説明

調圧弁

【課題】微細な加工精度の違いによって、個々の調圧弁の調圧性能にばらつきが生ずることを回避することが可能な調圧弁を提供する。
【解決手段】流体が流れる管路11内に弁体12を配してなる弁本体1と、流体圧を利用して前記弁体12を開閉方向に駆動するための開側、閉側アクチュエータ2、3と、前記弁本体1と前記閉側アクチュエータ3との間に前記閉側アクチュエータ3が利用する流体圧を伝達し得るフィードバック経路4とを具備してなる調圧弁Vに圧力調整機構Aを具備することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弁体の開閉動作によって空気の流量調整を行うことができる流量調整機構が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、弁体の開閉動作によって流体の流量を調整し、弁体の下流側の流体圧を制御し得る調圧弁には、従来から図2に示すようなものがある。すなわち、調圧弁Vは、流体が流れる管路11内に弁体12を配してなる弁本体1と、流体圧を利用して弁体12を開方向に駆動するための開側アクチュエータ2と、流体圧を利用して弁体12を閉方向に駆動するための閉側アクチュエータ3と、弁本体1と閉側アクチュエータ3との間に閉側アクチュエータ3が利用する流体圧を伝達し得るフィードバック経路4とを具備してなるものである。
【0004】
この調圧弁Vは、流体の流量が弁本体1の弁体12の開度により調整されることにより、弁体12の下流側の流体圧力を所定圧に制御し得るものである。そして、弁体12の開度は、主として弁体12を開方向に駆動する開側アクチュエータ2の力と、弁体12を閉方向に駆動する閉側アクチュエータ3の力とのバランスにより決定される。
【0005】
開側アクチュエータ2は、ケーシングXと、ケーシングX内に配設されたピストン部材Pと、図示しない別置の圧力供給装置等から流体取込経路5に流体が供給され、流体圧によりピストンPを図中右側へ押し動かす第一のシリンダ部22とを具備してなる。なお、ピストン部材Pは、後述する閉側アクチュエータ3のピストン部材Pと共通のものである。
【0006】
閉側アクチュエータ3は、ケーシングXと、ケーシングX内に配設されたピストン部材Pと、フィードバック経路4から流体が供給され、流体圧によりピストン部材Pを図中左側へ押し動かす第二のシリンダ部32と、ピストン部材Pを図中左側へ押し動かす弾性部材たるスプリングBとを具備してなる。
【0007】
ピストン部材Pは連動機構Rを介して弁体12と接続する。この連動機構Rにより、ピストン部材Pの図中右方向への動きが弁体12の開動作に変換され、ピストン部材Pの図中左方向への動きが弁体12の閉動作に変換される。
【0008】
ここで、流体圧によりピストン部材Pを押し動かす第一、第二のシリンダ部22、32は、流体圧の安定のために供給された流体の漏洩を防ぐための措置が必要である。そこで、流体が漏洩し得るピストンPとケーシングXとの間の隙間を塞ぐものとして、ピストンPにピストンリング等のシール部材Sを備えたものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−199057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ピストン部材は可動部であるため、シール部材等を用いても第一、第二のシリンダ部に供給された流体が外部に漏洩することを完全には防ぐことができない。また、個々の調圧弁で使用される部品の加工精度には多少のばらつきがあるため、部品精度のばらつきに関係して流体の漏洩量も個々の調圧弁毎に異なるものとなってしまう。一方、別置の圧力供給装置等が供給可能な流量には一定の限界がある。このため、調圧弁の漏洩量のばらつきにより開側アクチュエータの圧力が変化した結果、個々の調圧弁毎の調圧性能にばらつきが生じてしまうという不具合があった。
【0011】
また、部品精度やシール部材等の性能を向上させることにより漏洩量を抑制しようとすれば、製造に要するコストや時間の増大につながってしまうという問題もある。
【0012】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、部品の加工精度の相違等によって、個々の調圧性能にばらつきが生じた場合にも、調圧性能を任意に調整することが可能な調圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明の調圧弁は、流体が流れる管路内に弁体を配してなる弁本体と、流体圧を利用して前記弁体を開方向に駆動するための開側アクチュエータと、流体圧を利用して前記弁体を閉方向に駆動するための閉側アクチュエータと、前記弁本体と前記閉側アクチュエータとの間に前記閉側アクチュエータが利用する流体圧を伝達し得るフィードバック経路とを具備してなる調圧弁であって、前記閉側アクチュエータが利用する流体圧を調整し得る圧力調整機構を具備してなることを特徴とする。
【0014】
このようなものであれば、圧力調整機構が閉側アクチュエータが利用する流体圧を任意に調整することができるため、開側アクチュエータに供給される流体の漏洩量にばらつきがあっても、圧力供給装置等との組合せにおいて個々の製品ごとに調圧弁の調圧性能を調整することができる。しかも、圧力調整機構は比較的簡易な構成で実現できるため、部品精度やシール部材の材質等を改善して対処するよりも時間的、材料的なコストを抑えることができ、実用性に富んだものとなる。
【0015】
ここで、調圧弁は航空機の空調系統に用いられると好適なものであり、前記流体には航空機のエンジン抽気などが挙げられる。
【0016】
また、前記圧力調整機構は、管路から閉側アクチュエータへの流体流量を制限する流量制限部と、この流量制限部の下流側に配設され外部に流体を排出し得る排出経路と、この排出経路への排出量を調整し得る排出量調整部とを具備してなるものがある。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、部品の加工精度の違い等により個々の製品の調圧性能にばらつきが生じた場合にも、調圧性能を調整することが可能な調圧弁を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における調圧弁の一実施形態を示す概略図である。
【図2】従来の調圧弁の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図1を参照して説明する。なお、図2にて説明した調圧弁と同様の部材については同一の符号を付して説明する。
【0020】
本発明の調圧弁Vは、図1に示すように、流体が流れる管路11内に弁体たるバタフライ弁12を配してなる弁本体1と、流体圧を利用してバタフライ弁12を開方向に駆動するための開側アクチュエータ2と、流体圧を利用してバタフライ弁12を閉方向に駆動するための閉側アクチュエータ3と、弁本体1と閉側アクチュエータ3との間に閉側アクチュエータ3が利用する流体圧を伝達し得るフィードバック経路4と、閉側アクチュエータ3が利用する流体圧を調整し得る圧力調整機構Aとを具備してなる。
【0021】
調圧弁Vは、航空機の空調系統で用いられて好適なものである。例えば、高圧のエンジン抽気を抽気経路内において所定圧に減圧するために調圧弁Vが所要箇所に配設される。
【0022】
弁本体1は、流体が流れる管路11と、この管路11の所定位置に配設された弁体たるバタフライ弁12とを具備してなる。また、流体は管路11の内部を図中左方向から右方向へ流れるものとして説明する。
【0023】
なお、「流体」には、エンジン抽気などの空気の他、ガスや蒸気等の種々の気体や、水や油等の種々の液体が該当する。
【0024】
開側アクチュエータ2は、ケーシングXと、ケーシングX内に配設されたピストン部材Pと、流体取込経路5から流体が供給され、流体圧によりピストン部材Pを図中右方向へ押し動かす第一のシリンダ部22とを具備してなる。なお、ピストン部材Pは、後述する閉側アクチュエータ3のピストン部材Pと共通のものである。
【0025】
閉側アクチュエータ3は、ケーシングXと、ケーシングX内に配設されたピストン部材Pと、フィードバック経路4から流体が供給され、流体圧によりピストン部材Pを図中左方向へ押し動かす第二のシリンダ部32と、ピストン部材Pを図中左方向へ押し動かす弾性部材たるスプリングBとを具備してなる。
【0026】
ピストン部材Pは連動機構Rを介して弁体12と接続し、ピストン部材Pの動作に応じてバタフライ弁12が開閉動作し得る。すなわち、ピストン部材Pが図中右方向に移動する場合は、バタフライ弁12は開方向に動作し、ピストン部材Pが図中左方向に移動する場合は、バタフライ弁12は閉方向に動作する。また、ピストン部材Pには、ケーシングXとの間の隙間から第一、第二のシリンダ部22、32の流体が外部へ漏洩することを抑止するべく所要箇所にシール部材Sが取着されている。
【0027】
なお、図中点線にて示されている連動機構Rは、ピストン部材Pの図中左右方向への動作をバタフライ弁12の開閉動作に変換し得る通常のものであるため説明は省略する。
【0028】
フィードバック経路4は、弁本体1と閉側アクチュエータ3との間であって、バタフライ弁12の下流側の所定箇所と閉側アクチュエータ3の第二のシリンダ部32とを連通するものである。なお、フィードバック経路4はバタフライ弁12の下流側の流体を取り入れて、閉側アクチュエータ3の第二のシリンダ部32に伝達し得るものである。
【0029】
しかして、本発明にかかる調圧弁Vは、閉側アクチュエータ3が利用する流体圧を調整し得る圧力調整機構Aを備えたものである。
【0030】
圧力調整機構Aは、管路11から閉側アクチュエータ3への流体流量を制限する流量制限部たる絞り部A1と、流量制限部たる絞り部A1の下流側に配設され外部に流体を排出し得る排出経路たる排出管路A2と、排出経路たる排出管路A2への排出量を調整し得る排出量調整部たる排出量調整弁A3とを具備してなる。
【0031】
流量制限部たる絞り部A1は、フィードバック経路4の所定箇所に配設されたもので、圧力調整機構Aを機能させる場合に、バタフライ弁12の下流側の流体圧力と、閉側アクチュエータ3の第2のシリンダ部32との圧力差を発生させ得るものである。
【0032】
排出経路たる排出管路A2は、絞り部A1の下流側に設けられ、フィードバック経路4から流体を外部に逃し得るものである。
【0033】
排出量調整部たる排出量調整弁A3は、排出経路A2の所要箇所に配設され、流体の排出量を任意に調整することができるものである。
【0034】
本発明に係る調圧弁Vの作用及び効果は次の通りである。
【0035】
弁本体1のバタフライ弁12の開度は、主としてバタフライ弁12を開方向に作動させる開側アクチュエータ2の力と、バタフライ弁12を閉方向に作動させる閉側アクチュエータ3の力とのバランスにより決定される。更に詳述すると、開側アクチュエータ2の力は、開側アクチュエータ2の第一のシリンダ部22に供給された流体の流体圧がピストンPを図中右側に押し動かし得る力であり、閉側アクチュエータ3の力は、閉側アクチュエータ2の第二のシリンダ部32に供給された流体の流体圧がピストンPを図中左側に押し動かし得る力及びケーシングXとピストンPの間に介在してピストンPを図中左側に押し動かし得る力である。
【0036】
しかし、開側アクチュエータ2の第一のシリンダ部22に供給された流体は、ピストンPとケーシングXとの間から所定量が漏洩してしまい、個々の調圧弁Vにおける漏洩量の相違によって、調圧弁Vの調圧性能にばらつきが発生してしまうこととなる。
【0037】
そこで、圧力調整機構Aは、絞り部A1により、絞り部A1の上流側と下流側との圧力差を生じ得るようにし、排出管路A2から排出量調整弁A3により流体流量を任意に低減させることにより調圧弁Vの調圧性能を柔軟に調整できるようにしたものである。
【0038】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0039】
例えば、流量制限部は、流体流量を制限して上流部と下流部との圧力差を生じさせるものであればよく、本実施形態に示されるような絞り部に限定されるものではない。
【0040】
また、排出経路は外部に流体を排出し得るものであればよく、本実施形態に示されるような排出管路に限定されるものではない。
【0041】
排出量調整部は、排出経路への排出量を調整しうるものであればよく、本実施形態に示されるような排出量調整弁に限定されるものではない。
【0042】
排出経路及び排出量調整部は、流量制限部の下流側に配設されればよく、閉側アクチュエータの第二のシリンダ部やピストン部材の所要箇所に設けたものでもよい。また、排出経路及び排出量調整部を一体化してなるものを用いてもよい。
【0043】
弁体は、下流側の流体流量を調整し得るものであればよく、本実施形態に示されるようなバタフライ弁の他、グローブ弁やボール弁などを用いたものでもよい。
【0044】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…弁本体
2…開側アクチュエータ
3…閉側アクチュエータ
4…フィードバック経路
11…管路
12…弁体(バタフライ弁)
A…圧力調整機構
V…調圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる管路内に弁体を配してなる弁本体と、流体圧を利用して前記弁体を開方向に駆動するための開側アクチュエータと、流体圧を利用して前記弁体を閉方向に駆動するための閉側アクチュエータと、前記弁本体と前記閉側アクチュエータとの間に前記閉側アクチュエータが利用する流体圧を伝達し得るフィードバック経路とを具備してなる調圧弁であって、
前記閉側アクチュエータが利用する流体圧を調整し得る圧力調整機構を具備してなることを特徴とする調圧弁。
【請求項2】
前記流体は航空機のエンジン抽気である請求項1記載の調圧弁。
【請求項3】
前記圧力調整機構は、管路から閉側アクチュエータへの流体流量を制限する流量制限部と、この流量制限部の下流側に配設され外部に流体を排出し得る排出経路と、この排出経路への排出量を調整し得る排出量調整部とを具備してなることを特徴とする請求項1又は2記載の調圧弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−220996(P2012−220996A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83059(P2011−83059)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】