説明

赤外線固体撮像素子

【課題】基準電圧供給線における電圧降下と行選択線における電圧降下とを一致させることができ、誤差の少ない赤外線固体撮像素子を提供する。
【解決手段】その赤外線固体撮像素子は、それぞれ少なくとも1個以上直列接続されたダイオードを有し、複数の行及び列を構成する画素803と、画素の陽極が行毎に接続される行選択線303と、画素の陰極が列毎に接続される信号線302と、画素エリアと、信号線にそれぞれ接続された第1の定電流化手段と、各列にそれぞれ対応して設けられて第1の定電流化手段と同じ電流を流す第2の定電流化手段2と、第1の定電流化手段と第2の定電流化手段の電圧差を積分して出力する積分回路7と、を含む信号処理回路509と、を備え、信号処理回路は、画素エリアの少なくとも1つの行をダミー行802として含み、ダミー行の選択線を基準電圧供給線とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入射赤外線による温度変化を2次元配列された半導体センサで検出する赤外線固体撮像素子に関し、特に、半導体センサからの電気信号を信号処理回路にて積分処理した後に出力する赤外線固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体センサからの電気信号を信号処理回路にて積分処理した後に出力する赤外線固体撮像素子が開示されている。
この特許文献1の赤外線固体撮像素子は、図9に示すように、複数個が直列接続され、赤外線吸収構造と断熱構造を備えたダイオードによって個々の画素が構成されており、その画素が2次元状に配列された画素エリアを構成している。画素の各行ごとに行選択線303が共通して接続されている。また、画素の列ごとに信号線302が共通して接続され、各信号線302の終端には定電流源18が接続されている。このような構成により、垂直走査回路4とスイッチ9により行選択線303が順番に選択され、定電流源18の両端の電圧が積分回路7で積分及び増幅され、水平走査回路8とスイッチ9によって順に出力端子10へ出力される。
【0003】
また、図9の赤外線固体撮像素子では、積分回路に差動積分回路7を用い、抵抗が行選択線303と実質同じであるバイアス線(基準電圧供給線)17が行選択線303と平行に画素エリア外に設けられており、かつ、基準電圧供給線の画素列毎に定電流源18と実質的に同じ電流を流す定電流源2を設けている。これにより、差動積分回路には、定電流源2と18の両端電圧の差が入力される。
【0004】
そして、この赤外線固体撮像素子では、定電流源2と定電流源18の流す電流は同一であり、基準電圧供給線17と行選択線303の抵抗は実質的に同一であるので、基準電圧供給線17における電圧降下は行選択線303における電圧降下と同じになる。したがって、定電流源2と定電流源18の両端電圧の差を差動積分回路7で一定時間積分して出力することにより、行選択線303の抵抗による電圧降下分布を差動積分回路で減算し、外部に出力しないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−222555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の赤外線固体撮像素子では、基準電圧供給線17における電圧降下は行選択線303における電圧降下とを十分一致させることが困難であり、電圧降下の差に起因した誤差が生じていた。
すなわち、従来の赤外線固体撮像素子では、基準電圧供給線17と行選択線303との配線構造が異なっているので、基準電圧供給線17と行選択線303の抵抗を精度よく一致させることが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、基準電圧供給線17における電圧降下と行選択線303における電圧降下とを十分一致させることができ、測定誤差の少ない赤外線固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、本発明に係る赤外線固体撮像素子は、それぞれ少なくとも1個以上直列接続されたダイオードを有してなり、複数の行及び列を構成するように配列された複数の画素と、前記画素の陽極が行毎に共通接続される複数の行選択線と、前記画素の陰極が列毎に共通接続される複数の信号線と、を含む画素エリアと、
前記信号線にそれぞれ接続された第1の定電流化手段と、前記各列にそれぞれ対応して設けられて前記第1の定電流化手段と実質的に同一の電流を流す第2の定電流化手段と、 前記第1の定電流化手段の一端と前記第2の定電流化手段の一端との電圧差を一定時間積分して出力する積分回路と、を含む信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路は、前記画素エリアの少なくとも1つの行をダミー行として含み、そのダミー行の選択線を基準電圧供給線とし、該ダミー行において各列に対応して設けられた前記第2の定電流化手段の一端が当該列の画素に接続される選択線に接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成された本発明に係る赤外線固体撮像素子は、前記信号処理回路が前記画素エリアの少なくとも1つの行をダミー行として含み、そのダミー行の選択線を基準電圧供給線とし、該ダミー行において各列に対応して設けられた前記第2の定電流化手段の一端が当該列の画素に接続される選択線に接続されている。
したがって、本発明によれば、基準電圧供給線における電圧降下と行選択線における電圧降下とを十分一致させることができ、測定誤差の少ない赤外線固体撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施の形態1の赤外線固体撮像装置300を模式的に示した斜視図である。
【図2】実施の形態1の赤外線固体撮像装置300の温度検出器(画素)803の平面図である。
【図3】図2のA−A’線について断面図である。
【図4A】実施の形態1の赤外線固体撮像装置300の回路図である。
【図4B】図4Aにおける積分回路7の一構成例を示す回路図である。
【図4C】図4Aにおける積分回路7の他の構成例を示す回路図である。
【図5A】実施の形態1の赤外線固体撮像装置300の製造工程を説明するための第1断面図である。
【図5B】実施の形態1の赤外線固体撮像装置300の製造工程を説明するための第2断面図である。
【図5C】実施の形態1の赤外線固体撮像装置300の製造工程を説明するための第3断面図である。
【図5D】実施の形態1の赤外線固体撮像装置300の製造工程を説明するための第4断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態2の赤外線固体撮像装置の回路図である。
【図7】本発明に係る実施の形態3の赤外線固体撮像装置の回路図である。
【図8】本発明に係る実施の形態4の赤外線固体撮像装置の回路図である。
【図9】従来の赤外線固体撮像装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1の赤外線固体撮像装置300を模式的に示した斜視図である。また、図2は、実施の形態1の赤外線固体撮像装置300の温度検出器(画素)803を示す平面図であり、図3は図2のA−A’線について断面図である。さらに、図4Aは、実施の形態1の赤外線固体撮像装置300の回路図である。
【0012】
この実施の形態1の赤外線固体撮像装置300は、信号処理回路509がダミー検出器アレイ802を少なくとも1つ含み、その行選択線を用いて基準電圧供給線309を構成している点で図9に示す従来の赤外線固体撮像装置とは異なっている。この他は、従来の赤外線固体撮像装置と同様に構成されている。尚、実施の形態の図面において、従来例と同様のものには同様の符号を付して示しており、特に説明を加えない要素については従来例と同様である。
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態1の赤外線固体撮像装置300について詳細に説明する。
まず、本実施の形態1の赤外線固体撮像装置300では、基板301上に、例えば、少なくとも1個以上直列接続されたダイオードを有してなる温度検出器(画素)803が複数の行及び列を構成するように配列された画素エリアが設けられている(図1)。この画素エリアにはさらに、従来例と同様、温度検出器803の陽極が行毎に共通接続される複数の行選択線303と、温度検出器803の陰極が列毎に共通接続される複数の信号線302とが設けられている。
そして、本実施の形態1の赤外線固体撮像装置300では、画素エリアの少なくとも1つの行がダミー検出器アレイ802とされ、そのダミー検出器アレイ802の行選択線用に形成された配線を用いて信号処理回路509の基準電圧供給線309を構成している。
【0014】
このように、本実施の形態1の赤外線固体撮像装置300では、画素エリアが、
(1)実際に温度検出に寄与する複数の温度検出器803がマトリクス(2次元)配列されてなる検出器アレイ801と、
(2)検出器アレイ801の温度検出器803と同様の構成を有するダミー温度検出器804を有しているが、そのダミー温度検出器804を温度検出には利用していないダミー検出器アレイ802とを有している。
【0015】
なお、図1の赤外線固体撮像装置300では、図面を簡略にするために、検出器アレイ801が2画素×3画素、ダミー検出器アレイ802が1画素×3画素の場合を示したが、これ以外のアレイサイズも可能であることは言うまでもない。
【0016】
<温度検出器803>
図2は、本実施の形態における温度検出器803を拡大した平面図である。ダミー温度検出器804の平面図も図2と同じか、もしくは、同様である。例えば、ダミー温度検出器804では、図2の配線層304が無い、または、図2の行選択線303だけを残す、などといった構成が可能である。
【0017】
図3は、図2におけるA−A‘方向の断面図である。温度検出器803は、支持脚505と、支持脚505によって凹部506上で中空に保持した温度検知部504を含む。温度検知部504には配線層304とPN接合ダイオード200が設置されている。支持脚505にも配線層304が設けられ、信号処理回路509とPN接合ダイオード200を電気的に接続している。このように、基板301と温度検知部504は支持脚505によって接続することにより、温度検知部504が基板から熱的に分離された断熱構造を有しているので、温度検出感度を高くできる。したがって、支持脚505の熱コンダクタンスが小さいほど温度検知部504の温度変化を大きくでき、温度検出器803の温度検出感度を高くできる。
【0018】
<信号処理回路509>
信号処理回路509は、各列に対応して設けられた積分回路7を備える。その積分回路7の一方の入力端子にはそれぞれ対応する列の信号線302が接続される。また、その信号線302には一端が接地された定電流源18がそれぞれ接続され、積分回路7の一方の入力端子には定電流源18の他端の電圧が入力される。
【0019】
また、積分回路7の他方の入力端子には、一端が接地された定電流源2がそれぞれ接続される。この定電流源2は、定電流源18と実質的に同一の電流を流すように構成されており、積分回路7の他方の入力端子に接続される他端には基準電圧供給線309がそれぞれ接続される。
【0020】
以上のように構成された信号処理回路509において、積分回路7は、定電流源2の他端と定電流源18の他端との電圧差を一定時間積分して出力する。すなわち、信号処理回路509において、垂直走査回路4とスイッチ9により駆動線303が順番に選択され、定電流源18の両端の電圧が積分回路7で積分及び増幅され、水平走査回路8とスイッチ9によって順に出力端子10へ出力される。
【0021】
(積分回路7)
〔差動積分回路〕
次に、積分回路7の具体的な構成例について説明する。
積分回路7の構成例として差動積分回路の2つの例を図4Bと図4Cに示す。図4Bにおいて、24は差動電圧電流変換アンプで入力信号の差を電流に変換し、周期的にトランジスタ26でリセットされる積分容量25に積分するものである。図4Cは、演算増幅器31と32を用いた例で回路ユニット29は差動増幅回路で、回路ユニット30は積分回路である。いずれの場合も、積分後の出力はS/H回路(サンプルホールド回路)27でサンプリングされバッファ28を介して出力される。
【0022】
図4Bは、本件発明者が先に特許出願(特願2000−386974)したもので、後述の演算増幅器を用いる場合にくらべ構成が簡略になる効果がある。以下、図4Bに示す差動積分回路7について詳細に説明する。
【0023】
図4Bに示す差動積分回路は、定電流源2の両端電圧と定電流源18の両端電圧を入力側に接続した差動電圧電流変換アンプ24と、差動電圧電流変換アンプ24の出力側に接続された積分容量25と、積分容量25を周期的に電圧Vrefにリセットするように接続されたリセットトランジスタ26を備える。差動電圧電流変換アンプ24は、負帰還なしの状態で接続されており、その出力インピーダンスと積分容量25のキャパシタンスCiとの積(=時定数)が積分時間Tの5倍以上となるように設定されている。
【0024】
積分容量25の入力端には、サンプルホールド用トランジスタとサンプルホールド容量から成るサンプルホールド回路27が接続されている。積分後の出力が、サンプルホールド回路27でサンプリングされ、バッファ28を介して出力される。
【0025】
図4Bの差動積分回路7では、負帰還をしない状態の差動電圧電流変換アンプ24を用いて積分回路を構成しているため、図4Cで示すような演算増幅器を用いた積分回路に比して回路構成を大巾に簡略化することができる。図4Bに示す差動電圧電流変換アンプ24が積分動作をすることについて説明する。一般の帰還を施していない電圧増幅器の入出力応答特性Avは、電圧増幅器の相互コンダクタンスをgm、出力インピーダンスをRout、積分時間をTとして、
Av =gm Rout{ 1−exp(−Ti / Ta ) } (1)
Ta= Rout Ci (2)
で表される。ここで、Tは時定数である。
a≫Ti (3)
であれば、
Av = gm Rout Ti / Ta= gm Ti / Ci (4)
となり、積分器の応答特性となる。
【0026】
(3)式は、出力インピーダンスRoutと積分容量の積で表される時定数が積分時間に比べ充分長いことを示している。例えば、時定数Tを積分時間Tの少なくとも5倍以上とすれば、積分器の応答特性からのずれを10%以内とすることができる。時定数Tを大きくするためには、出力インピーダンスRoutが非常に大きな電圧増幅器を使えばよい。一般に、電圧利得gm・Routの大きな負帰還を用いない単一のアンプは、出力インピーダンスRoutが大きくなる。例えば、図4Cに示す演算増幅器のうちの差動アンプ31のみを取出して、図4Bに示すように負帰還や入力抵抗無しで接続することにより、差動電圧電流変換アンプ24を構成することができる。したがって、図4Bの差動積分回路によれば、図4Cに示す積分回路よりも遥かに簡単な回路構成によって、積分回路を構成することができる。
【0027】
以上のように構成された実施の形態1の赤外線固体撮像装置300において、撮像対象となる被写体が発した赤外線が、検出器アレイ801内の温度検出器803に入射すると、温度検知部504の温度が上昇する。このとき、温度変化に応じてPN接合ダイオード200の電気特性が変化する。信号処理回路509で、温度検出器ごとに電気特性の変化を読み取って外部に出力する。具体的には、温度検出器803の各行に共通して接続された垂直走査回路4とスイッチ9により駆動線303が順番に選択され、定電流源18の両端の電圧が積分回路7で積分及び増幅され、水平走査回路8とスイッチ9によって順に素子出力端子10へ出力される。
【0028】
以上のように構成された実施の形態1の赤外線固体撮像装置300は、検出器アレイ801の行選択線303とダミー検出器アレイ802の基準電圧供給線309の構造を同じにしているので、行選択線303の抵抗値と基準電圧供給線309の抵抗値とを容易に等しくすることができる。また、積分回路7の2つの入力端子には定電流源2および18が接続されているが、該定電流源2および18に加えて、積分回路7の一方の入力端子にはPN接合ダイオード200を介して行選択線303が接続されており、もう一方の入力端子には基準電圧供給線309が接続されている。よって、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布を同じにできる。
【0029】
さらに、実施の形態1の赤外線固体撮像装置300では、ダミー温度検出器804中のPN接合ダイオード200が、基準電圧供給線309、または、積分回路7の入力端子のうち、少なくとも一方から電気的に切断されていることが好ましい。この構造は、例えば、図2および図3において、配線層304を配置しないことによって実現できる。このようにすると、環境温度が変化したとき、温度検出器803とダミー温度検出器804の温度特性が異なったとしても、基準電圧供給線309の電圧分布が、PN接合ダイオード200の電気特性の影響を受けないので、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布を同じにできる。
【0030】
以上のように、本実施の形態1の赤外線固体撮像装置300では、信号処理回路509が、ダミー温度検出器804を複数個配列したダミー検出器アレイ802を含み、該ダミー検出器アレイ802の行選択線303を用いて基準電圧供給線309が構成されている。さらに、該ダミー温度検出器804中のPN接合ダイオード200が、基準電圧供給線309、または、積分回路7の入力端子のうち、少なくとも一方から電気的に切断されている。そのため、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布は同じにできる。その結果、バイアス不良やシェーディングを抑制した赤外線固体撮像装置を提供できる。
【0031】
次に、図5A〜図5Dを参照しながら、本実施の形態1における赤外線固体撮像装置300の製造方法を説明する。図5A〜図5Dの図には、温度検出器803の断面構造を示している。
【0032】
本製造方法では、まず、基板301としてシリコン支持基板400を用いて、そのシリコン支持基板400上に、シリコン酸化膜層401、シリコン層402を順次積層した、いわゆるSOI基板を準備する(図5A)。
【0033】
次に、LOCOS分離法もしくはトレンチ分離法によって、所定の位置に分離酸化膜305を形成する。次に、シリコン支持基板400にエッチング停止層307を形成する(図5B)。
【0034】
次に、図1で示した信号処理回路509(図5には図示せず)および検出器アレイ801を形成する領域の、シリコン支持基板400もしくはシリコン層402に、例えばPN接合ダイオードから成るPN接合ダイオード200、トランジスタ、電気容量を形成する。
【0035】
次に、絶縁膜306を堆積して配線層304を形成した後、再度、絶縁膜306を堆積する(図5C)。次に、絶縁膜306の所定の位置にエッチング孔508を開口し、絶縁膜306をエッチングする。最後に、エッチング孔508から、例えばフッ化キセノンなどのエッチャントを導入して、シリコン支持基板400の内部に凹部506を形成する(図5D)。このとき、エッチング停止層307はフッ化キセノンなどのエッチャントでは除去できないので、該エッチング停止層307が凹部506の側面となる。凹部506の下面の位置は、エッチング時間により調整する。
【0036】
このようにして、絶縁膜306および配線層304から成る支持脚505によって支えられて、温度検知部504および赤外線吸収傘が中空に浮いた、温度検出器803を搭載した赤外線固体撮像装置300が完成する。
【0037】
実施の形態2.
本発明に係る実施の形態2の赤外線固体撮像装置は、図6に示すように、実施の形態1の赤外線固体撮像装置において、ダミー検出器アレイの構成が異なっている他は実施の形態1の赤外線固体撮像装置と同様に構成される。
すなわち、本実施の形態2の赤外線固体撮像装置では、ダミー検出器アレイ802のダミー温度検出器804においてそれぞれ、温度を検知するPN接合ダイオード200を除いて構成している。
【0038】
具体的には、本実施の形態2の赤外線固体撮像装置では、ダミー温度検出器804において、温度検知部504および支持脚505を除いて、行選択線303のみを1行複数列配列している。そして、そのダミー検出器アレイ802の行選択線303が、基準電圧供給線309を構成している。
【0039】
以上のように構成された実施の形態2の赤外線固体撮像装置では、検出器アレイ801の行選択線303とダミー検出器アレイ802の基準電圧供給線309の構造は同じであり、かつ抵抗値もほぼ等しくできる。また、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布も同じにできる。
【0040】
さらに、図6に示した実施の形態2の赤外線固体撮像装置では、実施の形態1と異なり、ダミー温度検出器804がPN接合ダイオード200を含んでいない。
そのため、環境温度が変化したとき、温度検出器803とダミー温度検出器804の温度特性が異なったとしても、基準電圧供給線309の電圧分布が、PN接合ダイオード200の電気特性の影響を受けないので、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布を同じにできる。また、実施の形態1よりも回路全体の規模を縮小できる。
【0041】
以上のように、本実施の形態2の赤外線固体撮像装置では、信号処理回路509が、ダミー温度検出器804の温度検知部504および支持脚505を除いて、行選択線303のみを複数個配列した、ダミー検出器アレイ802を含み、該ダミー検出器アレイ802の行選択線303が、基準電圧供給線309を構成している。さらに、該ダミー温度検出器804がPN接合ダイオード200を含まない。そのため、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布を同じにできる。その結果、バイアス不良やシェーディングを抑制した赤外線固体撮像装置を提供できる。
尚、実施の形態における赤外線固体撮像装置の製造方法は、図5と同じである。
【0042】
実施の形態3.
本発明に係る実施の形態3の赤外線固体撮像装置は、図7に示すように、実施の形態1及び2の赤外線固体撮像装置と比較して、ダミー検出器アレイの構成が異なっている他は実施の形態1及び2の赤外線固体撮像装置と同様に構成されている。
すなわち、本実施の形態3の赤外線固体撮像装置では、ダミー検出器アレイ802が複数の行によって構成されており、その最も外側の行を除く内側の一行の行選択線を基準電圧供給線309としている。
【0043】
また、実施の形態3の赤外線固体撮像装置では、ダミー検出器アレイ802を構成するダミー温度検出器804はそれぞれ温度検知部504および支持脚505を含むように作製されている。
【0044】
以上のように構成された実施の形態3の赤外線固体撮像装置では、検出器アレイ801の行選択線303とダミー検出器アレイ802の基準電圧供給線309の構造を実施の形態1及び2に比較してより高い精度で一致させることができ、行選択線303の抵抗値と基準電圧供給線309の抵抗値とをより高い精度でかつ容易に等しくすることができる。
したがって、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布を高い精度で一致させることが可能になる。
【0045】
すなわち、検出器アレイの中央部と外周部では、製造過程におけるエッチング時にパターンの疎密に起因した配線構造のバラツキが発生することがある。したがって、実施の形態1および2のようにダミー検出器アレイ802を形成すると、検出器アレイ801の行選択線303は中央部、ダミー検出器アレイ802の基準電圧供給線309は外周部に相当し、配線構造ひいては抵抗値に若干の差異が生じることがある。
【0046】
これに対して、本実施の形態3の赤外線固体撮像装置では、ダミー検出器アレイ802が3行複数列配列であるため、検出器アレイ801の行選択線303、および、ダミー検出器アレイ802の基準電圧供給線309ともに中央部に相当し、製造上の寸法の差異を小さくできる。そのため、検出器アレイ801の行選択線303とダミー検出器アレイ802の基準電圧供給線309の構造は、実施の形態1および2よりも合同に近づけることができ、配線構造ひいては抵抗値の差異を小さくできる。
【0047】
実施の形態4.
本発明に係る実施の形態4の赤外線固体撮像装置は、図8に示すように、実施の形態1及び2の赤外線固体撮像装置と比較して、ダミー検出器アレイの構成が異なっている他は実施の形態1及び2の赤外線固体撮像装置と同様に構成されている。
すなわち、本実施の形態4の赤外線固体撮像装置では、ダミー検出器アレイ802が複数の行によって構成されており、その最も外側の行を除く内側の一行の行選択線を基準電圧供給線309としている。
【0048】
また、実施の形態4の赤外線固体撮像装置では、ダミー検出器アレイ802を構成するダミー温度検出器804はそれぞれ温度検知部504および支持脚505を除いて作製されている。そのため、実施の形態3よりも回路全体の規模を縮小できる。
【0049】
以上のように構成された実施の形態4の赤外線固体撮像装置では、実施の形態3と同様、検出器アレイ801の行選択線303とダミー検出器アレイ802の基準電圧供給線309の構造を実施の形態1及び2に比較してより高い精度で一致させることができ、行選択線303の抵抗値と基準電圧供給線309の抵抗値とをより高い精度でかつ容易に等しくすることができる。
したがって、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布を高い精度で一致させることが可能になる。
【0050】
以上の実施の形態3及び4では、ダミー温度検出器804を3行複数列配列したダミー検出器アレイ802の場合を示したが、3行以上であってもよく、その場合、検出器アレイ801の行選択線303とダミー検出器アレイ802の基準電圧供給線309の構造がより合同に近づき、抵抗値がより等しい値に近づけることが可能になる。すなわち、行選択線303と基準電圧供給線309の電圧分布はより一層高い精度で同じにできる。
【符号の説明】
【0051】
2,18 定電流源、4 垂直走査回路、7 積分回路、8 水平走査回路、9 スイッチ、10 素子出力端子、24 差動電圧電流変換アンプ、26 トランジスタ、25 積分容量、27 サンプルホールド(S/H)回路、28 バッファ、29 回路ユニット、30 回路ユニット、31 差動アンプ、200 PN接合ダイオード、300 赤外線固体撮像装置、301 基板、302 信号線、303 行選択線、304 配線層、305 分離酸化膜、306 絶縁膜、307 エッチング停止層、309 基準電圧供給線、400 シリコン支持基板、401 シリコン酸化膜層、
402 シリコン層、504 温度検知部、505 支持脚、506 凹部、509 信号処理回路、801 検出器アレイ、802 ダミー検出器アレイ、803 温度検出器、804 ダミー温度検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ少なくとも1個以上直列接続されたダイオードを有してなり、複数の行及び列を構成するように配列された複数の画素と、前記画素の陽極が行毎に共通接続される複数の行選択線と、前記画素の陰極が列毎に共通接続される複数の信号線と、
を含む画素エリアと、
前記信号線にそれぞれ接続された第1の定電流化手段と、前記各列にそれぞれ対応して設けられて前記第1の定電流化手段と実質的に同一の電流を流す第2の定電流化手段と、 前記第1の定電流化手段の一端と前記第2の定電流化手段の一端との電圧差を一定時間積分して出力する積分回路と、
を含む信号処理回路と、
を備え、
前記信号処理回路は、前記画素エリアの少なくとも1つの行をダミー行として含み、そのダミー行の選択線を基準電圧供給線とし、該ダミー行において各列に対応して設けられた前記第2の定電流化手段の一端が当該列の画素に接続される選択線に接続されたことを特徴とする赤外線固体撮像素子。
【請求項2】
前記ダミー行において、画素が選択線又は信号線から電気的に分離されている請求項1記載の赤外線固体撮像装置。
【請求項3】
前記ダミー行において、画素を除いて構成した請求項1記載の赤外線固体撮像装置。
【請求項4】
前記ダミー行を複数含み、該複数のダミー行のうちの内側の行の行選択線を前記基準電圧供給線とした請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の赤外線固体撮像装置。
【請求項5】
前記積分回路が、前記第1の定電流化手段と前記第2の定電流化手段の両端電圧の差を差動電圧電流変換アンプによって電流に変換し、その電流を、前記差動電圧電流変換アンプに接続されて周期的に一定電圧にリセットされる容量に積分することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の赤外線固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−245592(P2010−245592A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88853(P2009−88853)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】