説明

設定圧可変式のリリーフ弁

【課題】 外部指令圧の供給部材が他の油圧機器等に干渉しないように、その取付け位置、回動位置を調整でき、外径寸法を抑えることができるようにする。
【解決手段】 副弁体用ケーシング17(拡径筒部17D)の外周側に外径寸法Dbの全周溝17Eを形成する。主弁体用ケーシング13(突出筒部13B)の他側端面13Dと締結ナット37との間には、全周溝17Eの外周側に位置して指令圧供給部材36の挿嵌部36Aが周方向に回動可能に挿嵌される環状凹部35を形成する。環状凹部35は、スリーブ体23内の高圧設定ばね34に対して軸方向一側へと離間した位置に配置する。指令圧供給部材36の取付け作業が終了した後には、指令圧供給部材36を主弁体用ケーシング13の他側端面13Dと締結ナット37との間で挟持するように、締結ナット37を締付けて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械等の油圧回路に好適に用いられ、外部指令圧に応じてリリーフ設定圧を可変に制御する構成とした設定圧可変式のリリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械では、油圧機器の破損、損傷等につながるような過剰圧が油圧回路中に発生するのを抑えるためにリリーフ弁を設けている。そして、過剰圧の発生時には当該リリーフ弁を開弁させることにより、前記過剰圧をタンク側に逃がす構成としている。また、このようなリリーフ弁として、外部指令圧に応じてリリーフ圧を可変に制御できるようにした設定圧可変式のリリーフ弁を用いることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、この種の従来技術による設定圧可変式のリリーフ弁は、タンク側に接続される低圧側油通路と油圧アクチュエータ側に接続される高圧側油通路との間を連通,遮断するポペット(弁体)と、該弁体を常時閉弁方向に向けて付勢する第1のスプリング(リリーフ圧設定ばね)と、該リリーフ圧設定ばねの初期撓み量(ばね荷重)を外部指令圧に応じて増減させるピストンと、該ピストンを挟んでリリーフ圧設定ばねの反対側に設けられ該リリーフ圧設定ばねよりも大きなばね力で前記ピストンを付勢する第2のスプリング(高圧設定ばね)等とを備えている。
【0004】
この場合、設定圧可変式のリリーフ弁は筒状の弁ケースを有し、該弁ケースの内部には、前記弁体、リリーフ圧設定ばね、ピストンおよび前記高圧設定ばねが収容されている。また、弁ケースの外周側には、前記外部指令圧を可変に制御する電磁比例弁が周方向に回動可能に挿嵌して設けられ、該電磁比例弁は、弁ケースに対する回動位置を調整した状態で固定具によって弁ケースに固定する構成としている。
【0005】
そして、設定圧可変式のリリーフ弁は、前記電磁比例弁により外部指令圧としてのパイロット圧を小さくすると、前記高圧設定ばねによってピストンが一方向に押動されることにより前記リリーフ圧設定ばねの初期撓み量が増大し、これによって前記主弁体によるリリーフ設定圧を高圧に設定することができる。一方、外部指令圧によるパイロット圧を大きくしたときには、前記ピストンが高圧設定ばねに抗して他方向に移動することにより前記リリーフ圧設定ばねの初期撓み量を相対的に減少させることができ、これによって前記主弁体によるリリーフ設定圧を低圧に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−74352号公報(特許第3084958号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術によるリリーフ弁では、弁ケースの外周側に外部指令圧を可変に制御する電磁比例弁を周方向に回動可能に挿嵌して設ける構成としている。即ち、リリーフ弁の周囲には他の油圧機器等が多数配置されるため、これらの油圧機器と電磁比例弁とが干渉しないように、前記弁ケースに対する電磁比例弁の取付け位置(回動位置)を適宜に調整することができる構成としている。
【0008】
しかし、従来技術で用いている電磁比例弁は、弁ケースの外周側で、前記高圧設定ばねの径方向外側となる位置に配置されているので、高圧設定ばねの外形寸法を大きくすれば、これに応じて電磁比例弁の径方向寸法を大きくする必要が生じ、これによって、設定圧可変式のリリーフ弁の外形寸法が大型化するという問題がある。
【0009】
特に、リリーフ設定圧の可変幅を低圧から高圧の範囲で幅広く可変に設定しようとすると、高圧設定ばねのばね力を大きくする必要があり、このためには高圧設定ばねの外形寸法を大きくすることが要求される。しかし、高圧設定ばねの外形寸法が大きくなれば、その径方向外側位置に配置される電磁比例弁の径方向寸法も大きくせざるを得ないという問題がある。
【0010】
また、従来技術によるリリーフ弁は、単一の弁体(ポペット)を用いてリリーフ設定圧を可変にする構成であるため、この弁体が背圧(低圧側油通路の圧力)側の圧力脈動等による影響を受け易く、この影響でチャタリングを起す虞れがある。特に、弁体を閉弁方向に付勢しているリリーフ圧設定ばねは、前記背圧が圧力脈動等で変動したときに、この影響を直接的に受けてばね荷重が変化し易く、チャタリングの発生原因になるという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、外部指令圧を供給する部材を弁ケースの周囲で回動させることにより、他の油圧機器等との干渉を避けるように、その取付け位置(回動位置)を適宜に調整することができる上に、全体の外径寸法が大きくなるのを抑え、小型化してコンパクトに形成することができるようにした設定圧可変式のリリーフ弁を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、リリーフ設定圧と外部指令圧との関係(圧力可変特性)を高い自由度をもって変更することができ、油通路内の圧力脈動等に伴う弁体のチャタリングを抑えることができるようにした設定圧可変式のリリーフ弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明は、内部に低圧側油通路と高圧側油通路とを有し該各油通路の間に弁取付穴が設けられた弁ハウジングと、軸方向の一側が該弁ハウジングの弁取付穴に取付けられ軸方向の他側が該弁ハウジング外に突出した筒状の弁ケースと、該弁ケースの軸方向一側に位置して該弁ケース内に変位可能に設けられ前記高圧側油通路と低圧側油通路との間を連通,遮断する弁体と、前記弁ケース内に撓み変形可能に設けられ該弁体の開弁圧を撓み量に応じて可変に設定するリリーフ圧設定ばねと、該リリーフ圧設定ばねよりも軸方向他側に位置して前記弁ケース内に設けられ該リリーフ圧設定ばねを高圧に設定するためのばね力を有した高圧設定ばねと、該高圧設定ばねと前記リリーフ圧設定ばねとの間に位置して前記弁ケース内に設けられ外部指令圧を受圧することにより前記高圧設定ばねに抗して前記リリーフ圧設定ばねの設定圧を低圧側に変化させるピストンと、前記弁ケース内に設けられ該ピストンの受圧面に外部指令圧を導く外部指令圧供給部とを備えてなる設定圧可変式のリリーフ弁に適用される。
【0014】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記弁ケースの外周側には、前記高圧設定ばねの配設位置よりも軸方向の一側となる位置に環状の段差として形成され前記外部指令圧供給部が周方向に回動可能に挿嵌される環状凹部を設け、前記外部指令圧供給部は、該環状凹部の外周側に挿嵌した状態で前記弁ケースの周方向に回動される外部指令圧用の回動部材により構成し、前記弁ケースの外周側には、該外部指令圧用の回動部材を周方向に回動して位置合せした状態で前記環状凹部の外周側に固定する締結部材を緩締可能に設ける構成としたことにある。
【0015】
また、請求項2の発明によると、前記外部指令圧用の回動部材は、前記環状凹部の外周側に挿嵌されるリング状の挿嵌部と、該挿嵌部の外周側から径方向に張出して形成され前記外部指令圧の供給ポートを有した張出し部と、前記挿嵌部の内周面に形成され前記弁ケース内の前記ピストンの受圧面に対して前記外部指令圧の供給ポートを連通させる環状の連通溝とを有する構成としている。
【0016】
さらに、請求項3の発明によると、前記弁ケースは、軸方向の一側が前記弁ハウジングの弁取付穴に取付けられ軸方向の他側が前記弁ハウジング外に突出した筒状体からなり一側の内周には前記各油通路の間に位置して主弁座が設けられた主弁体用ケーシングと、軸方向の一側が該主弁体用ケーシング内に着脱可能に固定して設けられ軸方向の他側が該主弁体用ケーシング外に突出した筒状体からなり一側の内周に副弁座が形成された筒状の副弁体用ケーシングとを含む構成とし、前記弁体は、前記主弁体用ケーシングの軸方向一側に位置して前記主弁体用ケーシング内に軸方向変位可能に設けられ前記主弁座に離,着座することによって前記高圧側油通路と低圧側油通路との間を連通,遮断する主弁体と、前記副弁体用ケーシング内に軸方向変位可能に設けられ前記副弁座に離,着座することにより前記主弁体の開,閉を制御する副弁体とにより構成し、前記環状凹部は、前記副弁体用ケーシングの外周側に位置して前記主弁体用ケーシングの軸方向他側と前記締結部材との間に形成する構成とし、前記外部指令圧用の回動部材は、前記副弁体用ケーシングの外周側に挿嵌した状態で前記主弁体用ケーシングの軸方向他側の端面と前記締結部材との間に締付けて固定する構成としている。
【発明の効果】
【0017】
上述の如く、請求項1の発明によれば、弁ケースの外周側のうち、高圧設定ばねの配設位置よりも軸方向の一側となる位置に環状凹部を設け、該環状凹部の外周側には外部指令圧用の回動部材を挿嵌した状態で周方向に回動して位置合せする構成としているので、リリーフ弁の弁ハウジング、弁ケース等の周囲に他の油圧機器が配置されている場合でも、これらの油圧機器と外部指令圧用の回動部材とが干渉しないように、前記弁ケースに対する回動部材の取付け位置(回動位置)を適宜に調整することができる。そして、回動位置の調整後には、弁ケースの外周側に設けた締結部材により、外部指令圧用の回動部材を前記環状凹部の外周側に固定することができる。
【0018】
そして、外部指令圧用の回動部材は、弁ケースの外周側のうち高圧設定ばねの配設位置よりも軸方向の一側となる位置に、環状凹部と締結部材とを介して固定されるため、例えば高圧設定ばねの外径寸法に影響されることなく、外部指令圧用の回動部材を設計、製作することができ、外部指令圧用の回動部材を含めたリリーフ弁全体の外径寸法を小さくして、小型、軽量化を図ることができる。
【0019】
また、請求項2の発明は、外部指令圧用の回動部材を、リング状の挿嵌部、外部指令圧の供給ポートを有した張出し部および環状の連通溝により構成しているので、弁ケース(環状凹部)の外周側で回動部材を任意の方向に回動しても、弁ケース内のピストンの受圧面に対して前記外部指令圧の供給ポートを環状の連通溝により常に連通した状態に保つことができ、前記ピストンの受圧面に向けた外部指令圧の供給を安定して行うことができる。
【0020】
さらに、請求項3の発明は、リリーフ弁を、弁ハウジング、主弁体用ケーシング、主弁体、副弁体用ケーシングおよび副弁体等により構成し、前記副弁体用ケーシングの外周側には前記主弁体用ケーシングの軸方向他側と締結部材との間に位置して外部指令圧用の回動部材が挿嵌される環状凹部を形成する構成としている。これにより、外部指令圧用の回動部材を環状凹部(副弁体用ケーシングの外周側)に挿嵌した状態で、即ち取付け位置(回動位置)の調整を簡単に行うことができる。そして、回動位置の調整後には締結部材を締付けることにより、回動部材を前記主弁体用ケーシングの軸方向他側の端面と前記締結部材との間に締付けて固定することができる。
【0021】
しかも、この場合のリリーフ弁は、筒状の弁ケースを、主弁体用ケーシングおよび副弁体用ケーシング等により構成し、弁体は、主弁体および副弁体により構成しているので、主弁体が背圧(低圧側油通路の圧力)側の圧力脈動等による影響を受けることはなくなり、主弁体がチャタリングを起すのを防止できる。そして、副弁体をリリーフ圧設定ばねにより常に閉弁方向に向けて付勢することができ、当該リリーフ圧設定ばねが副弁体の背圧(低圧側油通路の圧力)による脈動等の影響でばね荷重が変化したりするのを抑えることができると共に、油通路内の圧力脈動等に伴う弁体のチャタリングを容易に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるリリーフ弁が適用された油圧シリンダの駆動用油圧回路を示す回路構成図である。
【図2】リリーフ弁の指令圧供給部材等を図1中の矢示II−II方向から拡大してみた横断面図である。
【図3】図2中の指令圧供給部材を単体として示す横断面図である。
【図4】図1中の弁ハウジングから取外した状態でリリーフ弁を拡大して示す縦断面図である。
【図5】図4のリリーフ弁を弁ハウジングに取付けた状態で示す縦断面図である。
【図6】リリーフ弁の主弁体と副弁体とが開弁した状態を示す図5と同様位置の縦断面図である。
【図7】リリーフ設定圧を最高圧から最低圧に変更した状態を示す図5と同様位置の縦断面図である。
【図8】リリーフ設定圧を最低圧に設定した状態で主弁体と副弁体とが開弁した場合を示す縦断面図である。
【図9】図5中の段付ピストンを単体として拡大した状態で示す縦断面図である。
【図10】外部指令圧とリリーフ設定圧との関係を示す特性線図である。
【図11】第2の実施の形態によるリリーフ弁を拡大して示す縦断面図である。
【図12】第3の実施の形態によるリリーフ弁を拡大して示す縦断面図である。
【図13】本発明の変形例によるリリーフ弁を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態による設定圧可変式のリリーフ弁を、油圧シリンダの駆動回路に適用した場合を例に挙げ、図1ないし図13にわたる添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
ここで、図1ないし図10は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は油圧アクチュエータとしての油圧シリンダで、該油圧シリンダ1は、例えば油圧ショベルの作業装置(例えば、ブーム、アームまたはバケット等)を駆動するものであり、例えばブームシリンダ、アームシリンダまたはバケットシリンダのいずれかを構成するものである。
【0025】
この場合、油圧シリンダ1は、円筒状のチューブ1Aと、該チューブ1A内に摺動可能に挿嵌されたピストン1Bと、一端側がピストン1Bに固着され他端側がチューブ1A外ヘと突出したロッド1C等とにより構成されている。また、チューブ1A内はピストン1Bにより、ロッド1C側に位置する縮み側油室Aとボトム側に位置する伸び側油室Bとの2室に画成されている。
【0026】
2はタンク3と共に油圧源を構成するメインの油圧ポンプで、該油圧ポンプ2は、例えばディーゼルエンジン等の原動機(図示せず)により回転駆動され、タンク3内の作動油を吸込みつつ、圧油を吐出するものである。
【0027】
4A,4Bは油圧シリンダ1の油室A,Bを油圧ポンプ2,タンク3に接続するための主管路で、該主管路4A,4Bのうち一方の主管路4Aは、油圧シリンダ1の油室Aを後述の方向制御弁5に接続する油圧管路を構成し、他方の主管路4Bは、油圧シリンダ1の油室Bを方向制御弁5に接続する他の油圧管路を構成している。
【0028】
5は主管路4A,4Bに設けられた油圧シリンダ1用の方向制御弁で、該方向制御弁5は、左,右の油圧パイロット部5A,5Bを有し、常時は中立位置(イ)に保持される。そして、方向制御弁5は、左,右の油圧パイロット部5A,5Bに対して、遠隔操作弁(例えば、減圧弁型パイロット弁)からパイロット圧が供給されることにより、中立位置(イ)から切換位置(ロ),(ハ)に切換えられ、油圧ポンプ2から油圧シリンダ1の油室A,Bに給排される圧油の方向を切換え制御するものである。
【0029】
6は油圧ポンプ2の最高吐出圧を決めるメインの高圧リリーフ弁で、この高圧リリーフ弁6は、油圧ポンプ2から吐出された圧油の圧力が予め決められた設定圧(最高吐出圧)に達すると開弁し、これ以上の過剰圧をタンク3側に逃がしてリリーフするものである。
【0030】
7はタンク3と共にパイロット油圧源を構成するサブの油圧ポンプ(以下、パイロットポンプという)で、該パイロットポンプ7は、前記原動機により油圧ポンプ2と一緒に回転駆動され、タンク3内の作動油を吸込みつつ、圧油を後述のパイロット圧として吐出するものである。
【0031】
8は外部指令圧の供給手段を構成する比例減圧弁で、該比例減圧弁8は、例えばオペレータが手動操作する指令装置(図示せず)からの信号に従ってパイロットポンプ7からのパイロット圧を減圧制御し、例えば0〜5MPa(メガパスカル)程度の範囲内にある外部指令圧を、パイロット圧として後述の供給ポート36Bに向け出力するものである。
【0032】
9はパイロットポンプ7の最高吐出圧を決める低圧リリーフ弁で、この低圧リリーフ弁9は、パイロットポンプ7の吐出圧が最高吐出圧(例えば、6〜10MPa程度)に達すると開弁し、これ以上の過剰圧をタンク3側に逃がしてリリーフするものである。
【0033】
10A,10Bは油圧シリンダ1と方向制御弁5との間に位置して主管路4A,4Bの途中等に設けられたリリーフ弁で、該リリーフ弁10A,10Bは、所謂オーバロードリリーフ弁を構成し、主管路4A,4B(油圧シリンダ1の油室A,B)内等に過剰圧が発生するのを抑えるものである。
【0034】
ここで、リリーフ弁10A,10Bのうち一方のリリーフ弁10Aは、図1、図4〜図8に示す如く後述の弁ケース12(主弁体用ケーシング13、副弁体用ケーシング17およびスリーブ体23)内に、主弁体15、副弁体22、段付ピストン25、パイロット油室27、リリーフ圧設定ばね28および高圧設定用ばね34等を設けることにより、例えば図10に示す如くリリーフ設定圧が最低圧Pmin と最高圧Pmax との間で多段階に、または連続的に調整される設定圧可変式のリリーフ弁として構成されている。
【0035】
また、他方のリリーフ弁10Bは、図1に示す如くリリーフ設定圧が予め決められた値に設定されている。そして、例えば主管路4B(油圧シリンダ1の油室B)内の圧力がリリーフ設定圧を越える過剰圧になると、この過剰圧をタンク3側にリリーフすべくリリーフ弁10Bは開弁するものである。なお、リリーフ弁10Bについても、設定圧可変式のリリーフ弁により構成してもよい。
【0036】
次に、本実施の形態で採用した設定圧可変式のリリーフ弁10Aについて、図1ないし図9を参照して具体的な構造を詳細に説明する。
【0037】
11はリリーフ弁10Aの取付ベースとなる弁ハウジングで、この弁ハウジング11は、例えば方向制御弁5と共通の弁ブロック等により構成されるものである。そして、弁ハウジング11には、前記主管路4A(油圧管路)の一部をなす高圧側油通路11Aと、低圧側となるタンク3に連通する低圧側油通路11Bと、該各油通路11A,11Bの間に位置し後述の主弁体用ケーシング13が螺着して取付けられる弁取付穴11C等とが設けられている。
【0038】
12は弁ハウジング11に固定して設けられた筒状の弁ケースを示し、該弁ケース12は、後述の主弁体用ケーシング13、副弁体用ケーシング17、スリーブ体23およびリリーフ圧調整用栓体29等により構成されている。そして、筒状の弁ケース12は、その軸方向一側(後述の主弁体用ケーシング13)が弁ハウジング11の弁取付穴11Cに取付けられ、軸方向他側(例えば、後述の副弁体用ケーシング17、スリーブ体23等)が弁ハウジング11の外部に突出している。
【0039】
13は弁ハウジング11に固定して設けられた主弁体用ケーシングで、この主弁体用ケーシング13は、図5、図6に示すように段付筒状体として形成され、軸方向の一側が弁ハウジング11の弁取付穴11C内に螺着して取付けられる固定筒部13Aとなっている。そして、主弁体用ケーシング13の固定筒部13Aは、弁ハウジング11の高圧側油通路11A内に液密状態で嵌合され、後述の主弁体15と共に高圧側油通路11Aを低圧側油通路11Bに対して遮断した状態に保つものである。
【0040】
また、主弁体用ケーシング13は、軸方向の他側が弁ハウジング11の外部に突出する突出筒部13Bとなり、該突出筒部13Bと固定筒部13Aとの間には、弁ハウジング11の端面にシール部材を介して液密状態で当接される環状段部13Cが形成されている。さらに、主弁体用ケーシング13の内周側は、固定筒部13Aから突出筒部13B側に向けて複数段(例えば、4段階)で拡径され、突出筒部13Bの突出端側(他側)が最大の開口となっている。
【0041】
ここで、主弁体用ケーシング13の突出筒部13Bは、図4に示すように外径寸法Daに形成され、後述する副弁体用ケーシング17の全周溝17Eの外径寸法Db(Db<Da)よりも大径に形成されている。そして、突出筒部13Bの他側端面13Dは、後述の全周溝17Eとの間で環状凹部35を構成し、この環状凹部35内には、後述の指令圧供給部材36が回動可能に挿嵌して設けられるものである。
【0042】
一方、主弁体用ケーシング13には、固定筒部13Aの内周側に主弁座13Eが設けられ、この主弁座13Eは、高圧側油通路11Aと低圧側油通路11Bとの間に位置して固定筒部13Aの内周側に環状の弁座として形成されている。そして、主弁座13Eには、後述の主弁体15が離,着座し、これにより油通路11A,11B間が図6に示す如く連通,遮断されるものである。
【0043】
13Fは主弁体用ケーシング13の固定筒部13Aに形成された複数の通液孔で、該各通液孔13Fは、固定筒部13Aのうち主弁座13Eよりも軸方向他側となる位置で径方向に穿設された油孔からなり、後述の主弁体15が開弁したときに、固定筒部13Aの内,外で油通路11A,11B間を連通させるものである。また、各通液孔13Fは、例えば後述の副弁体用ケーシング17(ばね室26)内を環状通路18A等を介して低圧側油通路11Bに連通させる機能も有している。
【0044】
14は弁ケース12内に設けられた弁体を示し、該弁体14は、後述の主弁体15と副弁体22とにより構成されるものである。そして、弁体14(主弁体15、副弁体22)は、弁ケース12の軸方向一側に位置して該弁ケース12内に変位可能に設けられ、主弁体15により高圧側油通路11Aと低圧側油通路11Bとの間を連通,遮断するものである。
【0045】
15は主弁体用ケーシング13内の主弁座13Eに離,着座する主弁体で、該主弁体15は、図6に示す如く一側がポペット部15Aとなり、他側が筒部15Bとなったポペット弁体により構成されている。そして、主弁体15は、後述の副弁体用ケーシング17を介して主弁体用ケーシング13内に軸方向変位可能に設けられ、ポペット部15Aが主弁座13Eに離,着座することによって高圧側油通路11Aと低圧側油通路11Bとの間を連通,遮断するものである。
【0046】
ここで、主弁体15の筒部15Bは、ポペット部15Aよりも大径に形成されている。そして、主弁体15は、主弁体用ケーシング13の固定筒部13A内に収容され、閉弁状態における受圧面積は、ポペット部15Aよりも筒部15B側の方が大きくなるように形成されている。これにより、主弁体15は、メイクアップ機能を有するチェック弁としても作動する。即ち、主弁体15は、例えば高圧側油通路11Aが負圧傾向となると開弁し、低圧側油通路11B内の油液が通液孔13Fを介して高圧側油通路11Aに向け流通するのを許すものである。
【0047】
16は主弁体15内に摺動可能に挿嵌して設けられたノズル筒を示し、該ノズル筒16は、一側が主弁体15のポペット部15Aから軸方向に突出し、他側はばね受部16Aとなって後述の圧力室19内に抜止め状態で配置されている。そして、ノズル筒16は、高圧側油通路11Aと圧力室19との間に圧力差が発生すると、後述の弁ばね21に抗して主弁体15内を軸方向に摺動変位するものである。
【0048】
また、ノズル筒16の内周側は、主弁体15内に設けた絞り通路16Bを構成し、該絞り通路16Bは、高圧側油通路11A内の圧力(圧油)に絞り作用を与えつつ、この圧力を圧力室19内に導くことにより両者の間に圧力差(差圧)を発生させる。そして、このときの圧力差が後述のリリーフ設定圧に達したときには、主弁体15が後述のばね20等に抗して開弁し、高圧側油通路11A内の過剰圧を低圧側油通路11Bに逃がすものである。
【0049】
17は主弁体用ケーシング13に固定して設けられた副弁体用ケーシングで、この副弁体用ケーシング17は、図1、図4〜図8に示すように段付筒状に形成され、その軸方向中間部は、外周側が主弁体用ケーシング13の突出筒部13B内に螺合して固定される中間筒部17Aとなっている。そして、中間筒部17A内には、後述するスリーブ体23の嵌合筒部23Aが液密状態で嵌合され、これにより後述のばね室26は、指令圧供給部材36の供給ポート36B側に対して遮断されるものである。
【0050】
また、副弁体用ケーシング17の軸方向一側は、中間筒部17Aよりも小径に形成されたガイド筒部17Bとなり、該ガイド筒部17Bの外周側には、主弁体15の筒部15Bが摺動可能に挿嵌されるものである。そして、ガイド筒部17Bの内周側には、後述の副弁体22が離,着座する副弁座17Cが漸次縮径するテーパ状をなして形成されている。一方、副弁体用ケーシング17の軸方向他側には、中間筒部17Aよりも内,外径が大きい拡径筒部17Dが形成され、該拡径筒部17Dは、主弁体用ケーシング13の突出筒部13Bと共に軸方向外側に向けて突出している。
【0051】
ここで、拡径筒部17Dの外周側には、図4に示すように外径寸法Dbを有し後述の環状凹部35を構成する全周溝17Eと、該全周溝17Eの軸方向他側に隣接して位置し後述の締結ナット37が螺着される雄ねじ部17Fとが設けられている。そして、この場合の全周溝17Eは、拡径筒部17Dの外周面のうち後述の高圧設定ばね34の配設位置よりも軸方向の一側となる位置(より詳細には後述のパイロット油室27を基準として、これよりも主弁体用ケーシング13側寄りとなる位置)に配置されている。
【0052】
また、副弁体用ケーシング17の拡径筒部17Dには、図2に示すように全周溝17Eの外周面に開口する複数の径方向孔17Gが形成され、該各径方向孔17Gは、後述する外部指令圧の供給ポート36Bを拡径筒部17D内の環状通路24に連通させるものである。さらに、副弁体用ケーシング17には、中間筒部17Aとガイド筒部17Bとの間に位置して径方向の油穴17Hが複数個設けられ、これらの油穴17Hは、後述のばね室26を環状空間18に恒常的に連通させるものである。
【0053】
18は主弁体用ケーシング13と副弁体用ケーシング17との間に形成された低圧室としての環状空間で、該環状空間18は、その一方側が副弁体用ケーシング17の油穴17Hを介して後述のばね室26に常時連通し、他方側は主弁体用ケーシング13と主弁体15との間の環状通路18A(径方向隙間)に連通すると共に通液孔13Fを介して低圧側油通路11Bに常時連通している。
【0054】
ここで、環状通路18Aは、図4、図5に示すように環状空間18の一部をなし、主弁体用ケーシング13の内周と主弁体15の外周との間に存在する径方向の隙間により形成されている。そして、環状通路18Aは、環状空間18を通液孔13Fを介して低圧側油通路11Bに常時連通させる環状の通路を構成するものである。
【0055】
19は主弁体15と副弁体用ケーシング17との間に形成された圧力室で、該圧力室19は、主弁体15の筒部15Bと副弁体用ケーシング17のガイド筒部17Bとの間に位置する筒状空間として形成されている。そして、圧力室19内は、後述の副弁体22が閉弁しているときに、高圧側油通路11A内の圧力が絞り通路16Bを介して導かれることにより高圧となり、主弁体15の開弁方向の変位が抑えられる。
【0056】
一方、圧力室19は、後述の如く副弁体22が開弁すると、後述のばね室26、油穴17H、環状空間18(環状通路18A)等を介して低圧側油通路11Bに連通され、圧力室19内の圧力が副弁体22の開度に応じて低下する。これにより主弁体15は、圧力室19内の圧力低下に従って開弁方向への変位が可能となるものである。
【0057】
20,21は主弁体15を閉弁方向に向けて付勢する弁ばねで、該弁ばね20,21は、図4〜図8に示すように圧力室19内に配置された弱ばねにより構成されている。そして、弁ばね20,21のうち、一方の弁ばね20は、副弁体用ケーシング17のガイド筒部17Bと主弁体15との間に配設されている。また、他方の弁ばね21は、ノズル筒16のばね受部16Aと副弁体用ケーシング17のガイド筒部17Bとの間に配設されている。
【0058】
22は副弁体用ケーシング17のガイド筒部17B内に変位可能に設けられた副弁体で、該副弁体22は、図1〜図8に示す如く主弁体15よりも小型のポペット弁体として形成されている。そして、副弁体22は、主弁体15と共にリリーフ弁10Aの弁体14を構成し、後述の如く主弁体15の開,閉を制御するものである。
【0059】
ここで、副弁体22は、副弁体用ケーシング17の副弁座17Cに離,着座することにより圧力室19を後述のばね室26(環状空間18、環状通路18A、低圧側油通路11B)側に対して連通,遮断する。そして、副弁体22は、図6に示す如く開弁したときに、圧力室19からばね室26に向けて流通する油液に絞り作用を与え、両者の間に圧力差(差圧)を発生させるものである。
【0060】
23は副弁体用ケーシング17に螺合して設けられた段付き筒状のスリーブ体で、該スリーブ体23は、図4〜図8に示すように、軸方向の一側に位置し副弁体用ケーシング17の中間筒部17A内に液密状態で嵌合される小径嵌合筒部23A(以下、嵌合筒部23Aという)と、該嵌合筒部23Aの軸方向他側から径方向外向きに突出して周方向に延びた環状段部23Bと、該環状段部23Bから軸方向の他側に延びて嵌合筒部23Aとは一体に形成され、嵌合筒部23Aよりも大径となった大径筒部23Cとを含んで構成されている。
【0061】
そして、スリーブ体23の大径筒部23Cは、その外周側が副弁体用ケーシング17の拡径筒部17Dに位置調整可能に螺合され、両者の螺合位置を変えることにより、スリーブ体23は副弁体用ケーシング17内を軸方向に変位できるものである。また、スリーブ体23の大径筒部23Cには、環状段部23Bと隣接した位置に径方向の油穴23Dが穿設され、該油穴23Dは、後述のパイロット油室27内に指令圧供給部材36からの外部指令圧をパイロット圧として供給するものである。
【0062】
一方、スリーブ体23の嵌合筒部23Aは、その内径が後述する段付ピストン25の小径ピストン部25Aとほぼ等しい寸法に形成されている。そして、嵌合筒部23A内には、後述の小径ピストン部25Aがシール性をもって挿嵌され、後述のパイロット油室27内に供給したパイロット圧が、嵌合筒部23Aと小径ピストン部25Aとの間からばね室26側に漏洩するのを抑えるものである。
【0063】
24は副弁体用ケーシング17とスリーブ体23の間に形成された環状空間からなる環状通路で、該環状通路24は、その一方側が副弁体用ケーシング17の径方向孔17Gを介して後述の指令圧供給部材36内に常時連通し、他方側はシリーブ体23の油穴23Dを介して後述のパイロット油室27内に常時連通するものである。
【0064】
25はスリーブ体23内に軸方向変位可能に設けられたピストンとしての段付ピストンで、該段付ピストン25は、図4〜図8に示すように後述のリリーフ圧設定ばね28と高圧設定ばね34との間に位置してスリーブ体23内に摺動可能に挿嵌して設けられている。そして、段付ピストン25は、後述の如く外部指令圧を受圧する受圧面25E(図7〜図9参照)を有している。
【0065】
ここで、段付ピストン25は、スリーブ体23の嵌合筒部23A内に摺動可能に挿嵌される小径ピストン部25Aと、該小径ピストン部25Aよりも大径となって軸方向の他側に突出しスリーブ体23の大径筒部23C内に摺動可能に挿嵌された大径ピストン筒部25Bと、該大径ピストン筒部25Bの内周側に設けられ後述するリリーフ圧調整用栓体29の小径部29Aが挿嵌される有底な挿嵌穴25Cと、大径ピストン筒部25Bから軸方向一側に向けて突出し該小径ピストン部25Aの中心側に穿設され後述するばね室26内の油液が挿嵌穴25C内に流通するのを許す油孔25Dとを含んで構成されている。
【0066】
また、段付ピストン25は、大径ピストン筒部25Bの軸方向一側とスリーブ体23の環状段部23Bとの間に後述のパイロット油室27を画成し、大径ピストン筒部25Bの軸方向一側の端面は、図7、図8に示すようにパイロット油室27内のパイロット圧(外部指令圧)を受圧する受圧面25Eとなっている。
【0067】
そして、段付ピストン25は、パイロット油室27内に供給されたパイロット圧を受圧面25Eで受圧することにより、この圧力に応じてスリーブ体23内を軸方向に変位するものである。また、段付ピストン25は、図9に示すように挿嵌穴25Cの穴径(寸法D1)を小径ピストン部25Aの外径(寸法D2)と同一径またはほぼ等しい寸法に形成する構成としている。
【0068】
26は副弁体用ケーシング17とスリーブ体23の嵌合筒部23A内に形成されたばね室で、該ばね室26は、副弁体用ケーシング17内の副弁体22と嵌合筒部23A内の段付ピストン25(小径ピストン部25A)との間に形成されている。そして、ばね室26内には、後述のリリーフ圧設定ばね28が縮装状態で配置されている。また、ばね室26は、副弁体用ケーシング17の油穴17Hを介して環状空間18と常時連通している。
【0069】
27はスリーブ体23と段付ピストン25との間に形成された環状のパイロット油室で、該パイロット油室27は、例えば図4〜図8に示すようにスリーブ体23の大径筒部23C内に位置して環状段部23Bと段付ピストン25の小径ピストン部25A、大径ピストン筒部25Bとの間に環状空間として形成されている。そして、パイロット油室27内には、スリーブ体23の油穴23D、環状通路24等を介して後述の指令圧供給部材36側からパイロット圧(外部指令圧)が導かれる。
【0070】
ここで、パイロット油室27内に導かれたパイロット圧は、段付ピストン25の受圧面25Eで受圧され、大径ピストン筒部25Bを後述の高圧設定用ばね34に抗して軸方向他側へと押圧する。そして、高圧設定用ばね34がパイロット圧によって弾性的に撓み変形(圧縮)されるときには、このときの撓み量分だけ後述のリリーフ圧設定ばね28が軸方向に伸びてばね荷重(撓み量)が小さくなり、これによってリリーフ設定圧が後述の如く低圧側に変更される。
【0071】
28はリリーフ弁10Aのリリーフ設定圧を決めるリリーフ圧設定ばねで、該リリーフ圧設定ばね28は、ばね室26内に位置して段付ピストン25の小径ピストン部25Aと副弁体22との間に縮装状態(プリセット状態)で配設されている。そして、リリーフ圧設定ばね28は、副弁体22を常に閉弁方向に向けて付勢し、例えば圧力室19内の圧力がリリーフ設定圧を越えるときには、副弁体22が開弁(副弁座17Cから離座)するのを許すものである。
【0072】
また、リリーフ圧設定ばね28は、その撓み量(ばね荷重)が図5と図7とに示すように可変に調整され、その撓み量に応じて前記リリーフ設定圧を図10に示す最低圧Pmin と最高圧Pmax との間で連続的に、多段階で変化するように設定する。即ち、リリーフ圧設定ばね28は、図5に示す如く撓み量(ばね荷重)を最も大きくしたときにリリーフ設定圧を最高圧設定とし、図7に示すように撓み量を最も小さくしたときには最低圧設定に調整されるものである。
【0073】
29はスリーブ体23の内周側に螺合して設けられた段付きのリリーフ圧調整用栓体で、該リリーフ圧調整用栓体29は、軸方向の一側部位が小径部29Aとなり、該小径部29Aは、その先端側が段付ピストン25の挿嵌穴25C内に摺動可能に挿嵌されている。また、リリーフ圧調整用栓体29は、軸方向の他側がスリーブ体23の大径筒部23C内に螺合して取付けられた大径部29Bとなっている。
【0074】
そして、リリーフ圧調整用栓体29には、小径部29Aと大径部29Bとの間に環状の段差部29Cが設けられ、この段差部29Cは、段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bとの間で後述の高圧設定用ばね34が配置されるばね室30を、スリーブ体23の大径筒部23Cとリリーフ圧調整用栓体29の小径部29Aとの間に形成している。
【0075】
ここで、リリーフ圧調整用栓体29は、図5に示す如く、小径部29Aの先端が段付ピストン25の挿嵌穴25Cとの間に寸法Lの軸方向隙間を確保できるように予め配置される。そして、パイロット油室27内のパイロット圧により段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bがばね室30側に変位するときには、図7に示すようにリリーフ圧調整用栓体29(小径部29A)の先端が挿嵌穴25Cの底面側に当接し、両者の間の隙間(寸法L)は実質的に零となってなくなるものである。
【0076】
また、リリーフ圧調整用栓体29の大径部29Bには、その他側端面に開口する出口ポート31が設けられ、該出口ポート31は、小径部29A内を軸方向に延びる軸穴31Aと、該軸穴31Aの径方向に穿設された複数の油穴31Bとを介してばね室30に常時連通している。そして、出口ポート31は、ばね室30内の油液をドレンとして外部のタンク3(図1参照)に後述の管路39等を介して排出するものである。
【0077】
32はリリーフ圧調整用栓体29をスリーブ体23に対して弛止め状態に保持するロックナットで、該ロックナット32は、スリーブ体23の大径筒部23Cから軸方向に突出するリリーフ圧調整用栓体29(大径部29B)の突出端外周側に螺着される。そして、ロックナット32は、この状態で大径筒部23Cの端面に強く当接することによりリリーフ圧調整用栓体29の弛止めを行うものである。
【0078】
33は副弁体用ケーシング17の拡径筒部17Dに対してスリーブ体23を弛止め状態に保持する他のロックナットで、該ロックナット33は、副弁体用ケーシング17の拡径筒部17Dから軸方向に突出するスリーブ体23の大径筒部23Cの突出端外周側に螺着される。そして、ロックナット33は、この状態で拡径筒部17Dの端面に強く当接することによりスリーブ体23の弛止めを行うものである。
【0079】
34はリリーフ圧調整用栓体29の段差部29Cと段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bとの間に設けられた高圧設定用ばねで、該高圧設定用ばね34は、図5〜図8に示す如くばね室30内で段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bとリリーフ圧調整用栓体29の段差部29Cとの間に縮装(プリセット)状態で配設されている。そして、高圧設定用ばね34は、リリーフ圧設定ばね28よりも大なるばね力をもって段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bを軸方向の一側(パイロット油室27)に向けて付勢する。
【0080】
これにより、高圧設定用ばね34は、図5に示す如くリリーフ圧設定ばね28の撓み量を大きくし、前記リリーフ設定圧を最高圧設定に保つものである。一方、高圧設定用ばね34は、図7に示すようにパイロット油室27内のパイロット圧により段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bがばね室30側に寸法L(図5、図6参照)だけ変位するのを許し、このときに段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bは、リリーフ圧調整用栓体29(小径部29A)の先端が挿嵌穴25Cの底面側に当接する位置まで高圧設定用ばね34に抗して軸方向に変位できるものである。
【0081】
35は弁ケース12の外周側に設けられた環状凹部で、該環状凹部35は、図4に示すように副弁体用ケーシング17(拡径筒部17D)の外周側に形成した全周溝17Eにより、主弁体用ケーシング13(突出筒部13B)の他側端面13Dと締結ナット37との間に位置する環状の段差として形成されている。そして、環状凹部35は、高圧設定ばね34の配設位置から軸方向一側に離間した位置に配置され、環状凹部35の外周側には、後述する指令圧供給部材36の挿嵌部36Aが図2中の矢示E,F方向に回動可能に挿嵌されるものである。
【0082】
36は外部指令圧供給部を構成する回動部材としての指令圧供給部材で、該指令圧供給部材36は、図2〜図4に示すように環状凹部35(全周溝17E)の外周側に挿嵌されるリング状の挿嵌部36Aと、該挿嵌部36Aの外周側から径方向に張出して形成され外部指令圧の供給ポート36Bを有した張出し部36Cと、挿嵌部36Aの内周面に形成され副弁体用ケーシング17の径方向孔17G、環状通路24内に対して外部指令圧の供給ポート36Bを恒常的に連通させる環状の連通溝36Dとを有して構成されている。
【0083】
ここで、指令圧供給部材36は、副弁体用ケーシング17を主弁体用ケーシング13の突出筒部13B内に取付ける前に、リング状の挿嵌部36Aを副弁体用ケーシング17の全周溝17Eに挿嵌させることにより取付けられる。そして、挿嵌部36Aを環状凹部35(全周溝17E)の外周側に挿嵌した状態で、指令圧供給部材36は回動部材として、その周方向(図2中の矢示E,F方向)に回動され、周囲の油圧機器(後述の指令圧管路38を含む)等に対する位置合せが行われる。また、このような位置合せ作業が終了したときに、指令圧供給部材36は、後述の締結ナット37により回動しないように固定される。
【0084】
37は環状凹部35の外周側に指令圧供給部材36を固定する締結部材としての締結ナットで、該締結ナット37は、副弁体用ケーシング17を主弁体用ケーシング13の突出筒部13B内に取付ける前に、予め副弁体用ケーシング17の雄ねじ部17Fに螺合して取付けられる。そして、副弁体用ケーシング17(拡径筒部17D)の全周溝17Eに指令圧供給部材36を挿嵌して、前述の如き位置合せ作業が終了した後に、締結ナット37は、指令圧供給部材36を抜止め、廻止めするために雄ねじ部17Fに螺着される。これにより、指令圧供給部材36は、主弁体用ケーシング13(突出筒部13B)の他側端面13Dと締結ナット37との間で挟持されるように締付けて固定されるものである。
【0085】
38は外部指令圧(パイロット圧)を供給する指令圧管路で、該指令圧管路38は、図1に示すように指令圧供給部材36の供給ポート36Bに接続され、比例減圧弁8からの外部指令圧(パイロット圧)を、供給ポート36B内へと供給する。そして、指令圧供給部材36は、供給ポート36Bに供給されたパイロット圧を、副弁体用ケーシング17の径方向孔17G、環状通路24およびスリーブ体23の油穴23Dを介してパイロット油室27内に導くものである。
【0086】
39はリリーフ圧調整用栓体29の出口ポート31に接続して設けられたドレン管路で、該ドレン管路39は、図1に示すように出口ポート31をタンク3に接続し、リリーフ弁10Aのばね室30等に発生したドレンとしての油液を出口ポート31から外部のタンク3に排出するものである。
【0087】
本実施の形態による油圧シリンダ1の駆動回路は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について図1〜図10を参照して説明する。
【0088】
まず、ディーゼルエンジンジ等の原動機により油圧ポンプ2、パイロットポンプ7等を駆動した状態で、方向制御弁5を中立位置(イ)から切換位置(ロ)に切換えると、油圧ポンプ2からの圧油が主管路4Aを介して油圧シリンダ1の油室A内に供給され、油室Bからは主管路4Bを介して戻り油がタンク3に向けて排出される。
【0089】
これにより、油圧シリンダ1のロッド1Cは、油室A,B間の圧力差によりチューブ1A内に向けて縮小方向に駆動され、例えば作業装置のブーム、アームまたはバケット(いずれも図示せず)等を上,下方向に回動させる。そして、作業装置は、油圧シリンダ1の駆動力によって土砂等の掘削作業を行うものである。
【0090】
ところで、掘削作業等を行う作業現場では、例えば前記バケットの容量を変えたり、掘削力を変えたり、あるいはバケット以外の作業具を用いたりする場合がある。そして、このような場合に油圧ショベルのオペレータは、運転室内の指令装置(図示せず)を手動で遠隔操作して比例減圧弁8に制御信号を出力する。これにより、パイロットポンプ7からのパイロット圧は比例減圧弁8で減圧制御され、例えば0〜5MPa程度の圧力範囲内にある外部指令圧が、図10中に示す圧力Pp1〜Pp2のパイロット圧として指令圧供給部材36の供給ポート36Bに向け出力される。
〔リリーフ圧を最高圧Pmax に設定する場合〕
【0091】
ここで、比例減圧弁8により外部指令圧を圧力Pp1以下に設定した状態では、リリーフ弁10Aのリリーフ設定圧が図10に示す特性線40の如く最高圧Pmax に設定される。この結果、リリーフ弁10Aのリリーフ設定圧は、高圧設定用ばね34とリリーフ圧設定ばね28とによって最高圧設定となり、油圧シリンダ1の油室A側が高圧なリリーフ設定圧に達するまではリリーフ弁10Aを閉弁して作業装置の掘削力等を大きくすることができる。
【0092】
即ち、高圧設定されたリリーフ弁10Aは、図1に示す如く指令圧供給部材36の供給ポート36Bからパイロット油室27内に導かれるパイロット圧が、圧力Pp1以下の低圧状態にあるため、段付ピストン25はパイロット油室27側に向けて高圧設定用ばね34により押動され、大径ピストン筒部25Bの一側端面がスリーブ体23の環状段部23Bに当接する。このため、ばね室26内のリリーフ圧設定ばね28は、段付ピストン25の小径ピストン部25Aにより撓み量(ばね荷重)が大きくなるように圧縮変形され、リリーフ圧設定ばね28によるリリーフ設定圧は最高圧Pmax (図10参照)に設定されるものである。
【0093】
次に、この状態で方向制御弁5を中立位置(イ)から切換位置(ロ)に切換えると、油圧ポンプ2からの圧油が主管路4Aを介して油圧シリンダ1の油室A内に供給され、油室Bからは主管路4Bを介して戻り油がタンク3に向けて排出される。このとき、高圧側油通路11A内の圧力(例えば、油圧シリンダ1の油室A側に作用する負荷圧)は、ノズル筒16の絞り通路16Bを介して圧力室19内に導かれ、副弁体22に作用する。
【0094】
そして、圧力室19内の圧力がリリーフ圧設定ばね28によるリリーフ設定圧まで上昇したときには、副弁体22がリリーフ圧設定ばね28に抗して開弁し副弁座17Cから離座する。これにより、圧力室19内の高圧は、ばね室26、副弁体用ケーシング17の油穴17H、環状空間18、環状通路18Aおよび主弁体用ケーシング13の各通液孔13F等を介して低圧側油通路11B側に流出し、圧力室19は急激に圧力が低下する。なお、この状態は一般に前漏れと呼ばれるもので、圧油の流出量はごく少量に抑えられる。
【0095】
しかし、高圧側油通路11A内の圧力が上昇すると、圧力室19と高圧側油通路11Aとの間にはノズル筒16の絞り通路16Bを介して圧力差が発生し、この圧力差が弁ばね21のセット圧を越えると、図6に示すようにノズル筒16が弁ばね21に抗して主弁体15内を摺動変位し、ノズル筒16のばね受部16Aが副弁体22の先端側に当接する。そして、この状態で圧力室19内には、高圧側油通路11A内の油液(圧油)がノズル筒16の絞り通路16B、副弁体22の先端側等を介して流入する。しかし、このとき圧力室19内に流入する油液の流量は、絞り通路16B等により小さく制限されている。
【0096】
また、この状態で副弁体22には、ノズル筒16を介した高圧側油通路11Aの圧力と圧力室19の圧力とがリリーフ圧設定ばね28に抗した開弁方向の圧力として作用する。そして、副弁体22が図6に示す如く開弁した状態では、圧力室19内の圧力低下に伴った前記圧力差により主弁体15が弁ばね20,21に抗して開弁する。これにより、高圧側油通路11Aから低圧側油通路11Bに向けて圧油が流出し、高圧側油通路11A内の過剰圧を主弁体15の開弁により低圧側油通路11Bに逃がすことができる。
【0097】
そして、高圧側油通路11A内の過剰圧をリリーフした後には、副弁体用ケーシング17内の副弁体22が圧力室19内の圧力低下に伴ってリリーフ圧設定ばね28により押戻され、副弁座17Cに再び着座して閉弁しようとする。また、ノズル筒16は弁ばね21により初期位置(図5参照)に向けて押戻され、圧力室19内には高圧側油通路11Aの圧力がノズル筒16を介して導かれている。
【0098】
このため、高圧側油通路11A内の圧力が前記リリーフ設定圧以下まで低下した状態では、図5に示す如く主弁体15が弁ばね20,21により押戻されて主弁座13Eに着座し、高圧側油通路11Aと低圧側油通路11Bとの間を再び遮断する。これにより、高圧側油通路11A(図1中の主管路4A)内に前記高圧設定されたリリーフ設定圧を越える過剰圧が発生するのを、リリーフ弁10Aによって抑えることができるものである。
【0099】
一方、例えば高圧側油通路11Aが負圧傾向となり、低圧側油通路11Bよりも圧力が下がるようなときには、主弁体15がメイクアップ機能を有するチェック弁として作動し、主弁体15の開弁により、負圧傾向となった高圧側油通路11Aに向けて低圧側油通路11B内の油液を補給させる。
【0100】
即ち、主弁体15は、主弁体用ケーシング13の固定筒部13A内に収容され、閉弁状態における受圧面積は、ポペット部15Aよりも筒部15B側の方が大きくなるように形成されている。このため、ポペット部15Aに作用する高圧側油通路11A側の圧力が、主弁体用ケーシング13の各通液孔13F、環状通路18A等を介して筒部15B側に作用する低圧側油通路11Bの圧力に対して相対的に低下すると、主弁体15は、筒部15B側に作用する圧力(低圧側油通路11Bの圧力)により開弁され、低圧側油通路11B内の油液が高圧側油通路11Aに向けて流通するのを許すものである。
〔リリーフ圧を最低圧Pmin に設定する場合〕
【0101】
次に、オペレータの遠隔操作等により、比例減圧弁8による外部指令圧を圧力Pp2(図10参照)以上まで上昇させた場合について説明する。
【0102】
この場合、図1に示す指令圧供給部材36の供給ポート36Bには、比例減圧弁8により圧力Pp2(図10参照)以上の高圧となったパイロット圧が指令圧管路38を介して供給されるため、このパイロット圧がパイロット油室27内に導かれると、段付ピストン25は、図7に示す如く高圧設定用ばね34のばね力に抗して押動される。そして、パイロット油室27内のパイロット圧により段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bがばね室30側に最大ストローク(図5中の寸法Lに相当)で変位すると、図7に示すようにリリーフ圧調整用栓体29(小径部29A)の先端が挿嵌穴25Cの底面側に当接し、両者の間の隙間は実質的に零となる。
【0103】
この結果、ばね室30内の高圧設定用ばね34が大きく圧縮されるように撓み変形され、ばね室26内のリリーフ圧設定ばね28は、段付ピストン25の小径ピストン部25Aにより初期撓み量(ばね荷重)が小さくなるように伸び方向に変形する。これにより、リリーフ圧設定ばね28によるリリーフ設定圧は、図10に示す特性線40の如く最高圧Pmax から最低圧Pmin に変更される。そして、このときにリリーフ弁10Aのリリーフ設定圧は、初期撓み量が小さくなったリリーフ圧設定ばね28により最低圧に設定され、例えば作業装置の掘削力等を小さく抑えることができる。
【0104】
即ち、高圧側油通路11A内の圧力(例えば、油圧シリンダ1の油室A側に作用する負荷圧)が、例えば図10に示す最低圧Pmin に相当する圧力まで上昇したときにリリーフ弁10Aの主弁体15を、図8に示す如く前述した場合と同様に副弁体22の開,閉弁に伴って開弁することができ、作業装置の掘削力等を小さく抑えることが可能となる。
【0105】
従って、スリーブ体23内のパイロット油室27は、比例減圧弁8による外部指令圧を圧力Pp2(図10参照)以上まで上昇させたときに、指令圧供給部材36の供給ポート36Bから導かれるパイロット圧により段付ピストン25を高圧設定用ばね34に抗して軸方向に変位させ、これにより、リリーフ圧設定ばね28の初期撓み量を小さくして前記リリーフ設定圧を最低圧Pminに設定にすることができる。
【0106】
また、パイロット油室27内に導かれるパイロット圧(外部指令圧)を、比例減圧弁8により圧力Pp1(図10参照)以下まで低下させたときには、段付ピストン25がパイロット油室27側に向けて高圧設定用ばね34により押戻されるため、これに伴ってリリーフ圧設定ばね28の初期撓み量が大きくなり、このときには前記リリーフ設定圧を最高圧Pmaxに設定することができるものである。
〔リリーフ圧を最低圧Pmin と最高圧Pmax との中間に設定する場合〕
【0107】
また、オペレータの遠隔操作等により、比例減圧弁8による外部指令圧を圧力Pp1〜Pp2(図10参照)の範囲内で調整するときには、図1に例示した指令圧供給部材36の供給ポート36Bからパイロット油室27内に導かれるパイロット圧を、圧力Pp1〜Pp2の範囲内で任意の圧力に変更することができる。
【0108】
この結果、段付ピストン25は、パイロット油室27内のパイロット圧に応じて高圧設定用ばね34を圧縮変形することができる。これにより、リリーフ弁10Aのリリーフ設定圧を図10に示す特性線40に沿って最高圧Pmax と最低圧Pmin との範囲内で連続的に、多段階で変更することができ、この範囲内で最適なリリーフ設定圧を選択し、調整することができる。
〔リリーフ圧を可変に設定する作業について〕
【0109】
次に、リリーフ弁10Aの組立時または保守、点検時等にリリーフ圧設定ばね28の初期撓み量(リリーフ設定圧)を可変に設定する作業について説明する。
【0110】
まず、このような設定作業時には、予めロックナット32,33をそれぞれ緩める方向に回転させた状態で、リリーフ圧調整用栓体29の大径部29Bをスリーブ体23内にねじ込むように回転させ、小径部29Aの先端を段付ピストン25内に押込むようにして挿嵌穴25Cの底面に当接させる。そして、スリーブ体23の環状段部23Bとリリーフ圧調整用栓体29の小径部29Bとの間で段付ピストン25を挟むようにして固定する。
【0111】
次に、この状態でスリーブ体23の大径筒部23Cを副弁体用ケーシング17の拡径筒部17Dに対して相対回転させ、両者の螺合位置を変えることにより、ばね室26の軸方向長さを増,減させつつ、リリーフ圧設定ばね28の初期撓み量(ばね荷重)を調節する。そして、例えば前述した最高圧Pmax (図10参照)に対応するばね荷重にリリーフ圧設定ばね28の撓み量を調節した段階で、ロックナット33を締込むことによりスリーブ体23を副弁体用ケーシング17に対して固定する。
【0112】
次に、この状態で比例減圧弁8による外部指令圧を、圧力Pp2(図10参照)以上のパイロット圧となるように上昇させる。そして、この外部指令圧を図1に示す如く指令圧管路38を介して指令圧供給部材36の供給ポート36Bからスリーブ体23内のパイロット油室27に向けて供給する。また、この状態で、リリーフ圧調整用栓体29の大径部29Bをスリーブ体23内から緩める方向に相対回転させ、小径部29Aの先端を段付ピストン25から後退する方向に移動させる。
【0113】
そして、このときにはパイロット油室27内の圧力が高圧設定用ばね34に打ち勝つような高い圧力値であるため、段付ピストン25は、リリーフ圧調整用栓体29の小径部29Aが後退するのに追従してばね室30側へと押動される。このため、段付ピストン25と副弁体22との間でリリーフ圧設定ばね28は、その撓み量(ばね荷重)が徐々に小さくなるように伸び方向に弾性変形する。
【0114】
そこで、リリーフ圧設定ばね28の撓み量が、例えば最低圧Pmin (図10参照)に対応するばね荷重に調節された段階で、スリーブ体23に対するリリーフ圧調整用栓体29の回転を止め、ロックナット32を締込むことによりリリーフ圧調整用栓体29をスリーブ体23に対して固定する。これにより、リリーフ弁10Aのリリーフ設定圧を図10に示す特性線40に沿って最高圧Pmax と最低圧Pmin との範囲内で調整できるように設定作業を行うことができる。
【0115】
また、これ以外の調整方法としては、例えば前述の如く最高圧Pmax (図10参照)に対応するばね荷重にリリーフ圧設定ばね28の撓み量を調節し、ロックナット33によりスリーブ体23を副弁体用ケーシング17に対して固定した状態で、比例減圧弁8による外部指令圧を繰り返し増,減させながら、リリーフ圧調整用栓体29の大径部29B側をスリーブ体23内で相対回転させて両者の螺合位置を変えることにより、パイロット圧の圧力Pp1,Pp2と最高圧Pmax ,最低圧Pmin との関係を調整することもできる。
【0116】
また、図5、図6中に示す寸法Lの大きさ、即ちリリーフ圧調整用栓体29の小径部29Aの先端と段付ピストン25の挿嵌穴25Cとの間に形成される軸方向隙間(寸法L)の大きさについても、リリーフ圧調整用栓体29の大径部29B側をスリーブ体23内で相対回転させて両者の螺合位置を変えることにより適宜に調整することができる。
【0117】
このように、段付ピストン25が内部に設けられるスリーブ体23の副弁体用ケーシング17に対する螺合位置を変えることにより、段付ピストン25と副弁体22との間に配設されるリリーフ圧設定ばね28の撓み量(ばね荷重)を、スリーブ体23の螺合位置に応じて可変に調整でき、これによってリリーフ設定圧の最高圧Pmax (図10参照)を外部指令圧に拘りなく変更することができる。
【0118】
また、スリーブ体23に対するリリーフ圧調整用栓体29の螺合位置を変えることにより、高圧設定用ばね34の撓み量(ばね荷重)を可変に調整でき、これによって外部指令圧、即ち図5中に示す寸法Lの大きさ、さらには図10中に示すリリーフ設定圧の最低圧Pmin の設定値等を適宜に変更することができる。
〔指令圧供給部材36の位置合せ作業について〕
【0119】
ところで、リリーフ弁10Aの組立て時には、弁ケース12(主弁体用ケーシング13および副弁体用ケーシング17等)を弁ハウジング11の弁取付穴11Cに螺合して取付ける。このため、指令圧供給部材36を副弁体用ケーシング17に回動可能に設けない場合には、径方向外向きに張出した指令圧供給部材36の張出し部36Cが、周囲に配置された他の油圧機器(図示せず)等に干渉し、組立て時の作業性が低下する。
【0120】
そこで、本実施の形態では、副弁体用ケーシング17(拡径筒部17D)の外周側に外径寸法Db(図4参照)の全周溝17Eを形成し、主弁体用ケーシング13(突出筒部13B)の他側端面13Dと全周溝17Eの間には、指令圧供給部材36の挿嵌部36Aが図2中の矢示E,F方向に回動可能に挿嵌される環状凹部35を環状の段差として形成する構成としている。
【0121】
このため、副弁体用ケーシング17を主弁体用ケーシング13の突出筒部13B内に取付ける前に、指令圧供給部材36の挿嵌部36Aを副弁体用ケーシング17の全周溝17Eに挿嵌して取付け、この状態で指令圧供給部材36を周方向(図2中の矢示E,F方向)に回動することにより、指令圧供給部材36の張出し部36C側が周囲の油圧機器等に干渉しないように適宜に位置合せすることができ、指令圧管路38を供給ポート36Bに接続する配管作業も容易に行うことができる。
【0122】
そして、副弁体用ケーシング17の全周溝17Eに指令圧供給部材36を挿嵌して前述の如き位置合せ作業が終了した後には、指令圧供給部材36を抜止め、廻止めするために、締結ナット37を雄ねじ部17Fに螺着することにより、指令圧供給部材36を主弁体用ケーシング13の他側端面13Dと締結ナット37との間で挟持するように締付けて固定することができる。
【0123】
しかも、本実施の形態で採用した環状凹部35は、スリーブ体23内の高圧設定ばね34に対して軸方向一側へと離間した位置に配置する構成としている。これにより、リリーフ設定圧の可変幅を低圧から高圧の範囲で幅広く可変に設定するため、高圧設定ばね34のばね力を大きく、即ち高圧設定ばね34の外形寸法を大きくした場合でも、指令圧供給部材36(挿嵌部36A)の径方向寸法を大きくする必要がなく、設定圧可変式のリリーフ弁10Aの外形寸法、特に指令圧供給部材36の外径寸法等を小さく保つことができる。
【0124】
かくして、本実施の形態によれば、外部指令圧用の回動部材である指令圧供給部材36を、弁ケース12の外周側のうち高圧設定ばね34の配設位置よりも軸方向の一側となる位置に環状凹部35と締結ナット37とを介して固定することにより、高圧設定ばね34の外径寸法等に影響されることなく、指令圧供給部材36(回動部材)を設計、製作することができ、指令圧供給部材36を含めたリリーフ弁10A全体の外径寸法を小さくして、小型、軽量化を図ることができる。
【0125】
また、本実施の形態によれば、リリーフ圧設定ばね28によるリリーフ設定圧を最高圧Pmax と最低圧Pmin との範囲内で任意に変えるときには、例えば副弁体用ケーシング17に設けた指令圧供給部材36の供給ポート36Bからスリーブ体23の油穴23D等を通じてパイロット油室27に導かれるパイロット圧を、圧力Pp1〜Pp2(図10参照)の如く漸次大きくすることにより、このときのパイロット圧で段付ピストン25を高圧設定用ばね34に抗して軸方向に押動でき、これに応じてリリーフ圧設定ばね28の撓み量(ばね荷重)を漸次小さくすることができると共に、前記リリーフ設定圧を最高圧Pmax と最低圧Pmin との間で連続的に多段階で、かつ任意に下げることができる。
【0126】
また、前記外部指令圧によるパイロット圧を、これとは逆に圧力Pp2から圧力Pp1に向けて漸次低くなるように下げるときには、高圧設定用ばね34のばね力で段付ピストン25をパイロット油室27側に向けて徐々に変位させるように付勢することができる。そして、段付ピストン25の変位に従ってリリーフ圧設定ばね28の初期撓み量(ばね荷重)を漸次大きくすることができ、これに応じて前記リリーフ設定圧を最高圧Pmax となる設定値まで連続的に多段階で、かつ任意に増大させることができる。
【0127】
また、段付ピストン25には、大径ピストン筒部25Bの内周側にリリーフ圧調整用栓体29の小径部29Aが挿嵌される挿嵌穴25Cを設け、小径ピストン部25Aには挿嵌穴25C内に連通する軸方向の油孔25Dを穿設しているので、例えば副弁体22の開弁に伴って圧力室19内の温度上昇した油液がばね室26内に流入しても、このときの油液を段付ピストン25の油孔25Dを通じて挿嵌穴25C内に導くことができ、これによって段付ピストン25の大径ピストン筒部25Bをリリーフ圧調整用栓体29の小径部29Aよりも先に温度上昇させ、段付ピストン25がリリーフ圧調整用栓体29に熱膨張で固着する等の不具合をなくすことができる。
【0128】
これにより、スリーブ体23とリリーフ圧調整用栓体29との間に軸方向変位可能に配置した段付ピストン25を、パイロット油室27の圧力変化に追従して高い応答性で変位させることができ、段付ピストン25の変位に依存するリリーフ圧力可変特性のヒステリシスを小さく抑えることができる。
【0129】
また、本実施の形態では、例えば図9に示す段付ピストン25の如く、大径ピストン筒部25Bの内周側に設けた挿嵌穴25Cの穴径(寸法D1)を小径ピストン部25Aの外径(寸法D2)と同一径またはほぼ等しい寸法に形成しているので、下記のようにリリーフ圧力の可変特性がばね室26内に発生した背圧の影響を受けるのを抑えることができる。
【0130】
即ち、段付ピストン25の小径ピストン部25Aと副弁体22との間に形成したばね室26は、副弁体用ケーシング17の油穴17H、環状空間18および主弁体用ケーシング13と主弁体15との間の環状通路18A等を介して低圧側油通路11Bに連通している。このため、低圧側油通路11B側で仮に圧力脈動等が発生してばね室26内に伝わったとしても、このときの圧力変動を段付ピストン25は、小径ピストン部25A側だけでなく、油孔25Dを通じて挿嵌穴25C側でも受圧する。
【0131】
これにより、段付ピストン25は、小径ピストン部25Aを軸方向(例えば、図5中の右方向)に押圧する力を、挿嵌穴25C内で左方向に作用する力で打ち消すことができ、段付ピストン25が圧力変動(脈動等)の影響を受けるのを抑えることができる。この結果、段付ピストン25との間で副弁体22を閉弁方向に付勢するリリーフ圧設定ばね28は、副弁体22の背圧(低圧側油通路11Bの圧力)による脈動等の影響でばね荷重が変化するのを抑えられ、このときの圧力脈動等に伴う副弁体22のチャタリングを容易に低減することができる。
【0132】
このように、段付ピストン25は、挿嵌穴25Cの穴径(寸法D1)を小径ピストン部25Aの外径(寸法D2)と同一径、またはほぼ等しい寸法に形成するという簡単な構造で、圧力脈動等に伴う副弁体22のチャタリングを容易に防ぐことができ、リリーフ圧力の可変特性がばね室26内に発生した背圧の影響を受けて変動するのを抑えることができると共に、装置全体の簡素化等を図ることができる。
【0133】
従って、本実施の形態によれば、リリーフ弁10Aのリリーフ設定圧を外部指令圧(パイロット圧)に従って図10に示す特性線40の如く連続的に、多段階で調整することができ、パイロット圧の圧力Pp1,Pp2と最高圧Pmax ,最低圧Pmin との関係を高い自由度をもって設定できると共に、リリーフ圧力可変特性のヒステリシスを小さく抑え、背圧の影響を受けずに、チャタリングの少ない安定したリリーフ性能を発揮することができる。
【0134】
次に、図11は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ノズル筒等を廃止して主弁体に絞り通路を直接的に設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0135】
図中、41は弁ケース12内に設けられた弁体を示し、該弁体41は、後述の主弁体42と副弁体47とにより構成されている。
【0136】
42は主弁体用ケーシング13内の主弁座13Eに離,着座する主弁体で、該主弁体42は、第1の実施の形態で述べた主弁体15とほぼ同様に構成され、ポペット部42Aと筒部42Bとを有している。しかし、この場合には、第1の実施の形態で述べたノズル筒16等が廃止されている。そして、主弁体42の中心側には、後述の圧力室45内に高圧側油通路11A内の圧力(圧油)を導くための絞り通路43が直接的に形成されている。
【0137】
44は主弁体用ケーシング13に固定して設けられた副弁体用ケーシングで、この副弁体用ケーシング44は、第1の実施の形態で述べた副弁体用ケーシング17とほぼ同様に構成され、中間筒部44A、ガイド筒部44B、副弁座44C、拡径筒部44D、全周溝44E、雄ねじ部44F、径方向孔44Gおよび油穴44Hを有している。
【0138】
そして、副弁体用ケーシング44の全周溝44Eは、主弁体用ケーシング13の他側端面13Dとの間に環状凹部35を構成し、雄ねじ部44Fには締結ナット37が螺着されている。しかし、この場合の副弁体用ケーシング44は、主弁体42との間で圧力室45を形成するガイド筒部44Bの形状を簡素化している点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0139】
また、主弁体用ケーシング13と副弁体用ケーシング44との間には、第1の実施の形態と同様に低圧室としての環状空間18が形成され、この環状空間18は、副弁体用ケーシング44の油穴44Hを介してばね室26に常時連通すると共に、主弁体用ケーシング13と主弁体15との間の径方向隙間(環状通路18A)等を介して低圧側油通路11Bに常時連通している。そして、圧力室45は、第1の実施の形態で述べた圧力室19と同様に構成され、主弁体42の筒部42Bと副弁体用ケーシング44のガイド筒部44Bとの間に位置する筒状空間として形成されている。
【0140】
46は主弁体42を閉弁方向に向けて付勢する弁ばねで、該弁ばね46は、第1の実施の形態で述べた弁ばね20と同様に弱ばねを用いて構成され、副弁体用ケーシング44のガイド筒部44Bと主弁体42との間に配設されている。しかし、この場合には、第1の実施の形態で述べた弁ばね21が廃止されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0141】
47は副弁体用ケーシング44のガイド筒部44B内に変位可能に設けられた副弁体で、該副弁体47は、第1の実施の形態で述べた副弁体22とほぼ同様に構成され、主弁体42よりも小型のポペット弁体として形成されている。そして、副弁体47は、副弁体用ケーシング44の副弁座44Cに離,着座することにより圧力室45をばね室26(環状空間18、低圧側油通路11B側)に対して連通,遮断するものである。
【0142】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、指令圧供給部材36を含めたリリーフ弁10A全体の外径寸法を小さくして、小型、軽量化を図ることができると共に、リリーフ圧設定ばね28によるリリーフ設定圧を、外部指令圧等に応じて可変に設定することができ、第1の実施の形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
【0143】
特に、本実施の形態では、絞り通路43を主弁体42に直接的に設けることにより、主弁体42、副弁体用ケーシング44のガイド筒部44B、圧力室45および副弁体47等の形状を簡素化することができ、製作時の作業性等を向上することができる。
【0144】
次に、図12は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、主弁体用ケーシング内に主弁体用のガイド穴を設け、該ガイド穴内に主弁体を摺動可能に設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0145】
図中、51は弁ハウジング11に固定して設けられた筒状の弁ケースで、該弁ケース51は、第1の実施の形態で述べた弁ケース12とほぼ同様に構成され、後述の主弁体用ケーシング52、副弁体用ケーシング55、スリーブ体23およびリリーフ圧調整用栓体29等を有している。
【0146】
52は本実施の形態で採用した主弁体用ケーシングで、該主弁体用ケーシング52は、第1の実施の形態で述べた主弁体用ケーシング13とほぼ同様に構成され、軸方向一側の固定筒部52A、軸方向他側の突出筒部52B、環状段部52C、他側端面52D、主弁座52Eおよび通液孔52F等を有している。
【0147】
しかし、この場合の主弁体用ケーシング52には、固定筒部52Aの内周側にガイド穴52Gと弁シート嵌合穴52Hとが形成され、該ガイド穴52Gと弁シート嵌合穴52Hよりも径方向外側となる位置には、環状空間18を低圧側油通路11Bに常時連通させる複数の通路穴52Jが僅かに斜めに傾いた油路として形成されている。
【0148】
ここで、主弁体用ケーシング52のガイド穴52Gは、後述の主弁体54を摺動可能にガイドするもので、主弁座52Eよりも大径に形成され、弁シート嵌合穴52Hよりも小径な円形穴として形成されている。また、主弁体用ケーシング52の弁シート嵌合穴52H内には、後述する副弁体用ケーシング55のガイド筒部55Bが液密に嵌合して固定されるものである。
【0149】
53は弁ケース51内に設けられた弁体を示し、該弁体53は、主弁体54と後述の副弁体58とにより構成されている。ここで、主弁体54は、第1の実施の形態で述べた主弁体15とほぼ同様に構成され、主弁体用ケーシング52内の主弁座52Eに離,着座するものである。
【0150】
しかし、この場合の主弁体54は、主弁体用ケーシング52のガイド穴52G内に摺動可能に挿嵌して設けられる単純な形状のポペット弁体として形成されている。また、この場合には、第1の実施の形態で述べたノズル筒16等が廃止されている。そして、主弁体54の中心側には、後述の圧力室56内に高圧側油通路11A内の圧力(圧油)を導くための絞り通路54Aが直接的に形成されている。
【0151】
55は主弁体用ケーシング52に固定して設けられた副弁体用ケーシングで、この副弁体用ケーシング55は、第1の実施の形態で述べた副弁体用ケーシング17とほぼ同様に構成され、中間筒部55A、ガイド筒部55B、副弁座55C、拡径筒部55D、全周溝55E、雄ねじ部55F、径方向孔55Gおよび油穴55Hを有している。
【0152】
そして、副弁体用ケーシング55の全周溝55Eは、主弁体用ケーシング52の他側端面52Dとの間に環状凹部35を構成し、雄ねじ部55Fには締結ナット37が螺着されている。しかし、この場合の副弁体用ケーシング55は、主弁体54との間で圧力室56を形成するガイド筒部55Bの形状が、第1の実施の形態で述べたガイド筒部17Bとは異なっている。
【0153】
ここで、副弁体用ケーシング55のガイド筒部55Bには、副弁座55Cと圧力室56との間に位置して絞り通路55Jが形成され、この絞り通路55Jは、後述の副弁体58が開弁したときに圧力室56内からばね室26に向けて流通する油液に絞り作用を与え、両者の間に圧力差を発生させるものである。
【0154】
また、主弁体用ケーシング52と副弁体用ケーシング55との間には、第1の実施の形態と同様に低圧室としての環状空間18が形成され、この環状空間18は、副弁体用ケーシング55の油穴55Hを介してばね室26に常時連通すると共に、主弁体用ケーシング52の通路穴52Jを介して低圧側油通路11Bに常時連通している。そして、圧力室56は、第1の実施の形態で述べた圧力室19と同様に構成され、主弁体54と副弁体用ケーシング55のガイド筒部55Bとの間に位置する空間として形成されている。
【0155】
57は主弁体54を閉弁方向に向けて付勢する弁ばねで、該弁ばね57は、第1の実施の形態で述べた弁ばね20と同様に弱ばねを用いて構成され、副弁体用ケーシング55のガイド筒部55Bと主弁体54との間に配設されている。しかし、この場合には、第1の実施の形態で述べた弁ばね21が廃止されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0156】
58は副弁体用ケーシング55のガイド筒部55B内に変位可能に設けられた副弁体で、該副弁体58は、第1の実施の形態で述べた副弁体22とほぼ同様に構成され、副弁体用ケーシング55の副弁座55Cに離,着座することにより圧力室56をばね室26(環状空間18、低圧側油通路11B側)に対して連通,遮断する。しかし、この場合の副弁体58は、円錐形状をなす小型のポペット弁体として形成され、第1の実施の形態に比較して単純な形状となっている。
【0157】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、ばね室26内に位置して副弁体58と段付ピストン25との間に配設したリリーフ圧設定ばね28によるリリーフ設定圧を、外部指令圧等に応じて可変に設定することができ、第1の実施の形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
【0158】
特に、本実施の形態では、主弁体用ケーシング52内に主弁体54用のガイド穴52Gを設けることにより、主弁体54をガイド穴52G内に摺動可能に挿嵌して設ける構成としている。このため、主弁体54の形状を簡素化することができると共に、副弁体用ケーシング55のガイド筒部55B、圧力室56および副弁体58等の形状も簡素化することができ、製作時の作業性等を向上することができる。
【0159】
なお、前記第1の実施の形態では、リリーフ圧調整用栓体29の小径部29Aと大径部29Bとを一体物として形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図13に示す変形例のように、リリーフ圧調整用栓体29′の小径部29A′と大径部29B′とを別体に形成すると共に、小径部29A′を大径部29B′内に軸方向で位置調整可能に螺合して設ける構成としてもよい。
【0160】
そして、この場合には、例えば出口ポート31′側から小径部29A′を回転して大径部29B′に対する小径部29A′の螺合位置を変えることにより、リリーフ圧調整用栓体29′の小径部29A′の先端と段付ピストン25の挿嵌穴25Cとの間に形成される軸方向隙間(寸法L)の大きさを簡単に変更することができる。この結果、高圧設定用ばね34の撓み量(ばね荷重)を大きな自由度をもって可変に調整することができ、これによって、外部指令圧に対するリリーフ設定圧の最低圧Pmin の設定値をより細かく変更することができる。
【0161】
また、図13に示す変形例では、大径部29B′の一側端面が段差部29C′となり、出口ポート31′は、軸穴31A′、油穴31B′を介してばね室30に連通している。なお、第2,第3の実施の形態についても、図13に示す変形例を第1の実施の形態と同様に適用することができる。
【0162】
また、前記第1の実施の形態では、主管路4A,4Bの途中に設けるリリーフ弁10A,10Bのうち一方のリリーフ弁10Aを設定圧可変式のリリーフ弁とし、他方のリリーフ弁10Bはリーフ設定圧が所定圧に予め決められた設定圧固定式のリリーフ弁とする場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば他方のリリーフ弁10Bを設定圧可変式のリリーフ弁とし、図1、図5等に示すリリーフ弁10Aと同様な構成を採用してもよいものである。また、メインの高圧リリーフ弁6についても、これと同様に設定圧可変式のリリーフ弁とすることができる。そして、上記の変更は、前記第2、第3の実施の形態で採用した構成についても適用できるものである。
【0163】
さらに、前記各実施の形態では、油圧ショベルの作業装置(ブーム、アームまたはバケット等)を駆動する油圧シリンダ1用の駆動回路に、設定圧可変式のリリーフ弁を適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば建設機械の走行用油圧モータを駆動する油圧回路、旋回用油圧モータを駆動する油圧回路等に用いるリリーフ弁に適用してもよく、種々の油圧アクチュエータ、油圧ポンプ等を保護するリリーフ弁にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0164】
1 油圧シリンダ
2 油圧ポンプ
3 タンク
4A,4B 主管路
5 方向制御弁
8 比例減圧弁(外部指令圧の供給手段)
10A 設定圧可変式のリリーフ弁
11 弁ハウジング
11A 高圧側油通路
11B 低圧側油通路
11C 弁取付穴
12,51 弁ケース
13,52 主弁体用ケーシング
13A,52A 固定筒部(主弁体用ケーシングの一側)
13B,52B 突出筒部(主弁体用ケーシングの他側)
13D,52D 他側端面
13E,52E 主弁座
14,41,53 弁体
15,42,54 主弁体
16 ノズル筒
16B,43,54A 絞り通路
17,44,55 副弁体用ケーシング
17C,44C,55C 副弁座
17E,44E,55E 全周溝
17F,44F,55F 雄ねじ部
17G,44G,55G 径方向孔
18 環状空間(低圧室)
19,45,56 圧力室
20,21,46,57 弁ばね
22,47,58 副弁体
23 スリーブ体
25 段付ピストン(ピストン)
25A 小径ピストン部
25B 大径ピストン筒部
25C 挿嵌穴
25D 油孔
25E 受圧面
26,30 ばね室
27 パイロット油室
28 リリーフ圧設定ばね
29,29′ リリーフ圧調整用栓体
31,31′ 出口ポート
32,33 ロックナット
34 高圧設定用ばね
35 環状凹部
36 指令圧供給部材(回動部材)
36A 挿嵌部
36B 外部指令圧の供給ポート
36C 張出し部
36D 環状の連通溝
37 締結ナット(締結部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に低圧側油通路と高圧側油通路とを有し該各油通路の間に弁取付穴が設けられた弁ハウジングと、軸方向の一側が該弁ハウジングの弁取付穴に取付けられ軸方向の他側が該弁ハウジング外に突出した筒状の弁ケースと、該弁ケースの軸方向一側に位置して該弁ケース内に変位可能に設けられ前記高圧側油通路と低圧側油通路との間を連通,遮断する弁体と、前記弁ケース内に撓み変形可能に設けられ該弁体の開弁圧を撓み量に応じて可変に設定するリリーフ圧設定ばねと、該リリーフ圧設定ばねよりも軸方向他側に位置して前記弁ケース内に設けられ該リリーフ圧設定ばねを高圧に設定するためのばね力を有した高圧設定ばねと、該高圧設定ばねと前記リリーフ圧設定ばねとの間に位置して前記弁ケース内に設けられ外部指令圧を受圧することにより前記高圧設定ばねに抗して前記リリーフ圧設定ばねの設定圧を低圧側に変化させるピストンと、前記弁ケースに設けられ該ピストンの受圧面に外部指令圧を導く外部指令圧供給部とを備えてなる設定圧可変式のリリーフ弁において、
前記弁ケースの外周側には、前記高圧設定ばねの配設位置よりも軸方向の一側となる位置に環状の段差として形成され前記外部指令圧供給部が周方向に回動可能に挿嵌される環状凹部を設け、
前記外部指令圧供給部は、該環状凹部の外周側に挿嵌した状態で前記弁ケースの周方向に回動される外部指令圧用の回動部材により構成し、
前記弁ケースの外周側には、該外部指令圧用の回動部材を周方向に回動して位置合せした状態で前記環状凹部の外周側に固定する締結部材を緩締可能に設ける構成としたことを特徴とする設定圧可変式のリリーフ弁。
【請求項2】
前記外部指令圧用の回動部材は、前記環状凹部の外周側に挿嵌されるリング状の挿嵌部と、該挿嵌部の外周側から径方向に張出して形成され前記外部指令圧の供給ポートを有した張出し部と、前記挿嵌部の内周面に形成され前記弁ケース内の前記ピストンの受圧面に対して前記外部指令圧の供給ポートを連通させる環状の連通溝とを有する構成としてなる請求項1に記載の設定圧可変式のリリーフ弁。
【請求項3】
前記弁ケースは、軸方向の一側が前記弁ハウジングの弁取付穴に取付けられ軸方向の他側が前記弁ハウジング外に突出した筒状体からなり一側の内周には前記各油通路の間に位置して主弁座が設けられた主弁体用ケーシングと、軸方向の一側が該主弁体用ケーシング内に着脱可能に固定して設けられ軸方向の他側が該主弁体用ケーシング外に突出した筒状体からなり一側の内周に副弁座が形成された筒状の副弁体用ケーシングとを含む構成とし、
前記弁体は、前記主弁体用ケーシングの軸方向一側に位置して前記主弁体用ケーシング内に軸方向変位可能に設けられ前記主弁座に離,着座することによって前記高圧側油通路と低圧側油通路との間を連通,遮断する主弁体と、前記副弁体用ケーシング内に軸方向変位可能に設けられ前記副弁座に離,着座することにより前記主弁体の開,閉を制御する副弁体とによって構成し、
前記環状凹部は、前記副弁体用ケーシングの外周側に位置して前記主弁体用ケーシングの軸方向他側と前記締結部材との間に形成する構成とし、
前記外部指令圧用の回動部材は、前記副弁体用ケーシングの外周側に挿嵌した状態で前記主弁体用ケーシングの軸方向他側の端面と前記締結部材との間に締付けて固定する構成としてなる請求項1または2に記載の設定圧可変式のリリーフ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−38543(P2011−38543A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183549(P2009−183549)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】