説明

調理器具の温度検出を可能にするホブ

本発明は、調理器具(100)を受け取るのに適し測定システム(203)を含むホブ(200)に関する。測定システム(203)は、器具(100)の温度を測定する手段(220)と制御手段(240)とを含む。本発明によると、測定手段(220)は、器具(100)に磁界を引き起こすように構成された少なくとも1つの誘導式部材(221)を有する電気回路(219)を含む。器具(100)は、回路(119)のインピーダンス(Z)を表す信号の値を制御手段(240)に送信する導電性感熱手段(130)を含む。インピーダンスは感熱手段(130)の抵抗率(ρ)に依存する。制御手段(240)は、この抵抗率(ρ)の熱的挙動に対応する少なくとも1つのモデルを含み、送信された信号の値を温度に変換するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホブの分野に関し、特に調理器具の温度検出を可能にするホブに関する。本発明は概して、調理器具の温度を決定することにより器具のサイズにかかわらず食材の調理を最適化すること、または調理道具を保護することに関する。
【0002】
本発明はより厳密には、調理器具を受け取るように適合されたホブであって、調理器具の温度を測定するように適合されており測定手段と制御手段とを含む測定システムを含むホブに関する。
【背景技術】
【0003】
このようなホブは、特に特許文献1に記載された例により当業者には周知である。上記文献には、調理器具とホブとを備えた調理システムが記載されている。調理器具には感熱手段と2次コイルとが設けられており、2次コイルは感熱手段と共に閉回路を形成している。ホブには1次コイルと、2次コイル内に電流を誘導する高周波を生成する手段と、1次コイル内を流れる電流のレベルに応じて調理器具の温度を決定する温度検出手段とが設けられている。
【0004】
このような構成の欠点は、一方では取り外し可能な容器にコイルを組み込む必要があること、他方では容器底部の上面中央にある保護ハウジング内に2次コイルと感熱手段とを配置する必要があることである。
【0005】
特許文献2も公知である。この文献には、調理器具とホブとを備えたクッキングシステムが開示されている。調理器具は底部にセンサを含み、センサはホブ内またはホブ上に設けられた第2のセンサと協働する。調理器具のセンサは本質的にいわゆる「バイナリ」多層セラミックセンサであり、誘電率が目標温度で突然変化することによって目標温度に達したことを検出することを可能にする。ホブは1組のセンサまたは電極を含み、これらは調理器具の底部に設けられたセンサの誘電体と容量結合している。
【0006】
このような構成の欠点は、目標値に対する制限のために容量測定専用であること、および精密な温度測定ができないことである。
【0007】
最後に特許文献3に、食材グリル用ホブが開示されている。この誘導式ホブには、グリルすべき食材を載せるトレイが設けられており、このトレイには温度測定用強磁材料が設けられている。
【0008】
このような構成の欠点は、誘導式加熱手段および測定手段を配置する特定の立体構造を必要とすることである。さらに加熱コイル1つにつき2つの測定コイルを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】JP5344926
【特許文献2】DE4413979
【特許文献3】米国特許出願2005/0258168号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、使い易く維持し易い簡易なデバイスを提案することにより、これらの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のホブは上記を目的とし、さらに上記前提部に沿っており、本質的に、測定手段が、調理器具方向に磁界を引き起こすように構成された少なくとも1つの誘導式部材を有する電気回路を含み、前記電気回路が、前記調理器具の導電性感熱手段に対して前記引き起こされた磁界が作用したことにより得られた信号を制御手段に送信し、前記制御手段が、前記感熱手段の熱的挙動に対応する少なくとも1つのモデルを含み、且つ前記モデルを用いて前記送信された信号の値を温度に変換するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
これにより、抵抗率が温度に応じて連続的に変化することを前提として、調理器具の温度を正確に測定することができる。この測定値はホブからではなく調理器具から直接得られるため、食材の温度をよりよく表している。
【0013】
温度測定は、ホブ内にあるが器具とは接していない遠隔測定手段によって調理器具の加熱中に行うことができる。ホブの電子部品によって直接処理されるため、これらの電子部品(例えば測定、伝導用)を調理器具のハンドルに組み込んだり温度プローブを調理器具およびホブの電子部品と接触させて連結する必要がない。調理器具の温度調節は、ホブと器具との間の赤外線または無線による通信手段は不要であるという意味で、信号伝達を含まない。
【0014】
さらに温度測定は離散して行われ、その周波数は規則的であることが好ましく、非強磁材料の温度またはタイプに応じて選択することができ、さらにはおそらく変調することもできる。
【0015】
さらに調理器具は従来のタイプの加熱器具(誘導式、放射式、ガスなど)のいずれにも用いることができ、感熱手段を損なう危険がない。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の記載を読むことにより、より明らかとなる。以下の記載は実施例により且つ添付の図面を参照することにより行われる。以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による調理器具とホブとを含む調理システム(動作中)の一部分を示す断面図であり、ホブの加熱手段が加熱状態にあり測定手段がオフモードにある様子を示す図である。
【図2】図2は、図1に類似しているが、加熱手段がオフ状態にあり測定手段が誘導モードにある様子を示す図である。
【図3】図3は、測定手段の電圧変化および加熱手段の電流変化の概略的原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および図2に示すように、食材を調理する調理システム1は、調理器具100とホブ200とを含む。調理器具100は食材または調理用流体(水、油など)を受け取るように適合されており、例えばフライパンまたはソースパンなどである。ホブ200は、調理器具100を支持し、調理器具100内の食材を調理するために必要なエネルギーを調理器具100に伝導するように設計されている。
【0019】
図1および図2に示すように、調理器具100はベース本体150を含む。ベース本体150は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性ベース材料により形成されている。このベース本体は、調理器具の大まかな形状的構造を規定し、使用可能な内部および/または外部コーティング(エナメル、塗料、テフロン(登録商標)コーティングなど)の支持体として作用し得る。
【0020】
調理器具100は、調理用食材を受け取るだけの容積を規定する。調理器具100は底部101と側壁102とによって規定されている。調理器具100の底部101はここでは円形状であり、食材と接することになる内面(または上面)110とホブ200と接することになる外面(または下面)120とを有する。
【0021】
底部101の面110、120の少なくとも一方の少なくとも一部分は実質的に平坦な外観を有し、調理器具100を水平面(ホブ200、テーブルなど)上に置いた場合に調理器具100を安定させるようになっている。ここでは底部101の面110、120は完全に平坦であり、底101の厚みは一定である。
【0022】
ここでは、底部101は主にベース本体150の材料で形成されている。
【0023】
調理器具100は導電性の感熱手段130を含む。感熱手段は調理器具100の温度を決定するために設けられている。感熱手段130用として選ばれる材料としては、所与の温度範囲(好ましくは20℃〜300℃)に亘って抵抗率ρの可変性が高く、正確な温度測定を可能にするものが好ましい。さらに温度の決定を可能にする計算を容易にするために、温度(所与の温度範囲内)に対する抵抗率ρの変化が線形であることが好ましく、温度測定を非常に精密に行うために、温度係数CTが高いことが好ましい。さらに後述する理由のために、感熱手段130は非強磁性であることが好ましい。これらすべての理由のために、本実施形態では感熱手段はチタンにより形成されている。
【0024】
感熱手段130は調理器具100の底部101に組み込まれている。本実施形態では、感熱手段130の厚みは一定である。ここでは感熱手段130は感熱部材130(ベース本体150に組み込まれたインサート)により形成されている。後述する理由のために図1および図2に示すように、感熱手段130(ここではインサート130の一方の面)は調理器具100の底部101の外壁102の一部分(ここでは中央部分)を構成していることが好ましい。
【0025】
本実施形態において、感熱手段130は回転対称形状を有し、その軸Sは底部101の面に対して直交する。この場合、インサート130は、調理器具100の底部101に対して同心円状のディスクという外観を有する。
【0026】
さらに本実施形態では図1および図2に示すように、調理器具100は強磁手段140をさらに含む。強磁手段140は調理器具100を載せたホブ200が磁気誘導式ホブである場合に食材を加熱するために設けられており、ホブ200からの磁界(図1において磁界線211で示す)をジュール効果(フーコー電流により起こる)により熱に変換するように構成されている。
【0027】
本実施形態では、強磁手段140は調理器具100の底部101に組み込まれており、より厳密にはベース本体150に組み込まれている。本実施形態では、強磁手段140はリング140の形状で延びているが、グリッドまたは熱接着カプセルの形状をとることもできる。
【0028】
本発明によると、感熱手段130と強磁手段140との相対的配置が、強磁手段140によって発生した熱が熱伝導によって感熱手段130に伝導されるようになっている。ここでは強磁材料で形成されたリング140が、それを取り囲む感熱材料により形成された円形インサート130と接している。
【0029】
図1および図2に示すようにホブ200は、調理器具100(より厳密には、底部101の下面120を受け取るように適合された受取面201を含む。ホブ200は少なくとも1つの調理領域(この場合は1つのみ)を含む。
【0030】
ホブ200は、加熱システム202と温度測定システム203とを含む。
【0031】
加熱システム202は加熱手段210と調節手段230とを含む。各調理領域は専用の加熱手段210を有する。
【0032】
調節手段230、例えばマイクロコントローラおよびその適合プログラムは、例えば加熱手段210をセットポイント近傍に調節すること、タイマーを作動させることなどを可能とする。
【0033】
本実施形態では図1および図2に示すように、加熱手段210は誘導式である。これを達成するために、加熱手段210はインダクタを含み、インダクタはこの場合、誘導式加熱コイル210である。各調理領域は少なくとも1つの(この場合は1つのみ)誘導式加熱コイル210を含む。さらにホブ200は第1の熱的保護手段を含み、第1の熱的保護手段は加熱手段210が誘導式である場合に加熱手段210を熱的に保護することを可能にする。
【0034】
本実施形態において加熱システム202は、加熱手段210が時間的に継続して加熱を行い、調理用エネルギーを生成し伝導する加熱状態と、このエネルギーを生成しないオフ状態とに連続的かつ交互に切り替わるように構成されている。この場合、加熱手段210は誘導式であるため、周波数f3で振幅変調した周波数f1の交流電流がこれに供給される。変調ゼロ(および後述するように隣接する領域)がオフ状態に対応し、その他が加熱状態に対応する。周波数f1は典型的には例えば18〜25kHzである。典型的な変調は50〜60Hzに等しい周波数f3で行われる(整流後は100Hzまたは120Hzで行われる)。
【0035】
温度測定システム203は測定手段220と制御手段240とを含む。
【0036】
測定手段220は電気回路219を含み、電気回路219は加熱手段210のタイプ(誘導式か否か)とは無関係に、少なくとも1つの誘導式部材221を含む。本実施形態では、誘導式部材はインダクタ221であり、この場合インダクタ221は誘導式測定コイル221である。図1および図2に示すように、誘導式測定コイル221は誘導式加熱コイル210の中央に設けられている。
【0037】
誘導式測定コイル221によって発生する磁界(図2において磁界線222で示す)は、誘導式測定コイル210によって発生するものよりもはるかに小さい振幅を有し、誘導によって強磁材料を加熱するわけではない。
【0038】
誘導式測定コイル221は、調理器具100が受取面201上にあるときに、調理器具100の感熱部材130内を流れる電流の大きさを誘導によって測定することを可能にする。理由は、誘導式測定コイル221は変圧器の1次回路であると考えることができ、調理器具100の感熱手段130は変圧器の2次回路だからである。
【0039】
測定原理は、感熱部材130の温度変化に対する、電気回路219(この場合、誘導式測定コイル221とキャパシタとを含むRLC回路であり、容量値Cが誘導式測定コイル221と直列に取り付けられている)のインピーダンスZ変化に基づく。測定コイル221は、インダクタンスLB(温度によるインダクタンスの変化は無視できるほど小さい)と抵抗RBとによって特徴づけられる。電気回路119(1次回路)のインピーダンスZ値は、誘導式測定コイル221の抵抗RB(値が公知である)と感熱材料130によって形成された2次回路の抵抗RS(値が温度に依存する)とに応じて変化する。誘導式測定コイル221内を流れる電流の大きさIは、電気回路119に付与された電圧U値およびインピーダンスZ値に対しU=Z*Iの関係を有する。
【0040】
誘導式測定コイル221内を流れる電流Iの大きさの測定は電気回路119のインピーダンスZを決定することを可能にし、従って、この回路119の抵抗Rを決定することを可能にし、さらにこれから感熱手段130の抵抗RSを導くことを可能にし、従ってその抵抗率ρ(感熱手段130の形状・寸法は公知である)および温度を導くことを可能にする。
【0041】
制御手段240は、誘導式測定コイル221内を流れる電流の大きさIの測定値から調理器具100の温度を決定することを可能にする。測定手段220が制御手段240に対して、回路119のインピーダンスZ値を表す信号を送信する。(この場合、この信号は誘導式測定コイル221内を流れる電流の大きさIを表す。)
【0042】
制御手段240は、調理器具100の底部に挿入された感熱材料130の抵抗率ρの熱的挙動の少なくとも1つのモデルを含む。感熱手段130を調理器具100の動作温度範囲内において一定の温度係数CT(実際に一定、または受容可能な近似範囲による)で用いると、抵抗率ρの値から温度を決定することが非常に容易になることが簡単に理解できる。このモデルは、この場合線形である。この決定を行うために、制御手段240はマイクロプロセッサを含むことが有利である。
【0043】
温度の決定を容易にするためには(より厳密には、抵抗Rの変化と電流Iの変化との相関づけを容易にするためには)、1/(2π√LB・C)に等しい電気回路119の共振周波数frに対応する周波数f2を有する電圧U(この場合、方形パルス電圧)を誘導式測定コイル221に供給することが有利である。この周波数において、電気回路119のインピーダンスZはその抵抗Rに等しく、この回路119の印加電圧Uおよび電流Iは比例関係を有する(U=R*I)。実際、キャパシタCは使用可能な電源供給周波数f2と誘導式測定コイル221のインダクタンスLBとに従って選択される。そのため、誘導式測定コイル221は、調理器具100の温度変化に相関し得る抵抗Rの変化を測定することを可能にする。
【0044】
さらに、感熱手段130の抵抗RSは、誘導式測定コイル221により発生する磁界の透過δの深さに特に依存する。この透過δの深さは、式δ=√(ρ/π.μor.f)で表されるように、感熱手段130の抵抗率ρおよび導磁性μrの両方に依存する。式中、μoは真空の導磁性であり、fは誘導式測定コイル221の周波数(ここではf2)である。これら2つの特性δおよびμrが同時に変化するならば、誘導式測定コイル221によって測定された抵抗率Rの変化(実際は電流I)と調理器具100の温度とを関連づけることは非常に困難である。このため感熱手段130が非強磁性であることが非常に有利であることが容易にわかる。強磁性材料の場合とは異なり、導磁性μrは1であると考えることができ、温度に依存しないからである。
【0045】
実際、感熱手段130の非強磁性材料の性質が一旦決定されると、その厚みEは、誘導式測定コイル221の電源電圧Uの周波数f2に応じて、この周波数f2に関連する透過δの深さよりも大きくなるように選択される。逆もまたしかりであり、誘導式測定コイル221の電源電圧Uの周波数f2は、感熱手段130の厚みEと透過δの所望の深さとに応じて決定することができる。本実施形態では、チタン製の非強磁性感熱手段130は周波数f2が50kHzの場合に1.2mmの厚みを有する。
【0046】
感熱手段130として非強磁性材料を用いる別の利点は、この場合、誘導式測定コイル221のインダクタンスLS(公知である)が非強磁性材料の存在下においてほとんど変化しないことである。
【0047】
従ってこの特定の場合、回路119のインピーダンスZの中で温度に応じて変化する唯一の要素は感熱手段130の抵抗率ρである。(従って、感熱手段130が非強磁性材料で形成されている場合、感熱手段130の特性のうち温度測定に役割を果たす唯一の特性は抵抗率ρの変化である。)これにより容易に正確な測定をすることができる。測定を向上させるために、感熱手段130は誘導式測定コイル221に対向して配置されることが有利である。さらに感熱手段130の表面積は誘導式測定コイル221のそれよりも大きいことが好ましく、これにより測定の信頼性が向上する。
【0048】
このように調理器具100の温度測定が該器具の加熱とは無関係になされ、調理器具100がホブ200上に載置されるとすぐに、加熱手段210の作動および調理器具100のサイズとは無関係に行うことができる。
【0049】
さらに本実施形態では、ホブ200は第2の熱的保護手段を含み、第2の熱的保護手段は測定手段220を熱的に保護することを可能にする。第2の熱的保護手段は別に設けられてもよいし、第1の熱的保護手段によって構成されてもよい。
【0050】
本実施形態において、加熱手段210は誘導式である。従って調理器具の温度測定に干渉しないように、加熱手段210の電源電流変調のゼロクロス近傍で調理器具の温度測定を行うことにより誘導式加熱手段210と誘導式測定手段220との間の誘導の影響を回避することが好ましい。このことは、それぞれの周波数f1、f2が実質的に異なることが好ましい場合であっても適用される。(周波数は異なっても異ならなくてもよい)。
【0051】
上記を達成するため、およびダメージを与えないために、誘導式測定コイル221は動作中、ゼロ電圧が供給されるオフモード(開回路)と、周波数f2の方形波電圧Uが供給される誘導モードとに連続的かつ交互に切り替わる。図3は、ある任意の時間単位における、周波数f2での誘導式測定コイル221端部の電圧の変化と、周波数f3により変調された周波数f1での誘導式加熱コイル210内の変調電流の変化とを示す。
【0052】
この模式的且つシミュレーションによる図は、主に、誘導式加熱コイル210の周波数f1と誘導式測定コイル221の周波数f2との差を示し、さらに誘導式測定コイル221には、ほぼ誘導式加熱コイル210の電流変調のゼロクロス近傍のみで電力が供給されるという事実を示している。
【0053】
図3は変調のゼロクロス近傍の動作原理を示しているが、本実施形態では図3とは対照的に、変調周波数f3を発生させるインバータの電圧がある限界値(例えば30〜40V)未満である場合、インバータは(構成によって)停止する(変調波の円弧は図3に示すほど規則的ではない)。そのため、変調の理論的ゼロクロス近傍で、誘導式加熱コイル210の磁界がゼロであり従って加熱手段210がオフ状態である期間(50Hzでの変調の場合、1〜2ミリ秒)が存在する。この期間は測定を行うに十分である。
【0054】
好ましい実施形態では、ホブ200は追加の測定手段(図示せず)を含む。追加の測定手段は受取面201の温度を測定するように適合されており、例えばNTCタイプの手段(電気抵抗率が負の電気係数に応じて変化する手段)である。追加の測定手段(従来はホブ200内で用いられていた)は温度測定システム203(より特定すると制御手段240)に接続されており、誘導式測定コイル221によって行われる測定とそれ自体が行う測定とを相関づけることを可能にし、さらに温度測定システム203を較正することを可能にする。上記の温度比較は、調理器具100の加熱開始時にのみ行ってもよいし、加熱中の任意の時点で行ってもよい。
【0055】
誘導式測定コイル220および/または追加の測定手段による温度検出はさらに、目標最高温度が達成されたことを決定することができ、それにより加熱を停止し、調理器具100を保護する。
【0056】
本実施形態では、調理器具100は使用中、誘導式ホブ200上に配置される。例えば機能またはプログラム(煮る、湯を沸かす、油で調理する、脂肪抜きで調理する、など)の選択により加熱手段210が作動すると、誘導式加熱コイル210が、調理器具100底部101内の強磁手段140内に電流を誘導する磁界を発生させる。その結果、ジュール効果により強磁手段140が加熱され、その後熱伝導により調理器具100の他の部分が感熱インサート130も含めて加熱される。
【0057】
温度変化に応じて、感熱手段130の抵抗率ρおよびRSならびに電気回路119の抵抗RおよびインピーダンスZが変化する。感熱手段130に非強磁材料を用いているため、および電気回路119の共振周波数frに対応する周波数f2を有する電圧Uを誘導式測定コイル221に供給しているため、測定手段220によって制御手段240に送られる大きさIは、制御手段240が大きさIから調理器具100の温度を容易に決定することを可能にする。
【0058】
さらに、温度測定システム203は他の機能にも用いることができる。他の機能とは、ホブ200上に調理器具10があることを検出する、さらにはその中央に調理器具100があることを検出する、調理器具100のタイプを認識する、または調理器具100とホブ200との適合性を認識するなどであり、これらの機能は、例えばエラー信号の発生または加熱を禁止する信号の発生と組み合わせて提供される。理由は、測定手段220近傍に金属材料があると、回路119のインピーダンスが変化し、この変化は制御手段240によって転換されるが、必ずしもこのインピーダンス変化が温度に変換されるわけではない。
【0059】
本発明はこの実施形態に限られない。
【0060】
調理器具の底部に関して、その面が僅かに凹形状であってもよいし、その厚みが一定でなくてもよい。あるいは、その形状が円形以外の外観、例えば卵形または矩形(正方形)の外観を有していてもよい。
【0061】
感熱手段を形成するために用いられる材料に関して、チタン、ビスマス、モリブデン(特に二珪酸モリブデン(MoSi2))、白金、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛またはニッケルなどの金属、またはこれら金属の合金を用いることができ、その他金属セラミック、オーステナイト鋼または非鉄エナメルを用いることができる。
【0062】
感熱手段に関して、該手段がディスク形状以外の形状を有していてもよく、例えば調理器具底部の中央に対して同心円状で好ましくは熱的に相互連結された少なくとも1つのリングまたは複数のリングを含むアセンブリが形成されていてもよい。該手段が突起または切欠部(切欠部は好ましくは調理器具底部の平面内にある)を有していてもよい。該手段はさらに少なくとも部分的に、磁界を有する透過性材料、例えばエナメルまたは塗料などで覆われていてもよい。これらは調理器具底部の下面の少なくとも一部を形成し、これにより調理器具は感熱手段を損なう危険なく容易にクリーニング可能となる。
【0063】
感熱手段はインサートの形態とを取らなくてもよく、例えばセリグラフィーまたは熱スプレーなどにより1以上の層として堆積されてもよい。数層に重ねられた非強磁材料であってもよく、例えば共積層されてもよいし、層として堆積されてもよい。
【0064】
強磁手段は、感熱手段が断熱されない限り感熱手段からある程度の距離をおいて配置されてもよい。
【0065】
ホブは、各々に測定コイルが設けられた調理領域をいくつか含んでいてもよい。この場合ホブは、全調理領域に対し、多重化により調理領域の様々な測定コイルに接続された僅か一つの測定システムを含んでいてもよい。
【0066】
制御手段は、各々が1つの所与の感熱材料に対応した熱的挙動モデルをいくつか含んでいてもよく、これによりホブの使い方の柔軟性が増す。さらに1つの熱的挙動モデルが、複数の測定周波数に対していくつかの熱的挙動スキームを含んでもよい。これにより調理器具の感熱材料の認識が可能となる。さらに制御手段は調節手段と連結されていてもよく、例えば電気回路という形態であってもよいし、共にマイクロプロセッサに組み込まれていてもよい。
【0067】
測定システムに関して、測定手段の電源電圧は多周波数励起という形態を取ってもよいし、ディラックパルスという形態であってもよい。
【0068】
電流変調の少なくとも1回のゼロクロス近傍で温度測定値を得るために、特に温度決定用の時間が比較的長い場合、変調がN回ゼロクロスする毎に測定を行い、1円弧期間(1/2期間)インバータを停止して器具の加熱を妨げることなく誘導式加熱コイル内でゼロ電流を達成することが可能である。ここでNは自然数(例えば50Hzでの変調において5〜10秒毎)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具(100)を受け取るように適合され、加熱手段(210)を含む加熱システム(202)と、前記調理器具(100)の温度を測定するように適合された測定システム(203)とを含むホブ(200)であって、
前記測定システム(203)が、測定手段(220)と制御手段(240)とを含み、
前記測定手段(220)が、前記加熱手段(210)とは異なり且つ前記調理器具(100)方向に磁界を引き起こすように構成された少なくとも1つの誘導式部材(221)を有する電気回路(219)を含み、
前記調理器具(100)が温度に応じて変化する抵抗率(ρ)を有する導電性感熱手段(130)を含み、
前記電気回路(219)が、前記感熱手段(130)の前記抵抗率(ρ)に依存する回路(119)のインピーダンス(Z)値を表す信号を前記制御手段(240)に送信し、
前記信号が、前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)により引き起こされた磁界が前記感熱手段(130)に対して行った作用の結果得られ、
前記制御手段(240)が、前記感熱手段(130)の前記抵抗率(ρ)の熱的挙動に対応する少なくとも1つのモデルを含み、且つ前記モデルを用いて前記送信された信号の値を温度に変換するように構成されている、ホブ(200)。
【請求項2】
前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)によって発生した磁界が、誘導によって強磁材料を加熱しない、請求項1に記載のホブ(200)。
【請求項3】
前記制御手段(240)に送信された前記信号が、前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)内を流れる電流の大きさ(I)であることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項に記載のホブ(200)。
【請求項4】
前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)が誘導モードにおいて、前記電気回路(119)の共振周波数(fr)に対応する周波数(f2)を有する電圧(U)を供給され、前記電気回路(119)がキャパシタを備えることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項に記載のホブ(200)。
【請求項5】
前記電気回路(119)の前記キャパシタが、前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)と直列に取り付けられていることを特徴とする、請求項4に記載のホブ(200)。
【請求項6】
前記電気回路(119)が、前記感熱手段(130)が非強磁性であるときに前記制御手段(240)に送信された前記信号が前記感熱手段(130)の前記抵抗率(ρ)のみに依存するように構成されていることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項に記載のホブ(200)。
【請求項7】
前記電気回路(219)が、前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)によって引き起こされた磁界の透過(δ)の深さが、ホブ(200)に適合する前記調理器具(100)の前記感熱手段(130)の厚み(E)よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項に記載のホブ(200)。
【請求項8】
動作中、前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)が電圧(U)を供給される誘導モードと電圧(U)を供給されないオフモードとに連続的に交互に切り替わることを特徴とする、上記請求項のいずれか一項に記載のホブ(200)。
【請求項9】
前記加熱システム(202)が、前記加熱手段(210)が時間的に連続して前記調理器具(100)にエネルギーを生成し前記測定システム(203)と協働することにより、前記加熱手段(210)がオフ状態のときに前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)が誘導モードとなり前記加熱手段(210)が加熱状態のときに前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)がオフ状態となるように構成されていることを特徴とする、請求項8に記載のホブ(200)。
【請求項10】
前記加熱手段(210)が誘導式であり、振幅変調された交流電流を供給され、変調ゼロが前記加熱手段(210)の前記オフ状態に対応し、その他が前記加熱状態に対応することを特徴とする、請求項9に記載のホブ(200)。
【請求項11】
前記変調を生成するインバータが、その電圧が最小値未満になるとオフになることを特徴とする、請求項10に記載のホブ(200)。
【請求項12】
前記変調を生成するインバータが、変調の1/2期間に亘って変調のN回のゼロクロス毎に規則的にオフになることを特徴とする、請求項10または11に記載のホブ(200)。
【請求項13】
前記調理器具(100)が載置されるホブ(200)の前記受取面(201)の温度を測定するように適合された追加の測定手段であって、前記測定システム(203)に接続されることにより前記測定システム(203)を較正するようになっている追加の測定手段を含むことを特徴とする、上記請求項のいずれか一項に記載のホブ(200)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のホブ(200)と、調理器具(100)とを含む、食材を調理するように適合された調理システム(1)であて、前記調理器具(100)の底部(101)が、温度に応じて変化する抵抗率(ρ)を有する導電性材料により形成された感熱手段(130)を含むことを特徴とする、調理システム(1)。
【請求項15】
前記ホブ(200)が請求項6または請求項6に従属する請求項のいずれか一項に記載のものであり、前記調理器具(100)の前記感熱手段(130)が非強磁性材料により形成されていることを特徴とする、請求項14に記載の調理システム(1)。
【請求項16】
前記ホブ(200)が請求項7または請求項7に従属する請求項のいずれか一項に記載のものであり、前記調理器具(100)の前記感熱手段(130)の厚み(E)が、前記ホブ(200)の測定手段(220)の誘導式部材(221)により引き起こされた磁界の透過(δ)の深さよりも大きいことを特徴とする、請求項14または15に記載の調理システム(1)。
【請求項17】
前記ホブ(200)が請求項10または請求項10に従属する請求項のいずれか一項に記載のものであり、前記調理器具(100)が、前記感熱手段(130)に対して配置された強磁手段(140)を含み、それにより前記ホブ(200)の加熱手段(210)により引き起こされた磁界の影響下において、前記強磁手段(140)が前記強磁手段(140)自体が発生させた熱を前記感熱手段(130)に伝達させることを特徴とする、請求項14から16のいずれか一つに記載の調理システム(1)。
【請求項18】
前記ホブ(200)が、前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)に関連する少なくとも1つの調理領域を含み、前記感熱手段(130)が前記調理器具(100)の前記底部(101)に設けられることにより、前記調理器具(100)が前記調理領域上に配置されたときに前記感熱手段(130)が前記誘導式部材(221)に対向するようになっていることを特徴とする、請求項14から17のいずれか一項に記載の調理システム(1)。
【請求項19】
前記強磁手段(140)が前記調理器具(100)の前記底部(101)に設けられることにより、前記調理器具(100)が前記調理領域上に配置されたときに前記強磁手段(140)が前記誘導式部材(221)に対向するようになっていることを特徴とする、請求項17または18に記載の調理システム(1)。
【請求項20】
前記調理領域の各々において、前記測定手段(220)の前記誘導式部材(221)が前記誘導式加熱手段(210)によって取り囲まれていることを特徴とする、請求項19に記載の調理システム(1)。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−543274(P2009−543274A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517339(P2009−517339)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001158
【国際公開番号】WO2008/003872
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(508101362)エスイービー エスエー (5)
【Fターム(参考)】