説明

調光性シート

【課題】比較的低温(40〜50℃)領域において、ヘーズ値(%)の変化量が大きくなることによって、光遮蔽性を発揮し、実用温度領域(25〜50)において効果を発揮する調光性シートを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径が3μm以上50μm以下の粒子が、50重量部を越えて200重量部以下配合された樹脂組成物を成型してなり、JIS K7136に準拠して測定した25℃におけるヘーズ値をaとし、50℃におけるヘーズ値をbとしたときのヘーズ値の変化量b−aが、35%以上である調光性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境温度変化により透明性の変化する調光性シートに関する。より詳細には、熱可塑性樹脂に特定の平均粒径を有する粒子を配合させてなり、比較的低温領域(40〜50℃)において、十分な光遮蔽性を発揮し、実用温度領域(25〜50℃)において、可逆的な透明性変化が良好な調光性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境の温度変化に伴って光線透過率が可逆的に変化する樹脂組成物が知られている。例えば、特許文献1には、炭素数14以上の直鎖α−オレフィン重合体と、他のα−オレフィン重合体又はメタクリル酸エステル重合体とから構成され、環境の温度変化に伴って光線透過率が可逆的に変化する樹脂組成物が開示されている。
【0003】
さらに、特許文献2には、樹脂と粒子を配合することにより、環境の温度変化に伴って光線拡散率が可逆的に変化する樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】特許第2706701号
【特許文献2】特開2001−226604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の発明では、光線透過率の低下は、光の有効利用という観点からは効率的でない場合などの問題があった。
【0005】
また特許文献2記載の発明では、比較的低温領域(40〜50℃)における、光線拡散率が十分に大きいものではなく、実用温度領域(25〜50℃)において、調光性が十分ではないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、環境温度変化により、ヘーズ値(%)の変化量が大きくなることによって、可逆的に透明性が変化する調光性シートであって、特に比較的低温領域(40〜50℃)において、光遮蔽性を発揮し、実用温度領域(25〜50℃)において、可逆的な透明性変化が良好な調光性シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径3μm以上50μm以下の粒子が、50重量部を越えて200重量部以下配合された樹脂組成物を成型してなり、JIS K7136に準拠して測定した25℃におけるヘーズ値をaとし、50℃におけるヘーズ値をbとしたときのヘーズ値の変化量b−aが、35%以上である調光性シートにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
第1の本発明は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径3μm以上50μm以下の粒子が、50重量部を越えて200重量部以下配合された樹脂組成物を成形してなり、JIS K7136に準拠して測定した25℃におけるヘーズ値をaとし、50℃におけるヘーズ値をbとしたときのヘーズ値の変化量b−aが、35%以上であることを特徴とする調光性シートである。
【0009】
第1の本発明の調光性シートは、実用温度域(25〜50℃)において、温度変化による透明性の変化幅(透明から白濁)が大きく、可逆的な透明性変化を良好なものとすることができる。
【0010】
従来、例えば、上記特許文献2に記載のような調光シートは、測定角度を考慮しない光線拡散率の値をもって、調光性が検討されてきた。しかしながら、本発明者は、比較的低温領域(40〜50℃)におけるヘーズ値を顕著に増加させる為には、単に樹脂に粒子を添加させ屈折率差を大きくし、光線拡散率を高くさせるのではなく、変角光度計を用いて測定される、種々の測定角度における拡散強度、より詳細には、種々の入射角における拡散角度分布を増やすことによって、光線拡散率を高くすることが重要であることを見出した。そして、種々の入射角における拡散角度分布を増やし、光線拡散率を高くするためには、熱可塑性樹脂に添加される粒子の平均粒径やその含有量を所定の範囲内とすることにより、実用温度領域(25〜50℃)におけるヘーズ値の変化量を顕著に増加させることができるとの結論に至ったのである。
【0011】
第1の本発明において、調光性シートは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径3μm以上50μm以下の粒子が50重量部を越えて200重量部以下配合された樹脂組成物を成形してなり、所定のヘーズ値を有することを必要とし、前記粒子の含有量が、熱可塑性樹脂100重量部に対して50重量部以下では、白濁時の遮蔽性が不十分であり、熱可塑性樹脂100重量部に対して200重量部以上では、樹脂組成物の成形が困難になる。
【0012】
また、前記粒子の平均粒径が3μmより小さいと、白濁時に十分な遮蔽性が得られず、平均粒径が50μmより大きいと樹脂組成物の成形が困難となる。
【0013】
第1の本発明において、調光性シートは、JIS K7136に準拠して測定した25℃におけるヘーズ値をaとし、50℃におけるヘーズ値をbとしたときのヘーズ値の変化量b−aが、35%以上であることを要する。このような範囲にヘーズが調整されていると、温度上昇前の透明性と温度上昇後の白濁性に優れ、透明性変化を良好なものとすることができる。
【0014】
第1の発明において、調光性シートを構成する熱可塑性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、中でも、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル成分が10〜50重量%であることがより好ましい。
【0015】
第1の発明において、調光性シートを構成する熱可塑性樹脂に含有される粒子は、架橋アクリル粒子であることが好ましい。
【0016】
第1の発明において、調光性シートの厚みは、10〜200μmであることが好ましい。このような厚みとすることによって、シートの温度変化が早く、透明−白濁の応答性が向上する等の有利な効果を奏し、また経済的な観点からも実用的であるといえる。本発明において、調光性シートを構成する熱可塑性樹脂に含有される粒子の含有量は、該熱可塑性樹脂100重量部に対して、50〜200重量部であることを必要とするが、このような含有量は、上記のような実用的範囲の厚みにおいて、非常に有利な効果を奏することができる。これまでは200μm以上の比較的厚い調光性シートが提案され、このような厚みの場合、熱可塑性樹脂に添加される粒子の含有量は50重量部以下とされていたが、上記のような実用的な厚みにおいて、添加される粒子の含有量が50重量部以下では、可逆的な透明性変化を良好なものとすることができない。
【0017】
第2の本発明は、第1の本発明の調光性シートを少なくとも1層積層させてなる積層体である。
【0018】
第2の本発明の積層体は、第1の本発明の調光シートが少なくとも1層積層されていることにより、機械的強度が向上する等の効果を奏することができる。
【0019】
第2の本発明において、積層体はポリカーボネートを主成分とするシートをさらに少なくとも1層備えることが好ましい。このような構成とすることによって、機械的強度が向上し、安定な形状を保持することができる等の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、比較的低温領域(40〜50℃)において、十分な光遮蔽性を発揮することで、実用温度領域(25〜50℃)において可逆的に透明性が変化する調光性シートを提供することができ、この調光性シートは、カーポートや複層窓などの各種窓材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明の実施形態について説明する。なお、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明において、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。また、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含するものである。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、通常、その成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中で50質量%以上、特に70質量%以上、中でも90質量%以上(100%含む)を占めるものである。
【0022】
<調光性シート>
本発明の調光性シートは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径3μm以上50μm以下の粒子が、50重量部を越えて200重量部以下配合された樹脂組成物を成形してなるものである。
【0023】
(調光性シートのヘーズ)
本発明の調光性シートは、JIS K7136に準拠して測定した25℃におけるヘーズ値をaとし、50℃におけるヘーズ値をbとしたときのヘーズ値の変化量b−aが、35%以上であるであることを要するが、中でも40%以上であることがより好ましい。また、前記50℃におけるヘーズ値bは55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、中でもヘーズ値の変化量b−aが35%以上であり、かつ50℃におけるヘーズ値bが55%以上であることが最も好ましい。このような範囲とすることにより、実用温度域において、温度変化による透明性変化幅(透明から白濁)が大きく、可逆的な透明性変化を良好なものとすることができる。
【0024】
第1の発明において、調光性シートの厚みは、上記のとおり、10〜200μmであることが好ましが、中でも30〜200μmであることがより好ましく、50〜150μmであることがさらに好ましい。厚みを上記範囲に調整すれば、可逆的な透明性変化を良好なものとすることができる。
【0025】
(樹脂組成物)
第1の発明において、調光性シートを構成する樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂と粒子とを配合してなり、前記熱可塑性樹脂と前記粒子との配合量や、粒子の平均粒径が所定の範囲であれば、制限されるものではなく、以下に例示した熱可塑性樹脂と粒子とを適宜組み合わせれば良い。
【0026】
(熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂は、特に制限されるものではなく、例えば、特許文献1に記載の炭素数14以上の直鎖αオレフィン重合体と、他のα−オレフィン重合体又はメタアクリル酸エステル重合体や、特開昭64−9267号公報記載のα−オレフィン系重合体とメタクリル酸系重合体等が挙げられる。その他にも、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンのようなポリエステル系樹脂、ノルボルネンの重合体のような環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドのようなポリアルキレンオキサイドなどの合成高分子が挙げられる。合成高分子は、二種以上のモノマーから得られる共重合体であってもよく、具体的にはエチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。また、二酢酸セルロースや三酢酸セルロースのようなセルロース系樹脂などの天然高分子を挙げることができ、これらを単独又は2種以上組み合わせて使用することができるが、中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用することが、透明性などの点から好ましく、酢酸ビニル成分が10〜50重量%であることが、屈折率の温度依存性などの点からより好ましい。
【0027】
上記熱可塑性樹脂の中でも、20〜70℃の範囲において、屈折率差の絶対値が少なくとも0.01以上である熱可塑性樹脂が好ましく、屈折率差の絶対値が0.03以上である熱可塑性樹脂がより好ましい。このような範囲の熱可塑性樹脂を用いれば、温度変化による透明性の変化幅(透明から白濁)が大きく、可逆的な透明性変化を良好なものとすることができる。
【0028】
(樹脂組成物に含有される粒子)
前記粒子としては、平均粒径3μm以上50μm以下の粒子であることを要するが、中でも、白濁時の遮蔽性とシート成形性のバランスの理由から、平均粒径が3〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。なお、粒子を顕微鏡で観察し、該粒子に外接する円の直径と、その円の中心から粒子の端までの長さの最も短い長さの平均をとり、それぞれ場所を変えて100個を観察したその平均値をもって平均粒径とした。また、上述したとおり、本発明の調光性シートは、上記平均粒径の粒子を熱可塑性樹脂に特定量添加させることにより、種々の入射角における拡散角度分布を増やし、光線拡散率を高くすることができるが、種々の入射光における反射光分布の増加は、さらに粒子の粒径分布にも起因する。すなわち、粒子径の揃った粒子を用いるのではなく、粒径に分布をもたせた粒子を用いることが好ましく、粒径分布をもつ粒子としては、例えば、綜研化学社製のMR−7G(平均粒径5μm)、MR−10G(平均粒径10μm)、MR−20G(平均粒径20μm)、MR−30G(平均粒径30μm)が挙げられる。
【0029】
また、前記粒子の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、50重量部を越えて200重量部以下であることを必要とするが、中でも、白濁時の遮蔽性とシート成形性のバランスの理由から、51〜150重量部とすることが好ましく、60〜130重量部とすることがより好ましい。
【0030】
さらに、前記粒子の材質としては、例えば、有機粒子として、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート系樹脂などの高分子粒子及び架橋高分子や、エチレン、プロピレン、スチレン、メタクリル酸メチル、ベンゾグアナミン、ホルムアルデヒド、メラミン、ブタジエンなどから選ばれる二種以上のモノマーから得られる共重合体等を挙げることができ、無機粒子としては、ガラスビーズや、シリカ、シリコーン、酸化チタン、ゼオライト、マイカ、タルクなどの粒子を挙げることができる。これらの中でも、分散性の理由から架橋アクリル粒子を使用することが好ましい。
【0031】
<調光性シートの製造方法>
本発明における調光性シートの製造方法としては、特に制限されず、例えば、上述した熱可塑性樹脂と粒子とを一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて溶融混練した後、Tダイを用いてシート形状に成形する方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂と粒子を溶剤に溶解、分散させた後、溶剤を除いてシート形状に成形する方法が挙げられる。
【0032】
<調光性シートの用途>
本発明の調光性シートは、温度によって、透明から白濁へと変化する性質を有することから、その用途としては、室内温度が上昇すると防眩効果や室内温度上昇抑制効果を備えた分野、例えば、カーポートや、複層窓などの各種窓材や、プライバシー保護のための間仕切り、ドア材などを挙げることができ、また示温材料や映像投影用のスクリーンなどへの応用も可能である。
【0033】
<積層体>
本発明の積層体は、少なくとも1層が上記第1の発明の調光性シートであることを必要とし、さらにポリカーボネートを主成分とするシートを少なくとも1層備えることが好ましい。ポリカーボネートを主成分とするシートとしては、特に制限されるものではなく、公知のシートを用いることができ、例えば、三菱樹脂社製の「ステラ」を挙げることができる。
【0034】
前記ポリカーボネートを主成分とするシートの厚みとしては、機械的強度等の理由から、0.1〜20mmとすることが好ましく、1〜10mmとすることがより好ましい。
【0035】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、ポリカーボネートを主成分とするシートを基材として、本発明の調光性シートを熱圧着する方法や、熱可塑性樹脂と粒子を溶剤に溶解、分散させた後、基材シートに塗布、乾燥して溶剤を除き積層体とする方法などを挙げることができる。
【実施例】
【0036】
(熱可塑性樹脂の屈折率)
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル製、「エバフレックスV421」)について、アッベ屈折計NAR−2T(アタゴ社製)を用いて、20℃、30℃、50℃、及び70℃の各温度における樹脂の屈折率を測定し、その結果を表1に示した。
【表1】

【0037】
(実施例1)
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル製、「エバフレックスV421」)100重量部に対して、平均粒径5μmの架橋アクリル粒子100重量部(総研化学社製、「MX−500」)を、ラボプラストミルを用いて、温度150℃、回転数60rpmの条件で5分間混練した。この混錬物を、熱プレスにより100μm厚みのシートに成形し、さらにこのシートをアクリルフィルム(カネカ社製、「サンデュレンNR−38」)とポリカーボネート板(三菱樹脂社製、「ステラ」、厚さ2mm)の間に熱プレスして積層体を得た。なお、上記エチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル成分は28重量%であった。
【0038】
(実施例2)
平均粒径20μmの架橋アクリル粒子100重量部(総研化学社製、「MX−2000」)を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート及び積層体を得た。
【0039】
(実施例3)
平均粒径10μmの架橋アクリル粒子100重量部(総研化学社製、「MR−10HG」)を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート及び積層体を得た。
【0040】
(比較例1)
三菱樹脂社製ポリカーボネート板「ステラ」(厚さ2mm)を積層体とした。
【0041】
(比較例2)
平均粒径1.5μmの架橋アクリル粒子100重量部(総研化学社製、「MX−150」)を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート及び積層体を得た。
【0042】
(比較例3)
平均粒径2μmの架橋アクリル100重量部(総研化学社製、「MR−2HG」)を使用した以外は、実施例1と同様にして、シート及び積層体を得た。
【0043】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたシート及び積層体を用いて、以下の試験を行った。
【0044】
(ヘーズ)
実施例1〜3及び比較例1〜3の積層体につき、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製HM−150)を用いて、温度25℃(室温)及び50℃におけるヘーズ値(%)を測定した。結果を表2に示した。
【0045】
(全光線透過率)
実施例1〜3及び比較例1〜3の積層体について、JIS K 7361−1に準拠して、ヘーズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製HM−150)を用いて、温度50℃における全光線透過率(%)を測定した。結果を表2に示した。
【0046】
(50℃における透過遮蔽性)
実施例1〜3及び比較例1〜3の積層体について、試験片を50℃に加熱し、直後に試験片を通して反対側を視認した際、容易に反対側が視認できたものを×、やや視認し難かったものを△、ほとんど視認できなかったものを○とした。結果を表2に示した。
【表2】

【0047】
表1より、本発明の調光性シート(実施例1〜3)は、実用温度領域(25〜50℃)において、ヘーズの変化量が大きく、透明性変化が良好であった。一方、比較例1〜3のシートでは、実用温度領域(25〜50℃)において、ヘーズの変化量が小さく、透明性変化が不十分であった。この差については、数値上では分かりづらいが、図面において示したように、実際の透明性変化において、上記数値の差が非常に大きなものとなることが確認された。
【0048】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1における積層体について、温度変化に伴う透明性変化の結果を示した図である。
【図2】実施例2における積層体について、温度変化に伴う透明性変化の結果を示した図である。
【図3】実施例3における積層体について、温度変化に伴う透明性変化の結果を示した図である。
【図4】比較例2における積層体について、温度変化に伴う透明性変化の結果を示した図である。
【図5】比較例3における積層体について、温度変化に伴う透明性変化の結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径3μm以上50μm以下の粒子が、50重量部を越えて200重量部以下配合された樹脂組成物を成型してなり、JIS K7136に準拠して測定した25℃におけるヘーズ値をaとし、50℃におけるヘーズ値をbとしたときのヘーズ値の変化量b−aが、35%以上であることを特徴とする調光性シート。
【請求項2】
前記粒子が、架橋アクリル粒子であることを特徴とする請求項1記載の調光性シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の調光性シート。
【請求項4】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル成分が10〜50重量%であることを特徴とする請求項3記載の調光性シート。
【請求項5】
厚さが10〜200μmである請求項1〜4のいずれか記載の調光性シート。
【請求項6】
少なくとも1層が請求項1〜5のいずれか記載の調光性シートからなる積層体。
【請求項7】
さらに、ポリカーボネートを主成分とするシートを少なくとも1層備えることを特徴とする請求項6記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−275133(P2009−275133A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128392(P2008−128392)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】