R:送り経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録時の記録媒体の送り姿勢が上下向きの起立姿勢となる縦置き設置と、前記送り姿勢が横倒し姿勢となる横置き設置と、が自在な記録装置であって、
送り経路に沿って前記記録媒体を所定の送り量で送る媒体送り手段と、
前記媒体送り手段の駆動に同期し、送られていく前記記録媒体に画像を記録する画像記録手段と、
設置姿勢が、前記縦置き設置であるか、前記横置き設置であるかを検出する設置姿勢検出手段と、
前記設置姿勢検出手段による検出結果に応じて、前記送り量を補正する送り量補正手段と、を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記送り量補正手段は、前記設置姿勢別の補正データを格納した制御テーブルに基づいて、前記送り量の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記補正データには、前記記録媒体の種別毎の媒体別補正データが含まれていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記送り経路における前記記録媒体の先端位置および/または後端位置を検出する媒体位置検出手段を、更に備え、
前記補正データには、前記送り経路を分割した複数の分割区間に対し、前記先端位置および/または前記後端位置が属する前記分割区間毎の区間補正データが含まれていることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記送り量補正手段は、前記縦置き設置における単位送り量当りの実送り量と前記横置き設置における単位送り量当りの実送り量との関係を示した関係式に基づいて、前記送り量の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記関係式は、前記記録媒体の種別毎の重量を、変数として含んでいることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記画像記録手段は、インクジェット方式で画像を記録し、
前記設置姿勢検出手段による検出結果に基づいて、吐出データを補正する吐出データ補正手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記吐出データを補正するための補正データには、前記記録媒体の種別毎の媒体別補正データが含まれていることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記設置姿勢検出手段は、
周方向における一の位置に配設された錘部と、周方向における一の位置に配設された検出マークとを有すると共に、自由回転自在に配設された回転体と、
前記縦置き設置時に前記錘部の重量によって回転した前記回転体の前記検出マークに対峙するように配設され、前記検出マークの有無を検出する縦設置検出センサーと、を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−192994(P2012−192994A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56419(P2011−56419)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】