説明

誘導加熱装置、定着装置、及び画像形成装置

【課題】電流共振回路を用いた誘導加熱装置において、スイッチング素子が劣化するおそれを低減する。
【解決手段】スイッチング素子Q1,Q2の直列回路の両端間に、電源電圧Vinを印加する電源部E1と、励磁コイル531とキャパシターC1との直列回路であって、かつスイッチング素子Q1と並列に接続された第2直列回路と、スイッチング素子Q1,Q2と並列に接続されたダイオードD1,D2と、共振周期の1/2より短いオン時間とデッドタイムとを加えた時間であるスイッチング周期毎に、オン時間の間スイッチング素子Q2をオンさせる第1処理と、オン時間の間スイッチング素子Q1をオンさせる第2処理とを交互に実行することによって、電流共振を生じさせる制御部41と、スイッチング素子Q1の両端間の電圧Vsが設定電圧V1を超えているとき、強制的にスイッチング素子Q1をオフさせる強制オフ部42とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置、その誘導加熱装置を用いた定着装置、及びその定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電圧共振回路を用いた誘導加熱装置において、励磁コイルを含む共振回路で発生するフライバック電圧を検知し、その検知電圧により被加熱体の高温状態の判断を行い、異常加熱と判定した場合は共振回路のスイッチングを停止するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、電圧共振回路を用いた誘導加熱装置において、励磁コイルと直列接続されたスイッチング素子に印加される電圧が安全動作電圧範囲を超えたことを検知し、その検知信号に応じて励磁コイルへの電力供給を制御するものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、電圧共振回路を用いた誘導加熱装置において、励磁コイルに流れる高周波電流の検出結果から、励磁コイルの実際のインダクタンス値を算出し、このインダクタンス値と商用電源の入力電圧とから、スイッチングの周波数やスイッチングのデューティの補正を行うことで、スイッチング素子を安全な動作領域で動作させるものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−243483号公報
【特許文献2】特開2004−266880号公報
【特許文献3】特開2004−21174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電圧共振回路の場合は、励磁コイルで生じたフライバック電圧が共振に伴って変動するので、特許文献1に記載されているように、このフライバック電圧を検知することによって異常の発生を検知することが可能である。
【0007】
また、電圧共振回路の場合は、励磁コイルとスイッチング素子とが直列接続されているので、励磁コイルで生じたフライバック電圧がスイッチング素子に印加される。そのため、特許文献2に記載されているように、スイッチング素子に印加される電圧に基づきフライバック電圧の異常を検知し、その検知結果から異常の発生を検知することが可能である。
【0008】
しかしながら、電流共振回路の場合は、一定の電源電圧が共振回路に印加された状態で、共振により電流値が変動する。そのため、電流共振回路では、特許文献1,2に記載の技術のように、フライバック電圧から異常を検知することが困難であるという、不都合があった。
【0009】
また、特許文献3に記載の技術では、励磁コイルに流れる高周波電流の検出結果から、励磁コイルの実際のインダクタンス値を算出する処理が必要となるため、スイッチング素子を安全な動作領域で動作させるための保護回路が複雑になるという、不都合があった。
【0010】
本発明の目的は、電流共振回路を用いた誘導加熱装置において、簡素な構成で電流共振に用いられるスイッチング素子が劣化又は破損するおそれを低減することができる誘導加熱装置、その誘導加熱装置を用いた定着装置、及びその定着装置を用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る誘導加熱装置は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが直列に接続された第1直列回路と、前記第1直列回路の両端間に、予め設定された電源電圧を印加する電源部と、被加熱体を電磁誘導により加熱する励磁コイルと第1キャパシターとの直列回路であって、かつ前記第1スイッチング素子と並列に接続された第2直列回路と、前記第1スイッチング素子と並列に、前記電源電圧に対して逆方向となる向きに接続された第1ダイオードと、前記第2スイッチング素子と並列に、前記電源電圧に対して逆方向となる向きに接続された第2ダイオードと、前記第2直列回路によって生じる共振の共振周期の1/2より短いオン時間と前記第1及び第2スイッチング素子を共にオフさせるべき時間として予め設定されたデッドタイムとを加えた時間であるスイッチング周期毎に、前記オン時間の間前記第1スイッチング素子をオフさせ前記第2スイッチング素子をオンさせる第1処理と、前記オン時間の間前記第1スイッチング素子をオンさせ前記第2スイッチング素子をオフさせる第2処理とを交互に実行することによって、電流共振を生じさせる制御部と、前記第1スイッチング素子の両端間の電圧が、予め設定された設定電圧を超えているとき、前記制御部の処理に関わらず強制的に前記第1スイッチング素子をオフさせる強制オフ部とを備える。
【0012】
この構成によれば、電源部が、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが直列に接続された第1直列回路の両端間に、電源電圧を印加する。また、第1スイッチング素子と並列に、励磁コイルと第1キャパシターとの直列回路が接続されている。そして、制御部が、スイッチング周期毎に、オン時間の間第1スイッチング素子をオフさせ第2スイッチング素子をオンさせる第1処理と、オン時間の間第1スイッチング素子をオンさせ第2スイッチング素子をオフさせる第2処理とを交互に実行することによって、電流共振を生じさせる。すなわちこの誘導加熱回路は、電流共振回路として動作する。そして、強制オフ部は、第1スイッチング素子の両端間の電圧が設定電圧を超えているとき、制御部の処理に関わらず強制的に第1スイッチング素子をオフさせるから、第1スイッチング素子の両端間の電圧が設定電圧を超える高電圧になっているときは、第1スイッチング素子がオンされることがなく、従ってハードスイッチングが生じるおそれが低減される。これにより、簡素な構成で電流共振に用いられるスイッチング素子が劣化するおそれを低減することができる。
【0013】
また、前記第2スイッチング素子は、前記第1直列回路において、前記第1スイッチング素子よりも高電位側に配置されており、前記第2スイッチング素子のオン、オフを制御するための制御端子を備え、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点と前記制御端子との間に、所定の制御電圧以上の電圧が印加されたときにオンするスイッチング素子であり、前記制御部は、起動用キャパシターと第3ダイオードと抵抗とが直列接続されたブートストラップ回路と、前記制御電圧以上の出力電圧を出力端子から出力する制御電源とを備え、前記起動用キャパシターの一端が前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点に接続され、前記起動用キャパシターの他端が前記第3ダイオードのカソードに接続され、前記第3ダイオードのアノードが前記抵抗を介して前記出力端子に接続され、前記制御部は、前記起動用キャパシターに充電された充電電圧を前記制御端子に印加することによって、前記第2スイッチング素子をオンさせることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1スイッチング素子がオンすると、起動用キャパシターが制御電源の出力電圧で充電される。そして、制御部は、起動用キャパシターに充電された充電電圧を制御端子に印加することによって、第2スイッチング素子をオンさせる。一方、第1スイッチング素子の両端間の電圧が設定電圧を超えて、強制オフ部が第1スイッチング素子をオフさせると、起動用キャパシターが充電されない。そうすると、制御部は、起動用キャパシターに充電された充電電圧を制御端子に印加しても、制御端子に制御電圧以上の電圧を印加することができないから、第2スイッチング素子をオンさせることができず、従って、第2スイッチング素子がオフする。これにより、強制オフ部が第1スイッチング素子をオフさせるだけで、第2スイッチング素子もオフさせることができるから、第2スイッチング素子をオフさせるための回路を別途備える必要がなく、回路を簡素化することが容易である。
【0015】
また、前記第2スイッチング素子と前記励磁コイルとの直列回路と並列に接続された第2キャパシターをさらに備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第1キャパシターと第2キャパシターとによって、電源電圧が分圧される。そしてその分圧された電圧が、励磁コイルに印加されることで、誘導加熱装置の共振動作が安定する。
【0017】
また、前記第1スイッチング素子と並列に接続された第3キャパシターと、前記第2スイッチング素子と並列に接続された第4キャパシターとをさらに備えることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第3及び第4キャパシターによって、誘導加熱装置の共振動作が安定する。
【0019】
また、本発明に係る定着装置は、上述の誘導加熱装置と、トナー像が形成された用紙を加熱することにより、前記トナー像を前記用紙に定着させる前記被加熱体としての加熱部材とを備える。
【0020】
この構成によれば、上述の誘導加熱装置を定着装置として用いることができる。
【0021】
また、本発明に係る画像形成装置は、上述の定着装置と、前記用紙にトナー像を形成する画像形成部とを備え、前記加熱部材は、前記画像形成部によって前記トナー像が形成された用紙を加熱することにより、前記トナー像を前記用紙に定着させる。
【0022】
この構成によれば、画像形成装置においてトナー像を用紙に定着させる定着装置として、上述の誘導加熱装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
このような構成の誘導加熱装置、その誘導加熱装置を用いた定着装置、及びその定着装置を用いた画像形成装置は、電流共振回路を用いた誘導加熱装置において、簡素な構成で電流共振に用いられるスイッチング素子が劣化又は破損するおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構成を概略的に示した側面図である。
【図2】図1に示す定着装置の概略的な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る誘導加熱装置の構成の一例を示す回路図である。
【図4】図2に示す誘導加熱装置の正常動作時における動作を説明するための信号波形図である。
【図5】図2に示す誘導加熱装置の共振動作を説明するための説明図である。
【図6】図2に示す誘導加熱装置の共振動作を説明するための説明図である。
【図7】図2に示す誘導加熱装置の共振動作を説明するための説明図である。
【図8】図2に示す誘導加熱装置の共振動作を説明するための説明図である。
【図9】オン時間Tonが共振周期Tcycの1/2より長くなった場合の課題を説明するための説明図である。
【図10】スイッチング周波数と、励磁コイルへ供給される電力との関係の一例を示すグラフである。
【図11】図2に示す誘導加熱装置の動作を説明するための信号波形図である。
【図12】図2に示す誘導加熱装置の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構成を概略的に示した側面図である。尚、画像形成装置1は、複写機、プリンタ及びファクシミリ機等であり、用紙に乗せられたトナー像を加圧、加熱によって定着させるプロセスを持つ画像形成装置であればよい。画像形成装置1は、本体部2、本体部2の左方に配設されたスタックトレイ3、本体部2の上部に配設された原稿読取部4、原稿読取部4の上方に配設された原稿給送部5を備えている。
【0026】
また、画像形成装置1のフロント部には、入力操作部6が設けられている。この入力操作部6には、電源キーやユーザが印刷実行指示を入力するためのスタートキー、印刷部数等を入力するためのテンキー、各種複写動作の操作ガイド情報等を表示し、これら各種設定入力用にタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等からなる表示部9等を有する。
【0027】
原稿読取部4は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ及び露光ランプ等からなるスキャナ部13、ガラス等の透明部材により構成された原稿台14及び原稿読取スリット15を備える。スキャナ部13は、図略の駆動部によって移動可能に構成され、原稿台14に載置された原稿を読み取るときは、原稿台14に対向する位置で原稿面に沿って移動され、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを画像メモリ(不図示)へ出力する。また、原稿給送部5により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット15と対向する位置に移動され、原稿読取スリット15を介して原稿給送部5による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データを画像メモリへ出力する。
【0028】
原稿給送部5は、原稿を載置するための原稿載置部16と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部17、原稿載置部16に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット15に対向する位置へ搬送し、原稿排出部17へ排出するための給紙ローラや搬送ローラ(不図示)等からなる原稿搬送機構18を備える。
【0029】
また、原稿給送部5は、その前面側が上方に移動可能となるように本体部2に対して回動自在に設けられている。原稿給送部5の前面側を上方に移動させて原稿台14上面を開放することにより、原稿台14の上面に読み取り原稿、例えば見開き状態にされた書籍等をユーザが載置できるようになっている。
【0030】
本体部2は、複数の給紙カセット19と、給紙カセット19から用紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部21へ搬送する給紙ローラ20と、給紙カセット19から搬送されてきた用紙に画像を形成する画像形成部21とを備える。
【0031】
画像形成部21は、スキャナ部13で取得された画像データに基づきレーザ光等を出力して感光体ドラム22を露光し、感光体ドラム22の表面に静電潜像を形成する光学ユニット23と、静電潜像が形成された感光体ドラム22の表面にトナーを付着することによりトナー像を形成する現像部24と、感光体ドラム22上のトナー像を用紙に転写する転写部25とを備える。
【0032】
定着装置28は、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に融解定着させるベルトユニット26及び加圧ローラ27を備える。
【0033】
画像形成部21内の用紙搬送路中には、用紙をスタックトレイ3又は排出トレイ29まで搬送する搬送ローラ対30及び31等が備えられている。
【0034】
また、用紙の両面に画像を形成する場合は、画像形成部21で用紙の一方の面に画像を形成した後、この用紙を排出トレイ29側の搬送ローラ対30,31にニップされた状態とする。この状態で搬送ローラ対30,31を反転させて用紙をスイッチバックさせ、搬送ローラ対38及び39が用紙を用紙搬送路32に送って画像形成部21の上流域に再度搬送し、画像形成部21により他方の面に画像を形成した後、用紙をスタックトレイ3又は排出トレイ29に排出する。
【0035】
図2は、図1に示す定着装置28の概略的な断面図である。定着装置28は、上述のベルトユニット26及び加圧ローラ27に加えて、ベルト263及び第2ローラ262を加熱するIHコイルユニット530を含む。IHコイルユニット530は、誘導加熱装置の一例である。
【0036】
ベルトユニット26は、加圧ローラ27と対向配置される第1ローラ261と、第2ローラ262と、第1ローラ261と第2ローラ262とに架け渡されるように巻き回されるベルト263とを備える。加圧ローラ27は、第1ローラ261と協働して、ベルト263を挟む。加圧ローラ27とベルト263との間には、フラットニップが形成される。
【0037】
ベルト263は、例えば、厚さ寸法約30μm以上約50μm以下のニッケル電鋳基材と、ニッケル電鋳基材上に積層されるシリコンゴム層と、シリコンゴム層上に形成される離型層(例えば、PFA層)を含む。ベルト263は、加熱部材の一例に相当している。
【0038】
第2ローラ262は、例えば、外径30mmの円筒状に形成される。第2ローラ262は、円筒形状の鉄基材と、鉄基材外周面に形成される肉厚寸法0.2mm以上1.0mm以下の離型層(例えば、PFA層)を含む。
【0039】
第1ローラ261は、例えば、円柱状に形成される。第1ローラ261は、ステンレス鋼からなる外径45mmの芯金ローラと、芯金ローラの外周面を被覆する厚さ5mm以上10mm以下のシリコンゴムからなるスポンジ層を含む。
【0040】
加圧ローラ27は、例えば、外径50mmの円柱状に形成される。加圧ローラ27は、ステンレス鋼からなる芯金ローラ、芯金ローラ外周面を被覆する厚さ2mm以上5mm以下のシリコンゴムからなるスポンジ層及び離型層(例えば、PFA層)を含む。加圧ローラ27の金属製の芯材は、例えば、FeやAlを用いて形成されてもよい。この芯材上にSiゴム層が形成されてもよい。さらにSiゴム層の表層にフッ素樹脂層が形成されてもよい。
【0041】
IHコイルユニット530は、ベルト263及び第2ローラ262を誘導加熱する励磁コイル531と、励磁コイル531を支持するプラットフォーム200とを備える。IHコイルユニット530は、励磁コイル531によって発生する磁界中の磁力線の経路を規定する一対のサイドコア533、一対のアーチコア534及びセンタコア535を備える。
【0042】
一対のアーチコア534及びセンタコア535は、それぞれ、第1ローラ261の回転中心軸C1、第2ローラ262の回転中心軸C2及び加圧ローラ27の回転中心軸C3を結ぶ直線L1に対して対称に配設されている。そして、一対のアーチコア534の間にセンタコア535が配設されている。一対のサイドコア533、一対のアーチコア534及びセンタコア535は、プラットフォーム200によって支持される。
【0043】
一対のサイドコア533、及び一対のアーチコア534は、例えばフェライトを用いて構成されている。また、センタコア535は、例えば円柱状の導電性シャフト538と、導電性シャフト538を被覆する円筒形状の磁性筒539とを用いて構成されている。
【0044】
プラットフォーム200は、第2ローラ262の周面に沿う湾曲面を含むコイル支持部201を備える。コイル支持部201は、ベルト263及び第2ローラ262を誘導加熱するための磁界を生じさせる励磁コイル531を支持する。
【0045】
励磁コイル531は、コイル支持部201、サイドコア533及びアーチコア534で囲まれる空間内でループ状のコイル面を形成する。
【0046】
上述の如く、コイル支持部201は、第2ローラ262上のベルト263の円弧状の外面に沿うように形成される。励磁コイル531は、コイル支持部201を取り巻くように配置される。この結果、励磁コイル531は、湾曲したコイル支持部201に沿って連設され、略円弧状の断面を有するループ状のコイル面を形成する。そして、第2ローラ262の略半分は、励磁コイル531に取り囲まれている。
【0047】
そして、励磁コイル531に高周波電流が流れると、ベルト263及び第2ローラ262が誘導加熱される。さらに、図略の駆動機構が第1ローラ261を図2における時計回りに駆動回転することによって、第2ローラ262が従動回転すると共に、加熱されたベルト263が加圧ローラ27と第1ローラ261とのニップ部へ向かう。その結果、加圧ローラ27とベルト263とでニップされた用紙Pが加熱されて、用紙Pにトナー像が定着される。
【0048】
なお、定着装置28は、ベルトユニット26の代わりにベルトを用いない加熱ローラを備えていてもよい。
【0049】
図3は、本発明の一実施形態に係る誘導加熱装置40の構成の一例を示す回路図である。図3に示す誘導加熱装置40は、電源部E1、スイッチング素子Q1(第1スイッチング素子)、スイッチング素子Q2(第2スイッチング素子)、ダイオードD1(第1ダイオード)、ダイオードD2(第2ダイオード)、励磁コイル531、キャパシターC1(第1キャパシター)、制御部41、及び強制オフ部42を備えて構成されている。
【0050】
電源部E1は、例えば商用交流電源電圧から直流141Vの電源電圧Vinを生成する直流電源回路である。
【0051】
スイッチング素子Q1,Q2は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。なお、スイッチング素子Q1,Q2としては、FET(Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ等、種々のスイッチング素子を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2は、直列接続されて、第1直列回路を構成している。
【0052】
そして、スイッチング素子Q2のコレクタが電源部E1の正極側出力端子に接続され、スイッチング素子Q2のエミッタがスイッチング素子Q1のコレクタに接続され、スイッチング素子Q1のエミッタが電源部E1の負極側出力端子に接続されている。電源部E1の負極側出力端子は回路グラウンドにされている。
【0053】
また、スイッチング素子Q1のコレクタにダイオードD1のカソードが接続され、スイッチング素子Q1のエミッタにダイオードD1のアノードが接続されて、スイッチング素子Q1とダイオードD1とが並列接続されている。スイッチング素子Q2のコレクタにダイオードD2のカソードが接続され、スイッチング素子Q2のエミッタにダイオードD2のアノードが接続されて、スイッチング素子Q2とダイオードD2とが並列接続されている。
【0054】
スイッチング素子Q1のコレクタには励磁コイル531の一端が接続され、励磁コイル531の他端がキャパシターC1を介してスイッチング素子Q1のエミッタに接続されている。すなわち、励磁コイル531とキャパシターC1との直列回路である第2直列回路が、スイッチング素子Q1と並列に接続されている。
【0055】
励磁コイル531のインダクタンスをL、キャパシターC1の静電容量をCとすると、励磁コイル531とキャパシターC1とを用いて構成される電流共振回路の共振周波数frは、下記の式(1)で表される。
【0056】
fr=1/{2×π×(L×C)1/2}・・・(1)
ここで、励磁コイル531のインダクタンスLには、励磁コイル531自身の自己インダクタンスと、励磁コイル531の周囲に存在する第2ローラ262、ベルト263、サイドコア533、アーチコア534、及びセンタコア535と励磁コイル531との間の磁気結合により生じる相互インダクタンスとが含まれている。
【0057】
制御部41は、マイクロコントローラー411と、ゲートドライバー412と、ブートストラップ回路413と、制御電源E2とを備えて構成されている。制御電源E2は、スイッチング素子Q1,Q2をオンさせるための制御電圧、例えば15Vを出力する電源回路である。
【0058】
ブートストラップ回路413は、抵抗RbとダイオードD3(第3ダイオード)とキャパシターCb(起動用キャパシター)とがこの順に直列接続されて構成されている。キャパシターCbの一端はスイッチング素子Q1,Q2の接続点P1に接続され、キャパシターCbの他端はダイオードD3のカソードに接続されている。ダイオードD3のアノードは抵抗Rbの一端に接続され、抵抗Rbの他端が制御電源E2に接続されている。また、キャパシターCbとダイオードD3との接続点P2は、ゲートドライバー412に接続されている。
【0059】
ゲートドライバー412は、マイクロコントローラー411からの制御信号に応じて、スイッチング素子Q1,Q2をオン、オフさせる駆動回路である。スイッチング素子Q1,Q2のようなIGBTをオンさせるためには、ゲート(制御端子)とエミッタ(MOSFETの場合はソース)との間に所定の制御電圧(例えば15V)以上の電圧を印加する必要がある。
【0060】
しかしながら、スイッチング素子Q1,Q2は直列接続されているので、高電位側のスイッチング素子Q2をオンさせるためには、スイッチング素子Q1がオンしているときはスイッチング素子Q2のゲートに15Vの電圧を印加すればよいが、スイッチング素子Q1がオフしているときは、スイッチング素子Q1,Q2の接続点P1の電圧Vsに、15Vを加算した電圧をスイッチング素子Q2のゲートに印加する必要がある。
【0061】
そこで、ゲートドライバー412は、ブートストラップ回路413と協働することで、マイクロコントローラー411からの制御信号に応じて、スイッチング素子Q1,Q2をオン、オフさせるためのゲート信号G1,G2を生成し、スイッチング素子Q1,Q2のゲートへ出力する。
【0062】
ゲートドライバー412としては、例えば東芝(株)製ドライバ素子、M81709を用いることができる。
【0063】
マイクロコントローラー411は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、タイマー回路、及び任意の信号波形を生成可能なパターンジェネレータ等が1チップに集積された制御回路である。マイクロコントローラー411は、例えば予め内蔵のROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、スイッチング素子Q1のオン、オフを制御する制御信号S1をアンドゲート421を介してゲートドライバー412へ出力し、スイッチング素子Q2のオン、オフを制御する制御信号S2をゲートドライバー412へ出力する。
【0064】
図3においては、ゲートドライバー412の内部構成を概念的に示している。図3に示すゲートドライバー412は、バッファB1,B2と、スイッチング素子SW1,SW2とを備えている。スイッチング素子SW1は、制御電源E2とスイッチング素子Q1のゲートとの間に接続され、スイッチング素子SW2は、接続点P2とスイッチング素子Q2のゲートとの間に接続されている。
【0065】
なお、ゲートドライバー412には、アンドゲート421から出力された制御信号S1aが入力されるのであるが、説明を簡単にするため、マイクロコントローラー411から出力された制御信号S1がそのままゲートドライバー412に入力されるものとして説明する。
【0066】
低電位側のスイッチング素子Q1は、エミッタがグラウンドに接続されているから、制御信号S1がハイレベルのとき、バッファB1はスイッチング素子SW1をオンし、制御信号S1がローレベルのとき、バッファB1はスイッチング素子SW1をオフすることで、制御信号S1に応じてスイッチング素子Q1のオン、オフを制御することができる。
【0067】
一方、スイッチング素子Q1がオンすると、制御電源E2から抵抗Rb、ダイオードD3、キャパシターCb、及びスイッチング素子Q1を介してグラウンドへ電流が流れ、キャパシターCbが制御電源E2の制御電圧15Vに充電される。そうすると、接続点P2の電圧は、接続点P1の電圧すなわちスイッチング素子Q2のエミッタ電圧にキャパシターCbの端子電圧(充電電圧)を加算した電圧になる。
【0068】
このようにキャパシターCbが制御電圧15Vに充電されると、スイッチング素子Q1のオン、オフに関わらず、制御信号S2がハイレベルのとき、バッファB2はスイッチング素子SW2をオンすることで、制御電圧15Vをスイッチング素子Q2のエミッタ、ベース間に印加することができる。その結果、スイッチング素子Q1のオン、オフに関わらず、スイッチング素子Q2をオンさせることが可能とされている。
【0069】
強制オフ部42は、アンドゲート421、コンパレーター422、基準電圧源E3、及び抵抗R1,R2を備えて構成されている。接続点P1は、抵抗R1,R2の直列回路を介してグラウンドへ接続されている。これにより、接続点P1の電圧すなわちスイッチング素子Q1の両端子間の電圧Vsが、抵抗R1,R2で分圧され、コンパレーター422の入力電圧範囲にレベル変換されて、コンパレーター422のマイナス(−)端子に入力される。
【0070】
また、コンパレーター422のプラス(+)端子には、基準電圧源E3が接続されている。基準電圧源E3は、スイッチング素子Q1をオフさせるべき電圧Vsとして予め設定された設定電圧V1に、抵抗R1,R2の分圧比を乗じた電圧を基準電圧として出力する。これにより、コンパレーター422は、抵抗R1,R2で分圧された電圧と、基準電圧源E3から出力された基準電圧とを比較することで、間接的に電圧Vsと設定電圧V1とを比較する。
【0071】
そして、コンパレーター422は、電圧Vsが設定電圧V1を超えたときローレベルの信号S3をアンドゲート421へ出力し、電圧Vsが設定電圧V1に満たないときハイレベルの信号S3をアンドゲート421へ出力する。
【0072】
基準電圧源E3は、例えば制御電源E2の出力電圧を抵抗分圧することで基準電圧を生成してもよく、基準電圧を生成する定電圧回路であってもよい。設定電圧V1は、電源電圧Vinが141Vのとき、例えば50Vに設定されている。
【0073】
アンドゲート421は、制御信号S1と信号S3とを論理積した制御信号S1aを、ゲートドライバー412へ出力する。これにより、電圧Vsが設定電圧V1を超えたとき、コンパレーター422からローレベルの信号S3がアンドゲート421へ出力され、強制的に制御信号S1aがローレベルにされる。その結果、ゲートドライバー412によって、スイッチング素子Q1が強制的にオフされる。
【0074】
次に、このように構成された誘導加熱装置40の動作について説明する。図4は、図2に示す誘導加熱装置40の正常動作時における、ゲート信号G1,G2、電圧Vs、及び励磁コイル531に流れるコイル電流ILを示す信号波形図である。横軸は時間経過を示している。
【0075】
図4において、ゲート信号G1がハイレベル(H)のときスイッチング素子Q1がオンし、ゲート信号G1がローレベル(L)のときスイッチング素子Q1がオフすることを示している。また、ゲート信号G2がハイレベル(H)のときスイッチング素子Q2がオンし、ゲート信号G2がローレベル(L)のときスイッチング素子Q2がオフすることを示している。
【0076】
以下、説明を簡単にするため、マイクロコントローラー411、ゲートドライバー412、及びブートストラップ回路413の個別の動作説明を省略し、制御部41がゲート信号G1,G2を出力することによって、スイッチング素子Q1,Q2のオン、オフを制御するものとして説明する。
【0077】
制御部41は、共振周波数frの逆数として得られる共振周期Tcycの1/2より短いオン時間Tonと、デッドタイムTdとを加えた時間であるスイッチング周期Tsw毎に、オン時間Tonの間、スイッチング素子Q1をオンさせスイッチング素子Q2をオフさせる第2処理(タイミングt1〜t2)と、オン時間Tonの間、スイッチング素子Q1をオフさせスイッチング素子Q2をオンさせる第1処理(タイミングt3〜t4)とを交互に実行する。
【0078】
制御部41は、第1処理と第2処理との間に、スイッチング素子Q1,Q2を両方ともオフさせるデッドタイムTdを設けることによって、スイッチング素子Q1,Q2が同時にオンして短絡電流が流れることを防止している。また、制御部41は、オン時間Tonを増減することによって、励磁コイル531に供給される電力量を調整する。
【0079】
次に、誘導加熱装置40の共振動作について説明する。まず、制御部41は、タイミングt3において、ゲート信号G1をローレベル、ゲート信号G2をハイレベルにしてスイッチング素子Q1をオフ、スイッチング素子Q2をオンさせる。そうすると、図5において電流I1で示すように、電源部E1からスイッチング素子Q2、励磁コイル531、及びキャパシターC1へ電流が流れ、電流共振が開始される。
【0080】
次に、タイミングt3からオン時間Tonが経過したタイミングt4において、制御部41は、スイッチング素子Q2をオフする。そうすると、図6において電流I2で示すように、励磁コイル531の逆起電力によって、ダイオードD1の順方向に電流I2が流れる。このとき、電圧Vsは、ダイオードD1の順方向電圧に等しいから、ほぼゼロに近い0.7V程度となっている。
【0081】
次に、タイミングt4からデッドタイムTdが経過したタイミングt5において、制御部41は、ゲート信号G1をハイレベル、ゲート信号G2をローレベルにしてスイッチング素子Q2をオフにしたまま、スイッチング素子Q1をオンさせる。そうすると、スイッチング素子Q1は、電圧Vsがほぼゼロの状態でオンされるソフトスイッチングとなる結果、スイッチング素子Q1での電力損失が低減され、かつスイッチング素子Q1が劣化したり損傷したりするおそれが低減される。
【0082】
このように、ダイオードD1に順方向電流が流れて電圧Vsがほぼゼロになっているときに、スイッチング素子Q1をオンさせるように、スイッチング周期Tsw、オン時間Ton、及びデッドタイムTdが予め設定されている。オン時間Tonは、共振周期Tcycの1/2より短い時間となっている。
【0083】
また、タイミングt5においては、電圧Vsは設定電圧V1に満たないから、コンパレーター422は、ハイレベルの信号S3をアンドゲート421へ出力する。その結果、アンドゲート421からは制御信号S1と同じ信号が制御信号S1aとしてゲートドライバー412へ出力されるので、スイッチング素子Q1が強制オフ部42によって強制的にオフされることはない。
【0084】
タイミングt5とタイミングt1とは同じ動作なので、以下、タイミングt5以降の動作はタイミングt1〜t3の信号波形を参照しつつ、説明する。タイミングt1(t5)以降、励磁コイル531とキャパシターC1との共振による電流I2が流れ、所定時間が経過すると、二次共振によって流れる電流の方向が反転する。このとき、既にスイッチング素子Q1がオンしているので、図7に示す電流I3が、スイッチング素子Q1を流れる。
【0085】
そして、タイミングt1からオン時間Tonが経過したタイミングt2において、制御部41は、ゲート信号G1をローレベルにしてスイッチング素子Q1をオフさせる。そうすると、共振電流はスイッチング素子Q1を流れることができず、図8に電流I4として示すように、共振電流がダイオードD2を流れる。このとき、スイッチング素子Q2の両端子間の電圧は、ダイオードD2の順方向電圧に等しいから、ほぼゼロに近い0.7V程度となっている。
【0086】
次に、タイミングt2からデッドタイムTdが経過したタイミングt3において、制御部41は、ゲート信号G2をハイレベルにしてスイッチング素子Q1をオフにしたまま、スイッチング素子Q2をオンさせる。そうすると、スイッチング素子Q2は、端子間電圧がほぼゼロの状態でオンされるソフトスイッチングとなる結果、スイッチング素子Q2での電力損失が低減され、かつスイッチング素子Q2が劣化したり損傷したりするおそれが低減される。
【0087】
このように、スイッチング素子Q2に対しても、ダイオードD2に順方向電流が流れてスイッチング素子Q2の両端子間の電圧がほぼゼロになっているときに、スイッチング素子Q2をオンさせるように、スイッチング周期Tsw、オン時間Ton、及びデッドタイムTdが予め設定されている。
【0088】
以後、上述したタイミングt3以降の動作が繰り返される。図4において、タイミングt3〜t4の処理が、第1処理の一例に相当し、タイミングt1〜t2の処理が、第2処理の一例に相当している。
【0089】
図9は、共振周波数frの変動等のため、オン時間Tonが共振周期Tcycの1/2より長くなった場合の課題を説明するための説明図である。図9においては、誘導加熱装置40が強制オフ部42を備えていない場合についての動作を説明している。
【0090】
まず、図4のタイミングt3と同様、図9のタイミングt13において、制御部41は、ゲート信号G1をローレベル、ゲート信号G2をハイレベルにしてスイッチング素子Q1をオフ、スイッチング素子Q2をオンさせる。そうすると、図5において電流I1で示すように、電源部E1からスイッチング素子Q2、励磁コイル531、及びキャパシターC1へ電流が流れ、電流共振が開始される。
【0091】
ここで、タイミングt13から共振周期Tcycの1/2が経過(タイミングt16)し、その後にタイミングt13からオン時間Tonが経過したタイミングt14において、制御部41は、スイッチング素子Q2をオフする。
【0092】
そうすると、図6において電流I2で示すように、励磁コイル531の逆起電力によって、ダイオードD1の順方向に電流I2が流れるのであるが、共振周期の開始に相当するタイミングt13から既に共振周期Tcycの1/2が経過しているため、デッドタイムTdが経過する前に、共振電流の向きが反転し、図8に示す電流I4がダイオードD2を流れ始める。そうすると、電圧Vsは、電源部E1の電源電圧Vin(=141V)に向かって上昇し、高電圧となる。
【0093】
この状態でデッドタイムTdが経過し、タイミングt15になると、制御部41は、ゲート信号G1をハイレベルにしてスイッチング素子Q1をオンさせる。そうするとスイッチング素子Q1は、高電圧が両端子間に印加された状態でオンするいわゆるハードスイッチングとなる。そのため、スイッチング素子Q1が損傷するおそれがある。
【0094】
同様に、タイミングt11〜t12におけるオン時間Tonが共振周期Tcycの1/2より長くなると、タイミングt13において、スイッチング素子Q2がハードスイッチングされて、損傷するおそれがある。
【0095】
図10は、スイッチング周期Tswの2倍の逆数であるスイッチング周波数fs(=1/(2×Tsw))と、励磁コイル531へ供給される電力すなわち定着装置28の発熱量との関係の一例を示すグラフである。
【0096】
図10の横軸はスイッチング周波数fsを示し、縦軸は励磁コイル531へ供給される電力を示している。また、励磁コイル531のインダクタンスを30μH、キャパシターC1の静電容量を0.68μFとしている。そうすると、共振周波数frは、約35kHzとなる。
【0097】
図10に示すように、スイッチング周波数fsと、励磁コイル531へ供給される電力との関係は、電源電圧Vinによって変化する他、ベルト263の温度によっても変化する。また、共振周波数frも、励磁コイル531及びキャパシターC1の部品特性のばらつき、組み立てばらつき、及びベルト263の温度の影響を受けて変化する。
【0098】
スイッチング周波数fsが共振周波数frよりも低くなると、オン時間Tonが共振周期Tcycの1/2より長くなって、ハードスイッチングを生じるおそれがある。従って、スイッチング周波数fsが、共振周波数frのばらつき範囲、例えば34kHz〜36kHzの範囲と重ならない範囲にスイッチング周波数fsを設定する必要がある。
【0099】
上述のような特性ばらつき等を含めてスイッチング周波数fsが、共振周波数fr以下にならないようにするには、共振周波数frよりもスイッチング周波数fsが充分大きくなるように、充分大きなマージンをとればよい。
【0100】
しかしながら、図10に示すように、スイッチング周波数fsが小さく、共振周波数frに近い方が、励磁コイル531へ供給される電力が大きくなる。したがって、共振周波数frよりもスイッチング周波数fsが大きくなるように大きなマージンをとると、誘導加熱装置40が定着装置28を加熱する性能が低下することになる。
【0101】
そこで、誘導加熱装置40は、強制オフ部42を備えることで、スイッチング周波数fsを、共振周波数frに近いぎりぎりの周波数に設定することが容易にされている。これにより、定着装置28の発熱量を増大することが容易となる。
【0102】
図11は、図2に示す誘導加熱装置40の動作を説明するための信号波形図である。横軸は時間の経過を示している。タイミングt1〜t3の動作は、図4に示したタイミングt1〜t3と同様であるのでその説明を省略する。
【0103】
そして、部品の特性ばらつきや温度の影響などによって、共振周期Tcycの1/2がオン時間Tonより短くなると、タイミングt3から共振周期Tcycの1/2が経過し、その後にタイミングt3からオン時間Tonが経過したタイミングt4において、マイクロコントローラー411は、制御信号S2をローレベルにしてスイッチング素子Q2をオフする。
【0104】
そうすると、図6において電流I2で示すように、励磁コイル531の逆起電力によって、ダイオードD1の順方向に電流I2が流れるのであるが、共振周期の開始に相当するタイミングt3から既に共振周期Tcycの1/2が経過しているため、デッドタイムTdが経過する前に、共振電流の向きが反転し、図8に示す電流I4がダイオードD2を流れ始める。そうすると、電圧Vsは、電源部E1の電源電圧Vin(=141V)に向かって上昇し、高電圧となる。
【0105】
この状態でデッドタイムTdが経過し、タイミングt5になると、マイクロコントローラー411は、制御信号S1をハイレベルにしてスイッチング素子Q1をオンしようとする。しかしながら、タイミングt5においては、電圧Vsは設定電圧V1(=50V)を超えているから、コンパレーター422は、ローレベルの信号S3をアンドゲート421へ出力する。その結果、アンドゲート421から出力される制御信号S1aはローレベルにされてゲートドライバー412へ出力される。
【0106】
その結果、マイクロコントローラー411の動作にかかわらず、スイッチング素子Q1は強制的にオフ状態に維持される。これにより、スイッチング素子Q1がハードスイッチングすることが防止されるので、スイッチング素子Q1が損傷するおそれが低減される。
【0107】
さらに、上述したように、スイッチング素子Q1がオンしたときに、キャパシターCbが制御電圧15Vに充電される。そして、ゲートドライバー412は、ブートストラップ回路413の接続点P2の電圧をスイッチング素子Q2に印加することにより、制御電圧15Vをスイッチング素子Q2のエミッタ、ベース間に印加してスイッチング素子Q2をオンさせるようになっている。
【0108】
そのため、強制オフ部42によってスイッチング素子Q1がオフ状態に維持されると、キャパシターCbが充電されないまま、キャパシターCbが例えば抵抗R1,R2等から放電することで、キャパシターCbの両端子間の電圧がスイッチング素子Q2をオンさせるために必要な電圧を下回る。その結果、ゲートドライバー412は、スイッチング素子Q2をオンさせることができなくなり、スイッチング素子Q2がオフする。
【0109】
このように、強制オフ部42がスイッチング素子Q1を強制的にオフさせることによって、スイッチング素子Q2もまたオフする結果、スイッチング素子Q1,Q2でハードスイッチングが生じるおそれを低減できる。
【0110】
なお、強制オフ部42を低電圧側のスイッチング素子Q1に対してのみ設ける例を示したが、強制オフ部42を高電圧側のスイッチング素子Q2に対しても設けてもよい。そして、スイッチング素子Q2の両端子間電圧が設定電圧V1を超えたとき、強制的にスイッチング素子Q2をオフさせるようにしてもよい。
【0111】
なお、図12に示す誘導加熱装置40aのように、スイッチング素子Q2と励磁コイル531との直列回路と並列に、キャパシターC2を設けてもよい。キャパシターC2はキャパシターC1と略同一の静電容量にされている。これにより、電源電圧VinがキャパシターC1,C2で分圧されて、その分圧された電圧が励磁コイル531の一端に印加されることで、共振の安定性が向上する。
【0112】
また、スイッチング素子Q1と並列に接続されたキャパシターC3と、スイッチング素子Q2と並列に接続されたキャパシターC4とをさらに備えてもよい。これにより、共振の安定性が向上する。
【0113】
なお、図12に示す誘導加熱装置40aにおいて、キャパシターC2を備えない構成としてもよく、キャパシターC3,C4を備えない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 画像形成装置
2 本体部
3 スタックトレイ
18 原稿搬送機構
21 画像形成部
22 感光体ドラム
23 光学ユニット
24 現像部
25 転写部
26 ベルトユニット
27 加圧ローラ
28 定着装置
29 排出トレイ
30,31 搬送ローラ対
32 用紙搬送路
38 搬送ローラ対
40,40a 誘導加熱装置
41 制御部
42 強制オフ部
200 プラットフォーム
201 コイル支持部
261,262 ローラ
263 ベルト
411 マイクロコントローラー
412 ゲートドライバー
413 ブートストラップ回路
421 アンドゲート
422 コンパレーター
530 コイルユニット
531 励磁コイル
533 サイドコア
534 アーチコア
535 センタコア
538 導電性シャフト
539 磁性筒
B1,B2 バッファ
C1,C2,C3,C4,Cb キャパシター
D1,D2,D3 ダイオード
E1 電源部
E2 制御電源
E3 基準電圧源
fr 共振周波数
fs スイッチング周波数
G1,G2 ゲート信号
IL コイル電流
P 用紙
Q1,Q2 スイッチング素子
R1,R2,Rb 抵抗
S1,S1a,S2 制御信号
S3 信号
SW1,SW2 スイッチング素子
Tcyc 共振周期
Td デッドタイム
Ton オン時間
Tsw スイッチング周期
V1 設定電圧
Vin 電源電圧
Vs 電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが直列に接続された第1直列回路と、
前記第1直列回路の両端間に、予め設定された電源電圧を印加する電源部と、
被加熱体を電磁誘導により加熱する励磁コイルと第1キャパシターとの直列回路であって、かつ前記第1スイッチング素子と並列に接続された第2直列回路と、
前記第1スイッチング素子と並列に、前記電源電圧に対して逆方向となる向きに接続された第1ダイオードと、
前記第2スイッチング素子と並列に、前記電源電圧に対して逆方向となる向きに接続された第2ダイオードと、
前記第2直列回路によって生じる共振の共振周期の1/2より短いオン時間と前記第1及び第2スイッチング素子を共にオフさせるべき時間として予め設定されたデッドタイムとを加えた時間であるスイッチング周期毎に、前記オン時間の間前記第1スイッチング素子をオフさせ前記第2スイッチング素子をオンさせる第1処理と、前記オン時間の間前記第1スイッチング素子をオンさせ前記第2スイッチング素子をオフさせる第2処理とを交互に実行することによって、電流共振を生じさせる制御部と、
前記第1スイッチング素子の両端間の電圧が、予め設定された設定電圧を超えているとき、前記制御部の処理に関わらず強制的に前記第1スイッチング素子をオフさせる強制オフ部とを備える誘導加熱装置。
【請求項2】
前記第2スイッチング素子は、
前記第1直列回路において、前記第1スイッチング素子よりも高電位側に配置されており、前記第2スイッチング素子のオン、オフを制御するための制御端子を備え、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点と前記制御端子との間に、所定の制御電圧以上の電圧が印加されたときにオンするスイッチング素子であり、
前記制御部は、
起動用キャパシターと第3ダイオードと抵抗とが直列接続されたブートストラップ回路と、
前記制御電圧以上の出力電圧を出力端子から出力する制御電源とを備え、
前記起動用キャパシターの一端が前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点に接続され、前記起動用キャパシターの他端が前記第3ダイオードのカソードに接続され、前記第3ダイオードのアノードが前記抵抗を介して前記出力端子に接続され、
前記制御部は、
前記起動用キャパシターに充電された充電電圧を前記制御端子に印加することによって、前記第2スイッチング素子をオンさせる請求項1記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記第2スイッチング素子と前記励磁コイルとの直列回路と並列に接続された第2キャパシターをさらに備える請求項1又は2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子と並列に接続された第3キャパシターと、
前記第2スイッチング素子と並列に接続された第4キャパシターとをさらに備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱装置と、
トナー像が形成された用紙を加熱することにより、前記トナー像を前記用紙に定着させる前記被加熱体としての加熱部材とを備える定着装置。
【請求項6】
請求項5記載の定着装置と、
前記用紙にトナー像を形成する画像形成部とを備え、
前記加熱部材は、
前記画像形成部によって前記トナー像が形成された用紙を加熱することにより、前記トナー像を前記用紙に定着させる画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−209055(P2012−209055A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72494(P2011−72494)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】