説明

認識機能障害(cognitiveimpairment)を治療するための、組み合わされたセロトニン再取り込み、5−HT3および5−HT1A活性を有する化合物としての1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン

【課題】
うつ病患者における認識機能障害の治療に格別に有用な化合物を提供すること。
【解決手段】
1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンは、SERT、5−HTおよび5−HT1Aに及ぼす強力な活性を呈し、そのようなものとして、認識機能障害の治療、特にはうつ病患者における認識機能障害の治療に有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロトニン受容体1A(5−HT1A)およびセロトニン受容体3(5−HT)に及ぼす活性と組み合わされたセロトニン再取り込み阻害活性を呈する化合物に関し、これらの化合物はCNS関連疾患の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、それ以前に使用されていた化合物、即ち、古典的な三環式化合物に比べ、より効果的であり、耐容性に優れ、好ましい安全性プロフィールを有しているため、長年にわたり、特定のCNS関連疾患の治療、特にはうつ病、不安および社会恐怖症の治療に用いられる第一選択薬であった。
【0003】
それにもかかわらず、SSRIを用いる治療上の処置は、有意な割合の無応答者、即ち、SSRI治療に応答しない患者または限られた程度にしか応答しない患者により阻まれている。その上、典型的には、SSRI治療は、治療の数週間後まで効果を示し始めない。
【0004】
SSRI治療のこれらの欠点のうちのいくつかを回避するため、精神科医は、時々、増強(augmentation)戦略を利用する。抗うつ剤の増強は、例えば気分安定剤、例えばリチウムカルボナートもしくはトリヨードチロニンなどと組み合わせることにより、または電気ショック療法と併用することにより達成することができる。
【0005】
セロトニントランスポーター(SERT)の阻害と1種またはそれ以上のセロトニン受容体に及ぼす活性との組み合わせが有益であり得ることは公知である。これまでに、セロトニン再取り込み阻害剤と5−HT2Cアンタゴニスト作用または逆アゴニスト作用を有する化合物(5−HT2C受容体において負の効能を有する化合物)との組み合わせは、微小透析実験で測定したときに、抹消(terminal)領域における5−HT(セロトニン)レベルのかなりの増大をもたらすことが見出されている(特許文献1)。これは、臨床における抗うつ効果の比較的短期間での発現およびセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)の治療効果の増強または相乗作用を示唆していたのであろう。
【0006】
同様に、5−HT1Aの部分的アゴニストであるピンドロールとセロトニン再取り込み阻害剤との組み合わせが効果の速やかな発現をもたらすことも報告されている(非特許文献1)。
【0007】
CNS関連疾患、例えばうつ病、不安および統合失調症などは、しばしば、他の障害または機能不全、例えば認知障害または認識機能障害などと併存する(非特許文献2、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第01/41701号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Psych.Res.、125、81−86、2004
【非特許文献2】Scand.J.Psych.、43、239−251、2002
【非特許文献3】Am.J.Psych.、158、1722−1725、2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
幾つかの神経伝達物質がこの認識力を調節する神経学的事象にかかわっているものと推測されている。特に、コリン作動系は認識に関して重要な役割を果たしており、従って、コリン作動系に影響を及ぼす化合物は認識機能障害の治療に潜在的に有用である。5−HT1A受容体および/または5−HT受容体に影響を及ぼす化合物はコリン作動系に影響を及ぼすことが知られており、それらの化合物は、そのようなものとして、認識機能障害の治療に有用であり得る。
【0011】
このような理由から、5−HT1Aおよび/または5−HT受容体活性を機能させる化合物は、認識機能障害の治療に有用であると期待することができよう。その上にSERT活性も機能させる化合物は、そのような化合物がうつ病の治療において速やかな治療効果の発現をももたらすものと考えられるため、うつ病患者における認識機能障害の治療に格別に有用であろう。
【0012】
国際公開第03/029232号パンフレットは、例えばSERT活性を有する化合物として化合物1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジン(実施例1e)を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明者らは、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンがSERT阻害、5−HTアンタゴニズムおよび5−HT1A部分的アゴニズムの組み合わせを発揮することを見出した。従って、1つの実施形態においては、本発明は、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンである化合物Iおよびその化合物の薬学的に許容可能な塩を提供し、但し、前述の化合物は非結晶質形態における遊離塩基ではないものとする。
【0014】
1つの実施形態においては、本発明は、治療における化合物Iの使用を提供する。
【0015】
1つの実施形態においては、本発明は、化合物Iを含む医薬組成物を提供する。
【0016】
1つの実施形態においては、本発明は治療方法を提供し、その治療方法は、治療を必要としている患者に有効量の化合物Iを投与することを含む。
【0017】
1つの実施形態においては、本発明は、薬剤の製造における化合物Iの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】結晶質塩基のXRPD。
【図2】アルファ型の臭化水素酸塩のXRPD。
【図3】ベータ型の臭化水素酸塩のXRPD。
【図4】ガンマ型の臭化水素酸塩のXRPD。
【図5】半水和物の形態の臭化水素酸塩のXRPD。
【図6】エチルアセタート溶媒和物およびアルファ型の臭化水素酸塩の混合物のXRPD。
【図7】塩酸塩のXRPD。
【図8】一水和物の形態の塩酸塩のXRPD。
【図9】メシル酸塩のXRPD。
【図10】フマル酸塩のXRPD。
【図11】マレイン酸塩のXRPD。
【図12】メソ−酒石酸塩のXRPD。
【図13】L−(+)−酒石酸塩のXRPD。
【図14】D−(−)−酒石酸塩のXRPD。
【図15】硫酸塩のXRPD。
【図16】リン酸塩のXRPD。
【図17】硝酸塩のXRPD。
【図18a】皮内ホルマリン試験における本発明の化合物の効果。X−軸は投与された化合物の量を示している;Y−軸は足をなめるのに費やした時間的な量(秒)を示している。0−5分の時間的期間内における応答。
【図18b】皮内ホルマリン試験における本発明の化合物の効果。X−軸は投与された化合物の量を示している;Y−軸は足をなめるのに費やした時間的な量(秒)を示している。20−30分の時間的期間内における応答。
【図19a】1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の投与時における自由行動ラットの前前頭皮質における細胞外アセチルコリンレベル。
【図19b】1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の投与時における自由行動ラットの腹側海馬における細胞外アセチルコリンレベル。
【図20】獲得(acquisition)の60分前に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットにおける文脈的恐怖条件付けに及ぼす1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の効果。フットショックUSに先立つ58秒間の馴化期間の間、すくみ行動(freezing behaviour)のスコアが付けられた(ショック前獲得)(白色のバー)。すくみ行動はトレーニングの24時間後に測定された(保持(retention)テスト)(黒色のバー)。
【図21】保持テストの1時間前に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットにおける文脈的恐怖条件付けに及ぼす1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩の効果。フットショックUSに先立って、58秒間の間、すくみ行動のスコアが付けられた(獲得)(白色のバー)。すくみ行動はトレーニングの24時間後に測定された(保持テスト)(黒色のバー)。
【図22】獲得の直後に与えられたときの、Sprague−Dawleyラットにおける文脈的恐怖条件付けに及ぼすAA21004の効果。フットショックUSに先立って、58秒間の間、すくみ行動のスコアが付けられた(ショック前獲得)(白色のバー)。すくみ行動はトレーニングの24時間後に測定された(記憶保持テスト)(黒色のバー)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、その構造が
【0020】
【化1】

【0021】
である化合物I、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンおよびその化合物Iの薬学的に許容可能な塩に関し、但し、化合物Iは非結晶質形態における遊離塩基ではないものとする。
【0022】
1つの実施形態においては、上述の薬学的に許容可能な塩は、無毒な酸の酸付加塩である。そのような塩は、有機酸から生成される塩、例えばマレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、シュウ酸、ビス−メチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、ケイ皮酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、テオフィリン酢酸、ならびに8−ハロテオフィリン、例えば8−ブロモテオフィリンなどから生成される塩を含む。また、そのような塩は、無機塩から生成されてもよく、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などから生成されてもよい。特別なものとして、メタンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、メソ−酒石酸、(+)−酒石酸、(−)−酒石酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、亜リン酸および硝酸から生成される塩を挙げることができる。格別なものとして臭化水素酸塩を挙げることができる。
【0023】
経口用剤形、特に錠剤は、投与しやすく、その結果、良好なコンプライアンスが得られるため、患者および医療実践者により好まれることが多い。錠剤の場合、活性成分は結晶質であることが好適である。1つの実施形態においては、本発明の化合物は結晶質である。
【0024】
1つの実施形態においては、本発明の結晶は溶媒和物、即ち、溶媒分子がその結晶構造の一部を形成する結晶である。この溶媒和物は水から形成されてよく、その場合には、それらの溶媒和物は水和物と呼ばれることが多い。代替的に、これらの溶媒和物は、他の溶媒、例えばエタノール、アセトンまたはエチルアセタートなどから形成されてもよい。その溶媒和の正確な量はそれらの条件に依存することが多い。例えば、水和物は、典型的には、温度が高められた場合または相対湿度が下げられた場合には、水分を失うであろう。
【0025】
1つの実施形態においては、本発明の化合物は非溶媒和型の結晶である。
【0026】
幾つかの化合物は吸湿性であり、即ち、それらの化合物は湿気に晒されたときに水分を吸収する。吸湿性は、一般的に、薬剤配合物中、特には乾性配合物中、例えば錠剤中などに存在させるべき化合物にとっては望ましくない特性であると見なされている。1つの実施形態においては、本発明は、吸湿性の低い結晶を提供する。結晶質の活性成分を用いる経口用剤形の場合には、それらの結晶が明確に定義されたものであることも有益である。この文脈において、「明確に定義された」という用語は、具体的には、その化学量論が明確に定義されたものであることを意味し、即ち、その塩を形成しているイオン間の比が小さな整数間の比、例えば1:1、1:2、2:1、1:1:1などであることを意味する。1つの実施形態においては、本発明の化合物は明確に定義された結晶である。
【0027】
本発明の結晶質化合物は1つより多くの形態で存在していてよく、即ち、それらの化合物は多形性形態で存在していてよい。多形性形態は、化合物が1つより多くの形態で結晶化し得る場合に存在する。本発明は、純粋な化合物またはそれらの化合物の混合物のどちらの場合にも、すべてのそのような多形性形態を包含すべく意図されている。
【0028】
1つの実施形態においては、本発明の化合物は精製された形態である。「精製された形態」という用語は、化合物が、場合によって、他の化合物または他の形態のそれと同一の化合物を本質的に含んでいないことを表すべく意図されている。
【0029】
1つの実施形態においては、本発明は、図1〜17、特には図2、3、4および5に示されているようなXRDPを有する本発明の化合物の結晶質の塩を提供する。
【0030】
以下の表は、本発明の化合物に対する主要なXRDP反射(XRDP reflections)を示している。
【0031】
選択されたX線ピーク位置(°2θ)、すべての値+−0.1°
【0032】
【表1】

【0033】
例えば図2〜5により証拠だてられているように、本発明の化合物、この場合には臭化水素酸塩は、幾つかの形態で存在することができ、即ち、多形性であり得る。それらの多形性形態は、実施例4dで示されているように、異なる特性を有している。ベータ型の臭化水素酸塩は、より高いDSC融点およびより低い溶解度により示されているように、高い安定性を有している。その上、前述のベータ型は低い吸湿性と溶解度との魅力的な複合特性を有しており、その複合特性により、この化合物は錠剤を製造するのに特に適したものと成っている。従って、1つの実施形態においては、本発明は、約6.89、9.73、13.78および14.62(°2θ)におけるXRDP反射、特には図3に示されているようなXRPDを有する、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの臭化水素酸塩を提供する。
【0034】
また、活性成分の溶解度も、バイオアベイラビリティーに直接的な影響を及ぼし得るため、剤形を選択する上で重要である。経口用剤形の場合には、活性成分のより高い溶解度は、バイオアベイラビリティーを高めるため、一般的には、有益であると考えられている。
【0035】
皮質および海馬のコリン作動性神経伝達は認識力にとって非常に重要であり、また、数多くの前臨床観察がこの系にとってのセロトニン受容体1A(5−HT1A)の重要性を指摘している。T.Koyamaは、Neurosci.Lett.、265、33〜36、1999において、5−HT1AアゴニストであるBAYX3702がラットの皮質および海馬からのアセチルコリン流出を増大させることを報じている。興味深いことに、5−HT1AアンタゴニストであるWAY−100635はBAYX3702の効果を排除することができ、これは、BAYX3702の効果が5−HT1A媒介性であることを示している。
【0036】
数多くの研究が、認識機能障害に及ぼす5−HT1Aのモジュレーターの効果について報じている。A.Menesesは、Neurobiol.Learn.Memory、71、207〜218、1999において、部分的5−HT1Aアゴニストである(±)−8−ヒドロキシ−2−(ジ−n−プロピルアミノ)−テトラリン、HCl(8−OH−DPAT)が、正常なラットにおける学習の統合(consolidation)を促進し、また、認識機能障害を負ったラットにおける認識機能を正常化することを報じている。
【0037】
これらの前臨床観察結果は臨床においても反映されているようである。T.Sumiyoshiは、Am.J.Psych.、158、1722〜1725、2001においてある研究について報じており、その研究では、患者に、プラシーボまたは5−HT1Aアゴニストであるタンドスピロンと組み合わせて、定型抗精神病薬、例えばハロペリドール、スルピリドおよびピモジドなど(すべてのものが5−HT1A活性を欠く)が投与された。抗精神病薬に加えてタンドスピロンが投与された患者は認識能力の改善を示したが、一方、プラシーボが投与された患者は改善を示さなかった。同様に、同じく5−HT1Aアゴニストである非定型抗精神病薬、例えばクロザピンなども統合失調症患者における認識力を増強するが、一方、5−HT1A活性を有さない定型抗精神病薬、例えばハロペリドールなどは認識力を増強しない(Y.Chung、Brain Res.、1023、54〜63、2004)。
【0038】
上で述べられているように、コリン作動系は認識力を調節する神経学的事象にかかわっているものと考えられており、また、コリン作動系は、セロトニン受容体3(5−HT)による抑制制御の影響を受けやすいものと考えられる[Giovanniniら、J.Pharmacol.Exp.Ther.、1998、285:1219〜1225;CostallおよびNaylor、Current Drug Targets−CNS&Neurobiol.Disord.2004、3:27〜37]。
【0039】
マウスにおける馴化試験において、ラットにおけるT字型迷路強制交替試験(T-maze reinforced alternation task)において、ならびにマーモセットにおける物体弁別(object discrimination)および逆転学習課題において、オンダンセトロンは、ムスカリン性アンタゴニストであるスコポラミンにより引き起こされる機能障害または基底核から現れるコリン作動性経路の病変を低減した(Barnesら、Pharmacol.Biochem.Behav.1990、35:955〜962;Careyら、Pharmacol.Biochem.Behav.1992、42:75〜83)。Boastら(Neurobiol.Learn.Mem.1999、71:259〜271)は、NMDA受容体の非競合的アンタゴニストであるMK−801を使用して、遅延標本非照合放射状迷路課題で訓練されたラットの認識能力を混乱させた。オンダンセトロンは認識機能障害をブロックすることが示された。その上、マウスでの受動的回避課題におけるエタノールの記憶喪失作用についての研究において、エタノールのこの記憶喪失作用はオンダンセトロンにより正常状態へ向けて部分的に回復された(Napiorkowska−Pawlakら、Fundam.Clin.pharmacol.2000、14:125〜131)。従って、前臨床モデルにおけるコリン作動系の機能障害後の5−HTアンタゴニズムによるコリン作動性伝達の促進(Diez−Arizaら、Psychopharmacology、2003、169:35〜41;Gil−Beaら、Neuropharmcol.2004、47:225〜232)は、認知障害の治療においてこの処置を用いることに対する根拠を示唆している。
【0040】
健常な男性の被検者におけるランダム化二重盲検クロスオーバー試験において行われた言葉および空間の記憶ならびに注意の持続についての評価は、5−HTアンタゴニストであるアロセトロンが言葉および空間の記憶におけるスコポラミン誘発性の障害を軽減することを示した(Preston、Recent Advances in the treatment of Neurodegenerative disorders and cognitive function、1994、(eds.)RacagniおよびLanger、Basel Karger、p.89〜93)。
【0041】
結論として、5−HTアンタゴニスト活性と組み合わせて5−HT1A部分的アゴニスト活性を発揮する化合物は、認識機能障害の治療に特別に有用であると考えられる。さらに、セロトニン再取り込み阻害を発揮する化合物は、5−HT1A部分的アゴニズムと組み合わされたセロトニン再取り込み阻害がより迅速なうつ病の治療効果の発現をもたらすため、うつ病に伴う認識機能障害の治療に格別に有用であろう。
【0042】
実施例1で示されているように、本発明の化合物はヒトセロトニントランスポーターの強力な阻害剤であり、即ち、それらの化合物はセロトニン再取り込みを阻害する。その上、それらの化合物は、マウス、ラット、モルモットおよびイヌ5−HT受容体における強力なアンタゴニストである。卵母細胞にクローニングされたヒト5−HT受容体において、それらの化合物は低濃度ではアンタゴニストであり(IC50=約30nM)、その一方で、より高い濃度では、それらの化合物はアゴニスト特性を示す(ED50=2.1μM)ことが判明した。高濃度における本発明の化合物のその後の適用は何らアゴニスト応答を示さなかったが、これは、インビトロにおける急速な脱感作(desenitisation)または直接的なアンタゴニズムによるものであったとすることができよう。従って、低濃度において、本発明の化合物は、他の種からの5−HT受容体で観測されたのと同様に、ヒト5−HT受容体においても著しいアンタゴニズムを示す。
【0043】
本発明の化合物は、ラットおよびマウスの両者の脳ホモジネートにおける5−HT1A受容体に低い親和性で結合する。しかし、本発明の化合物は、40nMのKでヒト5−HT1A受容体に結合する。その上、機能データ(functional data)は、本発明の化合物がヒト5−HT1A受容体における部分的アゴニストであり、85%の有効性をもたらすことを示している。
【0044】
SERT、5−HT受容体および5−HT1A受容体における本発明の活性は、ヒトにおける本化合物のインビボプロフィールに寄与するものと予想される。
【0045】
実施例26に示されているように、本発明の化合物は、ラットにおいて、前前頭皮質および腹側海馬における細胞外アセチルコリンレベルの増大をもたらす。これらの前臨床知見は、認識機能障害の治療におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用と比較して、認識機能障害の治療、例えばアルツハイマー病の治療における臨床的な効果に変わるものと期待される。この見解に対する更なる支持を実施例27に見出すことができ、そこでのデータは、本発明の化合物がラットにおける文脈的(contextual)記憶を増強することを示している。結局のところ、ラットにおけるアセチルコリンレベルに及ぼす効果および記憶に及ぼす効果と組み合わせた本発明の化合物の薬理学的プロフィールは、本発明の化合物が認識機能障害の治療に有用であることを強く示唆している。
【0046】
1つの実施形態においては、本発明は認知障害または認識機能障害を治療するための方法に関し、その方法は、治療を必要としている患者に治療的有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0047】
認知障害または認識機能障害は、認知機能または認知領域の低下を含み、例えば作業記憶、注意および覚醒、言語的学習および記憶、視覚的な学習および記憶、論理的思考および問題の解決、例えば実行機能、処理速度および/または社会的認知の低下を含む。特に、認知障害または認識機能障害は、注意の欠如、解体した思考、思考の減退(slow thinking)、理解困難(difficulty in understanding)、集中力不足(poor concentration)、問題解決能力の低下(impairment of problem solving)、記憶力貧困(poor memory)、思考の表現困難(difficulties in expressing thoughts)および/または思考、感情および行動の統合困難(difficulties in integrating thoughts, feelings and behaviour)、または見当違いな思考の消去困難(difficulties in extinction of irrelevant thoughts)を表し得る。「認知障害」および「認識機能障害」という用語は同じものを指示すべく意図されており、互換可能に使用される。
【0048】
1つの実施形態においては、その患者は、別のCNS障害、例えば情動障害、例えばうつ病;全般性(generalised)うつ病;大うつ病性障害;一般的(general)不安障害およびパニック障害を含めた不安障害;強迫性障害;統合失調症;パーキンソン病;認知症;エイズによる認知症;ADHD;加齢による記憶障害;またはアルツハイマー病などの診断も同時に下されている。
【0049】
認識機能障害は、例えば大うつ病性障害などのうつ病の典型的な特徴の一つである。認知障害は、うつ状態の改善が認識機能障害の改善をももたらすという意味で、ある程度、うつ病に対して続発性であり得る。しかし、認知障害が実際にはうつ病から独立していることを示す明らかな証拠も存在する。例えば、何件かの研究が、うつ病からの回復時に存続する認識機能障害を示している[J.Nervous Mental Disease、185、748〜754、197]。その上、うつ病および認識機能障害に及ぼす抗うつ薬の示差的な効果が、たとえしばしば併存する状態であるとしても、うつ病と認識機能障害とは独立しているという考えに対する更なる支持を与えている。セロトニンおよびノルアドレナリン医薬は抑うつ症状の同程度の改善をもたらすが、幾つかの研究は、ノルアドレナリン作動系の調節がセロトニン調節程には認識機能を改善しなかったことを示している[Brain Res.Bull.、58、345〜350、2002;Hum Psychpharmacol.、8、41〜47、1993]。
【0050】
本発明の化合物を投与することによるうつ病患者における認識機能障害の治療は格別に有利であると考えられる。本発明の化合物の多面的な薬効薬理、特にSERT、5−HTおよび5−HT1A活性は、抑うつ状態の迅速な治療効果の発現と組み合わされた認識機能の改善をもたらすことが期待される。
【0051】
認識機能障害は、高齢者における特に重要な考慮すべき事項である。認識機能障害は加齢とともに普通に進行するが、更に、うつ病でも進行する。従って、1つの実施形態においては、認識機能障害の治療が為される患者は高齢者であり、特にうつ病を伴った高齢者である。
【0052】
認識機能は、上で述べられているように、統合失調症患者で損なわれることが多い。また、何件かの研究は、認識機能が統合失調症における職業上の機能(vocational functioning)と関連していると結論付けてもいる[Scizophrenia Res.、45、175〜184、2000]。1つの実施形態においては、認識機能障害の治療が為される患者は統合失調症患者である。
【0053】
5−HT受容体アンタゴニストは、更に、種々の疾患の治療用、例えば嘔吐、化学療法起因性嘔吐、渇望、物質乱用、疼痛、過敏性腸症候群(IBS)、統合失調症および摂食障害などの治療用としても示唆されている[Eur.J.Pharmacol.、560、1〜8、2007;Pharmacol.Therapeut.、111、855〜876、2006;Alimentary Pharmacol.Ther.、24、183〜205、2006]。
【0054】
ある臨床研究は、臨床応答が不充分なうつ病患者(治療抵抗性うつ病(TRD)または難治性うつ病)を治療するには、ミルタザピン(mirtazipine)とSSRIとを組み合わせた場合の方がSSRIを単独で使用する場合よりも優れていることを示している[Psychother.Psychosom.、75、139〜153、2006]。ミルタザピンは5−HTおよび5−HTアンタゴニストであり、これは、本発明の化合物がTRDの治療に有用であるという概念を支持するものである。
【0055】
顔面紅潮は閉経過渡期に関連する症状である。女性によっては、この顔面紅潮が、睡眠または一般的な活動を妨害し、治療が必要な程度にまで成り得る。数十年間にわたり、エストロゲンを用いるホルモン代償療法が既定の治療法であったが、最近では、乳癌および心事象などの副作用に関する懸念が表明されている。SSRIを用いる臨床試験は、エストロゲンの場合程ではないにしても、これらの化合物が顔面紅潮に有効であることを示している[J.Am.Med.Ass.、295、2057〜2071、2006]。しかし、セロトニン再取り込みを阻害する化合物、例えば本発明の化合物を用いる顔面紅潮の治療法は、エストロゲンを受け入れることができない女性または受け入れない女性に対する代替的治療法である。
【0056】
睡眠時無呼吸もしくは閉塞型睡眠時無呼吸−低呼吸症候群または閉塞型睡眠呼吸障害は、効果的な薬物療法が特定されるべき状態のまま留まっている障害である。しかし、動物における幾つかの研究は、5−HTアンタゴニスト、例えば本発明の化合物がこれらの疾患の治療に効果的であり得ることを示唆している[Sleep、21、131〜136、1998;Sleep、8、871、878、2001]。
【0057】
1つの実施形態においては、本発明は、情動障害;うつ病;大うつ病性障害;産後うつ病;双極性障害、アルツハイマー病、精神病、癌、加齢(age)もしくはパーキンソン病に伴ううつ病;不安;全般性不安障害;社会不安障害;強迫性障害;パニック障害;パニック発作;恐怖症;社会恐怖症;広場恐怖症;ストレス性尿失禁;嘔吐;IBS;摂食障害;慢性疼痛;部分的応答者(partial responders);治療抵抗性うつ病;アルツハイマー病;認識機能障害;ADHD;メランコリー;PTSD;顔面紅潮;睡眠時無呼吸;アルコール、ニコチンもしくは炭水化物渇望;物質乱用;およびアルコールもしくは薬物乱用から選択される疾患を治療する方法に関係し、その方法は、治療を必要としている患者に治療的有効量の本発明の化合物を投与することを含む。1つの実施形態においては、上で列挙されている疾患のうちのいずれかに関して治療される前述の患者は、最初にその疾患の診断が下されている。
【0058】
一般的には抗うつ薬での治療、特にはSSRIでの治療は、性的機能不全を伴い、しばしば治療の中止をもたらすことが周知である。SSRIで治療を受ける患者のうちの30〜70%もの多くの患者が性機能の障害を訴えており[J.Clin.Psych.、66、844〜848、2005]、それらの障害は、リビドーの減退、オルガスムの遅延、低減または欠落、性的興奮の減少および勃起機能不全を含む。臨床試験において、合計で114人の被検者が本発明の化合物を投与された;これら114人の被検者のうち、僅か1人の被検者のみが性的機能不全を訴えた。これらのデータは、本発明の化合物を用いる臨床的介入が驚くべき程僅かな数の性的機能障害しか伴わないことを示唆している。
【0059】
上で述べられているように、本発明の化合物は、特に、慢性疼痛の治療に非常に適している。慢性疼痛は、幻肢痛、神経障害性疼痛、糖尿病性ニューロパシー、ヘルペス後神経痛(PHN)、手根管症候群(CTS)、HIVニューロパシー、複合性局所疼痛症候群(CPRS)、三叉神経の神経痛/三叉神経痛/疼痛性チック、外科的介入(例えば術後鎮痛薬)、糖尿病性血管症、膵島炎を伴った毛細血管抵抗もしくは糖尿病症状、アンギナに関連した疼痛、月経に関連した疼痛、癌に関連した疼痛、歯痛、頭痛、片頭痛、緊張性疼痛、三叉神経痛、顎関節症候群、筋筋膜疼痛筋肉損傷(myofascial pain muscular injury)、線維筋痛症候群、骨関節疼痛(変形性関節症)、慢性関節リウマチ、やけどを伴う外傷に由来する慢性関節リウマチおよび浮腫、変形性関節症、骨粗鬆症、骨への転移もしくは不明の理由による捻挫もしくは骨折の骨痛、痛風、結合組織炎、筋筋膜疼痛、胸郭出口症候群、上背部痛もしくは下背部痛(ここで、この背部痛は系統的、局所的もしくは主要な脊椎疾患(神経根障害)に由来する)、骨盤痛、心臓性胸痛、非心臓性胸痛、脊髄損傷(SCI)関連疼痛、中枢性脳卒中後疼痛、癌ニューロパシー、エイズによる疼痛、鎌状赤血球による疼痛、または老人性疼痛(geriatric pain)などの適応症を含む。
【0060】
実施例16で提示されているデータは、本発明の化合物が疼痛の治療に有用であり、また、それらの化合物が鎮痛効果さえ有し得ることを示しており、更に、神経障害性疼痛に関する動物モデルにおける研究がこの見解を確証している。
【0061】
本明細書で使用する場合、「治療的有効量」の化合物という用語は、上述の化合物を投与することを含む治療的介入において、所与の疾患およびそれの合併症の臨床的徴候を治し、緩和し、または部分的に停止させるのに充分な量を意味する。これを果たすのに適切な量が「治療的有効量」として定義される。それぞれの目的での有効量は、その疾患または損傷の重症度、更にはその被検者の体重および全身状態に依存するであろう。適切な用量の決定は、数値のマトリックスを構築し、そのマトリックスの種々の異なるポイントで試験すること(これらはすべて、訓練を積んだ医師の通常の技術能力の範囲内である)により、ルーチン的な実験を用いて果たし得ることが理解されよう。
【0062】
本明細書で使用する場合、「治療」および「治療する」という用語は、ある状態、例えば疾患または障害などと闘うことを目的とした患者の管理およびケアを意味する。この用語は、患者が患っている、ある与えられた状態に対する治療の全スペクトル、例えばそれらの症状もしくは合併症を緩和するため、その疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、それらの症状および合併症を緩和もしくは軽減するため、および/またはその疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは排除するため、更には、その状態を予防するための、活性化合物の投与などを含めるべく意図されており、ここで、予防は、疾患、状態もしくは障害と闘うことを目的とする患者の管理およびケアを意味するものと理解すべきであり、それらの症状もしくは合併症の発現を防ぐための活性化合物の投与を含む。とはいえ、予防的治療(防止を目的とした治療)および治療的処置(治すことを目的とした処置)は本発明の2つの別個の態様である。治療されるべき患者は、好適には哺乳動物であり、特には人間である。
【0063】
典型的には、本発明の治療は本発明の化合物を毎日投与することを含むであろう。これは、毎日1回の投与、または1日に2回の投与もしくはもっと頻繁な回数の投与さえをも含み得る。
【0064】
1つの実施形態においては、本発明は、情動障害;うつ病;大うつ病性障害;産後うつ病;双極性障害、アルツハイマー病、精神病、癌、加齢もしくはパーキンソン病に伴ううつ病;不安;全般性不安障害;社会不安障害;強迫性障害;パニック障害;パニック発作;恐怖症;社会恐怖症;広場恐怖症;ストレス性尿失禁;嘔吐;IBS;摂食障害;慢性疼痛;部分的応答者;治療抵抗性うつ病;アルツハイマー病;認識機能障害;ADHD;メランコリー;PTSD;顔面紅潮;睡眠時無呼吸;アルコール、ニコチンもしくは炭水化物渇望;物質乱用;またはアルコールもしくは薬物乱用を治療するための薬剤を製造するための本発明の化合物の使用に関する。
【0065】
1つの実施形態においては、本発明は、情動障害、うつ病、大うつ病性障害、産後うつ病、双極性障害、アルツハイマー病、精神病、癌、加齢もしくはパーキンソン病に伴ううつ病、不安、全般性不安障害、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、パニック発作、恐怖症、社会恐怖症、広場恐怖症、ストレス性尿失禁、嘔吐、IBS、摂食障害、慢性疼痛、部分的応答者、治療抵抗性うつ病、アルツハイマー病、認識機能障害、ADHD、メランコリー、PTSD、顔面紅潮、睡眠時無呼吸、アルコール、ニコチンもしくは炭水化物渇望、物質乱用、またはアルコールもしくは薬物乱用から選択される疾患の治療において使用するための本発明の化合物に関する。
【0066】
ヒトの認識に及ぼす本発明の化合物の効果は数多くの仕方で評価することができる。その効果は、健常なボランティアに本化合物を投与し、その後、認められているテスト、例えばAuditory Verbal Learning Test(AVLT)、Wisconsin Card Sorting Test(WCST)などで認識能力を測定する試験、または持続的注意[Psycopharmacol.、163、106〜110、2002;Psychiatry Clin.Neurosci.、60、70〜76、2006]を測定する試験で評価することができる。その効果は、勿論、同じ種類の試験を用いて、認識機能障害を患っている患者で評価されてもよい。代替的に、認知モデルが用いられてもよく、そこでは、健常なボランティアにおいて認識機能障害が誘発され、本発明の化合物の回復効果が測定される。認識機能障害は、例えばスコポラミン、睡眠剥奪、アルコール、およびトリプトファン枯渇により誘発することができる。
【0067】
本発明の薬剤配合物は当分野における従来の方法で製造することができる。特に錠剤について言及すれば、錠剤は、活性成分を通常の佐剤および/または希釈剤と混合し、その後、その混合物を通常の打錠機で圧縮することにより製造することができる。佐剤または希釈剤の例は:無水カルシウム水素ホスファート、PVP、PVP−VAコポリマー、微結晶性セルロース、ナトリウムデンプングリコラート、トウモロコシデンプン、マンニトール、ジャガイモデンプン、タルカム、マグネシウムステアラート、ゼラチン、ラクトース、ゴムなどを含む。そのような目的で通常使用されるあらゆる他の佐剤または添加剤、例えば着色剤、矯味矯臭剤、保存剤なども、それらが活性成分と適合することを条件として、使用することができる。
【0068】
注射用液剤は、活性成分および可能な添加剤を注射用溶剤、好適には蒸留水の一部に溶解し、その溶液を所望の体積に調節し、得られた溶液を滅菌して適切なアンプルまたはバイアル中に充填することにより製造することができる。当分野において普通に使用されているあらゆる適切な添加剤、例えば等張化剤、保存剤、酸化防止剤などが加えられてよい。
【0069】
本発明の医薬組成物またはこの発明に従って製造される医薬組成物はあらゆる適切な経路で投与することができ、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤などの形態で経口的に投与されてもよいし、または注射用溶液の形態で非経口的に投与されてもよい。そのような組成物を製造するために、当分野において周知の種々の方法が用いられてよく、また、薬学的に許容可能なあらゆる担体、希釈剤、賦形剤または当分野において普通に使用されている他の添加剤を使用することができる。
【0070】
都合よくは、本発明の化合物は、その化合物を約1mgから50mgまでの量で含有する単位投薬形態(unit dosage form)で投与される。上限は、5−HT活性の濃度依存性によって設定されるものと考えられる。合計1日量は、通常、約1〜20mgの範囲の本発明の化合物、例えば約1mg〜10mgまで、約5〜10mg、約10〜20mgまたは約10〜15mgなどの範囲の本発明の化合物である。特別な1日量として、5mg、10mg、15mgまたは20mgを挙げることができる。
【0071】
本発明の化合物を含有する錠剤は、都合よくは、湿式造粒法により製造することができる。この方法を用いる場合、乾燥固体(活性成分、増量剤、結合剤など)がブレンドされ、水または他の湿潤剤(例えばアルコール)で湿らされ、それらの湿気を帯びた固体で凝集塊または顆粒が構築される。望ましい均一な粒径が達成されるまで湿式集塊形成が続けられ、望ましい粒径になった後、その顆粒化された生成物が乾燥される。本発明の化合物は、典型的には、高剪断ミキサー内において水と共にラクトース一水和物、トウモロコシデンプンおよびコポビドンと混合される。顆粒の形成後、これらの顆粒は、適切なシーブサイズを有する篩でふるいにかけられ、乾燥されてよい。次いで、結果として得られたこれらの乾燥した顆粒が微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびマグネシウムステアラートと混合され、その後、錠剤が圧縮される。代替的に、本発明の化合物の湿式造粒は、マンニトール、トウモロコシデンプンおよびコポビドンを用い、錠剤を圧縮する前に、それらの顆粒を微結晶性セルロース、ナトリウムデンプングリコラートおよびマグネシウムステアラートと混合することにより達成されてもよい。代替的に、本発明の化合物の湿式造粒は、無水カルシウム水素ホスファート、トウモロコシデンプンおよびコポビドンを用い、錠剤を圧縮する前に、それらの顆粒を微結晶性セルロース、ナトリウムデンプングリコラート(タイプA)、タルクおよびマグネシウムステアラートと混合することにより達成されてもよい。コポビドンはPVP−VAコポリマーである。
【0072】
1つの実施形態においては、本発明の化合物は例えばベータ型の臭化水素酸塩であり、適切な錠剤は以下のとおりのものから成っていてよい(示されている百分率はw/w%である):
HBr塩:2〜20%
ラクトース一水和物:30〜50%
デンプン:15〜30%
コポビドン:3〜5%
微結晶性セルロース:15〜25%
クロスカルメロースナトリウム:2〜5%
Mgステアラート:0.5〜5%。
【0073】
特に、錠剤は以下のとおりのものから成っていてよい:
HBr塩:3〜4%
ラクトース一水和物:44〜46%
デンプン:22〜23%
コポビドン:3〜4%
微結晶性セルロース:20〜22%
クロスカルメロースナトリウム:3〜3.5%
Mgステアラート:0.5〜1%
または
HBr塩:15〜16%
ラクトース一水和物:35〜38%
デンプン:18〜20%
コポビドン:3〜4%
微結晶性セルロース:20〜22%
クロスカルメロースナトリウム:3〜3.5%
Mgステアラート:0.5〜1%
または
HBr塩:1〜2%
ラクトース一水和物:44〜46%
デンプン:20〜24%
コポビドン:3〜4%
微結晶性セルロース:22〜24%
クロスカルメロースナトリウム:3〜4%
Mgステアラート:0.5〜1%。
【0074】
1つの実施形態においては、本発明の化合物は例えばベータ型の臭化水素酸塩であり、適切な錠剤は以下のとおりのものから成っていてよい:
HBr塩:2〜30%
マンニトール:25〜45%
トウモロコシデンプン:10〜20%
コポビドン:2〜4%
微結晶性セルロース:22〜27%
ナトリウムデンプングリコラート:4〜5%
Mgステアラート:0.25〜5%、例えば0.25〜2%など。
【0075】
特に、錠剤は以下のとおりのものから成っていてよい:
HBr塩:20〜22%
マンニトール:35〜36%
トウモロコシデンプン:10〜12%
コポビドン:2.5〜3%
微結晶性セルロース:24〜25%
ナトリウムデンプングリコラート:3〜4%
Mgステアラート:0.25〜1%
または
HBr塩:12〜13%
マンニトール:36〜37%
トウモロコシデンプン:18〜19%
コポビドン:3〜4%
微結晶性セルロース:24〜25%
ナトリウムデンプングリコラート:3〜4%
Mgステアラート:0.25〜1%
または
HBr塩:25〜27%
マンニトール:27〜29%
トウモロコシデンプン:13〜15%
コポビドン:3〜4%
微結晶性セルロース:24〜25%
ナトリウムデンプングリコラート:3〜5%
Mgステアラート:0.25〜1%
または
HBr塩:3〜4%
マンニトール:40〜42%
トウモロコシデンプン:20〜22%
コポビドン:3〜4%
微結晶性セルロース:26〜28%
ナトリウムデンプングリコラート:3〜5%
Mgステアラート:0.5%。
【0076】
1つの実施形態においては、本発明の化合物は臭化水素酸塩であり、適切な錠剤は以下のとおりのものから成っていてよい:
HBr塩:3〜8%
無水カルシウム水素ホスファート:35〜45%
トウモロコシデンプン:15〜25%
コポビドン:2〜6%
微結晶性セルロース:20〜30%
ナトリウムデンプングリコラート:1〜3%
タルク:2〜6%
マグネシウムステアラート:0.5〜2%。
【0077】
特に、錠剤は以下のとおりのものから成っていてよい:
HBr塩:約5%
無水カルシウム水素ホスファート:約39%
トウモロコシデンプン:約20%
コポビドン:約3%
微結晶性セルロース:約25%
ナトリウムデンプングリコラート:約3%
タルク:約4%
マグネシウムステアラート:約1%。
【0078】
種々の異なる量の活性化合物を有する錠剤、例えば2.5mg、5mg、10mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mgまたは80mgの遊離塩基に該当した錠剤などは、正しい量の本発明の化合物を適切なサイズの錠剤と組み合わせて選ぶことにより得ることができる。
【0079】
本発明の化合物を含有した錠剤を製造するために使用される結晶のサイズは重要である。もし結晶が小さすぎた場合には、それらの結晶が錠剤機のプランジャーにくっついてしまう可能性がある。その一方で、それらの結晶は大きすぎてもいけない。腸内における溶解速度は、結晶のサイズが大きくなると減少する。従って、もし結晶が大きすぎた場合には、本化合物のバイオアベイラビリティーが損なわれ得る。分位値(quantiles)、例えばD5%、D10%、D50%、D90%、D95%およびD98%などを用いて粒径分布を表現することができる。本明細書で使用する場合、「粒径分布」という用語は、Sympatec Helos装置において1バールの分散圧におけるレーザー回折により決定したときの、等価球形粒子の直径の累積体積サイズ分布を意味する。
【0080】
1つの実施形態においては、本発明の化合物の結晶、特にベータ型の臭化水素酸塩の結晶は、D98%:650〜680μm;D50%:230〜250μm;およびD5%:40〜60μmに該当する粒径分布を有している。1つの更なる実施形態においては、その粒径分布は、D98%:370〜390μm;D50%:100〜120μm;およびD5%:5〜15μmに該当する。尚も更なる1つの実施形態においては、その粒径分布は、D98%:100〜125μm;D50%:15〜25μm;およびD5%:1〜3μmに該当する。尚も更なる1つの実施形態においては、その粒径分布は、D98%:50〜70μm;D50%:3〜7μm;およびD5%:0.5〜2μmに該当する。
【0081】
本発明の遊離塩基は、国際公開第2003/029232号パンフレットに開示されているようにして製造することができる。本発明の塩は、その遊離塩基を適切な溶剤中に溶解し、関連する酸を加え、続いて沈殿させることにより製造することができる。沈殿は、第二溶剤の添加、および/または蒸発、および/または冷却のいずれかにより果たすことができる。代替的に、本発明の遊離塩基および最終的には本発明の化合物は、以下で説明されているようにパラジウム触媒反応において合成することもできる。
【0082】
芳香族炭素−ヘテロ原子結合の形成は、芳香族求核置換または銅媒介Ullman反応により達成することができる。より最近になって、パラジウムはそのような結合の形成、特にはC−NおよびC−S結合の形成での強力な触媒であることが示されている(例えば、米国特許第5,573,460号を参照のこと)。
【0083】
1つの実施形態においては、本発明は
【0084】
【化2】

【0085】
を製造するための方法を提供し、その方法は、化合物II
【0086】
【化3】

【0087】
[式中、R’は水素または一価の金属イオンを表す]を、溶剤、塩基、ならびにパラジウムのソースおよびホスフィン配位子からなるパラジウム触媒の存在下において、60℃から130℃までの間の温度で、式III
【0088】
【化4】

【0089】
[式中、XおよびXは独立してハロゲンを表す]の化合物、および式IV
【0090】
【化5】

【0091】
[式中、Rは水素または保護基を表す]の化合物と反応させることを含む。
【0092】
1つの実施形態においては、この方法はサブプロセスに分けられ、そのサブプロセスでは、化合物IIおよび化合物IIIが第一の反応において反応させられ、以下の式
【0093】
【化6】

【0094】
の化合物をもたらす。次いで、この化合物が、場合によっては適切な程度にまで精製された後、4−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンをもたらすべく化合物IVと反応させられる。
【0095】
ワンポット合成、即ち、すべての反応物が反応または方法の開始時に一緒に混合される合成は、それらが有する固有の簡易性のため、特に有用である。その一方で、起こり得る望ましくない副反応の数が劇的に増大し、これは、再度、望ましくない副次生成物の数および/または量が増大し、それに対応して、望ましい生成物の収率が低下し得ることを意味している。具体的には、本願方法の場合、ピペラジンは2個の窒素を有しており、潜在的にそれぞれの窒素がC−N結合の形成に関与するということが観測され得る。驚くべきことに、本願方法は、純粋な化合物の高収率を維持しながら、ワンポット合成、即ち、最初から化合物II、化合物IIIおよび化合物IVが混合される方法として実行できることが判明した。
【0096】
化合物IIはチオールまたは対応するチオラートである。労働衛生上の観点から判断すると、チオールに付随する臭気の問題を回避するため、チオラート、例えばLi、NaまたはKチオラートなどを使用することが有益であり得る。とはいえ、1つの実施形態においては、R’は水素である。
【0097】
化合物IIIは1,2−ジハロゲン活性化ベンゼンであり、それらのハロゲンはCl、BrおよびIのいずれであってもよい。特には、化合物IIは1−ブロモ−2−ヨード−ベンゼンまたは1,2−ジブロモ−ベンゼンである。
【0098】
本発明の方法において使用される溶剤は、反応温度範囲内、即ち、60〜130℃の沸点を有する非プロトン性有機溶剤またはそのような溶剤の混合物から選択されてよい。典型的には、その溶剤は、トルエン、キシレン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジオキサン、N−メチルピロリドンから選択され、またはそれらの任意の混合物から選択される。特には、溶剤としてトルエンの名を挙げることができる。
【0099】
前記方法の中核を成すものは、それ無しでは反応が起こらないパラジウム触媒の使用である。このパラジウム触媒は、パラジウム源とホスフィン配位子とからなっている。有用なパラジウム源は、種々の異なる酸化状態、例えば0およびIIなどのパラジウムを含む。本発明の方法において使用され得るパラジウム源の例は、Pddba、PddbaおよびPd(OAc)である。dbaはジベンジリデンアセトンの略号である。特に、PddbaおよびPddbaの名を挙げることができる。このパラジウム源は、典型的には、0.1〜10モル%、例えば1〜10モル%など、例えば1〜5モル%などの量で適用される。この出願全体を通じ、モル%は限定反応物(limiting reactant)に関して算出される。
【0100】
単座および二座のどちらも、数多くのホスフィン配位子が公知である。有用なホスフィン配位子は、ラセミ2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニル(rac−BINAP)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、ビス−(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEphos)、トリ−t−ブチル−ホスフィン(Fu’s塩)、ビフェニル−2−イル−ジ−t−ブチル−ホスフィン、ビフェニル−2−イル−ジシクロヘキシル−ホスフィン、(2’−ジシクロヘキシルホスファニル−ビフェニル−2−イル)−ジメチル−アミン、[2’−(ジ−t−ブチル−ホスファニル)−ビフェニル−2−イル]−ジメチル−アミン、およびジシクロヘキシル−(2’,4’,6’−トリ−プロピル−ビフェニル−2−イル)−ホスファンを含む。更に、カルベン配位子、例えば1,3−ビス−(2,6−ジ−イソプロピル−フェニル)−3H−イミダゾル−1−イウムなど;クロリドをホスフィン配位子の代わりに使用することもできる。1つの実施形態においては、そのホスフィン配位子はrac−BINAP、DPPFまたはDPEphosであり、特にはrac−BINAPである。このホスフィン配位子は、通常、0.1モル%から10モル%までの間、例えば1モル%から5モル%までの間などで適用され、典型的には約1〜2モル%の量で適用される。
【0101】
pHを高めるために、塩基が反応混合物に加えられる。特には、NaOt−Bu、KOt−BuおよびCsCOから選択された塩基が有用である。有機塩基、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)なども同様に適用することができる。特に、NaO(t−Bu)およびKO(t−Bu)の名を挙げることができる。典型的には、この塩基は約1〜5当量の量で加えられ、例えば1〜3当量など、例えば2〜3当量などの量で加えられる。
【0102】
化合物IVはピペラジン化合物である。ピペラジンは2個の窒素を有しており、そのうちの1個のみがC−N結合の形成に関与する。1つの実施形態においては、第二の窒素に対する結合の形成は、モノ−保護ピペラジンを用いることにより、即ち、式中のRが保護基である実施形態を用いることにより回避されている。多くの保護基が当分野において公知であり、有用な例はboc、Bn、Cbz、C(=O)OおよびMeを含み、特にはbocである。Bnはベンジルの略号であり;bocはt−ブチルオキシカルボニルの略号であり;cbzはベンジルオキシカルボニルの略号である。もし保護型のピペラジンがそれらの反応で使用される場合には、その保護基は以降のステップで取り除かれなければならず、典型的には酸水溶液を加えることにより除去される。メチルが保護基として使用される場合には、そのメチルは、カルバマートとの反応およびそれ以降のこの基の除去により取り除かれてよい。
【0103】
驚くべきことに、第二の窒素への望ましくない結合の形成を伴うことなく、非保護型ピペラジンも同様に使用され得ることが判明した。保護型のピペラジンおよび非保護型のピペラジンは、種々の異なる溶剤中において異なる溶解度を有している;一例を挙げれば、ピペラジンはトルエン中に事実上溶けないが、その一方で、bocで保護されたピペラジンはトルエンに高度に可溶性である。通常は、適用された溶剤中にすべての反応物が容易に溶けることが反応の成功にとっての必要条件であると期待されよう。それにもかかわらず、本発明の方法は、溶剤としてトルエンを用い、且つ、非保護型のピペラジン、即ち、式中のRが水素である実施形態のピペラジンを用いて、高い収率で実施されることが判明した。従って、1つの実施形態においては、溶剤はトルエンであり、化合物IVはピペラジンである。1つの更なる実施形態においては、この条件の組み合わせがワンポット合成で用いられる。
【0104】
1つの実施形態においては、方法を実施するための温度は、約80℃〜約120℃である。
【0105】
1つの実施形態においては、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)フェニル]−ピペラジンが以下のステップを含む方法で製造される:
a.1〜1.5当量の化合物II、IIIおよびIVをトルエン中に溶解または分散させて、混合物Aを得るステップ;
b.場合によってはトルエン中に分散もしくは溶解または分散された、1〜2モル%のPddbaおよび1〜2モル%のrac−BINAPを2〜3当量のNaOt−Buと共に混合物Aに加えて混合物Bを得、化合物IIおよびIIIが完全に変換されるまで、典型的には5〜10時間、この混合物Bを約100℃に加熱するステップ;
c.化合物IVが完全に変換されるまで、典型的には16〜32時間、ステップbで得られた混合物の温度を約120℃に高めるステップ;および
d.場合によって、化合物IIIが保護型のピペラジンであるときに、酸水溶液を加えることによりその保護基を取り除くステップ。
【0106】
場合によっては、上の一連の反応ステップに精製ステップが含められてよい。
【0107】
1つの実施形態においては、1〜1.5当量の2,4−ジメチル−チオール、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(または1,2−ジブロモ−ベンゼン)およびピペラジンがトルエン中に分散され、続いて、トルエン中に分散された2〜5当量、例えば3当量などのNaOt−Buならびに1〜2モル%のPddbaおよびrac−BINAPを加えて混合物を得、この混合物を2〜10時間、典型的には3〜5時間還流させて1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンを得る。場合によっては、対応する臭化水素酸付加塩を得るため、この生成物を更にHBr水溶液と反応させることもできる。
【0108】
1つの実施形態においては、2〜5当量のNaOt−Bu、2〜5当量のピペラジン、0.2〜0.6モル%のPddbaおよび0.6〜1モル%のrac−BINAPをトルエン中に分散させて混合物A’を得、その混合物に約1当量の2−ブロモ−ヨードベンゼンを加えて混合物B’を得、その混合物に1当量の2,4−ジメチルチオフェノールを加え、結果として生じた混合物を3〜7時間、例えば4〜6時間加熱して還流させ、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンを得る。場合によっては、対応する臭化水素酸付加塩を得るため、この生成物を更にHBr水溶液と反応させることもできる。
【0109】
ある状況においては、遊離塩基としてよりもむしろ、1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンの酸付加塩を得る方が望ましい場合があり得る。酸付加塩は更なるプロセスステップにおいて得られてよく、そのステップでは、得られた遊離塩基が適切な酸、例えばフマル酸、硫酸、塩酸または臭化水素酸などと反応させられる。その酸は、反応混合物に直接的に加えられてもよいし、または、代替的に、遊離塩基がそのようなステップの前に最初に何らかの適切な程度にまで精製されてもよい。もしも遊離塩基が乾燥化合物として単離されている場合には、酸との反応に先立ってその遊離塩基を溶液にするため、溶剤を使用することが必要になるであろう。1つの実施形態においては、何らその遊離塩基の初期精製を伴うことなく、臭化水素酸水溶液が反応混合物に直接的に加えられる。
【0110】
保護型のピペラジンが使用されている方法においては、上で説明されているように、酸水溶液を加えることによって保護基を取り除かなければならない。1つの実施形態においては、上述の酸水溶液は、2つの変換、即ち、保護型ピペラジンの脱保護および酸付加塩の形成を達成することができるように選択されてよい。特に、臭化水素酸水溶液を用いて、1つのプロセスステップで、保護型ピペラジンを脱保護し、且つ、臭化水素酸付加塩を得ることができる。
【0111】
ここで述べられているすべての反応および反応混合物に対して、それらを不活性ガスでパージすることまたはそれらを不活性ガスのブランケットの下で実行することが有利であり得るという考えが当てはまる。窒素は、安価で容易に入手可能な不活性ガスの例である。
【0112】
出版物、特許出願および特許を含め、ここで引用されているすべての参考文献は、これをもって、参照により、それらの内容全体が、また、本明細書のどこか別の個所で為されている何らかの別個に与えられた特定の書類の組み込みに関係なく、それぞれの参考文献が参照により組み込まれるべく個別的および具体的に指示されているのと同じ程度にまで、および、その内容全体が本明細書において説明されているのと同じ程度にまで(法律により許容される最大限の程度にまで)本明細書に組み込まれる。
【0113】
本発明を説明する文脈における「a」、「an」および「the」という用語ならびに同様な指示対象の使用は、本明細書で別な具合に指示されていない限り、または文脈によって明らかに否定されていない限り、単数形と複数形との両方をカバーするものと解釈すべきである。例えば、「the compound(本化合物)」という語句は、別な具合に指示されていない限り、本発明または特定の開述されている態様の様々な化合物を表すものと理解すべきである。
【0114】
別な具合に指示されていない限り、本明細書で与えられているすべての正確な値は、対応する大凡の値の代表である(例えば、特定のファクターまたは測量に関して与えられているすべての正確な例証的値は、適切な個所では「約」に変更し、対応する大凡の測量も与えているものと見なすことができる)。
【0115】
1つの構成要素または複数の構成要素に関する「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(including)」または「含む(containing)」などの用語を用いた何らかの態様または本発明の態様についての本明細書での説明は、別な具合に述べられていない限り、または文脈によって明らかに否定されていない限り、その特定の構成要素または複数の特定の構成要素に関する「からなる」、「本質的に(そのような構成要素)からなる」、または「(そのような構成要素)を実質的に含む」同様な態様または本発明の態様に対する支持を与えるべく意図されている(例えば、特定の構成要素を含むものとして本明細書で説明されている組成物は、別な具合に述べられていない限り、または文脈によって明らかに否定されていない限り、その構成要素からなる組成物をも説明しているものとして理解されるべきである)。
【実施例】
【0116】
分析方法
H NMRスペクトルが500.13MHzにおいてBruker Avance DRX500装置に記録される。溶剤としてジメチルスルホキシド(99.8%D)が使用され、内部参照標準としてテトラメチルシラン(TMS)が使用される。
【0117】
融点が示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定される。その機器は、開始値として融点を与えるべく5°/分で校正されたTA−InstrumentsのDSC−Q1000である。約2mgのサンプルが窒素フロー下におけるゆるく閉じられたパン内において5°/分で加熱される。
【0118】
乾燥された材料の溶剤/水含有量を見積もるために使用される熱重量分析(TGA)は、TA−InstrumentsのTGA−Q500を用いて実施される。1〜10mgのサンプルが窒素フロー下における開放されたパン内において10°/分で加熱される。
【0119】
粉末X線回折図形が、CuKα1放射線を用いるPANalytical X’Pert PRO X−Ray Diffractometerで測定された。サンプルは、X’celerator検出器を用いて2θ−レンジ5〜40°における反射モードで測定された。
【0120】
実施例1:インビトロ受容体薬理学
ラットセロトニントランスポーター:IC50 5.3nM(5−HT取り込みの遮断)
ヒトセロトニントランスポーター:IC50 40nM(5−HT取り込みの遮断)
ヒト5−HT1A受容体:部分的アゴニズムを有し、K 40nM(効力85%)
ラット5−HT受容体:IC50 0.2nM(機能分析におけるアンタゴニズム) ヒト5−HT3A受容体:IC50約20nM(機能分析におけるアンタゴニズム)。より高い濃度では、前記化合物は、2.1μMのED50を有するアゴニスト活性を示す。また、本発明の化合物は、インビトロ結合アッセイにおいて、ヒト5HT3受容体に対して高い親和性も示した(Ki 4.5nM)。
【0121】
実施例2:認識作用
上で検討されているように、本発明の化合物はコリン作動系と相互作用し、また、インビボモデルにおいて、以下の項目のうちの1つまたはそれ以上で効果をみることが期待されよう。
【0122】
・5選択反応時間試験(5−CSRT)(連続的な注意に及ぼす効果を実証するのに有用)
・空間Y字型迷路試験(短期記憶、長期記憶および作業記憶に及ぼす効果を実証するのに有用)
・注意セットの移行モデル(attentional set shifting model)(実行機能、即ち、論理的思考および問題解決に及ぼす効果を実証するのに有用)。
【0123】
実施例3a:遊離塩基の化合物Iの製造
10グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンヒドロブロミドを100mlの3MのNaOHおよび100mlのエチルアセタートの攪拌混合物で10分間処理した。その有機相を分離し、100mlの15%wtのNaCl(aq)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮することにより、透明な無色の油状物として、7.7グラム(98%)の化合物Iの塩基を得た。
NMRは構造に適合する。
【0124】
実施例3b:結晶質塩基の化合物Iの製造
3.0グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの無色の油状物を70mlのアセトニトリルで処理し、加熱して還流させた。そのほとんど透明な溶液を濾過し、得られた透明な濾液を自然発生的に冷却すると、濾過後間もなく沈殿が始まった。その混合物を室温(22℃)で2時間撹拌し、得られた生成物を濾過により単離し、真空下(40℃)で一晩乾燥させた。2.7グラム(90%)の白色の固体として結晶質塩基が単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:72.40%のC、9.28%のN、7.58%のH(理論値:72.26%のC、9.36%のN、7.42%のH)。
【0125】
実施例3c:結晶質塩基の化合物Iの特性描写
実施例3bのようにして製造されるこの塩基は結晶質である(XRPD)−図1参照。この結晶質塩基は約117℃の融点を有している。また、この塩基は吸湿性ではなく、且つ、水中における0.1mg/mlの溶解度を有している。
【0126】
実施例4a:化合物Iのアルファ型の臭化水素酸塩の製造
2.0グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンを熱い30mlのエチルアセタート中に溶解し、0.73mlの48%wtのHBr(aq)を加えた。この添加は濃厚なスラリーの形成をもたらし、適切に撹拌できるようにするため、更に10mlのエチルアセタートを加えた。そのスラリーを室温で1時間撹拌した。濾過し、真空下(20℃)で一晩乾燥させることにより、白色の固体として2.0グラムの生成物が得られた(80%)。NMRは構造に適合する。元素分析:57.05%のC、7.18%のN、6.16%のH(1:1の塩に対する理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0127】
実施例4b:化合物Iのアルファ型のヒドロブロミドの特性描写
実施例4aのようにして製造されるこのアルファ型のヒドロブロミドは結晶質である(XRPD)−図2参照。この結晶質ヒドロブロミドは約226℃の融点を有している。また、このヒドロブロミドは高い相対湿度に晒されたときに約0.3%の水分を吸収し、且つ、水中における2mg/mlの溶解度を有している。
【0128】
実施例4c:化合物Iのベータ型の臭化水素酸塩の製造
49.5グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの無色の油状物を500mlのエチルアセタート中に溶解し、18.5mlの48%wtのHBr(aq)を加えた。この添加は濃厚なスラリーの形成をもたらし、そのスラリーを室温で一晩撹拌した。濾過し、真空下(50℃)で一晩乾燥させることにより、白色の固体として29.6グラムの生成物が得られた(47%)。
NMRは構造に適合する。元素分析:56.86%のC、7.35%のN、6.24%のH(1:1の塩に対する理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0129】
実施例4d:化合物Iのベータ型のヒドロブロミドの特性描写
実施例4cのようにして製造されるこのベータ型のヒドロブロミドは結晶質である(XRPD)−図3参照。この結晶質ヒドロブロミドは約231℃の融点を有している。また、このヒドロブロミドは高い相対湿度に晒されたときに約0.6%の水分を吸収し、且つ、水中における1.2mg/mlの溶解度を有している。
【0130】
実施例4e:化合物Iのガンマ型の臭化水素酸塩の製造
実施例4aのようにして製造された1gの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンヒドロブロミドを20mlの水に加え、85℃に加熱した。その溶液はほとんど透明であった。1滴のHBrを加えることによりその溶液が透明になった。曇り点が観測されるまでHBrを加えた。その溶液を室温にまで冷却し、乾燥させた。NMRは構造に適合する。元素分析:56.63%のC、7.18%のN、6.21%のH(1:1の塩に対する理論値:56.99%のC、7.39%のN、6.11%のH)。
【0131】
実施例4f:化合物Iのガンマ型のヒドロブロミドの特性描写
実施例6eのようにして製造されるこのヒドロブロミドは結晶質である(XRPD)−図4参照。このDSC曲線は約100℃における幾つかの熱的事象:恐らくは結晶形の変化;を示している。その後、このヒドロブロミドは約220℃で溶融する。この結晶質ヒドロブロミドは高い相対湿度に晒されたときに約4.5%の水分を吸収し、また、室温で30%のRHのときには約2%の水分が吸収される。
【0132】
実施例4g:化合物Iのヒドロブロミド水和物の製造
1.4グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの油状物を20mlの水に加え、60℃に加熱した。48%のHBrを用いてpHを1に調節した。その溶液を室温にまで冷却し、乾燥させた。NMRは構造に適合する。元素分析:55.21%のC、7.16%のN、6.34%のH(1:1の塩半水和物に対する理論値:55.68%のC、7.21%のN、6.23%のH)。
【0133】
実施例4h:化合物Iのヒドロブロミドの半水和物の特性描写
実施例4gのようにして製造されるこの水和物は結晶質である(XRPD)−図5参照。水分の含有量は相対湿度に強く依存する。室温で95%のRHのときには、含水率は約3.7%である。約100℃に加熱することにより脱水が起こる。
【0134】
実施例4i:化合物Iの臭化水素酸塩のエチルアセタート溶媒和物の製造
0.9グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの油状物を35mlのエチルアセタート中に溶解し、0.5mlの48%wtのHBr(aq)を加えた。この添加は濃厚なスラリーの形成をもたらし、そのスラリーを室温で一晩撹拌した。濾過し、30mlのジエチルエーテルで洗った後、真空下(50℃)で一晩乾燥させることにより、1.0グラム(65%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンHBrEtOAc溶媒和物が得られた。NMRは構造に適合する。元素分析:56.19%のC、6.60%のN、6.56%のH(TGAおよびKFにより決定した際の8%のエチルアセタートおよび0.5%の水に対して補正されたときの1:1の塩に対する理論値:56.51%のC、6.76%のN、6.38%のH)。
【0135】
実施例4j:化合物Iのヒドロブロミドのエチルアセタート溶媒和物の特性描写
実施例4iのようにして製造されるこのエチルアセタート溶媒和物は結晶質である(XRPD)−図6参照。そのバッチは、恐らくは乾燥が部分的に脱溶媒和を引き起こしたため、化合物Iの溶媒和物とアルファ型との混合物を含んでいる。この脱溶媒和は、10°/分で加熱した場合、約75℃で始まる。脱溶媒和後、アルファ型が形成される。高い相対湿度に晒されると、エチルアセタートが水で置換され、その後に湿度が下げられたときにその水分が放出される。結果として得られる固体は吸湿性であり、高い相対湿度のときには3.2%の水分を吸収する。
【0136】
実施例5a:化合物Iの塩酸塩の製造
1.0グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの油状物を、穏やかに加熱(30℃)しながら、20mlのエチルアセタート中に溶解した。透明な溶液が得られたときに、ジエチルエーテル中における2MのHClの溶液を、pHが約1〜2になるまでゆっくりと加えた。この添加中に、自然発生的な沈殿が観測された。最後の添加後、その懸濁液を1時間撹拌し、その後、濾過し、真空下(40℃)で一晩乾燥させることにより、白色の沈殿物が単離された。1.1グラム(99%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンヒドロクロリドが単離された。
NMRは構造に適合する。元素分析:64.18%のC、8.25%のN、6.96%のH(TGAにより決定した際の0.66%の水に対して補正されたときの1:1の塩に対する理論値:64.13%のC、8.31%のN、6.95%のH)。
【0137】
実施例5b:化合物Iのヒドロクロリドの特性描写
実施例5aのようにして製造されるこのヒドロクロリドは結晶質である(XRPD)−図7参照。この結晶質ヒドロクロリドは約236℃の融点を有している。また、このヒドロクロリドは高い相対湿度に晒されたときに約1.5%の水分を吸収し、且つ、水中における3mg/mlの溶解度を有している。
【0138】
実施例5c:化合物Iのヒドロクロリド一水和物の製造
11.9グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの油状物を、加熱しながら、100mlのエタノール中に溶解した。均質な溶液が得られたときに行われた3.5mlの濃HCl(aq)の添加は、白色の固体の即座の沈殿を引き起こした。得られた懸濁液を最初に5分間攪拌し、次いで、氷浴上で更に1時間攪拌した後、濾過した。その白色の固体を100mlの新鮮な冷たいエタノール(−18℃で2時間冷凍庫に置いておいたもの)、50mlのアセトンおよび最後に50mlのジエチルエーテルを用いて洗った後、真空下(50℃)において一晩乾燥させた。5.1グラム(38%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンHClが単離された。
NMRは構造に適合する。元素分析:61.23%のC、7.91%のN、7.16%のH(1:1の塩一水和物に対する理論値:61.26%のC、7.94%のN、7.14%のH)。
【0139】
実施例5d:化合物Iのヒドロクロリド一水和物の特性描写
実施例5cのようにして製造されるこのヒドロクロリド一水和物は結晶質である(XRPD)−図8参照。この結晶質の一水和物は約50℃で水分を失い始める。更なる加熱により幾つかの熱的事象、恐らくは転位が起こり、この一水和物は約230℃で溶融し、続いて、約236℃で再結晶化および融解する。この結晶質一水和物は高い相対湿度に晒されたときに更なる量の水分を吸収せず、また、この水和物に結合された水は、相対湿度が室温で10%RH以下に下がるまで放出されない。この結晶質一水和物は、水中における約2mg/mlの溶解度を有している。
【0140】
実施例6a:化合物Iのメシル酸塩の製造
1.0グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの油状物を、加熱(70℃)により、20mlのエチルアセタート中に溶解した。透明な溶液が得られたときに、0.35グラムのメタンスルホン酸(1.1当量)をゆっくりと加えた。最後の添加後、その溶液を氷上で冷却し、ジエチルエーテルをゆっくりと加えることにより、生成物の沈殿がもたらされた。その懸濁液を氷上で2時間撹拌した後、生じた白色の沈殿物を濾過により単離し、真空下(40℃)において一晩乾燥させた。1.1グラム(85%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンメシラートが単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:57.81%のC、6.81%のN、6.68%のH(1:1の塩に対する理論値:57.81%のC、7.10%のN、6.64%のH)。
【0141】
実施例6b:化合物Iのメシラートの特性描写
実施例7aのようにして製造されるこのメシラートは結晶質である(XRPD)−図9参照。この結晶質メシラートは約163℃の融点を有している。また、このメシラートは吸湿性である(80%の相対湿度に晒されたときに約8%の水分を吸収し、これにより、水和された形態に変換される。吸収された水のうちの最後の6%は相対湿度が10%RH以下になるまで放出されない。この結晶質メシラートは、水中における非常に高い溶解度(>45mg/ml)を有している。
【0142】
実施例7a:化合物Iのフマラートの製造
50mlのメタノールおよび50mlのエチルアセタートの混合物中において、5.5グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの油状物を加熱し、還流させた。その溶液を放置して冷却した僅か後に2.1グラムのフマル酸を加えることにより、発熱反応が起こり、白色の固体の沈殿がもたらされた。得られた懸濁液を撹拌し、その間、室温にまで冷却させ、続いて、−18℃において冷凍庫内で2時間冷却した。その白色の固体を濾過により収集し、20mlの冷たいエチルアセタートで洗った後、真空下(50℃)において一晩乾燥させた。3.1グラム(44%)の生成物が単離された。
【0143】
NMRは構造に適合する。元素分析:63.42%のC、6.64%のN、6.42%のH(1:1の塩に対する理論値:63.74%のC、6.76%のN、6.32%のH)。
【0144】
実施例7b:化合物Iのフマラートの特性描写
実施例7aのようにして製造されるこのフマラートは結晶質である(XRPD)−図10参照。この結晶質フマラートは約194℃の融点を有している。水中における溶解度は0.4mg/mlである。
【0145】
実施例8a:化合物Iのマレアートの製造
2.5グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの油状物を50mlのエチルアセタート中に溶解し、60度に加熱した後、1.1グラムのマレイン酸を加えた。その混合物を再び加熱して5分間還流させ、撹拌しながら放置して室温にまで冷却した。冷却している間に沈殿が始まり、冷凍庫(−18℃)内に4時間入れることにより終結された。その白色の固体を濾過により収集し、50mlのジエチルエーテルで洗った後、真空下(50℃)において一晩乾燥させた。これにより1.3グラムの1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンマレアート(38%)が得られ、このマレアートを還流時に40mlのエチルアセタートおよび5mlのメタノールで処理することにより再結晶化した。その透明な溶液を室温にまで冷却し、続いて、冷凍庫(−18℃)内で2時間冷却した後、濾過し、10mlの冷たいエチルアセタートで2回洗浄し、その後、真空下(50℃)において2日間乾燥させた。0.9グラム(69%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンマレアートが単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:63.57%のC、6.79%のN、6.39%のH(1:1の塩に対する理論値:63.74%のC、6.76%のN、6.32%のH)。
【0146】
実施例8b:化合物Iのマレアートの特性描写
実施例8aのようにして製造されるこのマレアートは結晶質である(XRPD)−図11参照。この結晶質フマラートは約152℃の融点を有している。水中における溶解度は約1mg/mlである。
【0147】
実施例9a:化合物Iのメソ−タルトラートの製造
アセトン中における1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの11.1mlの0.30M溶液を5mlのアセトン中に溶解された0.5グラムのメソ−酒石酸で処理した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、その間に沈殿が起った。濾過し、最初に5mlのアセトン次いで3mlのジエチルエーテルで洗うことにより、白色の固体として生成物が得られ、その生成物を真空下(50℃)において一晩乾燥させた。1.4グラム(93%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンメソ−酒石酸が単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:58.58%のC、6.29%のN、6.40%のH(1:1の塩に対する理論値:58.91%のC、6.25%のN、6.29%のH)。
【0148】
実施例9b:化合物Iのメソ−タルトラートの特性描写
実施例9aのようにして製造されるこのメソ−タルトラートは結晶質である(XRPD)−図12参照。この結晶質のメソ−タルトラートは約164℃の融点を有している。水中における溶解度は約0.7mg/mlである。
【0149】
実施例10a:化合物IのL−(+)−タルトラートの製造
アセトン中における1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの11.1mlの0.30M溶液を5mlのアセトン中に溶解された0.5グラムのL−(+)−酒石酸で処理した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、その間に沈殿が起った。濾過し、最初に5mlのアセトン次いで3mlのジエチルエーテルで洗うことにより、白色の固体として生成物が得られ、その生成物を真空下(50℃)において一晩乾燥させた。1.2グラム(81%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン(+)−酒石酸が単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:58.86%のC、6.30%のN、6.38%のH(1:1の塩に対する理論値:58.91%のC、6.25%のN、6.29%のH)。
【0150】
実施例10b:化合物IのL−(+)−タルトラートの特性描写
実施例10aのようにして製造されるこのL−(+)−タルトラートは結晶質である(XRPD)−図13参照。この結晶質のL−(+)−タルトラートは約171℃の融点を有している。水中における溶解度は約0.4mg/mlである。
【0151】
実施例11a:化合物IのD−(−)−タルトラートの製造
アセトン中における1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの11.1mlの0.30M溶液を5mlのアセトン中に溶解された0.5グラムのD−(−)−酒石酸で処理した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、その間に沈殿が起った。濾過し、最初に5mlのアセトン次いで3mlのジエチルエーテルで洗うことにより、白色の固体として生成物が得られ、その生成物を真空下(50℃)において一晩乾燥させた。1.0グラム(68%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンD−(−)−酒石酸が単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:58.90%のC、6.26%のN、6.35%のH(1:1の塩に対する理論値:58.91%のC、6.25%のN、6.29%のH)。
【0152】
実施例11b:化合物IのD−(−)−タルトラートの特性描写
実施例11aのようにして製造されるこのD−(+)−タルトラートは結晶質である(XRPD)−図14参照。この結晶質のD−(−)−タルトラートは約175℃の融点を有している。水中における溶解度は約0.4mg/mlである。
【0153】
実施例12a:化合物Iのスルファートの製造
アセトン中における1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの11.1mlの0.30M溶液をHSO(aq)の2.2mlの3M溶液で処理した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、氷浴上で更に4時間撹拌すると沈殿が起こり、その沈殿が終結された。濾過し、最初に5mlのアセトン次いで3mlのジエチルエーテルで洗うことにより、白色の固体として生成物が得られ、その生成物を真空下(50℃)において一晩乾燥させた。0.51グラム(39%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンスルファートが単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:54.53%のC、7.22%のN、6.28%のH(1:1の塩に対する理論値:54.52%のC、7.07%のN、6.10%のH)。
【0154】
実施例12b:化合物Iのスルファートの特性描写
実施例12aのようにして製造されるこのスルファートは結晶質である(XRPD)−図15参照。この結晶質スルファートは約166℃の融点を有している。水中における溶解度は約0.1mg/mlである。
【0155】
実施例13a:化合物Iのホスファートの製造
アセトン中における1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの11.1mlの0.30M溶液を0.2mlの65%のHPO(aq)で処理した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、その間に沈殿が起った。濾過し、最初に5mlのアセトン次いで3mlのジエチルエーテルで洗うことにより、白色の固体として生成物が得られ、その生成物を真空下(50℃)において一晩乾燥させた。1.23グラム(94%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンホスファートが単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:54.21%のC、7.15%のN、6.43%のH(1:1の塩に対する理論値:54.53%のC、7.07%のN、6.36%のH)。
【0156】
実施例13b:化合物Iのホスファートの特性描写
実施例13aのようにして製造されるこのホスファートは結晶質である(XRPD)−図16参照。この結晶質ホスファートは約224℃の融点を有している。水中における溶解度は約1mg/mlである。
【0157】
実施例14a:化合物Iのニトラートの製造
アセトン中における1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンの11.1mlの0.30M溶液を0.2mlの16.5MのHNO(aq)で処理した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、その間に沈殿が起った。濾過し、最初に5mlのアセトン次いで3mlのジエチルエーテルで洗うことにより、白色の固体として生成物が得られ、その生成物を真空下(50℃)において一晩乾燥させた。0.87グラム(73%)の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンニトラートが単離された。NMRは構造に適合する。元素分析:59.80%のC、11.67%のN、6.51%のH(1:1の塩に対する理論値:59.81%のC、11.63%のN、6.41%のH)。
【0158】
実施例14b:化合物Iのニトラートの特性描写
実施例14aのようにして製造されるこのニトラートは結晶質である(XRPD)−図17参照。この結晶質ニトラートは溶融しないが、約160℃における発熱反応下において分解する。水中における溶解度は約0.8mg/mlである。
【0159】
実施例15:錠剤
以下の実施例は、本発明の化合物を含む錠剤を製造し得る方法の代表的な例を示している。すべての実施例でベータ型の臭化水素酸塩が使用された。
【0160】
実施例15a
63.55gの本臭化水素酸塩、923.65gのLactosum 350M、461.8gのトウモロコシデンプンおよび76.0gのKollidon VA64をDiosna PP1高剪断混合機内において1000rpmのインペラー速度で2分間混合した。次いで、インペラーの速度を800rpmに下げ、短時間の間に220gの水を加えた。集塊形成(massing)を7分間実行し、結果として得られた顆粒を4000μmのサイズの篩に通した。それらの顆粒を乾燥させ、710μmのサイズの篩に通した。結果として得られた1383.5gの顆粒を400gのAvicel PH200および60gのAc−Di−Solと混合した。15gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。5mgの本遊離塩基に相当する目標含有量を有する錠剤を得るため、200mgの目標コア重量および8mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0161】
実施例15b
317.75gの本臭化水素酸塩、754.15gのLactosum 350M、377.1gのトウモロコシデンプンおよび76.0gのKollidon VA64をDiosna PP1高剪断混合機内において1000rpmのインペラー速度で2分間混合した。次いで、インペラーの速度を800rpmに下げ、短時間の間に210gの水を加えた。集塊形成を7分間実行し、結果として得られた顆粒を4000μmのサイズの篩に通した。それらの顆粒を乾燥させ、710μmのサイズの篩に通した。結果として得られた1386.2gの顆粒を400gのAvicel PH200および60gのAc−Di−Solと混合した。15gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。25mgの本遊離塩基に相当する目標含有量を有する錠剤を得るため、200mgの目標コア重量および8mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0162】
実施例15c
32.2gの本臭化水素酸塩、944.82gのLactosum 350M、472.4gのトウモロコシデンプンおよび76.0gのKollidon VA64をDiosna PP1高剪断混合機内において1000rpmのインペラー速度で2分間混合した。次いで、インペラーの速度を800rpmに下げ、短時間の間に220gの水を加えた。集塊形成を7分間実行し、結果として得られた顆粒を4000μmのサイズの篩に通した。それらの顆粒を乾燥させ、710μmの篩に通した。結果として得られた1317gの顆粒を400gのAvicel PH200および60gのAc−Di−Solと混合した。15gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。2.5mgの本遊離塩基に相当する目標含有量を有する錠剤を得るため、208mgの目標コア重量および8mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0163】
実施例15d
540.85gの本臭化水素酸塩、953.00gのPearlitol 50C、296.22gのトウモロコシデンプンおよび70.5gのKollidon VA64をAeromatic−Fielder PMA1高剪断混合機内において1000rpmのインペラー速度で2分間混合した。次いで、そのインペラー速度を800rpmに下げ、短時間の間に241.87gの水を加えた。集塊形成を7分間実行し、結果として得られた顆粒を4000μmのサイズの篩に通した。それらの顆粒を乾燥させ、710μmのサイズの篩に通した。結果として得られた1500gの顆粒を531.91gのAvicel PH200および85.11gのPrimojelと混合した。10.64gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。25mgの本遊離塩基に相当する目標含有量を有する錠剤を得るため、125mgの目標コア重量および6mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0164】
実施例15e
270.45gの本臭化水素酸塩、772.0gのPearlitol 50C、386.41gのトウモロコシデンプンおよび70.5gのKollidon VA64をAeromatic−Fielder PMA1高剪断混合機内において1000rpmのインペラー速度で2分間混合した。次いで、そのインペラー速度を800rpmに下げ、短時間の間に195gの水を加えた。集塊形成を5.5分間実行し、結果として得られた顆粒を4000μmのサイズの篩に通した。それらの顆粒を乾燥させ、710μmのサイズの篩に通した。結果として得られた1200.3gの顆粒を425.5gのAvicel PH200および68.09gのPrimojelと混合した。8.8gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。10mgの本遊離塩基に相当する目標含有量を有する錠剤を得るため、100の目標コア重量および6mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0165】
実施例15f
504.85gの本遊離塩基、552.95gのPearlitol 50C、276.53gのトウモロコシデンプンおよび65.7gのKollidon VA64をAeromatic−Fielder PMA1高剪断混合機内において1000rpmのインペラー速度で2分間混合した。次いで、そのインペラー速度を800rpmに下げ、短時間の間に182gの水を加えた。集塊形成を5.5分間実行し、結果として得られた顆粒を4000μmのサイズの篩に通した。それらの顆粒を乾燥させ、710μmのサイズの篩に通した。結果として得られた1250.7gの顆粒を443.31gのAvicel PH200および70.8gのPrimojelと混合した。8.92gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。50mgの本遊離塩基に相当する目標含有量を有する錠剤を得るため、250mgの目標コア重量および8mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0166】
実施例15g
135.23gの本臭化水素酸塩、863.2gのPearlitol 50C、432.69gのトウモロコシデンプンおよび70.66gのKollidon VA64をAeromatic−Fielder PMA1高剪断混合機内において1000rpmのインペラー速度で2分間混合した。次いで、そのインペラー速度を800rpmに下げ、短時間の間に195gの水を加えた。集塊形成を5.5分間実行し、結果として得られた顆粒を4000μmのサイズの篩に通した。それらの顆粒を乾燥させ、710μmのサイズの篩に通した。結果として得られた1200gの顆粒を425.28gのAvicel PH200および68.2gのPrimojelと混合した。8.58gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。5mgの本遊離塩基に相当する目標含有量を有する錠剤を得るため、100mgの目標コア重量および6mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0167】
実施例15h
67.6gの本臭化水素酸塩、908.0gのPearlitol 50C、453.9gのトウモロコシデンプンおよび70.51gのKollidon VA64をDiosna PP1高剪断混合機内において1000rpmのインペラー速度で2分間混合した。次いで、そのインペラー速度を800rpmに下げ、短時間の間に195gの水を加えた。集塊形成を5.5分間実行し、結果として得られた顆粒を4000μmのサイズの篩に通した。それらの顆粒を乾燥させ、710μmのサイズの篩に通した。結果として得られた1325gの顆粒を531.91gのAvicel PH200および85.11gのPrimojelと混合した。10.64gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。5mgの本遊離塩基に相当する目標含有量を有する錠剤を得るため、207.8mgの目標コア重量および7mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0168】
実施例15i
2290.1gの本臭化水素酸塩、17568gの無水カルシウム水素ホスファートおよび8783gのトウモロコシデンプンならびに1510gのコポビドンをAeromatic−Fielder PMA100高剪断混合機内において200rpmのインペラー速度で3分間混合した。次いで、150rpmのインペラー速度における2分間の間に5130gの水を加えた。集塊形成を15分間実行し、結果として得られた顆粒を、9.525mmのサイズのスクリーンを備えた、約2700rpmで作動する円錐型ミルに通した。それらの顆粒を乾燥させ、2.388mmのサイズのスクリーンを備えた、約1500rpmで作動する円錐型ミルに通した。結果として得られた28747gの顆粒を11250gの微結晶性セルロース、1350gのナトリウムデンプングリコラート(タイプA)および1800gのタルクと混合した。450gのマグネシウムステアラートと混合することによるそのブレンドの潤滑化の後、得られた粉末ブレンドをタブレット成形機へ移した。5mgの本遊離塩基に相当する本臭化水素酸塩の目標含有量を有する錠剤を得るため、125mgの目標コア重量および6mmの直径を有する錠剤が製造された。更に、10mgの本遊離塩基に相当する本臭化水素酸塩の目標含有量を有する錠剤を得るため、250mgの目標コア重量および8mmの直径を有する錠剤が製造された。
【0169】
実施例16:マウスでの皮内ホルマリン試験における疼痛効果(pain effects)
このモデルにおいては、マウスが左後足にホルマリン(4.5%、20μl)の注入を受ける。このホルマリン注射により引き起こされた刺激は特徴的な二相性の行動応答を誘発し、これは損傷を負った足をなめるのに費やした時間の量により定量化される。第一相(約0〜10分)は直接的な化学刺激および侵害受容を表し、一方、第二相(約20〜30分)は神経障害性起源の痛みを表すものと考えられる。これら2つの相は鎮静期によって分離されており、この鎮静期には行動が正常に戻る。疼痛性刺激を低減するための試験化合物の有効性は、これら2つの相での損傷を負った足をなめるのに費やした時間の量を計時することにより評価される。
【0170】
本発明の化合物は第二相における疼痛スコアの有意な低減を示し(図18b)、これは、神経障害性起源の疼痛に対して効力を有することを示したものである。その上、本発明の化合物は第一相におけるスコアの有意な低減も示し(図18a)、これは、最高の用量において、より高い鎮痛作用を有することを示したものである。要約すると、これらの結果は、本発明の化合物が疼痛性障害の治療に効果的である可能性が高いことを指示している。
【0171】
実施例17
【0172】
【化7】

【0173】
20gの2−ブロモヨードベンゼン(71mmol)および9.8gの2,4−ジメチルチオフェノール(71mmol)を100mlのトルエン中に溶解した。324mgのPddba(0.35mmol;1mol%)および381mgのDPEPhos(0.71mmol;1mol%)の前に、その溶液が窒素でパージされた。その反応混合物を5分間攪拌し、その間に、色が暗赤色からオレンジ色に変わった。8.7gのKOBu(78mmol)が加えられ、直ちに不均一な混合物が形成された。その懸濁液を窒素下において100℃に加熱した。1時間後、その混合物を0℃に冷却し、2時間撹拌した後、その混合物をセライトのパッドを通じて濾過した。得られた濾過ケーキを2×50mlのトルエンで洗浄し、それらを合わせた濾液を蒸発させることにより、21gのオレンジ色−赤色調の油状物が得られ(99%の収率)、この油状物は、HPLCおよびGC−MSにより>96%の純度であることが判明した。
【0174】
実施例18
【0175】
【化8】

【0176】
機械式のスターラーを伴う1L用の三つ口丸形ボトルに500mlのトルエンを入れ、203mgのPddba(0.35mmol;0.1mol%)および760mgのDPEPhos(1.5mmol;0.4mol%)を加えた。その暗赤色の溶液を窒素で5分間パージした後、100gの2−ブロモヨードベンゼン(353mmol)および48.9gの2,4−ジメチルチオフェノール(353mmol)の添加が行われた。43.6gのKOBu(389mmol)の添加は発熱反応を引き起こし、温度を20℃から36℃に高め、それと同時に、不均一な混合物の形成をもたらした。その懸濁液を窒素下において100℃に加熱した。7時間後、その混合物を0℃に冷却し、2時間撹拌した後、セライトのパッドを通じてその混合物を濾過した。得られた濾過ケーキを2×200mlのトルエンで洗浄し、それらを合わせた濾液を蒸発させることにより、104gのオレンジ色の油状物が得られ(105%の収率)、この油状物はHPLCにより97%の純度であることが判明し、また、NMRにより望ましい構造であることが確認された。この油状物は室温で静置している間に固化した。
【0177】
実施例19
【0178】
【化9】

【0179】
50mlの乾燥トルエン中における10グラムの1−(2−ブロモ−フェニルスルファニル)−2,4−ジメチル−ベンゼン(34mmol)の溶液に7グラムのboc−ピペラジン(38mmol)を加え、窒素で5分間脱気し、312mgのPddba(2mol%)および637mgのrac−BINAP(3mol%)を加え、更に5分間脱気した後、3.9グラムのBuONa(41mmol)を加え、80℃に15時間加熱した。その反応混合物を室温にまで冷却し、20mlの15%のブラインで2回抽出し、NaSO上で乾燥させ、活性炭を加え、15分間還流させ、セライトを通じて濾過し、蒸発させることにより、NMRで決定した際に95%の純度を有する、14.2グラムの褐色がかった油状物(4−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−BOC−ピペラジン)が得られた。この粗製油状物を200mlのMeOHおよび20mlの6MのHCl(aq.)中に溶解し、1時間還流させた後、HPLCは完全な脱保護を示した。室温に冷却した後、メタノールを回転蒸発器での真空により除去し、20mlの濃NaOH(pHは13〜14であった)を加え、その後、得られた混合物を100mlのEtOAcとともに15分間攪拌した。その有機相を収集し、30mlの15%のブラインで2回抽出し、NaSO上で乾燥させ、30mlのMeOH中における5.2gのフマル酸(44mmol)を加えた。加熱して還流させている間に均一な溶液が形成され、更なる加熱または冷却のどちらかの間に、その溶液から急速な沈殿が生じる。その沈殿物を収集し、20mlのEtOAcおよび20mlのアセトンで洗浄し、真空下で乾燥させることにより、66%の全収率で、白色の粉末として9.3グラムの1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンフマラート(22mmol)が得られ、このフマラートは、LC−MSにより99.5%の純度を有していた。
【0180】
実施例20
【0181】
【化10】

【0182】
100gの1,2−ジブロモベンゼン(424mmol)および58.6gの2,4−ジメチルチオフェノール(424mmol)を800mlのトルエン中に溶解する。4.6gのPddba(8mmol;2mol%)および13.1gのrac−BINAP(21mmol;5mol%)の前に、その溶液が窒素でパージされる。反応混合物を5分間攪拌し、その間に、色が暗赤色からオレンジ色に変わる。61gのNaOBu(636mmol)および200mlのトルエンが加えられ、直ちに不均一な混合物が形成された。その懸濁液を窒素下において80℃に加熱した。10時間後、その混合物を60℃に冷却した後、500mlのトルエン中における102.6gのboc−ピペラジン(551mmol)および別の61gのNaOBu(636mmol)を加える。その反応混合物を窒素でパージした後、別な部の4.6gのPddba(8mmol;2mol%)および13.1gのrac−BINAP(21mmol;5mol%)を加えた。今度は、更に6時間またはHPLCが完全な変換を示すまで、その混合物を加熱して還流させた(110℃)。得られた反応混合物を氷上で2時間冷却した後、その混合物をセライトのパッドを通じて濾過した。得られた濾過ケーキを2×200mlのトルエンで洗浄し、それらを合わせた濾液を蒸発させることにより、242gの赤色の油状物が得られる。この油状物を1000mlのMeOH中に溶解し、115mlの48wt%のHBr(aq.)をゆっくりと加え、続いて、加熱して2時間還流させた後、HPLCにより完全な脱保護が検出された。その混合物を冷却し、1000mlのEtOAcを加え、蒸発によりMeOHを除去した。1000mlのEtOの添加は沈殿を引き起こした。室温で2時間撹拌し続けた後、そのスラリーを冷凍庫内で一晩放置した(−18℃)。濾過し、200mlのEtOで2回洗浄し、40℃において真空下で乾燥させることにより、172gの褐色がかった固体が得られた。その褐色がかった固体を1500mlの沸騰したHOで1時間処理した後、更に2時間かけて室温にまで冷却した。濾過し、40℃において真空下で一晩乾燥させることにより、98gの4−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンヒドロブロミド(61%)が得られた。
【0183】
実施例21
【0184】
【化11】

【0185】
102gの2−ブロモ−ヨードベンゼン(362mmol)および50gの2,4−ジメチルチオフェノール(362mmol)を1000mlのトルエン中に溶解する。この溶液に81gのBOC−ピペラジン(434mmol)を加え、続いて、2.08gのPddba(1mol%)および4.51gのrac−BINAP(2mol%)を加えた。この混合物を窒素で5分間パージした後、300mlのトルエン中における87gのNaOBu(905mmol)のスラリーを加えた。得られた懸濁液を窒素下において一晩100℃に加熱した。GCMS分析は中間生成物(1−(2−ブロモ−フェニルスルファニル)−2,4−ジメチル−ベンゼン)への完全な変換を示し、その温度を上昇させて更に24時間還流させた(120℃)。HPLC分析は中間体(1−BOC−4−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン)への完全な変換を示した。その反応混合物を氷上で1時間冷却した後、その混合物を濾過した。得られた濾過ケーキを2×200mlのトルエンで洗浄し、それらを合わせた濾液に80mlの48wt%のHBr(aq.)を加え、続いて、加熱して18時間還流させた後、HPLCにより完全な脱保護が検出された。得られた混合物を氷上で2時間冷却し、濾過した。その褐色がかった固体を、活性炭(25g)とともに、1000mlの沸騰したHO中に1時間溶解し、熱いうちに濾過し、放置して冷却した。生じた沈殿物を濾過により収集し、40℃において真空下で一晩乾燥させることにより、白色の固体として49gの4−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンヒドロブロミド(36%)が得られた。
【0186】
実施例22
【0187】
【化12】

【0188】
機械式のスターラーを伴う1L用の三つ口丸形ボトルに500mlのトルエンを入れ、809mgのPddba(0.88mmol;0.5mol%)および952mgのDPEPhos(1.77mmol;0.5mol%)を加えた。その暗赤色の溶液を窒素で5分間パージした後、100gの2−ブロモヨードベンゼン(353mmol)および48.9gの2,4−ジメチルチオフェノール(353mmol)の添加が行われた。43.6gのKOBu(389mmol)の添加は発熱反応を引き起こし、温度を20℃から42℃に高め、それと同時に、不均一な混合物の形成がもたらされ、また、その色が暗赤色からオレンジ色/褐色がかった色に変わった。その懸濁液を窒素下において100℃に加熱した。僅か20分後、HPLCは1−(2−ブロモ−フェニルスルファニル)−2,4−ジメチル−ベンゼンへの完全な変換を示した。その混合物を40℃に冷却し、600mlの15wt%のNaClを加え、5分間攪拌した。その有機相を分離し、水性相を2×100mlのトルエンで洗った。それらを合わせた有機相を100mlの2MのHCl(aq.)、100mlの15wt%のNaClで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、活性炭(10g)とともに15分間還流させ、2回濾過し、蒸発させることにより、107.3gのオレンジ色−赤色の油状物が得られ(103%)、この油状物はHPLCにより98%の純度であることが判明した。
【0189】
500mlの乾燥トルエン中における90グラムの上述のオレンジ色−赤色の油状物(307mmol)の溶液に57グラムのboc−ピペラジン(307mmol)を加え、窒素で5分間脱気し、1.4gのPddba(1.53mmol;0.5mol%)および2.9gのrac−BINAP(4.6mmol;1.5mol%)を加え、更に2分間脱気した後、35.4グラムのBuONa(368mmol)を加え、80℃に18時間加熱した。HPLCは完全な変換を示し、その反応混合物を室温にまで冷却した後、濾過し、得られた濾過ケーキを2×100mlのトルエンで洗った。それらを合わせた濾液を2×150mlの15wt%のNaClで2回抽出し、NaSO上で乾燥させ、活性炭を加え、30分間還流させ、2回濾過し、蒸発させることにより、140.7グラムの褐色がかった油状物(4−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−BOC−ピペラジン)が得られた。この粗製油状物を300mlのMeOHおよび200mlの6MのHCl(aq.)中に溶解し、1時間還流させた後、HPLCは完全な脱保護を示した。室温に冷却した後、メタノールを回転蒸発器での真空により除去し、200mlの濃NaOH(pHは13〜14であった)を加え、その後、得られた混合物を1000mlのEtOAcとともに15分間攪拌した。その有機相を収集し、300mlの15wt%のブラインで抽出し、NaSO上で乾燥させ、300mlのMeOH中における46.3gのフマル酸(399mmol)の溶液に加えた。その混合物を加熱して還流させ、室温にまで冷却し、その後、冷凍庫内で一晩放置した(−18℃)。生じた沈殿物を収集し、100mlのEtOAcおよび100mlのアセトンで洗浄し、真空下(50℃)で乾燥させることにより、81%の全収率で、白色の粉末として103.2gの1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンフマラート(249mmol)が得られ、このフマラートは、LC−MSにより99%の純度を有していた。このフマラートを、EtOAc/HO/濃NaOHを用いて、遊離塩基(1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン)に変換し、その有機相をブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、その濾液に34mlの48wt%のHBr(aq.)を加えることにより、白色の固体の沈殿が引き起こされた。その固体を収集し、1000mlの沸騰したHOで処理し、これを室温にまで冷却するとスラリーが形成された。この最終生成物(1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンヒドロブロミド)を濾過により収集し、真空下(50℃)において乾燥させることにより、83gの白色の粉末(71%の全収率)が得られた[CHN(teo.)56.99;6.11;7.39;CHN(実測値)57.11;6.15;7.35]。
【0190】
実施例23
【0191】
【化13】

【0192】
815gのNaOBu(8.48mol)、844gのピペラジン(9.8mol)、6.6gのPd(dba)(11.48mmol)および13.6gのrac−BINAP(21.84mmol)を4Lのトルエンとともに50分間攪拌した。その後、840gの2−ブロモ−ヨードベンゼン(2.97mol)を1.5Lのトルエンとともに加え、30分間攪拌し続け、最後に、390.8gの2,4−ジメチルチオフェノール(2.83mmol)を1.5Lのトルエンとともに加えた。この懸濁液を加熱して還流させ、5時間還流し続けた。その反応混合物を一晩冷ました。2Lの水を加え、1時間撹拌した後、濾過助剤を通じてその混合物を濾過した。その後、得られた濾液を3×1Lのブラインで洗った。この後、それらを合わせた水性相を600mlのトルエンで抽出した。この後、それらを合わせたトルエン相を70℃に加熱し、続いて、329.2mlの48wt%のHBr(aq.)および164.6mlの水を加えた。得られた混合物を室温にまで一晩冷却した。その最終生成物(1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンヒドロブロミド)を濾過により収集し、真空下(60℃)において乾燥させることにより、895g(84%の収率)の生成物が得られた。
【0193】
実施例24
【0194】
【化14】

【0195】
40.76gのNaOBu(424.1mol)、0.33gのPddba(0.57mmol)および0.68gのrac−BINAP(1.09mmol)を200mlのトルエンとともに攪拌した。その後、42gの2−ブロモ−ヨードベンゼン(362mmol)および19.54gの2,4−ジメチルチオフェノール(362mmol)を50mlのトルエンとともに加えた。この懸濁液を加熱して還流させ、一晩還流し続けた。HPLC分析は、中間生成物(1−(2−ブロモ−フェニルスルファニル)−2,4−ジメチル−ベンゼン)への完全な変換を示した。その反応混合物を室温にまで冷却し、濾過助剤を通じて濾過した。その濾液を40.76gのNaOBu(424.1mmol)、42.2gのピペラジン(489.9mmol)、0.33gのPddba(0.57mmol)および0.68gのrac−BINAP(1.09mmol)の混合物に加え、加熱して2時間還流させた。その反応混合物を一晩冷ました。100mlの水を加え、その水性相を分離して取り除いた。濾過助剤を通じてその有機相を濾過し、その後、得られた濾液を3×80mlのブラインで洗った。この後、それらを合わせた水性相を50mlのトルエンで抽出した。その後、それらを合わせたトルエン相を70℃に加熱し、続いて、16.5mlの48wt%のHBr(aq.)および8.25mlの水を加えた。得られた混合物を室温にまで一晩冷却した。その最終生成物(1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンヒドロブロミド)を濾過により収集し、真空下(60℃)において乾燥させることにより、40.18gのオフ・ホワイトの粉末が得られた(75%の収率)。
【0196】
実施例25
【0197】
【化15】

【0198】
40.76gのNaOBu(424.1mmol)、0.33gのPddba(0.57mmol)および0.68gのrac−BINAP(1.09mmol)を200mlのトルエンとともに攪拌した。その後、42gの2−ブロモ−ヨードベンゼン(148.5mmol)および19.54gの2,4−ジメチルチオフェノール(141.4mmol)を50mlのトルエンとともに加えた。この懸濁液を加熱して還流させ、一晩還流し続けた。HPLC分析は、中間生成物(1−(2−ブロモ−フェニルスルファニル)−2,4−ジメチル−ベンゼン)への完全な変換を示した。反応を50℃に冷却し、42.2gのピペラジン(489.9mmol)を100mlのトルエンとともに加えた。得られた混合物を加熱して4時間還流させた。その反応混合物を室温にまで一晩冷却した。100mlの水を加え、濾過助剤を通じてその反応混合物を濾過した。その後、得られた濾過ケーキを50mlのトルエンで洗った。
【0199】
その水性相を分離して取り除いた後、その有機相を3×25mlのブラインおよび25mlの水で洗った。この後、それらを合わせた水性相を30mlのトルエンで抽出した。その後、それらを合わせたトルエン相を70℃に加熱し、続いて、16.46mlの48wt%のHBr(aq.)および8.23mlの水を加えた。得られた混合物を室温にまで一晩冷却した。その最終生成物(1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンヒドロブロミド)を濾過により収集し、真空下(60℃)において乾燥させることにより、46.8g(87%の収率)の生成物が得られた。
【0200】
実施例26:自由行動ラットの脳におけるアセチルコリンの細胞外レベルに及ぼす効果 方法
動物に1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジン、HBr塩を投与した。
【0201】
動物
最初に計量したときの体重が275〜300gの雄のSprague−Dawleyラットを使用した。これらの動物は、食物および水道水を自由に摂取することができる状態で、規則的な室内温度(21±2℃)および湿度(55±5%)が得られるように制御された条件下において、12時間の明/暗サイクルの下で飼育された。
【0202】
手術および微小透析実験
ラットにヒプノルム/ドルミカム(2ml/kg)で麻酔をかけ、腹側海馬(座標:ブレグマの5.6mm後方、側方−5.0mm、硬膜の7.0mm腹側)または前前頭皮質(座標:ブレグマの3.2mm前方;側方、0.8mm;硬膜の4.0mm腹側)に透析プローブチップを位置付けることを目的として、脳内ガイドカニューレ(CMA/12)を脳内に定位的に埋め込んだ。アンカースクリューおよびアクリルセメントを用いてそのガイドカニューレを固定した。動物の体温が直腸プローブによりモニタリングされ、37℃に維持された。それらのラットは、2日間、手術からの回復が許され、一匹ずつケージ内で飼育された。実験の当日、上述のガイドカニューレを通じて微小透析プロープ(CMA/12、直径0.5mm、長さ3mm)が挿入された。
【0203】
それらのプローブは、複式チャンネルスイベルを介してマイクロインジェクションポンプに接続された。濾過されたリンゲル溶液(0.5μMのネオスチグミンを含有する、145mmのNaCl、3mMのKCl、1mMのMgCl、1.2mMのCaCl)での微小透析プローブの潅流は、脳内にプローブを挿入する少し前に始められ、1μl/分の一定の流量で実験の期間中続けられた。安定化の180分後、実験が開始された。透析液が20分毎に収集された。実験後、これらの動物を犠牲にし、それらの脳を取り除いて凍結し、プローブの配置を確認するために薄片化した。
【0204】
化合物を10%のHPbetaCD中に溶解し、皮下に注射した(2.5〜10mg/kg)。用量は塩のmg/kg体重として表現されている。化合物は2.5ml/kgの量で投与された。
【0205】
透析液アセチルコリンの分析
透析液中におけるアセチルコリン(ACh)の濃度が、100mMの二ナトリウム水素ホスファート、2.0mMのオクタンスルホン酸、0.5mMのテトラメチルアンモニウムクロリドおよび0.005%のMB(ESA)からなるpH8.0の移動相を用いる電気化学検出でのHPLCにより分析された。固定化されたコリンオキシダーゼを含有するプレカラム酵素反応器(ESA)が、分析カラム(ESA ACH−250);流量0.35ml/分、温度:35℃でのAChの分離に先立ち、注入されたサンプル(10μl)からコリンを排除した。分析カラムの後、サンプルは、固定化されたアセチルコリンエステラーゼおよびコリンオキシダーゼを含有するポストカラム固相反応器(ESA)に通された。後者の反応器はAChをコリンに変換し、その後、コリンをベタインおよびHに変換した。後者のHが白金電極(分析セル:ESA、モデル5040)を用いることにより電気化学的に検出された。
【0206】
データの表現
単回注入実験において、化合物投与の直前の先行する3つの連続したAChサンプルの平均値が各実験での基礎レベルとして用いられ、データが基礎(100%に正規化された平均基礎注入前値)の百分率に変換された。
【0207】
結果
本化合物は、ラットの前前頭皮質および腹側海馬におけるAChの細胞外レベルを有意に上昇させた−図19aおよび19b参照。
【0208】
実施例27:ラットにおける文脈的恐怖条件付け
この実験で投与された化合物は1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)フェニル]ピペラジンHBr塩であった。
【0209】
我々は、ラットにおいて、文脈的恐怖条件付けの獲得、固定および想起に及ぼす本化合物の効果について調べた。この恐怖条件付けパラダイムにおいては、動物は、中立的環境(状況、トレーニングチャンバー、CS)を嫌悪経験(電気的フットショック、US)と関連付けることを学ぶ。そのトレーニングチャンバーに再び暴露されると、それらの動物はすくみ行動を示し、このすくみ行動はその恐怖関連記憶の直接的な尺度であると考えられている[Pavlov J.Biol.Sci.、15、177〜182、1980]。この文脈的恐怖条件付けに関する神経解剖学は充分に研究されており、幾つかの研究が、この記憶の形成には海馬および扁桃体が必要であることを示している[Hippocampus、11、8〜17、2001;J.Neurosci.、19、1106〜1114、1999;Behav.Neurosci.、106、274〜285、1992]。
【0210】
動物および薬剤
12時間の明/暗サイクルの下で1つのケージ当たり2匹が飼育された、Charles River Laboratoriesから入手した、成体の雄のSprague−Dawleyラット(トレーニング時の体重、250〜300g)を使用した。食物および水は自由に摂取することができた。それらのラットは到着してから1週間後に使用された。化合物は10%のHPbetaCD中に溶解され、皮下に注入された。薬剤は、2.5ml/kgの量で投与された。
【0211】
機器
トレーニングおよび試験は、隔離された部屋に収容され、且つ、換気システムに接続された防音チャンバー(30×20×40cm)内で実施された。照明は白色灯(60ワット)により与えられた。チャンバーの床は、電気ショック発生装置に取り付けられた金属製の格子から成っていた。トレーニングおよび試験をする前に、そのチャンバーを70%のエタノール溶液で清浄にした。ビデオカメラにより、オフライン分析でのトレーニングセッションの行動の観察および記録が可能化された。
【0212】
獲得および保持試験
獲得の間、動物は、1分間の馴化期間の間、新しい環境を自由に探索することを許され、その1分間の馴化期間は、帯電可能な格子製の床を通じて与えられる1回の避けられないフットショック(無条件刺激、US)と同時に終結した。そのフットショックは、持続時間が2秒であり、0.75mAの強度であった。動物は、US後、更に60秒間、その条件付けチャンバー内に留められた。この状況に対するベースライン−すくみ行動応答を決定するため、最初の58秒間(ショック前獲得;実験者にはグループ情報が知らされていない)中にすくみ行動のスコアが付けられた。獲得が終了すると、動物は優しく取り出され、元の自分のケージに入れられた。24時間後、同じ動物が上述のトレーニング状況(恐怖条件付けチャンバー)に再度入れられ、2分間の保持試験が実施された。この期間中、フットショックは加えられなかった。グループに関する情報が知らされていない実験者によって、全試験期間中におけるすくみ行動のスコアが付けられ、合計試験期間の百分率として提示された。
【0213】
結果および検討
ラットにおける文脈的恐怖条件付けに及ぼす化合物の効果
ラットにおける文脈的恐怖条件付けに及ぼす化合物の効果が、(i)獲得(獲得の前に薬剤適用、図20)、(ii)記憶の想起(試験の前に薬剤適用、図21)および(iii)固定(獲得の直後に薬剤適用、図22)に関して調べられた。この第1セットの実験においては、化合物(1mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg)が獲得セッションの1時間前に投与された。図20は、トレーニング期間(フードショックの前の58秒間)中および24時間後の保持試験におけるすくみ行動の獲得を描いている。以下の知見が認められた:
・本化合物は、試験されたどの用量においても、フットショックを与える前のベースラインすくみ行動に影響を及ぼさない。
【0214】
・5mg/kgの用量における本化合物は、獲得の24時間後に行われる記憶保持試験中のすくみ行動に費やす時間を増大させる傾向を有している(39.24±13.76%、n=6、対、賦形剤で治療された動物における24.30±4.40%、n=16)。
【0215】
・10mg/kgの用量における本化合物は、獲得の24時間後に行われる保持試験中のすくみ行動に費やす時間を有意に増大させる(52.15±5.68%、n=10、対、賦形剤で治療された動物における24.30±4.40%、n=16、p<0.01)。
【0216】
図20に記載されているようにこの恐怖条件付けモデルは、学習および記憶の研究用に、文献で説明されている標準的な手順である。記憶想起に及ぼすこの薬剤の急性効果を更に解明するため、化合物(5mg/kg、10mg/kgおよび20mg/kg)を保持試験の1時間前に適用した。本化合物は5mg/kgの用量で記憶試験中のすくみ行動の発現を抑制することが観測された(12.86±3.57%、n=9、対、賦形剤で治療された動物における33.61±4.29%、n=13、p<0.05)(図21)。
【0217】
上述されているように、本化合物は、それ自体では、USを開始する前のベースラインすくみ行動に影響を及ぼさず(図20)、従って、一見して最ももっともらしい仮説は、図21で観測された効果が抗不安作用によるものであるという仮説である。条件付けされた記憶はすくみ行動、潜在的な抗不安作用を有する化合物により低減される応答により評価される。この実験は、記憶想起の直前に与えられた本化合物が抗不安効果を有していることを示しており、従って、図20に示されているすくみ行動の増大が本化合物の不安惹起作用によるものであるとは考えにくい。
【0218】
本化合物が、不安惹起性ではないが、認識力を増強させる潜在的能力(pro-cognitive potential)を備えていることを補強的に示すため、獲得セッションの後に5mg/kg、10mg/kgおよび20mg/kgの用量で本化合物を投与した。その結果、このセットの実験において、本化合物は、獲得の間にも保持試験全体を通じてもオンボード(onboard)でなかった。ここで、5mg/kgの用量における本化合物は、獲得セッションの24時間後に行われた保持試験中のすくみ行動に費やす時間を有意に増大させることが観測された(45.58±4.50%、n=8、対、賦形剤で治療された動物における25.26±3.57%、n=19、p<0.05)。状況への再暴露中のすくみ行動に費やす時間のパーセンテージが恐怖関連記憶の尺度として記述されており[Pavlov J.Biol.Sci.、15、177〜182、1980]、賦形剤で治療された動物と比べたときに、化合物で治療されたラットでは、これが増大されている(図20および21)。ひとまとめにして考えると、これらのデータは、本化合物が文脈的記憶を高めることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物が非結晶質形態の遊離塩基ではないことを条件とする、1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジンおよびその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
化合物が臭化水素酸塩、塩酸塩、メシル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メソ−酒石酸塩、L−(+)−酒石酸塩、D−(−)−酒石酸塩、硫酸塩、リン酸塩または硝酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が結晶質である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が図1〜17のいずれかに示されているようなXRDPを有している、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
結晶質形態の1−[2−(2,4−ジメチルフェニルスルファニル)−フェニル]ピペラジン臭化水素酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が約6.89、9.73、13.78および14.64(°2θ)におけるXRPD反射を有している、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
化合物が図3に示されているようなXRDPを有している、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
化合物が:
D98%:650〜680μm;D50%:230〜250μm;およびD5%:40〜60μm;
D98%:370〜390;d50%:100〜120μm;D5%:5〜15μm; D98%:100〜125μm;D50%:15〜25μm;およびD5%:1〜3μm;または
D98%:50〜70μm;D50%:3〜7μm;およびD5%:0.5〜2、
に対応する粒径分布を有している、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
治療において使用するための請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
薬学的に許容可能な賦形剤とともに請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項5または6に記載の化合物を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
湿式造粒法により製造される錠剤であり、そして、無水カルシウム水素ホスファート、トウモロコシデンプン、PVP−VAコポリマー、微結晶性セルロース、ナトリウムデンプングリコラート、タルクおよびマグネシウムステアラートを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
HBr塩:3〜8%
無水カルシウム水素ホスファート:35〜45%
トウモロコシデンプン:15〜25%
PVP−VAコポリマー:2〜6%
微結晶性セルロース:20〜30%
ナトリウムデンプングリコラート:1〜3%
タルク:2〜6%
マグネシウムステアラート:0.5〜2%
を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
HBr塩:約5%
無水カルシウム水素ホスファート:約39%
トウモロコシデンプン:約20%
PVP−VAコポリマー:約3%
微結晶性セルロース:約25%
ナトリウムデンプングリコラート:約3%
タルク:約4%
マグネシウムステアラート:約1%
を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
情動障害、うつ病、大うつ病性障害、産後うつ病、双極性障害、アルツハイマー病、精神病、癌、加齢もしくはパーキンソン病に伴ううつ病、不安、全般性不安障害、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、パニック発作、恐怖症、社会恐怖症、広場恐怖症、ストレス性尿失禁、嘔吐、IBS、摂食障害、慢性疼痛、部分的応答者、治療抵抗性うつ病、アルツハイマー病、認識機能障害、ADHD、メランコリー、PTSD、顔面紅潮、睡眠時無呼吸、アルコール、ニコチンもしくは炭水化物渇望、物質乱用、およびアルコールもしくは薬物乱用から選択される疾患を治療する方法であって、治療を必要としている患者に請求項1〜8のいずれかに記載の治療的有効量の化合物を投与することを含む、治療方法。
【請求項16】
情動障害、うつ病、大うつ病性障害、産後うつ病、双極性障害、アルツハイマー病、精神病、癌、加齢もしくはパーキンソン病に伴ううつ病、不安、全般性不安障害、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、パニック発作、恐怖症、社会恐怖症、広場恐怖症、ストレス性尿失禁、嘔吐、IBS、摂食障害、慢性疼痛、部分的応答者、治療抵抗性うつ病、アルツハイマー病、認識機能障害、ADHD、メランコリー、PTSD、顔面紅潮、睡眠時無呼吸、アルコール、ニコチンもしくは炭水化物渇望、物質乱用、またはアルコールもしくは薬物乱用を治療するための薬剤を製造するための請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項17】
情動障害、うつ病、大うつ病性障害、産後うつ病、双極性障害、アルツハイマー病、精神病、癌、加齢もしくはパーキンソン病に伴ううつ病、不安、全般性不安障害、社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、パニック発作、恐怖症、社会恐怖症、広場恐怖症、ストレス性尿失禁、嘔吐、IBS、摂食障害、慢性疼痛、部分的応答者、治療抵抗性うつ病、アルツハイマー病、認識機能障害、ADHD、メランコリー、PTSD、顔面紅潮、睡眠時無呼吸、アルコール、ニコチンもしくは炭水化物渇望、物質乱用、およびアルコールもしくは薬物乱用から選択される疾患の治療において使用するための請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
以下:
【化1】


を製造するための方法であって、溶剤、塩基、ならびにパラジウム源およびホスフィン配位子からなるパラジウム触媒の存在下において、60℃から130℃までの間の温度で、化合物II
【化2】


[式中、R’は水素または一価の金属イオンを表す]を、式III
【化3】


[式中、XおよびXは独立してハロゲンを表す]の化合物および式IV
【化4】


[式中、Rは水素または保護基を表す]の化合物と反応させることを含む、前記の方法。
【請求項19】
化合物IIおよび化合物IIIが第一の反応で反応させられ、場合により前記第一反応での反応生成物
【化5】


が単離および精製され、続いて、前記化合物IVとのその後の反応が行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
化合物II、化合物IIIおよび化合物IVが前記方法の開始時に一緒に混合される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
およびXが独立してBrまたはIを表す、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
がBrを表し、XがIを表す、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記溶剤が非プロトン性溶剤である、請求項18〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記溶剤がトルエン、キシレン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジオキシンまたはN−メチルピロリドンから選択される、請求項18〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記溶剤がトルエンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記パラジウム源がPddba、Pd(OAc)またはPddbaから選択される、請求項18〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記パラジウム源がPddbaまたはPddbaである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ホスフィン配位子が
2,2’−ビス−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニル(rac−BINAP);
1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF);
ビス−(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEphos);
トリ−t−ブチルホスフィン(Fu’s塩);
ビフェニル−2−イル−ジ−t−ブチル−ホスフィン;
ビフェニル−2−イル−ジシクロヘキシル−ホスフィン;
(2’−ジシクロヘキシルホスファニル−ビフェニル−2−イル)−ジメチル−アミン;
[2’−(ジ−t−ブチル−ホスファニル)−ビフェニル−2−イル]−ジメチル−アミン;および
ジシクロヘキシル−(2’,4’,6’−トリ−プロピル−ビフェニル−2−イル)−ホスファン;
から選択される、請求項18〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記ホスフィン配位子がrac−BINAPである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記塩基がNaO(t−Bu)、KO(t−Bu)、CsCO、DBUまたはDABCOから選択される、請求項18〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記塩基がNaO(t−Bu)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Rが水素を表す、請求項18〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
RがBoc、Bn、Cbz、C(=O)OetまたはMeから選択される保護基を表す、請求項18〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
R’が水素である、請求項18〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記温度が約80℃から約120℃までの間である、請求項18〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
以下のステップ:
a.1〜1.5当量の化合物I、IIおよびIIIをトルエン中に溶解または分散させて混合物Aを得るステップ;
b.1〜2モル%のPddbaおよび1〜2モル%のrac−BINAPを2〜3当量のNaO(t−Bu)とともに混合物Aに加えて混合物Bを得るステップであって、ここで、化合物IIおよびIIIが完全に変換されるまで前記混合物Bが約100℃に加熱されるステップ;
c.ステップbで得られた混合物の温度を、化合物IVが完全に変換されるまで、約120℃に高めるステップ;および
d.場合によって、化合物IVが保護型ピペラジンであるときに、酸水溶液を加えることによって前記保護基を取り除くステップ;
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
1〜1.5当量の2,4−ジメチル−チオール、1−ブロモ−1−ヨード−ベンゼン(または1,2−ジブロモ−ベンゼン)およびピペラジンをトルエン中に分散し、続いて、トルエン中に分散された2〜5当量のNaO(t−Bu)および1〜2モル%のPddbaおよびrac−BINAPを加えて混合物を得、前記混合物を100〜130℃に2〜10時間加熱して生成物1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンを得る、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
前記混合物が3〜5時間加熱還流され、そして、後続のステップであって、得られた生成物が対応する臭化水素酸付加塩を得るべく、更にHBr水溶液と反応させられるステップがそれに続く、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
2〜5当量のNaO(t−Bu)、2〜5当量のピペラジン、0.2〜0.6モル%のPddbaおよび0.6〜1モル%のrac−BINAPをトルエン中に分散して混合物A’を得、前記混合物A’に約1当量の2−ブロモ−ヨードベンゼンを加えて混合物B’を得、前記混合物B’に1当量の2,4−ジメチルチオフェノールを加え、得られた混合物を3〜7時間加熱還流して1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンを得る、請求項20に記載の方法。
【請求項40】
前記の得られた混合物が4〜6時間加熱還流され、そして、後続のステップであって、得られた生成物が対応する臭化水素酸付加塩を得るべく、更にHBr水溶液と反応させられるステップがそれに続く、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
対応する臭化水素酸塩を得るために、HBr水溶液を生成物
【化6】


に加える付加的なステップを伴い、前記生成物が場合によっては精製された形態である、請求項18〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン臭化水素酸付加塩を製造するための方法であって、1〜1.5当量の2,4−ジメチル−チオール、1−ブロモ−1−ヨード−ベンゼン(または1,2−ジブロモ−ベンゼン)およびピペラジンをトルエン中に分散し、続いて、トルエン中に分散された2〜5当量のNaO(t−Bu)および1〜2モル%のPddbaおよびrac−BINAPを加えて混合物を得、前記混合物を3〜5時間加熱還流して生成物1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンを得、前記ピペラジンを更に臭化水素酸水溶液と反応させる、前記の方法。
【請求項43】
1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジン臭化水素酸付加塩を製造するための方法であって、2〜5当量のNaO(t−Bu)、2〜5当量のピペラジン、0.2〜0.6モル%のPddbaおよび0.6〜1モル%のrac−BINAPをトルエン中に分散して混合物A’を得、前記混合物A’に約1当量の2−ブロモ−ヨードベンゼンを加えて混合物B’を得、前記混合物B’に1当量の2,4−ジメチルチオフェノールを加え、結果として得られた混合物を4〜6時間加熱還流して1−[2−(2,4−ジメチル−フェニルスルファニル)−フェニル]−ピペラジンを得、前記ピペラジンを更に臭化水素酸水溶液と反応させる、前記の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19a】
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【図19b】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−90165(P2010−90165A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−295187(P2009−295187)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2009−514642(P2009−514642)の分割
【原出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】