説明

走行支援制御装置

【課題】スミアの発生方向を考慮してCCDイメージセンサのカメラ(CCDカメラ)の設置を工夫することなく、簡単なエッジ検出の画像処理により撮影画像のスミアの除去および高輝度のノイズの低減の両方が同時に行なえるようにする。
【解決手段】画像処理ユニット3の水平エッジ検出部31、垂直エッジ検出部32により、CCDカメラ2の撮影画像Piの水平方向エッジ画像Phおよび垂直方向エッジ画像Pvを生成する。このとき、スミアがCCDカメラ2の撮影画像Piの垂直、水平いずれかの方向に発生しても、両方向のエッジ画像Ph、Pvのいずれか一方にのみスミアが含まれ、他方にはスミアが含まれなくなる。そして、画像処理ユニット3の論理積演算部33により両エッジ画像Ph、Pvの論理積を演算し、演算結果の区分線の検出対象の画像Phvとしてスミアが除去された画像Phvを形成し、同時に、撮影画像Piに散在する高輝度のノイズも低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車に搭載したCCDイメージセンサ構成のカメラの撮影画像の画像処理により自車の走行車線の区分線を検出して自車の走行を支援する走行支援制御装置に関し、詳しくは、撮影画像のノイズの低減・除去に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車線逸脱の警報や防止(レーンキープとも呼ばれる)の走行支援制御装置を備えた車両は、自車に搭載されたCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)構成のカメラ(以下、CCDカメラという)により、自車の走行車線両側の区分線(通常は白線)を含む自車の前方または後方を撮影し、その撮影画像の画像処理により前記区分線を検出する。さらに、検出した区分線および自車の走行状態等に基づき、走行中の自車が走行車線から逸脱する可能性を判断して、逸脱の警報または制御(例えば操舵修正の制御)を行なって自車の走行を支援する。
【0003】
この場合、CCDカメラを搭載する理由の1つは、CMOSイメージセンサ構成のカメラでは撮影が困難になる夜間等の低照度環境下においても前記区分線の検出に十分な明るさの撮影画像を得るためである。
【0004】
しかしながら、CCDカメラは撮影画像中に太陽等の高輝度の光源が含まれると、撮影画像の垂直方向または水平方向に直線状のスミアが発生する。
【0005】
図4は中央上部の破線で囲んだ太陽aの強い光に基づき、1点破線#1で囲んで示した垂直方向のスミア(白線)bが発生した撮影画像Piの一例を示し、スミアbの太さは自車の走行車線cの両側の区分線dに略等しくなっている。
【0006】
この場合、撮影画像Piからのエッジ検出等によって区分線dを検出すると、スミアbを区分線dとして誤検出する可能性があり、その結果、逸脱の可能性を誤判断する可能性がある。
【0007】
そこで、スミアbが撮影画像Piに必ず水平方向に発生するようにCCDカメラを設置し、スミアbの方向と区分線dの方向とが大きく異なるようにして前記の誤検出を防止することが提案されている(例えば、特許文献1(要約書、段落[0018]−[0022]、図2、図3等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−21346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明のように、撮影画像Piに必ず水平方向のスミアbが発生するようにCCDカメラを設置し、スミアbの発生方向を撮影画像Piの区分線dと大きく異なる方向にしたとしても、スミアbを除去するため、例えば撮影画像の垂直エッジ画像を生成して水平方向に発生したスミアbを除去し、スミアbを除去した前記垂直エッジ画像から区分線dを検出する必要がある。
【0010】
さらに、太陽等の高輝度の光源の光が路面の継ぎ目等で反射することにより、CCDカメラの撮影画像Piは、実際には図4の例えば1点破線#2で囲んだ部分等に高輝度のノイズが散在し、これらの高輝度のノイズによっても区分線dを誤検出して逸脱を誤判断する可能性がある。そのため、撮影画像Piに前記高輝度のノイズを低減するフイルタ処理を施す必要もある。
【0011】
すなわち、従来の走行支援制御装置の場合は、撮影画像Piに必ず水平方向のスミアbが発生するようにCCDカメラを設置する必要があるとともに、スミアbを除去する処理と、前記高輝度のノイズを低減する処理とを別々に行なう必要があり、処理および構成が複雑化して高価になる問題がある。
【0012】
本発明は、スミアの発生方向を考慮してCCDカメラの設置を工夫することなく、簡単なエッジ検出の画像処理により撮影画像のスミアの除去および高輝度のノイズの低減の両方が同時に行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、本発明の走行支援制御装置は、自車に搭載したCCDカメラの撮影画像の画像処理により自車の走行車線の区分線を検出して自車の走行を支援する走行支援制御装置において、前記撮影画像の水平方向、垂直方向のエッジ検出の画像処理により、前記撮影画像の水平方向エッジ画像および垂直方向エッジ画像を生成するエッジ画像生成手段と、前記区分線の検出対象の画像として前記水平方向エッジ画像と前記垂直方向エッジ画像の論理積の画像を生成する論理積演算手段とを備える(請求項1)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明の走行支援制御装置の場合、スミアがCCDカメラの撮影画像に垂直、水平いずれの方向に発生しても、エッジ画像生成手段により撮影画像の水平方向エッジ画像および垂直方向エッジ画像を生成すると、両方向のエッジ画像のいずれか一方にのみスミアが含まれ、他方にはスミアが消えて含まれなくなる。そして、論理積演算手段により両方向エッジ画像の論理積を演算することにより、演算結果の区分線の検出対象の画像はスミアが除去された画像になる。同時に、撮影画像Piに散在する高輝度のノイズも、論理積演算手段の論理積の演算によって低減される。
【0015】
したがって、スミアの発生方向を考慮してCCDカメラの設置を工夫することなく、簡単で安価なエッジ検出の画像処理により、撮影画像のスミアの除去および高輝度のノイズの低減の両方を同時に行なうことができ、区分線検出の処理および構成の簡素化を図る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1の一部の詳細なブロック図である。
【図3】本発明の処理過程の画像の説明図である。
【図4】スミアが発生した撮影画像例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、一実施形態について、図1〜図4を参照して詳述する。
【0018】
図1は自車1が備える本発明の走行支援制御装置を示し、CCDカメラ2は自車1のインナーミラーの近傍、換言すれば、自車1の車幅方向の略中央に、前方または後方を撮影し、その撮影画像が例えば図4に示した撮影画像Piのように区分線dを含むように取付けられる。なお、CCDカメラ2は通常は前方を撮影する向きに取付けられるが、例えば車線変更の際のバックモニタを兼ねるような場合には、後方を撮影する向きに取付けられる。このとき、CCDカメラ2はスミアbの発生方向を考慮することなく横置または縦置に前記インナーミラーの近傍取付けられ、その撮影画像Piはスミアbの発生方向が垂直方向または水平方向になる。
【0019】
そして、CCDカメラ2は自車1の走行中に設定されたフィールド周期(またはフレーム周期)でくり返し前方または後方を撮影し、このとき得られる例えば図4に示す撮影画像Piは、スミアbの高輝度の白飛びが垂直方向に発生し、また、太陽aの強い光が道路等で反射して発生した高輝度ドットのノイズが含まれる。なお、道路に沿った区分線dは必ず撮影画像Piの斜め方向の線分になる。
【0020】
つぎに、CCDカメラ2の撮影画像Piはマイクロコンピュータ構成の画像処理ユニット(画像処理ECU)3に取り込まれる。この画像処理ユニット3は本発明のエッジ画像生成手段、論理積演算手段を形成する。エッジ画像生成手段は撮影画像Piの水平方向、垂直方向のエッジ検出の画像処理により、撮影画像Piの水平方向エッジ画像Phおよび垂直方向エッジ画像Pvを生成する。論理積演算手段は、区分線dの検出対象の画像として水平方向エッジ画像Phと垂直方向エッジ画像Pvの論理積の画像Phvを生成する。
【0021】
図2は画像処理ユニット3の構成を示し、図3は水平方向エッジ画像Ph、垂直方向エッジ画像Pv、論理積の画像Phvの例を示す。そして、CCDカメラ2の撮影画像Piは水平エッジ検出部31および垂直エッジ検出部32に入力される。
【0022】
水平エッジ検出部31は例えば撮影画像Piの垂直方向(上下方向)の各隣接2画素の輝度の差を求めて撮影画像Piを垂直方向に微分し、その微分画像を設定された閾値で2値化して水平方向エッジ画像Phを生成する。このとき、水平方向エッジ画像Phは垂直方向のスミアbが消えて含まないようになる。
【0023】
垂直エッジ検出部32は例えば撮影画像Piの水平方向(左右方)の各隣接2画素の輝度の差を求めて撮影画像Piを水平方向に微分し、その部分画像を設定された閾値で2値化して垂直方向エッジ画像Pvを生成する。このとき、垂直方向エッジ画像Pvには垂直方向のスミアbが残る。
【0024】
なお、区分線dは水平、垂直の両方向のエッジ成分を含むので、両エッジ画像Ph、Pvに含まれる。また、撮影画像Piの前記高輝度のノイズには、水平、垂直の両方向のエッジ成分を含むものやいずれか一方のエッジ成分を含むもの等が混在し、いずれか一方のエッジ成分のみを含むものや他方のエッジ成分のレベルが低いものは、他方のエッジ画像Pv、Phからは消える。
【0025】
そして、水平エッジ検出部31の水平方向エッジ画像Ph、垂直エッジ検出部32の垂直方向エッジ画像Pvは論理積演算部33に入力され、論理積演算部33は例えば両エッジ画像Ph、Pvの各画素毎に論理積を演算して論理積の画像、すなわち、演算結果の区分線dの検出対象の画像Phvを生成する。このとき、画像Phvにはスミアbが含まれない。また、前記高輝度のノイズも低減される。
【0026】
さらに、画像Phvが図1の逸脱検出ユニット4に取り込まれ、逸脱検出ユニット4は周知の区分線検出(白線検出)の画像処理により画像Phvから区分線dを検出して自車1の走行車線cを認識し、走行車線cの情報および、自車1の車速、加速度、操舵角等からの自車1の走行方向の予測に基づき、自車1の走行の走行車線cからの逸脱の可能性を検出する。
【0027】
このとき、画像hvからスミアbが消え、同時に、前記高輝度のノイズも低減されているので、それらに基づく区分線dの誤検出がなく、自車1の走行車線cからの逸脱の可能性の検出精度が著しく向上する。
【0028】
そして、自車1が走行車線cから逸脱しそうになると、逸脱検出ユニット4の検出に基づき、警報部5から警報音や警報メッセージを発生する。また、操舵制御アクチュエータ6のパワーステアリング制御により、逸脱回避の操舵修正制御を実行する。
【0029】
ところで、CCDカメラ2の設置によっては、スミアbは撮影画像Piに水平方向に発生するが、この場合は、垂直方向エッジ画像Pvの水平方向のスミアbが消えて画像Phvにはスミアbが含まれなくなる。また、CCDカメラ2をどのように設置しても前記高輝度のノイズは発生するが、両エッジ画像Ph、Pvの論理積の演算により画像Phvの前記高輝度のノイズは低減される。
【0030】
したがって、スミアbの発生方向を考慮してCCDカメラ2の設置を特別に工夫することなく、画像処理ユニットの簡単なエッジ検出の画像処理により撮影画像のスミアbの除去および前記高輝度のノイズの低減の両方を同時に行なうことができ、区分線dの検出の処理および構成の簡素化を図り、自車1の走行車線cからの逸脱の可能性の検出精度を著しく向上して走行支援性能を向上することができる。
【0031】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、自車1のCCDカメラ2の取り付け個所は、インナーミラーの近傍でなくてもよいのは勿論であり、サイドミラーの近傍等の車体の左右側であってもよい。
【0032】
また、区分線dの検出結果は、車線逸脱防止以外の走行支援制御に用いてもよいのは勿論である。
【0033】
つぎに、画像処理ユニット3の構成等は前記実施形態の構成に限られるものではない。
【0034】
そして、本発明は、種々の車両の走行支援制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 自車
2 CCDカメラ(CCDイメージセンサのカメラ)
3 画像処理ユニット
31 水平エッジ検出部
32 垂直エッジ検出部
33 論理演算部
Pi 撮影画像
Ph 水平エッジ画像
Pv 垂直エッジ画像
Phv 論理積の画像
b スミア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車に搭載したCCDイメージセンサ構成のカメラの撮影画像の画像処理により自車の走行車線の区分線を検出して自車の走行を支援する走行支援制御装置において、
前記撮影画像の水平方向、垂直方向のエッジ検出の画像処理により、前記撮影画像の水平方向エッジ画像および垂直方向エッジ画像を生成するエッジ画像生成手段と、
前記区分線の検出対象の画像として前記水平方向エッジ画像と前記垂直方向エッジ画像の論理積の画像を生成する論理積演算手段とを備えたことを特徴とする走行支援制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−224707(P2010−224707A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69306(P2009−69306)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】