説明

試料摘出装置

【課題】窪みの中にある微小な試料を採取することができる試料摘出装置を提供する。
【解決手段】試料摘出装置は、プレートに形成されたノズル孔の中に詰まった微小異物を取り出すために用いられる。試料摘出装置は、プレートを載置固定する載置台と、プレートなどを観察する実体顕微鏡と、ノズル孔の中の微小異物を観察するマイクロスコープ34と、マイクロスコープ34の先端に取り付けられた微小異物を取り出す採取針32と、マイクロスコープ34が接続され採取針32を移動させる第1マニピュレータとを有する。マイクロスコープ34の先端に採取針32が取り付けられていることにより、ノズル孔の中の微小異物を観察しながら取り出すことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料摘出装置に関し、特に、窪みの中にある微小な試料を摘出する試料摘出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した試料摘出装置は、例えば、プリンタを構成するインクジェットヘッドのノズル孔の中に詰まった微小な試料としての微小異物を分析するべく摘出するために用いられる。ノズル孔の中に微小異物が詰まることにより、例えば、ドット抜けが発生したり、インク滴が真っ直ぐに飛ばなかったりするという問題が発生する。取り出された微小異物は、例えば、顕微FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた材料の特定(同定)、又は、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡にエネルギー分散型X線分析装置が組み込まれた装置)を用いて元素などを特定(同定)するなどして、ノズル孔の中に詰まる原因の究明に用いられる。
【0003】
試料摘出装置は、例えば、特許文献1に記載のように、プレートを載置して固定する載置台と、載置台と対向する位置に設けられノズル孔や試料を観察する顕微鏡と、載置台と隣接した方向から載置台の中心部に伸びる微小異物を取り出す採取針と、採取針を移動させるマニピュレータとを有する。
【0004】
試料摘出装置を用いた試料の摘出方法は、まず、分析するべく微小異物が詰まっているプレートを載置台に載せるとともに固定する。次に、図8に示すように、顕微鏡101を用いて微小異物102の位置を特定するとともに微小異物102に採取針103を接触させて微小異物102を取り出す。
【0005】
【特許文献1】特開2003−166913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図8及び図9に示すように、配置された顕微鏡101から微小異物を見る角度と、微小異物を取り出すべく採取針が取り付けられている角度との差が大きい。よって、ノズル孔104の奥に微小異物102が付着している場合、図8に示すように、微小異物102を観察することが可能な状態にプレート105を固定してもノズル孔104の縁106に採取針103が接触して微小異物102を取り出すことが出来なかったり、図9に示すように、採取針103で微小異物102を取り出すことが可能な状態にプレート105の角度を調整しても縁106に邪魔されて顕微鏡101で観察することができなかったりして、微小異物102を摘出することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、窪みの中にある微小な試料を採取することができる試料摘出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る試料摘出装置は、基板に形成された窪みの中にある試料を採取針を用いて採取するべく前記基板を載置固定する載置台と、前記窪みの中にある前記試料の位置を特定するとともに前記採取針の先端部を視認することが可能なマイクロスコープと、前記マイクロスコープの近傍に配置された前記採取針と、前記採取針を移動させて前記窪みの中から前記試料を採取することが可能なマニピュレータと、を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、試料の位置を特定するマイクロスコープの近傍に採取針が設けられているので、マイクロスコープで試料を見る角度と、試料を取り出すべく採取針の軸の角度との差を小さくすることが可能となる。よって、窪みの奥に試料があったとしても、窪みの縁が邪魔になって試料を観察することができなかったり、窪みの縁に採取針が接触して取り出すことができなかったりすることを防ぐことができる。これにより、窪みの奥にある試料を観察しながら採取針を用いて取り出すことができ、その結果、試料を分析することができる。
【0010】
本発明に係る試料摘出装置では、前記採取針は、前記マイクロスコープの先端に取り付けられており、前記マイクロスコープは、前記マニピュレータに取り付けられており、前記採取針と前記マイクロスコープとは、前記マニピュレータによって互いが一緒に移動することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、マイクロスコープの先端に採取針が取り付けられていることにより、マイクロスコープで試料を見る軸と、試料を取り出すべく採取針の軸とを同軸上に配置することが可能となる。よって、窪みの奥に試料があったとしても、窪みの縁が邪魔になって試料を観察することができなかったり、窪みの縁に採取針が接触して取り出すことができなかったりすることを防ぐことができる。これにより、窪みの奥にある試料及び先端部を観察しながら採取針を用いて取り出すことができる。更に、マイクロスコープと採取針とが互いに一緒に移動するので、試料の位置を特定したあと、引き続いて試料を取り出す作業を行うことが可能となる。よって、互いを別々に動作させる煩わしさを軽減することができる。
【0012】
本発明に係る試料摘出装置では、前記採取針は、前記マイクロスコープに取り付けられており、前記マイクロスコープは、前記マニピュレータに取り付けられており、前記採取針と前記マイクロスコープとは、前記マニピュレータによって互いが一緒に移動することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、マイクロスコープに隣接して採取針が取り付けられており、更に互いが一緒に移動するので、マイクロスコープによって窪みの奥にある試料の位置を特定したあと、引き続いて試料を取り出す作業を行うことができる。加えて、マイクロスコープと採取針とを別々に動作させる煩わしさを軽減することができる。
【0014】
本発明に係る試料摘出装置では、前記マイクロスコープは、前記採取針の先端に焦点を合わせていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、採取針の先端に焦点を合わせているので、マイクロスコープで試料にピントを合わせて位置の特定を行ったあと、試料及び先端部にピントを合わせたままの状態で採取針を試料に突き刺すことができる。
【0016】
本発明に係る試料摘出装置では、前記採取針は、前記マイクロスコープに着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、採取針が着脱可能になっているので、試料を取り出す際に採取針にダメージが加わったとしても、スコープは交換せずに採取針のみ交換させることができる。
【0018】
本発明に係る試料摘出装置では、前記窪みは、孔、穴、溝のいずれかであることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、孔、穴、溝のいずれかの中に試料が入っているとしても、マイクロスコープの近傍に採取針が設けられているので、マイクロスコープで試料を見る角度と、試料を取り出すべく採取針が移動する角度との差を小さくすることが可能となる。よって、孔、穴、溝の縁が邪魔になって試料を観察することができなかったり、縁に採取針が接触して取り出すことができなかったりすることを防ぐことができる。その結果、孔、穴、溝などの奥(中)にある試料を観察しながら採取針を用いて試料を取り出すことができ、その結果、試料を分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る試料摘出装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、試料摘出装置の構成を示す模式図である。以下、試料摘出装置の構成を、図1を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、試料摘出装置11は、載置台12と、実体顕微鏡13と、第1マニピュレータ14と、第2マニピュレータ15と、CCDカメラ16と、モニタ17とを有し、基板としてのプレート21に形成された窪みとしてのノズル孔22(図4参照)の中に詰まった試料としての微小異物31(図4参照)を採取針32によって取り出すために用いられる。なお、試料摘出装置11は、ノズル孔22のような貫通孔以外に、貫通していない穴や溝などの中に詰まっている微小異物31の取り出しに適用するようにしてもよい。
【0023】
プレート21は、例えば、プリンタのインクジェットヘッド(図示せず)を構成する一部であり、インク滴を吐出するノズル孔22を有する。そして、ノズル孔22からインク滴を吐出した際に、ノズル孔22の中に微小異物31が詰まる場合がある。ノズル孔22の直径は、例えば23μmである。微小異物31の大きさは、例えば5μmである。
【0024】
載置台12は、上記した微小異物31を取り出すべく、ノズル孔22が形成されたプレート21を載置固定するために用いられる。また、載置台12には、プレート21を任意の角度に傾けて固定することが可能な機構が設けられている。
【0025】
実体顕微鏡13は、載置台12に載せられたプレート21全体や採取針32付近全体の位置を観察するために用いられる。特に、プレート21に形成されたノズル孔22の位置と採取針32の位置とを合わせるために観察する。また、ノズル孔22の中に詰まった微小異物31を採取したあと、微小異物31を他の場所に移動する際にも用いられる。
【0026】
第1マニピュレータ14は、例えば、載置台12の隣りに配置されており、ノズル孔22の中に詰まっている(付着している)微小異物31を採取針32で取り出すために用いられる。第1マニピュレータ14は、第1アーム33を有し、第1アーム33をX,Y,Z方向(ともに図示せず)、及び第1アーム33の軸方向に微動(例えば、μm単位)で移動させることが可能となっている。
【0027】
また、第1アーム33には、ノズル孔22の中の微小異物31を観察するためのマイクロスコープ34と、マイクロスコープ34の先端に取り付けられ微小異物31を取り出すための採取針32とが接続されている。マイクロスコープ34は、実体顕微鏡13によってノズル孔22と採取針32との位置を決めた後、ノズル孔22の中を観察して微小異物31の位置を特定するために用いられる。また、マイクロスコープ34は、観察する際に必要な光を、光源(図示せず)から供給することが可能となっている。第1アーム33を動かして採取針32の位置を移動させることにより、ノズル孔22の中の微小異物31を突き刺したり付着させて、微小異物31をノズル孔22の外に取り出すことが可能となっている。
【0028】
第2マニピュレータ15は、例えば、第1マニピュレータ14によって微小異物31を取り出す際の補助用のマニピュレータとして用いられる。第2マニピュレータ15は、第2アーム35を有し、第1マニピュレータ14と同様に、第2アーム35をX,Y,Z方向、及び第2アーム35の軸方向に微動(例えば、μm単位)で移動させることが可能となっている。また、第2アーム35には、補助針36を固定するための固定軸37が取り付けられている。
【0029】
CCDカメラ16は、実体顕微鏡13で観察したプレート21及び採取針32などを、接眼レンズ38を通じて撮像しモニタ17に表示させるために用いられる。
【0030】
モニタ17は、実体顕微鏡13やマイクロスコープ34を通じて、拡大した画像を表示させるために用いられる。詳述すると、モニタ17は、実体顕微鏡13とマイクロスコープ34との接続を切り替えることにより、実体顕微鏡13で観察した画像と、マイクロスコープ34で観察した画像とを、別々に表示させることが可能となっている。
【0031】
図2は、採取針の周辺の構成を模式的に示す斜視図である。以下、採取針の周辺の構成を、図2を参照しながら説明する。
【0032】
図2に示すように、採取針32は、上記したようにマイクロスコープ34の先端に取り付けられており、採取針32の先端側にある先端針41と、マイクロスコープ34に取り付けるためのリング状の嵌合針42と、先端針41と嵌合針42とを接続する3本の接続針43とによって構成されている。採取針32は、例えば、タングステンで構成されている。なお、嵌合針42は、弾性力を有する金属であることが望ましい。
【0033】
先端針41の直径は、例えば、1〜5μmである。先端針41の先端部41aは、例えば、電界研磨によって針先が細く形成されている。また、先端部41aには、微小異物31を取り出しやすくさせるための突起部44が形成されている。突起部44が形成されていることにより、ノズル孔22から微小異物31を取り出す際に、微小異物31を引っ掛け易くすることができ、先端針41から微小異物31が抜けてしまうことを抑えることができる。
【0034】
マイクロスコープ34は、例えば、第1アーム33の中に挿入されており、第1アーム33の一端側からモニタ17に接続されている(図1参照)。また、マイクロスコープ34は、固定ネジ45によって、第1アーム33に固定されている。マイクロスコープ34は、例えば、微小異物31に向けて光46を供給することが可能になっているとともに、微小異物31などの画像を取り込むことが可能になっている。このようなマイクロスコープ34を用いることにより、ノズル孔22の中にある微小異物31をモニタ17に表示させて確認することができる。
【0035】
また、マイクロスコープ34は、採取針32の先端部41aに焦点が合うように調整されている。これにより、微小異物31の位置を特定すると同時に、微小異物31に採取針32を接触させることが可能な状態になる。微小異物31は、先端部41aの突起部44に引っ掛けられたり先端部41aに付着したりすることにより、ノズル孔22内から取り出される。
【0036】
また、マイクロスコープ34には、拡大機構(ズーム機構)が備えられており、例えば、微小異物31を200倍〜500倍に拡大して表示させることが可能になっている。拡大された微小異物31は、モニタ17によって表示される。
【0037】
採取針32を構成する先端針41は、例えば、マイクロスコープ34の中心軸と同じ中心軸になるように配置されている。また、マイクロスコープ34の先端に採取針32が取り付けられていることにより、モニタ17に表示した際に、採取針32の位置に相当する部分の画像がぼやけることが考えられる。しかしながら、微小異物31の位置を特定することができればよく、更に採取針32が細いことから、微小異物31の位置を特定する際の影響は少ないと考えられる。
【0038】
以上のように、先端に採取針32が取り付けられたマイクロスコープ34を第1マニピュレータ14によって動作させることにより、常に、先端部41aに焦点を合わせた状態で微小異物31を探すことが可能となる。よって、微小異物31の位置を特定したあと、引き続いて、微小異物31を取り出す作業を行うことができる。
【0039】
図3は、採取針の着脱方法を示す模式図である。(a)は、マイクロスコープから採取針が取り外されている状態を模式的に示す斜視図である。(b)は、マイクロスコープに採取針が取り付けられた状態を模式的に示す斜視図である。(c)は、採取針の先端部側からみた、採取針の着脱時の動作を模式的に示す正面図である。以下、採取針の着脱方法を、図3を参照しながら説明する。
【0040】
まず、図3(a)に示すように、マイクロスコープ34と採取針32とを準備する。マイクロスコープ34の先端部の周囲には、採取針32を構成する嵌合針42が嵌る溝51が形成されている。採取針32の嵌合針42は、例えば、上記したように弾性力をもった金属で構成されており、縦方向に伸びた楕円状に形成されている(図3(c)参照)。
【0041】
次に、図3(c)に示すように、マイクロスコープ34に採取針32を取り付けるべく、例えば、嵌合針42の上下を挟むことが可能な治具で挟み、嵌合針42の形状を楕円状から正円状に近づくように変形させる。これにより、嵌合針42をマイクロスコープ34の先端に挿入することが可能な状態となる。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、マイクロスコープ34の先端部に採取針32を取り付ける。まず、嵌合針42の上下を押して挟みながらマイクロスコープ34の先端側から挿入する。マイクロスコープ34の溝51の位置と嵌合針42の位置とが合ったところで、挟んでいる嵌合針42を放す。これにより、嵌合針42が溝51に嵌り込み、更に、嵌合針42が元の楕円形状に戻ることにより、マイクロスコープ34の先端部に採取針32が固定される。なお、採取針32は、微小異物31を取り出す際の力が採取針32に加わったとしても、マイクロスコープ34から外れることのない力で固定されている。
【0043】
以上のように、採取針32を交換可能にすることにより、微小異物31を採取する際に、先端針41にダメージ(例えば、曲がりや折れなど)が加わったとしても、比較的容易に採取針32を交換させることができる。
【0044】
図4は、ノズル孔の中にある微小異物の採取方法を示す模式図である。以下、微小異物の採取方法を、図4を参照しながら説明する。
【0045】
まず、プレート21を試料摘出装置11の載置台12(図1参照)上に固定する。プレート21を固定する角度は、ノズル孔22内の微小異物31を取り出すことが可能な角度(微小異物31を視認することが可能な角度)に調整する。
【0046】
次に、実体顕微鏡13(図1参照)を見ながら、プレート21のノズル孔22の口元に、採取針32の先端部41aが近づくように、第1マニピュレータ14(図1参照)を操作して移動させる。
【0047】
次に、モニタ17(図1参照)との接続を実体顕微鏡13からマイクロスコープ34に切り替えて、モニタ17に表示される画像をノズル孔22の中の画像に替える。このあと、ノズル孔22の中の画像を見ながら、第1マニピュレータ14を操作して採取針32の先端針41をノズル孔22の中に挿入する。このとき、例えば、ノズル孔22の中には先端針41のみが入り、マイクロスコープ34はプレート21から離れた位置に配置されるようになっている。
【0048】
更に、マイクロスコープ34の拡大機構を操作して、ノズル孔22内を拡大して表示させる。例えば、2〜10μm程度の大きさの微小異物31を確認するには、上記したように、200倍〜500倍に拡大する。そして、第1マニピュレータ14によってマイクロスコープ34を微動させてノズル孔22内にある微小異物31の位置を特定する。
【0049】
微小異物31の位置を特定した段階で、微小異物31と先端針41とが接触可能な状態になり、モニタ17を見ながら微小異物31に先端針41を挿入する。そして、第1アーム33(図1参照)を引き戻すことにより、微小異物31が突起部44によって引っ掛けられ、ノズル孔22内から取り出すことができる。
【0050】
以上のように、マイクロスコープ34の先端に採取針32を取り付けた構造にすることにより、ノズル孔22の奥に微小異物31が付着していたとしても、ノズル孔22の縁に邪魔されることなくノズル孔22の中(微小異物31)を観察することができる。そして、モニタ17の画像を見ながら微小異物31を取り出すことができる。
【0051】
次に、取り出された微小異物31の分析を行う。まず、微小異物31を分析するための別に設けられた基板上に載置する。次に、例えば、顕微FT−IRやSEM−EDXを用いて、微小異物31の有機物の分析や元素分析を行う。この分析結果を基に、微小異物31の発生源などを特定することが可能となり、ノズル孔22の中に詰まる原因を特定することができる。
【0052】
以上詳述したように、本実施形態の試料摘出装置の製造方法によれば、以下に示す効果が得られる。
【0053】
(1)本実施形態の試料摘出装置11によれば、マイクロスコープ34の先端に採取針32が取り付けられていることにより、マイクロスコープ34で微小異物31を見る軸と、微小異物31を取り出すべく採取針32の軸とを同軸上に配置することが可能となる。よって、ノズル孔22の奥に微小異物31があったとしても、ノズル孔22の縁が邪魔になって微小異物31を観察することができなかったり、ノズル孔22の縁に採取針32が接触して取り出すことができなかったりすることを防ぐことができる。これにより、ノズル孔22の中の微小異物31を見ながら微小異物31を取り出すことができる。その結果、微小異物31の有機物の分析や元素などを特定することが可能となり、ノズル孔22に微小異物31が詰まる原因を究明することができる。
【0054】
(2)本実施形態の試料摘出装置11によれば、マイクロスコープ34の先端に採取針32が取り付けられており、採取針32の先端部41aにマイクロスコープ34の焦点が合わせられているので、マイクロスコープ34によってノズル孔22の中にある微小異物31の位置を特定したあと、引き続いて採取針32を微小異物31に突き刺すことができる。よって、マイクロスコープ34と採取針32とを別々に移動させたりピントを合わせたりする煩わしさを抑えることができる。
【0055】
(3)本実施形態の試料摘出装置11によれば、採取針32を着脱可能に設けたことにより、ノズル孔22の中にある微小異物31の位置を特定する際に、採取針32にダメージを受けたとしても、マイクロスコープ34を交換することなく採取針32のみ交換させることが可能となる。よって、効率よく交換できるとともに、かかるコストを抑えることができる。
【0056】
なお、本実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0057】
(変形例1)上記したように、マイクロスコープ34と同じ軸上に採取針32を設けることに限定されず、例えば、図5に示すように、マイクロスコープ201に隣接して採取針202が取り付けられた固定軸203を装着し、採取針202の先端部204がマイクロスコープ201の略中心にくるように配置してもよい。また、マイクロスコープ201の焦点は、先端部204に合わせられている。これによれば、採取針202とマイクロスコープ201とが同軸上になくても、マイクロスコープ201に隣接して採取針202が配置されていることにより、マイクロスコープ201で微小異物31を見る角度と、微小異物31を取り出すべく採取針202が取り付けられている角度との差を小さくすることが可能となる。よって、上記した効果と同様に、微小異物31を観察しながら微小異物31を取り出すことができる。
【0058】
(変形例2)上記したように、マイクロスコープ34の先端部に形成された溝51に採取針32を固定することに代えて、例えば、図6に示すように、採取針301を固定板302で挟み、固定ネジ303で固定板302をマイクロスコープ304に固定させることで、採取針301を取り付けるようにしてもよい。また、マイクロスコープ304の焦点は、採取針301の先端部305に合うように調整されている。また、固定板302には、採取針301の形状に沿って掘られた溝306が形成されており、この溝306に嵌めて固定するようになっている。これによれば、上記した効果と同様に、微小異物31を観察しながら微小異物31を採取することができる。
【0059】
(変形例3)上記したように、マイクロスコープ34の先端に採取針32を固定しお互いを一緒に移動させていることに代えて、例えば、マイクロスコープ34と採取針32とを同軸上ではなく隣接させて配置させるとともに、マイクロスコープ34を固定し、採取針32のみ第1マニピュレータ14と接続して可動可能に設けるようにしてもよい。これによれば、比較的重量の重いマイクロスコープ34を第1マニピュレータ14に固定させる必要がなく、第1マニピュレータ14にかかる負担を軽減させることができる。よって、第1マニピュレータ14によって採取針32を正確に微動させることが可能となる。更に、マイクロスコープ34の先端に採取針32を取り付ける機構を設ける必要がなくなり、より簡易的にすることができる。なお、マイクロスコープ34は、微小異物31に焦点を合わせることが可能な範囲に固定させる。
【0060】
(変形例4)上記したように、微小異物31を取り出し易くするために、採取針32の先端針41に突起部44を設けていることに限定されず、例えば、図7に示すような形状にしてもよい。図7(a)に示す採取針401では、先端部402が半円状に形成されている。これにより、微小異物31を引き寄せ易くすることが可能となる。また、図7(b)に示す採取針411では、先端部412が釣り針状に形成されている。これにより、引っ掛けた微小異物31を移動させる際に、針先から微小異物31を抜けにくくさせることができる。
【0061】
(変形例5)上記したように、採取針32を構成する嵌合針42の形状が楕円状であること代えて、例えば、嵌合針42の全周が波状に形成されており、マイクロスコープ34の溝51と嵌合針42とが、複数の接触点で固定されるようにしてもよい。これによれば、更に安定して固定できるとともに、固定力を強くすることができる。
【0062】
(変形例6)上記したように、採取針32を構成する先端針41のみノズル孔22の中に挿入させていることに限定されず、マイクロスコープ34の直径をより細く構成することにより、先端針41とマイクロスコープ34との距離を短くして、採取針32及びマイクロスコープ34の両方をノズル孔22の中に挿入するようにしてもよい。これによれば、先端針41の長さを短くしても微小異物31を採取することが可能となり、より先端針41の強度を高めることができる。その結果、採取針32を交換する頻度を低減することができる。
【0063】
(変形例7)上記したように、光46を供給することが可能なマイクロスコープ34を用いることに限定されず、例えば、ノズル孔22のように貫通孔であれば、微小異物31を取り出す側と反対側から別の光を照射することで光を供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る試料摘出装置の構成を示す模式図。
【図2】採取針の周辺の構成を模式的に示す斜視図。
【図3】採取針の着脱方法を示す模式図であり、(a)はマイクロスコープから採取針が取り外されている状態を模式的に示す斜視図、(b)はマイクロスコープに採取針が取り付けられた状態を模式的に示す斜視図、(c)は採取針の先端部側からみた採取針の着脱時の動作を模式的に示す正面図。
【図4】ノズル孔の中にある異物の採取方法を示す模式図。
【図5】採取針の取り付け方法の変形例を模式的に示す斜視図。
【図6】採取針の取り付け方法の変形例を模式的に示す斜視図。
【図7】(a)及び(b)は、採取針の先端形状の変形例を模式的に示す斜視図。
【図8】従来の採取方法を示す模式断面図。
【図9】従来の採取方法を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0065】
11…試料摘出装置、12…載置台、13…実体顕微鏡、14…第1マニピュレータ、15…第2マニピュレータ、16…CCDカメラ、17…モニタ、21…基板としてのプレート、22…窪みとしてのノズル孔、31…試料としての微小異物、32…採取針、33…第1アーム、34…マイクロスコープ、35…第2アーム、36…補助針、37…固定軸、38…接眼レンズ、41…先端針、41a…先端部、42…嵌合針、43…接続針、44…突起部、45…固定ネジ、46…光、51…溝、201…マイクロスコープ、202…採取針、203…固定軸、204…先端部、301…採取針、302…固定板、303…固定ネジ、304…マイクロスコープ、305…先端部、306…溝、401…採取針、402…先端部、411…採取針、412…先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された窪みの中にある試料を採取針を用いて採取するべく前記基板を載置固定する載置台と、
前記窪みの中にある前記試料の位置を特定するとともに前記採取針の先端部を視認することが可能なマイクロスコープと、
前記マイクロスコープの近傍に配置された前記採取針と、
前記採取針を移動させて前記窪みの中から前記試料を採取することが可能なマニピュレータと、を有することを特徴とする試料摘出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料摘出装置であって、
前記採取針は、前記マイクロスコープの先端に取り付けられており、
前記マイクロスコープは、前記マニピュレータに取り付けられており、
前記採取針と前記マイクロスコープとは、前記マニピュレータによって互いが一緒に移動することを特徴とする試料摘出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の試料摘出装置であって、
前記採取針は、前記マイクロスコープに取り付けられており、
前記マイクロスコープは、前記マニピュレータに取り付けられており、
前記採取針と前記マイクロスコープとは、前記マニピュレータによって互いが一緒に移動することを特徴とする試料摘出装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の試料摘出装置であって、
前記マイクロスコープは、前記採取針の先端に焦点を合わせていることを特徴とする試料摘出装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の試料摘出装置であって、
前記採取針は、前記マイクロスコープに着脱可能に取り付けられていることを特徴とする試料摘出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の試料摘出装置であって、
前記窪みは、孔、穴、溝のいずれかであることを特徴とする試料摘出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−309724(P2007−309724A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137455(P2006−137455)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】