説明

試料分析装置及びその試料分析装置に用いられる液体温度調節ユニット

【課題】低コストで保温性が良く、さらに組み立てが容易な液体温度調節ユニットを提供することである。
【解決手段】両端に開口を有するガラス管531と、そのガラス管531と二重管構造を形成する両端に開口を有する筒状体533と、それら両端をそれぞれ閉塞する第1の閉塞部材535及び第2の閉塞部材538とを備え、ガラス管531の開口面と第2の閉塞部材538との間にスペーサ537を設け、スペーサ537と第2の閉塞部材538との間に第3のシール部材539を設けていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば血液検体中に含まれる赤血球、白血球あるいは血小板などの成分を分析する試料分析装置に関し、例えば、試料を希釈などするための希釈液などの液体の温度調節を行う温度調節ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば血液分析装置は、サンプリングノズルにより吸引した血液検体を分析するときに、希釈液を用いて血液検体を希釈して血球計数(CBC)測定などを行うようにしている。
【0003】
このとき、特許分析1に示すように、各血液検体毎に測定の再現性を良くするために、希釈に用いる希釈液の温度を調節する温度調節ユニットが用いられる。この温度調節ユニットは、希釈液の温度を調節するために外部からヒータによって温めるため、希釈液を収容する容器は熱伝導性の優れているガラス製であることが望ましい。
【0004】
しかしながら、ガラス製の容器は、上記の通り熱伝導性に優れ、種々の液体に対しても化学的に安定であるが、螺合するための溝などを加工することは極めて困難であり、費用も手間もかかってしまうという問題がある。また、ガラス製の容器は熱伝導性が良いため、容器内の熱が外部に漏れてしまい保温性が悪いという問題もある。
【特許文献1】特開2004−4098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、低コストで保温性が良く、さらに組み立てが容易な液体温度調節ユニットを提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る試料分析装置は、液体を収容して温度を調節する液体温度調節ユニットを備えた試料分析装置であって、前記液体温度調節ユニットが、両端に開口を有するガラス管と、前記ガラス管の外側周面に設けられたヒータと、前記ガラス管を内部に収容して、そのガラス管と二重管構造を形成する両端に開口を有する筒状体と、前記ガラス管の一端部外側周面に液密に接触する第1のシール部材と、前記第1のシール部材を介して、前記ガラス管の一端部を閉塞するとともに、前記筒状体の一端部に嵌合する第1の閉塞部材と、前記ガラス管の他端部外側周面に液密に接触する第2のシール部材と、前記第2のシール部材を介して前記ガラス管の他端部外側周面に嵌合し、前記ガラス管の他端部開口面から所定の厚みを有する円環状のスペーサと、前記スペーサとともに前記ガラス管の他端部を閉塞し、前記筒状体の他端部に螺合する第2の閉塞部材と、前記スペーサ及び前記第2の閉塞部材の間の、前記筒状体の中心軸と直交する面間に挿入されて、前記スペーサ及び前記第2の閉塞部材と液密に接触する第3のシール部材とを備え、前記第1の閉塞部材の一部又は前記筒状体の一端部側周壁に前記ヒータの電気配線を外部に導く電気配線導出口を設けていることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、両端に開口を有するガラス管を用いて簡単に二重管構造の液体温度調節ユニットを形成することができるので、低コストで保温性の良い液体温度調節ユニットを提供することができる。また、ガラス管開口面と第2の閉塞部材との間にスペーサを設け、スペーサと第2の閉塞部材との間に第3のシール部材を設けているので、2つの閉塞部材を筒状体に螺合させて組み立てるときに、電気配線がガラス管の周囲に巻き付くことなく容易に組み立てることができる。
【0008】
ガラス管の長さのばらつきを許容して、ガラス管に対する衝撃を吸収するためには、前記第1の閉塞部材と前記ガラス管の一端部開口面との間、又は前記スペーサと前記ガラス管他端部開口面との間に挿入される弾性体をさらに備えていることが望ましい。
【0009】
配管と液体温度調節ユニットとの接続を簡単にするためには、前記第1の閉塞部材及び前記第2の閉塞部材の何れか一方が、前記ガラス管内に前記液体を導入する液体導入ポートと空気を導入する空気導入ポートと前記液体導入ポート及び空気導入ポートに連通されたマニホールドとを有するものであることが望ましい。さらに、前記第1の閉塞部材及び前記第2の閉塞部材の他方が、前記液体を外部に導出する液体導出ポートを有するものである
【0010】
ガラス管内の保温性を向上させるためには、前記筒状体が樹脂製のものであることが望ましい。
【0011】
液体温度調節ユニットの具体的な実施の態様としては、前記ガラス管の外側周面に温度センサをさらに備えていることが望ましい。
【0012】
さらに、前記第1の閉塞部材に前記液体の液量を検知する液量検知センサをさらに備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、両端に開口を有するガラス管を用いて簡単に二重管構造の液体温度調節ユニットを形成することができるので、低コストで保温性の良い液体温度調節ユニットを提供することができる。また、ガラス管の他端部開口面と第2の閉塞部材との間にスペーサを設け、スペーサと第2の閉塞部材との間に第3のシール部材を設けているので、2つの閉塞部材を筒状体に螺合させて組み立てるときに、電気配線がガラス管の周囲に巻き付くことなく容易に組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の試料分析装置に係る一実施形態の血液分析装置について図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る血液分析装置1は、電気抵抗法により、WBC(白血球数)、RBC(赤血球数)、PLT(血小板数)、MCV(赤血球容積)、Hct(ヘマトクリット値)を測定し、またシアンメトヘモグロビン法における吸光光度法によりHgb(ヘモグロビン濃度)等を測定(CBC測定)するものである。
【0016】
そして、血液分析装置1の構成は、図1、図2、図3及び図4に示すように、採血管Tから血液検体を吸引等するサンプリングノズル21を有するノズルユニット2と、サンプリングノズル21により吸引された血液検体や空気等の流体を流通させる流通経路3と、その流通経路3上に設けられた測定セル4と、流通経路3上の流体の流通をコントロールする1以上の流体制御ユニット5と、測定セル41内の血液検体のWBC等を分析する血液分析部6と、操作内容や測定結果などを表示する画面表示ユニット7と、測定結果をプリントアウトするためのプリンタユニット8と、血液分析装置1の電力供給源となる電源ユニット9と、それらを保持するケーシング10と、を備えている。
【0017】
ノズルユニット2は、特に図2、図3及び図4に示すように、ケーシング10に垂直に立設されたベース部材101に沿うようにして水平方向に設けられた第1のタイミングベルト102によって水平方向に往復運動できるように構成されたものであり、第1のタイミングベルト102に固定され水平方向に往復運動するハウジング22と、ハウジング22に鉛直方向に設けられた第2のタイミングベルト23と、血液検体等を吸引及び吐出するサンプリングノズル21と、サンプリングノズル21を保持し、第2のタイミングベルト23によって上下方向に移動するノズル保持部24とを備えている。なお、第1のタイミングベルト102は、モータM1によって駆動されている。
【0018】
サンプリングノズル21は、ノズルユニット2内に設けられたノズル洗浄器25に挿通され、先端部外周面が洗浄されるようにしている。このノズル洗浄器25は、2つの接続ポート504を備え、一方はエアポンプユニット51と繋げるための空気流路管31aに接続され、他方は定注器ユニット52と繋げるための希釈液流路管31cに接続されている。また、サンプリングノズル21は、血液検体等流路管31bにより定注器ユニット52と連結されている。なお、M2は、第2のタイミングベルト23を駆動するためのモータであり、26は、サンプリングノズル21が初期位置(定位置)にあるか否かを検出するための位置センサである。
【0019】
流通経路3は、血液検体、空気、希釈液、溶血液などを流通させるものであり、血液検体を吸引等するサンプリングノズル21、流体制御ユニット5、測定セル41、希釈液を収容している希釈液容器11、溶血液を収容している溶血液容器12などを連結する配管31から構成される。
【0020】
そして、配管31は、空気を流通させる空気流路管31aと、血液検体及び希釈液を流通させる血液検体等流路管31bと、希釈液を流通させる希釈液流路管31cと、測定が終了した後の血液検体などの廃液を流通させる廃液流路管31dと、洗浄液を流通させる洗浄液流路管31eと、希釈液及び洗浄液を流通させる洗浄液等流路管31fと、溶血液を流通させる溶血液流路管31gからなる。
【0021】
測定セル41は、流通経路3上に設けられており、WBC(白血球数)及びHgb(ヘモグロビン濃度)を測定するためのWBC/Hgb測定セル411(以下、単にWBCセルという。)と、RBC(赤血球数)及びPLT(血小板数)を測定するためのRBC/PLT測定セル412(以下、単にRBCセルという。)とである。そして、後述する血液測定部42と一体となるようにユニット化されており、測定ユニット4を形成し、ケーシング10から取り外し可能に構成されている。
【0022】
WBCセル411においては、サンプリングノズル21により血液検体が注入され、希釈液容器11からの希釈液により一次希釈された後、定注器ユニット52及びアイソレータユニット54を介して溶血液容器12内の溶血液が注入され、WBC及びHgbが測定される。RBCセル412においては、サンプリングノズル21により一次希釈された血液検体が注入され、さらに希釈液容器11からの希釈液により二次希釈され後に、RBC及びPLTが測定される。
【0023】
血液測定部42は、図4に示すように、WBC測定部421と、Hgb測定部422と、RBC/PLT測定部423とを備えている。WBC測定部421は、WBCセル411に設けた例えば白金電極などの測定電極421a、421bによりWBCを測定する。Hgb測定部422は、WBCセル411の外部に設けたハロゲンランプなどの光源422aとWBCセル411を透過した光を検出する光検出器422bによりHgbを測定する。RBC/PLT測定部423は、RBCセル412に設けた例えば白金電極などの測定電極423a、423bによりRBC/PLTを測定する。
【0024】
流体制御ユニット5は、流体制御のための関連する機能をユニット化してなるものであり、内部流路501を形成するマニホールド502と、内部流路501における流体の流通をコントロールする1以上の関連する電磁制御弁503と、内部流路501と流通経路3とを接続するための接続ポート504とを一体的に有し、ケーシング10から取り外し可能に構成されている。具体的な流体制御ユニット5は、流通経路3内での空気の流通及び廃液の流通をコントロールするエアポンプユニット51と、流通経路3内での液体の流通をコントロールする定注器ユニット52と、血液検体を希釈するための希釈液を貯蔵してその希釈液の温度を調節する液体温度調節ユニットである希釈液温度調節ユニット53と、洗浄液を流通させるための内部流路501と廃液を流通させるための内部流路501とを区画して備えたアイソレータユニット54である。なお、図1においては、内部経路501、マニホールド502、電磁制御弁503、接続ポート504の符号をエアポンプユニット51に代表させて示している。
【0025】
血液分析部6は、血液測定部42からの測定データに基づいて、測定セル41内の血液検体のWBC、RBC、PLT、MCV、Hctを分析するものである。その機器構成は、CPU、内部メモリ、外部メモリ、入出力インタフェース、AD変換器等からなる汎用又は専用のコンピュータであり、内部メモリ又は外部メモリの所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPUやその周辺機器等が作動することにより、測定セル41内の血液検体のWBC、RBC、PLT、MCV、Hctを分析する。また、温度センサからの信号に基づいてヒータ532を制御したり、位置センサからの信号に基づいてノズルユニット2を制御したり等する。
【0026】
画面表示ユニット7、プリンタユニット8と、電源ユニット9はそれぞれケーシング10から取り外し可能に構成されており、電源ユニット9は、電源を筐体内に収容する構成にしており、電源が収容される空間を他のユニット2、4、5、6、7、8が収容される空間と分離するようにして電源により発生する熱が周囲のユニット2、4、5、6、7、8に悪影響を与えないようにしている。
【0027】
ケーシング10は、前述した各ユニット2、4、5、6、7、8、9を取り外し可能に収容するものであり、それら各ユニット2、4、5、6、7、8、9に電力を供給するための主配線(図示しない)を内部に収容し、各ユニット2、4、5、6、7、8、9と主配線とを電気的に接続する中継コネクタ103を、各ユニット2、4、5、6、7、8、9それぞれが取り付けられる領域近傍に設けている。
【0028】
しかして、本発明の液体温度調節ユニットに係る一実施形態の希釈液温度調節ユニット53は、図1及び図5に示すように、エアポンプユニット51、希釈液容器11及び定注器ユニット52に繋がれている。そして、内部流路501を形成するマニホールド502と、希釈液の流通をコントロールする1つの電磁制御弁503Aと、外部に空気を排出するための1つの電磁制御弁503Bと、内部流路501と空気流路管31aとを接続する1つの接続ポート504Bと、内部流路501と希釈液流路管31cとを接続する2つの接続ポート504Aを一体的に有している。さらに、
【0029】
さらに、希釈液温度調節ユニット53は、図6、図7、図8に示すように、両端に開口を有するガラス管531と、ガラス管531の外側周面に設けられたヒータ532と、ガラス管531を内部に収容して、そのガラス管531と二重管構造を形成する両端に開口を有する筒状体533と、ガラス管531の一端部531a外側周面に液密に接触する第1のシール部材534と、第1のシール部材534を介して、ガラス管531の一端部531aを閉塞するとともに、一部にヒータ532の電気配線532a等を外部に導く電気配線導出口Hを有し、筒状体533の一端部533aに螺合する第1の閉塞部材535と、ガラス管531の他端部531bの外側周面に液密に接触する第2のシール部材536と、第2のシール部材536を介してガラス管531の他端部531bの外側周面に嵌合し、ガラス管531の他端部531bの開口面から所定の厚みAを有する円環状のスペーサ537と、スペーサ537とともにガラス管531の他端部531bを閉塞し、筒状体533の他端部533bに螺合する第2の閉塞部材538と、スペーサ537及び第2の閉塞部材538の間の、前記筒状体の中心軸Cと直交する面537e、538a間に挿入されて、スペーサ537及び第2の閉塞部材538と液密に接触する第3のシール部材539とを備えている。
【0030】
ガラス管531は、両端部531a、531bにおいて開口を有する等断面形状の円筒であり、所定の長さに切断されてなり、その外側周面にはヒータ532及び温度センサ(図示しない)が巻き付けて設けられている。
【0031】
ヒータ532は、ガラス管531の外側周面に巻かれて設けられており、その電気配線532aが後述する第1の閉塞部材535に設けられた電気配線導出口Hにより筒状体533の外部に導かれている。
【0032】
筒状体533は、両端部533a、533bにおいて開口を有するものであり、本実施形態では樹脂から形成されており、ガラス管531の外径よりも大きい内径を有する円筒である。そして、ガラス管531と同軸上に設けられて、ガラス管531と二重管構造を構成するものである。その一端部533aの内側周面には、後述する第1の閉塞部材535の第1雄ねじ部N1aと螺合する第1雌ねじ部N1bが設けられており、他端部533bの外側周面には、後述する第2の閉塞部材538の第2雌ねじ部N2bと螺合する第2雄ねじ部N2aが設けられている。なお、第1雄ねじ部N1a、第1雌ねじ部N1bを逆に設けても良いし、第2雄ねじ部N2a、第2雌ねじ部N2bを逆に設けても良い。
【0033】
第1のシール部材534は、ガラス管531の一端部531aの外側周面に液密に接触するものであり、本実施形態ではOリングである。その内径は、ガラス管531の外径より小さく、また、後述する第1の閉塞部材535に設けた第1嵌合溝535cに嵌合するものである。
【0034】
第1の閉塞部材535は、ガラス管531の一端部531aを閉塞する樹脂製の円盤状ものであり、その一方の面側(ガラス管531側)に、第1のシール部材534を介在させてガラス管531の一端部531aの外側周面に嵌合する第1嵌合部535aと、筒状体533の第1雌ねじ部N1bに螺合する第1雄ねじ部N1aと、弾性体Eを介してガラス管531の一端部531aの開口面を押圧してガラス管531を固定するために第1固定面535bとを有する。第1嵌合部535aには、第1のシール部材534が嵌合する第1嵌合溝535cを設けている。
【0035】
また、第1の閉塞部材535は、その側周面に設けた平面部535dにガラス管531内に希釈液を導入するために希釈液流路管31cと接続される接続ポート(希釈液導入ポート)504Aと、ガラス管531内に空気を導入するために空気流路管31aと接続される接続ポート(空気導入ポート)504Bと、ガラス管531から空気を外部に排出するための空気排出口504Dと、希釈液導入ポート504A及び空気導入ポート504Bに連通された内部流路501を形成するマニホールド502と、希釈液の流通をコントロールすする電磁制御弁503Aと、外部に空気を排出するための電磁制御弁503Bと、を一体的に有している。さらに、第1の閉塞部材535の中央部には、希釈液の液量を検知する液量検知センサLSを設けている。
【0036】
第2のシール部材536は、ガラス管531の他端部531bの外側周面に液密に接触するものであり、本実施形態では、第1のシール部材534と同様にOリングである。その内径はガラス管531の外径より小さく、また、後述するスペーサ537に設けた環状溝537fに嵌合するものである。
【0037】
スペーサ537は、図9に示すように、第2のシール部材536を介してガラス管531の他端部531bの外側周面に嵌合し、ガラス管531の他端部531bの開口面から所定の厚みAを有する円環状のものである。その内周面には、ガラス管531と嵌合する第2嵌合部537aと、その第2嵌合部537aに設けられ第2のシール部材536が嵌合する第2嵌合溝537bと、弾性体Eを介してガラス管531の他端部531bの開口面を押圧してガラス管531を固定するために第2固定面537cとが設けられている。また、外周面には、ガラス管531に対して筒状体533が同軸上に位置するように、筒状体533と係合する係合面537dを設けている。さらに、スペーサ537の第2固定面537cの裏面537eには、第3のシール部材539が嵌合する環状溝537fが設けられている。スペーサ537の裏面537eは、スペーサ537の中心軸(つまり、軸C)に直交する面であり、環状溝537fは、軸Cを同心となるように形成されている。
【0038】
第2の閉塞部材538は、スペーサ537とともにガラス管531の他端部531bを閉塞し、筒状体533の他端部533bに螺合する樹脂製のものである。そして、スペーサ537の環状溝537fに嵌合した第3のシール部材539を介してスペーサ537を押圧する押圧面538aと、筒状体533の他端部533bの外側周面に設けられた第2雄ねじ部N2aに螺合する第2雌ねじ部N2bとを有している。押圧面538aは、筒状体533の中心軸Cと直交した面であり、スペーサ537の裏面537eと接触する面である。また、中央には、ガラス管531内で温度が調節された希釈液を定注部ユニット52に流通させるための希釈液流通管31cと接続される接続ポート(希釈液導出ポート)504Cを有している。
【0039】
第3のシール部材539は、スペーサ537及び第2の閉塞部材538の間の、軸Cと直交する面537e、538a間に挿入されて、スペーサ537及び第2の閉塞部材538と液密に接触するものであり、本実施形態では、Oリングである。具体的には、スペーサ537の裏面537eに設けた環状溝537fに嵌合し、第2の閉塞部材538の押圧面538aと液密に接触するものである。このとき、第3のシール部材539の中心軸は、第2の閉塞部材538を筒状体533に螺合させる際の回転軸と略同一となる。
【0040】
次に、希釈液温度調節ユニット2の組み立て方法について図7及び図8を参照して説明する。
【0041】
まず、第1の閉塞部材535の第1固定面535bに弾性体Eを、第1嵌合溝535cに第1のシール部材534を嵌合させる。そして、ガラス管531の一端部531aの外側周面に第1のシール部材534の第1嵌合部535aに嵌合させる。このとき、ヒータ532の電気配線532a及び温度センサの電気配線(図示しない)を第1の閉塞部材535に設けた電気配線導出口Hに挿通させる。その後、筒状体533の第1雌ねじ部N1bに、第1の閉塞部材535の第1雄ねじ部N1aを螺合させる。
【0042】
次に、スペーサ537の第2固定面537cに弾性体Eを、第2嵌合溝537bに第2のシール部材536を嵌合させる。そして、スペーサ537をガラス管531の他端部531bに嵌合させる。その後、スペーサ537の裏面537eの環状溝537fに第3のシール部材539を嵌合させるとともに、筒状体533の第2雄ねじ部N2aに第2の閉塞部材538を螺合させる。以上により、希釈液温度調節ユニット2が組み立てられる。なお、スペーサ537と第2の閉塞部材538との間に、環状の第3のシール部材539を介在させていることにより、第2の閉塞部材538を固く締め付けるまでは、ガラス管531は第1の閉塞部材535に対してほぼ回転運動をしない。
【0043】
次にこのように構成した血液分析装置1の動作について、図10を参照して述べる。
【0044】
まず、血液を収容した採血管Tを採血管セット部(図示しない)にセットして測定ボタンSをオンにする(ステップS1)と、初期位置にあるサンプリングノズル21は、採血管セット部の位置に移動し(ステップS2)、採血管T内の血液検体(全血)を吸引する(ステップS3)。その検体吸引後、サンプリングノズル21はWBCセル411の位置に移動し、ノズル洗浄器25に希釈液が供給されて、サンプリングノズル21の外面が洗浄される。
【0045】
前記洗浄が終わったサンプリングノズル21は、WBCセル411内に血液検体を吐出する(ステップS4)一方、希釈液容器11内の希釈液が、エアポンプユニット51によりアイソレータユニット54を介してWBCセル411内に所定量注入されて、血液検体の一次希釈が行われる(ステップS5)。
【0046】
WBCセル411の位置にあるサンプリングノズル21は、前記一次希釈された血液検体を所定量吸引して(ステップS6)、RBCセル412に移動し(ステップS7)、前記吸引した一次希釈された血液検体をRBCセル412に吐出する(ステップS8)。そして、希釈液容器11内の希釈液が、エアポンプユニット51によりアイソレータユニット54を介してRBCセル412内に所定量注入され、血液検体の二次希釈が行われる(ステップS9)。
【0047】
上記一次希釈及び二次希釈が終わった後、溶血液容器12内の溶血液が定注器ユニット52及び注入ブロック13を介してWBCセル411内に所定量注入され(ステップS10)、WBC及びHgbの測定が行われるとともに、RBCセル412内では、RBC及びPLTの測定が行われ(ステップS11)、そのときの測定データは、信号処理器16を経て血液分析部6に出力される。
【0048】
血液分析部6においては、血液測定部42からの測定データに基づいてWBC、RBC、PLT、MCV、Hctを算出する。
【0049】
測定が終わると、一次希釈された血液検体及び二次希釈された血液検体は、アイソレータユニット54及びエアポンプユニット51を介して廃液容器14に排出され、WBCセル411とRBCセル412は希釈液及び洗浄液容器15からの洗浄液で洗浄される(ステップS12)。
【0050】
このように構成した本実施形態の血液分析装置1によれば、両端部531a、531bに開口を有するガラス管531を用いて簡単に二重管構造の希釈液温度調節ユニット53を形成することができる。したがって、低コストで保温性の良い希釈液温度調節ユニットを提供することができる。また、ガラス管531の開口面と第2の閉塞部材538との間にスペーサ537を設け、スペーサ537と第2の閉塞部材538との間に第3のシール部材539を設けているので、2つの閉塞部材535、538を筒状体533に螺合させて組み立てるときに、電気配線532aがガラス管531の周囲に巻き付くことなく容易に組み立てることができる。
【0051】
また、第1の閉塞部材535とガラス管531の一端部531aの開口面との間、及びスペーサ537とガラス管531の他端部531bの開口面との間に弾性体Eを介在させているので、ガラス管531の長さのばらつきを許容して確実に密閉性を実現することができる。つまり、簡単に品質が安定した組み立てを行うことができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、前記実施形態では、ガラス管に対して筒状体が同軸上に位置するように、スペーサに、筒状体と係合する係合面を設けていたが、係合面を設けなくても良い。
【0054】
また、第1のシール部材、第2のシール部材及び第3のシール部材には、Oリングを用いているが、シール部材であっても良い。
【0055】
さらに、第1の閉塞部材とガラス管の一端部開口面との間、及びスペーサとガラス管他端部開口面との間に弾性体を挿入していたが、弾性体を挿入しないものであっても良い。
【0056】
その上、前記実施形態では、電気配線導出口を第1の閉塞部材の一部に設けるようにしているが、その他にも例えば、筒状体の一端部側周壁に設けるようにしても良い。
【0057】
その上、前記実施形態の血液分析装置はCBC測定を行うものであったが、CRP測定を行う機能を有するものであっても良い。
【0058】
さらに、前記実施形態の液体温度調節ユニットは希釈液の温度調節を行うものであったが、試料や試薬の温度調節を行うものであっても良い。
【0059】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る血液分析装置の全体流体回路図。
【図2】同実施形態における血液分析装置の分解斜視図。
【図3】同実施形態における側面パネルを取り外した状態の血液分析装置を示す斜視図。
【図4】同実施形態におけるノズルユニット、測定ユニットを示す概略構成図。
【図5】同実施形態の全体流体回路図における希釈液温度調節ユニット部分の拡大図。
【図6】同実施形態における希釈液温度調節ユニットの斜視図。
【図7】同実施形態における希釈液温度調節ユニットの断面図。
【図8】同実施形態における希釈液温度調節ユニットの分解斜視図。
【図9】同実施形態における希釈液温度調節ユニットのスペーサの断面図。
【図10】同実施形態における血液分析装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0061】
1 ・・・血液分析装置
53 ・・・温度調節ユニット(液体温度調節ユニット)
531 ・・・ガラス管
532 ・・・ヒータ
533 ・・・筒状体
531a・・・ガラス管の一端部
534 ・・・第1のシール部材
532a・・・電気配線
H ・・・電気配線導出口
533a・・・筒状体の一端部
535 ・・・第1の閉塞部材
531b・・・ガラス管の他端部
536 ・・・第2のシール部材
A ・・・所定の厚み
537 ・・・スペーサ
533b・・・筒状体の他端部
538 ・・・第2の閉塞部材
539 ・・・第3のシール部材
E ・・・弾性体
504A・・・希釈液導入ポート(液体導入ポート)
504B・・・空気導出ポート
504C・・・希釈液導出ポート(液体導出ポート)
LS ・・・液量検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容して温度を調節する液体温度調節ユニットを備えた試料分析装置であって、
前記液体温度調節ユニットが、
両端に開口を有するガラス管と、
前記ガラス管の外側周面に設けられたヒータと、
前記ガラス管を内部に収容して、そのガラス管と二重管構造を形成する両端に開口を有する筒状体と、
前記ガラス管の一端部外側周面に液密に接触する第1のシール部材と、
前記第1のシール部材を介して、前記ガラス管の一端部を閉塞するとともに、前記筒状体の一端部に嵌合する第1の閉塞部材と、
前記ガラス管の他端部外側周面に液密に接触する第2のシール部材と、
前記第2のシール部材を介して前記ガラス管の他端部外側周面に嵌合し、前記ガラス管の他端部開口面から所定の厚みを有する円環状のスペーサと、
前記スペーサとともに前記ガラス管の他端部を閉塞し、前記筒状体の他端部に螺合する第2の閉塞部材と、
前記スペーサ及び前記第2の閉塞部材の間の、前記筒状体の中心軸と直交する面間に挿入されて、前記スペーサ及び前記第2の閉塞部材と液密に接触する第3のシール部材とを備え、
前記第1の閉塞部材の一部又は前記筒状体の一端部側周壁に前記ヒータの電気配線を外部に導く電気配線導出口を設けている試料分析装置。
【請求項2】
前記第1の閉塞部材と前記ガラス管の一端部開口面との間、又は前記スペーサと前記ガラス管他端部開口面との間に挿入される弾性体をさらに備えている請求項1記載の試料分析装置。
【請求項3】
前記第1の閉塞部材及び前記第2の閉塞部材の何れか一方が、前記ガラス管内に前記液体を導入する液体導入ポートと空気を導入する空気導入ポートと前記液体導入ポート及び空気導入ポートに連通されたマニホールドとを有するものである請求項1又は2記載の試料分析装置。
【請求項4】
前記第1の閉塞部材及び前記第2の閉塞部材の他方が、前記液体を外部に導出する液体導出ポートを有するものである請求項1、2又は3記載の試料分析装置。
【請求項5】
前記筒状体が樹脂製のものである請求項1、2、3又は4記載の試料分析装置。
【請求項6】
前記ガラス管の外側周面に温度センサをさらに備えている請求項1、2、3、4又は5記載の試料分析装置。
【請求項7】
前記第1の閉塞部材に前記液体の液量を検知する液量検知センサをさらに備えている請求項1、2、3、4、5又は6記載の試料分析装置。
【請求項8】
液体を収容して温度を調節する液体温度調節ユニットであって、
両端に開口を有するガラス管と、
前記ガラス管の外側周面に設けられたヒータと、
前記ガラス管を内部に収容して、そのガラス管と二重管構造を形成する両端に開口を有する筒状体と、
前記ガラス管の一端部外側周面に液密に接触する第1のシール部材と、
前記第1のシール部材を介して、前記ガラス管の一端部を閉塞するとともに、前記筒状体の一端部に嵌合する第1の閉塞部材と、
前記ガラス管の他端部外側周面に液密に接触する第2のシール部材と、
前記第2のシール部材を介して前記ガラス管の他端部外側周面に嵌合し、前記ガラス管の他端部開口面から所定の厚みを有する円環状のスペーサと、
前記スペーサとともに前記ガラス管の他端部を閉塞し、前記筒状体の他端部に螺合する第2の閉塞部材と、
前記スペーサ及び前記第2の閉塞部材の間の、軸方向と直交する面間に挿入されて、前記スペーサ及び前記第2の閉塞部材と液密に接触する第3のシール部材とを備え、
前記第1の閉塞部材の一部又は前記筒状体の一端部側周壁に前記ヒータの電気配線を外部に導く電気配線導出口を設けている液体温度調節ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−93308(P2007−93308A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280958(P2005−280958)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】