説明

警備システム

【課題】建物の周囲に設定された人物を検出可能な監視エリアに建物入口前の領域が含まれない場合でも、建物から退館する利用者と区別して建物への侵入を的確に検出可能な警備システムを提供する。
【解決手段】警備システム1は、進入規制区域の入口前の非監視エリアに外接して当該侵入規制区域の外周に設定された監視エリアを有し、監視エリアに存在する人物の位置を検知する検知手段21と、人物毎に位置を追跡し、監視エリアと非監視エリアの境界位置にて新たに出現した人物を非監視エリアからの退出人物として検出する追跡手段451と、人物毎に許可者か非許可者かを判定する権限識別手段273と、進入規制区域の入口の通過行動を検知する通過検知手段3と、通過行動が検知されてから所定の遅延時間内に許可者である退出人物を検出しない場合に進入規制区域に対する侵入異常と判定する判定手段453と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視エリア内へ進入した人物を監視する警備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、予め設定された監視エリアに侵入した侵入者などの侵入物体を、様々なセンサの何れかを用いて検知し、侵入物体を検知した場合に警報を発したり、侵入異常の発生を監視センタなどへ通報する警備システムが利用されている。このような警備システムでは、監視エリアに入る正当な権限を有するユーザが監視エリアに進入したときもセンサが異常検知してしまうため、ユーザは、監視エリアに進入する度に警備システムを操作して侵入監視を解除させる必要がある。このような操作は、ユーザにとって煩雑である。
そこで、ユーザの利便性を高めるために、ユーザに無線タグを持たせ、センサが監視エリア内への侵入者を検知した場合であっても、無線タグを検知していればその侵入者はユーザであると認識して、侵入異常と判定しないようにする警備システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−182340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、警備システムは、家屋などの建物内部の空間、または境界を監視エリアとして監視するが、建物の周囲、例えば、戸建家屋の庭を監視エリアとすることで、不審者が建物へ侵入する前に、迅速に不審者を検出して通報可能となる。
家屋の庭を監視エリアとする場合、家屋の庭を可能な限り広範囲に監視できるように、一般に、センサは家屋の壁に設置される。一方、戸建家屋は入口付近が壁に対してくぼんだ形状をしている場合がある。しかし、センサの監視範囲は建物の壁で遮られるため、その場合、家屋の入口付近がセンサの死角となって監視エリアに含まれなくなる。このような家屋の庭を監視エリアとして、上記の警備システムを運用した場合、建物に入退館する人物は建物入口前にあるセンサの死角となるエリアを通過するため、建物に入退館する人物が不審者か否かを的確に判断することは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、建物の周囲に設定された人物を検出可能な監視エリアに建物入口前の領域が含まれない場合でも、建物から退館する利用者と区別して建物への侵入を的確に検出可能な警備システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの形態として、進入規制区域の入口前の非監視エリアに外接して当該侵入規制区域の外周に設定された監視エリアを有し、監視エリア内の人物を追跡して進入規制区域への侵入を検出する警備システムが提供される。この警備システムは、監視エリアと非監視エリアの境界位置を記憶する記憶手段と、監視エリアに存在する人物の位置を検知する検知手段と、人物毎に位置を追跡し、境界位置にて新たに出現した人物を非監視エリアからの退出人物として検出する追跡手段と、人物の識別情報を取得する識別情報取得手段と、検知手段により検知された人物毎に、予め登録された許可者であるか許可者でない非許可者であるかを識別情報に基づいて判定する権限識別手段と、人物が進入規制区域の入口を通過する、又は通過しようとする通過行動を検知する通過検知手段と、通過行動が検知されてから所定の遅延時間内に許可者である退出人物を検出しない場合に進入規制区域に対する侵入異常と判定する判定手段と、を有する。
【0007】
また、追跡手段は、境界位置にて消失した人物を非監視エリアへの進入人物として検出し、判定手段は、通過行動を検知する前の所定の通過期間内に、進入人物が検出され、かつ当該進入人物が許可者であるときは、当該通過行動を侵入異常と判定せず許容することが好ましい。
【0008】
さらに、通過行動の許可操作を行う操作手段をさらに有し、判定手段は、通過行動が検知されてから遅延時間内に許可操作が行われたときは、当該通過行動を侵入異常と判定せず許容することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る警備システムは、建物の周囲に設定された人物を検出可能な監視エリアに建物入口前の領域が含まれない場合でも、建物から退館する利用者と区別して建物への侵入を的確に検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る警備システムが設置された建物の外周に設定された監視エリアの一例を示す図である。
【図2】本発明の一つの実施形態に係る警備システムの全体システム構成図である。
【図3】本発明の一つの実施形態に係る警備システムにおいて利用可能なセンサ端末の一例の概略構成図である。
【図4】センサ端末のセンサ処理部により実行される、人物検出処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一つの実施形態に係る警備システムにおいて利用可能な監視端末の一例の概略構成図である。
【図6】追跡データの例を示す概略図である。
【図7】監視端末の監視処理部により実行される、人物追跡処理の動作を示すフローチャートである。
【図8】判定手段により実行される、入場イベント発生時の処理の動作を示すフローチャートである。
【図9】判定手段により実行される、入館判定イベント発生時の処理の動作を示すフローチャートである。
【図10】判定手段により実行される、入口通過イベント発生時の処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一つの実施形態である、監視する領域に侵入した不審者を検知して警報を発する警備システムを、図を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、一つの実施形態に係る警備システム1が設置された建物の外周に設定された監視エリアの一例を示す図である。警備システム1は、監視する領域を、建物110のように不特定人物の進入を許容しない進入規制区域と、家屋の庭のように建物よりセキュリティ性が低く、不特定人物の進入を一定の制限の下で許容する監視エリア100とに分けて不審者の進入を監視する。建物110の壁には、監視エリア100内に存在する人物を検知するセンサ端末2がそれぞれ設置される。この例では、建物110への入口111の前方には、建物110の壁に対してくぼんだ形状をしたくぼみ領域112が存在し、センサ端末2の監視範囲は建物110の壁に遮られるため、くぼみ領域112はセンサ端末2の死角となる。すなわち、監視エリア100と入口111との間に挟まれて形成されたくぼみ領域112は、センサ端末2によって監視されない非監視エリアとなる。
この警備システム1は、監視エリア100内に存在する人物が許可者か非許可者かを判別するとともに、人物の位置を人物毎に追跡する。そして、建物110の入口111の通過が検知されてから所定の期間内に、非監視エリア112から監視エリア100へ移動する許可者を検出した場合は、建物110の入口111を通過した人物は不審者でなく、許可者による退館行為と判定する。一方、その期間内に監視エリアに移動する許可者を検出しなかった場合は、その人物を不審者と判定する。これにより、警備システムは、建物の周囲に設定された監視エリアに建物入口が含まれない場合でも、建物から退館する利用者と区別して建物への侵入を的確に検出できる。
【0013】
図2は、本発明の一つの実施形態に係る警備システム1の全体システム構成を示す図である。図2に示すように、警備システム1は、家屋の周囲に設置され、監視エリアである敷地内の少なくとも一部分を監視対象とする少なくとも1台のセンサ端末2と、家屋の入口に設置される少なくとも1台の入口センサ3と、各センサ端末2と通信回線を通じて接続されるとともに、各入口センサ3と接続され、屋外に設置される監視端末4と、監視端末4と接続され、家屋内に設置される操作表示器5とを有する。
また警備システム1には、ユーザなど、特定の人物が所持する無線タグ6が含まれる。無線タグ6は、センサ端末2と無線通信可能となっている。そして無線タグ6は、センサ端末2から質問信号を受信すると、内蔵するメモリに記憶された識別コード(以下、タグ識別コードと称する)を返信する。
【0014】
センサ端末2は、監視エリア内に侵入した人物を検知するとともに、無線タグ6を検知し、その検知結果を監視端末4へ通知する。
【0015】
入口センサ3は、人物による家屋の入口を通過、又は入口を通過しようとする人物の行為を通過行動として検知する通過検知手段である。そして、入口センサ3は、通過行動を検知すると、検知信号を発生し、監視端末4へ送信する。なお、家屋の入口の窓またはドアの開閉により人物の通過を間接的に監視できるため、例えば、家屋の入口のドアに取り付けられ、その開閉に応じてリードスイッチをON/OFFさせることによりドアの開閉を検知するマグネットセンサを入口センサ3として使用することができる。または、入口の脇に設置され、受光した赤外線の光量変化に基づいて入口を通過する人物の有無を検知する赤外線センサを使用してもよい。あるいは、入口の一端に設置され、他端側に向けて光を放射するLEDなどの光源と、その光源に対向して入口の他端側に設置された受光素子からなり、受光した光量の変化に基づいて入口を通過する人物の有無を検知するレーザセンサを使用してもよい。
【0016】
監視端末4は、センサ端末2または入口センサ3からの検知結果に基づいて、監視エリア内に進入した人物が不審者か否かを判定する。そして監視端末4は、監視エリア内に進入した人物が不審者であると判定すると、公衆通信回線を介して接続された監視センタ装置7へ、不審者が検知されたことを示す異常通報を行う。
【0017】
操作表示器5は、タッチパネルディスプレイを有し、利用者が操作コマンドを入力するための操作ボタンを表示する。そしてその操作ボタンの何れかをユーザが押下することにより、その操作ボタンに割り当てられた所定の操作信号を監視端末4へ出力する。例えば、操作表示器5は、訪問者による入退館を一時的に許可するための、通過行動の許可操作を受け付け、その許可操作に割り当てられた許可操作信号を監視端末4へ出力する。また、操作表示器5は、操作ボタンによる操作に従って、何れかのセンサ端末2のカメラにより撮像された画像を選択的に監視端末4から受け取って表示してもよい。
なお、操作表示器5とは別に、通過行動の許可操作のみを行うための許可操作ボタンを設置し、その許可操作ボタンから通過行動の許可操作を行ってもよい。
【0018】
無線タグ6は、警備システム1が設置された建物の住人などのユーザ毎に割り当てられたタグ識別コードを記憶し、各ユーザに所持される。なお、タグ識別コードは、全てのユーザで共通のコードとしてもよい。無線タグ6は、バッテリを内蔵し、センサ端末2から質問信号を受信すると、タグ識別コードを含む応答信号を送出する。センサ端末2はタグ識別コードにより建物の住人などのユーザとそれ以外の人物とを識別する。本実施形態では、無線タグ6を所持する人物を許可者と呼ぶ。一方、無線タグ6を所持しない人物は非許可者と呼ぶ。なお、無線タグ6は、周期的あるいは所定のタイミングで能動的にセンサ端末2へタグ識別コードを含む信号を送出するいわゆるアクティブ型タグで構成してもよい。
【0019】
図1に示すように、この警備システム1では、建物110の入口111と接する位置にセンサ端末2の死角となる非監視エリア112が存在する。そして監視エリア100は、入口111とは直接に接さず、非監視エリア112の一部と接するように設定される。以下、監視エリア100と非監視エリア112の境界を予報ライン113と称する。監視エリア100は、複数の部分エリアに区分され、例えば、建物敷地にあたる監視エリア100への入口(敷地入口120)と予報ライン113とをつなぐ領域である入場エリア101と、入場エリア101以外の領域である常監視エリア102の2種類に区分される。そして監視エリア100全体を監視できるように、建物110の外周には、センサ端末2がそれぞれ設置される。また、入口センサ3は建物110の入口111に設置され、監視端末4は建物110の外周に設置され、操作表示器5は建物110の内部に設置される。なお、敷地入口120は、監視エリア100への入場口となる門や門扉に相当するが、敷地境界に塀など物理的な入場規制がない場合には、通常ユーザや訪問者が敷地内に入る際に通る通用口となる。また、建物110への入口130は、例えば建物の玄関扉に相当する。
【0020】
入場エリア101は、敷地入口120から予報ライン113までの通路を含む領域に設定される。入場エリア101には、許可者だけでなく、非許可者も立ち入ることができる。すなわち、入場エリア101において非許可者が検知されても、それだけでは不審者と判断されない。
【0021】
常監視エリア102は、許可者以外の人物の立ち入りを禁止する領域である。そのため、常監視エリア102に非許可者が立ち入ると、警備システム1は、原則としてその非許可者を不審者と判定する。
【0022】
また、監視エリア100の外周の監視外のエリアは、敷地外エリアとされ、監視エリア100と区別される。さらに、建物110に相当するエリアは屋内エリアとされ、監視エリア100及び敷地外エリアと区別される。この屋内エリアは、原則として許可者のみが進入できるエリアであり、非許可者が進入すると不審者と判定される。ただし、操作表示器5により、入場を許可する操作、例えば、通過行動の許可操作、監視解除操作が行われた場合は、非許可者が進入しても不審者と判定されない。
なお、図1に示した例では、監視エリアは、敷地内のうちの建物の外周の一部領域のみに設定されているが、監視エリアは建物の外周全域に設定されていてもよい。
【0023】
図3は、センサ端末2の概略構成図である。センサ端末2は、センサ21、タグリーダ22、カメラ23、宅内通信部24、スピーカ25、記憶部26及びセンサ処理部27を有する。
【0024】
センサ21は、周期的に監視エリア内に存在する人物を検知し、検知した人物の位置を求める人体検知センサである。センサ21として、例えば、レーザ測距センサを利用できる。レーザ測距センサは、予め設定された走査範囲(例えば、180°)にわたって水平方向に所定の角度ステップ(例えば、0.25°単位)で、例えば約870nmの波長を持つ近赤外線のパルスレーザを投光し、そのレーザの反射光を検出する。そして、レーザ測距センサは、例えばTime-of-Flight法により、レーザを反射した物体までの距離を測定する。センサ21は、一定の周期(例えば、200msec)で走査範囲全体を走査し、その走査範囲内の各方位における、レーザが反射された点までの距離を測定し、測定された距離をパルスレーザを投光した方位と対応付けた測距データをセンサ処理部27へ通知する。
なお、センサ21は、レーザを水平及び垂直方向に2次元に走査し、走査方位と測定距離からなる3次元データを得るように構成してもよい。また、測距方法に関しては、公知の様々な方法を採用すればよく、例えば、位相差方式、三角測量方式などが利用できる。
【0025】
タグリーダ22は、監視エリア内に進入した人物を識別するための情報を取得する人体識別センサの一例である。
タグリーダ22は、例えば、900MHz帯又は2.4GHz帯の周波数で無線タグ6と通信する。タグリーダ22は、信号の送出方向について指向性を有するアンテナを備える。タグリーダ22のアンテナとして、例えば、複数の小さいアンテナを備え、各アンテナから送出する電波の位相を調整して合成波の進行方向を制御するアダプティブアレイアンテナを利用することができる。タグリーダ22は、予め設定された検知範囲(例えば、180°)にわたって水平方向に所定の角度ステップ(例えば、5°単位)で、質問信号を送出する。そして、タグリーダ22は、質問信号に応答した無線タグ6から応答信号を受信すると、その応答信号を解析して、応答信号に含まれるタグ識別コードを抽出する。そして、タグリーダ22は、抽出したタグ識別コードを質問信号を送出した方位と対応付けたタグデータをセンサ処理部27へ通知する。なお、タグリーダ22は、一定の周期(例えば、200msec)で検知範囲全体を走査し、その周期毎にタグデータをセンサ処理部27へ通知する。
なお、タグリーダ22は、信号の受信方向について指向性を有するアンテナを備えてもよいし、送信及び受信方向の両方に指向性を有するアンテナを備えてもよい。また、タグリーダ22を三つ配置して三点測量方式を用いることにより無線タグ6の位置を特定することもできる。
【0026】
なお、本実施形態では、タグリーダ22の検知範囲が、同じセンサ端末2のセンサ21の走査範囲に含まれる監視エリアと略同一範囲となり、監視エリア内の任意の位置に対する、タグデータにおける方位と測距データにおける方位が同じになるようにタグリーダ22とセンサ21は設置されるものとする。
【0027】
カメラ23は、所定の周期(例えば、200msec)で監視エリア内の所定領域を撮影し、その所定領域の画像を生成する。そしてカメラ23は生成した画像をセンサ処理部27へ渡す。所定領域は、例えば、同じセンサ端末2のセンサ21の走査範囲に含まれる監視エリアを撮影可能なように設定される。例えば、図1の例では、各センサ端末2が有するカメラ23は、約180°の画角を有するものが用いられる。
【0028】
宅内通信部24は、センサ端末2と監視端末4とを通信可能に接続する。そのために、宅内通信部24は、例えば、センサ端末2と監視端末4とが、特定小電力無線通信などの所定の無線通信方式に従って接続されている場合、その無線通信用インターフェース回路を有する。あるいは、宅内通信部24は、センサ端末2と監視端末4とを接続する通信回線を終端するインターフェース回路を有してもよい。
【0029】
スピーカ25は、センサ処理部27から受け取った音声データを音声信号として出力する。
【0030】
記憶部26は、例えば、不揮発性の半導体メモリなどを有し、センサ端末2で利用される各種の情報及びプログラムを記憶する。
【0031】
記憶部26は、監視エリア全体の範囲、監視エリア内の各部分エリア(入場エリア、常監視エリア)の範囲、監視エリアの外から監視エリアへの入口、すなわち敷地外から敷地内へ入場するための敷地入口の位置、屋内エリアとの境界の位置、非監視エリアと隣接する予報ラインの位置を表すマップ情報を記憶するマップ情報記憶手段として機能する。
例えば、記憶部26は、図1に示された監視エリア100の情報を、監視エリア100の左下の角の位置を原点とする2次元座標系で表されたマップ情報として保有する。監視エリア100は、外辺の座標により敷地外エリアとの境界が規定され、内辺の座標により建物及び予報ラインとの境界が規定される。そして、外辺で囲まれた領域のうち、建物及び予報ラインとの境界となる内辺で囲まれた領域を除いた領域を、監視エリア100の範囲とする。
また、入場エリア101、常監視エリア102など、各部分エリアの範囲を表す情報は、それら部分エリアの境界線で囲まれた領域として規定する。また、敷地入口120の位置は、監視エリア100を示すマップ上で、敷地入口120と隣接する所定幅の領域として規定し、同様に、建物の入口111の位置は入口111と隣接する一定幅の領域として規定し、予報ライン113の位置は非監視エリア112と隣接する一定幅の領域として規定する。
【0032】
また、記憶部26は、センサ処理部27が、センサ21による測距データから監視エリア内で検知された人物の位置を算出するために必要な情報として、監視エリア内のセンサ端末2の設置位置を表す座標、センサ21の走査範囲の基準方向(例えば、走査範囲の中心方向)、監視エリアに人がいない状態で測定されたセンサ21による基準測定データなどを記憶する。
さらに、記憶部26は、センサ処理部27が、監視エリア内で検知した人物とタグリーダ22により検知されたタグ識別コードとを対応付けるために必要な情報として、タグリーダ22の検知範囲の基準方向(例えば、検知範囲の中心方向)、ユーザが持つ予め登録された無線タグ6のタグ識別コード(以下、ユーザ識別コードと称する)などを記憶する。
さらに、記憶部26は、センサ端末2の識別コードを記憶する。そして、記憶部26は、記憶されている情報及びプログラムをセンサ処理部27へ出力する。あるいは、記憶部26は、センサ処理部27から受け取った情報を記憶する。
【0033】
センサ処理部27は、少なくとも一つのプロセッサ及びその周辺回路を有する。そして、センサ処理部27は、センサ端末2の各部を制御する。また、センサ処理部27は、カメラ23により撮影された画像を宅内通信部24を介して監視端末4へ送信する。また、センサ処理部27は、警告メッセージなどの音声データを監視端末4から受信すると、その音声データをスピーカ25へ伝達する。
【0034】
また、センサ処理部27は、センサ21から受け取った一周期分の測距データに基づいて、監視エリア内にいる人物を検知するとともに、検知した人物とタグリーダ22により検知された無線タグ6とを対応付ける。そのために、センサ処理部27は、そのプロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールとして、移動体検出手段271と、同一人物判定手段272と、権限識別手段273と、を有する。
【0035】
移動体検出手段271は、センサ21から受け取った測距データを記憶部26に記憶されている基準測定データと比較し、所定以上の距離変化が生じている方向(走査方位)を抽出し、所定以上の連続性(例えば、一般的な人のサイズ)を持った距離変化方向群を、監視エリアに進入した人物として検出する。そして、移動体検出手段271は、記憶部26に記憶されているマップ情報と、そのセンサ端末2の設置位置座標及びセンサ21の走査範囲の基準方向と、検出した人物に係る代表測距データ(例えば、距離変化方向群の中心の走査方位及び測定距離とする)とから、監視エリア内の人物の位置(すなわち、マップ情報上の位置座標)を算出する。なお、このような位置の算出は、単なる座標系の変換演算により行えるので、その詳細は省略する。また、移動体検出手段271は、各人物の位置座標を、マップ情報に含まれる各部分エリアの範囲と比較して、その人物の位置がどの部分エリアに含まれるかを判別する。なお、移動体検出手段271は、複数の距離変化方向群が抽出された場合、各距離変化方向群毎に人物か否かを判別し、その人物の位置を算出するとともに、その人物の位置がどの部分エリアに含まれるかを判別する。
【0036】
同一人物判定手段272は、現走査で検出された人物が前回の走査で検出された人物か否かを判定する。前回の走査で検出された人物か否かの判定には、例えば、公知の様々なトラッキング処理の何れかを利用することができる。例えば、現走査で検出された着目人物の位置と、1走査前に検知された何れかの人物の位置との距離が、人の移動可能速度から推定される所定距離以下であれば、同一人物判定手段272は、着目人物はその1走査前に検知された人物と同一人物であると判定する。さらに、現走査で検出された着目人物の距離変化方向群のサイズと、1走査前に検知された何れかの人物の距離変化方向群のサイズとの差が所定以下であることを同一人物の判定条件としてもよい。
現走査における着目人物と1走査前に検知された何れかの人物が同一人物と判定された場合、同一人物判定手段272は、その同一人物と判定された人物に1走査前に割り当てられていた人識別コードをその着目人物に割り当てる。一方、現走査における着目人物と1走査前に検知された何れの人物とも同一人物と判定されなかった場合、同一人物判定手段272は、着目人物は監視エリアに新たに進入した人物と判定し、新たな人識別コードを着目人物に割り当てる。
【0037】
権限識別手段273は、タグリーダ22から受信したタグ識別コードに基づいて、着目人物が無線タグ6と対応するか否か、つまり許可者であるか非許可者であるかを判定する。
権限識別手段273は、移動体検出手段271が人物を検出したときにタグリーダ22からタグデータを受信したか否かを判定する。そして、タグデータを受信していない場合、着目人物は無線タグ6と対応しないと判別し、タグデータを受信している場合、さらに、受信したタグ識別コードが記憶部26に予め登録されたユーザ識別コードの何れかと一致するか否かを判定する。そして、何れのユーザ識別コードとも一致しない場合、着目人物は無線タグ6と対応しないと判別し、何れかのユーザ識別コードと一致する場合、さらに、着目人物の代表測距データの走査方位と、そのタグデータにおける方位の差が所定値(例えば、5°)以下であるか否かを判定する。そして、着目人物の代表測距データの走査方位と、そのタグデータにおける方位の差が所定値以下である場合、着目人物は無線タグ6と対応すると判別する。
なお、権限識別手段273は、着目人物の代表測距データの走査方位と、そのタグデータにおける方位の差が所定値以下であるか否かを判定するのではなく、タグデータにおける方位が着目人物についての距離変化方向群の範囲内にあるか否かを判定することにより、着目人物が無線タグ6と対応するか否かを判別してもよい。
【0038】
センサ処理部27は、移動体検出手段271が人物を検出した場合、その人物の人識別コードと、検出した時刻を表す時刻情報と、検出した位置及びその位置の部分エリアを表す位置情報と、その人物が無線タグ6と対応するか否かを表すタグリンク情報と、タグ識別コードとを、センサ検知情報としてセンサ端末2の識別コードとともに宅内通信部24を介して監視端末4へ送信する。なお、タグリンク情報は、検出した人物が無線タグ6と対応する場合、タグリンク有となり、検出した人物が無線タグ6と対応しない場合、タグリンク無となる。
【0039】
図4は、センサ処理部27による人物検出処理の動作を示すフローチャートである。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶部26に記憶されているプログラムに基づき主にセンサ処理部27によりセンサ端末2の各部と協働して実行される。図4に示すフローチャートは、センサ21から測距データを受け取ったタイミングで実行される。
【0040】
センサ21から測距データを受け取ると、移動体検出手段271は、受け取った測距データを基準測定データと比較し、監視エリアに人物が存在するか否かを判定する(ステップS401)。監視エリアに人物が存在しない場合、センサ処理部27は、一連のステップを終了する。一方、監視エリアに人物が存在する場合、センサ処理部27は、処理をステップS402に移す。なお、ステップS402〜S412の処理は、検出された人物毎に実行される。ステップS402において、移動体検出手段271は、着目人物の位置を算出するとともに、その着目人物の位置がどの部分エリアに含まれるかを判別する(ステップS402)。
【0041】
次に、同一人物判定手段272は、現走査で検出された着目人物が、前回の走査で検出された人物か否かを判定する(ステップS403)。同一人物判定手段272は、着目人物が前回の走査で検出された人物である場合(ステップS404のYes)、着目人物に、前回の走査で既に割り当てられていた人識別コードを割り当てる(ステップS405)。一方、同一人物判定手段272は、着目人物が前回の走査で検出された人物でない場合(ステップS404のNo)、着目人物に新たな人識別コードを割り当てる(ステップS406)。
【0042】
次に、権限識別手段273は、タグリーダ22からタグデータを受信したか否かを判定する(ステップS407)。タグデータを受信している場合、権限識別手段273は、タグ識別コードが記憶部26に予め登録されたユーザ識別コードの何れかと一致するか否かを判定する(ステップS408)。何れかのユーザ識別コードと一致する場合、権限識別手段273は、着目人物の検出方位と、検出された無線タグ6の検知方位の差が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS409)。着目人物の検出方位と、検出された無線タグ6の検知方位の差が所定値以下である場合、権限識別手段273は、着目人物は無線タグ6と対応する、つまり許可者であると判別する(ステップS410)。一方、タグデータを受信していない場合、何れのユーザ識別コードとも一致しない場合、または検出された人物の代表測距データの走査方位と、そのタグデータにおける方位の差が所定値より大きい場合、権限識別手段273は、着目人物は無線タグ6と対応しない、つまり非許可者であると判別する(ステップS411)。
【0043】
次に、センサ処理部27は、人識別コードと、時刻情報と、位置情報と、タグリンク情報と、タグ識別コードとを、センサ端末2の識別コードとともに監視端末4へ送信する(ステップS412)。センサ処理部27は、検出した全ての人物についてステップS401〜S412の処理が完了すると、一連のステップを終了する。
【0044】
図5は、監視端末4の概略構成図である。監視端末4は、宅内通信部41、センタ通信部42、入出力部43、記憶部44及び監視処理部45を有する。
【0045】
宅内通信部41は、監視端末4とセンサ端末2とを通信可能に接続する。そのために、宅内通信部41は、例えば、監視端末4とセンサ端末2とが、特定小電力無線通信などの所定の無線通信方式に従って接続されている場合、その無線通信用インターフェース回路を有する。あるいは、宅内通信部41は、監視端末4とセンサ端末2とを接続する通信回線を終端するインターフェース回路を有してもよい。
そして宅内通信部41は、監視処理部45より出力された制御信号、音声データなどをセンサ端末2へ送信する。また宅内通信部41は、センサ端末2が検出した人物についての人識別コード、時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コード、または画像信号などをセンサ端末2から受信し、監視処理部45へ渡す。
【0046】
センタ通信部42は、監視端末4を公衆通信回線に接続するためのインターフェース回路を有する。そしてセンタ通信部42は、例えば、監視センタ装置7へ不審者が検知されたことを通報する場合、監視処理部45の制御に従って、監視端末4と監視センタ装置7間の接続処理を行う。そしてセンタ通信部42は、監視端末4と監視センタ装置7間で接続が確立された後、監視処理部45から受け取った、警備システム1または警備システム1が設置された建物の識別コードと、不審者が検知されたことを示す異常通報信号を公衆通信回線を介して監視センタ装置7へ送信する。またセンタ通信部42は、センサ端末2により撮像された画像も、公衆通信回線を介して監視センタ装置7へ送信してもよい。センタ通信部42は、上記のような各種情報の通報が終わると、監視端末4と監視センタ装置7間の接続を開放する処理を行う。
【0047】
入出力部43は、入口センサ3と通信を行うための入出力インターフェースであり、各入口センサ3と接続するための接続端子、通信用回路及びその制御プログラムなどで構成される。そして、各入口センサ3との間で定められた所定の通信プロトコルにしたがって通信を行う。入出力部43は、入口センサ3が通過行動を検知したとき、入口センサ3から検知信号を受信し、監視処理部45へ渡す。
【0048】
記憶部44は、例えば、不揮発性の半導体メモリなどを有し、監視端末4で利用される各種の情報及びプログラムを記憶する。記憶部44は、センサ端末2の記憶部26と同様に、マップ情報記憶手段として機能し、監視エリアのマップ情報を記憶する。
さらに、記憶部44は、監視端末4と接続された各センサ端末2の識別コード、各入口センサ3の識別コード、監視エリア内における各センサ端末2の設置位置を表す座標などを記憶する。
さらに記憶部44は、監視エリア内で検知された人物が存在する場合、その人物について設定された追跡データを記憶する。なお、追跡データの詳細については後述する。
さらに、記憶部44は、各センサ端末2から受信した画像を記憶してもよい。そして記憶部44は、記憶されている情報及びプログラムを監視処理部45へ出力する。あるいは、記憶部44は、監視処理部45から受け取った情報を記憶する。
【0049】
監視処理部45は、少なくとも一つのプロセッサ及びその周辺回路を有する。また監視処理部45は、タイマ回路を有する。そして、監視処理部45は、監視端末4の各部を制御する。また、監視処理部45は、各センサ端末2から受け取った情報及び各入口センサ3から受け取った検知信号に基づいて、監視エリア内にいる人物が不審者か否かを判定し、各種の警告処理を実行する。そのために、監視処理部45は、そのプロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールとして、位置追跡手段451と、イベント検出手段452と、判定手段453と、を有する。
【0050】
位置追跡手段451は、宅内通信部41を介してセンサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受信すると、その人物に対する追跡データを記憶部44に記録してその人物の位置を追跡する。
図6に追跡データの例を示す。図6に示すように、追跡データは、人識別コード601毎に管理され、時刻602、位置(エリア)603、タグリンク情報604、タグ識別コード605、許可フラグ606及びイベント情報607が含まれる。なお、便宜上、図6の各欄においてその内容を表す文言が示されているが、実際には、その文言に対応するコードが記憶部44に記憶されている。
位置追跡手段451は、新たに受信した人識別コードが既に追跡データに記録されている場合、受信した時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コードを、それぞれその人識別コードにおける直前の情報が記録された行の次の行の時刻602、位置603、タグリンク情報604、タグ識別コード605の欄に記録する。一方、位置追跡手段451は、新たに受信した人識別コードがまだ追跡データに記録されていない場合、その人識別コードを追跡データに新たに追加し、受信した時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コードを、それぞれ追加した人識別コードの先頭行の時刻602、位置603、タグリンク情報604、タグ識別コード605の欄に記録する。
【0051】
イベント検出手段452は、位置追跡手段451が追跡データを更新したとき、後述するタイマが満了したとき、または一定期間毎に、追跡データに基づいて、監視エリア内における人物の行動に応じたイベントの発生を検出する行動検出手段である。イベント検出手段452は、イベントの発生を検出すると、検出したイベントの識別コードを追跡データ中のイベント情報607に記録する。
【0052】
判定手段453は、イベント検出手段452が検出した各イベントに対応する処理を実行し、建物または監視エリアへ侵入する不審者を検出する。
【0053】
図7は、監視処理部45による追跡データに基づく処理の動作を示すフローチャートである。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶部44に記憶されているプログラムに基づき主に監視処理部45により監視端末4の各部と協働して実行される。図7に示すフローチャートは、センサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受け取ったタイミング、または入口センサ3から検知信号を受け取ったタイミングで実行される。
【0054】
位置追跡手段451は、まず、センサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受信しているか否かを判別する(ステップS701)。位置追跡手段451は、センサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受信している場合、受信した人識別コードが既に追跡データに記録されているか否かを判別する(ステップS702)。位置追跡手段451は、受信した人識別コードが既に追跡データに記録されている場合、その人識別コードにおける直前の情報が記録された行の次の行の各欄に受信した時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コードを記録する(ステップS703)。一方、位置追跡手段451は、受信した人識別コードがまだ追跡データに記録されていない場合、その人識別コードを追跡データに新たに追加し、追加した人識別コードの先頭行の各欄に受信した時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コードを記録する(ステップS704)。
【0055】
一方、ステップS701においてセンサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受信していなかった場合、またはステップS703又はステップS704において位置追跡手段451が追跡データを更新して人物の位置を追跡した場合、イベント検出手段452は、追跡データと入口センサ3からの検知信号に基づいて各イベントが発生したか否かを判定する(ステップS705)。イベント検出手段452は、イベントの発生を検出しなかった場合、一連のステップを終了する。一方、イベント検出手段452は、イベントの発生を検出した場合、検出したイベントの識別コードを追跡データのイベント情報に記録する(ステップS706)。次に、判定手段453は、イベント検出手段452が検出したイベントに対応する処理を実行し(ステップS707)、一連のステップを終了する。
【0056】
以下、各イベントについて説明する。発生するイベントには、入場イベント、退場イベント、滞留イベント、移動イベント、入館判定イベント、退館イベント及び入口通過イベントがある。
【0057】
入場イベントは、新たな人物が敷地外エリアから監視エリアに進入したことを表すイベントである。
イベント検出手段452は、図6に示す追跡データに新たな人識別コードが追加され、そのときの人物の位置603が敷地外エリアとの境界の近傍である場合、入場イベントが発生したと判断する。
【0058】
判定手段453は、入場イベントの発生が検出されたとき、その人物が許可者である場合、監視エリアへの進入を許可する。一方、その人物が非許可者であり、敷地入口以外から進入している場合は、入場エリアか常監視エリアかに関わらず、不正に敷地内に入ってきた不審者と判定する。また、その人物が非許可者であり、敷地入口から進入しているときは直ちには不審者と判定せずに、その人物が不審者か否かの判定を保留し、その後の追跡で特定の不審行動が検出されるまで入場エリアへの進入を一時許可する。具体的には、その人物による入場エリア内での滞留行為を所定の許可時間T1だけ許容する。この許可時間T1は、入場エリア内において人物が何らかの不審な行為(例えば、ピッキング、覗き、ガラス破り)等を実行する可能性があると推定される時間であり、一時的に誤って進入し、直ぐに引き返したり、配達などの一時的な作業のために要する時間よりも長く設定される。例えば、この許可時間T1は、30秒に設定される。この許可時間T1をどのように設定するかは、監視エリアの広さ、監視目的等に応じて適宜最適化される。
このように、敷地入口から入ってきた人物を不審者と判定する判定基準を敷地入口以外から入ってきた人物を不審者と判定する判定基準より厳格にすることで、配達者、訪問者など、無線タグ6を所持しない人物が正当な事情により敷地入口から入ってきた場合に、そのような人物を不審者と判定することによる誤報の発生を防止できる。一方で、敷地入口から入ってきた無線タグを所持しない明らかな不審者を早期検出、通報することができる。
【0059】
図8は、判定手段453により実行される、入場イベント発生時の処理の動作を示すフローチャートである。
判定手段453は、入場イベントの発生が検出されると、追跡データにおけるタグリンク情報がリンク有かリンク無かにより、監視エリア内に新たに進入した人物が許可者であるか否かを判定する(ステップS801)。その人物が許可者である場合、判定手段453は、その人物の入場エリア内への進入を許可し(ステップS802)、一連のステップを終了する。一方、その人物が非許可者である場合、判定手段453は、追跡データにおけるその人物の位置が敷地入口の近傍か否かにより、その人物が敷地入口から進入したか否かを判定する(ステップS803)。
その人物が敷地入口以外から進入している場合、判定手段453は、その人物を不審者と判定し、監視エリア内への侵入があったことを表す外周侵入異常を、操作表示器5を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置7へ通報し(ステップS804)、一連のステップを終了する。なお、このとき、判定手段453は、警告メッセージの音声データをセンサ端末2へ送信して、スピーカ25から出力させてもよい。また、不審者と判定した人物が、さらに建物内へ侵入するおそれもあるため、監視処理部45は、その不審者を継続して追跡する。
一方、その人物が敷地入口から進入している場合、判定手段453は、その人物が不審者か否かの判定を保留し、追跡データにおいてその人物の許可フラグをONに設定して入場エリア内への進入を一時許可する(ステップS805)。この場合、判定手段453は、入場エリアへの進入を一時許可した非許可者を継続して追跡する。そのために、判定手段453は、許可時間T1が経過した後にその人物が入場エリア内に残っているか否かを確認するためのタイマを起動し(ステップS806)、一連のステップを終了する。この許可時間T1の計時は、敷地入口から進入した人物ごとに行う。
【0060】
上述した入場エリアへの進入の一時許可は、各人物毎に設定される。そのため、一時許可された人物が入場エリア内に既に存在する場合であっても、他の人物が敷地入口以外から入場エリアに進入すると、その人物は不審者と判定され、外周侵入異常が通知される。一方、一時許可された人物が既に入場エリア内に存在する場合に、他の人物が敷地入口から進入したときは、その人物に対しても別個に一時許可が設定され、その人物に対する許可時間T1を計時するタイマが新たに起動される。
【0061】
退場イベントは、人物が監視エリアから敷地外エリアへ退場したことを表すイベントである。
イベント検出手段452は、図6に示す追跡データに記録された人物についての情報がセンサ端末2から一定期間連続して通知されず、その人物の最後の位置603が敷地外との境界の近傍である場合、退場イベントが発生したと判断する。この一定期間は、例えば、センサ端末2のセンサ21における1走査、あるいは複数走査に相当する期間とすることができる。
【0062】
判定手段453は、退場イベントの発生が検出されると、その人物についての追跡処理を終了する。つまり、判定手段453は、追跡データからその人物(人識別コード)についての情報を削除する。なお、その人物についての情報は、ユーザが確認できるように一定時間保持してから削除してもよい。また、その人物が不審者と判定されていた場合、不審者が検知されたことを監視装置で確認して復旧信号が入力されるまで、その人物についての情報は削除しないようにしてもよい。
【0063】
滞留イベントは、入場エリアへの進入を一時許可した非許可者が入場エリア内に滞在している時間が許可時間T1を越えたことを表すイベントである。
イベント検出手段452は、図6に示す追跡データの許可フラグ606がONに設定された人物について計時中のタイマが許可時間T1を計時完了したとき、その人物について滞留イベントが発生したと判断する。
【0064】
判定手段453は、滞留イベントの発生が検出されると、その人物は何らかの不審な行為を実行するために進入した不審者と判定する。そして、判定手段453は、外周侵入異常を、操作表示器5を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置7へ通報する。
【0065】
移動イベントは、人物が入場エリアから常監視エリアに移動したことを表すイベントである。
イベント検出手段452は、図6に示す追跡データにおいて、位置603が入場エリア内の位置から常監視エリア内の位置に変化した人物がいる場合、移動イベントが発生したと判断する。
【0066】
判定手段453は、移動イベントの発生が検出されると、追跡データのタグリンク情報604がリンク有かリンク無かにより、その人物が許可者か非許可者かを判定する。そして、判定手段453は、その人物が許可者の場合、特に処理を行わない。一方、その人物が非許可者の場合、さらに許可フラグ606がONであるか否かにより、その人物が入場エリアへの進入を一時許可した非許可者か否かを判定する。その人物が入場エリアへの進入を一時許可した非許可者でない場合、既にその人物は不審者と判定して、外周侵入異常を通知しているので、特に処理を行わない。一方、その人物が入場エリアへの進入を一時許可した非許可者の場合、その人物は、空き巣、潜伏等の目的で不正に侵入してきた不審者と判定する。そして、判定手段453は、外周侵入異常を、操作表示器5を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置7へ通報する。
【0067】
入館判定イベントは、人物が監視エリアから屋内エリア(建物)又は建物入口と隣接する非監視エリアへ移動したことを表すイベントである。
イベント検出手段452は、図6に示す追跡データに記録されている人物についての情報がセンサ端末2から一定期間連続して通知されず、その人物の最後の位置603が建物との境界の近傍、または予報ラインの近傍である場合、入館判定イベントが発生したと判断する。この一定期間は、例えば、センサ端末2のセンサ21における1走査、あるいは複数走査に相当する期間とすることができる。
【0068】
判定手段453は、追跡データに基づいて、予報ラインを越えて監視エリアから非監視エリアへ移動した人物(進入人物)を検出する。そして、その人物が許可者か非許可者かの判別結果、及び入口センサ3による通過行動の検知結果に基づいて、その人物が建物へ侵入した不審者か否かを判定する。監視エリアから非監視エリアへの許可者による移動を検出してから所定期間内に通過行動が検知された場合、その通過行動は許可者によるものとみなし、建物侵入異常としない。そのために、判定手段453は、入館判定イベントの発生が検出されると、その人物の最後の位置603が予報ラインの近傍か否かにより、その人物が非監視エリアに進入したか建物内に進入したかを判定する。さらに、判定手段453は、追跡データのタグリンク情報604がリンク有かリンク無かにより、その人物が許可者か非許可者かを判定する。
判定手段453は、許可者が建物内に進入した場合、特に処理を行わない。一方、非許可者が建物内に進入した場合、その人物を空き巣等の目的で不正に建物に侵入した不審者と判定し、建物内への侵入があったことを表す建物侵入異常を操作表示器5を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置7へ通報する。
【0069】
また、判定手段453は、許可者が非監視エリアに進入した場合、所定の許可時間T2(本発明の通過期間)の間に入口センサ3から通過行動の検知信号を受信したときは、その通過行動を行った人物は非監視エリアに進入した許可者であり、不審者でないと判定する。そのため、判定手段453は、許可者が非監視エリアに進入した場合、許可時間T2の間、建物への進入の一時許可設定を行う。許可時間T2は、その通過行動が非監視エリアに移動した許可者によるものと推定される時間であり、予報ラインから建物入口まで移動し、扉を開くのに要する時間に所定のマージンを加えた時間に設定される。例えば、この許可時間T2は、30秒〜3分程度に設定される。
【0070】
一方、判定手段453は、非許可者が非監視エリアに進入した場合、建物への入館にはまだ至っていないので、不審者による建物への侵入異常が発生したと即時には判定せずに、監視を継続する。この場合、判定手段453は、所定の許可時間T3(本発明の滞留許可期間)だけその人物による非監視エリア内での滞留行為を許容する。許可時間T3は、非許可者による建物入口付近での滞留を許容する時間であり、例えば許可時間T2と同じ時間あるいはT2より短い時間に設定される。なお、許可時間T3は、利用者が訪問者に応対するための時間を考慮して許可時間T2より長い時間にしてもよい。
判定手段453は、許可時間T3内に入口センサ3から通過行動の検知信号を受信した場合、その時点で、その通過行動を行った人物は非監視エリアに進入した非許可者であり、不審者であると判定する。このように、本実施形態においては、許可時間T3は、その通過行動が非監視エリアに移動した非許可者によるものと推定される時間(第2の通過期間)としても併用される。なお、滞留許可期間としてのT3と第2の通過期間としてのT3とを個別に設定してもよい。
【0071】
また、判定手段453は、許可時間T3内に、入口センサ3から通過行動の検知信号を受信することなく、監視エリア内の予報ラインの近傍に新たな人物を検出した場合、すなわち予報ラインを越えて非監視エリアから監視エリアへ移動した人物(退出人物)を検知し、かつその人物が非許可者である場合は、その非許可者を非監視エリアへ進入していた非許可者と同一人物と判定する。この場合、位置追跡手段451は、予報ラインの近傍に出現した非許可者についての情報を、同一人物と判定された非許可者の追跡データとして記録し、人物の位置の追跡を再開する。従って、その非許可者が入場エリア内に滞在している時間が許可時間T1を越えると、判定手段453は、滞留イベントにおいてその人物を不審者と判定する。その場合、その非許可者が過去に入場エリア内に滞在していた時間を含めて滞在時間を制限すべきである。そのため、判定手段453は、その非許可者が非監視エリアへ移動する前に入場エリア内に滞在していた時間を追跡データの時刻の情報に基づいて算出し、許可時間T1からその滞在していた時間を減じた時間を新たな許可時間として、入場エリア内の滞在時間を新たに計時する。そして、新たな許可時間が経過すると、つまり非監視エリアへ移動する前に入場エリア内に滞在していた時間と、入場エリアに戻ってから入場エリア内に滞在している時間の合計が許可時間T1を越えると、滞留イベントにおいてその非許可者を不審者と判定し、不審者による監視エリアへの侵入異常が発生したと判定する。
なお、判定手段453は、非監視エリアも含めてその非許可者の滞在時間を制限するように、その非許可者が最初に入場エリアへ進入した時点から現在までの時間を継続して計時し、その時間が許可時間T1を越えたときにその非許可者を不審者と判定してもよい。あるいは、追跡を再開してから新たに入場エリア内に滞在している時間を計時しなおしてもよい。
【0072】
また、判定手段453は、通過行動が検知されることも、予報ラインの近傍に非許可者を検知することもなく、許可時間T3が経過した場合、その人物を非監視エリア内で不当に滞在する不審者と判定し、不審者による監視エリアへの侵入異常が発生したと判定する。
【0073】
図9は、判定手段453により実行される、入館判定イベント発生時の処理の動作を示すフローチャートである。
判定手段453は、入館判定イベントの発生が検出されると、追跡データにおけるその人物の最後の位置が予報ラインの近傍か否かにより、判定対象の人物が予報ラインから移動したか否かを判定する(ステップS901)。
その人物が予報ラインの近傍以外から移動している場合、つまりその人物が建物へ進入している場合、判定手段453は、追跡データにおけるタグリンク情報がリンク有かリンク無かにより、その人物が許可者であるか否かを判定する(ステップS902)。その人物が許可者である場合、判定手段453は、許可者により正常に入館されたと判定し、一連のステップを終了する。一方、その人物が非許可者である場合、判定手段453は、その人物を不審者と判定し、建物侵入異常を操作表示器5を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置7へ通報し(ステップS903)、一連のステップを終了する。
【0074】
判定対象の人物が予報ラインの近傍から進入している場合も、判定手段453は、追跡データにおけるタグリンク情報がリンク有かリンク無かにより、その人物が許可者であるか否かを判定する(ステップS904)。
その人物が許可者である場合、判定手段453は、建物への進入を一時許可設定し、許可時間T2を計時するためのタイマを起動する(ステップS905)。次に、判定手段453は、入口センサ3から通過行動の検知信号を受信したか否かを判定する(ステップS906)。入口センサ3から通過行動の検知信号を受信した場合、判定手段453は、通過行動を行った人物は許可者であり、不審者でないと判定し(ステップS907)、一連のステップを終了する。
一方、入口センサ3から通過行動の検知信号を受信していない場合、判定手段453は、判定対象の人物と同一の無線タグを持った許可者、すなわち同一のタグ識別コードと対応付けされたタグリンク有の人物が、新たに予報ラインの近傍に出現したか否かにより、予報ラインから監視エリアに許可者が戻ったか否かを判定する(ステップS908)。予報ラインから監視エリアに戻った許可者が存在する場合、人物の位置の追跡を再開する(ステップS909)。一方、許可者が監視エリアに戻っていない場合、判定手段453は、ステップS905でタイマを起動してから許可時間T2が経過したか否かを判定し(ステップS910)、許可時間T2が経過していなければ処理をステップS906へ戻す。ステップS905でタイマを起動してから許可時間T2が経過した場合、またはステップS909で人物の位置の追跡を再開した場合、判定手段453は、建物への進入の一時許可設定をクリアし(ステップS911)、一連のステップを終了する。
【0075】
ステップS904で、判定対象の人物が非許可者であると判定した場合、判定手段453は、許可時間T3を計時するためのタイマを起動する(ステップS912)。次に、判定手段453は、入口センサ3から通過行動の検知信号を受信したか否かを判定する(ステップS913)。入口センサ3から通過行動の検知信号を受信した場合、判定手段453は、通過行動を行った人物を建物へ侵入した不審者と判定する。従って、判定手段453は、不審者による建物への侵入異常が発生したと判定して、建物侵入異常を操作表示器5を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置7へ通報し(ステップS914)、一連のステップを終了する。
【0076】
一方、入口センサ3から通過行動の検知信号を受信していない場合、判定手段453は、追跡データ内に、予報ラインの近傍に位置し、タグリンク情報にタグリンク無の人物が新たに追加されたか否かにより、予報ラインから監視エリアへ進入した非許可者が存在するか否かを判定する(ステップS915)。予報ラインから監視エリアへ進入した非許可者が存在する場合、判定手段453は、その非許可者を非監視エリアに進入していた非許可者と同一人物とみなして人物の位置の追跡を再開する(ステップS916)。この場合、判定手段453は、その非許可者が非監視エリアへ移動する前に入場エリア内に滞在していた時間を追跡データの時刻の情報に基づいて算出し、許可時間T1からその滞在していた時間を減じた時間を新たな許可時間として、入場エリア内の滞在時間を新たに計時する。そして、新たな許可時間が経過すると、滞留イベントにおいてその非許可者を不審者と判定し、不審者による監視エリアへの侵入異常が発生したと判定する。
一方、予報ラインから監視エリアへ進入した許可者が存在しない場合、判定手段453は、ステップS912でタイマを起動してから許可時間T3が経過したか否かを判定し(ステップS917)、許可時間T3が経過していなければ処理をステップS913へ戻す。ステップS912でタイマを起動してから許可時間T3が経過した場合、判定手段453は、その人物を監視エリアへ侵入した不審者と判定する。従って、判定手段453は、不審者による監視エリアへの侵入異常が発生したと判定して、外周侵入異常を操作表示器5を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置7へ通報し(ステップS918)、一連のステップを終了する。
【0077】
退館イベントは、人物が屋内エリア(建物)または建物入口に隣接する非監視エリアから監視エリアへ進入したことを表すイベントである。
イベント検出手段452は、図6に示す追跡データに新たに人識別コードが追加され、そのときの人物の位置603が屋内エリアとの境界の近傍である場合、または予報ラインの近傍である場合、退館イベントが発生したと判断する。ただし、図9に示すフローチャートのステップS909、S916で人物の位置の追跡を再開した場合は退館イベントが発生したと判断しない。
【0078】
建物または非監視エリアから監視エリアへ進入した人物が非許可者である場合、訪問者が退館しようとしていること、または建物の住人などのユーザが無線タグ6を忘れて出てきたことが想定される。そこで、判定手段453は、退館イベントの発生が検出された場合、入場イベントの発生を検出したときと同様に、その人物が許可者であるときは入場エリアへの進入を許可し、その人物が非許可者であるときは、その人物に対して許可フラグを設定し、入場エリアでの滞在を許可時間T1だけ一時許可する。
【0079】
入口通過イベントは、建物の入口において通過行動が検知されたことを表すイベントである。
イベント検出手段452は、入口センサ3から通過行動の検知信号を受信した場合、入口通過イベントが発生したと判断する。
【0080】
判定手段453は、入口センサ3により通過行動が検知されると、建物侵入異常の発生を判定する。従って、許可者による非監視エリアへの移動を検出してから許可時間T2内に通過行動が検知されなかった場合、または非許可者による非監視エリアへの移動を検出してから許可時間T3内に通過行動が検知されなかった場合は、入口通過イベントにおいて侵入異常の発生が判定される。しかし、建物入口で通過行動が検知されただけでは、その通過行動を行った人物が許可者か非許可者か、及びその人物が入館したか退館したかについて判別できない。そこで、判定手段453は、通過行動が検知されてから所定の遅延時間T4が経過するまでは建物侵入異常の判定を保留し、遅延時間T4が経過するまでにその人物を不審者でないと判定する条件を満たさない場合、遅延時間T4が経過した時点でその人物を不審者と判定する。判定手段453は、遅延時間T4が経過するまでに、非監視エリアから予報ラインを越えて監視エリアに進入した許可者を検知した場合、通過行動を行った人物は許可者であり、その人物を不審者でないと判定する。
また、判定手段453は、通過行動が検知されてから遅延時間T4が経過するまでに許可操作が行われ、操作表示器5から許可操作信号を受信した場合、通過行動を行った人物は利用者により許可された訪問者であり、その人物を不審者でないと判定する。
【0081】
判定手段453は、許可操作信号を受信、または非監視エリアから監視エリアに進入した許可者を検知することなく遅延時間T4が経過した場合、通過行動を行った人物を不審者と判定し、建物侵入異常が発生したと判定する。遅延時間T4は、利用者が扉を開いてから建物入口から予報ラインまで移動するのに要する時間、または訪問者が入退館してから利用者が許可操作を行うまでに要する時間に所定のマージンを加えた時間に設定される。例えば、この遅延時間T4は、10秒程度に設定される。また、判定手段453は、遅延時間T4の計時中は、センサ端末2及び操作表示器5を介して、通過行動をとった人物及び利用者に対して異常予告を報知する。
【0082】
なお、通過行動が検知される前の所定時間内に操作表示器5から許可操作信号を受信したときに、その人物を利用者により許可された訪問者と判定してもよい。あるいは、通過行動が検知される前後の所定時間内に操作表示器5から許可操作信号を受信したときに、その人物を利用者により許可された訪問者と判定してもよい。これらの所定時間は、遅延時間T4と同じ時間とすることができる。
【0083】
一方、操作表示器5から許可操作信号を受信することなく、非監視エリアから監視エリアに進入した非許可者が検知された場合、その非許可者は、利用者による許可操作を受けておらず、不審者である可能性がある。従って、その場合は、判定手段453は、許可操作信号の受信を継続して監視し、許可操作信号を受信することなく遅延時間T4が経過すると、その人物を不審者と判定し、建物侵入異常を通知する。
なお、通過行動が検知された場合であっても、上述した入館判定イベントに対する判定処理にて、許可時間T2又はT3を計時中のときは、入館判定イベントでの判定を優先し、入口通過イベントに対する判定では建物侵入異常を判定しない。具体的には、図9のフローチャートにおいて、S905〜S910、又はS912〜S917の反復処理を行っている間に通過行動を検知した場合は、S907、又はS914の処理が優先される。
【0084】
図10は、判定手段453により実行される、入口通過イベント発生時の処理の動作を示すフローチャートである。
判定手段453は、入口通過イベントの発生が検出されると、入館判定イベントで許可時間T2またはT3を計時しているか否か、つまり入館判定イベントで侵入異常の判定処理中か否かを判別する(ステップS1001)。そして、入館判定イベントで侵入異常の判定処理中の場合、入口通過イベントでは侵入異常の判定処理を実施せず、一連のステップを終了する。
【0085】
入館判定イベントで侵入異常の判定処理を行っていない場合、判定手段453は、遅延時間T4を計時するためのタイマを起動する(ステップS1002)。次に、判定手段453は、操作表示器5から許可操作信号を受信したか否かを判定する(ステップS1003)。操作表示器5から許可操作信号を受信した場合、判定手段453は、通過行動を行った人物は利用者により許可された訪問者であり、不審者でないと判定し(ステップS1004)、一連のステップを終了する。
一方、操作表示器5から許可操作信号を受信していない場合、判定手段453は、追跡データ内に、予報ラインの近傍に位置し、タグリンク情報がタグリンク有の人物が新たに追加されたか否かにより、予報ラインを越えて非監視エリアから監視エリアへ進入した許可者が存在するか否かを判定する(ステップS1005)。予報ラインを越えて監視エリアへ進入した許可者が存在する場合、判定手段453は、通過行動を行った人物は許可者であり、不審者でないと判定し(ステップS1006)、一連のステップを終了する。一方、予報ラインを越えて監視エリアへ進入した許可者が存在しない場合、判定手段453は、ステップS1002でタイマを起動してから遅延時間T4が経過したか否かを判定し(ステップS1007)、遅延時間T4が経過していなければ処理をステップS1003へ戻す。ステップS1002でタイマを起動してから遅延時間T4が経過した場合、判定手段453は、通過行動を行った人物を不審者と判定し、建物侵入異常を操作表示器5を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置7へ通報し(ステップS1008)、一連のステップを終了する。
【0086】
これにより、建物入口前をセンサ端末2で監視できない場合であっても、監視エリアから非監視エリアへ移動した人物が許可者であるか否か、及び建物入口での通過行動のタイミングに基づいて、その通過行動が入館によるものか退館によるものか、及び利用者によるものか不審者によるものかを的確に判別することができる。
【0087】
なお、図7に示すフローチャートのステップS705〜S707に示した、イベントの発生の検出処理及び検出したイベントに対応する処理は、センサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受け取ったとき、または入口センサ3から検知信号を受け取ったときだけでなく、一定期間毎に実行される。これは、退場イベントまたは入館判定イベントのように、人物が監視エリアから敷地外エリアまたは屋内エリアへ移動して、センサ端末2により検知できなくなった場合に対応する処理を実行するためである。なお、一定期間は、例えば、センサ端末2のセンサ21における1走査、あるいは複数走査に相当する期間とすることができる。さらに、上記の処理は、入場イベントで起動したタイマが満了したときにも実行される。これは、滞留イベントのように、監視エリア内の滞在を一時許可した非許可者が許可時間を越えて滞在する場合に、対応する処理を確実に実行するためである。
【0088】
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態に係る警備システムでは、進入規制区域の入口と接するように非監視エリアが設定され、進入規制区域の入口には接さず、かつ非監視エリアと接するように監視エリアが設定され、監視エリア内に存在する人物が許可者か非許可者かを判別するとともに、人物の位置を人物毎に追跡する。そして、通過行動が検知されてから所定の期間内に非監視エリアから監視エリアへ移動する許可者を検出した場合は許可者による退館行為と判定し、監視エリアから非監視エリアへ移動する許可者を検出してから所定の期間内に通過行動が検知された場合は許可者による入館行為と判定する。一方、通過行動を検知したが許可者による入館行為又は退館行為でなかった場合は、その人物を不審者と判定する。これにより、警備システムは、監視エリアに建物入口が含まれない場合でも、利用者による建物への入退館と区別して建物への不審者の侵入を的確に判定できる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、図9に示すフローチャートのステップS914では、非許可者が予報ラインを越えて非監視エリアに進入してから許可時間T3内に、入口センサから通過行動の検知信号を受信した場合、直ちにその人物を不審者と判定する例を示した。しかし、判定手段は、遅延時間T4が経過するまで待って、利用者による許可操作が行われなかった場合にその人物を不審者と判定してもよい。その場合、判定手段は、例えば、ステップS914を省略し、図10のステップS1001において許可時間T3の計時中でもステップS1002に移行して遅延時間T4のタイマを起動し、遅延時間T4が経過した時点(ステップS1008)でその人物を不審者と判定する。
【0090】
また、警備システムにおいて、監視エリア内に常監視エリアを設定しないようにしてもよい。その場合、監視エリアの全範囲が入場エリアとなる。
【0091】
また、センサ端末は、監視エリア内の人物が許可者か非許可者かを判定するために、センサ端末が有するカメラにより撮影した画像に写った人物の顔を、予め登録されたユーザの顔と照合してもよい。その場合、センサ端末は、撮影した画像に写った人物の顔が、予め登録された何れかのユーザの顔と一致すると判定すると、その人物を許可者とする。一方、センサ端末は、撮影した画像に写った人物の顔が、予め登録された何れのユーザの顔とも一致しないと判定すると、その人物を非許可者とする。この変形例では、顔照合を行うために、例えば、公知の様々な顔照合処理の何れかを採用することができる。またこの場合、センサ端末は、タグリーダを有さなくてもよい。
また、センサ端末は、カメラにより撮像された画像と、監視エリア内に人物がいない場合に撮影され、予め記憶部に記憶された背景画像との背景差分により、またはカメラにより順次撮像された複数の画像間のフレーム間差分により、画像上の変化領域を抽出することで、人物を検出してもよい。この場合、センサ端末は、その変化領域内の少なくとも一点の監視エリア内の位置から人物の測距データを求める。
【0092】
また、各センサ端末が、監視端末の監視処理部における処理の一部を担うように構成されてもよい。例えば、各センサ端末のセンサ処理部が、監視エリア内に存在する人物の位置を追跡してもよいし、追跡データに基づいて各イベントの発生を検出し、各イベントに対応する処理を実行してもよい。
逆に、監視端末が、各センサ端末のセンサ処理部における処理の一部を担うように構成されてもよい。例えば、監視端末の監視処理部が、監視エリア内にいる人物の位置を算出してもよいし、順次検知した人物が同一人物か否かの判定を行ってもよいし、その人物が許可者か非許可者かを判定してもよい。
あるいは、センサ端末と監視端末とを一つの装置で構成してもよい。
【0093】
また、監視端末は、監視エリアに囲まれた建物の外周に限らず、他の場所に設置されていてもよい。あるいは、監視端末は、ユーザが携帯する端末であってもよい。この場合、例えば、監視エリア内の建物の外周または建物内には、中継装置が設置される。この中継装置は、各センサ端末と通信するためのインターフェース回路と、ユーザが携帯する監視端末と無線通信するための無線インターフェース回路とを有し、各センサ端末からの情報を中継して監視端末へ送信する。
また、監視エリアは、戸建家屋の敷地に限らず、オフィス、工場の敷地等であってもよく、その場合、屋内エリアは、例えば、オフィスの一室、工場の建物となる。
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0094】
1 警備システム
2 センサ端末
3 入口センサ
4 監視端末
5 操作表示器
6 無線タグ
7 監視センタ装置
21 センサ
22 タグリーダ
23 カメラ
24 記憶部
25 宅内通信部
26 スピーカ
27 センサ処理部
271 移動体検出手段
272 同一人物判定手段
271 権限識別手段
274 通知手段
41 宅内通信部
42 センタ通信部
43 入出力部
44 記憶部
45 監視処理部
451 位置追跡手段
452 イベント検出手段
453 判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進入規制区域の入口前の非監視エリアに外接して当該侵入規制区域の外周に設定された監視エリアを有し、前記監視エリア内の人物を追跡して前記進入規制区域への侵入を検出する警備システムであって、
前記監視エリアと前記非監視エリアの境界位置を記憶する記憶手段と、
前記監視エリアに存在する人物の位置を検知する検知手段と、
前記人物毎に位置を追跡し、前記境界位置にて新たに出現した人物を前記非監視エリアからの退出人物として検出する追跡手段と、
前記人物の識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記検知手段により検知された人物毎に、予め登録された許可者であるか前記許可者でない非許可者であるかを前記識別情報に基づいて判定する権限識別手段と、
人物が前記進入規制区域の入口を通過する、又は通過しようとする通過行動を検知する通過検知手段と、
前記通過行動が検知されてから所定の遅延時間内に前記許可者である前記退出人物を検出しない場合に前記進入規制区域に対する侵入異常と判定する判定手段と、
を有することを特徴とする警備システム。
【請求項2】
前記追跡手段は、前記境界位置にて消失した人物を前記非監視エリアへの進入人物として検出し、
前記判定手段は、前記通過行動を検知する前の所定の通過期間内に、前記進入人物が検出され、かつ当該進入人物が許可者であるときは、当該通過行動を侵入異常と判定せず許容する、請求項1に記載の警備システム。
【請求項3】
前記通過行動の許可操作を行う操作手段をさらに有し、
前記判定手段は、前記通過行動が検知されてから前記遅延時間内に前記許可操作が行われたときは、当該通過行動を侵入異常と判定せず許容する、請求項1又は2に記載の警備システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−77260(P2013−77260A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218083(P2011−218083)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】