説明

誘電体磁器組成物

【課題】 本発明は、比誘電率が高く、また静電容量の温度変化の小さい積層セラミックコンデンサを得ることができる誘電体磁器組成物を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明に係る誘電体磁器組成物は、86.32〜97.64モル%のBaTiO3、0.01〜10.00モル%のY23、0.01〜10.00モル%のMgO、0.001〜0.200モルのV25からなる誘電体主成分と、MnO,Cr23,Co23からなる群から選ばれる一種以上の第1添加物0.01〜1.0モル%と、{Baα,Ca(1−α)}SiO3(ただし、0≦α≦1)である第2添加物0.5〜10.0モル%と、BaTiO3100重量部に対し、Sr:10〜500ppm S:10〜50ppm Al:10〜50ppm Fe:10〜50ppm Zr:100〜800ppm Y:10〜100ppm Hf:10〜100ppmを含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物に関し、特に比誘電率が高く、また静電容量の温度変化の小さい積層セラミックコンデンサを得ることができる誘電体磁器組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に進む電気機器の高性能化に伴い、電気回路の小型化、複雑化もまた急速に進んでいる。そのため、電子部品もより一層の小型化、高性能化が求められている。すなわち、良好な温度特性を維持しつつ、小型化においても静電容量を維持するために、誘電率が高い誘電体磁器組成物及び電子部品が求められている。
【0003】
セラミックコンデンサなどに用いられる誘電体磁器組成物としては、チタン酸バリウム(BaTiO)などの高誘電率系が知られている。この種の組成物では、比誘電率を高くできるが、容量温度変化率が大きい。
【0004】
チタン酸バリウム(BaTiO)の製法には、一般に蓚酸塩法、アルコキシド法、水熱合成法などの液相法と、原料粉末を固相で反応させる固相法とが広く知られている。しかし、液相法により得られるチタン酸バリウムには、反応系に由来する水酸基(OH基)が残留する。加熱処理を行うことでOH基を除去することは可能であるが、その際に粒子内部に空孔が生成し、電気特性に優れたチタン酸バリウムは得られない。固相法により得られる誘電体粒子は、欠陥がなく、優れた誘電特性が期待される。しかし、一方で、結晶性が十分に高くならないため、期待されるほどには比誘電率や容量温度変化率等の誘電特性が向上しない。
【0005】
このため、比誘電率や容量温度変化率等の誘電特性の向上を図るため、誘電体磁器組成物の製法や組成について種々の検討がなされている。
【0006】
特許文献1(特開平6−215979号公報)では、誘電体磁器組成物の組成についての検討がなされている。具体的には、特許文献1には、86.32〜97.64モルのBaTiO3、0.01〜10.00モルのY23、0.01〜10.00モルのMgO、0.001〜0.200モルのV25からなる誘電体主成分と、
任意に、MnO,Cr23,Co23からなる群から選ばれる一種以上の第1添加物0.01〜1.0モル%と、
任意に、{Baα,Ca(1−α)}SiO3(ただし、0≦α≦1)である第2添加物0.5〜10.0モル%とからなる誘電体磁器組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−215979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、機器の小型化、高性能化が要求されている現状では、特許文献1記載の誘電体磁器組成物によっても、なお誘電特性の向上が要望されている。
【0009】
したがって、本発明は、比誘電率が高く、また静電容量の温度変化の小さい積層セラミックコンデンサを得ることができる誘電体磁器組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく本発明者らが鋭意検討したところ、特許文献1記載の誘電体磁器組成物において、さらに特定量の副成分を添加することで、比誘電率が高く、また静電容量の温度変化の小さな誘電体磁器組成物が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る誘電体磁器組成物は、
86.32〜97.64モル%のBaTiO3、0.01〜10.00モル%のY23、0.01〜10.00モル%のMgO、0.001〜0.200モルのV25からなる誘電体主成分と、
MnO,Cr23,Co23からなる群から選ばれる一種以上の第1添加物0.01〜1.0モル%と、
{Baα,Ca(1−α)}SiO3(ただし、0≦α≦1)である第2添加物0.5〜10.0モル%と、
BaTiO3100重量部に対し、
Sr:10〜500ppm
S:10〜50ppm
Al:10〜50ppm
Fe:10〜50ppm
Zr:100〜800ppm
Y:10〜100ppm
Hf:10〜100ppmを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、誘電率が高く、また静電容量の温度変化の小さい積層セラミックコンデンサを得ることができる誘電体磁器組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、その最良の形態を含めて、さらに具体的に説明する。
【0014】
本発明に係る誘電体磁器組成物は、
BaTiO3、Y23、MgOおよびV25からなる誘電体主成分と、
MnO,Cr23,Co23からなる群から選ばれる一種以上の第1添加物と、
{Baα,Ca(1−α)}SiO3(ただし、0≦α≦1)である第2添加物と、
所定量のSr、S、Al、Fe、Zr、YおよびHfを含む。
【0015】
ここで、BaTiO3、Y23、MgO、V25、MnO、Cr23、Co23における金属/酸素比は、厳密なものではなく、若干化学量論組成からずれていてもよい。
【0016】
本発明の誘電体磁器組成物において、誘電体主成分を構成するBaTiO3、Y23、MgOおよびV25の成分比は、誘電体主成分、第1添加物および第2添加物の合計に対して、
BaTiO3は、86.32〜97.64モル%あり、
23は、0.01〜10.00モル%、好ましくは0.1〜5モル%、さらに好ましくは0.5〜3モル%であり、
MgOは、0.01〜10.00モル%、好ましくは0.1〜5モル%、さらに好ましくは0.5〜3モル%であり、
25は、0.001〜0.200モル%、好ましくは0.005〜0.1モル%、さらに好ましくは0.01〜0.1モル%である。
【0017】
誘電体主成分の組成が上記範囲にあると、得られる誘電体磁器組成物の誘電率が高く、また静電容量の温度変化が小さくなり、しかも誘電損失が軽減され、また絶縁抵抗も高く、優れた積層セラミックコンデンサを提供することが可能になる。
【0018】
第1添加物は、MnO,Cr23およびCo23からなる群から選ばれる一種以上である。第1添加物の成分比は、誘電体主成分、第1添加物および第2添加物の合計に対して、0.01〜1.0モル%、好ましくは0.05〜1モル%、さらに好ましくは0.05〜0.5モル%である。第1添加物は、誘電特性を制御するために配合され、第1添加物を配合しない場合には、焼結体が半導体化し、誘電体が得られないおそれがある。また、第1添加物の配合量が過剰であると、絶縁抵抗が低下するおそれがある。
【0019】
第2添加物は、{Baα,Ca(1−α)}SiO3(以下、「BCG」と略記することがある)で示される焼結助剤である。ここで、αは0〜1、好ましくは0.3〜0.8である。第2添加物の成分比は、誘電体主成分、第1添加物および第2添加物の合計に対して、0.5〜10.0モル%、好ましくは0.5〜5モル%、さらに好ましくは1〜5モル%である。第2添加物は、焼結助剤として用いられる。したがって、第2添加物を配合しない場合には、焼結体の製造が困難になる。また、第2添加物の配合量が過剰であると、誘電損失の増大、絶縁抵抗の低下、および温度特性の劣化を招くおそれがある。
【0020】
本発明の誘電体磁器組成物には、上記誘電体主成分、第1添加物および第2添加物に加えて、さらにSr、S、Al、Fe、Zr、YおよびHfを含有する(以下、これら成分を「微量成分」と略記することがある)。微量成分の成分比は、誘電体主成分におけるBaTiO3100重量部に対し、
Sr:10〜500ppm、好ましくは50〜500ppm
S:10〜50ppm、好ましくは10〜30ppm
Al:10〜50ppm、好ましくは10〜30ppm
Fe:10〜50ppm、好ましくは10〜30ppm
Zr:100〜800ppm、好ましくは300〜800ppm
Y:10〜100ppm、好ましくは10〜50ppm
Hf:10〜100ppm、好ましくは10〜50ppmである。
なお、微量成分としてのYの成分量には、主成分に含まれるY由来のYの量は含まない。
【0021】
上記のような微量成分を配合することで、結晶性が高く、緻密であり、比誘電率の高い誘電体磁器組成物が提供される。このため、得られる電子部品の耐久性、温度特性にも優れる。
【0022】
本発明に係る誘電体磁器組成物は、上記組成を満たす限り、その製法は特に限定はされない。たとえば、上記組成を満たすように原料粉末を秤量、混合して、焼結することで、本発明の誘電体磁器組成物を得ることもできる。
【0023】
また、主成分となるBaTiO3と、第1添加剤および/または微量成分とが所定の組成を満たすように原料粉末を秤量、混合して、仮焼きをし、次いで仮焼きして得た誘電体粉末を粉砕し、残余の成分および第2添加物(BCG)を添加して、焼結して誘電体磁器組成物を得ることもできる。特に本発明においては、主成分となるBaTiO3と、微量成分とが所定の組成を満たすように原料粉末を秤量、混合して、仮焼きをし、次いで仮焼きして得た誘電体粉末を粉砕し、Y23、MgO、V25、第1添加物(MnO,Cr23および/またはCo23)、第2添加物(BCG)を添加して、所定のバインダおよび溶剤を加えてペースト化し、これを用いてグリーンシートを得て、焼結することで誘電体磁器組成物を製造することが好ましい。
【0024】
主成分となるBaTiO3と、微量成分とが所定の組成を満たすように原料粉末を秤量、混合して、仮焼きをし、所定の粒度まで粉砕して得られる誘電体粉末は、好ましくは下記特性を有する。
【0025】
すなわち、X線CuKα線を用いた、誘電体粉末の粉末X線回折パターンにおいて、(200)面と(002)面のピーク点の中間点におけるX線強度(I)と(200)面の回折線強度I(200)の比(I(200)/I、以下「K値」とする)が10〜20であり、好ましくは11〜20であり、さらに好ましくは11〜17である。K値が高いほど結晶性が高い。
【0026】
X線回折分析により求められるc軸とa軸の比であるc/a値は、1.0095〜1.0110であり、好ましくは1.0100〜1.0110、さらに好ましくは1.0100〜1.0107である。c/a値が上記範囲にある誘電体粉末は、結晶性、特に正方晶性に優れる。
【0027】
また、上記誘電体粉末は、その一次粒子中に直径10nm以上の空孔が実質的に存在しない緻密な構造を有する。ここで、空孔の存在は、一次粒子のTEM(透過電子顕微鏡)観察により確認され、「実質的に存在しない」とは、任意に選択した200個の一次粒子の観察の結果、直径10nm以上の空孔が観察される粒子の数が1個以下であることをいう。
【0028】
さらに、上記誘電体粉末は、BET法による比表面積が好ましくは2.0〜5.5m/g、好ましくは2.5〜5.5m/g、さらに好ましくは2.5〜5.0m/gである。
【0029】
上記の誘電体粉末は、結晶性が高く、粒内に実質的に空孔を有しない緻密な構造を有するため、これを焼結することで、優れた誘電特性の誘電体磁器を提供することができる。上記の誘電体粉末は、そのままペースト化することもできるが、誘電体層を薄層化する場合には、粉砕して使用してもよい。この誘電体粉末は、結晶性、緻密性が高いため、粉砕によるダメージが小さく、粉砕後であっても高い結晶性、緻密性を有するため、誘電体層の薄層化に寄与しうる。具体的には、誘電体粉末を、平均粒子径が200〜450nm程度にまで粉砕して使用することが好ましい。
【0030】
また、誘電体粉末の原料粉末として炭酸バリウム(BaCO)を使用した場合、得られる誘電体粉末中における未反応炭酸バリウム量は、1.0重量%以下であることが特に好ましい。未反応炭酸バリウムは、焼結時にガス成分を発生し、空孔生成の要因となるが、上記のように未反応炭酸バリウムを制御することで、焼結時の空孔生成が防止される。
【0031】
上記誘電体粉末は、原料である酸化物および/または炭酸塩を混合し、必要に応じて所定量の微量成分を添加した混合粉末を焼成して得られる。
【0032】
より具体的には、二酸化チタン粒子、炭酸バリウム粒子および前記した微量成分組成を実現するための各種化合物粒子からなる混合粉末を熱処理することで本発明の誘電体粉末が得られる。
【0033】
混合粉末における炭酸バリウム粒子と二酸化チタン粒子との比率は、チタン酸バリウムを生成しうる化学量論組成近傍であれば特に問題はない。したがって、混合粉末におけるBa/Ti(モル比)は0.990〜1.010であればよい。Ba/Tiが1.010を超えると、未反応の炭酸バリウムが残留することがあり、0.990未満では、Tiを含む異相が生成することがある。
【0034】
また、上記二酸化チタン粒子および炭酸バリウム粒子に加えて、前記した微量成分組成を実現するための各種化合物粒子を添加する。具体的には、生成するチタン酸バリウム100重量部に対し、Sr、S、Al、Fe、Zr、YおよびHf源となる化合物を前述した微量成分組成となるように添加する。
【0035】
Sr源となる化合物としては、炭酸ストロンチウム(SrCO)、硫酸ストロンチウム(SrSO)があげられ、
S源となる化合物としては、硫酸ストロンチウム(SrSO)があげられ、
Al源となる化合物としては、Alがあげられ、
Fe源となる化合物としては、Feがあげられ、
Zr源となる化合物としては、ZrOがあげられ、
Y源となる化合物としては、Yがあげられ、
Hf源となる化合物としては、HfOがあげられる。また、これらの複合化合物であってもよい。
【0036】
混合粉末の調製法は特に限定はされず、ボールミルを用いた湿式法などの常法を採用すればよい。得られた混合粉末を、乾燥後、熱処理してチタン酸バリウム粒子を主成分とする誘電体粉末が得られる。
【0037】
熱処理条件は、特に限定はされないが、一般的には、大気雰囲気中、1000℃〜1100℃程度の温度範囲で、2〜4時間が好適である。焼成温度が高すぎたり、焼成時間が長すぎると、結晶性、緻密性は向上するものの、粒成長が起こり、粗大粒子が生成する。
【0038】
得られるチタン酸バリウムを主成分とする誘電体粉末は、必要に応じ粉砕され、その後、誘電体セラミックスの製造原料や、電極層を形成するためのペーストに添加される共材として用いられる。誘電体セラミックスの製造には、各種公知の手法を、特に制限されることなく採用できる。具体的には、得られた誘電体粉末に、Y23、MgO、V25、第1添加物(MnO,Cr23および/またはCo23)、第2添加物(BCG)を所定量添加して、所定のバインダ、溶剤を加えてペースト化し、これを用いてグリーンシートを得て、焼結することで本発明の誘電体磁器組成物が得られる。また、ペースト、グリーンシートの調製、電極層の形成、グリーン体の焼結については、適宜に公知手法に準じて行えばよい。
【0039】
本発明によれば、誘電率が高く、また静電容量の温度変化の小さい積層セラミックコンデンサを得ることができる誘電体磁器組成物が提供される。何ら限定されるものではないが、本発明の実施態様によれば、比誘電率εsが2800以上、誘電損失(tanδ)が3%以下、絶縁抵抗IRが1×1010以上であり、静電容量の温度変化が−55〜125℃の範囲で±15%以下のセラミックコンデンサの製造が可能になる。
【0040】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、実施例および比較例において、各種物性は以下のように測定した。
【0041】
(比表面積)
製造例で得た誘電体粉末の比表面積をBET法により求めた。具体的には、NOVA2200(高速比表面積計)を用い、紛量1g、窒素ガス、1点法 脱気条件300℃で15分保持、の条件で測定した。
【0042】
(K値、c/a値、炭酸バリウム量)
製造例で得た誘電体粉末のX線回折分析によりK値、c/a値および残留した炭酸バリウム量を求めた。具体的には、BRUKER AXS社製、全自動多目的X線回折装置 D8 ADVANCEを用いて、Cu−Kα、40kV、40mA、2θ:20〜120degで測定し、1次元高速検出器LynxEye、発散スリット0.5deg、散乱スリット0.5degを用いた。また、スキャン:0.01〜0.02deg、スキャンスピード:0.3〜0.8s/divでスキャンした。解析には、Rietveld解析ソフト(Topas(BrukerAXS社製))を用いた。
【0043】
なお、K値は、(002)面の回折線のピーク点の角度と(200)面の回折線のピーク点の角度との中間点における強度(Ib)に対する、(200)面の回折線のピーク強度(I(200))の比(I(200)/Ib)により定義されるが、X線回折結果において、回折線の判別が困難な場合には、便宜上以下のようにK値を記載した。
【0044】
(200)面の回折線と(002)面の回折線とが明確ではない場合には、K値=1.5と記載し、c/a値が1.008以下で正方晶と立方晶の区別が困難な場合はK値=1.0と記載した。
【0045】
(積層セラミックコンデンサの誘電特性評価)
実施例および比較例で作成した内部電極の積層数が4である積層セラミックコンデンサについて、比誘電率「εs」、誘電損失「tanδ」、絶縁抵抗「IR」静電容量の温度特性「T・C」および「推定故障率」の評価を行った。
【0046】
ここで、比誘電率「εs」及び誘電損失「tanδ」は温度20℃、周波数1KHz、1Vrmsにおける値であり、絶縁抵抗「IR」は温度20℃において10Vを30秒間印加した後の測定値、静電容量の温度特性「T・C」は各温度における静電容量の温度25℃における靜電容量に対する温度特性、「推定故障率」は、加速寿命から推算した85℃、20V、1000時間での故障率である。
(製造例)
二酸化チタンと、炭酸バリウムとを所定量秤量し、得られるチタン酸バリウム100重量部に対し、微量成分含量がSr400ppm、S30ppm、Al10ppm、Fe10ppm、Zr600ppm、Y80ppm、Hf20ppmとなるように原料化合物を準備した。
【0047】
上記原料粉末を秤量し、ジルコニア(ZrO)2mm径のメディアを用いた容量1リットルのポットにより24時間湿式混合し、その後、150℃の熱風乾燥機中で乾燥して、混合粉末を得た。湿式混合は、スラリー濃度を50重量%とし、ポリカルボン酸塩系の分散剤を0.4重量%添加する条件で行った。
【0048】
次いで得られた混合粉末を、電気炉により大気圧力中、大気雰囲気で、昇温速度3.3℃/分(200℃/時間)にて、1060℃まで昇温し、4時間焼成した後、所定の粒度まで粉砕した。粉砕は湿式粉砕であり、狙い粒度は累積頻度50%(D50)で0.75μmとした。粒度の測定は日機装製マイクロトラックMT3000IIを用いてレーザー回折法により行った。
【0049】
得られた誘電体粉末の比表面積は3.1m/g、K値14、c/a値1.0105、残留炭酸バリウム量0.7重量%であった。
【0050】
(実施例および比較例)
(1)焼成後の組成が表1に示す配合になるように誘電体粉末(BaTiO3基準)、Y23、MgO、V25、第1添加物(MnO,Cr23および/またはCo23)、第2添加物(BCG)を秤量して調合する。
【0051】
(1)有機バインダ、溶剤を適当量加え、混合しエナメル化する。
(2)ドクターブレード法により、厚さ6μmでフィルム上に塗布し、グリーンシートを成形する。
(3)得られたグリーンシートに内部電極材料であるニッケルペーストを印刷により成形する。
(4)これを4層に積層し、さらに最上層にグリーンシートを積層し、熱圧着し積層体を得る。
(5)得られた積層体を、長さ3.2×1.6mmである3216形状に切断する。
(6)200℃〜300℃の温度で安定させて12時間脱バインダ処理を行う。
(7)酸素分圧を1×10-13〜5×10-9atmに制御し、焼成温度1200℃〜1300℃で安定させて2時間焼成する。
(8)中性雰囲気中で、酸素分圧を2×10-8〜5×10-6atmに制御し、800℃〜1100℃で安定させて2時間再酸化処理を行う。
(9)インジウム−ガリウム(In−Ga)合金の端子電極を取り付け、試料コンデンサを得る。
【0052】
これらの試料コンデンサについて、比誘電率「εs」、誘電損失「tanδ」、絶縁抵抗「IR」(Ω)、静電容量の温度特性「TC」(%)、推定故障率(ppm)を測定した結果を表1に示す。
【0053】
なお、表中のサンプル番号にアスタリスク*を付したサンプルは、本発明の比較例に相当するものであり、組成中のアスタリスク*を付した成分量が本発明で規定する範囲を外れる。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
86.32〜97.64モル%のBaTiO3、0.01〜10.00モル%のY23、0.01〜10.00モル%のMgO、0.001〜0.200モルのV25からなる誘電体主成分と、
MnO,Cr23,Co23からなる群から選ばれる一種以上の第1添加物0.01〜1.0モル%と、
{Baα,Ca(1−α)}SiO3(ただし、0≦α≦1)である第2添加物0.5〜10.0モル%と、
BaTiO3100重量部に対し、
Sr:10〜500ppm
S:10〜50ppm
Al:10〜50ppm
Fe:10〜50ppm
Zr:100〜800ppm
Y:10〜100ppm
Hf:10〜100ppmを含む誘電体磁器組成物。

【公開番号】特開2011−105547(P2011−105547A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262172(P2009−262172)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】