説明

試験装置、試験方法及び開閉装置

【課題】使用寿命が延長すると共に信頼性が向上し、試験装置等に適用することのできる接触通電装置を提供する。
【解決手段】載置台11aに被試験デバイス13が載置され、炭素材で構成されたコンタクト部12gが、載置台11aに対向配置され、載置台11a上の被試験デバイス13の、電極端子13eが配置された表面を圧接し、電極端子13eと通電して被試験デバイス13の電気特性が試験される。コンタクト部12gは、繰り返し試験されてもスパーク、溶融等による損傷が抑制されるため、使用寿命が延長し、被試験デバイス13の商品価値の劣化を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流の通電経路を接触方式により確保する接触通電装置に関し、特に半導体デバイス等の電気特性を試験する試験装置、試験方法、及び電気回路を開閉する開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体、コンデンサ等の電気・電子部品、インバータ、電源、無停電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)、バッテリ充電器等の電機装置については、通常、製品出荷前に所定の電気特性の試験が行われる。以下、当該試験を行う試験装置の概要について説明する。なお、以下、試験装置によって試験される被試験デバイスとして、半導体デバイスを例に挙げて説明する。
【0003】
図11は半導体デバイスの試験を行う試験装置の概念図である。
被試験デバイス13の電気特性を試験する試験装置100は、被試験デバイス13に対して離接可能なコンタクト部101を備えるコンタクト装置100aと、コンタクト装置100aと電気的に接続されたテスタ100bとを有する。
【0004】
当該試験装置100では、コンタクト部101を被試験デバイス13の電極端子13eに接触させて、試験装置100と被試験デバイス13との通電ルートを確保した状態で、テスタ100bから様々な試験条件の電流・電圧がコンタクト部101を介して被試験デバイス13の電極端子13eに印加される。なお、コンタクト装置100aの製造コストや試験の作業効率を考慮して、プローブ型、ブロック型、またはソケット型や板バネ方式によるもの等の形状のコンタクト部101を用いて接触通電させるのが一般的である。
【0005】
そして、テスタ100bは、印加された電流・電圧に応じた被試験デバイス13の応答を得ることで電気特性の測定を行う。また、例えば、テスタ100bは測定した被試験デバイス13の電気特性に基づいて、被試験デバイス13が良品又は不良品であるかを判別するようにすることも可能である。
【0006】
当該試験の実施に際し、被試験デバイス13がパワー半導体等の場合には、被試験デバイス13に対して数百A以上の大電流を通電させる場合がある。このような大電流を用いた試験を実施すると、電極端子13eとコンタクト部101との互いの接触面が磨耗し、また、電極端子13eとコンタクト部101との接触通電によって当該接触面が発熱してしまう。このような発熱等により、コンタクト部101と電極端子13eとの間にスパークが発生し、また、コンタクト部101と被試験デバイス13の電極端子13eとの接触面が溶融してしまい、コンタクト部101と電極端子13eとが損傷を受けてしまう。なお、このような問題が顕著になる接触通電は、経験的には、およそ50A以上であることが分かっている。
【0007】
そこで、大電流を通電させる試験を行う場合には、試験装置100では、使用寿命が短くなるコンタクト部101を極めて高頻度で交換したり、または/及び、テスタ100bに電気的に接続されている圧着端子を被試験デバイス13の電極端子13eに直接ねじで固定して、通電させたりしている。
【0008】
以下、被試験デバイス13を試験する試験装置の具体例について説明する。
図12は具体的な半導体デバイスの試験装置の模式図である。
なお、図12(A)は、弾性を有するコンタクト部101を電極端子13eに接触させて被試験デバイス13の試験を行う試験装置100の側面図である。また、図12(B)は、圧着端子105を電極端子13eにねじで固定して被試験デバイス13の試験を行う試験装置200の要部拡大側面図である。
【0009】
試験装置100が具備するコンタクト装置120は、コンタクト部101を構成する複数のL字加工された金属板101a〜101cが、長手方向の終端部に金属スペーサ102a,102bを介してねじ103で固定されている。なお、高精度測定が要求される場合には、主に四端子法が適用される。この場合、センス端子とフォース端子とを分離させるために金属スペーサに代わって絶縁体のスペーサを用いる。
【0010】
また、試験装置100が具備する図示しないテスタが当該コンタクト装置120に配線104を介して電気的に接続されている。試験実施時に金属板101a〜101cの短手方向の先端部が被試験デバイス13の電極端子13e面に対し垂直かつ同時に接触するように、金属板101a〜101cは先端部を揃えた上でコンタクト装置120にそれぞれ固定されている。
【0011】
なお、金属板101a〜101cは、耐摩耗性を確保する目的でタングステン系の材料、または、弾性を確保する目的でリン青銅、ベリリウム銅系の材料を使用することが望ましい。また、その金属板101a〜101cの表面は酸化防止のために、金、銀またはニッケル等でめっき処理を施すことが望ましい。
【0012】
このような試験装置100,200で試験される被試験デバイス13は、半導体チップ(図示を省略)を内部に格納する樹脂ケース13aと、樹脂ケース13aの主面に形成され、ナット13cがねじ孔13dに嵌合されると共に、上部に電極端子13eの端部が配置された固定部材13bとを備える。なお、電極端子13eは、一方の端部が樹脂ケース13a内で当該半導体チップと電気的に接続されており、他方の端部は樹脂ケース13a外に延伸し、他方の端部に形成された開口孔13fがねじ孔13dと位置合わせされている。
【0013】
次に、試験装置100による被試験デバイス13の試験方法について説明する。
まず、被試験デバイス13を試験装置100の所定領域にセットする。そして、コンタクト装置120を下降して、コンタクト部101の先端部を被試験デバイス13の電極端子13eに接触させる。
【0014】
被試験デバイス13の試験を行う際には、電極端子13eとコンタクト部101とが接触を開始する高さを基準として、コンタクト装置120を当該基準から、図12(A)に示す矢印の方向に移動(オーバードライブ)させる。すると、コンタクト部101の金属板101a〜101cの長手方向が撓み、板ばね効果により電極端子13eに所望の大きさの接触圧が加わり、被試験デバイス13に大電流を通電させることができる。また、被試験デバイス13に対して大電流を通電させるために、金属板101a〜101cの枚数を変えて、電極端子13eとコンタクト部101との接触面積を調整するようにしても構わない。その他、金属板101a〜101cの種類(弾性率)、寸法、オーバードライブ量を適宜選択して接触荷重を制御するようにしても構わない。
【0015】
また、試験装置200では、図12(B)に示されるように、被試験デバイス13の電極端子13e上に、図示しないテスタに配線104で電気的に接続された圧着端子105が載置され、当該圧着端子105がボルト106とナット13cによりねじ締めされて固定されている。
【0016】
この場合の被試験デバイス13の試験方法は、テスタからの電流・電圧が配線104並びに圧着端子105を介して被試験デバイス13の電極端子13eに印加される。一方、印加された電流・電圧に応じた被試験デバイス13からの応答が電極端子13e、圧着端子105並びに配線104、もしくは図示しない別の電極端子並びにコンタクト部を介してテスタに出力される。
【0017】
上記の他に、被試験デバイス13の半導体チップの電極に対する損傷、並びにコンタクト部101の溶融の防止手段として、被試験デバイス13の半導体チップの電極の構成材料よりも弾性係数が小さく、略平坦な面を有する導電性繊維の集合体から構成されるコンタクト部を利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0018】
ところで、鉄道車両のパンダグラフ(集電すり板)には、過酷な条件下での高速走行による割れや欠けの発生を抑制するために、靭性及び導電性に優れた炭素材が適用されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−337247号公報
【特許文献2】特開平7−126713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記の金属板101a〜101cで構成されるコンタクト部101と被試験デバイス13の電極端子13eとの接触が繰り返し行われると、コンタクト部101の接触面が徐々に磨耗されて、コンタクト部101のめっきが剥がれ、母材が部分的に露出して接触面に凹凸が生じてしまう。また、母材が露出した状態のコンタクト部101で試験が繰り返し行われると、接触通電の発熱により、母材の露出箇所の酸化が進んでしまう。
【0021】
コンタクト部101の接触面の損傷及び酸化が進行するにつれて、接触面積が縮小し、また、部分的に接触抵抗が大きくなり接触通電が不安定化する。さらにこの状態が進行すれば、通電時の接触面の温度がコンタクト部101の融点を超えて、溶融やスパークが発生し、接触面のさらなる悪化を招いてしまう。そして、以降の繰り返し行われる試験に耐えられなくなってしまう。また、被試験デバイス13の電極端子13e自体も、電極端子13eの接触面が溶融し、コンタクト部101の溶融物の付着により商品価値が低下する。
【0022】
特許文献1に記載されている略平坦な面を有する導電性繊維の集合体から構成されるコンタクト部を利用すれば、電極端子13eの接触面が溶融してコンタクト部101の溶融物が付着するという不具合は防止できる。しかし、繊維の集合体ということからバルクに比べ電流容量が低く、非常に大きな電流に対してはそのままでは使えないという課題がある。
【0023】
また、上記試験装置200の場合では、被試験デバイス13の1個あたり、2〜20箇所存在する大電流に耐えうる電極端子13eそれぞれにねじ締め作業を実施する必要があり、被試験デバイス13の試験コストが嵩むことになる。
【0024】
本願はこのような点に鑑みてなされたものであり、大電流の通電が可能で、使用寿命が延長し、信頼性が向上すると共に、試験コストの抑制が可能な試験装置、試験方法及び開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために、被試験デバイスの電気特性を試験する試験装置が提供される。
この試験装置は、前記被試験デバイスが載置される載置台と、前記載置台に対向配置され、前記載置台上の前記被試験デバイスの、電極が配置された表面を圧接し、前記電極と通電して前記電気特性を試験する炭素材で構成された接触子と、を有する。
【0026】
また、上記目的を達成するために、被試験デバイスの電気特性を試験する試験方法が提供される。
この試験方法は、前記被試験デバイスの、電極が配置された表面に炭素材で構成された接触子を圧接して、前記電極と通電して、前記電気特性を試験する。
【0027】
このような試験装置及び試験方法によれば、被試験デバイスの、電極が配置された表面が炭素材で構成された接触子で圧接されて、電極と通電して、電気特性が試験される。
また上記目的を達成するために、電気回路を開閉する開閉装置が提供される。
【0028】
この開閉装置は、前記電気回路にそれぞれ接続された、対向配置する第1,第2金属板と、前記第1,第2金属板の対向する表面の少なくとも一方に配置され、前記第1金属板が前記第2金属板に圧接されると前記第1,第2金属板間を通電させる、炭素材で構成された接触子と、を有する。
【0029】
このような開閉装置は、電気回路にそれぞれ接続された、対向配置する第1,第2金属板の対向する表面の少なくとも一方に配置され、炭素材で構成された接触子により、第1金属板を第2金属板に圧接すると第1,第2金属板間が通電する。
【発明の効果】
【0030】
上記試験装置、試験方法及び開閉装置では、通電が安定し、使用寿命が延びると共に、試験コストの抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態における試験装置の側面図である。
【図2】従来のコンタクト材を用いたコンタクト部の、オーバードライブ量に応じた抵抗値を表すグラフである。
【図3】炭素を主材とした炭素材からなるコンタクト部の抵抗値の押し付け荷重依存性を表すグラフである。
【図4】炭素材からなるコンタクト部の圧力に応じた抵抗値を、接触面積別に表すグラフである。
【図5】試験回数によるコンタクト部の抵抗値の変化を表すグラフである。
【図6】実施例1−1に係る、押圧手段にソレノイドが用いられた試験装置の側面図である。
【図7】実施例1−2に係る、押圧手段に電動シリンダが用いられた試験装置の側面図である。
【図8】実施例1−3に係る、押圧手段にばねが用いられた試験装置の側面図である。
【図9】実施例2に係る、四端子法が適用された試験装置の側面図である。
【図10】実施例3に係る開閉装置の要部側面図である。
【図11】半導体デバイスの試験を行う試験装置の概念図である。
【図12】具体的な半導体デバイスの試験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施の形態について説明する。
図1は実施の形態における試験装置の側面図である。
ここでは、エアシリンダ12aによって押圧されて移動した金属板12f及びコンタクト部12g(接触子)の位置を二点鎖線で表している。
【0033】
試験装置10は、試験対象の被試験デバイス13がセットされる載置部11と、押圧部12と、押圧部12と電気的に接続された、図示しないテスタとで構成されている。以下、各構成について説明する。
【0034】
載置部11は、被試験デバイス13がセットされる載置台11aと、載置台11aにセットされた被試験デバイス13を所定位置に調整または案内する位置決めガイド11bとで構成されている。
【0035】
押圧部12は、載置部11に対向配置されている。当該押圧部12は、押圧手段としてエアシリンダ12aと、エアシリンダ12aに一方の端部が案内されており、エアシリンダ12aの駆動に応じて図1中上下にピストン運動するロッド12bと、ロッド12bの他方の端部に取り付けられた絶縁板12cとを有する。
【0036】
さらに、絶縁板12cの載置部11側に取り付けられ、テスタへの電極取り出し口である金属板12fと、金属板12fの載置部11側に、被試験デバイス13の電極端子13eに対向するように、炭素を主材とした炭素材からなるコンタクト部12gが取り付けられている。なお、金属板12fには配線12eが接続された圧着端子12dがねじ12hにより取り付けられていて、金属板12fは当該配線12eを介してテスタに接続されている。また、このような押圧部12を構成する各構成要素はねじ締めによって接続し、または、電気抵抗が比較的小さな、ろう付け、溶接等によって接合することもできる。
【0037】
なお、炭素を主材としたコンタクト部12gの詳細については後述する。
テスタは、コンタクト部12gが被試験デバイス13に接触して、試験装置10と被試験デバイス13との通電ルートが確保された状態で、様々な試験条件の電流・電圧をコンタクト部12gを介して被試験デバイス13に印加する。また、テスタは、印加された電流・電圧に応じた被試験デバイス13の応答から被試験デバイス13の電気特性を測定し、また、例えば、当該電気特性に基づいて、被試験デバイス13の良品又は不良品を判別することもできる。
【0038】
また、被試験デバイス13は、回路基板に実装され、当該回路基板とワイヤやはんだ等で接続された半導体チップ(図示を省略)を内部に格納する樹脂ケース13aと、樹脂ケース13aの主面に形成され、ねじ孔13dにナット13cが嵌合されると共に、上部に電極端子13eの端部が配置された固定部材13bとを備える。なお、電極端子13eは、一方の端部が樹脂ケース13a内で当該半導体チップと電気的に接続されており、他方の端部は樹脂ケース13a外に延伸し、他方の端部に形成された開口孔13fがねじ孔13dに合致している。また、電極端子13eは母材が、例えば、銅系合金、表面に無電解ニッケルめっき処理が施されている。
【0039】
次に、上記の構成を有する試験装置10で行われる被試験デバイス13に対する試験方法について説明する。
まず、被試験デバイス13を載置部11の載置台11a上にセットして、位置決めガイド11bにより被試験デバイス13の電極端子13eがコンタクト部12gと対向する所定領域に位置合わせして固定する。
【0040】
次に、エアシリンダ12aを動作してロッド12bを下降させて、所定の押し付け荷重でコンタクト部12gを被試験デバイス13の電極端子13eに接触させる(図1中の二点鎖線の位置を参照。)。
【0041】
なお、エアシリンダ12aを動作させるためには、圧縮エアーを供給することでコンタクト部12gを下降させることができる。なお、圧縮エアーを供給する圧縮エアー配管(図示を省略)にはレギュレータが接続されており、供給圧力を調整できる。ここで、コンタクト部12gの被試験デバイス13の電極端子13eへの押し付け荷重は、エアー圧力×ピストンの受圧面積×シリンダ効率で得られる。
【0042】
また、所定の押し付け荷重については、予め、被試験デバイス13の電極端子13eとコンタクト部12gとを用いて、押し付け荷重と接触面積、接触面圧力、抵抗値(コンタクト部12gの固有抵抗+電極端子13eとの接触抵抗)の関係を取得しておく。所定の抵抗値が得られる接触面圧力を算出(または測定)した上で、その接触面圧力が得られる押し付け荷重を、接触面積も利用して算出しておく。押し付け荷重と接触面積、接触面圧力、抵抗値の関係は、電極端子13e及びコンタクト部12gとのそれぞれの材質、形状及び温度に依存する。このため、これらのパラメータが変わる場合は、その都度、各パラメータ間の関係を確認して、最適な押し付け荷重を算出することが必要となる。
【0043】
なお、コンタクト部12gにおける押し付け荷重と接触面積、接触面圧力、抵抗値の関係の詳細については後述する。
コンタクト部12gを被試験デバイス13の電極端子13eに接触させた状態で、所定の時間テスタから所定の電流・電圧を印加して、コンタクト部12gから電極端子13eに通電させる。
【0044】
そして、テスタは、通電に応じた被試験デバイス13からの応答に基づき被試験デバイス13の例えば、抵抗値等の電気特性を測定する。また、当該電気特性に基づいて、被試験デバイス13の良品又は不良品を判別することもできる。
【0045】
所定の測定の終了後、エアシリンダ12aに上昇用の圧縮エアーを供給することによりロッド12bを上昇させて、コンタクト部12gが被試験デバイス13の電極端子13eから離れる(開放される)。
【0046】
そして、被試験デバイス13の別の電極端子について試験を行う場合には、コンタクト部12gと同様のコンタクト部が別の電極端子に対しても設けられていて、当該コンタクト部がコンタクト部12gと同様に別の電極端子に接触して試験が行われる。
【0047】
このようにして、被試験デバイス13の電極端子について上記の試験方法が行われる。
次に、コンタクト部12gについて説明する。
一般に、コンタクト部12gの使用寿命は、通電条件(電流、接触時間等)、接触条件(接触圧力等)、温度、コンタクト部12gの物性に依存する。また、コンタクト部12gの物性でも、特に、比抵抗、耐摩耗性、酸化しやすさが重要となる。
【0048】
また、コンタクト部12g自体の固有の抵抗値はできる限り低くすることが望まれる。その理由として、まず、コンタクト部12gと他の回路との固有抵抗による電圧降下分を小さくすることにより、被試験デバイス13に所定の電圧を印加するための通電回路の電源に要求される容量(最大電圧)を低減することができる(電源の出力電圧は、上記電圧降下分と被試験デバイス13に印加される電圧との和である。)。もしくは、電源の容量を変えずに被試験デバイス13に印加できる電圧値を上げることができる。また、コンタクト部12gの固有抵抗と電極端子13eとの接触抵抗とによるジュール熱による発熱が抑制されるため、コンタクト部12gと被試験デバイス13の電極端子13eとの接触面の溶融を防止することができる。
【0049】
例えば、図12(A)において、コンタクト部101が8枚のリン青銅の金属板で構成され、被試験デバイス13の電極端子13eの形状が平坦で、材質が脱酸銅の表面にニッケルめっきが施されている場合について考える。この場合に、通電条件が600A、50msで、通電回路の電源容量が600A、10Vの範囲で規定されていて、デバイスの最大オン電圧を4Vとすれば、コンタクト部101の許容抵抗値(固有抵抗+接触抵抗)の最大値は5mΩとなる(電流の入口と出口とで被試験デバイス13にコンタクト部101が2箇所あることとした。)。したがって、抵抗値は5mΩ以下であることが望ましい。
【0050】
また、コンタクト部12gは、低固有抵抗であることに加えて、耐摩耗性が高く、酸化しにくい材料であることが求められる。これに対し、発明者らは靭性及び導電性に優れた炭素を適用することを発案した。
【0051】
試験装置10では、試験実施のために、コンタクト部12gと被試験デバイス13の電極端子13eとの接触・非接触を数千回以上繰り返すものであるため、コンタクト部12gの接触面が酸化して絶縁性酸化膜が生成されると大きな問題となる。
【0052】
特許文献2の鉄道車両の集電すり板の場合は、電線と接触摺動させながら通電させるものであり、たとえ酸化膜が生成したとしても、電線に削られて除去される。しかしながら、試験装置にはそのような摺動させて酸化膜を削り取る構造が存在しないこともあり、他分野で適用されているバルク状の炭素材を試験装置に適用することは今まで検討されていなかった。そこで、発明者は様々な検討を行い、所定の特性を有する炭素材をコンタクト部12gに適用することにより、スパーク及び溶融を防止することができるという知見を得ることができた。当該知見に基づき、コンタクト部12gに適用できる炭素材として、例えば、炭素繊維を用いた炭素材の炭素繊維強化炭素材、あるいは銅またはアルミニウム等の金属を含浸させた炭素材の金属含浸炭素材等を挙げることができる。
【0053】
コンタクト部12gを構成するこのような炭素繊維強化炭素材、金属含浸炭素材は、例えば、以下のように製造することができる。
炭素繊維強化炭素材は、まず、例えば、石油、石炭、コールタール等のピッチ系またはPAN(PolyAcryloNitrile)系の炭素繊維に、樹脂を含浸させてプリプレグにする。
【0054】
次いで、当該プリプレグを積層して硬化し、または、炭素繊維の織物に樹脂を含浸させて加熱して硬化する等によって形成する。このようにして形成されたものを還元雰囲気で炭化することにより製造することができる。
【0055】
なお、場合によっては、ピッチまたは熱硬化性樹脂を含浸、焼成する処理を数回繰り返し、緻密化を行う。その後、高温で熱処理を行い、黒鉛化処理を行う。また、高温(約2000℃)でハロゲンガスと反応させて高純度化処理を行っても良い。また、ピッチ及び熱硬化性樹脂を併用して緻密化を行っても構わない。
【0056】
一方、金属含浸炭素材は、まず、炭素焼結体または炭素繊維強化炭素材を減圧含浸炉に装入し、減圧含浸炉内を減圧する。次いで、炭素焼結体または炭素繊維強化炭素材を溶融温度以上に加熱した金属の溶湯に浸漬し、圧力を付加して金属含浸を行うことで、金属含浸炭素材を製造することができる。含浸する金属は特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム等が用いられる。
【0057】
なお、後述の実施例等でコンタクト部12gとして用いる炭素を主材とした炭素材は、以下のようにして製造した。
まず、長さが30〜100mm程度となるように切断したピッチ系炭素繊維を、ランダムな方向に分散させ、炭素繊維100質量部に対して30質量部のフェノール樹脂を用いて炭素繊維を固定し、シート状のプリプレグを作製した。このプリプレグを約100℃にて予備乾燥した後、約100枚重ねてホットプレスを用いて加圧・成形し、約2000℃で熱処理することにより、炭素繊維積層体を得た。この炭素繊維積層体に熱分解炭素を堆積させ、易黒鉛化性の熱ピッチの含浸と熱処理とを5回繰り返した後、約3000℃で熱処理して黒鉛化させ、炭素材を得た。
【0058】
次に、コンタクト部12gの押し付け荷重と接触面積、接触面圧力、抵抗値の関係について説明する。
まず、比較のために、図12(A)のコンタクト部101について説明する。
【0059】
図2は、従来のコンタクト材を用いたコンタクト部の、オーバードライブ量に応じた抵抗値を表すグラフである。
なお、横軸は、電極端子13eとの接触開始時を基準としたオーバードライブ量(mm)、縦軸は抵抗値(電極端子13eとの接触抵抗値+固有抵抗値)(mΩ)をそれぞれ表す。また、図2の場合は、8枚の金属板で構成されたコンタクト部101に関して2つのサンプルについてそれぞれ表している。
【0060】
2つのサンプルのいずれにおいても、オーバードライブ量の増加、すなわち、押し付け荷重の増加に連れて、抵抗値が減少している。そして、オーバードライブ量が約2mmを超えた辺りから抵抗値が安定して、ほぼ一定値(約1.5mΩ)を示している。オーバードライブ量が約2mmの場合の押し付け荷重は、コンタクト部101のばね部の寸法、材質に基づき、およそ10〜20N(1〜2kgf)に相当する。
【0061】
次いで、炭素を主材としたコンタクト部12gについて説明する。
図3は、炭素を主材とした炭素材からなるコンタクト部の抵抗値の押し付け荷重依存性を表すグラフである。
【0062】
なお、炭素は弾性率が大きいため、接触条件を決めるパラメータとしてオーバードライブ量の代わりに、押し付け荷重を用いている。また、横軸は押し付け荷重(kgf)、縦軸は抵抗値(電極端子13eとの接触抵抗値+固有抵抗値)(mΩ)をそれぞれ表す。また、図3の場合は、炭素を主材とするコンタクト部12gの電極端子13eに対する接触面積は約20mm2であって、当該コンタクト部12gに関して3つのサンプルについてそれぞれ表している。
【0063】
3つのサンプルのいずれにおいても、図2の場合の抵抗値と比較すると、大きな押し付け荷重が必要ではあるものの、押し付け荷重の増加に伴って、抵抗値が大きく減少している。そして、押し付け荷重が20kgf(196N)を超えた辺りから80kgf(785N)まで、図2の場合よりも小さい、ほぼ一定の抵抗値(約1.0mΩ)を示している。
【0064】
図2及び図3のグラフから、当該コンタクト部12gを利用することにより、金属板で構成されるコンタクト部101よりも抵抗値を小さくできることがわかる。
それでは、コンタクト部12gの電極端子13eとの接触面積に応じた抵抗値について説明する。
【0065】
図4は、炭素材からなるコンタクト部の圧力に応じた抵抗値を、接触面積別に表すグラフである。
なお、横軸は電極端子13eに対する圧力(MPa)、縦軸は抵抗値(電極端子13eとの接触抵抗値+固有抵抗値)(mΩ)をそれぞれ表す。また、3つのグラフは、それぞれ接触面積が20,70,200mm2の場合の測定値を表している。
【0066】
どの接触面積においても、圧力の増加に伴って、抵抗値が大きく減少している。そして、所定の圧力を超えた辺りから、ほぼ一定の抵抗値を示している。一定になった抵抗値はいずれも図2の場合よりも小さいことがわかる。特に、接触面積が一番大きな200mm2の場合が、圧力に対応する抵抗値が最も小さい。
【0067】
したがって、電極端子13eに対する圧力が一定の場合には、コンタクト部12gの接触面はできるだけ大きくすることが望ましい。コンタクト部12gの形状としてはブロック形状(直方体形状)、円柱状等であれば、接触面積を確保でき、作成も容易である。
【0068】
次いで、試験回数に応じたコンタクト部12gの抵抗値について説明する。なお、比較のため、金属板で構成されたコンタクト部101についても説明する。
図5は、試験回数によるコンタクト部の抵抗値の変化を表すグラフである。
【0069】
なお、横軸は試験回数(接触回数)(回)を、縦軸は抵抗値(電極端子13eとの接触抵抗値+固有抵抗値)(mΩ)をそれぞれ表す。また、8枚の金属板で構成されたコンタクト部101の3つのサンプル(金属系)、及び炭素を主材としたコンタクト部12gの4つのサンプル(炭素系)の測定結果を表している。図5では、コンタクト部101,12gの各サンプルの抵抗値が一定になったそれぞれの押し付け荷重を保ちながら、常温環境下で450A、100msのパルス通電を行い、次にコンタクト部12gを電極端子13eから離す、ということを繰り返し行った場合について示している。
【0070】
金属板で構成されたコンタクト部101のいずれの場合においても、試験回数が5000回辺りを超えると抵抗値が増加し始める。これは、既述の通り、コンタクト部101の接触面に損傷が生じ始めたことに起因すると考えられる。実際、試験回数が7500回で、いずれのサンプルにおいてもスパーク痕(溶融痕跡)が確認された。
【0071】
一方、炭素を主材としたコンタクト部12gについては、いずれのサンプルの抵抗値も、若干増加した後はほぼ安定していることがわかる。実際、試験回数が7500回では、いずれのサンプルにおいてもスパーク痕(溶融痕跡)は確認されなかった。
【0072】
上記の結果により、炭素を主材とした炭素材からなるコンタクト部12gは、繰り返し通電されてもスパーク、溶融等による損傷が抑制されるため、使用寿命が延長すると共に、被試験デバイスの商品価値の劣化を防止させることができる。
【0073】
このようなコンタクト部12gが適用された試験装置10では、通電が安定し、信頼性が向上すると共に、コンタクト部12gの使用寿命が延びて、コンタクト部12gを頻繁に交換する必要が無くなり、コンタクト部12gを交換する煩雑さが減少する。また、コンタクト部12gを電極端子13eに対して接触・非接触させて試験を行うことができるため、被試験デバイス13の電極端子13eそれぞれにねじ締め作業を行う必要が無くなり、被試験デバイス13の製造コスト(試験コスト)を低減することもできる。
【0074】
以下では、上記実施の形態を踏まえた様々な例について説明する。
まず、エアシリンダ12a以外の押圧手段が適用された実施例について説明する。
[実施例1−1]
図6は、実施例1−1に係る、押圧手段にソレノイドが用いられた試験装置の側面図である。
【0075】
試験装置20は、載置部11と、押圧部22と、押圧部22の金属板12f及びコンタクト部12gと電気的に接続された、図示しないテスタとで構成されている。以下、押圧部22の構成について説明する。
【0076】
押圧部22は、載置部11に対向配置されており、押圧手段として、フレーム22aと、フレーム22aで覆われた円筒状のコイル22cと、コイル22cの中心に案内されたプランジャ22bとで構成されたソレノイドを具備している。なお、プランジャ22bの一方の端部には、プランジャ22bがコイル22cから外れないためのストッパ部材22dが形成されている。そして、プランジャ22bの他方の端部に取り付けられた絶縁板12cを有する。その他の構成については図1と同様である。
【0077】
当該試験装置20では、ソレノイドのコイル22cに所定の電流を印加して、磁場を発生させて、プランジャ22bを上下動させることができる。そして、プランジャ22bを下降させてコンタクト部12gを所定の押し付け荷重で被試験デバイス13の電極端子13eに接触させることができる。なお、ソレノイドを利用する場合には、予め、使用するソレノイドの電流−推力カーブ、ストローク−推力カーブを確認し、必要な押し付け荷重を確保しておく必要がある。
【0078】
[実施例1−2]
図7は、実施例1−2に係る、押圧手段に電動シリンダが用いられた試験装置の側面図である。
【0079】
試験装置30は、載置部11と、押圧部32と、押圧部32の金属板12f及びコンタクト部12gと電気的に接続された、図示しないテスタとで構成されている。以下、押圧部32の構成について説明する。
【0080】
押圧部32は、載置部11に対向配置されており、押圧手段として、モータ32a1と、モータ32a1に接続されたボールネジ32a2と、一方の端部がボールネジ32a2に接続されたロッド12bとで構成された電動シリンダ32aを具備している。なお、ロッド12bの他方の端部には絶縁板12cが取り付けられている。その他の構成については図1と同様である。
【0081】
当該試験装置30では、モータ32a1の回転運動をボールネジ32a2で直線運動に変換し、ロッド12bを上下動させることができる。そして、ロッド12bを下降させてコンタクト部12gを所定の押し付け荷重で被試験デバイス13の電極端子13eに接触させることができる。
【0082】
[実施例1−3]
図8は、実施例1−3に係る、押圧手段にばねが用いられた試験装置の側面図である。
試験装置40は、載置部11と、押圧部42と、押圧部42の金属板12f及びコンタクト部12gと電気的に接続された、図示しないテスタとで構成されている。以下、押圧部42の構成について説明する。
【0083】
押圧部42は、載置部11に対向配置されており、ハンドレバー42aと、連結部材42cと、ハンドレバー42a及び連結部材42cを回転可能にする回転軸を有する部材42bと、連結部材42cの一方の端部に遥動自在に軸支されてハンドレバー42aの回転に応じて上下動するロッド12bとからなるトグルクランプを備えている。また、ロッド12bの他方の端部に取り付けられた連結部材42dと、連結部材42dに一組のばね42eを介して連結された連結部材42fと、連結部材42fの端部に載置部11側に延伸するように形成されたストッパ42hとを有する。さらに、連結部材42fにばね42gを介して、絶縁板12cが連結されている。なお、ばね42eのばね定数はばね42gのばね定数よりも大きい。その他の構成については図1と同様である。
【0084】
当該押圧部42では、まず、ハンドレバー42aを回転させるとロッド12bの下降に伴って、ロッド12b以下の構成も下降して、コンタクト部12gが被試験デバイス13の電極端子13eに対して接触を開始する。
【0085】
さらに、ハンドレバー42aを回転させてロッド12bを下降させると、ばね42gが撓み始め、しかる後に、ストッパ42hによりコンタクト部12gの下降が抑制される。なお、所定の荷重(荷重=ばね定数×ストローク量)が得られる程度のばね42gの撓み量が確保されるように、ストッパ42hと載置台11aとの距離が予め設定されている。ハンドレバー42aを下死点まで回転させると、ばね42gは、既述の通り、ストッパ42hにより撓み量が維持されるため、コンタクト部12gには当該撓み量に相当する荷重がかかり、ストッパ42hによりコンタクト部12gの下降が停止された後のロッド12bの下降による余分な荷重はばね42eにより吸収される。
【0086】
なお、当該押圧部42では、ばね42e,42gを撓ませてコンタクト部12gを接触させるために、トグルクランプのハンドレバー42aを回転させることによりロッド12bを下降させている。本実施例で重要なのは、動作時のばね42eのストローク量が予め設定されていて、これにより所定の荷重を得ることができ、それ以上の余分な荷重はばね42gに吸収されることにある。このため、トグルクランプに替えて、上記図6及び図7で用いた押圧手段によりロッド12bを下降させても構わない。
【0087】
また、本発明は、ストッパ42h及びばね42e,42gに関する図8の構成に限定されず、荷重がかかったばね42gが所定の撓み量だけ撓んだ際にそれ以上の荷重を吸収するような構成を適宜選択することができる。
【0088】
[実施例2]
上記では、炭素材からなるコンタクト部12gによる試験について説明してきた。一方、低抵抗値を測定する場合等、高精度での電気特性の試験・測定が必要な場合には、二端子法で生じる接触抵抗及びリード線の残留抵抗で生じる誤差を除くことができる四端子法を利用することができる。実施例2では四端子法に対応した試験装置について説明する。
【0089】
図9は、実施例2に係る、四端子法が適用された試験装置の側面図である。
試験装置50は、載置部11と、押圧部52と、押圧部52と電気的に接続された、図示しないテスタとで構成されている。以下、押圧部52の構成について説明する。
【0090】
押圧部52は、これまでの例と同様に、載置部11に対向配置されている。当該押圧部52は、任意の押圧手段(図示を省略)と、押圧手段によって図9中の上下方向に駆動されるロッド12bと、ロッド12bの他方の端部に取り付けられた絶縁板12cとを有する。なお、押圧手段は、例えば、上記で説明した装置・機構を適用することができる。
【0091】
また、絶縁板12cの載置部11側に取り付けられた、テスタへの電極取り出し口である金属板12fと、金属板12fの載置部11側に、被試験デバイス13の電極端子13eに対向するように、炭素を主材とした炭素材からなるコンタクト部12gが取り付けられている。金属板12fには大電流を流す配線12e(フォースライン)が接続された圧着端子12dがねじ12hにより取り付けられており、金属板12fは当該配線12eを介してテスタに接続されている。
【0092】
また、実施例2では、金属板12fの載置部11側の面に、絶縁板52aを介してL字形状の金属板のコンタクト部52bが当該絶縁板52aに絶縁性のねじ52cで固定されている。なお、コンタクト部52bはL字形状の金属板に限らず、ポゴピンまたはカンチレバー等の汎用のコンタクト材を使用してもよい。また、耐摩耗性を確保する目的でタングステン系の材料、または、弾性を確保する目的でリン青銅、ベリリウム銅系の材料を使用することが望ましい。コンタクト部52bの表面は酸化防止のために、金、銀またはニッケル等でめっき処理を施すことが望ましい。また、コンタクト部52bには、電圧測定等の信号線である配線52d(センスライン)が接続されており、コンタクト部52bは当該配線52dを介してテスタに接続されている。
【0093】
次に、上記の構成を有する試験装置50で行われる被試験デバイス13に対する試験方法について説明する。
まず、被試験デバイス13を載置部11の載置台11a上にセットして、位置決めガイド11bにより被試験デバイス13をその電極端子13eがコンタクト部12g,52bと対向する所定領域に位置するよう位置合わせして固定する。
【0094】
任意の押圧手段によってロッド12bを下降させて、所定の押し付け荷重でコンタクト部12g,52bを被試験デバイス13の電極端子13eに接触させる。
当該押し付け荷重を維持した状態で、テスタから所定の電流・電圧を所定の時間印加して、コンタクト部12gから電極端子13eに通電させる。また、この時のコンタクト部52bは長手方向が撓み、板はね効果により電極端子13eに所望の大きさの圧力が加わり、所望の電極端子13eとの接触抵抗が得られる。
【0095】
そして、テスタは、通電に応じた被試験デバイス13の応答がコンタクト部52bを介して入力されることにより、被試験デバイス13の電気特性、例えば抵抗値を測定する。また、当該電気特性に基づいて、被試験デバイス13の良品又は不良品を判別することもできる。
【0096】
所定の測定の終了後、押圧手段によりロッド12bを上昇させて、コンタクト部12gが被試験デバイス13の電極端子13eから離れる(開放される)。
そして、被試験デバイス13の別の電極端子について試験を行う場合には、コンタクト部12gと同様のコンタクト部が別の電極端子に対しても設けられていて、当該コンタクト部がコンタクト部12gと同様に別の電極端子に接触して試験が行われる。
【0097】
このようにして、被試験デバイス13の電極端子について上記の試験方法が行われる。
このようなコンタクト部12gが適用された試験装置50では、通電が安定し、高精度での電気特性の試験・測定を行え、信頼性が向上すると共に、コンタクト部12gの使用寿命が延びて、コンタクト部12gを頻繁に交換する必要が無くなり、コンタクト部12gを交換する煩雑さが減少する。また、コンタクト部12gを電極端子13eに対して接触・非接触させて試験を行うことができるため、被試験デバイス13の電極端子13eそれぞれにねじ締め作業を行う必要が無くなり、被試験デバイス13の製造コスト(試験コスト)を低減することもできる。
【0098】
[実施例3]
実施例3では、これまでに説明した炭素材からなるコンタクト部12gによる接触方式を適用した開閉装置(スイッチ)について説明する。
【0099】
図10は、実施例3に係る開閉装置の要部側面図である。
開閉装置60は、押圧部12と、押圧部12と対向配置する下部押圧部61とで構成されている。以下、各構成について説明する。
【0100】
押圧部12は、任意の押圧手段(図示を省略)と、押圧手段によって図10中の上下方向に駆動されるロッド12bと、ロッド12bの他方の端部に取り付けられた絶縁板12cとを有する。なお、押圧手段は、例えば、上記で説明した装置・機構を適用することができる。
【0101】
さらに、絶縁板12cの下部押圧部61側に取り付けられ、電極取り出し口である金属板12fと、金属板12fの下部押圧部61側に、炭素を主材とした炭素材からなるコンタクト部12gが取り付けられている。また、金属板12fと炭素材からなるコンタクト部12gでスイッチ(開閉装置60)の端子1を構成している。なお、金属板12fには、端子1に対する配線12eが接続された圧着端子12dが取り付けられており、当該配線12eを介して、図示しない所定の電気回路または電源に接続されている。
【0102】
下部押圧部61は、押圧部12と対向配置して固定されている。当該下部押圧部61は、電極取り出し口である金属板61aと、金属板61aの押圧部12側に、炭素を主材とした炭素材からなるコンタクト部61bが取り付けられている。金属板61aと炭素材からなるコンタクト部61bでスイッチ(開閉装置60)の端子2を構成している。なお、金属板61aには、端子2に対する配線61dが接続された圧着端子61cが取り付けられており、当該配線61dを介して所定の電気回路に接続されている。
【0103】
なお、押圧部12及び下部押圧部61には炭素材からなるコンタクト部12g,61bをそれぞれ配置しているが、いずれか一方だけでも構わない。
また、端子1,2からの配線の取り出しを圧着端子12d,61cで行っているが、金属板12f,61aに直接配線12e,61dを接続してもよいし、コネクタを用いても構わない。
【0104】
次に、上記の構成を有する開閉装置60で行われる開閉方法について説明する。
必要に応じて、図示しない押圧手段によってロッド12bを下降させて、所定の押し付け荷重でコンタクト部12gを下部押圧部61のコンタクト部61bに接触させる。これにより、スイッチがオンになる。
【0105】
しかる後に、押圧手段によりロッド12bを上昇させて、コンタクト部12gと下部押圧部61のコンタクト部61bとの接触を断つ(開放する)。これにより、スイッチがオフになる。
【0106】
このように、押圧手段によりロッド12bを上下動させてコンタクト部12gとコンタクト部61bの接触を制御することにより、スイッチ動作が実現される。
このようなコンタクト部12g,61bが適用された開閉装置60では、大電流を通電させても通電が安定し、信頼性が向上すると共に、コンタクト部12g,61bの使用寿命が延びて、コンタクト部12g,61bを頻繁に交換する必要が無くなり、コンタクト部12g,61bを交換する煩雑さが減少する。
【0107】
また、上述の各実施の形態では、押圧手段によりコンタクト部12gを上下動させてコンタクト部12gと電極端子13eとをコンタクトさせる試験装置の実施例について説明してきたが、コンタクト部12gを固定し、載置部12を上下動させて両者をコンタクトさせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10,20,30,40,50 試験装置
11 載置部
11a 載置台
11b 位置決めガイド
12,22,32,42,52 押圧部
12a エアシリンダ
12b ロッド
12c,52a 絶縁板
12d,61c 圧着端子
12e,52d,61d 配線
12f,61a 金属板
12g,52b,61b コンタクト部
12h,52c ねじ
13 被試験デバイス
13a 樹脂ケース
13b 固定部材
13c ナット
13d ねじ孔
13e 電極端子
13f 開口孔
22a フレーム
22b プランジャ
22c コイル
22d ストッパ部材
32a 電動シリンダ
32a1 モータ
32a2 ボールネジ
42a ハンドレバー
42b 部材
42c,42d,42f 連結部材
42e,42g ばね
42h ストッパ
60 開閉装置
61 下部押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスの電気特性を試験する試験装置において、
前記被試験デバイスが載置される載置台と、
前記載置台に対向配置され、前記載置台上の前記被試験デバイスの、電極が配置された表面を圧接し、前記電極と通電して前記電気特性を試験する炭素材で構成された接触子と、
を有することを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記接触子の固有の抵抗値と、前記接触子と前記電極との接触抵抗値との和は5mΩ以下であることを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項3】
前記接触子は、前記電極との接触面が平坦であるブロック形状であることを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項4】
前記接触子と共に、前記載置台に対向配置され、前記電極を圧接し、前記被試験デバイスからの応答信号を前記電極を介して計測する金属材で構成された金属接触子をさらに有することを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項5】
前記接触子の前記電極との圧接面の反対面を支持するロッドが接続され、前記ロッドを前記ロッドの軸方向に移動させて、前記接触子を前記電極に圧接させるエアシリンダを有することを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項6】
前記接触子の前記電極との圧接面の反対面を支持するロッドが接続され、前記ロッドを前記ロッドの軸方向に移動させて、前記接触子を前記電極に圧接させる電動シリンダを有することを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項7】
前記接触子の前記電極との圧接面の反対面を支持するプランジャが接続され、前記プランジャを前記プランジャの軸方向に移動させて、前記接触子を前記電極に圧接させるソレノイドを有することを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項8】
前記接触子の前記電極との圧接面の反対面を支持する弾性体を有し、前記弾性体を前記反対面の垂直方向に所定のストローク量、撓ませることにより前記接触子を前記電極に圧接させることを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項9】
被試験デバイスの電気特性を試験する試験方法において、
前記被試験デバイスの、電極が配置された表面に炭素材で構成された接触子を圧接して、
前記電極と通電して前記電気特性を試験する、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項10】
電気回路を開閉する開閉装置であって、
前記電気回路にそれぞれ接続された、対向配置する第1,第2金属板と、
前記第1,第2金属板の対向する表面の少なくとも一方に配置され、前記第1金属板が前記第2金属板に押圧されると前記第1,第2金属板間を通電させる、炭素材で構成された接触子と、
を有することを特徴とする開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−137756(P2011−137756A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298838(P2009−298838)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(502128800)株式会社オクテック (83)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】