誘導補助的な製造法
繊維複合材料からの成形体の製造法に際して、ストリップ状の、強化繊維および熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する出発材料(1)を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く。流入する出発材料(1)を、通過する樹脂に交流磁場を導入することによって加熱する。そのために出発材料(1)の樹脂を、交流磁場にカップリングする超常磁性粒子と混合する。加熱された出発材料(1)を、継続して成形体に形作り;かつ該樹脂を成形体中で硬化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリップ状の、強化繊維および熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く、特許請求項1の上位概念の工程を有する、繊維複合材料からの成形体の製造法、ならびに特許請求項16の上位概念の特徴を有する、出発材料として使用するための半製品またはそのような製造法にて中間生成物として得られる半製品に関する。
【0002】
本発明による製造法および本発明による半製品は、繊維複合材料からの完成した成形体のマトリックスを形成する熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂から出発してよい。すなわち、該樹脂は成形体中で、化学的に、殊に架橋によって、および/または温度低下に基づく固化によって硬化し得る。ここで"熱可塑性樹脂"との用語は、"熱可塑性物質"および"熱可塑性プラスチック"との用語と同じ意味で用いられる。
【0003】
従来技術
ストリップ状の強化繊維を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは引き抜く、繊維複合材料からの成形体のための製造法は、引抜成形または押出との名称でも公知である。この従来技術の場合、概して、乾燥強化繊維からの出発材料が準備され、該強化繊維は、樹脂に含浸するために樹脂槽に導かれる。このようにして準備された出発材料は、次いで成形用金型(Formwerkzeug)に供給され、その際、該出発材料は連続的な流入において形作られ、その樹脂成分が硬化される。該成形用金型から、製造される成形体がエンドレス異形材の形で流出し、次いで該異形材は所望の長さの断片に区分される。その際、出発材料に対する前方への引抜力は、引抜ツールによってエンドレス異形材の領域中で適用される。引抜成形の一変法は、出発材料としてプリプレグと呼ばれる半製品から出発され、該半製品は、強化繊維および樹脂を有し、該樹脂は、該プリプレグの成形用金型内への取入前に進行の過程で加熱装置によって少なくとも予備加熱される。該樹脂を硬化するためのさらなる加熱を、該成形用金型内で行うことが出来る。現在、用いられている引抜成形の場合、出発材料は、赤外線放射、裸火、熱風またはホット不活性ガスによって成形用金型の上流で加熱される。金型内での加熱は、その部分が、ヒータカートリッジ、水または誘導コイルによって加熱される該金型を介して行われる。
【0004】
JP63035334Aは、外側の電磁コイルによって、形状付与する該成形用金型の内部コアを誘導加熱することによる、引抜成形機の成形用金型の前方領域中での出発材料の加熱を開示する。付加的に、該金型の後方部分の加熱が電気加熱器によって行われる。そのため、最終的に出発材料は、成形用金型との接触によって内側および外側から加熱される。
【0005】
ストリップ状の、強化繊維および熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く、繊維複合材料からの成形体の製造法には、テープ敷設法(Tapelegen)およびテープ巻き取り法(Tapewickeln)も含まれる。この場合、これまで基本的に、出発材料を加熱するために、(成形用金型の上流で引抜成形に際しての加熱について上記したように)同じ技術が用いられる。付加的に、出発材料は、この製造法の場合、それを敷設もしくは巻き取る成形体の部分上で"アイロン仕上げ"されていてよく、その際、該出発材料は、高温成形用金型で加圧または押圧される。
【0006】
ストリップ状の出発材料に基づく繊維複合材料からの成形体の製造に際して出発材料を加熱する上述の全ての方法は、該出発材料を、高められた温度へと素早く加熱することが出来ないにも関わらず、制御することが出来ないという欠点と結び付いており、例えば、該方法は、PEEKのような高価な熱可塑性樹脂を、これらから経済性に優れた高い速度で成形体を形成するために必要とする。これらの全ての技術は、高い加熱速度で加熱するために非常に高い接触温度を必要とし、それは出発材料の損傷の危険と直に結び付いている。
【0007】
独立請求項1の上位概念の特徴を有する製造法は、DE2603540A1から公知である。この場合、60Hz〜5MHzの、殊に1KHz〜2MHzの範囲内の交流磁場が、導電性強化繊維がその中に存在する出発材料中に導入される。該交流磁場は、導電性強化繊維中で渦電流を引き起こし、該渦電流は、該強化繊維の電気抵抗に基づき、該強化繊維の誘導加熱ひいては該強化繊維を有する出発材料の誘導加熱をもたらす。しかしながら、公知の製造法は、該交流磁場の非常に高い周波数を、複数の互いに電気的接触する強化繊維を超えて渦電流が引き起こされ得ない限りにおいて、これを効果的に僅かな直径の導電性強化繊維に導入するために必要とすることが明らかになっている。複数の強化繊維を飛び超えるこの種の渦電流は、しかしながら一方向に配置された強化繊維(例えば、引抜成形法の場合に頻繁に用いられる)の場合、ほとんど現実的ではない。しかし、交流磁場の高い周波数により、出発材料中への該交流磁場の侵入深さが僅かになるので、これを大量に加熱することが困難となる。極めて基本的に、DE2603540から公知の製造法は、強化繊維の選択に際して、その電気伝導特性を考慮する必要があり、このことは、それとは別に所望された、製造される成形体の特性を達成するために強化繊維を選択する際に自由度を強く制限する。
【0008】
DE3880716T2から、伝導性繊維、例えば炭素繊維によって強化されている熱可塑性層を、該繊維中で電流を誘導するために交流磁場を該繊維中にカップリングすることによって結合することが公知である。該電流は伝導性繊維の抵抗によって熱に変換され、該熱は熱可塑性層の樹脂成分に伝達される。該電流の誘導は、1MHz以上の交流磁場の比較的大きい周波数の場合に初めて起こり、かつ該誘導には、該繊維にわたって渦電流が流れ得るように、一方向に延びる複数の層の伝導性繊維が種々の方向に延びていることが要求される。通例、しかし、冒頭に記載された種類の方法の出発材料の場合、該強化繊維は、ただ一層で一方向配向により該出発材料の流れ方向においてしか存在しない。そのうえ、該強化繊維を介した樹脂の加熱も同様に、該樹脂に供給されるべき全体の熱が、外側から、すなわちこの場合、伝導性繊維から該樹脂に伝達されなければならないという欠点と結び付いている。これは、制御された、かつ損傷を与えない条件下で可能である可能な加熱速度を限定する。
【0009】
特許請求項16の上位概念の特徴を有する半製品は、DE69225480T2から公知である。この場合、該半製品は導電性強化繊維を有し、しかし、該導電性強化繊維は、まさに導入される交流磁場にカップリングされることにはなっていない。むしろ、このために該半製品の樹脂は、交流磁場の導入に際して選択加熱材料として用いられるべき磁性粒子と混合されている。該磁性粒子は磁性酸化物から成っていてよい。磁性粒子は、該磁性粒子のキュリー温度が、該樹脂の溶融温度または硬化温度に達するまで達しないように形成される。なぜなら、キュリー温度以上では、カップリングされた交流磁場に基づき、本質的な加熱がもはや行われないことが仮定されるからである。公知の半製品の樹脂は、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、すなわち公知の高温熱可塑性樹脂であってよい。ストリップ状の、強化繊維および樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く製造法、または相応するストリップ状の出発材料は、この場合、言及されないか、または上記以外の方法が考慮される。
【0010】
基本的にWO02/12409からは、接着剤組成物を、強磁性、フェリ磁性、超常磁性または圧電性の特性を有するナノスケール粒子と混合し、そうして、該接着剤組成物が交流磁場のカップリングに際して、熱可塑性接着剤の場合、熱可塑性バインダの軟化点に達するかもしくは超過するように、かつ反応性接着剤の場合、該バインダの反応性基によるバインダマトリックスの架橋が行われる温度に達するように加熱されることが公知である。超常磁性粒子は、いわゆる"単磁区粒子"である。常磁性粒子と比較して、これはヒステリシスを示さないことを特徴とする。これは、カップリングされる交流磁場のエネルギー散逸が磁気ヒステリシス損失によって引き起こされるのではなくて、発熱が、交流磁場の作用中に誘起される、周囲マトリックス中の粒子の振動または回転運動ひいては最終的に機械的摩擦損失に帰する結果となる。これは、該粒子および該粒子を取り囲むマトリックスのとりわけ効果的な加熱速度をもたらす。WO02/12409は、繊維複合材料からの成形体の製造、殊に、ストリップ状の、強化繊維および樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く製造法に関するものではない。
【0011】
本発明の課題
本発明の基礎を成している課題は、高い温度に加熱されなければならない樹脂を使用する場合にも、出発材料の強化繊維の熱損傷の危険が存在することなく、高い製造速度を可能にする、特許請求項1の上位概念の工程を有する繊維複合材料からの成形体の製造法および特許請求項16の上位概念の特徴を有する半製品を示すことである。
【0012】
解決策
該課題は、本発明により、特許請求項1の特徴を有する製造法および特許請求項16の特徴を有する半製品によって解決される。従属請求項2〜15は、新規の該製造法の有利な実施態様に関し、他方で、従属請求項17〜22は、新規の該半製品の有利な実施態様に関する。
【0013】
本発明の詳細な説明
新規の製造法の場合、素早く通過する出発材料が、樹脂中への交流磁場のカップリングによって加熱される。これによって、該樹脂を非常に素早く、しかし、同時に制御して、かつ均一に加熱することが可能であるので、これは高い送り速度でも理想的な状態で成形体に形作られる。この結果、成形体中の樹脂が硬化されている場合、該成形体の高い品質が得られる。殊にこれは、高融点熱可塑性樹脂、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリフェニレンスルフィド(PPS)のような、250℃より高い温度で初めて溶融する樹脂の使用下での、繊維複合材料からの成形体の製造に関して適用される。新規の製造法の場合、交流磁場が樹脂中に選択的にカップリングされることにより、強化繊維は熱負荷されないか、または僅かにしか熱負荷されない。高い速度で熱可塑性樹脂が処理される場合、該強化繊維は、そのうえさらに目的に合わせて熱緩衝材として利用され得、その際、該強化繊維は、出発材料が所望の成形体に形作られた後に、既にその熱容量により、樹脂の硬化のために該樹脂から取り除かれなければならない該樹脂からの熱の一部を吸収する。次いで樹脂のみが、該樹脂と、出発材料のその他の層またはストリップと持続的に成形体中で結合するために最大温度に達する。
【0014】
交流磁場への出発材料の樹脂の選択的なカップリングを達成するために、該樹脂は、その内部磁場の配向に対して外部交流磁場にカップリングする超常磁性粒子と、磁気誘導による古典的な加熱の場合に見られるような、該粒子の直径と交流磁場の周波数との間の強い相関関係が存在することなく混合されている。それゆえ該粒子は、交流磁場の周波数を特に高めなくても非常に小さくてよく、その際、該粒子は、好ましくは500nm未満の粒度を有する。これによって該粒子は、樹脂中でのそれらの質量割合と比較して、該樹脂へ熱伝達するための非常に大きい表面を有する。
【0015】
とりわけ有利には、超常磁性粒子は、2〜100nmの直径、すなわち、概して50nm未満の一次粒度を有する磁性金属酸化物磁区からの一次粒子、一般に超常磁性の特性を有する非常に小さい磁性粒子を有する。それらは樹脂中への特に高い熱伝達の可能性を提供し、かつ高融点熱可塑性樹脂も溶融するために完全に十分である350〜550℃の比較的高い温度の領域中にまでも及ぶ。
【0016】
該一次粒子は、超常磁性粒子中で、非磁性の金属酸化物マトリックスまたは半金属酸化物マトリックス中に埋め込まれていてよく、該マトリックスによって、それらは溶剤、湿分および樹脂の反応成分に対しても不活性であるように、例えばSiO2からの保護層またはその他の不活性化合物で覆われている。さらにまた、この種の、およびその他の保護層は、該粒子をより簡単に均一に樹脂中に分散させることが出来るように、かつ、例えば粒子からのアグリゲートの形成も防止するために、該粒子と該樹脂との相容性を改善するために準備されていてよい。
【0017】
この種の高度に相容性の超常磁性粒子の場合、該樹脂に、50質量%までの比較的高い割合の磁性粒子も添加してよい。しかし、それらが樹脂の必要な加熱に要求される量の粒子のみが添加されなければならない。個々の場合において、このために超常磁性粒子が0.1質量%またはそれより少しだけ多くても十分であり得る。
【0018】
新規の製造法の場合、強化繊維が、特許請求項1の上位概念に従う通常の製造法の場合にも同様に当てはまるように、出発材料の流れ方向に一方向で延びる場合、それは全く重要ではない。逆にこれは、それどころか、導電性材料、例えば炭素繊維からの強化繊維が使用される場合、強化繊維中への交流磁場の関連したカップリングが行われず、それにより誘導渦電流による強化繊維の関連した加熱も行われないことを保証する。
【0019】
該交流磁場は、新規の製造法の場合、10kHz〜60MHzの周波数で、概して100kHz〜10MHzの周波数で、および好ましくは100kHz〜1MHzの周波数で樹脂中にカップリングされ得る。該周波数は、樹脂の均一な加熱に関して最小コストで最大効果を得るように最適化されているものと理解される。
【0020】
好ましくは、新規の製造法の場合、成形体に形作られた出発材料は冷却される。殊にこれは、新規の製造法の場合に完全に有利である、熱可塑性樹脂を有する出発材料が使用される場合に当てはまる。該成形体中の出発材料の冷却によって、前もって出発材料を成形体に形作るために必要とされた樹脂の塑性が、出発材料を成形体に形作ることにより製造される複合体を定着させるために再び除去される。
【0021】
既に言及したように、熱可塑性樹脂は高温熱可塑性物質であってよく、かつ殊にポリエーテルケトンまたはポリフェニレンスルフィドから成っていてよい。
【0022】
本発明の実施のために適している、さらに別の熱可塑性樹脂ならびに超常磁性粒子は、WO2007/042368A2の中で開示されており、該文献は全面的に引用される。
【0023】
具体的な一実施態様において、新規の製造法の場合、出発材料は引抜成形プロセスにおいて成形体に形作ることができる。その際、交流磁場は、成形用金型の上流で直接に出発材料中にカップリングされ得るので、該出発材料は、それが成形用金型に入る前に加熱される。
【0024】
新規の製造法のその他の具体的な一実施態様において、出発材料はテープ敷設法において、既に存在する成形体の部分に対して形作られる。その際、交流磁場は、ガイドローラと、出発材料のための冷却された加圧ツールとの間の領域内で出発材料中にカップリングしてよい。この新規のテープ敷設プロセスの場合、つまり、出発材料は該加圧ツールで既に再び冷却されるので、既に存在する成形体の部分は全体的に比較的低い温度で存在する。この結果、既に存在する成形体の部分は形状安定性である。
【0025】
新規の製造法のその他の具体的な一実施態様の場合、出発材料は巻き取りプロセスにおいて、既に存在する成形体の部分上に巻き取られる。その際、理論的には、ロービングガイドが、既に存在する成形体の部分の周りを移動する。概して、しかし既に存在する成形体の部分は回転される。その際、交流磁場は、ロービングガイドと、この場合も同様に出発材料のための冷却された加圧ツールとの間の領域内で出発材料中にカップリングされ得る。
【0026】
新規の製造法が実施可能である、繊維複合材料からの成形体の製造装置は、交流磁場を、通過する出発材料の樹脂中にカップリングするための加熱装置を有する。
【0027】
好ましくは、交流磁場を生成するために交流発電機が準備されており、該交流発電機は、加熱装置の誘導コイルによって100kHz〜1MHzの周波数を有する交流を生成する。
【0028】
該製造装置は、加熱装置の他に、好ましくは、成形体に形作られる出発材料を冷却するための冷却装置を有する。
【0029】
具体的には、該製造装置は引抜成形機であってよい。その際、加熱装置は、出発材料のための成形用金型の上流に準備されていてよい。
【0030】
該製造装置はテープ敷設装置であってもよく、その際、加熱装置は、ガイドローラと、出発材料のための冷却された加圧ツールとの間の領域内に準備されていてよい。
【0031】
さらに別の具体的な一実施態様において、該製造装置はテープ巻き取り装置である。この場合、加熱装置は、ロービングガイドと、出発材料のための冷却された加圧ツールとの間の領域内に準備されていてよい。
【0032】
新規の製造法の全ての実施態様において、出発材料を、まず乾燥強化繊維と、そのつどの樹脂とから形成するために、付加的な工程が準備されていてよく、該樹脂中に該強化繊維は、例えば液体樹脂で充填されている槽を通して供給される。反対に、出発材料は、既に樹脂で含浸されている、いわゆるプリプレグであってもよい。
【0033】
本発明による製造法の場合の出発材料として使用するために予定されるか、または中間生成物として本発明による方法に際して得られる本発明による半製品は、該製品が、主たる伸長方向で延長するストリップであり、かつ磁性粒子は、熱可塑性樹脂に添加されている超常磁性粒子である。本発明による半製品のこれらの特徴およびさらに別の有利な特徴は、本発明による方法と関連して上記で詳細に説明されている。
【0034】
本発明の好ましいさらなる態様は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面から明らかとなる。発明の詳細な説明の導入部で挙げられた特徴の利点および複数の特徴を組み合わせた利点は、単に例示的なものに過ぎず、かつ該利点は本発明による実施態様を得るのに必然的なものではなく、代替的または蓄積的にもたらされ得る。さらなる特徴は図面の中から−殊に図示された幾何学的形状および複数のコンポーネント相互の相対寸法ならびに該コンポーネントの相対的な配置および連動から−読み取られる。本発明の種々の実施態様の特徴または種々の特許請求の範囲の特徴を組み合わせたものも同様に、該特許請求の範囲の選択された基準とは別様にも可能であり、かつ、これにより提案される。これは別個の図面で示されている特徴またはその詳細な説明の中で挙げられる特徴にも関する。これらの特徴は、種々の特許請求の範囲の特徴とも組み合わせられ得る。同様に、本発明のさらなる実施態様に関して、特許請求の範囲の中で列挙された特徴が省略されていてもよい。
【0035】
以下で本発明を、具体的な実施例を手掛かりにして、添付図面を引き合いに出しながら、詳細に説明および記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1 処理される出発材料の流れ方向に沿った概略的な縦断面図におけるテープ敷設装置の第一の実施態様の基本構造を示す図
【図2】概略的な縦断面図におけるテープ敷設装置の第二の実施態様を示す図
【図3】概略的な縦断面図におけるテープ敷設装置の第三の実施態様を示す図
【図4】概略的な縦断面図におけるテープ敷設装置の第四の実施態様を示す図
【図5】処理される出発材料の流れ方向に沿った概略的な縦断面図におけるテープ巻き取り装置の第一の実施態様を示す図
【図6】概略的な縦断面図におけるテープ巻き取り装置の第二の実施態様を示す図
【図7】概略的な縦断面図におけるテープ巻き取り装置の第三の実施態様を示す図
【図8】処理される出発材料の流れ方向に沿った概略的な縦断面図における引抜成形機の第一の実施態様を示す図
【図9】概略的な縦断面図における引抜成形機の第二の実施態様を示す図
【図10】概略的な縦断面図における引抜成形機の第三の実施態様を示す図
【図11】磁場をUD−カーボンプリプレグの樹脂中にカップリングする加熱装置の電力の機能として磁性ナノ粒子が部分的に富化された熱可塑性UD−カーボンプリプレグに関する加熱曲線のプロットを示す図
【0037】
図面の詳細な説明
図1の中で概略的に示されるテープ敷設装置は、ストリップ状の出発材料1からの成形体を製造するために用いられる。出発材料1は、テープ敷設装置中で該出発材料の流れ方向10に一方向で延びる強化繊維および熱可塑性樹脂を有する。図1に記載のテープ敷設装置により、出発材料1は層状に成形用金型7に施与される。その際、出発材料1の第一の層のみが成形用金型7に直接に接する。出発材料1のさらに別の層は、成形用金型7の上に既に存在する、所望の成形体の部分6に施与される。その際、新しく施与された出発材料1と部分6との間の持続的な結合を形成するために、出発材料1は、まず予備加熱装置2の中で加熱される(この場合、該装置2は電気加熱器を有するものと示唆される)。しかしながら、所望の成形体の仕上がった部分6との持続的な結合部を製造するために必要とされる接合温度への出発材料1の加熱は、ローラガイド3に引き続き加熱装置5(この場合、出発材料1のためのレイアップロール(Ablegewalze)4と組み合わせられている)で初めて引き起こされる。具体的に、加熱装置5は、レイアップロール4の内部に配置された誘導コイル16を有する。ここでは図示されていない交流発電機は、交流を誘導コイル16によって生成する。結果生じる交流磁場が、出発材料1の樹脂中にカップリングされる。このカップリングと、これから結果生じる樹脂の加熱を促進するために、出発材料1の樹脂は超常磁性粒子と混合される。これにより、出発材料1の樹脂を、レイアップロール4によるレイアップ中に非常に素早く、既に存在する所望の成形体の部分6との結合のために十分高い温度に加熱することが可能となる。これ自体は、出発材料1の樹脂が、250℃以上の高い温度で初めて溶融する熱可塑性樹脂である場合に適用される。誘導コイル16の交流磁場の領域に続いて、レイアップされた出発材料1は冷却装置8によりさらに加圧され、その際、既に再びその溶融温度を下回る温度まで冷却され、そうして、より深くに位置する出発材料の層とのその結合が定着する。
【0038】
図2に記載のテープ敷設装置の実施態様と、図1に記載の装置とは、この場合、予備加熱装置2も、出発材料1の樹脂中にその加熱のためカップリングするために交流磁場を生成する誘導コイル16に基づき据え付けられていることによって区別される。
【0039】
図3に記載のテープ敷設装置の実施態様の場合、加熱装置5には、レイアップロール4の外側で、出発材料1の流入の過程において交流磁場を出発材料1の樹脂中に、レイアップロール4と所望の成形体の既に存在する部分6との間のギャップ中にカップリングするさらに別の誘導コイル16が備え付けられている。そのために、レイアップロール4の内側の誘導コイル16は、図1および図2の中の誘導コイルと比べて、いくぶん進入方向10において回転されるので、図3に記載の出発材料1は、既に存在する成形体の部分6との結合領域中にまで延びる、より長い領域にわたって加熱される。
【0040】
図4の中で描写されるテープ敷設装置の場合、再び予備加熱装置2には、電気加熱器が準備されている。この場合、加熱装置5は、レイアップロール4の中の誘導コイル16以外に成形用金型の裏側でさらに別の誘導コイル16を有する。図2および図3に記載の予備加熱装置2の場合にも示されているような、誘導コイル16の対となった配置が、特定の領域での交流磁場の集束を可能にする。その際、図4に記載の配置は、出発材料1が既にレイアップされた層の樹脂も加熱し、このことは新たにレイアップされた出発材料1の密接な結合のために有利であり得る。
【0041】
図5は、本発明のさらなる基本的な実施態様としてのテープ巻き取り装置22の構成を示す。テープ巻き取り装置により、再び強化繊維および熱可塑性樹脂とから成るストリップ状の出発材料1が、ここでは図示されていない回転駆動装置によって軸20の周りを回転する成形用金型に巻き取られる。ストリップ状の出発材料1は、多層状で成形用金型4に巻き取られ、そうして繊維複合材料からの管状の形をした成形体が形成される。出発材料は、プリプレグとして供給ロール9から引き抜かれる。その引張力は、スプリングロード式ダンサーロールによって調整される。引き続き、出発材料は、図5に記載されている通り、電気加熱器が備え付けられている予備加熱装置2を通過する。次いで出発材料は、いわゆるロービングガイド14を貫通する。それに続いて出発材料1は、ここでは出発材料1の樹脂中への電磁交流磁場のカップリングのために誘導コイル16を有する加熱装置5の作用領域中に到達する。金型7もしくはそこで既に存在する所望の成形体の部分上に巻き取られた出発材料は、塑性状態で巻き取られた出発材料と成形体の部分6の残部との結合を定着させる冷却装置8により冷却される。
【0042】
図6の中で描写されるテープ巻き取り装置22の実施態様は、図5に記載の実施態様と比べて、予備加熱装置2の形成の点で変更されている。図6によれば、予備加熱装置2は、出発材料1の樹脂中にカップリングされるべき交流磁場を生成するための2つの誘導コイル16を有する。すなわち、出発材料1の全体的な加熱は、図6によれば、樹脂中への交流磁場のカップリングによって行われる。図7の中で示されるテープ巻き取り装置22の実施態様においては、予備加熱装置2は再び電気加熱器を有する。この場合、予備加熱装置5には、金型7へ出発材料1が流入する領域中で、出発材料1全体に2つの互いに対置する誘導コイル16が備え付けられており、該誘導コイル16は金型7の内部に配置されている。これは基本的に図4に記載のテープ敷設装置の実施態様に相当する。
【0043】
図8は、ストリップ状の出発材料1をエンドレス異形材24に形作り、かつ硬化させる成形引抜機23の第一の実施態様の基本構造を示す。エンドレス異形材24は、切断ツール18により異形材断片25に分けられる。出発材料1は、ここでも再び強化繊維および熱可塑性樹脂とから成る。出発材料は原料リザーバ11から引き抜かれ、その際、出発材料1の種々の層が空間的に組み合わせられ得る。次いで出発材料1はマテリアルガイド12に流入し、その内部で該出発材料は予備加熱装置2を通過する。予備加熱装置2には、この場合、電気加熱器が備え付けられている。その後、出発材料1は成形用金型15に入る。成形用金型15の前方部分には、この場合、加熱装置5に誘導コイル16が準備されている。成形用金型15の後方部分には、冷却装置8が準備されている。成形用金型15から、既にエンドレス異形材24が流出し、該異形材24に対して引取ツール17が作動される。引取ツール17により、流れ方向10における全体的な前方への引き抜き作用が出発材料1に及ぼされる。
【0044】
図9に記載の成形引抜機23の実施態様と、図8に記載のものとの相違点は、この場合、成形用金型15とは別個の、マテリアルガイド12もしくはその中を進む出発材料1全体で互いに対置する2つの誘導コイル16を有する加熱装置5によって示される。
【0045】
図10に記載の成形引抜機23の場合、付加的に予備加熱装置2も誘導コイル16をベースにして組み立てられている。
【0046】
図11は、樹脂に超常磁性粒子を加えなかった場合の熱可塑性UD−カーボンプリプレグに関する加熱曲線25を用いて、交流磁場のカップリングによって、交流磁場の生成のために5kWの出力が使用可能である場合にですら顕著な加熱が得られないことを示している。それに対して、樹脂に超常磁性粒子が添加されている出発材料1に該当する加熱曲線26および27は、基本的に導電性ではあるが、一方向に延び、ひいては交流磁場へのカップリングには適していない炭素繊維に関わらず、交流磁場の効果的なカップリングが行われていることを証明している。このカップリングは、樹脂に添加された磁性粒子により、本来は樹脂を介して、ひいてはまさに該樹脂を溶融するのに必要とされる場所で行われる。加熱曲線27は、加熱曲線25と同じ電磁交流磁場の出力に基づいている。その傾斜、すなわち加熱速度は19ケルビン/秒である。2.5kWの半分の出力に関してプロットされた加熱曲線26は既に9ケルビン/秒の加熱速度に相当する。そのため出発材料1の樹脂は、殊に予備加熱された場合、繊維複合材料としての成形体の製造のために出発材料の続く処理に必要とされるように、カップリングされた交流磁場によって非常に素早く溶融され得る。
【0047】
本発明の実施のために適した樹脂
例えば、適した樹脂はポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド/PPE−ブレンド、ポリカーボネート、ポリエステル、例えばポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリカーボネート/PBT−ブレンドである。
【0048】
ポリアミドとして、まず第一に脂肪族または部分芳香族の単独縮合物および共重縮合物、例えばPA46、PA66、PA68、PA610、PA612、PA614、PA410、PA810、PA1010、PA412、PA1012、PA1212、PA6/6T、PA66/6T、PA6、PA7、PA8、PA9、PA10、PA11およびPA12が考慮に入れられる(ポリアミドの符号は国際的規準に相応し、その際、最初の数字は、出発ジアミンのC原子数を表し、かつ最後の数字はジカルボン酸のC原子数を表す)。1個の数字のみが挙げられる場合、これは、α,ω−アミノカルボン酸から、もしくはそれから誘導されたラクタムから出発していることを意味し;それ以外の点はH. Domininghaus, Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften, 第272頁以下, VDI-Verlag, 1976を参照のこと。とりわけ有利なのは、式
【化1】
[式中、−A−は、−O−、−S−および
【化2】
から選択されている]
の繰り返し単位を含有する芳香族ポリマーである。付加的に、場合により式
【化3】
[式中、−B−=−CO−または−SO2−]の繰り返し単位が含まれていてよい。
【0049】
このための例は、ポリアリーレンエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミドであり、例えばポリエーテルイミド、ならびにその混合物またはその他のポリマーとの混合物である。
【0050】
ポリアリーレンエーテルケトンは、慣例の製造方法において重縮合によって製造される。このいわゆる求核経路の場合、適した有機ジオール化合物が、適した有機ジハロゲン化合物と反応させられる。通常、該反応は、溶剤、例えばジフェニルスルホン中で、固体成分として反応混合物中に存在する、いわゆる補助塩基の使用下で実施される;通常、この場合、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムとからの混合物が、ほぼ化学量論的量で使用される。この製造法は多数の特許出願において記載されており、例えばEP−A−0001879、EP−A−0182648およびEP−A−0244167の中に記載されている。通常、PAEKの製造のために芳香族ジフルオロ化合物およびビスフェノールが使用される;そのため、求核経路に従ったポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の製造に際して、ジオール成分としてヒドロキノンが、ジハロゲン成分として4,4'−ジフルオロベンゾフェノンが使用される。
PAEKは、式
(−Ar−X−)および(−Ar′−Y−)、
[式中、ArおよびAr′は、二価の芳香族基、好ましくは1,4−フェニレン、4,4′−ビフェニレンならびに1,4−、1,5−または2,6−ナフチレンを表す]の単位を含む。Xは電子吸引性基、有利にはカルボニルまたはスルホニルであり、他方でYは、O、S、CH2、イソプロピリデン等のようなその他の基を表す。この場合、基Xの少なくとも50%、有利には少なくとも70%、およびとりわけ有利には少なくとも80%がカルボニル基を表すことが望ましく、他方で、基Yの少なくとも50%、有利には少なくとも70%、およびとりわけ有利には少なくとも80%が酸素から成ることが望ましい。
【0051】
殊に有利な実施態様において、基Xの100%がカルボニル基から成り、かつ基Yの100%が酸素から成る。この実施態様において、PAEKは、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK;式I)、ポリエーテルケトン(PEK;式II)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK;式III)またはポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK;式IV)であってよく、しかしながら、当然、カルボニル基および酸素基のその他の配置も可能である。
【0052】
【化4】
【0053】
一般的に、PAEKは部分結晶性であり、このことは、例えばDSC分析において、オーダーに応じて大抵の場合300℃かまたはそれを超える結晶融点Tmを検出することによって示される。しかしながら、本発明の教示は、非晶質PAEKについても適用可能である。一般的に、スルホニル基、ビフェニレン基、ナフチレン基または嵩高い基Y、例えばイソプロピリデン基が結晶度を低下するものとされる。
【0054】
一般に、適したポリスルホンは、塩基、例えば炭酸ナトリウムの存在下における非プロトン性溶媒中でのビフェノール/ジハロゲンジアリールスルホン−混合物の重縮合によって製造される。ビスフェノールとして、好ましくはビスフェノールA、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルまたはヒドロキノンが使用され、その際、異なるビスフェノールからの混合物も使用してよい。ジハロゲン化合物は、大抵の場合4,4'−ジクロロジフェニルスルホンであり;しかし、その他の全てのジハロゲン化合物も使用してよく、その際、ハロゲンはパラ位のスルホン基によって活性化されている。ハロゲンとして、塩素以外にフッ素も適している。"ポリスルホン"との用語は、通常、"ポリエーテルスルホン"または"ポリフェニレンスルホン"と呼ばれるポリマーも包含する。適したタイプは商業的に入手可能である。
【0055】
ポリフェニレンスルフィドは、高沸点溶剤中で1,4−ジクロロベンゼンと硫化ナトリウムとから製造される。多数の市販タイプが商業的に入手可能である。
【0056】
ポリアミドは公知の方法でテトラカルボン酸またはその無水物およびジアミンとから製造される。テトラカルボン酸および/またはジアミンがエーテル基を含む場合、ポリーテルイミドが生じる。とりわけ適したエーテル基含有テトラカルボン酸は、式Vの化合物である;該化合物から、芳香族ジアミンと一緒に、商業的に入手可能である非晶質ポリエーテルイミドが得られる。
【0057】
【化5】
【0058】
本発明の実施のために適した超常磁性粒子
適した超常磁性粒子は、例えばEP−A−1284485ならびにDE10317067の中で記載され、該文献は全面的に引用される。
【0059】
本発明の場合、超常磁性粒子は樹脂中にナノスケール酸化物粒子の形で存在し、該粒子は、好ましくは均一に分散しており、かつ殊にアグロメレートしていない。殊に、これらの粒子は樹脂中で温度安定性であり、かつ高い温度でもアグロメレートを示さない。さらに、該樹脂のレオロジーを全般的に、そのような粒子の含量とは無関係に制御することが可能である。
【0060】
超常磁性粒子中には、複数の一次粒子がアグリゲートしていてよい。アグリゲート下にあるか、またはアグリゲートとは、成長した一次粒子の三次元構造体と理解され得る。複数のアグリゲートが結合してアグロメレートを生じ得る。これらのアグロメレートは、例えば押出プロセスのような機械的作用によって簡単に再び分離され得る。これとは対照的に、アグリゲートの一次粒子への分解は一般に可能ではない。
【0061】
超常磁性粒子のアグリゲート直径は、有利には100nmより大きく、かつ1μmより小さい。好ましくは、超常磁性粒子のアグリゲートは、少なくとも空間方向で250nmより上回らない直径を有する。
【0062】
磁区とは、空間的に分け隔てられたマトリックス中での領域と理解されるべきである。超常磁性粒子の磁区は、概して2〜100nmの直径を有する。該磁区は非磁性領域も有してよいが、しかし、それは超常磁性粒子の磁性特性に寄与しない。
【0063】
付加的に、超常磁性粒子中には強磁性磁区も存在してよく、該磁区はその大きさに基づき超常磁性を示さず、かつ残留磁気を誘導する。これは体積比飽和磁化の上昇につながる。本発明によれば、超常磁性粒子は、該粒子が添加されている樹脂を、交流磁場によってその硬化温度または溶融温度に高めることが出来るような数の超常磁性磁区を含んでいることが適用される。
【0064】
超常磁性粒子の磁区は、取り囲むマトリックスによって完全に包囲されていてよく、または部分的にだけ包囲されていてよい。部分的に包囲されているとは、個々の磁区がアグリゲートの表面から突出していることを意味する。いずれの場合も、該粒子の超常磁性磁区はアグロメレートしていない。
【0065】
強磁性磁区は、1つ以上の金属酸化物を有してよい。有利には、強磁性磁区は、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、ユーロピウム、イットリウム、サマリウムまたはガドリニウムの酸化物を含んでいる。これらの磁区には、該金属酸化物が一様な変態で存在するか、または種々の変態で存在してよい。とりわけ有利な強磁性磁区は、ガンマ−Fe2O3(γ−Fe2O3)、Fe3O4、ガンマ−Fe2O3(γ−Fe2O3)および/またはFe3O4からの混合物の形の酸化鉄である。
【0066】
さらに強磁性磁区は、金属成分の鉄、コバルト、ニッケル、スズ、亜鉛、カドミウム、マグネシウム、マンガン、銅、バリウム、マグネシウム、リチウムまたはイットリウムを有する、少なくとも2つの金属の混合酸化物として存在していてよい。
【0067】
さらに強磁性磁区は、一般式MIIFe2O4を有する物質であってよく、その際、MIIは、少なくとも2つの互いに異なる二価金属を包含する金属成分である。有利には、二価金属の1つは、マンガン、亜鉛、マグネシウム、コバルト、銅、カドミウムまたはニッケルであってよい。
【0068】
さらに強磁性磁区は、一般式(Ma1-x-y MbxFey)IIFe2IIIO4の三元系から構成されていてよく、その際、MaもしくはMbは、金属のマンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、マグネシウム、バリウム、イットリウム、スズ、リチウム、カドミウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、クロム、バナジウム、ニオブ、モリブデンであってよく、x=0.05〜0.95、y=0〜0.95およびx+y≦1である。
【0069】
とりわけ有利には、ZnFe2O4、MnFe2O4、Mn0.6Fe0.4Fe2O4、Mn0.5Zn0.5Fe2O4、Zn0.1Fe1.9O4、Zn0.2Fe1.8O4、Zn0.3Fe1.7O4、Zn.0.4Fe1.6O4またはMn0.39Zn0.27Fe2.34O4、MgFe2O3、Mg1.2Mn0.2Fe1.6O4、Mg1.4Mn0.4Fe1.2O4、Mg1.6Mn0.6Fe0.8O4、Mg1.8Mn0.8Fe0.4O4であってよい。
【0070】
非磁性マトリックスの金属酸化物の選択は、これ以上は制限されていない。有利には、これらの酸化物は、チタン、ジルコン、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、セリウムまたはスズからのものであってよい。
【0071】
本発明の意味において、半金属酸化物、例えば二酸化ケイ素も金属酸化物に含まれる。
【0072】
さらに、マトリックスおよび/または磁区は、非晶質および/または結晶質で存在していてよい。
【符号の説明】
【0073】
1 出発材料
2 予備加熱装置
3 ローラガイド
4 レイアップロール
5 加熱装置
6 製造されるべき成形体の部分
7 金型
8 冷却装置
9 供給ロール
10 流れ方向
11 原料リザーバ
12 マテリアルガイド
13 ダンサーロール
14 ロービングガイド
15 成形用金型
16 誘導コイル
17 引抜ツール
18 切断ツール
19 異形材断片
20 軸
21 テープ敷設装置
22 テープ巻き取り装置
23 成形引抜機
24 エンドレス異形材
25 加熱曲線
26 加熱曲線
27 加熱曲線
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリップ状の、強化繊維および熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く、特許請求項1の上位概念の工程を有する、繊維複合材料からの成形体の製造法、ならびに特許請求項16の上位概念の特徴を有する、出発材料として使用するための半製品またはそのような製造法にて中間生成物として得られる半製品に関する。
【0002】
本発明による製造法および本発明による半製品は、繊維複合材料からの完成した成形体のマトリックスを形成する熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂から出発してよい。すなわち、該樹脂は成形体中で、化学的に、殊に架橋によって、および/または温度低下に基づく固化によって硬化し得る。ここで"熱可塑性樹脂"との用語は、"熱可塑性物質"および"熱可塑性プラスチック"との用語と同じ意味で用いられる。
【0003】
従来技術
ストリップ状の強化繊維を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは引き抜く、繊維複合材料からの成形体のための製造法は、引抜成形または押出との名称でも公知である。この従来技術の場合、概して、乾燥強化繊維からの出発材料が準備され、該強化繊維は、樹脂に含浸するために樹脂槽に導かれる。このようにして準備された出発材料は、次いで成形用金型(Formwerkzeug)に供給され、その際、該出発材料は連続的な流入において形作られ、その樹脂成分が硬化される。該成形用金型から、製造される成形体がエンドレス異形材の形で流出し、次いで該異形材は所望の長さの断片に区分される。その際、出発材料に対する前方への引抜力は、引抜ツールによってエンドレス異形材の領域中で適用される。引抜成形の一変法は、出発材料としてプリプレグと呼ばれる半製品から出発され、該半製品は、強化繊維および樹脂を有し、該樹脂は、該プリプレグの成形用金型内への取入前に進行の過程で加熱装置によって少なくとも予備加熱される。該樹脂を硬化するためのさらなる加熱を、該成形用金型内で行うことが出来る。現在、用いられている引抜成形の場合、出発材料は、赤外線放射、裸火、熱風またはホット不活性ガスによって成形用金型の上流で加熱される。金型内での加熱は、その部分が、ヒータカートリッジ、水または誘導コイルによって加熱される該金型を介して行われる。
【0004】
JP63035334Aは、外側の電磁コイルによって、形状付与する該成形用金型の内部コアを誘導加熱することによる、引抜成形機の成形用金型の前方領域中での出発材料の加熱を開示する。付加的に、該金型の後方部分の加熱が電気加熱器によって行われる。そのため、最終的に出発材料は、成形用金型との接触によって内側および外側から加熱される。
【0005】
ストリップ状の、強化繊維および熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く、繊維複合材料からの成形体の製造法には、テープ敷設法(Tapelegen)およびテープ巻き取り法(Tapewickeln)も含まれる。この場合、これまで基本的に、出発材料を加熱するために、(成形用金型の上流で引抜成形に際しての加熱について上記したように)同じ技術が用いられる。付加的に、出発材料は、この製造法の場合、それを敷設もしくは巻き取る成形体の部分上で"アイロン仕上げ"されていてよく、その際、該出発材料は、高温成形用金型で加圧または押圧される。
【0006】
ストリップ状の出発材料に基づく繊維複合材料からの成形体の製造に際して出発材料を加熱する上述の全ての方法は、該出発材料を、高められた温度へと素早く加熱することが出来ないにも関わらず、制御することが出来ないという欠点と結び付いており、例えば、該方法は、PEEKのような高価な熱可塑性樹脂を、これらから経済性に優れた高い速度で成形体を形成するために必要とする。これらの全ての技術は、高い加熱速度で加熱するために非常に高い接触温度を必要とし、それは出発材料の損傷の危険と直に結び付いている。
【0007】
独立請求項1の上位概念の特徴を有する製造法は、DE2603540A1から公知である。この場合、60Hz〜5MHzの、殊に1KHz〜2MHzの範囲内の交流磁場が、導電性強化繊維がその中に存在する出発材料中に導入される。該交流磁場は、導電性強化繊維中で渦電流を引き起こし、該渦電流は、該強化繊維の電気抵抗に基づき、該強化繊維の誘導加熱ひいては該強化繊維を有する出発材料の誘導加熱をもたらす。しかしながら、公知の製造法は、該交流磁場の非常に高い周波数を、複数の互いに電気的接触する強化繊維を超えて渦電流が引き起こされ得ない限りにおいて、これを効果的に僅かな直径の導電性強化繊維に導入するために必要とすることが明らかになっている。複数の強化繊維を飛び超えるこの種の渦電流は、しかしながら一方向に配置された強化繊維(例えば、引抜成形法の場合に頻繁に用いられる)の場合、ほとんど現実的ではない。しかし、交流磁場の高い周波数により、出発材料中への該交流磁場の侵入深さが僅かになるので、これを大量に加熱することが困難となる。極めて基本的に、DE2603540から公知の製造法は、強化繊維の選択に際して、その電気伝導特性を考慮する必要があり、このことは、それとは別に所望された、製造される成形体の特性を達成するために強化繊維を選択する際に自由度を強く制限する。
【0008】
DE3880716T2から、伝導性繊維、例えば炭素繊維によって強化されている熱可塑性層を、該繊維中で電流を誘導するために交流磁場を該繊維中にカップリングすることによって結合することが公知である。該電流は伝導性繊維の抵抗によって熱に変換され、該熱は熱可塑性層の樹脂成分に伝達される。該電流の誘導は、1MHz以上の交流磁場の比較的大きい周波数の場合に初めて起こり、かつ該誘導には、該繊維にわたって渦電流が流れ得るように、一方向に延びる複数の層の伝導性繊維が種々の方向に延びていることが要求される。通例、しかし、冒頭に記載された種類の方法の出発材料の場合、該強化繊維は、ただ一層で一方向配向により該出発材料の流れ方向においてしか存在しない。そのうえ、該強化繊維を介した樹脂の加熱も同様に、該樹脂に供給されるべき全体の熱が、外側から、すなわちこの場合、伝導性繊維から該樹脂に伝達されなければならないという欠点と結び付いている。これは、制御された、かつ損傷を与えない条件下で可能である可能な加熱速度を限定する。
【0009】
特許請求項16の上位概念の特徴を有する半製品は、DE69225480T2から公知である。この場合、該半製品は導電性強化繊維を有し、しかし、該導電性強化繊維は、まさに導入される交流磁場にカップリングされることにはなっていない。むしろ、このために該半製品の樹脂は、交流磁場の導入に際して選択加熱材料として用いられるべき磁性粒子と混合されている。該磁性粒子は磁性酸化物から成っていてよい。磁性粒子は、該磁性粒子のキュリー温度が、該樹脂の溶融温度または硬化温度に達するまで達しないように形成される。なぜなら、キュリー温度以上では、カップリングされた交流磁場に基づき、本質的な加熱がもはや行われないことが仮定されるからである。公知の半製品の樹脂は、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、すなわち公知の高温熱可塑性樹脂であってよい。ストリップ状の、強化繊維および樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く製造法、または相応するストリップ状の出発材料は、この場合、言及されないか、または上記以外の方法が考慮される。
【0010】
基本的にWO02/12409からは、接着剤組成物を、強磁性、フェリ磁性、超常磁性または圧電性の特性を有するナノスケール粒子と混合し、そうして、該接着剤組成物が交流磁場のカップリングに際して、熱可塑性接着剤の場合、熱可塑性バインダの軟化点に達するかもしくは超過するように、かつ反応性接着剤の場合、該バインダの反応性基によるバインダマトリックスの架橋が行われる温度に達するように加熱されることが公知である。超常磁性粒子は、いわゆる"単磁区粒子"である。常磁性粒子と比較して、これはヒステリシスを示さないことを特徴とする。これは、カップリングされる交流磁場のエネルギー散逸が磁気ヒステリシス損失によって引き起こされるのではなくて、発熱が、交流磁場の作用中に誘起される、周囲マトリックス中の粒子の振動または回転運動ひいては最終的に機械的摩擦損失に帰する結果となる。これは、該粒子および該粒子を取り囲むマトリックスのとりわけ効果的な加熱速度をもたらす。WO02/12409は、繊維複合材料からの成形体の製造、殊に、ストリップ状の、強化繊維および樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜く製造法に関するものではない。
【0011】
本発明の課題
本発明の基礎を成している課題は、高い温度に加熱されなければならない樹脂を使用する場合にも、出発材料の強化繊維の熱損傷の危険が存在することなく、高い製造速度を可能にする、特許請求項1の上位概念の工程を有する繊維複合材料からの成形体の製造法および特許請求項16の上位概念の特徴を有する半製品を示すことである。
【0012】
解決策
該課題は、本発明により、特許請求項1の特徴を有する製造法および特許請求項16の特徴を有する半製品によって解決される。従属請求項2〜15は、新規の該製造法の有利な実施態様に関し、他方で、従属請求項17〜22は、新規の該半製品の有利な実施態様に関する。
【0013】
本発明の詳細な説明
新規の製造法の場合、素早く通過する出発材料が、樹脂中への交流磁場のカップリングによって加熱される。これによって、該樹脂を非常に素早く、しかし、同時に制御して、かつ均一に加熱することが可能であるので、これは高い送り速度でも理想的な状態で成形体に形作られる。この結果、成形体中の樹脂が硬化されている場合、該成形体の高い品質が得られる。殊にこれは、高融点熱可塑性樹脂、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリフェニレンスルフィド(PPS)のような、250℃より高い温度で初めて溶融する樹脂の使用下での、繊維複合材料からの成形体の製造に関して適用される。新規の製造法の場合、交流磁場が樹脂中に選択的にカップリングされることにより、強化繊維は熱負荷されないか、または僅かにしか熱負荷されない。高い速度で熱可塑性樹脂が処理される場合、該強化繊維は、そのうえさらに目的に合わせて熱緩衝材として利用され得、その際、該強化繊維は、出発材料が所望の成形体に形作られた後に、既にその熱容量により、樹脂の硬化のために該樹脂から取り除かれなければならない該樹脂からの熱の一部を吸収する。次いで樹脂のみが、該樹脂と、出発材料のその他の層またはストリップと持続的に成形体中で結合するために最大温度に達する。
【0014】
交流磁場への出発材料の樹脂の選択的なカップリングを達成するために、該樹脂は、その内部磁場の配向に対して外部交流磁場にカップリングする超常磁性粒子と、磁気誘導による古典的な加熱の場合に見られるような、該粒子の直径と交流磁場の周波数との間の強い相関関係が存在することなく混合されている。それゆえ該粒子は、交流磁場の周波数を特に高めなくても非常に小さくてよく、その際、該粒子は、好ましくは500nm未満の粒度を有する。これによって該粒子は、樹脂中でのそれらの質量割合と比較して、該樹脂へ熱伝達するための非常に大きい表面を有する。
【0015】
とりわけ有利には、超常磁性粒子は、2〜100nmの直径、すなわち、概して50nm未満の一次粒度を有する磁性金属酸化物磁区からの一次粒子、一般に超常磁性の特性を有する非常に小さい磁性粒子を有する。それらは樹脂中への特に高い熱伝達の可能性を提供し、かつ高融点熱可塑性樹脂も溶融するために完全に十分である350〜550℃の比較的高い温度の領域中にまでも及ぶ。
【0016】
該一次粒子は、超常磁性粒子中で、非磁性の金属酸化物マトリックスまたは半金属酸化物マトリックス中に埋め込まれていてよく、該マトリックスによって、それらは溶剤、湿分および樹脂の反応成分に対しても不活性であるように、例えばSiO2からの保護層またはその他の不活性化合物で覆われている。さらにまた、この種の、およびその他の保護層は、該粒子をより簡単に均一に樹脂中に分散させることが出来るように、かつ、例えば粒子からのアグリゲートの形成も防止するために、該粒子と該樹脂との相容性を改善するために準備されていてよい。
【0017】
この種の高度に相容性の超常磁性粒子の場合、該樹脂に、50質量%までの比較的高い割合の磁性粒子も添加してよい。しかし、それらが樹脂の必要な加熱に要求される量の粒子のみが添加されなければならない。個々の場合において、このために超常磁性粒子が0.1質量%またはそれより少しだけ多くても十分であり得る。
【0018】
新規の製造法の場合、強化繊維が、特許請求項1の上位概念に従う通常の製造法の場合にも同様に当てはまるように、出発材料の流れ方向に一方向で延びる場合、それは全く重要ではない。逆にこれは、それどころか、導電性材料、例えば炭素繊維からの強化繊維が使用される場合、強化繊維中への交流磁場の関連したカップリングが行われず、それにより誘導渦電流による強化繊維の関連した加熱も行われないことを保証する。
【0019】
該交流磁場は、新規の製造法の場合、10kHz〜60MHzの周波数で、概して100kHz〜10MHzの周波数で、および好ましくは100kHz〜1MHzの周波数で樹脂中にカップリングされ得る。該周波数は、樹脂の均一な加熱に関して最小コストで最大効果を得るように最適化されているものと理解される。
【0020】
好ましくは、新規の製造法の場合、成形体に形作られた出発材料は冷却される。殊にこれは、新規の製造法の場合に完全に有利である、熱可塑性樹脂を有する出発材料が使用される場合に当てはまる。該成形体中の出発材料の冷却によって、前もって出発材料を成形体に形作るために必要とされた樹脂の塑性が、出発材料を成形体に形作ることにより製造される複合体を定着させるために再び除去される。
【0021】
既に言及したように、熱可塑性樹脂は高温熱可塑性物質であってよく、かつ殊にポリエーテルケトンまたはポリフェニレンスルフィドから成っていてよい。
【0022】
本発明の実施のために適している、さらに別の熱可塑性樹脂ならびに超常磁性粒子は、WO2007/042368A2の中で開示されており、該文献は全面的に引用される。
【0023】
具体的な一実施態様において、新規の製造法の場合、出発材料は引抜成形プロセスにおいて成形体に形作ることができる。その際、交流磁場は、成形用金型の上流で直接に出発材料中にカップリングされ得るので、該出発材料は、それが成形用金型に入る前に加熱される。
【0024】
新規の製造法のその他の具体的な一実施態様において、出発材料はテープ敷設法において、既に存在する成形体の部分に対して形作られる。その際、交流磁場は、ガイドローラと、出発材料のための冷却された加圧ツールとの間の領域内で出発材料中にカップリングしてよい。この新規のテープ敷設プロセスの場合、つまり、出発材料は該加圧ツールで既に再び冷却されるので、既に存在する成形体の部分は全体的に比較的低い温度で存在する。この結果、既に存在する成形体の部分は形状安定性である。
【0025】
新規の製造法のその他の具体的な一実施態様の場合、出発材料は巻き取りプロセスにおいて、既に存在する成形体の部分上に巻き取られる。その際、理論的には、ロービングガイドが、既に存在する成形体の部分の周りを移動する。概して、しかし既に存在する成形体の部分は回転される。その際、交流磁場は、ロービングガイドと、この場合も同様に出発材料のための冷却された加圧ツールとの間の領域内で出発材料中にカップリングされ得る。
【0026】
新規の製造法が実施可能である、繊維複合材料からの成形体の製造装置は、交流磁場を、通過する出発材料の樹脂中にカップリングするための加熱装置を有する。
【0027】
好ましくは、交流磁場を生成するために交流発電機が準備されており、該交流発電機は、加熱装置の誘導コイルによって100kHz〜1MHzの周波数を有する交流を生成する。
【0028】
該製造装置は、加熱装置の他に、好ましくは、成形体に形作られる出発材料を冷却するための冷却装置を有する。
【0029】
具体的には、該製造装置は引抜成形機であってよい。その際、加熱装置は、出発材料のための成形用金型の上流に準備されていてよい。
【0030】
該製造装置はテープ敷設装置であってもよく、その際、加熱装置は、ガイドローラと、出発材料のための冷却された加圧ツールとの間の領域内に準備されていてよい。
【0031】
さらに別の具体的な一実施態様において、該製造装置はテープ巻き取り装置である。この場合、加熱装置は、ロービングガイドと、出発材料のための冷却された加圧ツールとの間の領域内に準備されていてよい。
【0032】
新規の製造法の全ての実施態様において、出発材料を、まず乾燥強化繊維と、そのつどの樹脂とから形成するために、付加的な工程が準備されていてよく、該樹脂中に該強化繊維は、例えば液体樹脂で充填されている槽を通して供給される。反対に、出発材料は、既に樹脂で含浸されている、いわゆるプリプレグであってもよい。
【0033】
本発明による製造法の場合の出発材料として使用するために予定されるか、または中間生成物として本発明による方法に際して得られる本発明による半製品は、該製品が、主たる伸長方向で延長するストリップであり、かつ磁性粒子は、熱可塑性樹脂に添加されている超常磁性粒子である。本発明による半製品のこれらの特徴およびさらに別の有利な特徴は、本発明による方法と関連して上記で詳細に説明されている。
【0034】
本発明の好ましいさらなる態様は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面から明らかとなる。発明の詳細な説明の導入部で挙げられた特徴の利点および複数の特徴を組み合わせた利点は、単に例示的なものに過ぎず、かつ該利点は本発明による実施態様を得るのに必然的なものではなく、代替的または蓄積的にもたらされ得る。さらなる特徴は図面の中から−殊に図示された幾何学的形状および複数のコンポーネント相互の相対寸法ならびに該コンポーネントの相対的な配置および連動から−読み取られる。本発明の種々の実施態様の特徴または種々の特許請求の範囲の特徴を組み合わせたものも同様に、該特許請求の範囲の選択された基準とは別様にも可能であり、かつ、これにより提案される。これは別個の図面で示されている特徴またはその詳細な説明の中で挙げられる特徴にも関する。これらの特徴は、種々の特許請求の範囲の特徴とも組み合わせられ得る。同様に、本発明のさらなる実施態様に関して、特許請求の範囲の中で列挙された特徴が省略されていてもよい。
【0035】
以下で本発明を、具体的な実施例を手掛かりにして、添付図面を引き合いに出しながら、詳細に説明および記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1 処理される出発材料の流れ方向に沿った概略的な縦断面図におけるテープ敷設装置の第一の実施態様の基本構造を示す図
【図2】概略的な縦断面図におけるテープ敷設装置の第二の実施態様を示す図
【図3】概略的な縦断面図におけるテープ敷設装置の第三の実施態様を示す図
【図4】概略的な縦断面図におけるテープ敷設装置の第四の実施態様を示す図
【図5】処理される出発材料の流れ方向に沿った概略的な縦断面図におけるテープ巻き取り装置の第一の実施態様を示す図
【図6】概略的な縦断面図におけるテープ巻き取り装置の第二の実施態様を示す図
【図7】概略的な縦断面図におけるテープ巻き取り装置の第三の実施態様を示す図
【図8】処理される出発材料の流れ方向に沿った概略的な縦断面図における引抜成形機の第一の実施態様を示す図
【図9】概略的な縦断面図における引抜成形機の第二の実施態様を示す図
【図10】概略的な縦断面図における引抜成形機の第三の実施態様を示す図
【図11】磁場をUD−カーボンプリプレグの樹脂中にカップリングする加熱装置の電力の機能として磁性ナノ粒子が部分的に富化された熱可塑性UD−カーボンプリプレグに関する加熱曲線のプロットを示す図
【0037】
図面の詳細な説明
図1の中で概略的に示されるテープ敷設装置は、ストリップ状の出発材料1からの成形体を製造するために用いられる。出発材料1は、テープ敷設装置中で該出発材料の流れ方向10に一方向で延びる強化繊維および熱可塑性樹脂を有する。図1に記載のテープ敷設装置により、出発材料1は層状に成形用金型7に施与される。その際、出発材料1の第一の層のみが成形用金型7に直接に接する。出発材料1のさらに別の層は、成形用金型7の上に既に存在する、所望の成形体の部分6に施与される。その際、新しく施与された出発材料1と部分6との間の持続的な結合を形成するために、出発材料1は、まず予備加熱装置2の中で加熱される(この場合、該装置2は電気加熱器を有するものと示唆される)。しかしながら、所望の成形体の仕上がった部分6との持続的な結合部を製造するために必要とされる接合温度への出発材料1の加熱は、ローラガイド3に引き続き加熱装置5(この場合、出発材料1のためのレイアップロール(Ablegewalze)4と組み合わせられている)で初めて引き起こされる。具体的に、加熱装置5は、レイアップロール4の内部に配置された誘導コイル16を有する。ここでは図示されていない交流発電機は、交流を誘導コイル16によって生成する。結果生じる交流磁場が、出発材料1の樹脂中にカップリングされる。このカップリングと、これから結果生じる樹脂の加熱を促進するために、出発材料1の樹脂は超常磁性粒子と混合される。これにより、出発材料1の樹脂を、レイアップロール4によるレイアップ中に非常に素早く、既に存在する所望の成形体の部分6との結合のために十分高い温度に加熱することが可能となる。これ自体は、出発材料1の樹脂が、250℃以上の高い温度で初めて溶融する熱可塑性樹脂である場合に適用される。誘導コイル16の交流磁場の領域に続いて、レイアップされた出発材料1は冷却装置8によりさらに加圧され、その際、既に再びその溶融温度を下回る温度まで冷却され、そうして、より深くに位置する出発材料の層とのその結合が定着する。
【0038】
図2に記載のテープ敷設装置の実施態様と、図1に記載の装置とは、この場合、予備加熱装置2も、出発材料1の樹脂中にその加熱のためカップリングするために交流磁場を生成する誘導コイル16に基づき据え付けられていることによって区別される。
【0039】
図3に記載のテープ敷設装置の実施態様の場合、加熱装置5には、レイアップロール4の外側で、出発材料1の流入の過程において交流磁場を出発材料1の樹脂中に、レイアップロール4と所望の成形体の既に存在する部分6との間のギャップ中にカップリングするさらに別の誘導コイル16が備え付けられている。そのために、レイアップロール4の内側の誘導コイル16は、図1および図2の中の誘導コイルと比べて、いくぶん進入方向10において回転されるので、図3に記載の出発材料1は、既に存在する成形体の部分6との結合領域中にまで延びる、より長い領域にわたって加熱される。
【0040】
図4の中で描写されるテープ敷設装置の場合、再び予備加熱装置2には、電気加熱器が準備されている。この場合、加熱装置5は、レイアップロール4の中の誘導コイル16以外に成形用金型の裏側でさらに別の誘導コイル16を有する。図2および図3に記載の予備加熱装置2の場合にも示されているような、誘導コイル16の対となった配置が、特定の領域での交流磁場の集束を可能にする。その際、図4に記載の配置は、出発材料1が既にレイアップされた層の樹脂も加熱し、このことは新たにレイアップされた出発材料1の密接な結合のために有利であり得る。
【0041】
図5は、本発明のさらなる基本的な実施態様としてのテープ巻き取り装置22の構成を示す。テープ巻き取り装置により、再び強化繊維および熱可塑性樹脂とから成るストリップ状の出発材料1が、ここでは図示されていない回転駆動装置によって軸20の周りを回転する成形用金型に巻き取られる。ストリップ状の出発材料1は、多層状で成形用金型4に巻き取られ、そうして繊維複合材料からの管状の形をした成形体が形成される。出発材料は、プリプレグとして供給ロール9から引き抜かれる。その引張力は、スプリングロード式ダンサーロールによって調整される。引き続き、出発材料は、図5に記載されている通り、電気加熱器が備え付けられている予備加熱装置2を通過する。次いで出発材料は、いわゆるロービングガイド14を貫通する。それに続いて出発材料1は、ここでは出発材料1の樹脂中への電磁交流磁場のカップリングのために誘導コイル16を有する加熱装置5の作用領域中に到達する。金型7もしくはそこで既に存在する所望の成形体の部分上に巻き取られた出発材料は、塑性状態で巻き取られた出発材料と成形体の部分6の残部との結合を定着させる冷却装置8により冷却される。
【0042】
図6の中で描写されるテープ巻き取り装置22の実施態様は、図5に記載の実施態様と比べて、予備加熱装置2の形成の点で変更されている。図6によれば、予備加熱装置2は、出発材料1の樹脂中にカップリングされるべき交流磁場を生成するための2つの誘導コイル16を有する。すなわち、出発材料1の全体的な加熱は、図6によれば、樹脂中への交流磁場のカップリングによって行われる。図7の中で示されるテープ巻き取り装置22の実施態様においては、予備加熱装置2は再び電気加熱器を有する。この場合、予備加熱装置5には、金型7へ出発材料1が流入する領域中で、出発材料1全体に2つの互いに対置する誘導コイル16が備え付けられており、該誘導コイル16は金型7の内部に配置されている。これは基本的に図4に記載のテープ敷設装置の実施態様に相当する。
【0043】
図8は、ストリップ状の出発材料1をエンドレス異形材24に形作り、かつ硬化させる成形引抜機23の第一の実施態様の基本構造を示す。エンドレス異形材24は、切断ツール18により異形材断片25に分けられる。出発材料1は、ここでも再び強化繊維および熱可塑性樹脂とから成る。出発材料は原料リザーバ11から引き抜かれ、その際、出発材料1の種々の層が空間的に組み合わせられ得る。次いで出発材料1はマテリアルガイド12に流入し、その内部で該出発材料は予備加熱装置2を通過する。予備加熱装置2には、この場合、電気加熱器が備え付けられている。その後、出発材料1は成形用金型15に入る。成形用金型15の前方部分には、この場合、加熱装置5に誘導コイル16が準備されている。成形用金型15の後方部分には、冷却装置8が準備されている。成形用金型15から、既にエンドレス異形材24が流出し、該異形材24に対して引取ツール17が作動される。引取ツール17により、流れ方向10における全体的な前方への引き抜き作用が出発材料1に及ぼされる。
【0044】
図9に記載の成形引抜機23の実施態様と、図8に記載のものとの相違点は、この場合、成形用金型15とは別個の、マテリアルガイド12もしくはその中を進む出発材料1全体で互いに対置する2つの誘導コイル16を有する加熱装置5によって示される。
【0045】
図10に記載の成形引抜機23の場合、付加的に予備加熱装置2も誘導コイル16をベースにして組み立てられている。
【0046】
図11は、樹脂に超常磁性粒子を加えなかった場合の熱可塑性UD−カーボンプリプレグに関する加熱曲線25を用いて、交流磁場のカップリングによって、交流磁場の生成のために5kWの出力が使用可能である場合にですら顕著な加熱が得られないことを示している。それに対して、樹脂に超常磁性粒子が添加されている出発材料1に該当する加熱曲線26および27は、基本的に導電性ではあるが、一方向に延び、ひいては交流磁場へのカップリングには適していない炭素繊維に関わらず、交流磁場の効果的なカップリングが行われていることを証明している。このカップリングは、樹脂に添加された磁性粒子により、本来は樹脂を介して、ひいてはまさに該樹脂を溶融するのに必要とされる場所で行われる。加熱曲線27は、加熱曲線25と同じ電磁交流磁場の出力に基づいている。その傾斜、すなわち加熱速度は19ケルビン/秒である。2.5kWの半分の出力に関してプロットされた加熱曲線26は既に9ケルビン/秒の加熱速度に相当する。そのため出発材料1の樹脂は、殊に予備加熱された場合、繊維複合材料としての成形体の製造のために出発材料の続く処理に必要とされるように、カップリングされた交流磁場によって非常に素早く溶融され得る。
【0047】
本発明の実施のために適した樹脂
例えば、適した樹脂はポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド/PPE−ブレンド、ポリカーボネート、ポリエステル、例えばポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリカーボネート/PBT−ブレンドである。
【0048】
ポリアミドとして、まず第一に脂肪族または部分芳香族の単独縮合物および共重縮合物、例えばPA46、PA66、PA68、PA610、PA612、PA614、PA410、PA810、PA1010、PA412、PA1012、PA1212、PA6/6T、PA66/6T、PA6、PA7、PA8、PA9、PA10、PA11およびPA12が考慮に入れられる(ポリアミドの符号は国際的規準に相応し、その際、最初の数字は、出発ジアミンのC原子数を表し、かつ最後の数字はジカルボン酸のC原子数を表す)。1個の数字のみが挙げられる場合、これは、α,ω−アミノカルボン酸から、もしくはそれから誘導されたラクタムから出発していることを意味し;それ以外の点はH. Domininghaus, Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften, 第272頁以下, VDI-Verlag, 1976を参照のこと。とりわけ有利なのは、式
【化1】
[式中、−A−は、−O−、−S−および
【化2】
から選択されている]
の繰り返し単位を含有する芳香族ポリマーである。付加的に、場合により式
【化3】
[式中、−B−=−CO−または−SO2−]の繰り返し単位が含まれていてよい。
【0049】
このための例は、ポリアリーレンエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミドであり、例えばポリエーテルイミド、ならびにその混合物またはその他のポリマーとの混合物である。
【0050】
ポリアリーレンエーテルケトンは、慣例の製造方法において重縮合によって製造される。このいわゆる求核経路の場合、適した有機ジオール化合物が、適した有機ジハロゲン化合物と反応させられる。通常、該反応は、溶剤、例えばジフェニルスルホン中で、固体成分として反応混合物中に存在する、いわゆる補助塩基の使用下で実施される;通常、この場合、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムとからの混合物が、ほぼ化学量論的量で使用される。この製造法は多数の特許出願において記載されており、例えばEP−A−0001879、EP−A−0182648およびEP−A−0244167の中に記載されている。通常、PAEKの製造のために芳香族ジフルオロ化合物およびビスフェノールが使用される;そのため、求核経路に従ったポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の製造に際して、ジオール成分としてヒドロキノンが、ジハロゲン成分として4,4'−ジフルオロベンゾフェノンが使用される。
PAEKは、式
(−Ar−X−)および(−Ar′−Y−)、
[式中、ArおよびAr′は、二価の芳香族基、好ましくは1,4−フェニレン、4,4′−ビフェニレンならびに1,4−、1,5−または2,6−ナフチレンを表す]の単位を含む。Xは電子吸引性基、有利にはカルボニルまたはスルホニルであり、他方でYは、O、S、CH2、イソプロピリデン等のようなその他の基を表す。この場合、基Xの少なくとも50%、有利には少なくとも70%、およびとりわけ有利には少なくとも80%がカルボニル基を表すことが望ましく、他方で、基Yの少なくとも50%、有利には少なくとも70%、およびとりわけ有利には少なくとも80%が酸素から成ることが望ましい。
【0051】
殊に有利な実施態様において、基Xの100%がカルボニル基から成り、かつ基Yの100%が酸素から成る。この実施態様において、PAEKは、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK;式I)、ポリエーテルケトン(PEK;式II)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK;式III)またはポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK;式IV)であってよく、しかしながら、当然、カルボニル基および酸素基のその他の配置も可能である。
【0052】
【化4】
【0053】
一般的に、PAEKは部分結晶性であり、このことは、例えばDSC分析において、オーダーに応じて大抵の場合300℃かまたはそれを超える結晶融点Tmを検出することによって示される。しかしながら、本発明の教示は、非晶質PAEKについても適用可能である。一般的に、スルホニル基、ビフェニレン基、ナフチレン基または嵩高い基Y、例えばイソプロピリデン基が結晶度を低下するものとされる。
【0054】
一般に、適したポリスルホンは、塩基、例えば炭酸ナトリウムの存在下における非プロトン性溶媒中でのビフェノール/ジハロゲンジアリールスルホン−混合物の重縮合によって製造される。ビスフェノールとして、好ましくはビスフェノールA、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルまたはヒドロキノンが使用され、その際、異なるビスフェノールからの混合物も使用してよい。ジハロゲン化合物は、大抵の場合4,4'−ジクロロジフェニルスルホンであり;しかし、その他の全てのジハロゲン化合物も使用してよく、その際、ハロゲンはパラ位のスルホン基によって活性化されている。ハロゲンとして、塩素以外にフッ素も適している。"ポリスルホン"との用語は、通常、"ポリエーテルスルホン"または"ポリフェニレンスルホン"と呼ばれるポリマーも包含する。適したタイプは商業的に入手可能である。
【0055】
ポリフェニレンスルフィドは、高沸点溶剤中で1,4−ジクロロベンゼンと硫化ナトリウムとから製造される。多数の市販タイプが商業的に入手可能である。
【0056】
ポリアミドは公知の方法でテトラカルボン酸またはその無水物およびジアミンとから製造される。テトラカルボン酸および/またはジアミンがエーテル基を含む場合、ポリーテルイミドが生じる。とりわけ適したエーテル基含有テトラカルボン酸は、式Vの化合物である;該化合物から、芳香族ジアミンと一緒に、商業的に入手可能である非晶質ポリエーテルイミドが得られる。
【0057】
【化5】
【0058】
本発明の実施のために適した超常磁性粒子
適した超常磁性粒子は、例えばEP−A−1284485ならびにDE10317067の中で記載され、該文献は全面的に引用される。
【0059】
本発明の場合、超常磁性粒子は樹脂中にナノスケール酸化物粒子の形で存在し、該粒子は、好ましくは均一に分散しており、かつ殊にアグロメレートしていない。殊に、これらの粒子は樹脂中で温度安定性であり、かつ高い温度でもアグロメレートを示さない。さらに、該樹脂のレオロジーを全般的に、そのような粒子の含量とは無関係に制御することが可能である。
【0060】
超常磁性粒子中には、複数の一次粒子がアグリゲートしていてよい。アグリゲート下にあるか、またはアグリゲートとは、成長した一次粒子の三次元構造体と理解され得る。複数のアグリゲートが結合してアグロメレートを生じ得る。これらのアグロメレートは、例えば押出プロセスのような機械的作用によって簡単に再び分離され得る。これとは対照的に、アグリゲートの一次粒子への分解は一般に可能ではない。
【0061】
超常磁性粒子のアグリゲート直径は、有利には100nmより大きく、かつ1μmより小さい。好ましくは、超常磁性粒子のアグリゲートは、少なくとも空間方向で250nmより上回らない直径を有する。
【0062】
磁区とは、空間的に分け隔てられたマトリックス中での領域と理解されるべきである。超常磁性粒子の磁区は、概して2〜100nmの直径を有する。該磁区は非磁性領域も有してよいが、しかし、それは超常磁性粒子の磁性特性に寄与しない。
【0063】
付加的に、超常磁性粒子中には強磁性磁区も存在してよく、該磁区はその大きさに基づき超常磁性を示さず、かつ残留磁気を誘導する。これは体積比飽和磁化の上昇につながる。本発明によれば、超常磁性粒子は、該粒子が添加されている樹脂を、交流磁場によってその硬化温度または溶融温度に高めることが出来るような数の超常磁性磁区を含んでいることが適用される。
【0064】
超常磁性粒子の磁区は、取り囲むマトリックスによって完全に包囲されていてよく、または部分的にだけ包囲されていてよい。部分的に包囲されているとは、個々の磁区がアグリゲートの表面から突出していることを意味する。いずれの場合も、該粒子の超常磁性磁区はアグロメレートしていない。
【0065】
強磁性磁区は、1つ以上の金属酸化物を有してよい。有利には、強磁性磁区は、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、ユーロピウム、イットリウム、サマリウムまたはガドリニウムの酸化物を含んでいる。これらの磁区には、該金属酸化物が一様な変態で存在するか、または種々の変態で存在してよい。とりわけ有利な強磁性磁区は、ガンマ−Fe2O3(γ−Fe2O3)、Fe3O4、ガンマ−Fe2O3(γ−Fe2O3)および/またはFe3O4からの混合物の形の酸化鉄である。
【0066】
さらに強磁性磁区は、金属成分の鉄、コバルト、ニッケル、スズ、亜鉛、カドミウム、マグネシウム、マンガン、銅、バリウム、マグネシウム、リチウムまたはイットリウムを有する、少なくとも2つの金属の混合酸化物として存在していてよい。
【0067】
さらに強磁性磁区は、一般式MIIFe2O4を有する物質であってよく、その際、MIIは、少なくとも2つの互いに異なる二価金属を包含する金属成分である。有利には、二価金属の1つは、マンガン、亜鉛、マグネシウム、コバルト、銅、カドミウムまたはニッケルであってよい。
【0068】
さらに強磁性磁区は、一般式(Ma1-x-y MbxFey)IIFe2IIIO4の三元系から構成されていてよく、その際、MaもしくはMbは、金属のマンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、マグネシウム、バリウム、イットリウム、スズ、リチウム、カドミウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、クロム、バナジウム、ニオブ、モリブデンであってよく、x=0.05〜0.95、y=0〜0.95およびx+y≦1である。
【0069】
とりわけ有利には、ZnFe2O4、MnFe2O4、Mn0.6Fe0.4Fe2O4、Mn0.5Zn0.5Fe2O4、Zn0.1Fe1.9O4、Zn0.2Fe1.8O4、Zn0.3Fe1.7O4、Zn.0.4Fe1.6O4またはMn0.39Zn0.27Fe2.34O4、MgFe2O3、Mg1.2Mn0.2Fe1.6O4、Mg1.4Mn0.4Fe1.2O4、Mg1.6Mn0.6Fe0.8O4、Mg1.8Mn0.8Fe0.4O4であってよい。
【0070】
非磁性マトリックスの金属酸化物の選択は、これ以上は制限されていない。有利には、これらの酸化物は、チタン、ジルコン、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、セリウムまたはスズからのものであってよい。
【0071】
本発明の意味において、半金属酸化物、例えば二酸化ケイ素も金属酸化物に含まれる。
【0072】
さらに、マトリックスおよび/または磁区は、非晶質および/または結晶質で存在していてよい。
【符号の説明】
【0073】
1 出発材料
2 予備加熱装置
3 ローラガイド
4 レイアップロール
5 加熱装置
6 製造されるべき成形体の部分
7 金型
8 冷却装置
9 供給ロール
10 流れ方向
11 原料リザーバ
12 マテリアルガイド
13 ダンサーロール
14 ロービングガイド
15 成形用金型
16 誘導コイル
17 引抜ツール
18 切断ツール
19 異形材断片
20 軸
21 テープ敷設装置
22 テープ巻き取り装置
23 成形引抜機
24 エンドレス異形材
25 加熱曲線
26 加熱曲線
27 加熱曲線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維複合材料からの成形体の製造法であって、その際、ストリップ状の、強化繊維および熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜き、その際、流入する出発材料を、進行の過程で交流磁場のカップリングによって加熱し、その際、加熱した出発材料を、継続的に成形体に形作り、かつ、その際、成形体中の樹脂を硬化する製造法において、出発材料(1)の樹脂を、交流磁場にカップリングされる超常磁性粒子と混合することを特徴とする、繊維複合材料からの成形体の製造法。
【請求項2】
前記超常磁性粒子を、出発材料(1)の樹脂に0.1〜50質量%の割合で添加することを特徴とする、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
前記超常磁性粒子が、2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物磁区からの一次粒子を有することを特徴とする、請求項1または2記載の製造法。
【請求項4】
前記超常磁性粒子中の一次粒子が、非磁性金属酸化物マトリックスまたは非磁性半金属酸化物マトリックス中に埋め込まれていることを特徴とする、請求項3記載の製造法。
【請求項5】
前記強化繊維が、出発材料(1)の進行方向(10)で一方向に延びることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項6】
前記交流磁場を、10kHz〜60MHzの周波数で、好ましくは100kHz〜10MHzの周波数で、およびさらに有利には100kHz〜1MHzの周波数でカップリングすることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項7】
成形体に形作られた前記出発材料(1)を冷却することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項8】
前記出発材料(1)を引抜成形プロセスにおいて成形体に形作ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項9】
前記交流磁場を成形用金型(15)の上流で出発材料(1)中にカップリングすることを特徴とする、請求項8記載の製造法。
【請求項10】
前記出発材料(1)を、テープ敷設プロセスにおいて、既に存在する成形体の部分に形作ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項11】
前記交流磁場を、ガイドローラ(3)と、出発材料(1)のための冷却された加圧ツールとの間の領域内で出発材料(1)中にカップリングすることを特徴とする、請求項10記載の製造法。
【請求項12】
前記出発材料(1)を、テープ巻き取りプロセスにおいて、既に存在する成形体の部分上で巻き取ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項13】
前記交流磁場を、ロービングガイド(14)と、出発材料(1)のための冷却された加圧ツールとの間の領域内で出発材料(1)中にカップリングすることを特徴とする、請求項12記載の製造法。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂が高温熱可塑性物質であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項15】
前記高温熱可塑性物質が、ポリエーテルケトンおよびポリフェニレンスルフィドを包含する高温熱可塑性物質の群から選択されていることを特徴とする、請求項14記載の製造法。
【請求項16】
強化繊維および、磁性粒子と混合されている熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の製造法に際して出発材料として使用するための半製品または中間生成物として得られる半製品において、前記半製品が、主たる伸長方向において延長するストリップであり、かつ前記磁性粒子が超常磁性粒子であることを特徴とする半製品。
【請求項17】
前記超常磁性粒子が、樹脂に0.1〜50質量%の割合で添加されていることを特徴とする、請求項16記載の半製品。
【請求項18】
前記超常磁性粒子が、2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物磁区からの一次粒子を有することを特徴とする、請求項16または17記載の半製品。
【請求項19】
前記超常磁性粒子中の一次粒子が、非磁性金属酸化物マトリックスまたは非磁性半金属酸化物マトリックス中に埋め込まれていることを特徴とする、請求項18記載の半製品。
【請求項20】
前記強化繊維が、延長する出発材料の主たる伸長方向で一方向に延びることを特徴とする、請求項16から19までのいずれか1項記載の半製品。
【請求項21】
前記熱可塑性樹脂が高温熱可塑性物質であることを特徴とする、請求項16から20までのいずれか1項記載の半製品。
【請求項22】
高温熱可塑性物質が、ポリエーテルケトンおよびポリフェニレンスルフィドを包含する高温熱可塑性物質の群から選択されていることを特徴とする、請求項21記載の半製品。
【請求項1】
繊維複合材料からの成形体の製造法であって、その際、ストリップ状の、強化繊維および熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する出発材料を連続的に前方に押し出すかまたは前方に引き抜き、その際、流入する出発材料を、進行の過程で交流磁場のカップリングによって加熱し、その際、加熱した出発材料を、継続的に成形体に形作り、かつ、その際、成形体中の樹脂を硬化する製造法において、出発材料(1)の樹脂を、交流磁場にカップリングされる超常磁性粒子と混合することを特徴とする、繊維複合材料からの成形体の製造法。
【請求項2】
前記超常磁性粒子を、出発材料(1)の樹脂に0.1〜50質量%の割合で添加することを特徴とする、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
前記超常磁性粒子が、2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物磁区からの一次粒子を有することを特徴とする、請求項1または2記載の製造法。
【請求項4】
前記超常磁性粒子中の一次粒子が、非磁性金属酸化物マトリックスまたは非磁性半金属酸化物マトリックス中に埋め込まれていることを特徴とする、請求項3記載の製造法。
【請求項5】
前記強化繊維が、出発材料(1)の進行方向(10)で一方向に延びることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項6】
前記交流磁場を、10kHz〜60MHzの周波数で、好ましくは100kHz〜10MHzの周波数で、およびさらに有利には100kHz〜1MHzの周波数でカップリングすることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項7】
成形体に形作られた前記出発材料(1)を冷却することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項8】
前記出発材料(1)を引抜成形プロセスにおいて成形体に形作ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項9】
前記交流磁場を成形用金型(15)の上流で出発材料(1)中にカップリングすることを特徴とする、請求項8記載の製造法。
【請求項10】
前記出発材料(1)を、テープ敷設プロセスにおいて、既に存在する成形体の部分に形作ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項11】
前記交流磁場を、ガイドローラ(3)と、出発材料(1)のための冷却された加圧ツールとの間の領域内で出発材料(1)中にカップリングすることを特徴とする、請求項10記載の製造法。
【請求項12】
前記出発材料(1)を、テープ巻き取りプロセスにおいて、既に存在する成形体の部分上で巻き取ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項13】
前記交流磁場を、ロービングガイド(14)と、出発材料(1)のための冷却された加圧ツールとの間の領域内で出発材料(1)中にカップリングすることを特徴とする、請求項12記載の製造法。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂が高温熱可塑性物質であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の製造法。
【請求項15】
前記高温熱可塑性物質が、ポリエーテルケトンおよびポリフェニレンスルフィドを包含する高温熱可塑性物質の群から選択されていることを特徴とする、請求項14記載の製造法。
【請求項16】
強化繊維および、磁性粒子と混合されている熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の製造法に際して出発材料として使用するための半製品または中間生成物として得られる半製品において、前記半製品が、主たる伸長方向において延長するストリップであり、かつ前記磁性粒子が超常磁性粒子であることを特徴とする半製品。
【請求項17】
前記超常磁性粒子が、樹脂に0.1〜50質量%の割合で添加されていることを特徴とする、請求項16記載の半製品。
【請求項18】
前記超常磁性粒子が、2〜100nmの直径を有する磁性金属酸化物磁区からの一次粒子を有することを特徴とする、請求項16または17記載の半製品。
【請求項19】
前記超常磁性粒子中の一次粒子が、非磁性金属酸化物マトリックスまたは非磁性半金属酸化物マトリックス中に埋め込まれていることを特徴とする、請求項18記載の半製品。
【請求項20】
前記強化繊維が、延長する出発材料の主たる伸長方向で一方向に延びることを特徴とする、請求項16から19までのいずれか1項記載の半製品。
【請求項21】
前記熱可塑性樹脂が高温熱可塑性物質であることを特徴とする、請求項16から20までのいずれか1項記載の半製品。
【請求項22】
高温熱可塑性物質が、ポリエーテルケトンおよびポリフェニレンスルフィドを包含する高温熱可塑性物質の群から選択されていることを特徴とする、請求項21記載の半製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−519074(P2010−519074A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550247(P2009−550247)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001464
【国際公開番号】WO2008/101731
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001464
【国際公開番号】WO2008/101731
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】
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