説明

誘電体磁器およびコンデンサ

【課題】
高誘電率かつ安定な比誘電率の温度特性を示す誘電体磁器と、それを用いたコンデンサを提供する。
【解決手段】
チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子と、該結晶粒子間に形成された粒界相とを有する誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対してマグネシウム、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)、マンガンを酸化物換算で所定の割合で含有するとともに、チタン酸バリウム100質量部に対して、ルテチウムを酸化物換算で所定の割合で含有し、結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmである。また、上記誘電体磁器を誘電体層として適用することにより、高容量かつ容量温度特性の安定なコンデンサを形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子によって形成された誘電体磁器とそれを誘電体層に用いたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、モバイルコンピュータや携帯電話をはじめとするデジタル方式の電子機器の普及が目覚ましく、近い将来、地上デジタル放送が全国に展開されようとしている。地上デジタル放送用の受信機であるデジタル方式の電子機器として液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどがあるが、これらデジタル方式の電子機器には多くのLSIが用いられている。
【0003】
そのため、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなど、これらデジタル方式の電子機器を構成する電源回路には、バイパス用のコンデンサが数多く実装されている。ここで用いられているコンデンサは、高い静電容量を必要とする場合には、高誘電率の積層セラミックコンデンサ(例えば、特許文献1を参照)が採用される。一方、低容量でも温度特性を重視する場合には、容量変化率の小さい温度補償型の積層セラミックコンデンサ(例えば、特許文献2を参照)が採用されている。
【特許文献1】特開2002−89231号公報
【特許文献2】特開2002−294481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された高誘電率の積層セラミックコンデンサは、誘電体層が強誘電性を有する誘電体磁器の結晶粒子によって構成されているため、比誘電率の温度変化率が大きく、かつ電界−誘電分極特性におけるヒステリシスが大きいという不具合があった。
【0005】
また、特許文献1に開示された誘電体層が強誘電性の誘電体磁器を用いて形成されたコンデンサでは、電源回路上において電気誘起歪に起因するノイズ音を発生させやすい性質があることから、この性質がプラズマディスプレイなどに使用する際の障害となっていた。
【0006】
一方、温度補償型の積層セラミックコンデンサは、それを構成する誘電体磁器が常誘電性であるため、電界−誘電分極特性におけるヒステリシスが小さい。このため、強誘電性特有の電気誘起歪が起こらないという利点があるものの、誘電体磁器の比誘電率が低いために蓄電能力が低くバイパスコンデンサとしての性能を満たさないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、高誘電率かつ安定な比誘電率の温度特性を示す誘電体磁器と、それを用いたコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子と、該結晶粒子間に形成された粒界相とからなる誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.06モル、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)をREO3/2換算で0.0007〜0.03モル、マンガンをMnO換算で0.0002〜0.03モル含有するとともに、さらに前記チタン酸バリウム100質量部に対して、ルテチウムをLu換算で3.6〜52.1質量部含有し、かつ前記結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の誘電体磁器は、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、前記マグネシウムをMgO換算で0.017〜0.023モル、前記希土類元素(RE)をREO3/2換算で0.0015〜0.01モル、前記マンガンをMnO換算で0.01〜0.013モル含有するとともに、前記チタン酸バリウム100質量部に対して、前記ルテチウムをLu換算で6.3〜15.6質量部含有し、かつ前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対するチタン比が0.97〜0.98であることが望ましい。
【0010】
また、本発明のコンデンサは、前記誘電体磁器からなる誘電体層と導体層との積層体から構成されていることを特徴とする。
【0011】
なお、希土類元素をREとしたのは、周期表における希土類元素の英文表記(Rare earth)に基づくものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の誘電体磁器によれば、従来の強誘電性を有する誘電体磁器よりも比誘電率の温度変化率が小さく、また、従来の常誘電性を有する誘電体磁器に比較して高誘電率にできかつ安定な比誘電率の温度特性を示すとともに自発分極を小さくできる。
【0013】
本発明のコンデンサによれば、誘電体層として前記誘電体磁器を適用することにより、従来のコンデンサよりも高容量かつ容量温度特性の安定なコンデンサを形成できる。その為、このコンデンサを電源回路に用いた場合、電気誘起歪に起因するノイズ音の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分として、これにマグネシウムと、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)と、マンガンと、ルテチウムとを含有するものであり、その含有量はバリウム1モルに対して、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.06モル、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)をREO3/2換算で0.0007〜0.03モル、マンガンをMnO換算で0.0002〜0.03モル含有するとともに、前記チタン酸バリウム100質量部に対して、ルテチウムをLu換算で3.6〜52.1質量部含有する。
【0015】
また、本発明の誘電体磁器では、誘電体磁器を構成する結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmであることが重要である。
【0016】
誘電体磁器が上記組成および粒径の範囲であると、後述する室温(25℃)における比誘電率を180以上、125℃における比誘電率を160以上および25℃〜125℃間における比誘電率の温度係数(ε125−ε25)/(ε25(125−25))を絶対値で1000×10−6/℃以下にでき、電界−誘電分極特性におけるヒステリシスの小さい誘電体磁器を形成できる。
【0017】
このような本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムに、マグネシウムと、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)と、マンガンと、ルテチウムとが固溶したものである。また、これらの成分が固溶したチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径を0.05〜0.2μmの範囲とすることで、当該結晶粒子の結晶構造が立方晶系を主体としたものとすることができる。これにより正方晶系の結晶構造に起因する強誘電性が低下し、常誘電性を高めることができ、常誘電性が増すことで自発分極を低減できる。
【0018】
また、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の結晶構造を、立方晶系を主体とする結晶構造とすることで、比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において平坦となり、いずれも電界−誘電分極特性におけるヒステリシスが小さくなる。そのため、比誘電率が180以上でも比誘電率の温度係数の小さい誘電体磁器を得ることができる。
【0019】
即ち、上述した範囲でチタン酸バリウムに対して、マグネシウムと、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)と、マンガンとを所定量含有させると、25℃以上のキュリー温度を示し、比誘電率の温度係数が正の値を示す誘電体磁器となるが、このような誘電特性を示す誘電体磁器に対して、さらにルテチウムを含有させた場合に、さらに大きな効果が得られ、比誘電率の温度係数を小さくして温度特性を平坦化できる。この場合、比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において25℃を中心にして2つのピークを有するものとなる。
【0020】
ここで、ルテチウムはチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の粗大化を抑制する働きをもち、チタン酸バリウム100質量部に対して、ルテチウムをLu換算で3.6〜52.1質量部含有することが重要である。
【0021】
即ち、チタン酸バリウム100質量部に対するルテチウムの含有量がLu換算で3.6質量部よりも少ないと、誘電体磁器の比誘電率が高いものの、比誘電率の温度係数が大きいものとなる。一方、チタン酸バリウム100質量部に対するルテチウムの含有量がLu換算で52.1質量部よりも多いと、25℃における比誘電率が180よりも低くなり、また、125℃における比誘電率が160未満となるためである。
【0022】
また、マグネシウム、マンガン、ならびに、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)の含有量は、バリウム1モルに対して、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.06モル、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)をREO3/2換算で0.0007〜0.03モル、マンガンをMnO換算で0.0002〜0.03モル含有する。
【0023】
即ち、バリウム1モルに対するマグネシウムの含有量がMgO換算で0.01モルより少ないか、または0.06モルより多い場合には、誘電体磁器の比誘電率の温度係数が大きくなる。
【0024】
また、バリウム1モルに対するガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウムおよびエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)の含有量がRE換算で0.0007モルよりも少ないか、または0.03モルよりも多い場合には、誘電体磁器の比誘電率は高いものの、比誘電率の温度係数が大きくなる。さらにバリウム1モルに対するマンガンの含有量がMnO換算で0.0002モルよりも少ないか、または0.03モルよりも多い場合には、誘電体磁器の比誘電率の温度係数が大きくなる。
【0025】
なお、誘電体磁器に含まれる希土類元素(RE)としては、室温(25℃)における比誘電率を250以上にでき、高誘電率化が図れるという点で、ホルミウムおよびエルビウムのうちの少なくとも1種の希土類元素(RE)がより好ましい。
【0026】
さらに、本発明の誘電体磁器は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmである。
【0027】
即ち、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径を0.05〜0.2μmとすることで、そのチタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子が立方晶系を主体とする結晶構造となり、電界−誘電分極特性におけるヒステリシスが小さく常誘電性に近い特性を示すものにできる。
【0028】
これに対し、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径が0.05μmよりも小さい場合には、配向分極の寄与が無くなるため、誘電体磁器の比誘電率が低下する。一方、結晶粒子の平均粒径が0.2μmよりも大きい場合には、X線回折による測定において、正方晶系の結晶相が見られ、誘電体磁器の比誘電率の温度係数が大きくなる。
【0029】
なお、立方晶系を主体とする結晶構造とは、立方晶系のチタン酸バリウムの最も強いピークである(110)面の回折ピークの強度が異相の回折ピークの強度よりも大きい状態をいう。
【0030】
そして、本発明の誘電体磁器に含まれる上記成分の組成の好ましい範囲としては、バリウム1モルに対するマグネシウムがMgO換算で0.017〜0.023モル、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)がREO3/2換算で0.0015〜0.01モル、マンガンがMnO換算で0.01〜0.013モルであり、かつチタン酸バリウム100質量部に対してルテチウムがLu換算で6.3〜15.6質量部の範囲であるとともに、バリウム1モルに対するチタン比が0.97〜0.98であるものが良い。また、結晶粒子の平均粒径は0.14〜0.18μmがより望ましい。
【0031】
これらの範囲の誘電体磁器は、25℃における比誘電率を420以上、125℃における比誘電率を400以上、比誘電率の温度係数を絶対値で573×10−6/℃以下にすることが可能になるとともに、誘電分極のヒステリシスを示す分極電荷を0Vにおいて、40nC/cm以下にできる。
【0032】
ここで、チタン酸バリウムを主成分とする前記結晶粒子の平均粒径は、後述するように、焼成後の誘電体磁器からなる試料の破断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮り、その写真上で結晶粒子が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった結晶粒子を選択し、各結晶粒子の輪郭を画像処理して、各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求める。
【0033】
また、前記25℃および125℃における比誘電率は、後述するように、所定のペレット状に成形され、表面に導体膜が形成された誘電体磁器からなる試料を、LCRメーター4284Aを用いて周波数1.0kHz、入力信号レベル1.0V、温度25℃および125℃にて静電容量を測定し、ペレット状の試料の直径と厚み、および導体膜の面積から算出される値である。25℃〜125℃間における比誘電率の温度係数は、25℃および125℃における比誘電率を、それぞれ〔(ε125−ε25)/(ε25(125−25))ε25:25℃における比誘電率、ε125:125℃における比誘電率〕で表される式に当てはめて算出される値である。
【0034】
次に、本実施形態の誘電体磁器の製法について説明する。
【0035】
先ず、素原料粉末として、純度がいずれも99%以上のBaCO粉末と、TiO粉末と、MgO粉末と、Gd粉末,Tb粉末,Dy粉末,Ho粉末,Er粉末およびYb粉末から選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)の酸化物粉末と、炭酸マンガン(MnCO)粉末とを用いる。これらの素原料粉末を、チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、MgOを0.01〜0.06モル、Gd,Tb,Dy,Ho,ErおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)の酸化物をREO3/2換算で0.0007〜0.03モル、MnCOを0.0002〜0.03モルの割合でそれぞれ配合する。
【0036】
次に、上記した素原料粉末の混合物を湿式混合し、乾燥させた後、温度900〜1100℃で仮焼して仮焼粉末を作製し、この仮焼粉末を粉砕する。このとき、仮焼粉末の結晶構造が、立方晶系を主体とするものとなるように粒成長させることにより、常誘電性に近い比誘電率の温度特性を維持した高誘電率の誘電体磁器を得ることが可能になる。
【0037】
仮焼粉末の平均粒径は、0.04〜0.1μmであるのが好ましい。これにより、仮焼粉末において、強誘電性の発現を抑制できる。前記仮焼粉末の平均粒径は、後述するように、仮焼粉末を電子顕微鏡用試料台上に分散させて走査型電子顕微鏡により写真を撮り、その写真に映し出されている仮焼粉末の輪郭を画像処理し、その写真上で結晶粒子が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった粉末を選択し、各粉末の輪郭を画像処理して、各粉末の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求める。
【0038】
次いで、この仮焼粉末100質量部に対してLu粉末を3.5〜50質量部の割合で混合する。この後、混合粉末をペレット状に成形し、H−N中で1300℃〜1400℃の温度範囲で焼成を行うことにより本発明の誘電体磁器を得ることができる。ここで、焼成温度が1300℃よりも低い場合には、結晶粒子の粒成長と緻密化が抑えられるために誘電体磁器の密度が低いものとなる。一方、焼成温度が1400℃よりも高い場合には、誘電体磁器の結晶粒子が粒成長しすぎてしまうおそれがある。
【0039】
図1は、本発明のコンデンサの一例を示す断面模式図である。本発明の誘電体磁器を用いて、以下のようなコンデンサを形成できる。
【0040】
本発明のコンデンサは、図1に示すように、コンデンサ本体10の両端部に外部電極12が設けられたものである。コンデンサ本体10は、複数の誘電体層13と、内部電極層である複数の導体層14とが交互に積層された積層体から構成されている。そして、誘電体層13は、上述した本発明の誘電体磁器によって形成されていることが重要である。即ち、誘電体層13として、高誘電率かつ安定な比誘電率の温度特性を示し、自発分極の小さい上記誘電体磁器を適用することにより、従来のコンデンサよりも高容量かつ容量温度特性の安定なコンデンサになる。そのため、このコンデンサを電源回路に用いた場合には、電気誘起歪に起因するノイズ音の発生を抑制することができる。
【0041】
誘電体層13の厚みは1〜30μmであることが望ましい。特に、誘電体層13の厚みが5μm以下であると、誘電体層13の薄層化によりコンデンサの静電容量が高められるという利点がある。
【0042】
導体層14は、高積層化しても製造コストを抑制できるという点でNiやCuなどの卑金属が望ましく、特に、誘電体層13との同時焼成を図るという点でNiがより望ましい。この導体層14の厚みは、平均で1μm以下が好ましい。
【0043】
このようなコンデンサを作製する場合には、先ず、上述した混合粉末をグリーンシートに成形する。ついで、導体層14となる導体ペーストを調製して前記グリーンシートの表面に印刷した後積層し焼成して積層体1を形成する。しかる後、積層体1の両端面にさらに導体ペーストを印刷して焼成し、外部電極12を形成することにより本発明のコンデンサを得ることができる。
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
前記評価試料を以下のようにして作製した。先ず、いずれも純度が99.9%のBaCO粉末、TiO粉末、MgO粉末、Gd粉末、MnCO粉末を用意し、表1に示す割合で調合し混合粉末を調製した。なお、表1に示すマグネシウム(Mg)、ガドリニウム(Gd)およびマンガン(Mn)の量は、それぞれMgO、GdO3/2およびMnCOに相当する量である。チタン(Ti)はバリウム(Ba)1モルに対するモル比である。
【0046】
次に、上記で調製した混合粉末を温度1000℃にて仮焼して仮焼粉末を作製した後、得られた仮焼粉末を粉砕して表1に示す平均粒径を有する仮焼粉末を得た。仮焼粉末の平均粒径は、得られた仮焼粉末を電子顕微鏡用試料台上に分散させて走査型電子顕微鏡により写真を撮り、その写真に映し出されている仮焼粉末の輪郭を画像処理し、その写真上で仮焼粉末が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった粉末を選択し、各粉末の輪郭を画像処理して、各粉末の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求めた。
【0047】
この後、仮焼粉末100質量部に対して、純度99.9%のLu粉末を表1に示す割合で混合した。この混合粉末を造粒し、直径16.5mm、厚さ1mmの形状のペレット状に成形した。
【0048】
次に、各組成のペレットを10個ずつ、H−N中にて、表1に示す温度で焼成して、試料としての誘電体磁器を得た。チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径は、以下のようにして求めた。先ず、焼成後の試料の破断面を、#1200の研磨紙を用いて粗研磨した後、硬質バフ上に塗った粒径3μmのダイヤモンドペーストを用いて研磨を行い、さらに軟質バフ上に粒径0.3μmのアルミナ砥粒を塗り、仕上げ研磨を行った。次いで、酸性水溶液(塩酸−フッ化水素)によりエッチングを行った後、走査型電子顕微鏡を用いて内部組織の写真を撮った。次に、その写真上で結晶粒子が50〜100個入る円を描き、円内および円周にかかった結晶粒子を選択し、各結晶粒子の輪郭を画像処理して、各粒子の面積を求め、同じ面積をもつ円に置き換えたときの直径を算出し、その平均値より求めた。
【0049】
焼成後の試料の表面にインジウム・ガリウムの導体層を印刷して誘電特性の評価試料を得た(表2中の試料No.1−1〜35)。
【0050】
作製した誘電体磁器であるこれらの試料は、LCRメーター4284Aを用いて周波数1.0kHz、入力信号レベル1.0V、温度25℃および125℃にて静電容量を測定し、試料の直径と厚みおよび導体層の面積から25℃および125℃の比誘電率を算出した。また、比誘電率の温度係数は、25℃および125℃における比誘電率を、それぞれ前記〔(ε125−ε25)/(ε25(125−25)) ε25:25℃における比誘電率、ε125:125℃における比誘電率〕式に当てはめて算出した。これらの測定は試料数を各10個とし、その平均値を求めた。
【0051】
また、得られた試料について、電気誘起歪の大きさを誘電分極(分極電荷)の測定によって求めた。この場合、電圧を±1250Vの範囲で変化させた時の、0Vにおける電荷量(残留分極)の値で評価した。
【0052】
また、試料の組成分析は、ICP(Inductively Coupled Plasma)分析もしくは原子吸光分析により行った。この場合、得られた試料を硼酸および炭酸ナトリウムに混合し、溶融させたものを塩酸に溶解させて、まず、原子吸光分析により試料に含まれる元素の定性分析を行い、次いで、特定した各元素について標準液を希釈したものを標準試料として、ICP発光分光分析にかけて定量化した。また、各元素の価数を周期表に示される価数として酸素量を求めた。
【0053】
表1に調製組成、仮焼粉末の平均粒径および焼成温度を、表2に焼成後の結晶粒子の平均粒径と特性(比誘電率、比誘電率の温度係数の絶対値、比誘電率の温度変化の曲線、および分極電荷)の結果をそれぞれ示す。
【0054】
ここで、表1におけるLuの添加量は、仮焼粉末100質量部に対する割合である。一方、表2におけるLuの含有量は、誘電体磁器(試料)中におけるチタン酸バリウム100質量部に対する割合である。また、表2に示すMg、希土類元素(RE)およびMnの量は、酸化物換算量である。表2中の「結晶粒子の平均粒径」は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子の平均粒径を意味する。表2中の「比誘電率の温度係数の絶対値」は前記で求めた比誘電率の温度係数における平均値の絶対値を意味する。なお、表2中、比誘電率の温度変化の曲線の欄において○を付してないものは、25℃を中心にして2つのピークがみられなかった試料を、分極電荷の欄において○を付してないものは、分極電荷が40nC/cm以下ではない試料をそれぞれ示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表2の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器である試料No.1−2〜1−8,1−11〜1−15,1−18〜1−21,1−23〜1−27,1−29,1−30,1−32および1−35では、25℃における比誘電率が238以上、125℃における比誘電率が215以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で989×10−6/℃以下であった。
【0058】
特に、バリウム1モルに対して、MgOを0.017〜0.023モル、GdをGdO3/2として0.0015〜0.01モル、MnOを0.01〜0.013モル、主成分であるチタン酸バリウム100質量部に対するLuの含有量が6.3〜15.6質量部であり、バリウム1モルに対するチタン比が0.97〜0.98である試料No.1−4〜1−6,1−12〜1−14,1−19,1−20,1−25および1−29では、25℃における比誘電率が555以上、125℃における比誘電率が528以上、比誘電率の温度係数が絶対値で494×10−6/℃以下であり、比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において2つのピークを有し、かつ電界−誘電分極特性の測定において大きなヒステリシスが見られなかった。ヒステリシスのほとんど見られない試料は、分極電荷が0Vにおいて40nC/cm以下であった。図2に、実施例1で得た誘電体磁器(試料No.1−4)のX線回折図を示す。図2から明らかなように、試料No.1−4の誘電体磁器は結晶構造が立方晶系を主体とするものである。また、本発明の範囲内の他の試料についても結晶構造が立方晶系を主体とするものであった。
【0059】
これに対して、本発明の範囲外の試料(試料No.1−1,1−9,1−10,1−16,1−17,1−22,1−28,1−31,1−33および1−34)は、いずれも比誘電率の温度係数が絶対値で1000×10−6/℃よりも大きいものであった。
【0060】
[実施例2]
次に、実施例1に示した各組成のうち添加成分であるGdをTbに変えた以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し評価した(試料No.2−1〜2−35)。
【0061】
表3に調製組成、仮焼粉末の平均粒径および焼成温度を、表4に焼成後の結晶粒子の平均粒径と特性(比誘電率、比誘電率の温度係数の絶対値、比誘電率の温度変化の曲線、および分極電荷)の結果をそれぞれ示す。
【0062】
ここで、表3におけるLuの添加量および表4におけるLuの含有量の割合は、それぞれ実施例1で示した割合と同様の割合である。また、表4に示すMg、希土類元素(RE)およびMnの量も実施例1と同様に酸化物換算量である。また、表4中の「結晶粒子の平均粒径」および「比誘電率の温度係数の絶対値」は実施例1の場合と同じ意味である。さらに、表4中に記した比誘電率の温度変化の曲線および分極電荷の欄における○の有無についても実施例1と同じ効果を示す意味である。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
表4の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器である試料No.2−2〜2−8,2−11〜2−15,2−18〜2−21,2−23〜2−27,2−29,2−30,2−32および2−35では、25℃における比誘電率が243以上、125℃における比誘電率が220以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で995×10−6/℃以下であった。
【0066】
特に、バリウム1モルに対して、MgOを0.017〜0.023モル、TbをTbO3/2として0.0015〜0.01モル、MnOを0.01〜0.013モル、主成分であるチタン酸バリウム100質量部に対するLuの含有量が6.3〜15.6質量部であり、バリウム1モルに対するチタン比が0.97〜0.98である試料No.2−4〜2−6、2−12〜2−14、2−19、2−20、2−25および2−29では、25℃における比誘電率が566以上、125℃における比誘電率が540以上、比誘電率の温度係数が絶対値で493×10−6/℃以下であり、比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において2つのピークを有し、かつ電界−誘電分極特性の測定において大きなヒステリシスが見られなかった。ヒステリシスのほとんど見られない試料は、分極電荷が0Vにおいて40nC/cm以下であった。この実施例2で得た誘電体磁器(試料No.2−2〜2−8,2−11〜2−15,2−18〜2−21,2−23〜2−27,2−29,2−30,2−32および2−35)は、図2に示したX線回折図と同様、いずれも結晶構造が立方晶系を主体とするものであった。
【0067】
これに対して、本発明の範囲外の試料(試料No.2−1,2−9,2−10,2−16,2−17,2−22,2−28,2−31,2−33および2−34)は、比誘電率の温度係数が絶対値で1000×10−6/℃よりも大きいものであった。
【0068】
[実施例3]
次に、実施例1に示した各組成のうち添加成分であるGdをDyに変えた以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し評価した(試料No.3−1〜3−35)。
【0069】
表5に調製組成、仮焼粉末の平均粒径および焼成温度を、表6に焼成後の結晶粒子の平均粒径と特性(比誘電率、比誘電率の温度係数の絶対値、比誘電率の温度変化の曲線、および分極電荷)の結果をそれぞれ示す。
【0070】
ここで、表5におけるLuの添加量および表6におけるLuの含有量の割合は、それぞれ実施例1で示した割合と同様の割合である。また、表6に示すMg、希土類元素(RE)およびMnの量も実施例1と同様に酸化物換算量である。また、表6中の「結晶粒子の平均粒径」および「比誘電率の温度係数の絶対値」は実施例1の場合と同じ意味である。さらに、表6中に記した比誘電率の温度変化の曲線および分極電荷の欄における○の有無についても実施例1と同じ効果を示す意味である。
【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
表6の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器である試料No.3−2〜3−8,3−11〜3−15,3−18〜3−21,3−23〜3−27,3−29,3−30,3−32および3−35では、25℃における比誘電率が180以上、125℃における比誘電率が162以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で997×10−6/℃以下であった。
【0074】
特に、バリウム1モルに対して、MgOを0.017〜0.023モル、DyをDyO3/2として0.0015〜0.01モル、MnOを0.01〜0.013モル、主成分であるチタン酸バリウム100質量部に対するLuの含有量が6.3〜15.6質量部であり、バリウム1モルに対するチタン比が0.97〜0.98である試料No.2−4〜2−6、2−12〜2−14、2−19、2−20、2−25および2−29では、25℃における比誘電率が420以上、125℃における比誘電率が400以上、比誘電率の温度係数が絶対値で573×10−6/℃以下であり、比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において2つのピークを有し、かつ電界−誘電分極特性の測定において大きなヒステリシスが見られなかった。ヒステリシスのほとんど見られない試料は、分極電荷が0Vにおいて40nC/cm以下であった。この実施例3で得た誘電体磁器(試料No.3−2〜3−8,3−11〜3−15,3−18〜3−21,3−23〜3−27,3−29,3−30,3−32および3−35)は、図2に示したX線回折図と同様、いずれも結晶構造が立方晶系を主体とするものであった。
【0075】
これに対して、本発明の範囲外の試料(試料No.3−1,3−9,3−10,3−16,3−17,3−22,3−28,3−31,3−33および3−34)は、比誘電率の温度係数が絶対値で1000×10−6/℃よりも大きいものであった。
【0076】
[実施例4]
次に、実施例1に示した各組成のうち添加成分であるGdをHoに変えた以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し評価した(試料No.4−1〜4−35)。
【0077】
表7に調製組成、仮焼粉末の平均粒径および焼成温度を、表8に焼成後の結晶粒子の平均粒径と特性(比誘電率、比誘電率の温度係数の絶対値、比誘電率の温度変化の曲線、および分極電荷)の結果をそれぞれ示す。
【0078】
ここで、表7におけるLuの添加量および表8におけるLuの含有量の割合は、それぞれ実施例1で示した割合と同様の割合である。また、表8に示すMg、希土類元素(RE)およびMnの量も実施例1と同様に酸化物換算量である。また、表8中の「結晶粒子の平均粒径」および「比誘電率の温度係数の絶対値」は実施例1の場合と同じ意味である。さらに、表8中に記した比誘電率の温度変化の曲線および分極電荷の欄における○の有無についても実施例1と同じ効果を示す意味である。
【0079】
【表7】

【0080】
【表8】

【0081】
表8の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器である試料No.4−2〜4−8,4−11〜4−15,4−18〜4−21,4−23〜4−27,4−29,4−30,4−32および4−35では、25℃における比誘電率が256以上、125℃における比誘電率が233以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で980×10−6/℃以下であった。
【0082】
特に、バリウム1モルに対して、MgOを0.017〜0.023モル、HoをHoO3/2として0.0015〜0.01モル、MnOを0.01〜0.013モル、主成分であるチタン酸バリウム100質量部に対するLuの含有量が6.3〜15.6質量部であり、バリウム1モルに対するチタン比が0.97〜0.98である試料No.4−4〜4−6,4−12〜4−14,4−19,4−20,4−25および4−29では、25℃における比誘電率が596以上、125℃における比誘電率が569以上、比誘電率の温度係数が絶対値で477×10−6/℃以下であり、比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において2つのピークを有し、かつ電界−誘電分極特性の測定において大きなヒステリシスが見られなかった。ヒステリシスのほとんど見られない試料は、分極電荷が0Vにおいて40nC/cm以下であった。この実施例4で得た誘電体磁器(試料No.4−2〜4−8,4−11〜4−15,4−18〜4−21,4−23〜4−27,4−29,4−30,4−32および4−35)は、図2に示したX線回折図と同様、いずれも結晶構造が立方晶系を主体とするものであった。
【0083】
これに対して、本発明の範囲外の試料(試料No.4−1,4−9,4−10,4−16,4−17,4−22,4−28,4−31,4−33および4−34)は、比誘電率の温度係数が絶対値で1000×10−6/℃よりも大きいものであった。
【0084】
[実施例5]
次に、実施例1に示した各組成のうち添加成分であるGdをErに変えた以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し評価した(試料No.5−1〜5−35)。
【0085】
表9に調製組成、仮焼粉末の平均粒径および焼成温度を、表10に焼成後の結晶粒子の平均粒径と特性(比誘電率、比誘電率の温度係数の絶対値、比誘電率の温度変化の曲線、および分極電荷)の結果をそれぞれ示す。
【0086】
ここで、表9におけるLuの添加量および表10におけるLuの含有量の割合は、それぞれ実施例1で示した割合と同様の割合である。また、表10に示すMg、希土類元素(RE)およびMnの量も実施例1と同様に酸化物換算量である。また、表10中の「結晶粒子の平均粒径」および「比誘電率の温度係数の絶対値」は実施例1の場合と同じ意味である。さらに、表10中に記した比誘電率の温度変化の曲線および分極電荷の欄における○の有無についても実施例1と同じ効果を示す意味である。
【0087】
【表9】

【0088】
【表10】

【0089】
表10の結果から明らかなように、本発明の誘電体磁器である試料No.5−2〜5−8,5−11〜5−15,5−18〜5−21,5−23〜5−27,5−29,5−30,5−32および5−35では、25℃における比誘電率が258以上、125℃における比誘電率が236以上であり、25〜125℃における比誘電率の温度係数が絶対値で974×10−6/℃以下であった。
【0090】
特に、バリウム1モルに対して、MgOを0.017〜0.023モル、ErをErO3/2として0.0015〜0.01モル、MnOを0.01〜0.013モル、主成分であるチタン酸バリウム100質量部に対するLuの含有量が6.3〜15.6質量部であり、バリウム1モルに対するチタン比が0.97〜0.98である試料No.5−4〜5−6,5−12〜5−14,5−19,5−20,5−25および5−29では、25℃における比誘電率が602以上、125℃における比誘電率が575以上、比誘電率の温度係数が絶対値で471×10−6/℃以下であり、比誘電率の変化率を示す曲線が−55℃〜125℃の温度範囲において2つのピークを有し、かつ電界−誘電分極特性の測定において大きなヒステリシスが見られなかった。ヒステリシスのほとんど見られない試料は、分極電荷が0Vにおいて40nC/cm以下であった。この実施例5で得た誘電体磁器(試料No.5−2〜5−8,5−11〜5−15,5−18〜5−21,5−23〜5−27,5−29,5−30,5−32および5−35)は、図2に示したX線回折図と同様、いずれも結晶構造が立方晶系を主体とするものであった。
【0091】
これに対して、本発明の範囲外の試料(試料No.5−1,5−9,5−10,5−16,5−17,5−22,5−28,5−31,5−33および5−34)は、比誘電率の温度係数が絶対値で1000×10−6/℃よりも大きいものであった。
【0092】
なお、試料No.5−4の組成において、Erの量の半分をHoで置き換えて調製し、同様の温度で焼成して誘電体磁器を作製したところ、結晶粒子の平均粒径は試料No.5−4と同様の値を示すとともに、結晶構造は立方晶系であった。また、25℃および125℃における比誘電率および比誘電率の温度係数の絶対値は、試料No.5−4の結果と同様の特性を有するものであり、また、比誘電率の温度変化の曲線には2つのピークがあり、分極電荷は40nC/cm以下であった。
【0093】
また、試料No.5−4の組成において、ErをYbに変えて調製し、同様の温度で焼成して作製した誘電体磁器についても、結晶粒子の平均粒径は、試料No.5−4と同様の値を示すとともに、結晶構造は立方晶系であった。また、25℃および125℃における比誘電率および比誘電率の温度係数の絶対値は、試料No.5−4の結果と同様の特性を有するものであり、また、比誘電率の温度変化の曲線には2つのピークがあり、分極電荷は40nC/cm以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明のコンデンサの一例を示す断面模式図である。
【図2】実施例1で得た誘電体磁器(試料No.1−4)のX線回折図である。
【符号の説明】
【0095】
10 コンデンサ本体
12 外部電極
13 誘電体層
14 導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子と、該結晶粒子間に形成された粒界相とからなる誘電体磁器であって、前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、マグネシウムをMgO換算で0.01〜0.06モル、ガドリニウム,テルビウム,ディスプロシウム,ホルミウム,エルビウムおよびイッテルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素(RE)をREO3/2換算で0.0007〜0.03モル、マンガンをMnO換算で0.0002〜0.03モル含有するとともに、さらに前記チタン酸バリウム100質量部に対して、ルテチウムをLu換算で3.6〜52.1質量部含有し、かつ前記結晶粒子の平均粒径が0.05〜0.2μmであることを特徴とする誘電体磁器。
【請求項2】
前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対して、前記マグネシウムをMgO換算で0.017〜0.023モル、前記希土類元素(RE)をRE換算で0.0015〜0.01モル、前記マンガンをMnO換算で0.01〜0.013モル含有するとともに、前記チタン酸バリウム100質量部に対して、前記ルテチウムをLu換算で6.3〜15.6質量部含有し、かつ前記チタン酸バリウムを構成するバリウム1モルに対するチタン比が0.97〜0.98であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の誘電体磁器からなる誘電体層と導体層との積層体から構成されていることを特徴とするコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−292678(P2009−292678A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147584(P2008−147584)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】