説明

調湿炭設備における石炭の水分測定方法

【課題】 石炭の水分を調整する調湿炭設備において、乾燥後の石炭の水分調整を行う際に必要になる、石炭の水分測定を、劣悪な環境下にも正確に行うことのできる方法について提案する。
【解決手段】 コークス炉に装入する石炭を、その装入前に調湿炭設備の乾燥機に導入して石炭の水分を調整する際に、乾燥機とコークス炉との間において石炭の水分を測定するに当たり、該測定箇所の雰囲気中に発生した水蒸気を排除する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、コークス炉に装入する石炭を事前に乾燥することによって、その水分を調整する調湿炭設備において、石炭の水分調整を行う際に必要となる石炭の水分量を正確に測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】石炭をコークス炉に装入するに先立って行われる石炭の調湿は、図1に示すように、配合ベッド1よりベルトコンベア2を介して搬送した石炭を一旦、湿炭ホッパー3に貯蔵し、湿炭ホッパー3から切り出し装置4により定量の石炭を乾燥機5に導入し、乾燥機5で水分調整を行ったのち、コークス炉へと送り出すのが、一般的である。
【0003】ここで、石炭を乾燥させて水分調整を行うのは、コークス炉に装入する石炭の水分量が一定であれば、コークス炉での消費エネルギーが低減される上、得られるコークスの品質が向上するからである。しかし、石炭の水分が低くなりすぎると、例えば石炭の輸送過程やコークス炉装入時に塵の発生を招く等の操業上の問題を誘発することから、この種の問題が生じない適正範囲に、石炭の水分量を調整することとしている。
【0004】ところで、乾燥機の運転開始期や使用する石炭銘柄の切替え時には、乾燥機における石炭処理量が急激に変化するため、乾燥機における熱量制御が石炭処理量の変化に対応し切れない結果、石炭が過度に乾燥されることがある。このように石炭が過乾燥された場合に備えて、図1に示すように、乾燥機5からコークス炉へ石炭6を搬送するコンベア7上に、水分計8を設置し、この水分計8で測定した水分測定値に基づいて、過乾燥の場合には、乾燥機5の出側に設けた加水機9から水を石炭に供給する、フィードバック制御を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記水分計8には、非接触の赤外線式が用いられるのが一般的であるが、水分計8を設置する測定箇所の環境が劣悪であるために、正確な水分値の測定が難しいという問題があった。
【0006】この問題に対して、特開平2−27553号公報では、石炭測定面と水分計との距離を計測し、水分計の高さを制御することによって、測定精度を高めることが、開示されている。しかしながら、水分計の測定距離を制御することでは、測定雰囲気の影響を完全に排除するのは難しく、さらなる測定精度の向上が求められている。
【0007】そこで、本発明は、石炭の水分を調整する調湿炭設備において、乾燥後の石炭の水分調整を行う際に必要になる、石炭の水分測定を、劣悪な環境下にも正確に行うことのできる方法について、提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、調湿炭設備における石炭水分の測定精度を向上するために、該測定箇所の雰囲気について鋭意検討したところ、とりわけ石炭に付着した水分が蒸発することによって発生する水蒸気が測定の阻害になっていることを知見し、本発明を完成するに到った。
【0009】すなわち、本発明は、コークス炉に装入する石炭を、その装入前に調湿炭設備の乾燥機に導入して石炭の水分を調整する際に、乾燥機とコークス炉との間において石炭の全水分を測定するに当たり、該測定箇所の雰囲気中に発生した水蒸気を排除することを特徴とする調湿炭設備における石炭の水分測定方法である。
【0010】また、測定箇所の雰囲気から水蒸気を除外するには、該測定箇所の乾燥機側に設けた集塵機を介して水蒸気の吸引を行うか、または該測定箇所に空気を吹き込み排除する、手法がそれぞれ有利に適合する。
【0011】
【発明の実施の形態】さて、本発明にかかる水分測定方法は、乾燥機を出た石炭の全水分を測定する箇所において、その雰囲気中に主として該石炭の付着水分が蒸発することによって発生した水蒸気を、この測定雰囲気から排除することに特徴があり、具体的には、図1に示した水分計8に、図2または図3に示す構造を付帯させることによって、実現することができる。
【0012】即ち、石炭調湿設備の乾燥機から出た石炭の場合、包蔵水分と付着水分とを含むものの、そのうちの主として付着水分は蒸発 (但し、乾燥過程では、包蔵水分も順次石炭表面に移動して付着水分化する) し、この水蒸気が前記測定雰囲気中に滞留し、それが赤外線に外乱として作用する。そして、このことが水分計の数値誤差となり、正確な水分値の測定を阻害していた。そこで、本発明のように前記水蒸気を測定環境から排除すると、前記外乱要因を無くすことができ、いわゆる正確な測定を行うことができるようになるのである。
【0013】その第1の方法としては、図2に示すように、水分計8を収容したボックス80の乾燥機5側に隣接して集塵機10を設置し、その集塵配管11を分岐させると共に、その一方をボックス80に接続する。そして、水分計8の上流側において、集塵機10を作動させて集塵を行うと同時に、集塵配管11において発生する吸引力をボックス80内にも作用させ、該ボックス80からも集塵を行うことによって、水分計8下方の測定箇所における水蒸気も同時に吸引除去する。この2系統の吸引によって、集塵機10側においては、石炭6中に乾燥機5による加熱で溜まっている水蒸気が吸引除去できると共に、ボックス80内の水分計8による測定に際しても石炭6表層に上昇する水蒸気を除去しつつ測定できる。このため、測定中の雰囲気から水蒸気が完全に除去され、水分計8にて正確な水分値の測定を行うことができるようになる。また、水分計8Aを、図2中の集塵機10側のボックス80側に片寄らせて配置すれば、2系統の吸引を止めて1系統の吸引で行うことも可能である。この1系統の吸引のもとで測定を行う時は、集塵機10の水分計8Aの右方で予め石炭6中の水蒸気が除去されつつ水分計8A下に達し、水分計8Aの測定時にも集塵機10による吸引のもと測定が行われ、測定環境が確保される。このような吸引による測定方式であれば、調湿済石炭の飛散がなく好ましい。
【0014】また、図3に示すように、水分計8を収容したボックス80に開口20を介してエアホース21を接続することによって、エアホース21から開口20を介してボックス80内に高圧の空気を供給し、この高圧空気の吹き出しにて水分計8下方の水蒸気を吹き払って排除するようにしてもよい。このとき、調湿済石炭が飛散することがないように圧力調整を行うことが重要であり、この圧力調整は石炭の含水率に応じて適宜に定めることが好ましい。なお、図2および図3の構造を併設し、測定箇所の雰囲気からの水蒸気の排除をより完全に行うようにすることも可能である。
【0015】
【実施例】図1に示した調湿炭設備を用いて通常の配合炭の調湿操業を行うに当たり、水分計8による水分値の測定を、水蒸気を排除しない場合と水蒸気を排除する場合とで比較した。すなわち、同じ赤外線式水分計を用いて、一方は図2に示した水分計8およびボックス80とを組み合わせた構造(従来例)、他方は水分計8およびボックス80に、さらに図2および図3に示した集塵機10およびエアホース21を付帯した構造(発明例)として、それぞれの方法について操業約1か月間に渡って水分値の比較測定を行った。
【0016】その測定結果を、測定直後の石炭について、JIS M8811 (石炭類およびコークス類のサンプリング方法ならびに全水分・湿分測定方法) に則って測定した水分値と比較して、図4に示す。図4は、本発明にかかる水分測定装置の前後における赤外線水分計値とJIS分析値の相関をとったものである。従来は赤外線水分計値はJIS分析値より低めに出ていたが、本発明によりその誤差を極めて小さくすることが可能になった。同図に示すように、本発明に従って測定箇所の水蒸気を排除して水分値を測定した場合には、実際の水分値との誤差が極めて小さくなることがわかる。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、石炭の水分を調整する調湿炭設備において、乾燥後の石炭の水分調整を行う際に必要になる、石炭の水分測定を、劣悪な環境下にも正確に行えるため、石炭の調湿誤差を抑制することができる。従って、一定水分率の石炭がコークス炉へ供給されるから、高品質のコークスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】調湿炭設備の一般的構成を示す模式図である。
【図2】水分計の構造を示す図である。
【図3】水分計の構造を示す図である。
【図4】石炭の水分分析値と水分計測定値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 配合ベッド
2 ベルトコンベア
3 湿炭ホッパー
4 切り出し装置
5 乾燥機
6 コンベア
7 石炭
8 水分計
9 加水機
10 集塵機
11 集塵配管
20 開口
21 エアホース
80 ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コークス炉に装入する石炭を、その装入前に調湿炭設備の乾燥機に導入して石炭の水分を調整する際に、乾燥機とコークス炉との間において石炭の水分を測定するに当たり、該測定箇所の雰囲気中に発生した水蒸気を排除することを特徴とする調湿炭設備における石炭の水分測定方法。
【請求項2】 請求項1において、測定箇所の乾燥機側に設けた集塵機を介して水蒸気の吸引を行うことを特徴とする調湿炭設備における石炭の水分測定方法。
【請求項3】 請求項1において、測定箇所に空気を吹き込み水蒸気を排除することを特徴とする調湿炭設備における石炭の水分測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−165882(P2001−165882A)
【公開日】平成13年6月22日(2001.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−347331
【出願日】平成11年12月7日(1999.12.7)
【出願人】(000001258)川崎製鉄株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】