説明

誘電体磁器組成物および電子部品

【課題】高電圧下の高温負荷寿命および高温における直流電圧印加時の比誘電率を向上させることができる誘電体磁器組成物および該誘電体磁器組成物を誘電体層として有する電子部品を提供すること。
【解決手段】特定の主成分および副成分を特定の組成範囲で含有する誘電体磁器組成物であって、主成分の原料の粒径の累積分布の50%の値をD50m、累積分布の90%の値をD90mとしたときに、D50m/D90m≧0.6であり、中心層と、副成分が拡散している拡散層と、からなる表面拡散構造を有する表面拡散粒子の個数割合が、全誘電体粒子に対して、60%以上であり、表面拡散粒子の粒子径をDg、中心層の径をDcとすると、(Dg−Dc)/Dg≧0.1である関係を満足し、Dcの累積分布の90%の値をD90cとしたときに、0.25≦D90c≦0.50である関係を満足する誘電体磁器組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物およびこの誘電体磁器組成物を誘電体層に有する電子部品に係り、さらに詳しくは、定格電圧の高い(たとえば100V以上)中高圧用途に好適に用いられる誘電体磁器組成物および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化に対する要求は高く、積層セラミックコンデンサの小型・大容量化が急速に進むとともに、用途も拡大し、要求される特性は様々である。
【0003】
たとえば、ECM(エンジンエレクトリックコンピュータモジュール)、燃料噴射装置、電子制御スロットル、インバータ、コンバータ、HIDヘッドランプユニット、ハイブリッドエンジンのバッテリコントロールユニット、デジタルスチールカメラ等の機器に用いられる中高圧用コンデンサには、高い電界強度下においても使用できることが求められる。
【0004】
しかしながら、内部電極層材料として、ニッケル等の卑金属を使用している積層セラミックコンデンサにおいては、比較的に低い電界強度下での使用が意図されている。したがって、高い電界強度下での使用では、絶縁性や信頼性が極端に低下するという問題が生じている。また、このような積層セラミックコンデンサを中高圧用コンデンサとして用いる場合、電子部品の高密度の実装により生じる発熱や、自動車用電子部品に代表される過酷な使用環境が問題となるため、直流電圧(DCバイアス)が印可された状態で、100℃以上の高温度下においても高い比誘電率を得ることが望まれている。
【0005】
このような要求に対して、たとえば、主成分であるチタン酸バリウムに比較的多量の希土類酸化物、Mn、Mg等の酸化物を添加した組成を有する非還元性誘電体セラミックが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、特許文献2には、コアシェル構造におけるコア部の直径の累積分布のD90値を0.25μm未満とした構成を有する誘電体セラミックが提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された積層セラミックコンデンサは、比誘電率は比較的に高い値を示しており、高電界下における絶縁抵抗は比較的良好であるが、高温における直流電圧印加時の比誘電率については何ら記載されておらず、高温における使用を目的とするものではない。また、特許文献2に開示された積層セラミックコンデンサは、電歪を抑制することを目的としており、高温における直流電圧印加時の比誘電率については何ら記載されていない。
【特許文献1】特開2002−50536号公報
【特許文献2】特開2006−199563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、高電圧下における高温負荷寿命および高温における直流電圧印加時の比誘電率を向上させることができる誘電体磁器組成物、およびこの誘電体磁器組成物を誘電体層として有する電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘電体磁器組成物は、
チタン酸バリウムを含む主成分と、
BaZrOを含む第1副成分と、
Mgの酸化物を含む第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第3副成分と、
Mn、Cr、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第4副成分と、
Si、Al、Ge、BおよびLiから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第5副成分と、を含有する誘電体磁器組成物であって、
前記主成分100モルに対する、各副成分の酸化物または複合酸化物換算での比率が、
第1副成分:9〜13モル、
第2副成分:2.7〜5.7モル、
第3副成分:4.5〜5.5モル、
第4副成分:0.5〜1.5モル、
第5副成分:3.0〜3.9モルであり、
前記主成分の原料の粒径の累積分布の50%の値をD50m、前記累積分布の90%の値をD90mとしたときに、D50m/D90m≧0.6である関係を満足し、
前記誘電体磁器組成物が、中心層と、前記中心層の周囲に存在する、少なくとも前記Mgおよび前記Rが含まれる拡散層と、からなる表面拡散構造を有する表面拡散粒子を有しており、
前記誘電体磁器組成物を構成する全誘電体粒子の個数割合を100%としたときに、前記表面拡散粒子の個数割合が60%以上であり、
前記表面拡散粒子の粒子径をDgとし、該粒子の前記中心層の径をDcとしたときに、(Dg−Dc)/Dg≧0.1である関係を満足し、
前記Dcの累積分布の90%の値をD90cとしたときに、0.25≦D90c≦0.50である関係を満足することを特徴とする。
【0010】
また、本発明によれば、誘電体層と内部電極層とを有する電子部品であって、前記誘電体層が、上記の誘電体磁器組成物で構成された電子部品が提供される。
【0011】
本発明に係る電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記の表面拡散構造を有する表面拡散粒子の個数割合を特定の割合とし、さらに、表面拡散粒子の粒子径と、該粒子の中心層の径とが上記の関係を満足する誘電体磁器組成物が提供される。すなわち、主成分粒子への副成分の拡散を制御することで、表面拡散構造を所定のものとしている。このようにすることで、高温における直流電圧印加時の比誘電率および高温負荷寿命を向上させることができる。
【0013】
また、従来では、表面拡散構造を有する粒子の中心層径についての累積分布のD90値を比較的に小さくしているが、本発明では、逆に、中心層径の累積分布のD90値を比較的に大きくし、かつ、特定の範囲内としてやることで、高温度側の温度特性を向上させることができる。
【0014】
さらには、主成分の原料の粒径についての累積分布のD50値およびD90値の比を特定の範囲とすることで、高温負荷寿命をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2は、本発明の一実施形態に係る表面拡散粒子の模式図、
図3は、本発明の一実施形態に係る表面拡散粒子における中心層と拡散層とを区別する方法を説明するための模式図、
図4(A)は、本発明の実施例に係る主成分原料の粒径の累積および頻度分布曲線のグラフ、図4(B)は、本発明の比較例に係る主成分原料の粒径の累積および頻度分布曲線のグラフである。
【0016】
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0017】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。また、一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0018】
誘電体層2
誘電体層2は、本発明の誘電体磁器組成物を含有する。
本発明の誘電体磁器組成物は、チタン酸バリウムを含む主成分と、
BaZrOを含む第1副成分と、
Mgの酸化物を含む第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第3副成分と、
Mn、Cr、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第4副成分と、
Si、Al、Ge、BおよびLiから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第5副成分と、を有する。
【0019】
主成分として含有されるチタン酸バリウムとしては、たとえば、組成式BaTiO2+m で表され、前記組成式中のmが、0.990<m<1.010であり、BaとTiとの比が0.990<Ba/Ti<1.010であるものなどを用いることができる。
【0020】
第1副成分(BaZrO)の含有量は、主成分100モルに対して、BaZrO換算で、9〜13モルであり、好ましくは10〜13モルである。第1副成分は、主に、主成分であるチタン酸バリウムの強誘電性を抑制する効果を有する。第1副成分の含有量が少なすぎると、電圧印加時における温度特性が悪化する傾向にあり、一方、多すぎると比誘電率が低下する傾向にある。
【0021】
第2副成分(Mgの酸化物)の含有量は、主成分100モルに対して、MgO換算で、2.7〜5.7モル、好ましくは4.0〜5.7モルである。第2副成分は、主に、主成分であるチタン酸バリウムの強誘電性を抑制する効果を有する。第2副成分の含有量が少なすぎると、電圧印加時における温度特性が悪化する傾向にあり、一方、多すぎると比誘電率が低下する傾向にある。
【0022】
第3副成分(Rの酸化物)の含有量は、主成分100モルに対して、R換算で、4.5〜5.5モルであり、好ましくは4.75〜5.5モルである。第3副成分は、主に、主成分であるチタン酸バリウムの強誘電性を抑制する効果を有する。第3副成分の含有量が少なすぎると、電圧印加時における温度特性が悪化する傾向にあり、一方、多すぎると比誘電率が低下する傾向にある。なお、上記Rの酸化物を構成するR元素としては、Gd、Tb、Eu、Y、La、Ceから選択される少なくとも1種が好ましく、Gdが特に好ましい。
【0023】
第4副成分(Mn、Cr、CoおよびFeの酸化物)の含有量は、主成分100モルに対して、MnO、Cr、CoまたはFe換算で、0.5〜1.5モルであり、好ましくは0.7〜1.2モルである。第4副成分の含有量が少なすぎても、また多すぎても、絶縁抵抗が低下する傾向にある。なお、第4副成分としては、上記各酸化物のなかでも特性の改善効果が大きいという点から、Mnの酸化物を用いることが好ましい。
【0024】
第5副成分(Si、Al、Ge、BおよびLiの酸化物)の含有量は、主成分100モルに対して、SiO、Al、GeO、BまたはLiO換算で、3.0〜3.9モルである。第5副成分の含有量が少なすぎると、焼結性が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、比誘電率が低下する傾向にある。なお、第5副成分としては、上記各酸化物のなかでも特性の改善効果が大きいという点から、Siの酸化物を用いることが好ましい。
【0025】
誘電体粒子の構造
本発明において、上記の誘電体層2に含有される全誘電体粒子のうち、図2に示すような、表面拡散構造を有する表面拡散粒子(20,200)が、個数割合で60%以上である。表面拡散粒子20は、チタン酸バリウムを主成分として含有する中心層20aと、中心層20aの周囲に存在し、チタン酸バリウムにチタン酸バリウム以外の成分が拡散している拡散層20bと、から構成される。中心層20aは実質的にチタン酸バリウムからなっているため、強誘電特性を示す。一方、拡散層20bには、主に、上記の副成分として添加される元素がチタン酸バリウム中に拡散(固溶)しているため、強誘電特性が失われ、常誘電特性を示す。本発明では、拡散層20bには、MgおよびRの元素(第2副成分および第3副成分)が存在しており、それ以外の副成分元素も存在していると考えられる。
なお、図2の表面拡散粒子200に示すように、拡散層20bは、中心層20aの全周を覆っていなくてもよく、中心層20aの一部を覆っていれば良い。
【0026】
誘電体粒子が、上記の表面拡散構造を有しているか否かは、本実施形態では、所定数の誘電体粒子を走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察し、付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いて該粒子に存在するR元素の濃度分析を行い判断することができる。具体的には、まず、誘電体粒子に対して、エネルギー分散型X線分光法による分析を行い、該粒子についてのR元素のマッピング画像を得る。得られたマッピング画像からR元素の濃淡を目視にて観察し、中心層と拡散層とを有している表面拡散粒子20であるか否かを判断する。
【0027】
測定を行った誘電体粒子のうち、表面拡散粒子20である割合が、個数割合で60%以上である。表面拡散粒子20の個数割合が少なすぎると、容量温度特性および高温負荷寿命が悪化する傾向にある。
なお、上記では、誘電体層2の断面写真から、R元素の濃淡により、表面拡散粒子20の有無を判断するため、実際には表面拡散粒子20となっている粒子の中には、断面写真において中心層領域のみ、あるいは、拡散層領域のみしか現れていないものがある。このような場合には、表面拡散粒子20であるとは判断されないため、見かけ上、表面拡散粒子20である割合の上限は、80%程度となる。
【0028】
誘電体粒子をこのような構造とすると、常誘電性を示す拡散層20bが、中心層20aの周囲に存在することにより、たとえば、印加される直流電圧は誘電率の低い拡散層20bに掛かるため、絶縁抵抗の減少を抑制することができる。しかも、強誘電性を示す中心層20aの存在により、高い比誘電率をも実現することができる。
【0029】
また、図2において、表面拡散粒子20の粒子径をDgとし、上記の中心層20aの径をDcとすると、これらの差(Dg−Dc)は拡散層20bの厚みを表すこととなる。ここで、表面拡散粒子20の粒子径Dgと、拡散層厚み(Dg−Dc)との比を算出することで、表面拡散粒子20において拡散層厚み20bが占める比率として、拡散層厚み率((Dg−Dc)/Dg)を評価することができる。
【0030】
本発明においては、(Dg−Dc)/Dg≧0.1である関係を満足し、好ましくは0.15≦(Dg−Dc)/Dg≦0.43である。(Dg−Dc)/Dgが小さすぎる、すなわち、主成分粒子への副成分元素の拡散が小さすぎると、高温における直流電圧印加時の比誘電率が低くなる傾向にある。
【0031】
さらに、本発明においては、中心層20aの径(Dc)の累積分布におけるD90値(D90c)が0.25〜0.50である。
【0032】
中心層20aの径(Dc)の累積分布におけるD90値(D90c)とは、測定したDcの累積が90%に達したときのDcの値を示している。中心層20a、すなわち、チタン酸バリウムの強誘電性を示す領域の径を上記の範囲とすることで、高温度側の温度特性を良好にすることができる。なお、中心層20aの径(Dc)の累積分布におけるD50値、すなわち、メジアン径の値は特に制限されず、D90cの値が上記の範囲内であればよい。
【0033】
Dcの累積分布のD90値(D90c)が小さすぎると、比誘電率が悪化する傾向にあり、大きすぎると、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。
【0034】
本実施形態において、DgおよびDcは以下のようにして求めることができる。まず、走査透過型電子顕微鏡(STEM)により所定数の表面拡散粒子を観察し、付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いて、図3に示すように、表面拡散粒子20の略中心を通る直線上で点分析を行い、得られたR元素の濃度分布から該粒子(中心層20aおよび拡散層20b)におけるR元素の平均濃度を算出する。そして、その表面拡散粒子20についてのR元素のマッピング画像を画像処理することにより、R元素の平均濃度の1/3超の領域と、平均濃度の1/3以下の領域とに分ける。すなわち、平均濃度の1/3超の領域を拡散層20bと規定し、平均濃度の1/3以下の領域を中心層20aと規定する。このようにすると、走査透過型電子顕微鏡(STEM)による明視野像において、コントラストの差として観察される該粒子の中心層20aと拡散層20bとの境界とよく一致するようになる。
【0035】
次に、上記の画像処理された粒子の面積(中心層20a+拡散層20b)および中心層20aの面積を算出する。そして、得られた粒子の面積および中心層20aの面積を、円の面積として換算したときの円の直径(円相当径)を算出し、それぞれ、表面拡散粒子20の粒子径(Dg)および該粒子の中心層20aの径(Dc)とする。
なお、本実施形態では、DgおよびDcは、画像処理された粒子の面積および中心層の面積から、円相当径に換算して算出したが、別方法により算出されるものであってもよい。たとえば、粒子および中心層の平均径、最大径あるいは最小径などをDgおよびDcとして用いてもよい。
【0036】
以上説明したように、主成分粒子への副成分元素、特にR元素の拡散を制御することにより、常温での比誘電率を良好に維持しつつ、高温(たとえば125℃)における直流電圧印加時の比誘電率および高温負荷寿命を向上させることができる誘電体磁器組成物を得ることができる。
【0037】
誘電体層2を構成する誘電体粒子の平均粒子径は、誘電体層2の厚さなどに応じて決定すればよいが、本実施形態では、平均粒子径が1.5μm以下であることが好ましい。
【0038】
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、Ni、Cu、Ni合金またはCu合金が好ましく、特にNiまたはNi合金が好ましい。内部電極層3の主成分をNiやNi合金とした場合には、誘電体が還元されないように、低酸素分圧(還元雰囲気)で焼成することが好ましい。内部電極層3の厚さは、好ましくは0.5〜3.5μmである。
【0039】
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0040】
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0041】
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。
【0042】
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0043】
誘電体原料としては、上記した主成分および副成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体原料の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
【0044】
主成分原料としてのチタン酸バリウム粉末は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。
【0045】
本実施形態においては、チタン酸バリウム粉末の粒径の累積分布のD50値(D50m)およびD90値(D90m)が、D50m/D90m≧0.6、好ましくはD50m/D90m≧0.7の関係を満足する。
【0046】
ここで、D50mは、メジアン径を示し、D90mは、粒度分布における累積が90%に達したときの粒径の値を示している。
【0047】
D50m/D90mが小さすぎると、D50mを示す粒子の径に対してD90mを示す粒子の径が大きくなる、すなわち、粒度分布がブロードになるため、粉末中に粗大粒が比較的多く含まれるようになってしまい、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。
なお、副成分の原料として上記の原料をそのまま主成分原料に添加して誘電体原料としてもよいが、好ましくは、副成分の原料のみを予め仮焼きし、仮焼き後の原料を主成分原料に添加して誘電体原料とする。
【0048】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0049】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0050】
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0051】
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0052】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0053】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0054】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
【0055】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
【0056】
グリーンチップの焼成は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。その他の条件は、以下のようにするのが好ましい。
【0057】
まず、昇温速度は、好ましくは100〜600℃/時間、より好ましくは100〜400℃/時間である。また、焼成時の保持温度に達するまで、昇温速度を変化させることが好ましい。具体的には、たとえば、800℃までは、200℃/時間とし、800℃〜1100℃までは、100〜600℃/時間とすることで、上述の拡散層厚み率((Dg−Dc)/Dg)を制御することができる。
【0058】
焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1400℃、より好ましくは1200〜1320℃であり、その保持時間は、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
焼成時の酸素分圧は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−14〜10−10MPaとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0059】
降温速度は、好ましくは100〜600℃/時間、より好ましくは100〜400℃/時間である。
【0060】
本実施形態では、副成分の原料の仮焼の有無、上記の焼成条件の制御等を組み合わせることにより、拡散層20b内に存在するR元素(第3副成分)の拡散度合いを制御することができる。その結果、表面拡散粒子の存在割合、拡散層厚み率((Dg−Dc)/Dg)、中心層の径Dcの累積分布におけるD90値(D90c)が本発明の範囲内となるようなR元素の濃度分布を得ることができる。
【0061】
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0062】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−5MPaとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層の酸化が進行する傾向にある。
【0063】
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が上記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、IR寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
【0064】
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜10時間、降温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
【0065】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
【0066】
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0067】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0068】
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0070】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成の誘電体層を有するものであれば何でも良い。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0072】
実施例1
まず、主成分の原料として、BaTiO粉末を、副成分の原料として、BaZrO、MgCO、Gd、MnOおよびSiOを、それぞれ準備した。次に、上記で準備した副成分の原料のみを、1000℃で仮焼きした。この仮焼き後の原料と、主成分の原料とをボールミルで15時間、湿式粉砕し、乾燥して、誘電体原料を得た。なお、各副成分の添加量は、主成分であるBaTiO100モルに対して、表1に示す量とした。
なお、表1に示す量は、複合酸化物(第1副成分)または各酸化物(第1〜第5副成分)換算の量である。また、第2副成分であるMgCOは、焼成後には、MgOとして誘電体磁器組成物中に含有されることとなる。
【0073】
BaTiO粉末のD50mおよびD90m
上記のBaTiO粉末の粒度の累積分布におけるD50値(D50m)およびD90値(D90m)は以下のようにして算出した。BaTiO粉末を投入した4%のヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液を10vol%になるように純水で希釈し、ホモジナイザーで5分間分散処理を行った後、レーザー回折散乱法にて粒度測定を行った。なお、測定溶媒としては、水(屈折率:1.33)を用い、屈折率を2.10として測定を行った。
【0074】
測定結果からBaTiO粉末のD50値(D50m)およびD90値(D90m)を求め、さらに、D50m/D90mを算出した。D50m/D90mが0.6以上を良好とした。結果を表1に示す。また、実施例3および比較例3のBaTiO粉末の粒径についての累積および頻度分布曲線のグラフを、それぞれ、図4(A)および図4(B)に示す。
【0075】
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0076】
また、上記とは別に、Ni粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0077】
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが30μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0078】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成では、昇温速度は、800℃までは、200℃/時間とし、800℃〜1200℃までは、400℃/時間とし、保持温度までは、200℃/時間とした。また、保持温度は、1200〜1320℃とし、降温速度は、昇温速度と同様にした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN+H混合ガスとし、酸素分圧が10−12MPaとなるようにした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、温度保持時間:2時間、降温速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−7MPa)とした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用いた。
【0079】
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、誘電体層の厚み20μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は10とした。なお、本実施例では、表1に示すように、各副成分の添加量を変化させた複数の試料を作製した。
【0080】
得られた各コンデンサ試料について、表面拡散粒子率、拡散層厚み率、中心層の径DcのD90値の測定を下記に示す方法で行った。次に、比誘電率、高温DCバイアス特性および高温負荷寿命を下記に示す方法により測定した。
【0081】
表面拡散粒子率
各試料について、無作為に50個の粒子を抽出し、走査透過型電気顕微鏡(STEM)に付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いてマッピング分析を行うことにより、R元素の濃度を測定した。得られたマッピング画像より、表面拡散構造を有している粒子であるか否かの判断を目視にて行い、その割合を算出した。表面拡散構造を有する粒子が60%以上である場合を良好とした。結果を表1に示す。
【0082】
拡散層厚み率((Dg−Dc)/Dg)
まず、走査透過型電気顕微鏡(STEM)により無作為に抽出した50個の粒子を観察し、エネルギー分散型X線分光法により各表面拡散粒子の略中心を通る直線上で点分析を行って、R元素のX線スペクトルを測定した。得られたX線スペクトルから、該粒子におけるR元素の平均濃度を算出した。次に、該粒子のR元素についてのマッピング画像を、R元素の平均濃度が1/3超の領域を拡散層、平均濃度が1/3以下の領域を中心層とするように画像処理を行った。そして、画像処理後の画像から、該粒子および中心層の面積を算出し、その面積の円相当径をそれぞれ表面拡散粒子の粒子径(Dg)および該粒子の中心層径(Dc)とした。粒子径(Dg)に対する拡散層厚み(Dg−Dc)の比((Dg−Dc)/Dg)が0.1以上である場合を良好とした。結果を表1に示す。
【0083】
表面拡散粒子の中心層径(Dc)のD90値(D90c)
上記で測定したDcの累積分布からD90値(D90c)を算出した。D90cは、0.25≦D90c≦0.5を満足する場合を良好とした。結果を表1に示す。
【0084】
比誘電率
コンデンサ試料に対し、25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの信号を入力し、静電容量Cを測定した。そして、比誘電率(単位なし)を、誘電体層の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。本実施例では、10個のコンデンサ試料を用いて算出した値の平均値を比誘電率とした。比誘電率は高いほうが好ましいため、評価基準は800以上を良好とした。結果を表1に示す。
【0085】
高温DCバイアス特性
コンデンサ試料に対し、10V/μmの直流電圧(DCバイアス)を印可して、125℃における静電容量を測定し、その値から、125℃における直流電圧印加時の比誘電率(単位なし)を、算出した。評価基準は、450以上を良好とした。結果を表1に示す。
【0086】
高温負荷寿命
コンデンサ試料に対し、200℃にて、40V/μmの電界下で直流電圧の印加状態に保持し、寿命時間を測定することにより、高温負荷寿命を評価した。本実施例においては、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。また、この高温負荷寿命は、10個のコンデンサ試料について行った。評価基準は、10時間以上を良好とした。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1より、実施例1〜5においては、焼成条件を適切に制御することで、表面拡散粒子率、中心層径(Dc)の累積分布のD90値(D90c)、拡散層厚み率((Dg−Dc)/Dg)を本発明の範囲内とすることができる。その結果、比誘電率を高く維持しつつ、125℃における直流電圧(DCバイアス)印加時の比誘電率を良好とし、さらには高温負荷寿命を向上させることができる。
【0089】
これに対し、中心層径(Dc)の累積分布のD90値(D90c)が本発明の範囲外である場合には(比較例1および2)、表面拡散粒子率あるいは拡散層厚み率も本発明の範囲外となってしまい、その結果、比誘電率あるいは高温負荷寿命が悪化していることが確認できる。
【0090】
また、主成分原料であるBaTiO粉末の粒度の累積分布から得られるD50値(D50m)およびD90値(D90m)の比が本発明の範囲外である場合には(比較例3)、高温負荷寿命が悪化する傾向にあることが確認できる。このことは、図4(B)に示す比較例3に係るBaTiO粉末の粒度の累積分布曲線のグラフが、実施例3に係るグラフ(図4(A))よりもブロードな曲線であることからも確認できる。
【0091】
さらに、誘電体磁器組成物の組成が本発明の範囲外となる場合には(比較例4〜13)、特に、高温負荷寿命が悪化する傾向にあることが確認できる。また、表面拡散粒子率、中心層径(Dc)の累積分布のD90値(D90c)、拡散層厚み率((Dg−Dc)/Dg)が本発明の範囲内であっても、誘電磁器組成物の組成が本発明の範囲外である場合には(比較例6〜8、12、13)、特性が劣ることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る表面拡散粒子の模式図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る表面拡散粒子における中心層と拡散層とを区別する方法を説明するための模式図である。
【図4】図4(A)は、本発明の実施例に係る主成分原料の粒径の累積および頻度分布曲線のグラフ、図4(B)は、本発明の比較例に係る主成分原料の粒径の累積および頻度分布曲線のグラフである。
【符号の説明】
【0093】
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
20、200… 表面拡散粒子
20a… 中心層
20b… 拡散層
3… 内部電極層
4… 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸バリウムを含む主成分と、
BaZrOを含む第1副成分と、
Mgの酸化物を含む第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第3副成分と、
Mn、Cr、CoおよびFeから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第4副成分と、
Si、Al、Ge、BおよびLiから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む第5副成分と、を含有する誘電体磁器組成物であって、
前記主成分100モルに対する、各副成分の酸化物または複合酸化物換算での比率が、
第1副成分:9〜13モル、
第2副成分:2.7〜5.7モル、
第3副成分:4.5〜5.5モル、
第4副成分:0.5〜1.5モル、
第5副成分:3.0〜3.9モルであり、
前記主成分の原料の粒径の累積分布の50%の値をD50m、前記累積分布の90%の値をD90mとしたときに、D50m/D90m≧0.6である関係を満足し、
前記誘電体磁器組成物が、中心層と、前記中心層の周囲に存在する、少なくとも前記Mgおよび前記Rが含まれる拡散層と、からなる表面拡散構造を有する表面拡散粒子を有しており、
前記誘電体磁器組成物を構成する全誘電体粒子の個数割合を100%としたときに、前記表面拡散粒子の個数割合が60%以上であり、
前記表面拡散粒子の粒子径をDgとし、該粒子の前記中心層の径をDcとしたときに、(Dg−Dc)/Dg≧0.1である関係を満足し、
前記Dcの累積分布の90%の値をD90cとしたときに、0.25≦D90c≦0.50である関係を満足することを特徴とする誘電体磁器組成物。
【請求項2】
誘電体層と内部電極層とを有する電子部品であって、
前記誘電体層が、請求項1に記載の誘電体磁器組成物で構成されていることを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−247657(P2008−247657A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89780(P2007−89780)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】