走査光学系および画像形成装置
【課題】小型で簡単な構成によって、被走査面上におけるビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動とを補正することが可能となる走査光学系を提供する。
【解決手段】
光源手段から放射された光束を偏向手段により偏向して被走査面上に結像させる光路中に、被走査面上でのビームスポット径の変動およびビームスポット位置の変動を補償する補償手段を備えた走査光学系であって、
補償手段は、
光学系を構成する該光学系の光軸に沿って配置された該光軸と光軸に対して垂直な対称軸を含む対称面に対して面対称な形状の光学面を有する複数の光学素子と、
対称軸に平行な方向に複数の光学素子の相対位置を変化させる第1の駆動手段と、
複数の光学素子の相対位置の変化に影響を及ぼすことなく、対称軸と平行な方向に複数の光学素子全体の位置関係を変化させる第2の駆動手段と、を備える。
【解決手段】
光源手段から放射された光束を偏向手段により偏向して被走査面上に結像させる光路中に、被走査面上でのビームスポット径の変動およびビームスポット位置の変動を補償する補償手段を備えた走査光学系であって、
補償手段は、
光学系を構成する該光学系の光軸に沿って配置された該光軸と光軸に対して垂直な対称軸を含む対称面に対して面対称な形状の光学面を有する複数の光学素子と、
対称軸に平行な方向に複数の光学素子の相対位置を変化させる第1の駆動手段と、
複数の光学素子の相対位置の変化に影響を及ぼすことなく、対称軸と平行な方向に複数の光学素子全体の位置関係を変化させる第2の駆動手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査光学系および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザービームプリンターやデジタル複写機などの光走査装置においては、近年、画像形成装置の低価格化、コンパクト化に伴い、様々な環境変動に強く、高精細な印字に適した装置の要求が高まってる。
この種の光走査装置においては、低コスト化や小型化の要求の観点から、光学素子を構成する材料として、プラスチック材料が用いられることが多い。
プラスチック材料から構成された光学素子(プラスチックレンズ)は、使用環境の変化、例えば環境温度変化など、に伴い屈折率が変化するという性質を有している。
このことによって、プラスチックレンズを用いた光走査装置においては、環境変動による主走査方向および副走査方向の焦点位置変動やスポット位置変動が生じる。
【0003】
従来において、これらに対処するため、特許文献1では、常に良好なスポット径を保持した状態で、光ビームを感光体ドラムに結像するようにした装置が提案されている。
この装置では、ドラム上のビーム状態を検出するための2つの受光器と、コリメーターレンズの位置を調整するための位置調整器を備え、感光体ドラム上に投影した焦点合わせパターン画像を受光器で読み取る。
そして、その読み取った信号に基づいた制御信号により位置調整器を駆動することによって、感光体ドラム上でのスポット径を良好な状態に補正するように構成されている。
また、特許文献2では、環境温度上昇によって被走査面上でのビームスポット位置ずれが発生しないように、ビームスポット位置を所定の位置に補正する光走査装置が提案されている。
この装置では、光源と偏向手段との間にレーザービームの向きを変えるミラー部を有する振動体を配置し、振動体を駆動制御することによって、面だおれに起因するビームスポット位置ずれを補正するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−042813号公報
【特許文献2】特開2004−029113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例のものは、つぎのような課題を有している。
すなわち、特許文献1のものでは、原理的に副走査方向における面だおれに起因するビームスポット位置の補正ができない。
また、特許文献2のものでは、原理的に光ビームの焦点位置の補正ができない。また、これらの特許文献1と特許文献2の手段を組み合わせることで、光ビームの焦点位置ずれおよびビームスポット位置ずれの補正を同時に実現する場合、光源と光偏向手段との間に多くの部品を配置することになり補正に必要な制御機構が複雑になる。
【0006】
本発明では、上記課題を鑑み、小型で簡単な構成によって、被走査面上におけるビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動とを補正することが可能となる走査光学系および画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の走査光学系は、
光源手段から放射された光束を偏向手段により偏向して被走査面上に結像させる光路中に、前記被走査面上でのビームスポット径の変動およびビームスポット位置の変動を補償する補償手段を備えた走査光学系であって、
前記補償手段は、
前記光学系を構成する該光学系の光軸に沿って配置された該光軸と光軸に対して垂直な対称軸を含む対称面に対して面対称な形状の光学面を有する複数の光学素子と、
前記対称軸に平行な方向に前記複数の光学素子の相対位置を変化させる第1の駆動手段と、
前記複数の光学素子の相対位置の変化に影響を及ぼすことなく、前記対称軸と平行な方向に前記複数の光学素子全体の位置関係を変化させる第2の駆動手段と、を備え、
前記第1の駆動手段による前記複数の光学素子の相対位置の変化に応じて、前記光学系のパワーを変化させて前記被走査面上でのビームスポット径の変動を補償し、
前記第2の駆動手段による前記光学素子全体の位置関係に応じて、前記被走査面上でのビームスポット位置の変動を補償することを特徴とする。
また、本発明の画像形成装置は、上記した走査光学系を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型で簡単な構成によって、被走査面上におけるビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動とを補正することが可能となる走査光学系および画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1における走査光学系の構成例について説明する概略図。
【図2】本発明の実施例1における相対位置変位量に対するパワー変化量を表すグラフ。
【図3】本発明の実施例1における駆動手段の回転作用によってそれぞれの光学素子の相対位置を変化させた様子を示す模式図。
【図4】本発明の実施例1における駆動手段と部材の接続方法として歯車やローラーなどの摩擦によって力を伝達する方法を示す図。
【図5】本発明の実施例1における駆動手段と部材の接続方法として、駆動手段の回転軸を支点かつ力点としそれぞれの部材との接続部位を作用点とした梃子を用いる方法を示す図。
【図6】本発明の実施例1における駆動手段の回転作用によって光学系における光軸と光学素子群における光軸である副光軸との相対位置を変化させたときの様子を示す模式図。
【図7】本発明の実施例1における光学素子の相対位置が変化することによって入射した平行光が収束光に変換されている様子を示す図。
【図8】本発明の実施例1におけるY軸方向にギヤーを平行移動させたときの様子を示す図。
【図9】本発明の実施例2における走査光学系の構成例について説明する図。
【図10】本発明の実施例2における光検出器の設置例について説明する図。
【図11】本発明の実施例2における走査光学素子、折り返しミラーを経て被走査面上に結像した光束に対して被走査面からの反射光を光検出器にて受光する方法を示す概略図。
【図12】本発明の実施例2における偏向手段からの光束が走査光学素子を経て被走査面に結像する様子を示す図。
【図13】本発明の実施例2における受光素子の構成例を示す図。
【図14】本発明の実施例2における光束(ビーム)が受光素子に当たったときの模式図。
【図15】本発明の実施例2におけるスポットの位置ずれはなく、フォーカスのみがずれた場合を表している図。
【図16】本発明の実施例2におけるスポット位置が変化した場合を表している図。
【図17】本発明の実施例2における光検出器で検出した光量の総和と光学素子間の相対位置の変位量との関係を表したグラフ。
【図18】本発明の実施例2における光検出器で検出した光量の受光量比と光学素子群の変位量との関係を示すグラフ。
【図19】本発明の実施例3における画像形成装置の構成例について説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した光源から放射された光束を偏向して被走査面上に結像させる光路中に、被走査面上でのビームスポット径の変動やビームスポット位置の変動を補償する補償手段を有する走査光学系の構成例について、図1を用いて説明する。
図1に示すように本実施例の走査光学系1は、光源手段2と、光束を偏向走査する機能を有する偏向手段4(コリメータレンズ)、5(シリンドリカルレンズ)、6(偏向ミラー)、7(走査光学素子)と、補償手段9(光学素子群)と、偏向した光束が結像する被走査面8を備えている。
光学系の主走査方向とは図1におけるXZ断面、副走査方向とは図1におけるYZ断面を表すこととする。
【0012】
補償手段9に含まれる光学素子9aおよび9bは、光学系の光軸に沿って配置されている。
また、光学素子9aおよび9bは、光軸に沿って配置された該光軸と光軸に対して垂直な対称軸を含む対称面に対して面対称な形状の光学面を有する光学面を有している。
例えば、図1におけるXZ面に対して面対称な形状の光学面を有している。
XZ面に対して面対称な形状の光学面を表現する関数の一例を以下の式1に示す。
Z=a×X3+b×X×Y2 …式1
(但し、aおよびbは任意の定数である。)
一般にアルバレツ面として知られている形状を有する光学面は、以下の式2で示す関数で表現することができる。
Z=c×(1/3×X3+X×Y2)
+d×X2+e×XY+f×X+g+h×F(y)…式2
(但し、c、d、e、f、g、hは任意の定数、F(y)はXに依存しない関数である。)
式1で示した関数は、式2で表現される関数における任意の定数を適宜選択することによって表現可能である。
光学素子9aおよび9bについて対称軸に平行な方向に相対位置を変位させることによって光学素子群9が有するパワーを変化させることができる。
【0013】
図2に光学素子9aおよび9bの相対位置変位量と光学素子群9におけるパワー変化量について表したグラフを示す。
横軸に光軸に対する光学素子9aおよび9bの相対位置変位量を、縦軸に光学素子群9におけるパワー変化量を示す。なお、このグラフでは、光学素子9aおよび9bの相対位置変位量がゼロの点にて光学素子群9のパワー変化量をゼロとして表している。
【0014】
図1に示す座標系を例に、光軸および複数の光学素子が光学素子9a、9bで構成されている本実施例の配置構成について説明する。
光軸と光学素子9aとの相対位置変化量について、X軸マイナス方向に変化したときの相対位置変化量をプラス、X軸プラス方向に変化したときの相対位置変化量をマイナスとする。
同様に、光軸と光学素子9bとの相対位置変化量について、X軸プラス方向に変化したときの相対位置変化量をプラス、X軸マイナス方向に変化したときの相対位置変化量をマイナスとする。
なお、光学素子9a、9bにおける相対位置変化量の方向および大きさは、ともに同じとする。
このグラフから、相対位置変位量がプラス方向に変化するとパワー変化量がプラスに変化することがわかる。同様に、相対位置変位量がマイナス方向に変化するとパワー変化量はマイナスに変化する。
光学素子9aおよび9bは、駆動手段(第1の駆動手段)11aの作用を光学素子9aおよび9bへ伝達する機能を有する部材10aおよび10bと接続している。
駆動手段11aと光学素子9aとを接続する部材10aおよび駆動手段11aと光学素子9bとを接続する部材10bによって構成されている。
また、ユニット12は駆動手段(第2の駆動手段)11bと接続されている。
駆動手段11bの作用によってユニット12が変位し、前記複数の光学素子の相対位置の変化に影響を及ぼすことなく、光学素子群(複数の光学素子全体)9が光軸に対して垂直な方向(対称軸に平行な方向)に位置関係を変位させる構造となっている。
【0015】
図3は、駆動手段23の回転作用によって、光学素子21aおよび21bの相対位置を変化させた様子の模式図である。
図3では、光軸に沿って進んできた平行光束が光学素子群21を通過している。駆動手段23が回転し、光軸に対する光学素子21a、21bの相対位置が変化することによって、光学素子群21が有するパワーが変化する。
その結果、光学素子群21を通過した光束が発散または収束する。ここでは、光学素子群21のパワーが増加して光束が収束している様子を表している。
部材22aおよび22bは、光学素子21aおよび21bが光軸に対して垂直な方向の軸に沿って移動するように接続されている。
例えば、部材22aおよび22bを光軸に対して垂直な方向に配置した溝やガイドなどに沿って配置することで実現可能である。駆動手段23は、例えば、ステッピングモーターなどのアクチュエータを適用することで、外部から入力した電気信号に応じて回転量を制御可能である。
【0016】
駆動手段23と部材22aおよび22bとの接続方法は、例えば、歯車やローラーなどの摩擦によって力を伝達する方法(図4)が可能である。
また、駆動手段23の回転軸を支点かつ力点とし部材22aおよび22bとの接続部位を作用点とした梃子を用いる方法(図5)など、さまざまな方法を適用することが可能である。
上記したように、光学素子21aおよび21bの相対位置を変位させることによって光学素子群21におけるパワーを変化させることができる。
光学素子群21におけるパワーを制御することによって光学系におけるパワー変動を補償し、被走査面上での光束(ビーム)の結像状態(スポットの大きさ)を制御することができる。
【0017】
図6に、駆動手段34の回転作用によって、光学系における光軸32と光学素子群31における光軸である副光軸33との相対位置を変化させたときの模式図を示す。
ここで副光軸とは、光学素子群31におけるパワーがゼロであるときの光学素子配置において、光学素子群を通過する光束の主光線と一致する軸であると定義する。
図6では、駆動手段34の回転作用によって、光学素子群31におけるそれぞれの光学素子31aおよび31bの相対配置を固定したまま、光学素子群31を光軸32に対して垂直な方向に変位させている。
その結果、副光軸33は光軸32に対して垂直な方向に移動している。光束35と光学素子群の副光軸33とがずれることによって、光束35の射出角度が変化し光束35は偏向する。
上記したように、光軸32と副光軸33との相対位置を変化させることによって、光学素子群31からの光束の射出角度を変化させることができる。
この作用によって、被走査面上でのビームのスポット位置を制御することができる。
被走査面上におけるビームスポット径の変動やビームスポット位置の変動は、環境温度変化などによって発生する材料屈折率の変化や筺体伸縮などの歪みなど、さまざまな要因によって発生する。
【0018】
具体的な例として、光学素子の相対位置を制御する駆動手段と、光軸と副光軸との相対位置を制御する駆動手段との両方の駆動手段を兼ねた共通のアクチュエータによって駆動可能に構成してもよい。
はじめに、図7で示す補償光学系(補償手段)は、複数の光学素子41a、41bで構成されている光学素子群41と駆動手段44、駆動軸45、ギヤー43、部材42a、42b、固定部材46、から構成されている。
駆動手段44の回転作用は、回転軸45を経てギヤー43に伝達する。ギヤー43の作用は、部材42aおよび42bを経て、光学素子41aおよび41bの配置を変化させる。
その結果、光学素子群41におけるパワーが変化し、光束の結像状態が変化する。図7では、光学素子41aおよび41bの相対位置が変化することによって、入射した平行光が収束光に変換されている様子を示している。
【0019】
次に、図8ではY軸方向にギヤー43を平行移動させたときの様子を示す。
駆動手段44をY方向に平行移動させることによってギヤー43のY座標と固定部材46のY座標を変化させている。
Y方向への変位によって、ギヤー43は部材42aのみと接触し、駆動手段44からの動力を部材42aへのみ伝達する。
同時に、固定部材46は、部材42aおよび42bと接触し、部材42aおよび42bを連結する。その結果、部材42aと42bは一体化する。ギヤー43からの作用は、部材42aおよび42bに対して同等に伝達する。
部材42aおよび42bに接続した光学素子41aおよび41bはX軸に対して平行に、かつ、同じ方向に移動することによって、光学素子群41の副光軸は、光軸に対して垂直な方向に移動する。
【0020】
副光軸が光軸に対して垂直な方向に移動することによって、光学素子群41に入射した平行光が、射出角度が変化して射出される様子を表している。
光学素子の相対位置を制御する駆動手段と、光軸と副光軸との相対位置を制御する駆動手段を同じ駆動手段で制御した。
その結果、被走査面上でのビームのスポット大きさとビームのスポット位置の両方を制御することが可能である。
以上のように、本実施例の走査光学系の構成によれば、より簡便な制御機構で、被走査面上でのビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動の両方を補償することが可能となる。
【0021】
[実施例2]
実施例2として、実施例1における走査光学系とビーム検出手段とを備えた走査光学系の構成例について、図9を用いて説明する。
本実施例の走査光学系51は、光源手段52と、偏向手段(コリメーターレンズ54、シリンドリカルレンズ55、偏向ミラー56、走査光学素子57)と、補償手段60と、偏向した光束が結像する被走査面58を備えている。
光学系の主走査方向とは図9におけるXZ断面、副走査方向とは図9におけるYZ断面を表すこととする。
補償手段60に含まれる光学素子60aおよび60bは、部材61aおよび61bを介して駆動手段62aと接続している。
駆動手段62aが回転することによって、光学素子60aおよび60bの相対位置が変化する機構を有している。
また、光学素子群60は、ユニット63を介して駆動手段62bと接続している。
駆動手段62bが回転することによって、光学素子群60は光軸に対する相対位置が変化する機構を有している。
光検出器59は、被走査面上でのビームスポットの大きさとビームスポットの位置を検出する機能を有している。
光検出器59で検出した光検出器信号は信号制御手段64に送信される。信号制御手段64は、光検出器59で検出した光検出信号に基づいて、駆動手段62aおよび62bを駆動する制御信号を発生する。
【0022】
図10に、本実施例における光検出器の設置例について説明する図を示す。
図10では走査光学系の一部を図示したものであり、走査光学素子71を通過した光束が折り返しミラー72で反射し、被走査面73上に結像している。
折り返しミラー72は、光量の一部を透過する機能を有する反射面を有しており、折り返しミラー72を透過した光を光検出器74で受光している。
このとき、折り返しミラー72と被走査面73との光学配置と、折り返しミラー72と光検出器74との光学配置とが光学的に一致するように設定する。
このことによって、光検出器74を用いて被走査面上での光ビームの結像状態や光ビームのスポット位置を検出することが可能である。
【0023】
そのほかの手段としては、図11に示すように、走査光学素子81、折り返しミラー82を経て被走査面83上に結像した光束に対して被走査面83からの反射光を光検出器84にて受光する方法が挙げられる。
また、図12に示すように、ポリゴンミラーなどの偏向手段91からの光束が走査光学素子92を経て被走査面93に結像する場合、所望の走査角度を超えた光束の一部を光検出器94で受光する方法をとってもよい。
光検出器は、被走査面上でのビームスポット径とビームスポット位置の情報を取得するために、様々な配置をとることができる。
また、用途や必要な精度に応じて、光検出器を複数個配置してもよい。
光検出器に搭載される受光素子において、被走査面上でのビームスポット径の大きさやビームスポット位置を検出する方法について一例を挙げて説明する。
【0024】
図13に示す受光素子101は、4つの受光面101a、101b、101c、101dから構成されている。
それぞれの受光面は、受光した光のエネルギーに応じた値の電気信号を発生する光電変換機能を有している。4つの受光面にて光電変換された電気信号から、光ビームの結像状態およびビーム位置ずれ量を算出することができる。受光素子に設置する受光面の数や大きさは、用途や必要な精度に応じて自由に選択できる。
【0025】
図14は、光束(ビーム)102が受光素子101に当たったときの模式図である。
ここでは、前記光検出器の配置例で示したとおり、受光素子表面での光ビーム状態を観測することによって、被走査面上での光ビーム状態が把握できる光学配置になっている。
図14では、光ビームの結像状態が理想的であり、スポット径がもっとも小さい場合を表している。
また、光ビームの結像位置が理想的であり、上下左右方向への位置ずれが生じていない場合を表している。
また、図14の下に示すグラフについて、I(a)、I(b)、I(c)、I(d)は、それぞれ受光面101a、101b、101c、101dにおける受光量を表している。
それぞれの受光面における受光量および受光面同士の受光量比を解析することによって、光ビームの結像状態および光ビーム位置ずれの情報を取得することが可能である。
受光量の総和に注目すると、もっともスポット径が小さいときの受光量の総和(ΣI(k)=I(a)+I(b)+I(c)+I(d))が最小となり、プラス側またはマイナス側にデフォーカスになるにつれてスポット径が大きくなり、受光量の総和は増加する。
一方、受光面同士の受光量比に注目すると、(I(a)+I(b))/(I(c)+I(d))の比をとることで、副走査方向(YZ方向)へのスポット位置ずれ量を、(I(a)+I(d))/(I(b)+I(c))の比をとることで、主走査方向(XZ方向)へのスポット位置ずれ量を取得することができる。
例えば、図15ではスポットの位置ずれはなく、フォーカスのみがずれた場合を表している。スポット径が大きくなることで、それぞれの受光面での受光量が増加している。
【0026】
また、図16では、スポット位置が変化した場合を表している。
受光面同士の受光量比である(I(a)+I(b))/(I(c)+I(d))は1よりも大きくなり、ビームスポット位置が副走査方向(YZ方向)にずれていることがわかる。
以上の手段を用いることで、それぞれの受光量変化から結像位置のずれ量およびスポット位置のずれ量を換算する。この値を基に、補償光学系(補償光学手段)における光学素子および光学素子群の位置変化量に換算し、駆動手段での位置変化量を決定することができる。
【0027】
図17に光検出器で検出した光量の総和と光学素子間の相対位置の変位量との関係を表したグラフを示す。
横軸に、光検出器で検出した光量の総和(すなわち被走査面上でのスポット径)、縦軸に光学素子間の相対位置の変位量(すなわち駆動手段の駆動量)を示している。ここでは、設計値におけるスポット径が最小であり、すなわち、光検出器で検出した光量の総和が最小である場合を図示している。
スポット径が増大する要因としては、環境温度変化によって光学系を構成するレンズ材料の屈折率が低下し、光学系全体のパワーが設計値と比較して低下することなどが挙げられる。
この場合、不足したパワーに応じて光学素子間の相対位置を変化させることによって、光学系全体のパワーを補正することができる。
図17から光検出器で検出した光量の総和と光学素子間の相対位置の変位量との関係は一意的に決定することができる。
つまり、光検出器で検出した光量の総和に応じて、光学素子間の相対位置を変位させる機能を有する駆動手段の駆動量を決定することができる。
【0028】
図18に光検出器で検出した光量の受光量比(I(a)+I(b))/(I(c)+I(d))と光学素子群の変位量との関係を示す。
光検出器で検出した光量の受光量比は、被走査面上でのスポット位置ずれ量に対応している。被走査面上でのスポット位置のずれは、例えば、ポリゴンミラー面の面だおれの影響や環境温度変化に起因する筺体のゆがみによる光学素子配置の変化が原因となって生じる。
光学素子群を光軸に対して垂直な方向に平行移動させることで、被走査面上でのスポット位置ずれを補正することができる。
図18から、光検出器で検出した光量の受光量比から光学素子群の変位量を一意的に決定することができる。
つまり、光検出器で検出した光量の受光量比に応じて、光学素子群の位置を変位させる機能を有する駆動手段の駆動量を決定することができる。
以上をまとめると、光検出器で検出した受光量の総和が最小かつ受光面での受光量の比がそれぞれ1となるように駆動手段を制御することによって、被走査面上でのビームスポット径およびビームスポット位置は補償される。
以上に示すとおり、本実施例の走査光学系および駆動手段とビーム検出手段とからなる走査光学系の構成によれば、より簡便な制御機構で、被走査面上でのビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動の両方を補償することが可能である。
【0029】
[実施例3]
実施例3として、本発明を適用して構成した画像形成装置の構成例について、図19を用いて説明する。
本発明にかかる走査光学系に適用した画像形成装置について述べる。
図19に示すように、本実施例の走査光学系111は、光源手段112、偏向手段(コリメーターレンズ114、シリンドリカルレンズ115、ポリゴンミラー116、走査光学素子117)、光学素子群(補償光学系)120、を備えている。
更にまた、被走査面(感光体ドラム)118、光検出器119、信号制御手段124、駆動手段122aおよび122bを備えている。
光学素子群120は、光学素子120aおよび120bから構成されている。
光学素子120aおよび120bは、部材121aおよび121bを介して駆動手段122aと接続している。駆動手段122aが回転することによって、光学素子120aおよび120bの相対位置が変化する機構を有している。
また、光学素子群120は、ユニット123を介して駆動手段122bと接続している。
駆動手段122bが回転することによって、光学素子群120は光軸に対する相対位置が変化する機構を有している。
光検出器119は、被走査面上でのビーム径の大きさとビームのスポット位置を検出する機能を有している。
光検出器119で検出した信号は信号制御装置124に送信される。信号制御装置124は、光検出器119で検出した信号に基づいて、駆動手段122aおよび122bを駆動する信号を発生する。
【0030】
環境温度が25℃から50℃に変化したときに、被走査面上でのスポット径変化およびスポット位置が変化した場合について記載する。
以下の例においては、走査光学素子における環境温度変化に対する影響を除いて記載しているが、用途や必要な精度に応じて適宜考慮してもよい。
はじめに、環境温度25℃において、コリメーターレンズ114の焦点距離15mm、コリメーターレンズ114を構成する材料屈折率をn=1.525とする。
また、シリンドリカルレンズ115の主走査断面における焦点距離を120mm、副走査断面における焦点距離を25.5mmとする。
シリンドリカルレンズ115を構成する材料屈折率をn=1.525とする。
また、コリメーターレンズ114、シリンドリカルレンズ115および光学素子群(補償光学系)120を構成する材料をシクロオレフィン系ポリマー(線膨張率が70×10-6)で構成する。
【0031】
環境温度が25℃から50℃に変化した場合、材料の屈折率が変動するとともにシクロオレフィン系ポリマー材料が有する線膨張率に応じたレンズ自身の体積膨張により、レンズ曲率半径の変化が生じる。
環境温度50℃におけるコリメーターレンズ114およびシリンドリカルレンズ115を構成する材料屈折率は、n’=1.522に変化し、それぞれの曲率半径は、25℃のときと比較して0.175%程度変化する。
その結果、コリメーターレンズ114の焦点距離は、15.11mmに、シリンドリカルレンズ115の主走査断面方向の焦点距離は、120.21mmに、副走査断面方向の焦点距離は25.54mmに変化する。
【0032】
光学系全体の焦点距離が長くなることによって、被走査面(感光体ドラム)118におけるスポット径が拡大する。その結果、光検出器119で検出する光量が増大する。
このとき生じた系全体でのパワー変動量は、主走査断面方向に対して1.055×10-1、副走査断面方向に対して5.605×10-2である。
上記光学パワーの補正量を得るために必要な、光学素子120aおよび120bの面形状を求める。
光学素子と光学系の光軸との相対位置δについて、25℃のときδ=0mm、50℃のときδ’=0.010mm(=10μm)とすると、光学素子120aおよび120bが有する光学面の関数は、以下の式3で表現することができる。
光学素子と光学系の光軸との相対位置変化量(δ’−δ)は用途や構成に応じて自由に選択することができる。
Z=2.57899x3+0.889488x×y2 …式3
環境温度が25℃および50℃の時、光検出器119が出力する電気信号の値と、光学素子の相対位置変化量(この場合には、環境温度が25℃から50℃に変化したときに、10μm変動)との関係から、駆動手段122aの駆動量を決定することができる。
この駆動量をもとに、信号制御手段124にて、入力信号に対する出力信号の値を制御することによって、被走査面上でのスポット径を適切に補正可能である。また、環境変動に起因した筺体の歪みやポリゴンミラー面の作製精度に起因した面だおれなどの影響により、被走査面上でのスポット位置ずれが生じる。
ポリゴンミラー面の面だおれ精度(理想的には面だおれなし、つまり0°)は、一般的に5”(秒)から10”(秒)程度の高精度で研磨されている。
【0033】
被走査面上でのスポット位置変動が生じると、光検出器119で検出した光量の受光量比、(I(a)+I(b))/(I(c)+I(d))などの値が変化する。
この電気信号の変化量に応じて、光学系の光軸に対する光学素子群120の相対位置を変化させることによって、被走査面上でのスポット位置を補正することができる。
例えば、受光量比が1となるように光学素子群の位置を制御することで、被走査面上でのスポット位置を補正してもよい。
スポット位置ずれ量に対する光学素子群の相対位置変位量は、光学系全体が有する倍率関係に依存しているが、例えば、20μmのスポット位置ずれ量を補正するためには、光学素子群は、相対位置変位量として5μm程度必要である。
【0034】
光検出器で検出した光量の受光量比の値と、光学素子群の相対位置変位量との関係から、駆動手段122bの駆動量を決定することができる。
この駆動量をもとに、信号制御手段124にて入力信号に対する出力信号の値を制御することによって、被走査面上でのスポット位置を適切に補正可能である。以上のように、被走査面上におけるビームスポット径の変動およびビームスポット位置の変動に対して、簡便な機構でかつ環境変動や組立誤差に対して強い画像形成装置を提供することができる。
以上の本発明の構成によれば、走査光学系で発生する被走査面上におけるビームスポット径の変動やビームスポット位置の変動に対して、簡便な構成で実現可能な補償手段を提供することができる。
加えて、偏向手段の一部を補償手段と兼ね備えた構成にしてもよい。例えば、偏向手段を構成するシリンドリカルレンズを複数の光学素子からなる補償光学系で構成して,シリンドリカルレンズと補償光学系の機能とを兼ね備えるなど様々な構成をとることができる。
そして、本発明の補償手段は、画像形成装置など、走査光学系を有するさまざまな光学機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:走査光学系
2:光源手段
4:コリメーターレンズ
5:シリンドリカルレンズ
6:偏向手段(偏向ミラー)
7:走査光学素子
8:被走査面(感光体ドラム)
9:光学素子群(補償手段)
9a、9b、:光学素子
10a、10b:部材
11a、11b:駆動手段
12:ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査光学系および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザービームプリンターやデジタル複写機などの光走査装置においては、近年、画像形成装置の低価格化、コンパクト化に伴い、様々な環境変動に強く、高精細な印字に適した装置の要求が高まってる。
この種の光走査装置においては、低コスト化や小型化の要求の観点から、光学素子を構成する材料として、プラスチック材料が用いられることが多い。
プラスチック材料から構成された光学素子(プラスチックレンズ)は、使用環境の変化、例えば環境温度変化など、に伴い屈折率が変化するという性質を有している。
このことによって、プラスチックレンズを用いた光走査装置においては、環境変動による主走査方向および副走査方向の焦点位置変動やスポット位置変動が生じる。
【0003】
従来において、これらに対処するため、特許文献1では、常に良好なスポット径を保持した状態で、光ビームを感光体ドラムに結像するようにした装置が提案されている。
この装置では、ドラム上のビーム状態を検出するための2つの受光器と、コリメーターレンズの位置を調整するための位置調整器を備え、感光体ドラム上に投影した焦点合わせパターン画像を受光器で読み取る。
そして、その読み取った信号に基づいた制御信号により位置調整器を駆動することによって、感光体ドラム上でのスポット径を良好な状態に補正するように構成されている。
また、特許文献2では、環境温度上昇によって被走査面上でのビームスポット位置ずれが発生しないように、ビームスポット位置を所定の位置に補正する光走査装置が提案されている。
この装置では、光源と偏向手段との間にレーザービームの向きを変えるミラー部を有する振動体を配置し、振動体を駆動制御することによって、面だおれに起因するビームスポット位置ずれを補正するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−042813号公報
【特許文献2】特開2004−029113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例のものは、つぎのような課題を有している。
すなわち、特許文献1のものでは、原理的に副走査方向における面だおれに起因するビームスポット位置の補正ができない。
また、特許文献2のものでは、原理的に光ビームの焦点位置の補正ができない。また、これらの特許文献1と特許文献2の手段を組み合わせることで、光ビームの焦点位置ずれおよびビームスポット位置ずれの補正を同時に実現する場合、光源と光偏向手段との間に多くの部品を配置することになり補正に必要な制御機構が複雑になる。
【0006】
本発明では、上記課題を鑑み、小型で簡単な構成によって、被走査面上におけるビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動とを補正することが可能となる走査光学系および画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の走査光学系は、
光源手段から放射された光束を偏向手段により偏向して被走査面上に結像させる光路中に、前記被走査面上でのビームスポット径の変動およびビームスポット位置の変動を補償する補償手段を備えた走査光学系であって、
前記補償手段は、
前記光学系を構成する該光学系の光軸に沿って配置された該光軸と光軸に対して垂直な対称軸を含む対称面に対して面対称な形状の光学面を有する複数の光学素子と、
前記対称軸に平行な方向に前記複数の光学素子の相対位置を変化させる第1の駆動手段と、
前記複数の光学素子の相対位置の変化に影響を及ぼすことなく、前記対称軸と平行な方向に前記複数の光学素子全体の位置関係を変化させる第2の駆動手段と、を備え、
前記第1の駆動手段による前記複数の光学素子の相対位置の変化に応じて、前記光学系のパワーを変化させて前記被走査面上でのビームスポット径の変動を補償し、
前記第2の駆動手段による前記光学素子全体の位置関係に応じて、前記被走査面上でのビームスポット位置の変動を補償することを特徴とする。
また、本発明の画像形成装置は、上記した走査光学系を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型で簡単な構成によって、被走査面上におけるビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動とを補正することが可能となる走査光学系および画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1における走査光学系の構成例について説明する概略図。
【図2】本発明の実施例1における相対位置変位量に対するパワー変化量を表すグラフ。
【図3】本発明の実施例1における駆動手段の回転作用によってそれぞれの光学素子の相対位置を変化させた様子を示す模式図。
【図4】本発明の実施例1における駆動手段と部材の接続方法として歯車やローラーなどの摩擦によって力を伝達する方法を示す図。
【図5】本発明の実施例1における駆動手段と部材の接続方法として、駆動手段の回転軸を支点かつ力点としそれぞれの部材との接続部位を作用点とした梃子を用いる方法を示す図。
【図6】本発明の実施例1における駆動手段の回転作用によって光学系における光軸と光学素子群における光軸である副光軸との相対位置を変化させたときの様子を示す模式図。
【図7】本発明の実施例1における光学素子の相対位置が変化することによって入射した平行光が収束光に変換されている様子を示す図。
【図8】本発明の実施例1におけるY軸方向にギヤーを平行移動させたときの様子を示す図。
【図9】本発明の実施例2における走査光学系の構成例について説明する図。
【図10】本発明の実施例2における光検出器の設置例について説明する図。
【図11】本発明の実施例2における走査光学素子、折り返しミラーを経て被走査面上に結像した光束に対して被走査面からの反射光を光検出器にて受光する方法を示す概略図。
【図12】本発明の実施例2における偏向手段からの光束が走査光学素子を経て被走査面に結像する様子を示す図。
【図13】本発明の実施例2における受光素子の構成例を示す図。
【図14】本発明の実施例2における光束(ビーム)が受光素子に当たったときの模式図。
【図15】本発明の実施例2におけるスポットの位置ずれはなく、フォーカスのみがずれた場合を表している図。
【図16】本発明の実施例2におけるスポット位置が変化した場合を表している図。
【図17】本発明の実施例2における光検出器で検出した光量の総和と光学素子間の相対位置の変位量との関係を表したグラフ。
【図18】本発明の実施例2における光検出器で検出した光量の受光量比と光学素子群の変位量との関係を示すグラフ。
【図19】本発明の実施例3における画像形成装置の構成例について説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0011】
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した光源から放射された光束を偏向して被走査面上に結像させる光路中に、被走査面上でのビームスポット径の変動やビームスポット位置の変動を補償する補償手段を有する走査光学系の構成例について、図1を用いて説明する。
図1に示すように本実施例の走査光学系1は、光源手段2と、光束を偏向走査する機能を有する偏向手段4(コリメータレンズ)、5(シリンドリカルレンズ)、6(偏向ミラー)、7(走査光学素子)と、補償手段9(光学素子群)と、偏向した光束が結像する被走査面8を備えている。
光学系の主走査方向とは図1におけるXZ断面、副走査方向とは図1におけるYZ断面を表すこととする。
【0012】
補償手段9に含まれる光学素子9aおよび9bは、光学系の光軸に沿って配置されている。
また、光学素子9aおよび9bは、光軸に沿って配置された該光軸と光軸に対して垂直な対称軸を含む対称面に対して面対称な形状の光学面を有する光学面を有している。
例えば、図1におけるXZ面に対して面対称な形状の光学面を有している。
XZ面に対して面対称な形状の光学面を表現する関数の一例を以下の式1に示す。
Z=a×X3+b×X×Y2 …式1
(但し、aおよびbは任意の定数である。)
一般にアルバレツ面として知られている形状を有する光学面は、以下の式2で示す関数で表現することができる。
Z=c×(1/3×X3+X×Y2)
+d×X2+e×XY+f×X+g+h×F(y)…式2
(但し、c、d、e、f、g、hは任意の定数、F(y)はXに依存しない関数である。)
式1で示した関数は、式2で表現される関数における任意の定数を適宜選択することによって表現可能である。
光学素子9aおよび9bについて対称軸に平行な方向に相対位置を変位させることによって光学素子群9が有するパワーを変化させることができる。
【0013】
図2に光学素子9aおよび9bの相対位置変位量と光学素子群9におけるパワー変化量について表したグラフを示す。
横軸に光軸に対する光学素子9aおよび9bの相対位置変位量を、縦軸に光学素子群9におけるパワー変化量を示す。なお、このグラフでは、光学素子9aおよび9bの相対位置変位量がゼロの点にて光学素子群9のパワー変化量をゼロとして表している。
【0014】
図1に示す座標系を例に、光軸および複数の光学素子が光学素子9a、9bで構成されている本実施例の配置構成について説明する。
光軸と光学素子9aとの相対位置変化量について、X軸マイナス方向に変化したときの相対位置変化量をプラス、X軸プラス方向に変化したときの相対位置変化量をマイナスとする。
同様に、光軸と光学素子9bとの相対位置変化量について、X軸プラス方向に変化したときの相対位置変化量をプラス、X軸マイナス方向に変化したときの相対位置変化量をマイナスとする。
なお、光学素子9a、9bにおける相対位置変化量の方向および大きさは、ともに同じとする。
このグラフから、相対位置変位量がプラス方向に変化するとパワー変化量がプラスに変化することがわかる。同様に、相対位置変位量がマイナス方向に変化するとパワー変化量はマイナスに変化する。
光学素子9aおよび9bは、駆動手段(第1の駆動手段)11aの作用を光学素子9aおよび9bへ伝達する機能を有する部材10aおよび10bと接続している。
駆動手段11aと光学素子9aとを接続する部材10aおよび駆動手段11aと光学素子9bとを接続する部材10bによって構成されている。
また、ユニット12は駆動手段(第2の駆動手段)11bと接続されている。
駆動手段11bの作用によってユニット12が変位し、前記複数の光学素子の相対位置の変化に影響を及ぼすことなく、光学素子群(複数の光学素子全体)9が光軸に対して垂直な方向(対称軸に平行な方向)に位置関係を変位させる構造となっている。
【0015】
図3は、駆動手段23の回転作用によって、光学素子21aおよび21bの相対位置を変化させた様子の模式図である。
図3では、光軸に沿って進んできた平行光束が光学素子群21を通過している。駆動手段23が回転し、光軸に対する光学素子21a、21bの相対位置が変化することによって、光学素子群21が有するパワーが変化する。
その結果、光学素子群21を通過した光束が発散または収束する。ここでは、光学素子群21のパワーが増加して光束が収束している様子を表している。
部材22aおよび22bは、光学素子21aおよび21bが光軸に対して垂直な方向の軸に沿って移動するように接続されている。
例えば、部材22aおよび22bを光軸に対して垂直な方向に配置した溝やガイドなどに沿って配置することで実現可能である。駆動手段23は、例えば、ステッピングモーターなどのアクチュエータを適用することで、外部から入力した電気信号に応じて回転量を制御可能である。
【0016】
駆動手段23と部材22aおよび22bとの接続方法は、例えば、歯車やローラーなどの摩擦によって力を伝達する方法(図4)が可能である。
また、駆動手段23の回転軸を支点かつ力点とし部材22aおよび22bとの接続部位を作用点とした梃子を用いる方法(図5)など、さまざまな方法を適用することが可能である。
上記したように、光学素子21aおよび21bの相対位置を変位させることによって光学素子群21におけるパワーを変化させることができる。
光学素子群21におけるパワーを制御することによって光学系におけるパワー変動を補償し、被走査面上での光束(ビーム)の結像状態(スポットの大きさ)を制御することができる。
【0017】
図6に、駆動手段34の回転作用によって、光学系における光軸32と光学素子群31における光軸である副光軸33との相対位置を変化させたときの模式図を示す。
ここで副光軸とは、光学素子群31におけるパワーがゼロであるときの光学素子配置において、光学素子群を通過する光束の主光線と一致する軸であると定義する。
図6では、駆動手段34の回転作用によって、光学素子群31におけるそれぞれの光学素子31aおよび31bの相対配置を固定したまま、光学素子群31を光軸32に対して垂直な方向に変位させている。
その結果、副光軸33は光軸32に対して垂直な方向に移動している。光束35と光学素子群の副光軸33とがずれることによって、光束35の射出角度が変化し光束35は偏向する。
上記したように、光軸32と副光軸33との相対位置を変化させることによって、光学素子群31からの光束の射出角度を変化させることができる。
この作用によって、被走査面上でのビームのスポット位置を制御することができる。
被走査面上におけるビームスポット径の変動やビームスポット位置の変動は、環境温度変化などによって発生する材料屈折率の変化や筺体伸縮などの歪みなど、さまざまな要因によって発生する。
【0018】
具体的な例として、光学素子の相対位置を制御する駆動手段と、光軸と副光軸との相対位置を制御する駆動手段との両方の駆動手段を兼ねた共通のアクチュエータによって駆動可能に構成してもよい。
はじめに、図7で示す補償光学系(補償手段)は、複数の光学素子41a、41bで構成されている光学素子群41と駆動手段44、駆動軸45、ギヤー43、部材42a、42b、固定部材46、から構成されている。
駆動手段44の回転作用は、回転軸45を経てギヤー43に伝達する。ギヤー43の作用は、部材42aおよび42bを経て、光学素子41aおよび41bの配置を変化させる。
その結果、光学素子群41におけるパワーが変化し、光束の結像状態が変化する。図7では、光学素子41aおよび41bの相対位置が変化することによって、入射した平行光が収束光に変換されている様子を示している。
【0019】
次に、図8ではY軸方向にギヤー43を平行移動させたときの様子を示す。
駆動手段44をY方向に平行移動させることによってギヤー43のY座標と固定部材46のY座標を変化させている。
Y方向への変位によって、ギヤー43は部材42aのみと接触し、駆動手段44からの動力を部材42aへのみ伝達する。
同時に、固定部材46は、部材42aおよび42bと接触し、部材42aおよび42bを連結する。その結果、部材42aと42bは一体化する。ギヤー43からの作用は、部材42aおよび42bに対して同等に伝達する。
部材42aおよび42bに接続した光学素子41aおよび41bはX軸に対して平行に、かつ、同じ方向に移動することによって、光学素子群41の副光軸は、光軸に対して垂直な方向に移動する。
【0020】
副光軸が光軸に対して垂直な方向に移動することによって、光学素子群41に入射した平行光が、射出角度が変化して射出される様子を表している。
光学素子の相対位置を制御する駆動手段と、光軸と副光軸との相対位置を制御する駆動手段を同じ駆動手段で制御した。
その結果、被走査面上でのビームのスポット大きさとビームのスポット位置の両方を制御することが可能である。
以上のように、本実施例の走査光学系の構成によれば、より簡便な制御機構で、被走査面上でのビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動の両方を補償することが可能となる。
【0021】
[実施例2]
実施例2として、実施例1における走査光学系とビーム検出手段とを備えた走査光学系の構成例について、図9を用いて説明する。
本実施例の走査光学系51は、光源手段52と、偏向手段(コリメーターレンズ54、シリンドリカルレンズ55、偏向ミラー56、走査光学素子57)と、補償手段60と、偏向した光束が結像する被走査面58を備えている。
光学系の主走査方向とは図9におけるXZ断面、副走査方向とは図9におけるYZ断面を表すこととする。
補償手段60に含まれる光学素子60aおよび60bは、部材61aおよび61bを介して駆動手段62aと接続している。
駆動手段62aが回転することによって、光学素子60aおよび60bの相対位置が変化する機構を有している。
また、光学素子群60は、ユニット63を介して駆動手段62bと接続している。
駆動手段62bが回転することによって、光学素子群60は光軸に対する相対位置が変化する機構を有している。
光検出器59は、被走査面上でのビームスポットの大きさとビームスポットの位置を検出する機能を有している。
光検出器59で検出した光検出器信号は信号制御手段64に送信される。信号制御手段64は、光検出器59で検出した光検出信号に基づいて、駆動手段62aおよび62bを駆動する制御信号を発生する。
【0022】
図10に、本実施例における光検出器の設置例について説明する図を示す。
図10では走査光学系の一部を図示したものであり、走査光学素子71を通過した光束が折り返しミラー72で反射し、被走査面73上に結像している。
折り返しミラー72は、光量の一部を透過する機能を有する反射面を有しており、折り返しミラー72を透過した光を光検出器74で受光している。
このとき、折り返しミラー72と被走査面73との光学配置と、折り返しミラー72と光検出器74との光学配置とが光学的に一致するように設定する。
このことによって、光検出器74を用いて被走査面上での光ビームの結像状態や光ビームのスポット位置を検出することが可能である。
【0023】
そのほかの手段としては、図11に示すように、走査光学素子81、折り返しミラー82を経て被走査面83上に結像した光束に対して被走査面83からの反射光を光検出器84にて受光する方法が挙げられる。
また、図12に示すように、ポリゴンミラーなどの偏向手段91からの光束が走査光学素子92を経て被走査面93に結像する場合、所望の走査角度を超えた光束の一部を光検出器94で受光する方法をとってもよい。
光検出器は、被走査面上でのビームスポット径とビームスポット位置の情報を取得するために、様々な配置をとることができる。
また、用途や必要な精度に応じて、光検出器を複数個配置してもよい。
光検出器に搭載される受光素子において、被走査面上でのビームスポット径の大きさやビームスポット位置を検出する方法について一例を挙げて説明する。
【0024】
図13に示す受光素子101は、4つの受光面101a、101b、101c、101dから構成されている。
それぞれの受光面は、受光した光のエネルギーに応じた値の電気信号を発生する光電変換機能を有している。4つの受光面にて光電変換された電気信号から、光ビームの結像状態およびビーム位置ずれ量を算出することができる。受光素子に設置する受光面の数や大きさは、用途や必要な精度に応じて自由に選択できる。
【0025】
図14は、光束(ビーム)102が受光素子101に当たったときの模式図である。
ここでは、前記光検出器の配置例で示したとおり、受光素子表面での光ビーム状態を観測することによって、被走査面上での光ビーム状態が把握できる光学配置になっている。
図14では、光ビームの結像状態が理想的であり、スポット径がもっとも小さい場合を表している。
また、光ビームの結像位置が理想的であり、上下左右方向への位置ずれが生じていない場合を表している。
また、図14の下に示すグラフについて、I(a)、I(b)、I(c)、I(d)は、それぞれ受光面101a、101b、101c、101dにおける受光量を表している。
それぞれの受光面における受光量および受光面同士の受光量比を解析することによって、光ビームの結像状態および光ビーム位置ずれの情報を取得することが可能である。
受光量の総和に注目すると、もっともスポット径が小さいときの受光量の総和(ΣI(k)=I(a)+I(b)+I(c)+I(d))が最小となり、プラス側またはマイナス側にデフォーカスになるにつれてスポット径が大きくなり、受光量の総和は増加する。
一方、受光面同士の受光量比に注目すると、(I(a)+I(b))/(I(c)+I(d))の比をとることで、副走査方向(YZ方向)へのスポット位置ずれ量を、(I(a)+I(d))/(I(b)+I(c))の比をとることで、主走査方向(XZ方向)へのスポット位置ずれ量を取得することができる。
例えば、図15ではスポットの位置ずれはなく、フォーカスのみがずれた場合を表している。スポット径が大きくなることで、それぞれの受光面での受光量が増加している。
【0026】
また、図16では、スポット位置が変化した場合を表している。
受光面同士の受光量比である(I(a)+I(b))/(I(c)+I(d))は1よりも大きくなり、ビームスポット位置が副走査方向(YZ方向)にずれていることがわかる。
以上の手段を用いることで、それぞれの受光量変化から結像位置のずれ量およびスポット位置のずれ量を換算する。この値を基に、補償光学系(補償光学手段)における光学素子および光学素子群の位置変化量に換算し、駆動手段での位置変化量を決定することができる。
【0027】
図17に光検出器で検出した光量の総和と光学素子間の相対位置の変位量との関係を表したグラフを示す。
横軸に、光検出器で検出した光量の総和(すなわち被走査面上でのスポット径)、縦軸に光学素子間の相対位置の変位量(すなわち駆動手段の駆動量)を示している。ここでは、設計値におけるスポット径が最小であり、すなわち、光検出器で検出した光量の総和が最小である場合を図示している。
スポット径が増大する要因としては、環境温度変化によって光学系を構成するレンズ材料の屈折率が低下し、光学系全体のパワーが設計値と比較して低下することなどが挙げられる。
この場合、不足したパワーに応じて光学素子間の相対位置を変化させることによって、光学系全体のパワーを補正することができる。
図17から光検出器で検出した光量の総和と光学素子間の相対位置の変位量との関係は一意的に決定することができる。
つまり、光検出器で検出した光量の総和に応じて、光学素子間の相対位置を変位させる機能を有する駆動手段の駆動量を決定することができる。
【0028】
図18に光検出器で検出した光量の受光量比(I(a)+I(b))/(I(c)+I(d))と光学素子群の変位量との関係を示す。
光検出器で検出した光量の受光量比は、被走査面上でのスポット位置ずれ量に対応している。被走査面上でのスポット位置のずれは、例えば、ポリゴンミラー面の面だおれの影響や環境温度変化に起因する筺体のゆがみによる光学素子配置の変化が原因となって生じる。
光学素子群を光軸に対して垂直な方向に平行移動させることで、被走査面上でのスポット位置ずれを補正することができる。
図18から、光検出器で検出した光量の受光量比から光学素子群の変位量を一意的に決定することができる。
つまり、光検出器で検出した光量の受光量比に応じて、光学素子群の位置を変位させる機能を有する駆動手段の駆動量を決定することができる。
以上をまとめると、光検出器で検出した受光量の総和が最小かつ受光面での受光量の比がそれぞれ1となるように駆動手段を制御することによって、被走査面上でのビームスポット径およびビームスポット位置は補償される。
以上に示すとおり、本実施例の走査光学系および駆動手段とビーム検出手段とからなる走査光学系の構成によれば、より簡便な制御機構で、被走査面上でのビームスポット径の変動とビームスポット位置の変動の両方を補償することが可能である。
【0029】
[実施例3]
実施例3として、本発明を適用して構成した画像形成装置の構成例について、図19を用いて説明する。
本発明にかかる走査光学系に適用した画像形成装置について述べる。
図19に示すように、本実施例の走査光学系111は、光源手段112、偏向手段(コリメーターレンズ114、シリンドリカルレンズ115、ポリゴンミラー116、走査光学素子117)、光学素子群(補償光学系)120、を備えている。
更にまた、被走査面(感光体ドラム)118、光検出器119、信号制御手段124、駆動手段122aおよび122bを備えている。
光学素子群120は、光学素子120aおよび120bから構成されている。
光学素子120aおよび120bは、部材121aおよび121bを介して駆動手段122aと接続している。駆動手段122aが回転することによって、光学素子120aおよび120bの相対位置が変化する機構を有している。
また、光学素子群120は、ユニット123を介して駆動手段122bと接続している。
駆動手段122bが回転することによって、光学素子群120は光軸に対する相対位置が変化する機構を有している。
光検出器119は、被走査面上でのビーム径の大きさとビームのスポット位置を検出する機能を有している。
光検出器119で検出した信号は信号制御装置124に送信される。信号制御装置124は、光検出器119で検出した信号に基づいて、駆動手段122aおよび122bを駆動する信号を発生する。
【0030】
環境温度が25℃から50℃に変化したときに、被走査面上でのスポット径変化およびスポット位置が変化した場合について記載する。
以下の例においては、走査光学素子における環境温度変化に対する影響を除いて記載しているが、用途や必要な精度に応じて適宜考慮してもよい。
はじめに、環境温度25℃において、コリメーターレンズ114の焦点距離15mm、コリメーターレンズ114を構成する材料屈折率をn=1.525とする。
また、シリンドリカルレンズ115の主走査断面における焦点距離を120mm、副走査断面における焦点距離を25.5mmとする。
シリンドリカルレンズ115を構成する材料屈折率をn=1.525とする。
また、コリメーターレンズ114、シリンドリカルレンズ115および光学素子群(補償光学系)120を構成する材料をシクロオレフィン系ポリマー(線膨張率が70×10-6)で構成する。
【0031】
環境温度が25℃から50℃に変化した場合、材料の屈折率が変動するとともにシクロオレフィン系ポリマー材料が有する線膨張率に応じたレンズ自身の体積膨張により、レンズ曲率半径の変化が生じる。
環境温度50℃におけるコリメーターレンズ114およびシリンドリカルレンズ115を構成する材料屈折率は、n’=1.522に変化し、それぞれの曲率半径は、25℃のときと比較して0.175%程度変化する。
その結果、コリメーターレンズ114の焦点距離は、15.11mmに、シリンドリカルレンズ115の主走査断面方向の焦点距離は、120.21mmに、副走査断面方向の焦点距離は25.54mmに変化する。
【0032】
光学系全体の焦点距離が長くなることによって、被走査面(感光体ドラム)118におけるスポット径が拡大する。その結果、光検出器119で検出する光量が増大する。
このとき生じた系全体でのパワー変動量は、主走査断面方向に対して1.055×10-1、副走査断面方向に対して5.605×10-2である。
上記光学パワーの補正量を得るために必要な、光学素子120aおよび120bの面形状を求める。
光学素子と光学系の光軸との相対位置δについて、25℃のときδ=0mm、50℃のときδ’=0.010mm(=10μm)とすると、光学素子120aおよび120bが有する光学面の関数は、以下の式3で表現することができる。
光学素子と光学系の光軸との相対位置変化量(δ’−δ)は用途や構成に応じて自由に選択することができる。
Z=2.57899x3+0.889488x×y2 …式3
環境温度が25℃および50℃の時、光検出器119が出力する電気信号の値と、光学素子の相対位置変化量(この場合には、環境温度が25℃から50℃に変化したときに、10μm変動)との関係から、駆動手段122aの駆動量を決定することができる。
この駆動量をもとに、信号制御手段124にて、入力信号に対する出力信号の値を制御することによって、被走査面上でのスポット径を適切に補正可能である。また、環境変動に起因した筺体の歪みやポリゴンミラー面の作製精度に起因した面だおれなどの影響により、被走査面上でのスポット位置ずれが生じる。
ポリゴンミラー面の面だおれ精度(理想的には面だおれなし、つまり0°)は、一般的に5”(秒)から10”(秒)程度の高精度で研磨されている。
【0033】
被走査面上でのスポット位置変動が生じると、光検出器119で検出した光量の受光量比、(I(a)+I(b))/(I(c)+I(d))などの値が変化する。
この電気信号の変化量に応じて、光学系の光軸に対する光学素子群120の相対位置を変化させることによって、被走査面上でのスポット位置を補正することができる。
例えば、受光量比が1となるように光学素子群の位置を制御することで、被走査面上でのスポット位置を補正してもよい。
スポット位置ずれ量に対する光学素子群の相対位置変位量は、光学系全体が有する倍率関係に依存しているが、例えば、20μmのスポット位置ずれ量を補正するためには、光学素子群は、相対位置変位量として5μm程度必要である。
【0034】
光検出器で検出した光量の受光量比の値と、光学素子群の相対位置変位量との関係から、駆動手段122bの駆動量を決定することができる。
この駆動量をもとに、信号制御手段124にて入力信号に対する出力信号の値を制御することによって、被走査面上でのスポット位置を適切に補正可能である。以上のように、被走査面上におけるビームスポット径の変動およびビームスポット位置の変動に対して、簡便な機構でかつ環境変動や組立誤差に対して強い画像形成装置を提供することができる。
以上の本発明の構成によれば、走査光学系で発生する被走査面上におけるビームスポット径の変動やビームスポット位置の変動に対して、簡便な構成で実現可能な補償手段を提供することができる。
加えて、偏向手段の一部を補償手段と兼ね備えた構成にしてもよい。例えば、偏向手段を構成するシリンドリカルレンズを複数の光学素子からなる補償光学系で構成して,シリンドリカルレンズと補償光学系の機能とを兼ね備えるなど様々な構成をとることができる。
そして、本発明の補償手段は、画像形成装置など、走査光学系を有するさまざまな光学機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:走査光学系
2:光源手段
4:コリメーターレンズ
5:シリンドリカルレンズ
6:偏向手段(偏向ミラー)
7:走査光学素子
8:被走査面(感光体ドラム)
9:光学素子群(補償手段)
9a、9b、:光学素子
10a、10b:部材
11a、11b:駆動手段
12:ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源手段から放射された光束を偏向手段により偏向して被走査面上に結像させる光路中に、前記被走査面上でのビームスポット径の変動およびビームスポット位置の変動を補償する補償手段を備えた走査光学系であって、
前記補償手段は、
前記光学系を構成する該光学系の光軸に沿って配置された該光軸と光軸に対して垂直な対称軸を含む対称面に対して面対称な形状の光学面を有する複数の光学素子と、
前記対称軸に平行な方向に前記複数の光学素子の相対位置を変化させる第1の駆動手段と、
前記複数の光学素子の相対位置の変化に影響を及ぼすことなく、前記対称軸と平行な方向に前記複数の光学素子全体の位置関係を変化させる第2の駆動手段と、を備え、
前記第1の駆動手段による前記複数の光学素子の相対位置の変化に応じて、前記光学系のパワーを変化させて前記被走査面上でのビームスポット径の変動を補償し、
前記第2の駆動手段による前記光学素子全体の位置関係に応じて、前記被走査面上でのビームスポット位置の変動を補償することを特徴とする走査光学系。
【請求項2】
前記偏向手段の一部が前記補償手段を兼ね備えることを特徴とする請求項1に記載の走査光学系。
【請求項3】
前記第1と第2の駆動手段は、前記被走査面上での光ビーム状態を検出する光検出器信号により検出された信号に基づいて、制御信号を出力する制御手段によって制御されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走査光学系。
【請求項4】
前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とは、これらの両方の駆動手段を兼ねた共通のアクチュエータによって駆動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の走査光学系。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の走査光学系を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
光源手段から放射された光束を偏向手段により偏向して被走査面上に結像させる光路中に、前記被走査面上でのビームスポット径の変動およびビームスポット位置の変動を補償する補償手段を備えた走査光学系であって、
前記補償手段は、
前記光学系を構成する該光学系の光軸に沿って配置された該光軸と光軸に対して垂直な対称軸を含む対称面に対して面対称な形状の光学面を有する複数の光学素子と、
前記対称軸に平行な方向に前記複数の光学素子の相対位置を変化させる第1の駆動手段と、
前記複数の光学素子の相対位置の変化に影響を及ぼすことなく、前記対称軸と平行な方向に前記複数の光学素子全体の位置関係を変化させる第2の駆動手段と、を備え、
前記第1の駆動手段による前記複数の光学素子の相対位置の変化に応じて、前記光学系のパワーを変化させて前記被走査面上でのビームスポット径の変動を補償し、
前記第2の駆動手段による前記光学素子全体の位置関係に応じて、前記被走査面上でのビームスポット位置の変動を補償することを特徴とする走査光学系。
【請求項2】
前記偏向手段の一部が前記補償手段を兼ね備えることを特徴とする請求項1に記載の走査光学系。
【請求項3】
前記第1と第2の駆動手段は、前記被走査面上での光ビーム状態を検出する光検出器信号により検出された信号に基づいて、制御信号を出力する制御手段によって制御されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走査光学系。
【請求項4】
前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とは、これらの両方の駆動手段を兼ねた共通のアクチュエータによって駆動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の走査光学系。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の走査光学系を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−242719(P2012−242719A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114468(P2011−114468)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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