説明

赤方偏移したストローク線を用いる、試料の蛍光顕微鏡測定法

試料(2)を蛍光顕微鏡法で測定するために、試料(2)の蛍光色素が、所定の波長の光(8)を用いて、ある状態から別の状態へ移行され、その際、光ファイバ(13)の選定、および、この光ファイバ(13)へ入射される前記別の波長を有する光(10)の強度の選定が行われる際、前記入射された波長を有する線の他に少なくとも1つの赤方偏移したストークス線(19から28)を前記光スペクトル(17)が有することができる程度に前記光ファイバ(13)内でラマン散乱が誘導され、前記ストークス線の強度半値幅が、光スペクトル(17)の、青色方向に隣接する線(18から28)までの間隔の半分よりも小さくなるように前記選定が行われて、このような強度でこの種の光ファイバに別の波長の光が入射され、かつ、1つの波長が、赤方偏移したストークス線(19から28)の1つから選定され、さらに、試料(2)からの蛍光(6)が、空間分解して測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念に記載の特徴を有する、試料の蛍光顕微鏡測定方法、および、従属請求項16の上位概念に記載の特徴を有する蛍光顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光顕微鏡法では、相異なる蛍光色素を励起して蛍光させるために、または、相異なる蛍光色素を意図的に再び脱励起するために(例えばSTED蛍光顕微鏡法で)、または、相異なる蛍光色素を意図的に暗状態へ移行させるために(例えばGSD蛍光顕微鏡法で)、あるいは、互いに重なり合っているが、相異なった三次元領域において、上記蛍光色素を一方で励起して、もう一方で誘導放出によって再び脱励起させるためにまたは暗状態へ移動させるために、それぞれ異なる波長を有する光が必要とされる。これらの要件を満たすために、複数の異なる単色光源を用いることで、この相異なる波長を有する光を得ることができる。これに適した単色光源は、高強度の光を必要とするので、通例、高品質のレーザーあり、従って、然るべき構成を有する蛍光顕微鏡は、非常に高価である。また、波長によっては、十分な品質の適切なレーザーを見出すことが基本的に困難である。
【0003】
とりわけ特許文献1によって、蛍光顕微鏡法において光源としてガスレーザーを用いることが公知であり、このガスレーザーは、利用可能な複数の輝線を有するか、あるいは複数の輝線に調整可能である。しかし、ガスレーザーは、調達費用がかさみ、運用の点でも高コストである。さらに、ガスレーザーの場合に利用可能な輝線は、場合によっては、小さなスペクトル領域しかカバーしておらず、しかも、良好な作用断面を有する潜在的な蛍光色素の、このスペクトル領域に納まる全ての吸収線が認識できる場合に限られている。
【0004】
特許文献2によって公知である蛍光顕微鏡の場合、試料の蛍光色素をある状態から別の状態へ移行させるために所定の波長の光が準備される。その際、800nmの波長の場合に放射を行うレーザー、特にモード結合チタンサファイアレーザーによって、別の波長の光が光学素子に入射され、この光学素子が、ある波長を有するこの入射光の強度を、この入射光よりも小さな波長と大きな波長とを有する、スーパーコンティニュームと呼ばれる連続スペクトルに分布させる。その際、この光学素子としては、例えば、長さ30mmから90mmにわたって断面が非常に先細となった全長1mの光ファイバ(いわゆる「テーパファイバ」)、あるいは、フォトニック結晶ファイバとも呼ばれる、フォトニックバンドギャップを有する微細構造光ファイバが可能である。フォトニック結晶ファイバの場合、フォトニックバンドギャップは、直径がわずか約2μmの非常に小さなファイバコアの周囲に、ハニカム状の微細構造によって生成される。フォトニック結晶ファイバ(PCF)の典型的な長さは38cmである。確かに、スーパーコンティニュームの形の分光分布によって、ある状態から別の状態へ蛍光色素を移行させるための、それぞれ任意の波長の光を、スーパーコンティニュームから選定することが可能となる。しかし、スーパーコンティニュームのそれぞれ個々の波長において得られる光出力は、励起するレーザの出力に比べて極めて小さい。その上、少なくともほぼ一様な強度分布、特に時間的に安定した強度分布を有するスーパーコンティニュームを実現するには、かなり大きなコストが必要である。例えば、然るべき蛍光顕微鏡の開発のために、この概念の特許出願から商業生産に至るまで5年以上の歳月が費やされている。しかも、このような蛍光顕微鏡は高価であって、その理由は、必要な出力を有するチタンサファイアレーザーと、当該商品に用いられるPCFとにある。
【0005】
特許文献3によって、STED顕微鏡法を含む蛍光顕微鏡法のための光源が公知であり、この光源の場合、フォトニックファイバまたは光パラメトリック発振器(OPO)を用いて波長を調整することができる。OPOでは、所望の波長は、非線形光学的な3波周波数変換プロセスによって発生され、このプロセスにおいて、ポンプ波の入射周波数が2つの周波数(シグナル波およびアイドラー波)に分割される。
【0006】
特許文献4によって、標準シングルモードファイバに基づいたラマン増幅器構成が公知であり、この構成では、高出力の光ポンプ信号の誘導ラマン散乱によってストークス波が生成され、これにより、入って来る光信号を増幅することができる。
【0007】
特許文献5によって開示されている装置では、入射する光が、分散効果および偏光効果によってスペクトル分割される。この装置は、STED顕微鏡法で用いるための光源としても提供され、この場合、入射するレーザービームから、試料の当該の蛍光が有する波長に精密に一致するような波長の光が分離される。従って、この光は、誘導放出によって脱励起するのに特に適しており、一方、レーザービームの残光は励起光として用いられる。
【0008】
特許文献6によって、所望の波長範囲の光を生成するための装置が公知であり、この装置によって、STED顕微鏡法の場合よりもさらに小さな領域において試料を励起できるようにすることが提案されている。この場合、装置の光放射は、金属層の表面プラズモンの光励起に基づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005020003号明細書
【特許文献2】米国特許第6710918号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10347712号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10012881号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1662296号明細書
【特許文献6】国際公開第03/016781号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Agrawal, Ch. 8: Stimulated Raman Scattering (Agrawal, Govind P., Non linear Fiber Optics, 2. ed., San Diego, Calif., 1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、独立請求項1の上位概念に記載の特徴を有する、試料の蛍光顕微鏡測定方法、および、従属請求項16の上位概念に記載の特徴を有する蛍光顕微鏡を提示することであり、これらによって、大きな経費およびコストを要することなく、しかも、安定性の問題を生じることなく、相異なる波長を有する光を利用可能にして、相異なる蛍光色素をある状態から別の状態へ移行できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、本発明において、独立請求項1の上位概念に記載の特徴を有する、試料の蛍光顕微鏡測定方法、および、従属請求項16の上位概念に記載の特徴を有する蛍光顕微鏡によって解決される。従属請求項2から15は、この新しい方法の好ましい実施形態に関し、また、従属請求項17から30は、この新しい蛍光顕微鏡に関する。
【発明の効果】
【0013】
試料を蛍光顕微鏡で測定するこの新しい方法の場合、光ファイバの選定および光ファイバへ入射される光の強度の選定は、次のように行われる。すなわち、入射された波長の線の他に少なくとも1つの赤方偏移したストークス線を光スペクトルが有することができる程度に光ファイバ内でラマン散乱が誘導され、このストークス線の強度半値幅が、光スペクトルの、青色方向に隣接する線までの間隔の半分よりも小さくなるように、光ファイバの選定および入射光強度の選定が行われる。さらに、蛍光色素を移行させるための所定の波長は、赤方偏移したストークス線の1つから選定される。
【0014】
この新しい方法の場合、光ファイバ内で誘導ラマン散乱の効果が利用され、この効果によって、入射光の強度を光ファイバの長さに合わせて調整した状態で、入射光の線の他に赤方偏移したストークス線が形成される。少なくとも、この新しい方法ではこのようなストークス線が生成され、その際、ストークス線の数は、入射光の強度が増大するにつれて、かつ、光ファイバの長さが増大するにつれて増える。最大波長を有するストークス線、すなわち赤方偏移が最大であるストークス線は、形成された際の尖鋭度は低下するが、赤方偏移が最大であるストークス線でさえ半値幅は小さく、その結果、入射光強度のパーセンテージが高い範囲は、数ナノメートルという小さな波長範囲にとどまる。
【0015】
赤方偏移が最大であるこのストークス線と入射光の線との間に位置するその他のストークス線は、より先鋭度が高い。これらの線のいずれもが、半値幅に関する上記基準を満たし、数ナノメートルの帯域幅にわたって、入射光の強度の数パーセントが利用可能である。その際、赤方偏移したストークス線の相互の間隔、あるいは、入射光の線との間隔は、入射光の波長が約500nmである場合、10nm〜20nmであり、通例は12nm〜15nmである。厳密な値は、光ファイバの材料および構造ならびに入射光の波長によって決まる。このように、ストークス線は、非常に密に相互に並んで位置しているので、入射光の波長と赤方偏移が最大であるストークス線の波長との間に当該の吸収線を有する各蛍光色素を、ストークス線の1本または複数本を用いて操作することが可能である。このために、小さな波長範囲にわたって、ストークス線の半値幅内において、すなわち、弁別が良好に可能な状態において、入射光の強度の大部分が安定的に利用可能である。その際、光スペクトルにおけるストークス線の位置とそれの相対強度比とが安定しており、しかも、その際、特別な措置を講じる必要がない。また、この新しい方法の利点は、光ファイバから出射する光スペクトルに複数のストークス線が存在することで初めて得られるわけではない。入射光の線の他にただ1つのストークス線しか存在しない場合であっても、出射光スペクトルからの光を利用できる可能性は倍増する。
【0016】
誘導ラマン散乱を用いてシングルモードファイバにおいて赤方偏移したストークス線を規則的な間隔で生成できることは、基本的に公知である。誘導ラマン散乱の効果についての概要は、例えば非特許文献1に見られる。この効果は数十年前から知られているにもかかわらず、これまで、蛍光顕微鏡法の分野では用いられてこなかった。その代わりに、冒頭で述べたように、大きなコストを費やして蛍光顕微鏡が開発され、これらの蛍光顕微鏡で、スーパーコンティニュームを有する光スペクトルが生成されている。しかし、このような従来技術に比して、この新しい方法は、各ストークス線の波長において、はるかに大きい光強度を実現できることで、著しい利点を有している。各ストークス線の間あるいは第1のストークス線と入射光の線との間の波長を有する光が存在しないと思われる場合であっても、従来技術以上に大きな影響を及ぼすわけではない。なぜなら、これらの線は、互いに十分に密に位置しているからである。更なる利点として、ストークス線の位置の安定性と、ストークス線の相対強度の安定性とが挙げられる。従って、これまでを振り返ってみると、開発現場において、誘導ラマン散乱の公知の効果が、蛍光顕微鏡法における複数の波長を有する光源のためのベースとしてなぜ全く考慮されてこなかったのか不思議である。
【0017】
この新しい方法の場合、光ファイバも、高コストである微細構造のファイバ、あるいは局所的に著しく先細になったファイバである必要はない。むしろ、少なくともほぼ一定の直径を有する従来のシングルモードファイバ、あるいは少なくとも明確で局所的なテーパ部分を有さず、しかも最小直径のファイバコアの周囲に微細構造を持たないシングルモードファイバの方が好ましい。その際、この新しい方法で用いられるシングルモードファイバは比較的長い。このことが特に当てはまるのは、複数の、あるいは多数の赤方偏移したストークス線を生成することで、より大きなスペクトル領域にわたる光を、蛍光色素をある状態から別の状態に移行させるために利用しようとする場合である。このシングルモードファイバは、青色側において入射光の波長から遠く離れていない位置、例えば70nm未満の位置にあるカットオフ波長を有することができる。
【0018】
具体的には、この新しい方法の場合、従来のシングルモードファイバの最小長さは9mである。しかし、複数の赤方偏移したストークス線を得るためには、最小長さが19mであることが好ましい。利用可能な赤方偏移したストークス線の数を10本程度にしようとする場合、シングルモードファイバの有効な長さは、約30mまたはそれ以上である。赤方偏移したストークス線の数が10本である場合、シングルモードファイバの出力部において、ストーク線以外の線として入射光の波長も含む光スペクトル全体によって、約150nmの波長範囲がカバーされる。
【0019】
しかし、この新しい方法において光ファイバが微細構造ファイバである場合、その長さは、できる限り短く保つべきである。なぜなら、この種の光ファイバは、従来のシングルモードファイバとは異なり、長さによる減衰が非常に大きいからである。
【0020】
一方、この新しい方法において光ファイバが微細構造ファイバである場合、このファイバは、中空コアにガスが充填されていて、中高コア内のガスあるいはガスの組成の選択によって、赤方偏移すなわちストークス線の間隔を操作できるようなファイバが好ましい。
【0021】
中空コアにガスが充填された微細構造ファイバの大きな減衰を制限できるように、このファイバは、ただ1つのストークス線を生成するために用いることができる。この場合は、比較的わずかな長さで十分であるからである。微細構造ファイバから出射する、2つの線から成る光スペクトルは、それに続いて、従来のシングルモードファイバに入射せることができ、これにより、これらの線のいずれについても、付加的な赤方偏移したストークス線を形成することが可能となる。
【0022】
光ファイバに入射される、別の波長の光が有する強度は、ピーク出力が少なくとも50ワットであるべきであり、この値は、1つのストークス線を形成するには十分であり得る。複数の、または多数のストークス線を生成するためには、この強度のピーク出力は、500ワット、好ましくは少なくとも1000ワットに達するべきである。また、所定の光ファイバにおいて所定の数のストークス線を生成するために必要なピーク出力の値は、光ファイバの直径にも依存する。この直径が、ピーク出力と共に、光ファイバにおける入射光の強度を決定する。
【0023】
特に好都合な状況は、別の波長の光が、持続時間が0.5nsから5nsのパルスで光ファイバに入射される場合である。パルスがそれ以上に長い場合、光ファイバにおいて誘導ブリルアン散乱が優勢になるという危険性がある。パルスがより短い場合も、誘導ラマン散乱による安定したストークス線の形成効果が低減する。また、入射光のパルス持続時間は、この新しい方法の場合、シングルモードファイバから出射する光のパルス持続時間にほぼ等しい。しばしばあるように、蛍光顕微鏡法において蛍光色素を2つの状態間を飽和するまで移行させようとする場合、持続時間が0.5nsから5nsであるパルス、特に1nsから3nsであるパルスが、このような移行のために特に重要である。
【0024】
既に言及したように、複数または可能な限り多くの赤方偏移したストークス線を有する光スペクトルが望ましいことがある。具体的には、新しい方法の場合、光スペクトルは少なくとも5本、好ましくは少なくとも7本、最も好ましくは少なくとも10本の赤方偏移したストークス線を有することができる。赤方偏移したストークス線の数がそれ以上である場合、これらのストークス線の各々に対して、入射光の強度のうちの数パーセントが分配される。
【0025】
この新しい方法の場合、ストークス線は赤方偏移している。すなわち、ストークス線は、光ファイバへの入射光よりも大きな波長を有する。換言すれば、入射光の別の波長は可視スペクトルの青色端に位置するはずである。確かに、この範囲で放射を行うガスレーザーは存在するが、しかし、レーザー基本周波数を2倍にすることによってこの別の波長を得ることが、特に好都合である。この種の周波数2倍レーザーは、レーザー基本周波数が1μm程度であるので、費用対効果に優れた固体レーザーとして構成することができる。従って、別の波長の光は、特にいわゆるマイクロチップレーザーを用いて実現することができる。これは、低コストで利用可能な固体レーザータイプであり、例えば、周波数2倍Nd:YAGレーザーが考えられる。周波数2倍Nd:YAGレーザーが、通常、532nmの放射波長を有する一方で、450nmから600nmまで、特に500nmから550nmまでの別の波長範囲において放射を行うマイクロチップレーザーも存在する。従って、個々の赤方偏移したストークス線の位置に対して作用を及ぼすことが可能である。赤方偏移したストークス線の間隔が約12nmから15nmで一定であると想定した場合、放射波長が約6nmから7nm異なっている2つの半導体レーザーを交互に用いることで、間隔が約6nmから7nmであるストークス線を生成することができる。放射波長が約4nmから5nm異なっている3つのそれぞれ異なったマイクロチップレーザーを用いることで、それに対応して、シングルモードファイバの出力部において、間隔が約4nmから5nmであるストークス線を、光スペクトルの波長範囲全体にわたって得ることができる。
【0026】
マイクロチップレーザーは、持続時間が約1nsから3nsであるパルスを放射するために特に好都合である。これは、高分解能の蛍光顕微鏡法で使用するためのパルスの最適持続時間である。従来のマイクロチップレーザーにおけるパルス繰り返し率は、1kHzから100kHzであって、蛍光顕微鏡法のために望ましいパルス繰り返し率よりも幾分低い場合がある。蛍光顕微鏡法の場合、パルス繰り返し率は、メガヘルツのオーダーであることが好ましい。しかしまた、十分なピーク出力のマイクロチップレーザーの場合、1MHzのパルス繰り返し率を実現することも可能である。別の方策としては、それぞれの蛍光色素をその一方の状態から別の状態へと移行させるために必要とされる1つの波長を有した、光ファイバから出射する光パルスを分割して、時間をずらした後、それを再び合成するという方法がある。当業者には、このために必要な技術は公知である。その技術の1つは、個々のストークス線を分光して扇状に広げ、そして、スペクトルの構成要素を再び合成する前に、スペクトルの構成要素の一部分をパルスの時間間隔の半分だけ遅延させるという技術である。
【0027】
ある程度の許容幅を当該の1つの波長が有する場合、この1つの波長を有する光のパルス繰り返し率を増大させるためのもう1つの方策は、相異なる波長を有する、それぞれ異なった非同期性の光パルスを、同じまたは別の光ファイバに入射させ、これらの異なる光パルスのストークス線を1つの波長の光パルスとして、蛍光色素を一方の状態から別の状態へ移行させるために利用することである。非同期性の光パルスを光ファイバに入射させる際に用いられる相異なる両波長が、ストークス線間と同じ間隔を有する場合、この方策を利用することで、パルス繰り返し率が増大した、厳密に1つの波長を有する光パルスさえも生成することができる。しかし、ストークス線が、相異なるシングルモードファイバで生成される場合、これらのストークス線は、偏光が同じ場合に光軸を一致させることができるように、波長が幾分異なっていなければならない。
【0028】
この新しい方法では、それぞれの蛍光色素に対する励起光を供給する励起光源、特にレーザーダイオードが、再び蛍光色素を局所的に脱励起するための、1つの波長の光パルスに同期してトリガーされる場合、このトリガーは、相異なる波長を有する非同期性の光パルスを同じまたは別の光ファイバに入射させることで実現可能である。その際、これらの非同期性の光パルスを互いに同期させる必要はない。なぜなら、レーザーダイオードを、直接、高いメガヘルツ領域においてクロック制御することができるからである。従って、相異なる波長を有する非同期性の光パルス用の両光源は、互いに対して相対的に自由に運用することができる。
【0029】
既に前段落で、STED蛍光顕微鏡法においてこの新しい方法を用いることが示唆されているが、本発明は、従来の蛍光顕微鏡法で用いることができる以外に、また、蛍光色素をそれぞれ異なる状態間で切り替えることによって空間分解能を高めることを伴う、蛍光顕微鏡法の他の技法、例えばGSD蛍光顕微鏡法やRESOLFT蛍光顕微鏡法でも用いることができる。
【0030】
この新しい方法の特に興味深い用途分野は、いわゆる蛍光寿命イメージング(FLIM)であり、この手法では、試料の蛍光から、時間領域または周波数領域における試料の蛍光寿命イメージが生成される。この新しい方法は、十分に細かな段階性を有する様々な波長の励起光を容易に提供し、これにより、様々な色で蛍光寿命イメージングを利用できるようにする。
【0031】
本発明に係る蛍光顕微鏡の場合、光ファイバの選定および光ファイバへ入射される光の強度の選定は、次のように行われる。すなわち、入射された波長の線の他に少なくとも1つの赤方偏移したストークス線を光スペクトルが有することができる程度に光ファイバ内でラマン散乱が誘導され、このストークス線の強度半値幅が、光スペクトルの、青色方向に隣接する線までの間隔の半分よりも小さくなるように、光ファイバの選定および入射光強度の選定が行われる。波長選択手段によって、蛍光色素を移行させるための所定の波長を有する光が、赤方偏移したストークス線の1つから選出される。この新しい装置の詳細については、本発明に係る新しい方法に関する前述の説明と共に、付随の請求項によって明らかにする。
【0032】
しかし、注目すべきことは、それぞれ異なる光パルスを合成して、当該の1つの波長を有する光のパルス繰り返し率を増大させるための周波数増幅機構が、光パルスのこの合成のために、分散光学素子を有することができるという点である。適切な分散光学素子の例としては、プリズムおよびプリズム構成体などがある。しかし、特に好適であるのは音響光学フィルタであり、これらのフィルタは、逆方向に用いることで、互いにほんのわずかに異なっている波長を有する光パルスを、1つの光軸上に合成することができる。
【0033】
本発明の有利な別態様については、請求項、明細書および図面から明らかにする。明細書の冒頭に挙げた、特徴および複数の特徴の組み合わせについての利点は、典型例として挙げてあるに過ぎず、これらの利点は、単独に実現されても、複合的に実現されてもよく、その際、必ずしも、本発明に係る実施形態によって実現される必要はない。その他の特徴については、図面、特に、幾何学的形状から、および、複数の構成要素の相対的な寸法ならびに相対的な配置および機能的結合から見て取ることができる。また、請求項間の、記載された各関連性以外に、本発明の相異なる実施形態が有する特徴、または、それぞれ異なる請求項に記載の特徴を組み合わせることも可能であり、そのような組み合わせについても、本発明に属するものとする。このことはまた、それぞれの図に記載されている特徴、または、説明がなされている特徴にも当てはまる。さらに、これらの特徴は、それぞれ異なる請求項に記載の特徴と組み合わせることも可能である。また、請求項に記載された特徴が、本発明のその他の実施形態の場合には含まれていなくてもかまわない。
【0034】
以下において、本発明について、図に示した好ましい実施例を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る蛍光顕微鏡の第1の実施例の構成を示す模式図である。
【図2】図1の蛍光顕微鏡の場合に得られる光スペクトルを示す。
【図3】本発明に係る蛍光顕微鏡の別の実施形態を示す模式図である。
【図4】図3の蛍光顕微鏡の別態様に関して、本発明に係る蛍光顕微鏡の主要構成部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0036】
図1に示した蛍光顕微鏡1は、当該の構造部に蛍光色素が付着された試料2を蛍光顕微鏡法で測定するために用いられる。蛍光色素は、レーザーダイオード4からの励起光3によって対物レンズ5の焦点領域において励起されて蛍光する。次に、蛍光色素によって焦点領域から放射された蛍光6が、空間分解されて、すなわち、試料2の所定の空間に関連付けられて、検出器7によって検出される。蛍光6を発することができる、試料2のこの空間の寸法を、回折限界以下にまで小さくするために、試料2の蛍光色素は、励起光3とは異なる波長を有する脱励起光8を用いて、当該の測定点の外部において、誘導放出によって再び脱励起される。その際、位相フィルタ9を用いて、脱励起光8から干渉縞が形成され、この干渉縞は、当該の測定点の位置に零点を有し、さらにその周囲にある種の強度を有し、この強度で、蛍光色素の誘導放出が飽和するまで促進される。脱励起光8の波長は、マイクロチップレーザー11として構成されたレーザー15の光10の波長よりも大きい。このレーザーの光は、相互に離間したパルスの形で光ファイバ13に入射される。その際、マイクロチップレーザー11は、周波数2倍レーザー15であり、可視スペクトルの青色領域で放射を行う。全長にわたって一定の直径を有する従来のシングルモードファイバ12である光ファイバ13の高い光強度は、誘導ラマン散乱を引き起こし、複数の赤方偏移したストークス線が、シングルモードファイバ12から出射する光スペクトルの中に形成される。ストークス線の1本が、波長選択部材14によって選択され、脱励起光8を形成する。
【0037】
図2には、蛍光顕微鏡1においてシングルモードファイバ12から出射する光スペクトル17が示されている。この光スペクトル17は、具体的には、平均出力が20mWおよびピーク出力が1.9kWである場合に、波長が532nm(周波数2倍Nd:YAG)、パルス幅が1.5nsおよびパルス繰り返し率が7kHzのパルスを、長さ30mの標準シングルモードガラスファイバ(Schaefter und Kirchhoff 社製, カットオフ波長約470nm、モードフィールド径(コア径)約5μm、開口数0.11、偏波保持型のパンダファイバ)に入射することによって生じた光スペクトルである。結合効率、すなわち、伝送された総出力は50%であった。Thorlabs 社製のシングルモードガラスファイバ(カットオフ波長480nm)でも類似のスペクトルが生じた。この光スペクトル17は、シングルモードファイバ12に入射された光10の第1の線18を、マイクロチップレーザー11の放射が行われた532nmという波長に有する。この線に、多数の赤方偏移したストークス線19から28が続いており、これらの線は、それぞれ、光スペクトル17の全強度の数パーセントを含んでいる。最も赤方偏移したストークス線26から28は、半値幅が次第に増大しているが、しかしまた、数ナノメートルの範囲にわたって、光スペクトル17の全強度の数パーセントを含んでいる。赤方偏移したストークス線19から28の互いの間隔、および線18に対する第1の赤方偏移したストークス線19までの間隔29は、それぞれ約12nm〜15nmである。すなわち、図1に示した蛍光顕微鏡の場合、脱励起光8の波長を、12nm〜15nmの諸段階において、光スペクトル17の範囲全体にわたって調整することができる。その際、各ストークス線が有する半値幅30は、間隔29の半分よりも小さいので、選定されたストークス線に関して、レーザー11からの光10の強度のうちの大きな成分が、脱励起光8のために利用される。従来のマイクロチップレーザー11の場合、これらの成分の大きさは、レーザー11のパルスレートを2倍にするためにこれらの成分を分割し、そして、時間をずらして、試料2に指向させることができる程度の大きさである。
【実施例2】
【0038】
図3は、脱励起光8のパルスレートを個々のマイクロチップレーザー11のパルスレートに比べて高くするための別の方策を示す。ここでは、2つのマイクロチップレーザー11’および11”が備えられており、これらは、相異なる波長を有する光10’あるいは10”を放射する。両マイクロチップレーザー11’および11”の光10’あるいは10”は、例えば音響光学フィルタ32として構成しておくことができるビームスプリッタ31を用いて、1つの光軸上に合成され、シングルモードファイバ12に入射される。その際、光10’の波長から光10”の波長までの間隔は、図2に示したストークス線19から28の相互の間隔とほぼ同じ大きさであり、従って、光10’によって引き起こされる光スペクトルにおける各ストークス線に対して、光10”によって引き起こされる光スペクトルにも同じ波長のストークス線が存在する。そして、両レーザー11’および11”が、相異なる時点にそれぞれのパルスを放射すると、波長選択部材14(この例では狭帯域カラーフィルタ34)の下流側において、脱励起光8は、パルスレートが2倍になっている。励起光3を供給するレーザーダイオード4は、その際、両マイクロチップレーザー11’および11”に従ってトリガーされ、これらのレーザーは、相対的に自由に運用でき、すなわち、互いに同期させる必要はない。
【0039】
図3に示した蛍光顕微鏡では、脱励起光8のパルスのパルスレートを増大させる際、ただ1つのシングルモードファイバ12が用いられているが、一方、図4の場合、このために2つのシングルモードファイバ12’および12”が備えられており、マイクロチップレーザー11’あるいは11”の光10’あるいは10”が、それぞれ、ストークス線を有する光スペクトルを形成する。この場合、両光スペクトルは、ここでも波長選択部材14であるビームスプリッタ31によって合成され、その際、互いにやや異なってはいるが、脱励起光8として共通に利用可能なストークス線を有する2つのストークス線が、1つの共通の光軸上に出射するように合成される。図4の蛍光顕微鏡では、位相フィルタ9に続く部分が示されていないが、図3に一致する。
【符号の説明】
【0040】
1 蛍光顕微鏡
2 試料
3 励起光
4 レーザーダイオード
5 対物レンズ
6 蛍光
7 検出器
8 脱励起光
9 位相フィルタ
10 光
11 マイクロチップレーザー
12 シングルモードファイバ
13 光ファイバ
14 波長選択部材
15 レーザー
16 ビームスプリッタ
17 光スペクトル
18 線
19 ストークス線
20 ストークス線
21 ストークス線
22 ストークス線
23 ストークス線
24 ストークス線
25 ストークス線
26 ストークス線
27 ストークス線
28 ストークス線
29 間隔
30 半値幅
31 ビームスプリッタ
32 音響光学フィルタ
33 レンズ
34 カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を蛍光顕微鏡法で測定するための方法であって、
−試料の蛍光色素が、所定の波長の光を用いて、ある状態から別の状態へ移行され、
−別の波長の光が最小強度で光ファイバに入射され、この最小強度が、非線形効果によって、この別の波長に対して赤方偏移した波長を有する光スペクトルを出射させるような強度であり、かつ、
−前記所定の波長を有する光が、前記光スペクトルから選出され、さらに、
−試料からの蛍光が、空間分解して測定される方法において、
光ファイバ(13)の選定、および、この光ファイバ(13)へ入射される前記別の波長を有する光(10)の強度の選定が行われる際、前記入射された波長を有する線(18)の他に少なくとも1つの赤方偏移したストークス線(19から28)を前記光スペクトル(17)が有することができる程度に前記光ファイバ(13)内でラマン散乱が誘導され、前記ストークス線の強度半値幅が、光スペクトル(17)の、青色方向に隣接する線(18から28)までの間隔の半分よりも小さくなるように、前記選定が行われること、および、前記所定の波長が、前記赤方偏移したストークス線(19から28)の1つから選定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記別の波長の光(10)が、非微細構造でテーパのない、長さが少なくとも9mのシングルモードファイバ(12)に入射されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シングルモードファイバ(12)の長さが、少なくとも19m、好ましくは少なくとも30mであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記別の波長の光(10)が、中空コアにガスが充填された微細構造ファイバに入射されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記別の波長の光(10)が、前記シングルモードファイバ(12)に入射される前に、中空コアにガスが充填された微細構造ファイバによって導かれることを特徴とする請求項2および3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記別の波長の光(10)の有する強度が、少なくとも50W、好ましくは少なくとも400W、最も好ましくは少なくとも1000Wのピーク出力を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記別の波長の光(10)が、持続時間が0.5nsから5nのパルス、好ましくは1nsから3nsのパルスとして光ファイバ(13)に入射されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記光スペクトル(17)が、少なくとも2本、好ましくは少なくとも5本、さらに好ましくは少なくとも7本、最も好ましくは少なくとも10本の赤方偏移したストークス線(19から28)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記別の波長が、レーザー基本周波数を2倍にすることによって準備されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記別の波長の光(10)が、マイクロチップレーザー(11)を用いて供給されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記別の波長が、450nmから600nmの間、好ましくは500nmから550nmの間の範囲にあることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記光ファイバ(13)から出射する1つの波長の光パルスが分割され、時間をずらして再び合成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
相異なる波長を有する、それぞれ異なった非同期性の光パルスが、同じまたは別の光ファイバ(13、13’、13”)に入射されること、および、これらの異なる光パルスのストークス線(19から28)が、前記1つの波長の光パルスとして、蛍光色素を一方の状態から他方の状態へ移行させるために利用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
蛍光色素に対する励起光(3)を供給する励起光源、特にレーザーダイオード(4)が、再び蛍光色素を局所的に脱励起するための、1つの波長の光パルスに同期してトリガーされることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
試料(2)の蛍光(6)から、この試料の蛍光寿命イメージが生成されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
蛍光顕微鏡であって、
−分析されるべき試料における蛍光色素を、ある状態から別の状態へ移行させるために、所定の波長の光を供給する光源を具備し、
−この光源が、レーザー、光ファイバおよび波長選択手段を有し、
−このレーザーが、別の波長の光を最小強度で光ファイバに入射させ、この最小強度が、非線形効果によって、この別の波長に対して赤方偏移した波長を有する光スペクトルを出射させるような強度であり、かつ、
−前記波長選択手段が、前記所定の波長を有する光を前記光スペクトルから選出し、さらに、
−試料からの蛍光を空間分解して測定する検出器を具備する蛍光顕微鏡において、
光ファイバ(13)の選定、および、この光ファイバ(13)へ前記レーザー(15)が入射させる前記別の波長を有する光(10)の強度の選定が行われる際、前記入射された波長を有する線(18)の他に少なくとも1つの赤方偏移したストークス線(19から28)を前記光スペクトル(17)が有することができる程度に前記光ファイバ(13)内でラマン散乱が誘導され、前記ストークス線の強度半値幅が、光スペクトル(17)の、青色方向に隣接する線(18から28)までの間隔の半分よりも小さくなるように、前記選定が行われること、および、前記波長選択手段が、前記所定の波長を有する光を、前記赤方偏移したストークス線(19から28)の1つから選出することを特徴とする蛍光顕微鏡。
【請求項17】
前記光ファイバ(13)が、非微細構造でテーパのない、長さが少なくとも9mのシングルモードファイバ(12)であることを特徴とする請求項16に記載の蛍光顕微鏡。
【請求項18】
前記シングルモードファイバ(12)の長さが、少なくとも19m、好ましくは少なくとも30mであることを特徴とする請求項17に記載の蛍光顕微鏡。
【請求項19】
前記光ファイバ(13)が、中空コアにガスが充填された微細構造ファイバであることを特徴とする請求項16に記載の蛍光顕微鏡。
【請求項20】
前記シングルモードファイバ(12)の上流側に、中空コアにガスが充填された微細構造ファイバが接続されていることを特徴とする請求項17および18のいずれかに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項21】
前記レーザー(15)が、前記別の波長の光(10)を、ピーク出力が少なくとも50W、好ましくは少なくとも150W、最も好ましくは少なくとも450Wのパルスとして前記光ファイバ(13)に入射させることを特徴とする請求項16〜20のいずれか1つに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項22】
前記レーザー(15)が、前記別の波長の光(10)を、持続時間が0.5nsから5nのパルス、好ましくは1nsから3nsのパルスとして光ファイバ(13)に入射させることを特徴とする請求項16〜21のいずれか1つに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項23】
前記光スペクトル(17)が、少なくとも2本、好ましくは少なくとも5本、さらに好ましくは少なくとも7本、最も好ましくは少なくとも10本の赤方偏移したストークス線(19から28)を有することを特徴とする請求項16〜22のいずれか1つに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項24】
前記レーザー(15)が周波数2倍レーザーであることを特徴とする請求項16〜23のいずれか1つに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項25】
前記レーザー(15)がマイクロチップレーザー(11)であることを特徴とする請求項16〜24のいずれか1つに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項26】
前記別の波長が、450nmから600nmの間、好ましくは500nmから550nmの間の範囲にあることを特徴とする請求項16〜25のいずれか1つに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項27】
周波数増幅機構が備えられており、この周波数増幅機構が、前記光ファイバ(13)から出射する、1つの波長を有する光パルスを分割し、時間をずらして再び合成することを特徴とする請求項16〜26のいずれか1つに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項28】
周波数増幅機構が備えられており、この周波数増幅機構が、それぞれ異なった非同期性の光パルスを、同じまたは別の光ファイバ(13、13’、13”)に入射させ、かつ、これらの異なる光パルスが有する隣接し合ったストークス線(19から28)を、前記1つの波長の光パルスとして合成することを特徴とする請求項16〜26のいずれか1つに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項29】
前記周波数増幅機構が、前記光パルスを合成するために、分散光学素子、特に音響光学フィルタ(32)を有することを特徴とする請求項27および28のいずれかに記載の蛍光顕微鏡。
【請求項30】
励起光源、特にレーザーダイオード(4)が備えられており、この励起光源が、蛍光色素に対する励起光(3)を供給し、かつ、再び蛍光色素を局所的に脱励起するための、1つの波長の光パルスに同期してトリガーされることを特徴とする請求項26または29に記載の蛍光顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−503525(P2011−503525A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527448(P2010−527448)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063171
【国際公開番号】WO2009/047189
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(508329874)マックス−プランク−ゲゼルシヤフト・ツーア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・アインゲトラーゲナー・フェライン (4)
【Fターム(参考)】