説明

診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張する方法

診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張する方法が提供される。本方法は、第1疾患を対象とした第1のイメージング技術を使用して第1疾患に関して患者の身体部位をイメージングする工程と、第2疾患の兆候となる患者の既知のリスク因子を取得する工程と、第1疾患を対象とした第1のイメージング技術と第2疾患に関する検査を対象とした第2のイメージング技術との間の精度の差を補正して、一組の基準を生成する工程と、一組の基準に関する範囲および信頼区間を設定する工程と、一組の基準および患者の既知のリスク因子を使用して第2疾患に関して評価する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療イメージング・データの分析に関し、より詳細には診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法119(e)に基づき、参照により本明細書に組み込まれている2005年3月16日出願の米国特許仮出願第60/662190号の優先権を主張するものである。
【0003】
最新のCTスキャナおよび他のイメージング装置(imaging equipment)によるイメージングプロトコルは、現在ではさまざまな身体部位について高い解像度の検査画像が短時間間隔で得られるよう考慮されている。こうした定常検査の解像度は、今ではスクリーニングに使用されるプロトコルまたは特定の疾患を発見するために使用される診断プロトコルに対して、質的にほぼ同等である。加えて、コンピュータ支援検出(CAD)ソフトウエアが、放射線科医師がマンモグラムおよびコンピュータ断層撮影法(CTスキャンまたはCATスキャンとしても知られている)による胸部スキャンなどの医療画像を読み取る手助けをする。
【0004】
一例が冠状動脈範囲におけるカルシウム・スコアリングである。最新のスキャナは、単に定常的に行う胸部CTスキャンであっても、冠状動脈(ノンコントラスト増強(non contrast enhanced)スキャンの場合のカルシウム、および増強スキャンの場合の内腔(ルーメン)の評価を考慮している。以前は、冠状動脈の評価には特殊なプロトコルが要求された。したがって冠状動脈は現在、肺炎などの肺疾患を評価するために行われている胸部CTスキャンなどの定常的な胸部プロトコルにおいて、心臓関連疾患を発見するために特別に行われるスキャンにおけるものとほぼ同様のレベルで視覚化が可能である。
【0005】
CADソフトウエアに関連して、放射線科医師などの医療専門家がコンピュータ支援検出を用いて、医療画像を所与の疾患に関して再評価できる。一般的に、放射線科医師はCTスキャンからの画像を検討してからCADソフトウエアを起動し、このCADソフトウエアが放射線医師によるその後の検討のために、潜在的な異常をマーキングする。CADシステムのための有用なソフトウエアの一例が、2004年7月20日に発行されたZengらによる米国特許第6766043号、表題「Pleural Nodule Detection from CT Thoracic Images」に開示されており、これを参照により本明細書に組み込む。Zengは、臓器フィールド(organ field)の外に残された、あるいは臓器フィールドにおける、低レベルの画像処理性質のために通常は検出されない胸膜結節の可能性のある領域を発見するアルゴリズムを開示している。
【特許文献1】米国特許仮出願第60/662190号
【特許文献2】米国特許第6766043号
【特許文献3】国際公開第2005/104943号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残念なことに知られているこのような方法は、最初のスキャンで対象とされた疾患以外の、別の疾患に関して最初に取得された医療画像の中に存在し得る二次疾患を検出する的確な方法を提供していない。今日までどのシステムも、第1疾患を対象にしたイメージング技術と、第2疾患に関する検査を対象にしたより詳細なイメージング技術との間の精度の差について補正されてはいない。これに対し本発明では、最近の改善された画像スキャニング品質を利用し、異なる検査のために用いられるイメージング技術間の精度の差を補正して、このような二次疾患に関して患者の治療を管理する初となる手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張する方法を提供する。本方法は、
第1疾患を対象とした第1のイメージング技術を使用して第1疾患に関して患者の身体部位をイメージングする工程と、
第2疾患の兆候となる患者の既知のリスク因子を取得する工程と、
第1疾患を対象とした第1のイメージング技術と、第2疾患に関する検査を対象とした第2のイメージング技術との間の精度の差を補正して、一組の基準を生成する工程と、
一組の基準に関する範囲および信頼区間を設定する工程と、
一組の基準および患者の既知のリスク因子を使用して第2疾患に関して評価する工程とを含む。
【0008】
本発明の新規な特徴は添付の特許請求の範囲に詳細に記載されているが、本発明の構成および内容の双方については、本発明の他の目的および特徴と共に以下の図面と併せて下記の詳細な説明を読むことによってより良く理解され認識されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書で詳細に説明しているのは放射線データなどの医療イメージング・データの分析に関する特定のシステムおよび方法であるが、これは限定のためではなく、単なる例示目的であり、本発明は他のタイプのデータ分析に関しても使用されてよいことにあらかじめ留意されたい。(患者のリスク・プロファイルを示すために使用される臨床情報は、種々の情報源、たとえば年齢、喫煙歴、血液プロファイル、遺伝的特徴などから得ることができる)
【0010】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態により構成される診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張するシステムの概略構成図が示されている。イメージング・システム2が画像データ5を生成する。画像データはワークステーション8において処理される。ワークステーション8は好ましくは、画像処理ソフトウエア7を動作させるコンピュータ・プロセッサ6およびディスプレイ9を備える。
【0011】
医療イメージング・システム2は有利には、任意の既知の医療イメージング・システムを含むことができる。いくつかの有用な既知であるイメージング・システムには、コンピュータ断層撮影スキャナ、磁気共鳴画像装置、ポジトロン放出イメージング・システム、X線イメージング・システム、血管介入および血管造影図/血管造影法、超音波イメージング・システム、および同等の医療イメージング・システムが含まれる。
【0012】
取得される情報には若干の差異がある場合があるが、本発明はたとえば定常的なスキャンから得られる情報を使用し、特定の疾患のイメージングを対象としたイメージング技術と比較されるこうした定常技術の精度の差を補正し、新たな基準(measure)に関する信頼区間および範囲を設定する。したがって、たとえば第1疾患あるいは一連の疾患に関して定常的な胸部CTスキャンを受ける患者は、同時に心臓疾患あるいは他の潜在的な二次疾患を評価されることが可能となる。
【0013】
特定疾患に関する画像スキャンと比較される定常スキャンの精度の測定に関してはいくつかの刊行物がある。国際公開第2005/104943号として2005年11月10日に公開された、測定誤差に関する我々の別の特許出願である表題「MEDICAL IMAGING SYSTEM FOR ACCURATE MEASUREMENT EVALUATION OF CHANGES IN A TARGET LESION」では、測定精度および測定誤差を取り扱っており、その全文を参照により組み込む。測定誤差は、病巣のサイズならびに病巣の密度に関する特徴あるいは信号強度のような要因が関係する。このような測定誤差の問題を評価し、補正することにより、より正確なスキャン結果が得られる。このような測定誤差を評価し、補正することは、新たな基準(または測定の精度を特徴付けるために用いられる他の標準的な統計的基準)を採用する際の信頼区間および範囲によって表現されてよい。
【0014】
国際公開第2005/104943号に詳述されているように、測定精度に影響する要因には、結節形状、スキャナ・パラメータ、患者因子、アルゴリズム、操作者因子のような直接の誤差原因が含まれる。これらの多くは相互に関係する。たとえば、結節の境界の定義は結節組織、スキャナの点広がり関数、患者の動きおよびその他の要因によって異なる。誤差分散の評価は、誤差要因に関する画像モデルを使用し、画像ファントム(image phantoms)および患者の測定値からこれらのモデルに関するパラメータを取得することによって、またコンピュータ・シミュレーションによっても取得される。同一患者の対の観察記録が誤差を低減するために使用されてよい。
【0015】
結節形状因子の例には以下が含まれる。
a.密度分布特性、たとえば、
i.均一分布特性または可変分布特性、および/または、
ii.固形組織または非固形組織もしくは拡散組織特性。
b.結節の幾何学形状の特性、たとえば、
i.球状または複雑形状(複雑度は、たとえば球体を1として規格化される表面積対体積比として評価されてよい)、
ii.複数の成分からなる形状、
iii.空洞、および/または、
iv.再構成解像度(reconstruction resolution)に近い小さな特徴。
c.表面の特性、たとえば結節が粗い(すなわち複雑な表面を呈する)か、滑らかかということ。粗い表面は高い平均曲率を示す。
スキャナ・パラメータの例には以下が含まれる。
a.スライス厚、オーバーラップ、および/または面内画素サイズをさらに含んだ再構成解像度、
b.X線エネルギー(放射線量):kVpおよびmAs、
c.再構成フィルタ、
d.ガントリ回転速度、
e.テーブル速度(ピッチ)、
f.空間的に変化する点広がり関数、および/または、
g.キャリブレーション。
患者因子の例には以下が含まれる。
a.体内におけるスキャン範囲の位置、
b.身体のサイズ、
c.吸気レベル、
d.呼吸運動(特に肺底部における)、
e.僅かな筋肉の痙攣、
f.肺尖領域(lungs apical region)、たとえばストリーキング・アーチファクト(streaking artifacts)、および/または、
g.傷跡、肺気腫の存在、または他の健康に関する状態を示す結節に隣接した肺組織の健康状態。
【0016】
操作者因子は結節測定プロセスを補佐する操作者に起因する。たとえば操作者は評価された結節境界を手動で修正して、それにより、観察者の検討により特徴付け可能な測定誤差に適度な影響を与えてよい。
【0017】
完全に自動化されたアルゴリズムは、典型的には複数の固有決定点に近い状態を有する。たとえば、ある自動化されたアルゴリズムは、病巣上の周辺にある隆起部を、固着した血管である、または結節の一部であると判断する可能性がある。いくつかのアルゴリズムは、それが動作する複数の決定点にいかに近いかを示し、したがって当該決定点とは別の側に進むことに関連する誤差の要因を示すように設定されてよい。
【0018】
結節を表すように画像範囲が決定されると、測定値の分散は、たとえば以下の画像モデル因子を考慮することにより評価できる。
1.密度:低分散は均一な固形組織密度分布に関連付けられる。高分散は、高画像ノイズおよび低度にまたは空間的に変化する密度分布に関連付けられる。
2.形状:低分散は球形状に関連付けられ、高分散は、多くの隆起またはくぼみを含む極めて不規則な形状に関連付けられる。
3.表面特性:結節領域の境界(エッジ)において、低分散は高い画像勾配に関連付けられ、高分散は低い画像勾配に関連付けられる。さらに低分散は平滑な表面に関連付けられ、高分散は高い曲率を有する不規則な表面に関連付けられる。結節と、血管や胸壁などの他の比較的密な構造(境界の画像勾配形跡がほとんどない、あるいはない場所)との境界領域は異なるやり方で扱われなければならない。低分散では、これらの境界領域は画像分割アルゴリズムにおける2つのスキャンの間で合致するべきである。これらの領域は求められる決定精度が勾配エッジよりも低いため、非勾配エッジと勾配エッジの表面領域の比が直接分散に関係する。
4.サイズ:一般に結節が大きく、部分ボクセルの比率が小さいほど、空間的評価はより精度が高まる。低分散は大きな結節(または非常に細かなスキャナ解像度)に関連付けられ、大きな分散は一般に(類似した構造上の複雑さ(形状)が与えられた)小さな結節に関連付けられる。
【0019】
評価された分散が使用されてよい状況には以下を含む。
A.2つのスキャンが利用可能な場合、すべての画像データおよびパラメータは評価される、治療率に対する成長率または応答に対して境界を与えるよう考慮される。
B.1つのスキャンが利用可能な場合、評価された分散は、臨床的に重要な決定を得るために、第2のスキャンを撮影するための最小待ち時間を決定するのに使用される。これが測定誤差範囲内の悪性部成長率または重要な応答を測定するための時間である。
ある状況では、サイズは一連の画像から評価された空間ではなく、1枚の画像の二次元(2D)領域上で測定されることになる。
【0020】
一例では、各工程は医療専門家の対話を可能に適応型ソフトウエアによって有利に行うことができる。本方法は、イメージング・データ中の少なくとも1つの目標病巣のエッジを定義する工程をさらに含んでよい。エッジ定義は、エッジの境界を求めるために少なくとも1つの目標病巣に対して閾値および/または勾配関数を適用することによって決定することができる。さらなる診断補助のために、適応型ソフトウエアは、イメージング・システムによってイメージングされる肺などの身体部位の異常を含め、境界およびセグメントの特徴を特定するために、当分野で知られている自動分割・分類技法を適用する。
【0021】
本発明の方法は、精密検査のスクリーニングおよびなされた発見物の管理に使用される同一の手法が、放射線医学の発見物および患者のリスク・プロファイルの詳細のみに依存するということを活用する。ある患者が、たとえば冠状動脈疾患に無関係な第1の所定の疾患に関してCTスキャンを受けたとしても、同じ精密検査および管理プロトコルが、該患者があたかも心臓病スクリーニングに関するスキャンを特別に受けたかのように用いられてよい。たとえば、胸部のCTスキャンを受ける患者は心臓部のスキャンを受ける患者の数よりもはるかに多い。本発明の方法によるスクリーニング・プロセスは、はるかに多くの数の患者に冠状動脈カルシウム・スコアリングを適用する可能性を開く。結果として、胸部のCTスキャンを受けるすべての患者が、自身の冠状動脈も同時に評価してもらうことが可能となる。
【0022】
現在、放射線科医師が胸部の定常CTスキャンを解釈する際、冠状動脈もスキャンに映し出されている。放射線医師は時に冠状動脈についてコメントすることもあるが、それについて日常的にスコアリングを行うことはない。本発明の方法は、スクリーニングに来院した患者と、同様のリスク・プロファイルを有し他の疾患のためにスキャンを受ける患者との間に本質的な違いはないと認識し、そのような他の疾患をスコアリングするためのプロセスを提供する。
【0023】
患者がスキャンを受ける前のデータ入力により、または患者が既に病院もしくは放射線医学情報システムにいることから、追加の被験者情報がイメージングの際に入手可能となることがある。このようにしてイメージング・スキャンが行われる場合、スキャニング用のプロトコルが、演繹的に(a priori)知られている患者のリスク因子によって示される他の病気に関するデータを提供するように有利に適合されることがある。スキャニング・プロトコルがそれほど修正されていないとしても、スキャン結果の解釈または判定を導くように作成されるイメージング情報と共に、スキャニング・プロトコルが有利に使用される。患者の医療記録にあるなにがしか、および再検査される既知のスキャン情報の種類により、判定者(reader)が他の疾患、たとえば冠状動脈に関するイメージング情報を解釈し、スコアリングするよう促される可能性がある。
【0024】
この工程をさらに進めて、医療専門家、たとえば放射線科医師または心臓専門医がここでスキャンを解釈し、該患者についての情報が限られている場合、経過観察(follow−up)処置に関するフィードバックが有利に提供されてよい。スキャンが可能性のある二次疾患を対象としなかった場合、およびスキャンが一定の範囲の結果に入る場合、本発明の方法は被験者に可能性のある二次疾患を対象とするより適切なスキャンをもう一度受けさせるように有利に促すことができ、あるいは心臓専門医の診察、または血液検査もしくは他のリスク基準を含むいくつかの他の情報との関連付けを促すことができる。限定されたリスク評価が与えられるように、現在利用可能ないかなるリスクの標準もイメージング結果と共に利用可能とされ、ワークステーションに提出されてよい。例として、身長、体重、喫煙歴、および年齢が含まれる患者データが既知であり、コレステロール特徴が既知でない場合、リスク評価はやはり与えられる患者のイメージング発見物によりなされてよい。そのスキャンが特に心臓スキャンとして行われたものでなくとも、リスク評価がなされてよい。
【0025】
リスク評価に関して情報をワークステーションに提供することに加えて、いくつかのケースでは、スキャンされる一次疾患以外の疾患に関するデータを取得するようにスキャナ自体を設定することも有利である。本発明の方法以前は、そのような追加のデータ(すなわち、評価される一次疾患の視野の範囲外のデータ)は一般的に破棄されていた。たとえば、患者が根拠のある乳癌リスクを示すプロファイルを提示する場合、たとえばCTスキャンにおいて、一次疾患を示す臓器を特定するために使用される視野の範囲外のデータを取得、記憶、送信するように、スキャナをあらかじめプログラミングする、または設定することができる。この場合、乳房の再構成に有用なイメージング・データを、ワークステーションに送信されるデータセットに付加することができる。利用可能な追加の未加工のデータにより、操作者またはソフトウエア・プログラムは未加工のデータを使用して、一次視野で通常利用可能である乳房の画像よりも高い解像度の乳房の画像を再構成することができる。追加のデータはまた画像処理および、たとえば画像のリセンタリングもしくは他の形の修正などの画像向上を可能にする。ワークステーションで使用される場合、誤差範囲が、そのような追加画像データから再構成された画像を、たとえば乳房病巣を検出する目的で設計されているマンモグラムからの画像と比較して評価するために有利に使用されてよい。
【0026】
患者が他の理由で検査を受けた際に、患者のリスク・プロファイルの習得、およびそれをイメージング発見物に適用するための本発明の方法を拡張する他の例では、精密検査用の既存のプロトコルを使用する。既存のプロトコルは、スクリーニング領域、または最初に情報を生成するために使用されるいかなる領域からも得られる。
【0027】
たとえば、現在、肺癌のスクリーニングをされる患者において、基本的なスクリーニングとして5ミリ未満の結節に関する精密検査が行われると、1年間その後の精密検査なしに経過観察される。本発明の方法を使用すると、肺癌以外の症状に関してスキャンをし、同様の特徴を有する結節が発見されるあらゆる被験者に対して、同様の勧告がなされてよい。この情報をリーディング・プロトコルに組み込むことは、多くの偶発的に検出される異常に非常に有益であろう。スキャンが解釈される際にあっては、今後の進め方の決定にリスク・プロファイルが組み込まれるように、特定の偶発的な発見物がなされた際にいつでも、被験者の医療記録が自動的に調べられてよい。偶発的に検出される病巣はあらゆる臓器において見つかるため、これは肺の病巣に限ったことではない。
【0028】
さらなる仮説の例として、患者が喘息のために胸部CTスキャンを受ける場合がある。その結果、スキャンの底部に映され得る副腎に小さな結節が偶発的に発見されることがある。本発明の方法によれば、肺癌患者において、あるいはさらに過去に肺癌の治療を受けたことのある患者において発見された結節についての管理計画とは異なる管理計画が作成される。このように本発明の教示を適用すると、イメージング発見物およびそれに続く管理が、患者のリスク・プロファイルに依存するようにされる。
【0029】
ここで図2を参照すると、診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張する方法の構成図が示されている。本方法は、
工程10で、第1疾患を対象とした第1のイメージング技術を使用して第1疾患に関して患者の身体部位をイメージングする工程と、
工程11で、患者の既知のリスク因子を取得する工程と、
工程12で、第1疾患を対象とした第1のイメージング技術と、第2疾患に関する検査を対象とした第2のイメージング技術との間の精度の差を補正して、一組の基準を生成する工程と、
工程14で、一組の基準に関する信頼区間および範囲を設定する工程と、
工程20で、一組の基準および患者の既知のリスク因子を使用して第2疾患に関して評価する工程とを含む。
【0030】
本プロセスは工程22で、第1疾患および他の疾患に関する管理プロトコルを決定する工程も含んでよい。有用な一実施形態では、本発明の方法はまた、他の(1つまたは複数の)疾患に関するイメージング情報を解釈し、スコアリングすることを促す工程、および経過観察処置に関するフィードバックを提供する工程も含んでよい。
【0031】
工程11で取得される患者のリスク・プロファイルは、関連する二次疾患を調べるよう医師に警告する。次いで関連する疾患は、未加工のデータまたは処理されたデータ上のいずれかにおいて最適化されることができる。次いで工程12で補正ソフトウエアが、差異を補償する工程を含めて二次疾患に対して使用される。補正ソフトウエアは一次スキャンで使用されたパラメータも使用し、その情報を補正の中に統合する。
【0032】
工程12におけるイメージング技術の精度の差を補正する工程、および工程14における一組の基準に関する信頼区間および範囲を設定する工程は、有利には上述したスキャナ・パラメータを考慮に入れることができる。たとえば、第1疾患をスキャンするために使用される第1のイメージング技術は、典型的に第1の再構成解像度測定値を有し、第2疾患のスキャニングにより適した第2のイメージング技術は異なる再構成解像度測定値を有することができる。再構成解像度は一般に製造元の仕様書から、またはキャリブレーションによって知ることができる。2つのタイプのスキャンの精度の差は、スキャナ・パラメータに直接関係し、一組の精度基準がたとえばベースラインとして第2のイメージング技術を使用する相対スケールに基づいて、第1のイメージング技術に割り当てられることができる。信頼区間と範囲は、一組の精度基準および標準的統計アルゴリズムを使用する他の要因に基づいて、第1のイメージング技術スキャンに有利に割り当てられることができる。
【0033】
ここで図3を参照すると、患者の体内にあるカテーテル(または他の器具)を探し出す方法の流れ図が示されている。本工程は、患者の身体部位のデジタル画像を取得する工程110と、患者の身体部位の中にある少なくとも1つのカテーテルを探し出す工程116と、イメージング・ディスプレイ上の少なくとも1つのカテーテルの位置をマーキングする工程114とを含む。さらなる工程は、カテーテルまたは他の機器に関連する医療画像において所定の特徴を自動的に探し出すソフトウエアを、演繹的知識を使用してあらかじめ調整する工程112を任意で含んでよい。演繹的知識は事前に挿入されたカテーテルの存在に関する情報を含んでよい。
【0034】
従来のCAD手法を含んだコンピュータ支援技術が、肺、心臓、または他の身体部位の中にあるカテーテルまたはチューブを見つけるために使用されてよい。適用例には単純放射線写真により生成された画像および集中治療室の研究または検査を含む。従来の視覚化技術を使用して医療画像をデジタル方式で取得した後、患者に挿入された任意のカテーテルのさまざまな特徴がパターン認識ソフトウエアを使用して特定されてよい。カテーテルの特徴はよく知られており、形状、寸法および密度などの特性を含む。身体部位を特定するために、CAD技術などの知られている三次元イメージング技術を適用すると、解剖学的な位置に関してカテーテルおよびチューブを探し出す。
【0035】
ここで簡単に図4を参照すると、先端にマーキングがされたカテーテルが概略的に示されている。例示的な一実施形態では、マーカー32はパターン認識ソフトウエアまたはCAD法によって容易に認識可能なカテーテル先端部30に適用されてよい。マーカーはバーコードまたは他のインディシアに類似してよく、医療画像上で目に見える任意のマーキングまたはインディシアであってよい。多くの場合、カテーテルの存在、大まかな位置およびその種類は演繹的に知ることができるので、特定のマーカー、または特定の種類の問題を探し出すような初期状態にソフトウエアをあらかじめプログラミングすることができる。
【0036】
いくつかのケースでは、チューブおよびカテーテルそのものの特徴によって、それらがより認識可能となる。たとえば、特定のパターンを付けて先端に高濃度放射線物質を埋め込めば、パターン認識ソフトウエアまたは同等技術によってその先端はより認識可能となる。カテーテルは非常に薄い場合があるので、放射線科医師がそれを特定しにくいこともあるが、高濃度放射線物質のパターンは、イメージング・プログラムがそれを認識する機能を強化する。またこうした先端マーカーは、設定が最適でなかったという技術的要因、または患者が大きなサイズの浮腫を持っているなどの患者的要因のいずれかによってカテーテルを認識するのが困難な場合に、カテーテルを探し出すコンピュータ・ソフトウエアの機能を向上させる。こうしたマーカーは、放射線科医師が画像を解釈している間、カテーテルの先端を見つける時間を短縮し、実際の画像に必要な調整を少なくする。挿入されたカテーテルが先端マーカーを含む場合、カテーテルを探し出す本方法は、演繹的知識を使用して、バーコード、インディシア、およびパターン付けされた高濃度放射線物質のうち選択された少なくとも1つを有する先端マーカーを自動的に探し出すように、ソフトウエアをあらかじめ調整する工程をさらに含むことができる。
【0037】
たとえば、パターン認識ソフトウエアおよびマーキングがされた気管内チューブの先端の位置を使用して、肺の気管分岐(carina of a lung)を特定することができる。コンピュータ・ディスプレイ上の身体部位に対する気管内チューブの先端位置をマーキングすることにより、画像の判定者または操作者は、チューブが正しい位置にあるかどうかを判断しやすくなる。
【0038】
たとえば、集中治療室(ICU)フィルムに関連して、検査要請が、患者が特定のカテーテルを挿入されたか、または取り除かれたかという情報を含むことがある。ある外観(その固有の特性がいかなるものであれ、あるいはその機器について既に説明されたものであれ)を有するカテーテルの存在またはそのバーコード(もしくは他の種類のマーキング)が既知の場合、そのカテーテルを探し出すように、位置特定用ソフトウエアをあらかじめ調整することができる。カテーテルの種類および配置は概ね知られていることから、ノイズの多いまたは画質の悪い画像であっても、ソフトウエアは、より迅速にカテーテルを特定し探し出すことができる。こうしたケースでは、コンピュータ・ソフトウエアは、カテーテルを特定し探し出す感度を自動的に上げることができる。同様に、CADまたはパターン認識ソフトウエア・プログラムを適用する前に、たとえば気胸症などの特定の問題が確認された場合、その後の処置としてソフトウエアは、既知の疾患に関連する特徴をより積極的に、かつその疾患の存在に対するより高い感度を持って特定するようにあらかじめ調整されてよい。
【0039】
本発明はチューブおよびカテーテルならびに胸部X線の問題に限定されず、他のイメージング技術、たとえばCTスキャン・イメージングまたは磁気共鳴映像法(MRI)などに使用されてもよい。本発明はカテーテルなどの機器を特定し、好ましい位置に対してその先端を探し出すのに有用である。
【0040】
本明細書において本発明の特定の実施形態が例示され、説明されたが、多くの修正および変更が当業者によって見出されることが認識される。したがって添付の特許請求の範囲は本発明の真の精神および範囲内に入るそうした修正および変更のすべてを対象とすることを意図するものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態により構成される診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張するシステムの概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態により行われる診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張する方法の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態により行われる患者の体内のカテーテルを探し出す方法の流れ図である。
【図4】マーキングされた先端を有するカテーテルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断用精密検査におけるイメージング・ソフトウエアの領域を拡張する自動化された方法であって、
第1疾患を対象とした第1のイメージング技術を使用して第1疾患に関して患者の身体部位をイメージングする工程(10)と、
第2疾患の兆候となる患者の既知のリスク因子を取得する工程(11)と、
第1疾患を対象とした第1のイメージング技術と、第2疾患に関する検査を対象とした第2のイメージング技術との間の精度の差を補正して、一組の基準を生成する工程(12)と、
前記一組の基準に関する範囲および信頼区間を設定する工程(14)と、
前記一組の基準および患者の既知のリスク因子を使用して第2疾患に関して評価する工程(20)と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のイメージング技術がCTスキャンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1疾患および他の疾患に関する管理プロトコルを決定する工程(22)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
他の疾患に関するイメージング情報を解釈し、スコアリングするようにユーザに促す工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
経過観察処置のためのフィードバックを提供する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者の身体部位にあるカテーテルまたは他の器具のうちの少なくとも1つを探し出す工程(116)をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
イメージング・ディスプレイ上の前記少なくとも1つのカテーテルの位置をマーキングする工程(114)をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカテーテルが先端マーカー(32)を含む場合に、医療画像において所定の特徴を自動的に探し出すソフトウエア(7)をあらかじめ調整するために、演繹的知識を使用する工程(112)をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記先端マーカー(32)が、バーコード、インディシアおよびパターン付けされた高濃度放射線物質のうちの選択された少なくとも1つを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
演繹的知識を使用する前記工程が事前に挿入したカテーテルの存在についての情報を提供する工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第1疾患が現れている身体部位以外の身体部位の再構成を可能にするイメージング・データを取得するために拡大された視野をスキャンする工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記拡大された視野においてスキャンを構成するために患者のプロファイル・データを使用する工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記拡大された視野が患者の乳房の再構成に関するデータを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のイメージング技術を使用して第1疾患に関して患者の身体部位をイメージングする前記工程が第1の視野を対象とし、より高い解像度を有する第2のより小さな視野を再構成する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第1疾患が現れている身体部位以外の身体部位の再構成を可能にするイメージング・データを取得するために、より小さな視野をスキャンする工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1疾患以外の疾患に関連する付加的なデータを取得するために、前記第1のイメージング技術を構成する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
一次視野が前記第1疾患を対象とする場合に、前記一次視野において利用可能でない身体部位のより解像度の高い画像を再構成するために、前記付加的データが使用される請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−537691(P2008−537691A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502048(P2008−502048)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/009543
【国際公開番号】WO2006/101993
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507308784)コーネル リサーチ ファンデーション,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】