説明

赤外線タッチスイッチ

【課題】手動での感度調整を不要にする。
【解決手段】反射物の有無を判定する赤外線タッチスイッチにおいて、受光素子で変換された電圧が入力され表示モードとして所定出力値になるように誤差増幅器の誤差出力によりサンプルホールド回路で先の誤差出力がサンプルホ−ルドされながら制御される可変利得増幅器と、先の可変利得増幅器の出力値と判定電圧とを比較して判定信号を出力する比較器と、先の誤差出力と先の判定信号が入力されると共に、先の誤差出力により第一特定操作を認識し先の可変利得増幅器の増幅度を先のサンプルホールド回路のホールド値により固定してから設定モードとして動作させて先の反射物に対応して先の判定信号をスイッチ信号として出力させ、第二特定操作を認識したときに先の表示モードに復帰するように制御する制御回路とを具備するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からパラメータ設定を行うためにプロセス機器等に装備される赤外線タッチスイッチの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に従来の赤外線タッチスイッチの1例を示す回路構成を示す。矩形波発生部2を含む駆動回路1によって発光素子3に矩形波状の駆動電流IFを流して赤外線を発光させる。
発光した赤外線は操作パネル11を介して操作パネル11に接する反射物10で反射して、受光素子4で受光され、これにより受光素子4に光電流ILが流れる。反射物10がない場合は、赤外線を受光できないので、光電流ILは流れない。
【0003】
反射物10がある場合は、光電流ILは抵抗5によって電圧VL1に変換され、比較器6に入力される。比較器6は電圧VL1が判定電圧7よりも大きいか或いは小さいかという情報を有する判定信号を判定回路9に出力する。これによって判定回路9は反射物10の有無を判定し、スイッチのオン(ON)、オフ(OFF)を行う。
【0004】
反射物10がないとき、即ちスイッチがオフのときに光電流ILが全く流れず、反射物10があるとき、即ちスイッチがオンのときだけ光電流ILが流れれば、光電流ILの有無だけでスイッチのオン、オフを判定できる。
【0005】
しかし、現実にはスイッチがオフのときに光電流ILはゼロにならない。これは、赤外線スイッチを収納しているケースの構成要素などで赤外線が反射して受光素子4に入力されるためである。このときの光電流をIL(off)とする。
【0006】
スイッチがオンのときの光電流をIL(on)とすると、IL(on)>IL(off)という関係になるので、図4に示すように、判定電圧7をIL(on)とIL(off)に相当する電圧VL1(on)とVL1(off)の間に設定する必要がある。
【0007】
しかし、発光素子3と受光素子4の光伝達特性には数十倍のバラツキがあり、駆動電流IFを一定にしても光電流ILが一定にならない。例えば、電圧VL1(on)がものにより1Vであったり、20Vであったりして、VL1(on)>判定電圧7>VL1(off)にならない場合がある。そこで、VL1(on)>判定電圧7>VL1(off)になるように、判定レベルを個別調整する必要がある。具体的には、抵抗5を可変抵抗にして感度調整を行っている。
【0008】
なお、この感度調整を行う際には、操作感も考慮する必要がある。反射物10が操作パネル11に近いほど電圧VL1(on)は大きくなり、反射物10が操作パネル11から離れているときはスイッチがオフとなる。反射物10が操作パネル11に触れたときだけスイッチがオンになれば良好な操作感が得られる。従って、反射物10が操作パネル11に触れたときの電圧が判定電圧7よりも少し大きくなるように感度調整を行っている。
【0009】
下記の特許文献1には、外部からパラメータ設定を行うためにプロセス機器等に装備される赤外線タッチスイッチが記載されている。
【0010】
【特許文献2】特開2003−273721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
通常、操作スイッチとして赤外線スイッチを複数個使用するので、その数だけ手動の感度調整が必要である。このため、多くの製造工数が必要になり、コスト削減の妨げになるという問題がある。
【0012】
また、感度調整は、発光素子や受光素子などの構成要素の経時変化(特性劣化)、周囲温度などの使用環境による特性変化、反射物の反射率の個体差などを考慮して実施するが、これらの変動が大きい場合は、スイッチ操作ができなかったり、操作性が悪くなったりするという問題もある。
【0013】
図5に変動要因の一例を示す。ここには、変動要因の一例として、反射率の異なる反射物が操作パネルに触れたときの光電圧VL1を示している。A、B、C、D、Eは反射率の相違を示しており、A<B<C<D<Eの順に反射率が高くなっている。
【0014】
反射率の最も小さいAの場合は、オン、オフの判定は不可能、つまり、スイッチ操作はできない。B、C、Dの場合は、動作は可能である。しかし、反射率の最も高いDの場合は、操作性が悪化する。つまり、反射物10が操作パネル11から離れていてもスイッチがオンと判定してしまうので、使用者の操作感覚と実際の設定動作が一致せず、操作感が悪いと感じ、誤設定に繋がってしまうという問題がある。
【0015】
従って本発明の目的は、手動の感度調整を不要にすることで、コスト削減(製造工数削減)を実現し、使用する度に自動で感度調整を行い、経時変化、使用環境、反射物の個体差などによる操作感の劣化を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
反射物が操作パネルに触れることにより反射された赤外線発光素子の光を受光素子で受け、前記反射物の有無を判定する赤外線タッチスイッチにおいて、
前記受光素子で変換された電圧が入力され前記反射物が無いときに表示モードとして所定出力値になるように誤差増幅器の誤差出力により制御される可変利得増幅器と、
前記可変利得増幅器の出力値と判定電圧とを比較して判定信号を出力する比較器と、
前記誤差出力と前記判定信号が入力されると共に、前記誤差出力により第一特定操作を認識し前記可変利得増幅器の増幅度を前記サンプルホールド回路のホールド値により固定してから設定モードとして動作させて前記反射物に対応して前記判定信号をスイッチ信号として出力させ、第二特定操作を認識したときに前記表示モードに復帰するように制御する制御回路と、
を具備したものである。
【0017】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記第一特定操作は、前記誤差出力を常時監視し前記誤差出力が所定時間低下したことにより認識するようにしたものである。
【0018】
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記第二特定操作は、操作者から入力された操作終了信号により認識するようにしたものである。
【0019】
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記誤差増幅器は、前記判定電圧とこれより若干大きく設定された基準電圧と比較して前記誤差出力を出力するようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1,2,3および4に記載した発明によれば、制御回路により、前記誤差出力により第一特定操作を認識し、設定モードに入る直前の前記可変利得増幅器の増幅度を前記ホールド回路のホールド値により固定してから設定モードとして動作させて前記反射物に対応して前記判定信号をスイッチ信号として出力させるようにしたので、自動的に感度調整を行うことができ、コスト削減(製造工数削減)を実現し、経時変化、使用環境、反射物の個体差などによる操作感の劣化を自動的に防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明について図面を用いて詳細に説明する。
先ず、電磁流量計などのプロセス機器等に装備されている赤外線タッチスイッチを用いる表示設定器について概要を説明する。
【0022】
この表示設定器はLCD(Liquid Crystal Display Device)等の表示器と、例えばパラメータなどを外部から設定する複数のスイッチSW1、SW2、SW3等を有している。赤外線タッチスイッチはこの表示器と組み合わせて使用される。これらのSW1、SW2、SW3が赤外線タッチスイッチに相当する。
【0023】
表示器には、表示モードと設定モードとの2種類のモードで表示される。表示モードは、電磁流量計などの表示設定器では通常は測定結果(流量値)等を表示する状態をいう。この他に警告やエラー発生などの情報を表示する場合もある。要は、ユーザーに機器の状態を知らせている状態である。
【0024】
設定モードは、赤外線タッチスイッチを使って機器の内部データをリード/ライトできるスイッチが有効な状態をいう。この設定モードでは表示器を見て内部データを確認したりデータを変更したりする。
【0025】
次に、上記赤外線タッチスイッチについて具体的に説明する。図1は本発明に係る赤外線タッチスイッチの一実施例を示す構成図である。なお、図3に示す従来の赤外線タッチスイッチと同じ機能を有する部分には同一の符号を付して適宜にその説明を省略する。
【0026】
図1において、光電流ILは固定抵抗20で電圧VL2に変換され、変換された電圧VL2は可変利得増幅器21に入力され、可変利得増幅器21は電圧VL2を利得制御してその出力端に出力電圧SOとして出力する。
【0027】
誤差増幅器22は、反転入力端(―)に入力された出力電圧SOと非反転入力端(+)に入力された基準電圧ESとを比較して、その偏差を増幅し、その出力端に誤差出力EOとして出力する。
【0028】
誤差出力EOは、切替器23のa端子に印加されると共にサンプルポールド回路24と制御回路25にも印加される。
【0029】
サンプルポールド回路24は、制御回路25からの制御信号CSで制御されてサンプルホールドしたサンプルホールド信号SHを切替器23のb端子に印加する。切替器23は制御信号CSで制御されながらa端子とb端子を切り替えて、各端子に印加されている電圧を、c端子を介して可変利得増幅器21の利得制御端子Tに印加する。
【0030】
一方、比較器26は、その非反転入力端(+)に可変利得増幅器21の出力電圧SOが印加され、反転入力端(―)には判定電圧JEが印加され、判定電圧JEに対する大小を判断してその出力端から判定信号SJとして出力する。なお、判定電圧JEは、基準電圧ESよりも少し小さな値に設定されている。
【0031】
さらに、制御回路25は、判定信号SJと誤差出力EOとが入力されると共に、さらに表示器の複数のスイッチSW1、SW2、SW3などの操作による第二特定操作信号SAも入力され、これらを処理して切替器23とサンプルポールド回路24に制御信号CSを出力すると共にスイッチ信号SSを出力する。
【0032】
次に、以上のように構成された赤外線タッチスイッチの動作について、図2に示す波形図を用いて説明する。
【0033】
図2において、実際には、光電流ILは図2(A)の波形詳細に示すように、駆動電流IFと同じように矩形波状で、0Vに対して高レベルがILH,低レベルがILLの矩形波状の電流であるが、動作の概要を分かりやすくするために点線の包絡線で示してある。
【0034】
これは、図2(C)の光電流ILに限らず、可変利得増幅器21の出力である出力電圧SO(図2(D))、誤差増幅器22の出力である誤差出力EO(図2(E))、比較器26の判定信号SJも同様である。
【0035】
このため、制御回路25が出力電圧SO、誤差出力EO、判定信号SJの信号を読み取るときは、図1には図示していないが、矩形波状の駆動電流IFに同期した信号を読み取ることになる。なお、駆動電流IFを矩形波状にしているのは、発光素子3に常時電流を流すと、寿命が不足するためである。
【0036】
電磁流量計などのプロセス機器の表示設定器は、通常は、流量出力値などを表示する表示モードを維持しており、操作者が内部データを操作するときだけ、設定スイッチが有効な設定モードとする。以下、この2つのモードをベースとして説明する。
【0037】
先ず、表示モードでの動作について説明する。制御回路25により切替器23をa端子側に設定しておく。そうすると、可変利得増幅器21の出力端の出力電圧SOは誤差増幅器22により基準電圧ESと同じになるように制御され、光電流ILに関わらず一定の値になる(図2(D))。
【0038】
そして、基準電圧ESは判定電圧JEよりも少し大きな電圧に設定されているので、表示モード(図2(F))では、比較器26の出力である判定信号SJは常にオン信号となるが、制御回路25はこのオン信号の継続を検知して無効にしてスイッチ信号SS(図2(G))を出力しないので、表示器には表示はされず、表示器には、別途、流量値などが表示される。
【0039】
次に、表示モードから設定モードへの移行について説明する。誤差増幅器22の出力である誤差出力EOは光電流ILの大きさに応じて変化する。そこで、誤差出力EOを制御回路25で常時監視し、誤差出力EOが低下したとき(図2(E))に、制御回路25は反射物10が操作パネル10に触れた(図2(B))と判断して設定モード(図2(F))に移行する。
【0040】
通常、操作者が、特定のスイッチ、例えばSW1を比較的長期間、オン状態を維持するなどの操作(第一特定操作)をすると、この期間、誤差出力EO(図2(E))が低下し続けるので、これを制御回路25は検知し、制御信号CSを切替器23に出力してc端子をb端子に切り替えて可変利得増幅器21を切替直前にサンプルホールド回路24にホールドされた誤差出力EO(図2(E))に対応する利得に固定する(図2(D))。
【0041】
次に、設定モードについて説明する。設定モード(図2(F))に移行後、誤差出力EOはサンプルホールド回路24で保持される共に、切替器23はb側に固定される。このため、可変利得増幅器21の利得は固定されて(図2(D))小さくなっているので、反射物10が操作パネル10に触れたときだけ、つまり良い操作感で、比較器26から矩形波状の判定信号SJが出力され、制御回路25はスイッチ信号SSとして出力する。
【0042】
設定モードの終了は、操作者が例えば複数のスイッチSW1とSW3を同時に押すなどの第二特定操作を実行して制御回路25に第二特定操作信号SAが入力されたことを制御回路25が認識して、制御回路25は切替器23をa端子側に切り替えて表示モードに復帰させる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施例の動作を説明するための波形図である。
【図3】従来の赤外線タッチスイッチを示す構成図である。
【図4】従来の赤外線タッチスイッチの判定電圧の設定を説明する説明図である。
【図5】従来の赤外線タッチスイッチの変動要因の例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 駆動回路
2 矩形波発生部
3 発光素子
4 受光素子
5 抵抗
6、26 比較器
7 判定電圧
9 判定回路
10 反射物
11 操作パネル
20 固定抵抗
21 可変利得増幅器
22 誤差増幅器
23 切替器
24 サンプルホールド回路
25 制御回路
26 比較器
SO 出力電圧
EO 誤差出力
SJ 判定信号
SH サンプルホールド信号
SS スイッチ信号
SA 第二操作信号
CS 制御信号
SJ 判定信号
ES 基準電圧
JE 判定電圧


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射物が操作パネルに触れることにより反射された赤外線発光素子の光を受光素子で受け、前記反射物の有無を判定する赤外線タッチスイッチにおいて、
前記受光素子で変換された電圧が入力され表示モードとして所定出力値になるように誤差増幅器の誤差出力により制御される可変利得増幅器と、
前記可変利得増幅器の出力値と判定電圧とを比較して判定信号を出力する比較器と、
前記誤差出力と前記判定信号が入力されると共に、前記誤差出力により第一特定操作を認識し前記可変利得増幅器の増幅度を前記サンプルホールド回路のホールド値により固定してから設定モードとして動作させて前記反射物に対応して前記判定信号をスイッチ信号として出力させ、第二特定操作を認識したときに前記表示モードに復帰するように制御する制御回路と、
を具備することを特徴とする赤外線タッチスイッチ。
【請求項2】
前記第一特定操作は、前記誤差出力を常時監視し前記誤差出力が所定時間低下したことにより認識する請求項1に記載の赤外線タッチスイッチ。
【請求項3】
前記第二特定操作は、操作者から入力された操作終了信号により認識する請求項1に記載の赤外線タッチスイッチ。
【請求項4】
前記誤差増幅器は、前記判定電圧とこれより若干大きく設定された基準電圧と比較して前記誤差出力を出力する請求項1に記載の赤外線タッチスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−88659(P2007−88659A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273078(P2005−273078)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】