説明

診断回路、発振回路

【課題】リファレンスクロックを要することなく発振信号の周波数範囲を診断できる、回路規模の小さな診断回路等を提供する。
【解決手段】制御信号102に応じて周波数が変化する発振信号166の周波数範囲を診断する診断回路10であって、制御信号102を受け取り、制御信号102に基づく値である比較値と所定の限界値とを比較する比較器を含み、比較器が比較した結果に基づいて診断出力値100を生成する。所定の限界値として上限値と下限値とを定め、比較値と上限値とを比較する上限比較器と、比較値と下限値とを比較する下限比較器とを含み、上限比較器および下限比較器が比較した結果に基づいて、診断出力値100を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断回路、発振回路等に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の圧電素子は信号源やクロック源を生成するのに広く利用されている。水晶振動子は等価直列抵抗が大きいと発振し始めるまで時間がかかる。しかし、水晶振動子の小型化により等価直列抵抗が大きくなってきており、起動時における発振までの時間(起動時間)の短縮が求められている。特許文献1の発明では、定常時に使用する定常発振用回路(発振ループ32)に加えて、起動時に使用する起動発振用回路(スタート専用の発振器15)を設置して起動時間を早めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−21518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、起動発振用回路は、起動時間が早いものの周波数安定性が低い内部発振信号を生成する場合がある。内部発振信号の周波数が不安定だと、定常発振用回路による発振が妨げられたり、所望の周波数が得られるまでにかえって時間がかかったりすることがある。特に、安全性が求められる自動車、飛行機、船舶、鉄道等の一部として使用される場合には、定常時の発振信号が安定するまで自動車等が動作しないことがあり得る。このとき、動作開始が遅いと使用者の利便性を著しく損ねる可能性がある。また、自動車等が動作しないときに、原因が表示されないと使用者等は適切な対応をとることができない。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、リファレンスクロックを要することなく発振信号の周波数範囲を診断できる、回路規模の小さな診断回路を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、制御信号に応じて周波数が変化する発振信号の周波数範囲を診断する診断回路であって、前記制御信号を受け取り、前記制御信号に基づく値である比較値と所定の限界値とを比較する比較器を含み、前記比較器が比較した結果に基づいて診断出力値を生成する。
【0007】
(2)この診断回路において、前記所定の限界値として上限値と下限値とを定め、前記比較値と前記上限値とを比較する上限比較器と、前記比較値と前記下限値とを比較する下限比較器とを含み、前記上限比較器および前記下限比較器が比較した結果に基づいて前記診断出力値を生成してもよい。
【0008】
これらの発明によれば、診断回路は、発振信号の周波数を変化させる制御信号を受け取り、制御信号に基づく値(比較値)と限界値とを比較することで発振信号の周波数範囲を診断する。このとき、例えば周波数カウンターによって発振信号をカウントする必要はない。そのため、リファレンスクロックも不要であり回路規模も小さい。限界値との比較結果に応じた診断出力値を生成するので、例えばCPUが診断出力値に基づいて次の適切な対応をとることが可能になる。
【0009】
このとき、限界値は上限値と下限値であってもよい。上限値と下限値は所望の周波数範囲に対応する。そして、比較値が上限値と下限値とで定められる範囲に含まれない場合には、発振信号の周波数は所望の周波数範囲に含まれていないので、診断出力値を変化させて診断回路の外部に知らせる。例えば外部のCPUは、発振信号の周波数が不安定で起動に時間がかかるので再起動を行う、といった対応が可能になる。ここで、所望の周波数範囲とは正常な場合に発振信号がとり得る周波数範囲であってもよい。このとき、許容される起動時間や製造ばらつきなどが考慮されて周波数範囲が定められてもよい。
【0010】
なお、制御信号とは例えば制御電流であるが、制御電圧や別の信号であってもよい。制御信号は、例えば一定の値をとるが、可変であってもよいし、いくつかの中から選択可能であってもよい。診断出力値は、例えば診断回路から信号として常に出力されるが、ステータスレジスターにマッピングされていて外部から読み出されてもよい。
【0011】
(3)この診断回路において、前記制御信号は定電流源から供給される制御電流であってもよい。
【0012】
(4)この診断回路において、前記比較値は電圧値であってもよい。
【0013】
(5)この診断回路において、前記限界値は所定の電圧を抵抗分割して生成されてもよい。
【0014】
(6)この診断回路において、前記比較値は電流値であってもよい。
【0015】
これらの発明によれば、比較値や限界値を得る手法は1つに限られず、柔軟な診断回路を構成することができる。これらの発明では、制御信号は定電流源から供給される制御電流である。例えば奇数個のインバーターから成るリングオシレーターでは、制御電流によって各インバーターの遅延時間が制御される。そのため、発振信号の周波数を制御することができる。
【0016】
このとき、診断回路は制御電流をその電流値に応じた電圧値に変換してもよい。電圧値に変換した場合には、限界値を比較的容易に生成することが可能になる。例えば、VDDやVDDから得られるリファレンス電圧VREFを抵抗分割することで限界値を生成してもよい。分割抵抗はばらつきに強く、量産時に所望の抵抗値を比較的安定して得ることが可能である。また、診断回路は制御電流を直接に限界値と比較してもよい。このとき、変換回路が不要になるため、診断回路の規模を更に小さくすることが可能である。
【0017】
(7)本発明は、前記のいずれかに記載の診断回路を含む発振回路であって、起動時に用いられる発振信号を供給する起動発振用回路を含み、前記起動発振用回路は、前記発振信号を生成するリングオシレーターを含み、前記診断回路は、前記起動発振用回路から供給される前記発振信号の周波数範囲を診断する。
【0018】
本発明の発振回路は、起動時の発振信号の周波数範囲を診断できる回路規模の小さな診断回路を含む。そのため、起動時間を早めつつも、回路規模の増大を抑えた発振回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の診断回路を説明するブロック図。
【図2】第1実施形態の診断回路の回路図。
【図3】図3(A)〜図3(C)は図2の具体例を表す図。
【図4】変形例の診断回路のブロック図。
【図5】適用例の発振回路のブロック図。
【図6】適用例の発振回路の回路図。
【図7】第1比較例の診断回路のブロック図。
【図8】図8(A)は第2比較例の診断回路の回路図。図8(B)は第2比較例のローパスフィルターにおける特性の例を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図3を参照して説明する。また、比較例の説明において図7〜図8も参照する。
【0022】
1.1.本実施形態の診断回路の構成
図1は本実施形態の診断回路10を説明するためのブロック図である。診断回路10は、起動発振用回路20から制御信号102を受け取り、診断出力値100を出力する。制御信号102は、起動発振用回路20の内部発振回路22で生成される内部発振信号166の周波数を制御する。制御信号102は、制御電圧や別の信号であってもよいが、本実施形態では制御電流であるとして、以下では制御電流102と表記する。
【0023】
診断回路10は、内部発振信号166の周波数が所定の範囲に含まれるか否かを診断し、その結果に応じた診断出力値100を生成する。例えば、正常な内部発振信号166の周波数は20kHz〜30kHzの範囲に含まれるものとして、内部発振信号166がこの範囲外の周波数であると診断した場合に診断出力値100をローレベルからハイレベル(以下、ローレベルを0、ハイレベルを1と表す)に変化させる。
【0024】
内部発振回路22で生成される内部発振信号166は、起動時間を早めるために周波数安定性が低い可能性がある。そのため、診断回路10によって内部発振信号166の周波数が所定の範囲内にあることを確認できることが好ましい。例えば、安全性が求められる自動車の一部として使用される場合を考慮する。このとき、故障が発生して周波数が所定の範囲に含まれなくなった場合には、診断回路10が診断出力値100を変化させるので、なるべく早く自動車を始動できるようにCPU等が適切な対応をとることが可能になる。また、診断出力値100の変化に基づいて、起動発振用回路20の故障という原因を知らせることができるので、その後に修理等が必要になった場合にも役立つ。
【0025】
ここで、診断回路10は、できるだけ小さな回路規模で実現できることが好ましい。詳細については後述するが、本実施形態では内部発振信号166を直接に受け取るのではなく、その制御電流102を受け取って所定の値と比較することで内部発振信号166の周波数範囲を診断する。そのため、例えばリファレンスクロックを要しない、回路規模の小さな診断回路10を実現できる。
【0026】
1.2.診断回路の例
図2は、第1実施形態の診断回路10の回路例を表す図である。なお、説明のために起動発振用回路20についても具体的な回路例で示している。図1と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。
【0027】
まず、起動発振用回路20について説明する。起動発振用回路20は、制御信号源21として定電流源を含み、制御電流102を、リングオシレーターを構成するインバーター70−1〜70−Nおよび診断回路10に供給する。ここで、Nは奇数であり、インバーター70−Nの出力(内部発振信号166)がインバーター70−1に直結されているため0と1とを繰り返す自己発振が生じる。ここで、1つのインバーターの遅延時間をtとするとNt毎に0と1とを繰り返すので、内部発振信号166の周波数は1/(2Nt)となる。ここで、制御電流102の電流値が大きくなると、遅延時間tは飽和しない限り減少する。すなわち、制御電流102の電流値が大きくなると、内部発振信号166の周波数は高くなる。
【0028】
すると、内部発振信号166の周波数が所望の周波数範囲に含まれる場合には、制御電流102の電流値も所定の範囲に含まれることになる。本実施形態の診断回路10は、制御電流102の電流値が特定の範囲に含まれるか否かを検出することで、内部発振信号166の周波数範囲を診断する。
【0029】
図2のように、診断回路10は受け取った制御電流102を、N型トランジスター62、63で構成されるカレントミラー回路でコピーする。そして、ドレインとゲートを接続したP型トランジスター64によって制御電流102の電流値に応じた電圧値へと変換する。本実施形態の比較値104は、制御電流102の電流値を反映した電圧値である。この比較値104を、コンパレーター60によって上限値106と比較し、コンパレーター61によって下限値108と比較する。ここで、2つのコンパレーターを区別するために、以下ではコンパレーター60は上限比較器60と、コンパレーター61は下限比較器61と表現する。
【0030】
上限値106と下限値108は、ある電圧VREF(<VDD)を抵抗分割することで得てもよい。本実施形態では、抵抗65〜67によって抵抗分割をおこなっている。なお、本実施形態ではVDDとは異なるVREFに基づいて上限値106と下限値108を生成しているが、VDDを用いてもよい。
【0031】
上限値106と下限値108とで定められる範囲に比較値104が含まれていれば、上限比較器60の出力と下限比較器61の出力は共に0であるため、これらの信号をOR回路68に入力して得られる診断出力値100は0になる。つまり、診断出力値100が0であれば、制御電流102も所定の範囲に含まれており、結果として内部発振信号166の周波数が所望の周波数範囲に含まれることになる。
【0032】
図3(A)〜図3(C)は、図2の具体例を表すテーブルである。図3(A)は、内部発振信号166の周波数に応じた制御電流102の電流値の具体例を表す。例えば、正常な内部発振信号166の周波数が20kHz〜30kHzであれば、制御電流102の電流値は3.0uA〜4.0uAに含まれることになる。よって、図2の診断回路10の下限値108を、制御電流102が3.0uAである場合の比較値104の値に設定すればよい。また、図2の診断回路10の上限値106を、制御電流102が4.0uAである場合の比較値104の値に設定すればよい。
【0033】
図3(B)は、抵抗65〜67の抵抗値R〜Rの具体例である。図2のように上限値106と下限値108とは抵抗値R〜Rによって定まる。そこで、R=200kΩ、R=260kΩ、R=130kΩとして、内部発振信号166の正常な周波数範囲である20kHz〜30kHzに対応する上限値106と下限値108を設定する。
【0034】
図3(C)は、この例における内部発振信号166の周波数と診断出力値100との関係を表す図である。診断出力値100が0を出力している場合には、内部発振信号166の周波数は正常な周波数範囲にある。しかし、故障等により内部発振信号166の周波数がこの範囲に含まれなくなった場合には、診断出力値100が0から1へと変化する。
【0035】
本実施形態の診断回路10が受け取るのは、内部発振信号166ではなく、その制御電流102であるが、このように、内部発振信号166の周波数が正常な周波数範囲にあるか否かに対応して診断出力値100を変化させることができる。
【0036】
1.3.本実施形態の診断回路の効果
本実施形態の診断回路10の効果について、第1比較例、第2比較例と対比しながら説明する。なお、第1比較例については図7を、第2比較例については図8(A)〜図8(B)を参照するが、図1〜図3と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。
【0037】
1.3.1.第1比較例
図7は、第1比較例における診断回路80のブロック図である。診断回路80は、本実施形態の診断回路10とは異なり、内部発振信号166を受け取る。そして、周波数カウンター82によって内部発振信号166の周波数をカウントし、正常な周波数範囲にあるか否かを診断出力部83で診断して診断出力値100を変化させる。
【0038】
このとき、周波数カウンター82によって正確に周波数をカウントするためには、リファレンスクロック81を必要とする。リファレンスクロックは診断回路80の外部から供給されてもよいが、いずれにせよ、第1比較例における診断回路80はリファレンスクロックを生成する回路を必要とする。
【0039】
ここで、本実施形態の診断回路10は、周波数カウンターを用いる必要がないため、リファレンスクロックも不要である。そのため、第1比較例における診断回路80に比べて回路規模を小さくできる。
【0040】
1.3.2.第2比較例
図8(A)は、第2比較例の診断回路90の回路図である。診断回路90も、本実施形態の診断回路10とは異なり、内部発振信号166を受け取る。そして、内部発振信号166の電圧値が所定の範囲内か、すなわち振幅が所定の範囲内にあるか否かによって診断を行う。ここで、診断回路90は、内部発振信号166を受け取り、抵抗92とキャパシタ93で構成されるローパスフィルター91を通して比較値180とする。なお、比較値180を上限値106、下限値108と比較して診断出力値100を生成する回路の構成は図2と同じであり説明を省略する。
【0041】
図8(B)のように、ローパスフィルター91により、例えば周波数が20kHz以上の内部発振信号166は減衰するので比較値180の振幅が小さくなる。そこで、周波数を20kHzとしたときの比較値180の最大電圧値と最小電圧値とを、それぞれ上限値106、下限値108とする。すると、内部発振信号166の周波数が20kHz以上の場合に、診断出力値100は0になる。逆に、周波数が20kHz未満の場合には、診断出力値100が1になるので故障検出ができる。
【0042】
ここで、本実施形態の診断回路10は、2つのコンパレーターだけで周波数範囲(例えば20kHz〜30kHz)に含まれるか否かの検出が可能である。第2比較例の診断回路90で同じことを実現するためには、更に2つのコンパレーターとそれらに入力する上限値と下限値とを用意して、30kHz未満であることを検出する必要がある。したがって、本実施形態の診断回路10は、第2比較例における診断回路90と比べても回路規模を小さくできる。
【0043】
このように、本実施形態の診断回路10は、リファレンスクロックを要することなく発振信号の周波数範囲を診断することができ、どちらの比較例と比べても回路規模を小さくすることが可能である。
【0044】
なお、本実施形態は内部発振信号166を出力する起動発振用回路20の故障診断を主要な目的としている。例えば、制御信号源21に故障があれば、制御電流102の電流値が変動するので直ちに検出が可能である。しかし、故障診断に限らず、起動発振用回路20の特性評価を行うこともできる。例えば、抵抗65〜67を、外部から抵抗値R〜Rの制御が可能な可変抵抗にすることで周波数特性を測ることができる。このとき、コンパレーターは3つ以上あってもよいし、それぞれのコンパレーターの出力がOR回路68を経由することなく外部に伝えられてもよい。
【0045】
また、上限比較器60と下限比較器61の一方とOR回路68が省略されてもよい。この場合には第2比較例の診断回路90のように、内部発振信号166の周波数がある周波数よりも高いか低いかで診断出力値100が変化する。このときにも、一方のコンパレーターとOR回路68の省略により、第2比較例の診断回路90と比べて回路規模を小さくできる。
【0046】
2.変形例
本発明の第1実施形態の変形例について図4を参照して説明する。なお、図1〜図3、図7〜図8と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。
【0047】
図4は、本変形例における診断回路10Aの回路図である。診断回路10Aは、制御電流102を電圧に変換することなく比較を行い、内部発振信号166の周波数が所定の範囲に含まれるか否かを診断して診断出力値100を生成する。
【0048】
診断回路10Aは、カレントミラー回路でコピーされた制御電流102を比較値104Aとする。そして、比較値104Aを定電流源71、72からそれぞれ与えられる上限値106A、下限値108Aと比較する。なお、上限比較器60と下限比較器61は差動電流検出型アンプである。
【0049】
本変形例における診断回路10Aでは、第1実施形態の診断回路10と比較して、電流電圧変換を行う回路や分割抵抗を省略できるので回路規模を更に小さくすることが可能である。
【0050】
3.適用例
本発明の診断回路の適用例について図5〜図6を参照して説明する。図1〜図4、図7〜図8と同じ要素には同じ番号を付しており説明は省略する。
【0051】
図5は本適用例における発振回路1を示す図である。発振回路1は診断回路10、起動発振用回路20、定常発振用回路30、切り換え回路40、反転増幅回路50を含む。定常発振用回路30は、電流電圧変換回路31と位相調整用回路32とで構成されていてもよい。
【0052】
発振回路1は圧電素子2と接続される。圧電素子2は、例えば水晶振動子であってもよいし、セラミック発振子であってもよい。発振回路1は、励振電流160を受け取り、駆動信号170を出力する。発振回路1は、起動時には内部発振信号166を用いて起動時間を早める。そして、定常時には切り換え回路40によって定常発振用回路30を含む経路(発振ループ)のみを使用して周波数安定性を高める。
【0053】
診断回路10と起動発振用回路20は第1実施形態と同じであるが、起動発振用回路20からの内部発振信号166は切り換え回路40に出力されている。
【0054】
電流電圧変換回路31は、圧電素子2からの励振電流160を受け取り、それを電圧に変換した内部信号162を出力する。位相調整用回路32は、発振ループを形成するための位相調整を行う回路である。位相調整用回路32は、内部信号162を受け取り、その位相を調整した内部信号164を出力する。
【0055】
切り換え回路40は、起動時から定常時への移行を判断し、内部発振信号166の使用、不使用を切り換える。なお、起動時から定常時への移行を知らせる信号は外部から与えられてもよい。例えば、起動時とは電源投入後から一定時間であるとして、その時間の経過後に変化するような信号が切り換え回路40に入力されてもよい。また、駆動信号170の波形に基づいて定常時への移行が判断されてもよい。
【0056】
反転増幅回路50は、切り換え回路40から出力された内部信号168の位相を反転させて駆動信号170として出力する。反転増幅回路50は、駆動信号170の振幅を調整してもよい。
【0057】
図6は本適用例における発振回路1の回路図である。なお、診断回路10と起動発振用回路20は図2と同じであり説明を省略する。
【0058】
電流電圧変換回路31は、例えばオペアンプ33、抵抗34、キャパシタ35で構成される。そして、位相調整用回路32は、例えばキャパシタ36、抵抗37で構成されるハイパスフィルターであってもよい。電流電圧変換回路31によって位相が例えば90°遅れるが、位相調整用回路32(ハイパスフィルター)によって位相の遅れが相殺される。そして、反転増幅回路50によって位相は反転するので、圧電素子2(図5参照)、電流電圧変換回路31、位相調整用回路32、切り換え回路40、反転増幅回路50で構成されるループで発振がおこる。
【0059】
切り換え回路40は例えばスイッチ41で構成される。スイッチ41は起動時にオン状態になり、定常時にはオフ状態となる。すなわち、起動時には内部発振信号166が使用されるが、定常時には不使用となる。
【0060】
反転増幅回路50は、例えばオペアンプ51、抵抗52、53で構成される。反転増幅回路50によって位相は反転する。そして、反転増幅回路50のゲインは抵抗52、53の抵抗値の比を変えることで調整可能である。
【0061】
本適用例における発振回路1は、起動時においては内部発振信号166を用いることで起動時間を早め、定常時には発振ループにより安定した周波数を得ることができる。ここで、内部発振信号166は診断回路10によって正常な周波数範囲にあるか否かが診断されている。そのため、内部発振信号166は、定常時に比べて周波数安定性は低いが、故障があれば直ちに検知されることになる。そのため、原因不明のまま起動時間が遅くなるといった問題が生じることはなく、安全性が求められる自動車等への搭載にも適している。また、診断回路10は回路規模が小さいため、診断回路10を含むことで発振回路1の回路規模が大幅に増大することもない。
【0062】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0063】
1…発振回路、2…圧電素子、10…診断回路、10A…診断回路、20…起動発振用回路、21…制御信号源、22…内部発振回路、30…定常発振用回路、31…電流電圧変換回路、32…位相調整用回路、33…オペアンプ、34…抵抗、35…キャパシタ、36…キャパシタ、37…抵抗、40…切り換え回路、41…スイッチ、50…反転増幅回路、51…オペアンプ、52…抵抗、53…抵抗、60…コンパレーター(上限比較器)、61…コンパレーター(下限比較器)、62…N型トランジスター、63…N型トランジスター、64…P型トランジスター、65…抵抗、66…抵抗、67…抵抗、68…OR回路、70−1〜70−N…インバーター、71…定電流源、72…定電流源、80…(比較例の)診断回路、81…リファレンスクロック、82…周波数カウンター、83…診断出力部、90…(比較例の)診断回路、91…ローパスフィルター、92…抵抗、93…キャパシタ、100…診断出力値、102…制御電流(制御信号)、104…比較値、104A…比較値、106…上限値、106A…上限値、108…下限値、108A…下限値、160…励振電流、162…内部信号、164…内部信号、166…内部発振信号、168…内部信号、170…駆動信号、180…比較値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に応じて周波数が変化する発振信号の周波数範囲を診断する診断回路であって、
前記制御信号を受け取り、
前記制御信号に基づく値である比較値と所定の限界値とを比較する比較器を含み、
前記比較器が比較した結果に基づいて診断出力値を生成する診断回路。
【請求項2】
請求項1に記載の診断回路において、
前記所定の限界値として上限値と下限値とを定め、
前記比較値と前記上限値とを比較する上限比較器と、前記比較値と前記下限値とを比較する下限比較器とを含み、
前記上限比較器および前記下限比較器が比較した結果に基づいて前記診断出力値を生成する診断回路。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の診断回路において、
前記制御信号は定電流源から供給される制御電流である診断回路。
【請求項4】
請求項3に記載の診断回路において、
前記比較値は電圧値である診断回路。
【請求項5】
請求項4に記載の診断回路において、
前記限界値は所定の電圧を抵抗分割して生成される診断回路。
【請求項6】
請求項3に記載の診断回路において、
前記比較値は電流値である診断回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の診断回路を含む発振回路であって、
起動時に用いられる発振信号を供給する起動発振用回路を含み、
前記起動発振用回路は、
前記発振信号を生成するリングオシレーターを含み、
前記診断回路は、
前記起動発振用回路から供給される前記発振信号の周波数範囲を診断する発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147171(P2012−147171A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3013(P2011−3013)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】