説明

調整バルブ及び過給装置

【課題】バルブ開度を調整して流体の流量を容易に制御できる調整バルブ及び過給装置を提供すること。
【解決手段】本発明の調整バルブ75は、第1流路71と、該第1流路71に合流する第2流路72との合流部Mに設けられ、第2流路72から第1流路71に導入される流体の流量を調整する調整バルブであって、略矩形板状の弁体82と、弁体82における所定の縁部85と略平行する所定の軸周りで弁体82を回転自在に支持する支持部83とを有し、第2流路72は、合流部Mにおける断面形状が弁体82の外形と嵌合する略矩形に形成され、弁体82は、第2流路72を閉塞する第1位置P1と、第2流路72を開放する第2位置P2との間を回転して移動するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整バルブ及び過給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、容量の異なる複数のターボチャージャを備え、これら複数のターボチャージャの動作を逐次切り替えることで、エンジンの低回転域から高回転域に亘りその性能を向上させる過給装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
ターボチャージャは、エンジンから排出される排気ガスの流動によって動作する。上記過給装置は、エンジンの低回転域では排気ガスの流量が少ないため、応答性の良い小型ターボチャージャに排気ガスを供給することでターボラグを短縮し、エンジンの高回転域では排気ガスの流量が多くなるため、大型ターボチャージャに排気ガスを供給してエンジンの性能を大きく向上させている。
【0003】
エンジンから排出される排気ガスの流路は分岐され、複数のターボチャージャにそれぞれ接続されている。流路の分岐点(又は、分岐した流路が再び合流する箇所)には、排気ガスの流動方向を切り替えると共にその流量を調整する調整バルブが設けられている。この調整バルブには、ターボチャージャにおけるウェイストゲートバルブと同様のバルブ構成が用いられており、流路の端部に設けられる略円環状の弁座と、アクチュエータ等の作動により上記弁座に当接して流路を開閉できる弁体とを有している。弁体と弁座との間の間隔を調整することで、排気ガスの流量が調整され、各ターボチャージャに導入される排気ガスの流量が変化する。そして、調整バルブが排気ガスの流量を調整することで、複数のターボチャージャ間における動作の切替が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−71179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術には、以下のような課題が存在する。
上述したように、従来の調整バルブにはウェイストゲートバルブと同様のバルブ構成が用いられている。
しかし、このバルブ構成を用いた場合、バルブ開度と、調整バルブを介して流動する流体の流量とが非線形の関係となり、バルブ開度を調整することで流体の流量を適切に制御することが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、バルブ開度を調整して流体の流量を容易に制御できる調整バルブ及び過給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の調整バルブは、第1流路と、該第1流路に合流する第2流路との合流部に設けられ、第2流路から第1流路に導入される流体の流量を調整する調整バルブであって、略矩形板状の弁体と、弁体における所定の縁部と略平行する所定の軸周りで弁体を回転自在に支持する支持部とを有し、第2流路は、合流部における断面形状が弁体の外形と嵌合する略矩形に形成され、弁体は、第2流路を閉塞する第1位置と、第2流路を開放する第2位置との間を回転して移動するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、弁体及び第2流路は共に略矩形に形成されており、弁体が回転することで形成される第2流路における開口部の形状も略矩形となる。そのため、弁体の開度と上記開口部の開口面積とは略線形の関係となり、流体の流量は開口面積に従うことから、弁体の開度と流体の流量とが略線形の関係となる。
【0008】
本発明の調整バルブは、支持部が、第1流路と第2流路との間に設けられるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、支持部を第2流路の第1流路と逆側に設置した場合等に比べ、調整バルブを設置するためのスペースを縮小することができる。
【0009】
本発明の調整バルブは、弁体における第2流路に臨む板面の、軸と直交する方向での断面形状が、膨出する凸状に湾曲しているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、特に弁体の開度が小さい場合において、弁体における板面の、第2流路を形成し上記板面と略対向する壁部に対する傾きが、弁体の回転先端に向かうに従い漸次小さくなっているため、板面と壁部との間を流れる流体の損失を低減することが可能となる。
【0010】
本発明の調整バルブは、弁体における第2流路に臨む板面の、軸と直交する方向での断面形状が、凹状に湾曲しているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、第2流路から第1流路に導入される流体は弁体における板面に沿って流動するため、板面が凹状に湾曲していることで、弁体を通過した流体は第1流路の延在方向に略沿う方向で流動し、第2流路から第1流路に導入される流体の損失を低減することが可能となる。
【0011】
本発明の調整バルブは、第1位置にある弁体の第2流路に臨む板面と、第2流路を形成し板面と略対向する壁部との間の間隔が、弁体の回転先端に向かうに従い漸次狭くなるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、特に弁体の開度が小さい場合において、弁体における板面と壁部との間の間隔が前記弁体の回転先端に向かうに従い漸次狭くなっているため、板面と壁部との間を流れる流体の損失を低減することが可能となる。
【0012】
本発明の過給装置は、請求項1から5のいずれか一項に記載の調整バルブと、容量の異なる複数のターボチャージャと、調整バルブの開度を制御する制御部とを備え、調整バルブは、制御部の制御に基づいて、複数のターボチャージャのそれぞれに導入される流体の流量を調整して、複数のターボチャージャ間での動作の切り替えを行うという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、弁体及び第2流路は共に略矩形に形成されており、弁体が回転することで形成される第2流路における開口部の形状は略矩形となる。そのため、弁体の開度と上記開口部の開口面積とは略線形の関係となり、流体の流量は開口面積に従うことから、弁体の開度と流体の流量とが略線形の関係となる。また、複数のターボチャージャ間での動作の切り替えは、それぞれのターボチャージャに導入される流体の流量によって決定されるため、弁体の開度を調整することで過給装置におけるターボチャージャの動作を容易に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弁体の開度と流体の流量とが略線形の関係となることから、弁体の開度を調整することで流体の流量を容易に制御できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】駆動系1の全体構成を示す概略図である。
【図2】調整バルブ75の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の調整バルブ及び過給装置に係る実施の形態を、図1及び図2を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
図1は、本実施形態に係る調整バルブ及び過給装置が設けられている駆動系1の全体構成を示す概略図である。
駆動系1は、車両等に設けられ、該車両を走行させるための系であって、エンジン2と、過給装置3とを有している。
【0017】
エンジン2は、空気と燃料との混合気体を燃焼させて、車両を走行させるための駆動力を発生する駆動装置である。エンジン2は、過給装置3から吐出された空気が導入される流路であるエンジン給気流路21と、エンジン給気流路21から供給された空気と燃料との混合気体を燃焼させる複数の燃焼室(図示せず)を備えるエンジンブロック22と、エンジンブロック22から排出された排気ガスを過給装置3に供給する流路であるエンジン排気流路23とを有している。
【0018】
過給装置3は、容量の異なる複数のターボチャージャを備え、ターボチャージャの動作により圧縮された空気をエンジン2に供給してエンジン2の性能を向上させる装置である。また、上記複数のターボチャージャは、エンジン2の排気ガスの流動に関して直列に配列されており、過給装置3はいわゆるシーケンシャルタイプの過給装置である。過給装置3は、第1ターボチャージャ(ターボチャージャ)4と、第2ターボチャージャ(ターボチャージャ)5と、給気部6と、排気部7と、制御部9とを有している。
【0019】
第1ターボチャージャ4は、導入される排気ガスの流量が少なくても作動することのできる小型・小容量のターボチャージャである。第1ターボチャージャ4は、エンジン2から排出された排気ガスが導入されることで回転する第1タービン41と、給気部6から供給される空気を圧縮する第1コンプレッサ42と、第1タービン41の回転駆動力を第1コンプレッサ42に伝達する軸である第1回転軸43とを有している。なお、第1タービン41の排気ガス導入口にはエンジン排気流路23が接続され、第1コンプレッサ42の吐出口にはエンジン給気流路21が接続されている。
【0020】
第2ターボチャージャ5は、第1ターボチャージャ4よりも大型・大容量のターボチャージャである。第2ターボチャージャ5は、エンジン2から排出された排気ガスが導入されることで回転する第2タービン51と、給気部6から供給される空気を圧縮する第2コンプレッサ52と、第2タービン51の回転駆動力を第2コンプレッサ52に伝達する軸である第2回転軸53とを有している。
【0021】
給気部6は、車両の外部から導入された空気を、第1ターボチャージャ4及び第2ターボチャージャ5に供給するものであって、空気が流動する流路である第1給気流路61から第3給気流路63と、空気を一方向のみに流動させる逆止弁64とを有している。
【0022】
第1給気流路61は、車両の外部から導入された空気を第2コンプレッサ52に供給する流路であって、その上流側には車両の外部から導入された空気を濾過して粉塵等を除去する不図示のエアクリーナが接続され、その下流側は第2コンプレッサ52の吸気口に接続されている。
第2給気流路62は、第2コンプレッサ52から吐出された空気を第1コンプレッサ42に供給する流路であって、その上流側は第2コンプレッサ52の吐出口に接続され、その下流側は第1コンプレッサ42の吸気口に接続されている。
【0023】
第3給気流路63は、第2コンプレッサ52から吐出された空気を、第1コンプレッサ42を通さずにエンジン2側に流動させるバイパス流路であって、第2給気流路62とエンジン給気流路21との間に設けられている。
逆止弁64は、第2給気流路62と第3給気流路63との接続部に設けられ、第1コンプレッサ42によって圧縮されエンジン給気流路21に流入した空気が第3給気流路63を介して第2給気流路62に戻ることを防止するための弁である。
【0024】
排気部7は、エンジン2から排出された排気ガスを第1タービン41及び第2タービン51に供給し、最終的には車両の外部に放出するものであって、第1排気流路(第1流路)71から第4排気流路74と、調整バルブ75と、ウェイストゲートバルブ76とを有している。
【0025】
第1排気流路(第1流路)71は、第1タービン41から吐出された排気ガスを第2タービン51に供給する流路であって、その上流側は第1タービン41の吐出口に接続され、その下流側は第2タービン51の排気ガス導入口に接続されている。
第2排気流路(第2流路)72は、エンジン2から吐出された排気ガスを、第1タービン41を通さずに第2タービン51側に流動させるバイパス流路であって、エンジン排気流路23と第1排気流路71との間に設けられている。
【0026】
第3排気流路73は、第2タービン51から吐出された排気ガスを車両の外部に向けて流動させる流路であって、その上流側は第2タービン51の吐出口に接続され、その下流側は排気ガスを浄化する不図示のガス浄化装置に接続されている。
第4排気流路74は、第1タービン41から吐出された排気ガスを、第2タービン51を通さずに車両の外部に向けて流動させるバイパス流路であって、第1排気流路71と第3排気流路73との間に設けられている。
【0027】
調整バルブ75は、制御部9の制御に基づいて、第2排気流路72から第1排気流路71に導入される排気ガスの流量を調整し、第1ターボチャージャ4と第2ターボチャージャ5との動作の切り替えを行うものである。調整バルブ75は、第1排気流路71と第2排気流路72との合流部M(図2参照)に設けられている。なお、調整バルブ75の詳細は後述する。
【0028】
ウェイストゲートバルブ76は、第1排気流路71と第4排気流路74との接続部に設けられ、第2タービン51に所定の流量以上の排気ガスが流入するときに、排気ガスを下流側にバイパスさせて第2タービン51のオーバーブーストによる破損を防ぐための弁である。ウェイストゲートバルブ76には、不図示のアクチュエータが接続されている。
【0029】
制御部9は、調整バルブ75の動作を制御して、第2排気流路72から第1排気流路71に導入される排気ガスの流量を調整し、第1ターボチャージャ4と第2ターボチャージャ5との動作の切り替えを制御するためのものである。なお、制御部9は、例えば駆動系1においてエンジン2等の動作を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)であってもよい。
【0030】
続いて、調整バルブ75の構成を、図2を参照して詳細に説明する。
図2は、調整バルブ75の構成を示す概略図であって、(a)は側方断面図、(b)は(a)のA−A線視断面図である。
調整バルブ75は、図2(a)の紙面上下方向に略平行して延在する第1排気流路71と、第1排気流路71に合流する第2排気流路72との合流部Mに設けられ、第2排気流路72から第1排気流路71に導入される排気ガスの流量を調整するためのバルブである。調整バルブ75は、弁座81と、弁体82と、孔部(支持部)83と、駆動部84とを有している。なお、第1排気流路71及び第2排気流路72の上流側は、図2(a)における紙面上側とする。
【0031】
弁座81は、第2排気流路72における第1排気流路71側の端部に設けられている。弁座81における弁体82が当接する当接面は、弁体82の回転先端87(後述)に応じた形状で形成され、弁体82が弁座81に隙間無く当接できるように構成されている。
【0032】
弁体82は、略矩形板状の部材であって、第2排気流路72から第1排気流路71に導入される排気ガスの流量を調整するものである。
弁体82における、第1排気流路71の上流側に位置する縁部85は、縁部85の延在方向に平行し且つ相反する方向に突出する一対の回転軸86を有している。一対の回転軸86は、第1排気流路71を形成する第1排気管71aに形成されている一対の孔部83に回転自在に設けられている。すなわち、弁体82は孔部83に支持され、回転軸86の軸周りで回転することができる。なお、孔部83に転がり軸受等を用いてもよい。
【0033】
なお、孔部83は、第1排気流路71と第2排気流路72との間に配置されている。このため、弁体82を回転自在に支持する支持部を、第2排気流路72の第1排気流路71と逆側に配置した場合に比べ、調整バルブ75を設置するためのスペースを縮小することができる。
【0034】
一方側の回転軸86は他方側よりも長く形成され、第1排気管71aの外部まで突出している。また、この一方側の回転軸86は、弁体82を回転させるための駆動部84と連結されている。駆動部84には電動機等が用いられる。
駆動部84は制御部9と電気的に接続されており、駆動部84は制御部9の制御に基づき回転軸86を介して、弁体82を回転させることができる。
【0035】
縁部85の逆側の縁部である回転先端87は、弁体82の回転に関して外側に位置する縁部であり、弁体82が第2排気流路72を閉塞するときに、弁座81と当接する部分である。上述したように、弁座81の弁体82が当接する当接面は、回転先端87に応じた形状で形成され、回転先端87が弁座81に隙間無く当接できるように構成されている。
また、弁体82における、回転軸86の軸方向と直交する方向での断面形状は、回転先端87に向かうに従い幅狭となる略翼形状に形成されている。
【0036】
弁体82における、第2排気流路72に臨む第1板面(板面)88の、回転軸86の軸方向と直交する方向での断面形状は、膨出する凸状に湾曲している。そのため、特に弁体82と弁座81との間隔(すなわち弁体82の開度)が小さい場合において、第1板面88の、第2排気流路72を形成し第1板面88と略対向する壁部72aに対する傾きが、回転先端87に向かうに従い漸次小さくなっている。また、第1板面88と壁部72aとの間の間隔が、回転先端87に向かうに従い漸次狭くなっている。
【0037】
一方、弁体82における、第1板面88と逆側の第2板面89は、略平面状に形成されている。また、弁体82が弁座81に当接したときに、第2板面89は、第1排気流路71の延在方向と略平行する姿勢で設けられている。
なお、第2板面89を第1排気流路71に臨む凹形状とし、弁体82を排気ガスの流れに考慮した翼形状としてもよい。
【0038】
第2排気流路72における、その延在方向と直交する方向での断面形状は、弁体82の外形と嵌合する略矩形に形成されている。すなわち、弁体82が回転したとしても、弁体82の回転先端87以外の3つの縁部と、第1排気流路71及び第2排気流路72を形成する壁部との間の隙間は略一定である。
一方、弁体82の開度が大きくなるに従い、弁座81と回転先端87との間には第2排気流路72における略矩形の開口部72bが形成される。開口部72bにおける回転軸86の中心軸方向での長さは変化しないため、弁体82の開度と開口部72bの開口面積とは単純な比例関係となる。よって、弁体82の開度と開口部72bの開口面積とが略線形の関係となる。
【0039】
上述したように、弁体82は、駆動部84の作動により回転軸86の軸周りで回転し、第1排気流路71と第2排気流路72との合流部M近傍で移動することができる。すなわち、弁体82は、図2に示す第1位置P1、第2位置P2及び第3位置P3の間を移動することができる。
【0040】
第1位置P1は、弁体82が弁座81に当接した位置である。第1位置P1にある弁体82は、第2排気流路72を閉塞している。
第2位置P2は、弁体82が弁座81から最大に離間した位置であり、エンジン2から排出される排気ガスがほぼ全て第2排気流路72を流動しているときの位置である。
第3位置P3は、第1位置P1と第2位置P2との間に設けられ、弁体82が弁座81との間に所定の間隔を形成する位置である。
【0041】
続いて、本実施形態における駆動系1の動作を説明する。なお、エンジン2及び各ターボチャージャ等の一般的な動作についてはその説明を省略し、本発明に係る調整バルブ75と関わる動作についてのみ説明する。
以下、駆動系1における調整バルブ75と関わる動作を、図1及び図2を参照して説明する。
【0042】
以下の動作説明は、エンジン2がその回転数を低回転域から高回転域まで上昇させる過程について説明する。
まず、エンジン2の回転数が低回転域にあるときは、制御部9は弁体82を図2(a)に示す第1位置P1に保持させる。第1位置P1にある弁体82は弁座81に当接し、且つ第2排気流路72の断面形状は弁体82の外形と嵌合する略矩形に形成されているため、第2排気流路72は弁体82によって閉塞され、第2排気流路72内を排気ガスはほとんど流動しない。よって、エンジン2から排出された排気ガスは、ほぼ全てエンジン排気流路23から第1タービン41に導入される。
【0043】
第1タービン41に導入された排気ガスは、第1ターボチャージャ4を作動させた後、第1タービン41の吐出口から第1排気流路71に流動する。そして、調整バルブ75の近傍では、排気ガスは、第1排気流路71内を図2(a)の紙面上側から下側に向かって流動する。
このとき、弁体82の第2板面89が第1排気流路71の延在方向と略平行する姿勢で設けられているため、排気ガスの流動の損失を低く抑えることができる。
【0044】
次に、エンジン2の回転数が上昇すると共に、過給装置3の動作の主体を第1ターボチャージャ4から第2ターボチャージャ5に切り替える。
エンジン2の回転数が上昇すれば、排出される排気ガスの流量が増加することから、小型・小容量の第1ターボチャージャ4では排気ガスの流動に関するエネルギーを十分に利用することができなくなる。そのため、過給装置3の動作の主体を、大型・大容量の第2ターボチャージャ5に切り替える。ここで、駆動系1全体としての動作を不安定化させないために、第1ターボチャージャ4から第2ターボチャージャ5への動作の切り替えは円滑に行う必要がある。
【0045】
制御部9が駆動部84を作動させて回転軸86を回転させ、弁体82を弁座81から僅かに離間させる。すなわち、制御部9が弁体82を、図2(a)に示す第3位置P3に移動させる。
弁体82と弁座81とが互いに離間するため、回転先端87と弁座81との間には開口部72bが形成され、開口部72bを介して第2排気流路72から第1排気流路71に排気ガスが矢印Gの向きで流動し始める。
【0046】
このとき、未だ第1排気流路71の上流側からの排気ガスの流れは存在しており、第1ターボチャージャ4も作動している。もっとも、排気ガスの流動においては、第1タービン41を通るよりもバイパス流路である第2排気流路72を通る方がその流動抵抗が少なくなるため、調整バルブ75の開度が大きくなるに従い、排気ガスはより第2排気流路72を流動し、過給装置3の動作の主体が漸次第1ターボチャージャ4から第2ターボチャージャ5に切り替わる。
【0047】
ここで、弁体82における第1板面88の断面形状は、膨出する凸状に湾曲しているため、第1板面88の、第2排気流路72を形成し第1板面88と略対向する壁部72aに対する傾きが、回転先端87に向かうに従い漸次小さくなっている。また、第1板面88と壁部72aとの間の間隔が、回転先端87に向かうに従い漸次狭くなっている。
よって、第1板面88と壁部72aとの間を流れる排気ガスの損失を低減することができ、過給装置3の効率の低下を防ぐことができる。
【0048】
また、同じ理由から、第1板面88と壁部72aとの間の排気ガスを円滑に流動させることができる。よって、過給装置3の動作を、第1ターボチャージャ4から第2ターボチャージャ5に円滑に切り替えることができる。
【0049】
さらに、第1ターボチャージャ4から第2ターボチャージャ5への動作の切り替えは、排気ガスの第1排気流路71及び第2排気流路72への流量の制御によって行われる。ここで、上述したように弁体82の開度と開口部72bの開口面積とは略線形の関係にあり、第2排気流路72から第1排気流路71に導入される排気ガスの流量は、開口部72bの開口面積に従うことから、弁体82の開度と上記排気ガスの流量は、略線形の関係となる。
したがって、弁体82の開度を制御部9の制御に基づいて調整することで、第2排気流路72から第1排気流路71に導入される排気ガスの流量を容易に制御することができ、駆動系1の動作を不安定化することなく、第1ターボチャージャ4から第2ターボチャージャ5への動作の切り替えを適切に行うことができる。
【0050】
次に、エンジン2の回転数の上昇と共に、制御部9は弁体82を弁座81から更に離間させ、図2(a)に示す第2位置P2に移動させる。
この状態では、エンジン2から排出される排気ガスは、ほぼ全てが第2排気流路72を流動しており、第1ターボチャージャ4は停止している。よって、調整バルブ75の近傍においても、第1排気流路71の上流側からの排気ガスの流れは無く、矢印Gに示す第2排気流路72からの流れのみとなる。したがって、過給装置3の動作は、第1ターボチャージャ4から大型・大容量の第2ターボチャージャ5に完全に切り替わっており、エンジン2からの排気ガスの流動に関するエネルギーを十分に利用することができ、結果としてエンジン2の性能を大きく向上させることができる。
【0051】
なお、弁体82の位置が、第1位置P1から第3位置P3を介して第2位置P2に変化するに従い、弁体82の、第1排気流路71内への突出量は次第に大きくなるが、この変化に伴い第1排気流路71の上流側から流れる排気ガスの流量は減少していくので、過給装置3の効率を大きく低下させる虞はない。
【0052】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、弁体82の開度と排気ガスの流量とが略線形の関係となることから、弁体82の開度を調整することで排気ガスの流量を容易に制御できるという効果がある。さらに、弁体82の開度を制御部9の制御に基づいて調整することで、過給装置3の動作を第1ターボチャージャ4と第2ターボチャージャ5との間で適切に切り替えることができるという効果がある。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、調整バルブ75は車両に設けられる駆動系1に設置されているが、これに限定されるものではなく、第1流路に第2流路が合流している箇所で、第2流路から第1流路に流体の流量を容易に制御する必要の有る場合に用いてもよい。また、流体も排気ガスに限定されず、その他の流体(気体・液体)であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、弁体82の第1板面88は膨出する凸状に湾曲していたが、これに限定されるものではなく、第1板面88を略平面状に形成し、弁体82が第1位置P1にあるときに、第1板面88と壁部72aとの間の間隔が回転先端87に向かうに従い漸次狭くなるように構成されていてもよい。このような構成によれば、弁体82が弁座81から僅かに離間したとしても、第1板面88と壁部72aとの間の間隔は回転先端87に向かうに従い漸次狭くなっているため、第1板面88と壁部72aとの間を流れる排気ガスの損失を低減することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、弁体82の第1板面88は膨出する凸状に湾曲していたが、逆に凹状に湾曲していてもよい。このような構成によれば、第2排気流路72から第1排気流路71に導入される排気ガスは第1板面88に沿って流動するため、第1板面88が凹状に湾曲していることで、弁体82を通過した排気ガスは第1排気流路71の延在方向に略沿う方向で流動し、第2排気流路72から第1排気流路71に導入される排気ガスの損失を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
3…過給装置、4…第1ターボチャージャ(ターボチャージャ)、5…第2ターボチャージャ(ターボチャージャ)、71…第1排気流路(第1流路)、72…第2排気流路(第2流路)、72a…壁部、75…調整バルブ、82…弁体、83…孔部(支持部)、85…縁部、87…回転先端、88…第1板面(板面)、9…制御部、M…合流部、P1…第1位置、P2…第2位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路と、該第1流路に合流する第2流路との合流部に設けられ、前記第2流路から前記第1流路に導入される流体の流量を調整する調整バルブであって、
略矩形板状の弁体と、
前記弁体における所定の縁部と略平行する所定の軸周りで前記弁体を回転自在に支持する支持部とを有し、
前記第2流路は、前記合流部における断面形状が前記弁体の外形と嵌合する略矩形に形成され、
前記弁体は、前記第2流路を閉塞する第1位置と、前記第2流路を開放する第2位置との間を回転して移動することを特徴とする調整バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の調整バルブにおいて、
前記支持部は、前記第1流路と前記第2流路との間に設けられることを特徴とする調整バルブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の調整バルブにおいて、
前記弁体における前記第2流路に臨む板面の、前記軸と直交する方向での断面形状が、膨出する凸状に湾曲していることを特徴とする調整バルブ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の調整バルブにおいて、
前記弁体における前記第2流路に臨む板面の、前記軸と直交する方向での断面形状が、凹状に湾曲していることを特徴とする調整バルブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の調整バルブにおいて、
前記第1位置にある前記弁体の前記第2流路に臨む板面と、前記第2流路を形成し前記板面と略対向する壁部との間の間隔が、前記弁体の回転先端に向かうに従い漸次狭くなることを特徴とする調整バルブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の調整バルブと、
容量の異なる複数のターボチャージャと、
前記調整バルブの開度を制御する制御部とを備え、
前記調整バルブは、前記制御部の制御に基づいて、前記複数のターボチャージャのそれぞれに導入される流体の流量を調整して、前記複数のターボチャージャ間での動作の切り替えを行うことを特徴とする過給装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−58426(P2011−58426A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209155(P2009−209155)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】