説明

誘電体磁器組成物およびこれを用いた電子部品

【課題】所望の誘電率30〜60を有するBaO−TiO系セラミックスの低損失特性を維持しつつ低温焼成化が可能で、樹脂基板への搭載時に問題となる線膨張のマッチングをとることができるようにする。
【解決手段】誘電体磁器組成物は、主成分として、組成式(BaO・xTiO)と表される成分を含み、該組成式におけるBaOに対するTiOのモル比xが、4.6≦x≦8の範囲内にあり、
前記主成分に対して副成分として、ホウ素酸化物および銅酸化物を含むとともに、これらの副成分をそれぞれaB、bCuOと表したとき、
前記主成分に対する前記各副成分の重量比率を表すaおよびbがそれぞれ
0.5(重量%)≦a≦5(重量%)
0.1(重量%)≦b≦3(重量%)
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ag/Cu等の低融点導体材料を内部配線として使用可能な低温焼結性を有する誘電体磁器組成物およびこれを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話等の移動体通信では、数百MHz〜数GHz程度のいわゆる準マイクロ波と呼ばれる高周波帯が使用されている。そのため、移動体通信機器に用いられる共振器、フィルタ、コンデンサ等の電子部品においても高周波特性が重要視されている。
【0003】
このような電子部品に関して、目的によっては、使用周波数における所望の誘電率が30〜60で、誘電損失の小さな誘電体磁器組成物が要望される場合がある。誘電損失の評価には、例えばQ=1/tanδと共振周波数fとの積であるQf値で示される品質係数が用いられ、誘電損失が小さくなれば品質係数Qf値は大きくなる。誘電損失は高周波部品の電力損失を意味するので、品質係数Qf値の大きな誘電体磁器組成物が求められている。
【0004】
このように誘電率が30〜60で、誘電損失の小さな誘電体材料としては、BaO−TiO系セラミックスを主成分とした材料が多く提案されている。しかしながら、提案されているBaO−TiO系セラミックスの場合、焼結温度が1000℃以上に高いため、BaO−TiO系セラミックス基板上にAg/Cu等の電気伝導度に優れる内部電極を形成して多層に積層しても同時焼成が困難であるという問題がある。そこで、このようなAg/Cu等の低融点導体材料を内部電極に用いた多機能基板を同時焼成により得ようとする場合には、例えば900℃程度まで焼成温度を低下させる必要がある。
【0005】
特許文献1には、BaO−TiO系セラミックスを主成分とし、副成分として少なくともBまたはBをガラス成分の一つとして含むガラスを配合させることで、高周波特性を維持しつつ低温焼成化させた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−325641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の誘電体磁器組成物を用いたフィルタ等の電子部品は、樹脂基板上に半田付けにより搭載されることが多い。この場合、樹脂基板としては、一般にFR−4グレードの銅張り積層板が用いられる。FR−4グレードの樹脂基板の場合、その素材の線熱膨張係数は13ppm/℃程度である。しかしながら、特許文献1等の従来技術にあっては、樹脂基板上に搭載される電子部品を構成する誘電体磁器組成物の線膨張係数に関しては、特に考慮されておらず、例えば9ppm/℃よりも低いままであり、樹脂基板の線熱膨張係数との間に違いのある状況にある。この結果、高温状況下において、両者の線熱膨張係数の違いにより、樹脂基板側が伸びたとしても誘電体磁器組成物側の伸びは少なく、かつ、セラミックスは堅いため樹脂基板の伸びに追従して反ることもないため、半田付け部分が外れてしまうとか樹脂基板にクラックが生じてしまう場合がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、所望の誘電率30〜60を有するBaO−TiO系セラミックスの低損失特性を維持しつつ低温焼成化が可能で、樹脂基板への搭載時に問題となる線膨張のマッチングをとることができる誘電体磁器組成物およびこれを用いた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる誘電体磁器組成物は、主成分として、組成式(BaO・xTiO)と表される成分を含み、該組成式におけるBaOに対するTiOのモル比xが、4.6≦x≦8の範囲内にあり、前記主成分に対して副成分として、ホウ素酸化物および銅酸化物を含むとともに、これらの副成分をそれぞれaB、bCuOと表したとき、前記主成分に対する前記各副成分の重量比率を表すaおよびbがそれぞれ
0.5(重量%)≦a≦5(重量%)
0.1(重量%)≦b≦3(重量%)
であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる電子部品は、上記発明に記載の誘電体磁器組成物と内部配線とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明者らは、主成分のBaO−TiO系セラミックスに対して、ホウ素酸化物および銅酸化物を副成分として適正量配合させるとともに、主成分中のBaOに対するTiOのモル比xの範囲を適正に制御することで、誘電体磁器組成物の電気的特性を維持しつつその線膨張係数を変化させて搭載すべき樹脂基板の線膨張係数に近付け得ることを見出したものである。よって、上記のようにモル比xや重量比率a,bの範囲が適正化された本発明によれば、所望の誘電率30〜60を有するBaO−TiO系セラミックスの低損失特性を維持しつつ低温焼成化が可能で、樹脂基板への搭載時に問題となる線膨張のマッチングをとることができる誘電体磁器組成物およびこれを用いた電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施の形態の電子部品の一例としてバンドパスフィルタの構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本実施の形態の誘電体磁器組成物は、組成式(BaO・xTiO)と表される主成分を含んでいる。さらに、本実施の形態の誘電体磁器組成物は、この主成分に対して副成分として、ホウ素酸化物(例えば、酸化ホウ素B)および銅酸化物(例えば、酸化銅CuO)を所定量含有している。
【0015】
まず、BaO−TiO系セラミックスを主成分として含むのは、目的とする誘電率εr=30〜60を有し、かつ、低損失材料として高い品質係数Qf値を有するためである。ここで、組成式(BaO・xTiO)におけるBaOに対するTiOのモル比xは、4.6≦x≦8の範囲内となるように構成されている。
【0016】
モル比xの値の範囲を制御することで、生成される誘電体磁器組成物の線膨張係数の値を変えることができる。ここで、モル比xの値が4.6未満になると、すなわち、BaOに対するTiOの含有比率が少なくなり過ぎると、線膨張係数の値が目的とする値よりも小さすぎて、対象となる樹脂基板の線膨張係数との差が大きくなってしまう。一方、モル比xの値が8を超えると、すなわち、BaOに対するTiOの含有比率が多くなり過ぎると、線膨張係数の値は若干大きくなるものの、目的以上の誘電率εrになってしまうとともに、品質係数Qf値が小さくなる傾向を示し電気的特性が悪化する。よって、BaOに対するTiOのモル比xは、適正範囲として、4.6≦x≦8の範囲内とするものである。
【0017】
また、副成分として、ホウ素酸化物および銅酸化物を含むのは、主成分であるBaO−TiO系セラミックスの粉末に、焼成時に液相を形成する焼結助剤として少量添加させることで、Ag/Cu等の低融点導体材料との同時焼成を可能にする低温焼成化のためである。特に、銅酸化物を含むのは、モル比xが所望の範囲内において、低温焼結化を図るとともに、Qf値を維持するためである。
【0018】
ここで、本発明の目的の一つは、Ag/Cu等の低融点導体材料を内部配線とする電子部品に用いられる低温焼結可能な誘電体磁器組成物を提供することにあり、品質係数Qf値の特性低下は電子部品の損失が大きくなることを意味するので、目標値以上、例えばQf値=10000GHz以上を維持しながら、低温焼結化を図るものである。このような観点から、主成分に対するホウ素酸化物の重量比率を表すaは、酸化ホウ素B換算で0.5(重量%)≦a≦5(重量%)の範囲に設定され、主成分に対する銅酸化物の重量比率を表すbは、酸化銅CuO換算で0.1(重量%)≦a≦3(重量%)の範囲に設定されている。
【0019】
ホウ素酸化物は、少量のほうが主成分の特性(Qf値)を活かすのに有効となるが、0.5重量%よりも少なくなるとAg/Cu等の導体材料との同時焼成が可能な温度までの低温焼成化が難しくなるとともに、Qf値も低下してしまうため、0.5重量%以上とした。また、ホウ素酸化物は、含有量を増加させる程、低温焼成化は容易となるものの、5重量%を超えると、主成分の特性(Qf値)が低下してしまうとともに、低温焼成化も難しくなり、焼結後の密度が低くなってしまうため、5重量%以下とした。好適には、ホウ素酸化物は、2.5重量%程度含まれていることが望ましい。
【0020】
銅酸化物は、少量のほうが主成分の特性(Qf値)を活かすのに有効となるが、0.1重量%よりも少なくなるとAg/Cu等の導体材料との同時焼成が可能な温度までの低温焼成化が難しくなるとともに、Qf値も低下してしまうため、0.1重量%以上とした。また、銅酸化物は、含有量を増加させる程、低温焼成化は容易となるものの、3重量%を超えると、主成分の特性(Qf値)が低下してしまうとともに、低温焼成化も難しくなり、焼結後の密度が低くなってしまうため、3重量%以下とした。好適には、銅酸化物は、1重量%程度含まれていることが望ましい。
【0021】
また、本発明においては、副成分として、ホウ素酸化物および銅酸化物に加えて、わずかな亜鉛酸化物(例えば、酸化亜鉛ZnO)を添加させることで、一層の低温焼成化に効果がある。主成分に対する亜鉛酸化物の重量比率を表すcは、酸化亜鉛ZnOで0.1(重量%)≦c≦5(重量%)の範囲に設定される。
【0022】
ただし、亜鉛酸化物を含め、本発明の誘電体磁器組成物は、ガラス成分を含まない組成で構成されている。
【0023】
次に、本実施の形態の誘電体磁器組成物およびこれを用いた電子部品の製造法について説明する。
【0024】
(1)原材料準備
まず、主成分である炭酸バリウム(BaCO)と酸化チタンTiOの粉末を所望のモル比x(4.6≦x≦8)にて所定量用意するとともに、添加する副成分として酸化ホウ素Bと酸化銅CuOとを所定量用意する。また、必要に応じて、副成分として酸化亜鉛ZnOを所定量用意する。
【0025】
(2)一次混合
上記の粉末を混合して原料混合粉末とする。混合は、乾式混合、湿式混合等の混合方式、例えば、ボールミルで純水、エタノール等の溶媒を用いた混合方式により行うことができる。混合時間は4〜24時間程度とすればよい。混合が完了した後、原料混合粉末を100〜200℃、好ましくは120〜140℃で12〜36時間程度乾燥させる。
【0026】
(3)一次仮焼
上記混合粉末を1100〜1400℃にて1〜10時間程度で仮焼を行う。
【0027】
(4)粉砕および二次混合
その後、仮焼をした粉末を粉砕と同時に上記副成分を混合し、乾燥する。粉砕は乾式粉砕、湿式粉砕等の粉砕方式、例えば、ボールミルで純水、エタノール等の溶媒を用いた粉砕方式により行うことができる。粉砕時間は所望の平均粒径が得られるように行う。粉砕混合時間は16〜100時間とすればよい。粉砕した粉末の乾燥は100〜200℃、好ましくは120〜140℃の処理温度で12〜36時間程度とすればよい。
【0028】
(5)二次仮焼
本焼成の焼結性を上げるために二次仮焼を行う。温度は600〜800℃にて、1〜10時間程度行う。
【0029】
(6)二次粉砕
その後、仮焼をした原料混合粉末を粉砕して乾燥する。粉砕は乾式粉砕、湿式粉砕等の粉砕方式、例えば、ボールミルで純水、エタノール等の溶媒を用いた粉砕方式により行うことができる。粉砕時間は4〜24時間程度とすればよい。粉砕した粉末の乾燥は、100〜200℃、好ましくは120〜140℃の処理温度で12〜36時間程度とすればよい。
【0030】
(7)成型
得られた粉末に対して、必要に応じて有機ビヒクルを添加して、ペーストを調製し、ポリエチレンテレフタレート等の基材フィルム上に該ペーストを塗布する。塗布後、乾燥により有機ビヒクルを除去してグリーンシートを形成する。なお、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。溶媒としては、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、イソプロピルアルコール等を、バインダとしては、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等を用いることができる。また、有機ビヒクルは、ジ−n−ブチルフタレート等の可塑剤等を含んでいてもよい。なお、成型はシート法に限られない。印刷法等の湿式成型の他、プレス成型等の乾式成型でもよく、所望の形状に応じて成型方法を適宜選択することが可能である。
【0031】
(8)電極形成
形成したグリーンシート上に、所定形状の内部電極が形成されるようにAg又はCuを含有する導電性ペーストを塗布する。このように、導電性ペーストが塗布されたグリーンシートを必要に応じて複数作製し、積層して積層体を得る。また、この積層体には、所定形状の端子が形成されるように導電性ペーストを塗布する。その後、乾燥により導電性ペーストから有機ビヒクルを除去する。
【0032】
(9)焼成
上述の誘電体の製造方法における焼成工程及びアニール工程と同様の工程を行う焼成は、例えば、空気中のような酸素雰囲気にて行うことが望ましく、焼成温度は内部電極として用いるAgまたはAgを主成分とする合金等の導体の融点以下、例えば860〜1000℃、好ましくは880〜940℃であることが求められる。
【0033】
(10)切断
冷却後切断により個品化することで、誘電体磁器組成物と内部配線とが同時焼成された電子部品が完成する。
【0034】
図1は、このような製造方法に従い製造された電子部品の一例として、携帯電話等における高周波通信用のバンドパスフィルタの構成例を示す概略断面図である。すなわち、上述の誘電体磁器組成物からなる誘電体グリーンシートを作成し、必要に応じてスルーホール加工を形成し、Agペーストをスクリーン印刷法で形成・乾燥させたグリーンシートを積層後、焼成・切断加工を経て個品化したものである。図1中に示すバンドパスフィルタ1において、2は、誘電体磁器組成物(積層セラミックス)からなる誘電体部分であり、L1は、インダクタを構成するAg導体によるコイルパターン部分であり、C1〜C3は、Ag導体により形成されるキャパシタパターン部分であり、3は、L1とC1とを導通させるAg導体が充填されたビアホール部分であり、LC共振回路が形成されている。
【0035】
主成分である組成式(BaO・xTiO)におけるBaOに対するTiOのモル比xが、4.6≦x≦8の範囲内にあり、主成分に対する副成分としてBを2.5重量%、CuOを1重量%含む組成からなる誘電体磁器組成物2を用いて作製されたバンドパスフィルタ1を、樹脂基板上に半田付けして搭載した。用いた樹脂基板は、線膨張係数=13ppm/℃の素材からなるFR−4グレードの樹脂基板と、線膨張係数=10ppm/℃の素材により形成された樹脂基板との2種類とした。作製されたバンドパスフィルタ1は、いずれも線膨張係数が10ppm/℃に近く、樹脂基板との差が小さいため、熱衝撃試験(−55〜+125℃−1000サイクル)を行っても、誘電体磁器組成物2にクラックが入ったり、半田部分が外れるような不具合は生じなかったものである。
【0036】
なお、誘電体磁器組成物を用いた電子部品としては、図1に例示したような誘電体磁器組成物と配線パターンのみからなるものであってもよく、さらには外部に素子が個別に実装されたものであってもよい。
【実施例】
【0037】
以下、上記の実施の形態に即した、本発明の誘電体磁器組成物の実施例について説明する。まず、本実施例では、主成分である組成式(BaO・xTiO)におけるBaOに対するTiOのモル比xの値を変えた場合に形成される誘電体磁器組成物の線膨張係数α[ppm/℃]の値を求めたものである。結果を表1に示す。ここで、線膨張係数α[ppm/℃]の値は、基準温度を50℃とした場合の250℃における数値で示している。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示す結果によれば、誘電体磁器組成物を含む電子部品が搭載されるFR−4グレードのプリント基板(樹脂基板)の素材による線膨張係数13[ppm/℃]を目標値とした場合、線膨張係数αが9[ppm/℃]以上であれば、プリント基板との差が小さく良好といえる。すなわち、BaOに対するTiOのモル比xとしては、4.6以上であればよいことが分かる。一方、モル比xの値が大きい程、線膨張係数αの値が大きくなる傾向にあるが、α=10[ppm/℃]程度に向けて飽和する傾向にあることも分かる。
【0040】
ついで、線膨張係数αが所望の値となるモル比xの代表例として、x=5、x=5.5、x=6の場合のそれぞれについて、副成分として、酸化ホウ素B、酸化亜鉛ZnO、酸化銅CuOの添加量(重量%)を変えた場合に形成される誘電体磁器組成物の特性値を求め、その良否を判定した。
【0041】
結果を表2〜表4に示す。なお、この結果は、焼成温度を933℃(炉の設定温度)とし、焼成時間を2時間とした場合の特性値を示している。品質係数Qfの良否判定は、10000GHz未満を×、10000GHz以上を○として評価した。なお、Qfの評価は5GHzでの測定値である。また、誘電率εrの良否判定は、30〜60を○として評価した。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
このような結果によれば、いずれの場合も誘電率εrは、30以上であり、目標とする30〜60の範囲内にある。また、副成分として酸化銅CuOを含んでいない場合には、いずれも適正な低温焼成化が難しく、焼結性が悪くて焼結後の密度が低くなってしまうとともに、Qf値が極端に低下してしまうことが分かる。すなわち、所望の電気的特性を維持しつつ線膨張係数αが所望の値となるモル比xを確保するためには、副成分として適量の酸化銅CuOの添加が必須であることが分かる。一方、副成分として酸化亜鉛ZnOを含んでいない場合でも、所望の電気的特性が維持されており、酸化亜鉛ZnOは副成分として必須でないことも分かる。ただし、酸化亜鉛ZnOを副成分として添加することにより、低温焼成化に有効であるので、適量の酸化亜鉛ZnOを含むことが好ましい。
【0046】
ついで、副成分の酸化ホウ素B、酸化銅CuO、酸化亜鉛ZnOのそれぞれの添加量(重量%)を最適値とし、主成分である組成式(BaO・xTiO)におけるBaOに対するTiOのモル比xの値の適正範囲を判定するために、x=4.6,5,5.5,6,7,8のそれぞれについて、形成される誘電体磁器組成物の特性値を求めたものである。結果を、表5に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
表5に示す結果によれば、モル比xの値が大きくなるほどQf値が低下する傾向にあるとともに、誘電率εrが大きくなる傾向にあることが分かる。ここで、上記の表1に示した結果と照らし合わせると、モル比xが8を超えてもあまり線膨張係数αの増大を見込めない半面、酸化チタンTiOの特性に近づきQf値の低下とともに、誘電率εrが目的範囲よりも大きくなってしまい、実用範囲外となるので、モル比xは、8以下がよいことが分かる。
【符号の説明】
【0049】
2 誘電体磁器組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として、組成式(BaO・xTiO)と表される成分を含み、該組成式におけるBaOに対するTiOのモル比xが、4.6≦x≦8の範囲内にあり、
前記主成分に対して副成分として、ホウ素酸化物および銅酸化物を含むとともに、これらの副成分をそれぞれaB、bCuOと表したとき、
前記主成分に対する前記各副成分の重量比率を表すaおよびbがそれぞれ
0.5(重量%)≦a≦5(重量%)
0.1(重量%)≦b≦3(重量%)
であることを特徴とする誘電体磁器組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の誘電体磁器組成物と内部配線とを含むことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−228928(P2010−228928A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74904(P2009−74904)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】