説明

走行玩具システム

【課題】 ビデオカメラを搭載した走行玩具の移動速度の変化が大きい場合にも、見ている者が違和感を感じないスムーズな映像を提示し、しかも総消費電力を小さくすることができる走行玩具システムを提供する。
【解決手段】 走行玩具3に搭載されたビデオカメラ17の撮影条件を制御するビデオカメラ制御装置41が、走行玩具3の速度が所定速度よりも速いときには、速度が所定速度よりも遅いときよりもビデオカメラ17のフレームレートを高くするように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置エネルギを利用して走行する走行玩具に搭載したビデオカメラで撮影した映像を映像表示装置に表示するための走行玩具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−279648号公報(特許文献1)には、遠隔操縦される走行玩具にビデオカメラを搭載し、ビデオカメラで撮影した映像をインターネットを介して映像表示装置に送信して、操縦者にビデオカメラが撮影した映像を表示する玩具システムが開示されている。
【特許文献1】特開2006−279648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来提案されている走行玩具システムでは、走行玩具の移動速度に拘わらず、一定のフレームレートで撮影した映像を映像表示装置に表示している。走行玩具の移動速度の変化が小さい場合には、走行玩具の移動速度に変化があっても、画像表示装置に表示される映像の質にはばらつきがほとんどなく、映像を見ている者が違和感を感じることはない。しかしながら、移動速度の変化が大きい場合に、ビデオカメラのフレームレート(1秒間の撮影コマ数)を低速度時を基準にして定めると、走行玩具が高速で移動しているときに表示される映像は、走行玩具が低速度で移動しているときに表示される映像と比較すると、映像中のオブジェクト(風景等の撮影される対象物等)の動きがスムーズではなく、コマ送りされたような不連続な映像のように見えてしまうこともある。特に玩具にあっては、玩具の周囲に映し出される映像対象物が家庭の中に置かれている種々の日常品である場合が多く、実際の乗り物のように漠然とした風景ではないため、特に、映像を見ている者が違和感を感じやすい。そのため、走行玩具システムでは、あたかも走行玩具に乗っているような臨場感を見ている者に与えることができなかった。
【0004】
なお、フレームレートを走行玩具の高速移動に合わせて高くすると、走行玩具の速度が低速であっても、また高速であっても、見ている者に違和感を与えないスムーズな映像を提示することが可能である。しかしながらこの場合には、低速移動しているときにもフレームレートの高い映像を表示しなければならず、画像表示装置に送信する情報量が常に多くなり、結果として、総消費電力が大きくなる問題が生じる。この問題解決のためには、走行玩具システムにおいて、搭載する電源用蓄電手段を大容量のものとしなければならない問題を生じさせることになり、結果として、玩具の価格を高くする原因になる。
【0005】
本発明の目的は、ビデオカメラを搭載した走行玩具の移動速度の変化が大きい場合にも、見ている者が違和感を感じないスムーズな映像を提示し、しかも総消費電力を小さくすることができる走行玩具システムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、画像表示装置に送信する情報量を小さくすることができる走行玩具システムを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ビデオカメラのフレームレートを変更しても、映像表示装置に送信する映像信号のデータ量が大きくなることのない走行玩具システムを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、走行玩具移送装置が走行玩具を移送しているときに走行玩具の電源用蓄電手段に充電することが可能な走行玩具システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の走行玩具システムでは、位置エネルギを利用して走行路上を走行する走行玩具に、ビデオカメラと、少なくともビデオカメラのフレームレートを変更可能に制御するビデオカメラ制御装置と、ビデオカメラから出力される映像信号を映像表示装置に送信する信号送信装置と、電源用蓄電手段とを搭載する。また本発明の走行玩具システムでは、走行玩具を位置エネルギが小さくなる位置から位置エネルギが大きくなる位置まで移送する走行玩具移送装置を備えている。
【0010】
ビデオカメラ制御装置は、走行玩具の速度が所定速度よりも速いときには、速度が所定速度よりも遅いときよりもフレームレートを高くするように構成されている。このように構成すると、走行玩具が高速度で移動しているときには、その速度に適したフレームレートで撮影が行われ、また走行玩具が低速度で移動しているときには、走行玩具が高速度で移動している場合よりも低く且つその速度に適したフレームレートで撮影が行われる。従って、走行玩具が所定速度よりも速い速度で走行しているときでも、走行玩具が所定速度よりも遅い速度で走行しているときと同じようなスムーズな映像を表示することができる。しかも走行玩具の速度に応じて、信号送信装置から送信する映像信号に含まれる情報量を変更して、総消費電力を小さくすることができる。その結果、電源用蓄電手段として充電不可能な一次電池を使用する場合には、電池寿命を延ばすことができる。また電源用蓄電手段として充電可能な二次電池またはコンデンサを使用する場合には、電源用蓄電手段の容量を小さくすること及び充電時間を短くすることが可能になる。
【0011】
電源用蓄電手段は、少なくともビデオカメラ、信号送信手段及び後述するビデオカメラ制御装置に電力を供給することができればよく、前述のように一次電池であっても、二次電池またはコンデンサであってもよい。
【0012】
なおビデオカメラが撮影する方向は、任意である。例えばビデオカメラを走行玩具の前方に取り付けることにより、走行玩具の進行方向を撮影するようにしてもよいし、走行玩具の後方に取り付けて、走行玩具の後方を撮影するようにしてもよい。また、ビデオカメラは、固定式のものでも、またズームが可能なものでもよい。さらにビデオカメラはビデオカメラ制御装置により撮影方向を変更できるように構成してもよい。
【0013】
ビデオカメラ制御装置は、走行玩具の速度が所定速度よりも速い場合に、フレームレートを高くするものであれば、どのような構成であってもよい。例えば、ビデオカメラ制御装置は、走行玩具の速度を検出する速度センサと、速度センサの出力に応じてフレームレートを変更する撮影条件変更部とを備えていてもよい。この場合には、撮影条件変更部は、速度センサが検出する速度のレベルが予め定めた複数の基準レベル範囲のいずれに属するのかを判定する基準レベル判定手段と、基準レベル判定手段の判定結果に応じて少なくともフレームレートを変更する撮影条件変更手段とを備えている。そして撮影条件変更手段は、速度センサが検出する速度が含まれる基準レベル範囲が上位の基準レベル範囲になると、下位の基準レベル範囲において使用するフレームレートよりもフレームレートが高くなるようにフレームレートを変更する。上位の基準レベル範囲と下位の基準レベル範囲とは、上位の基準レベル範囲に含まれる速度が、下位の基準レベル範囲に含まれる速度よりも速くなる関係を有している。
【0014】
このような場合には、複数の基準レベル範囲におけるフレームレートは、映像表示装置に表示される映像を見る者に違和感を与えない値にそれぞれ定めることが好ましい。なお基準レベル範囲は、高速基準レベル範囲と低速基準レベル範囲の二つの範囲でもよいし、さらに多くの基準レベル範囲を含むものであってもよい。基準レベル範囲を増やすと、ビデオカメラを搭載した走行玩具の移動速度の変化が大きい場合にも、見ている者が違和感を感じないスムーズな映像を提示することができる。
【0015】
また、走行玩具が走行路上を走行している位置(走行範囲)を判定することにより、走行玩具の速度がどのような速度範囲にあるかを判定するようにしてもよい。この場合には、走行玩具システムは、走行玩具の速度が所定速度よりも速くなる高速度区間と速度が所定速度より遅くなる低速度区間とを走行玩具の走行路上の位置により検出する区間検出手段を更に備える。区間検出手段は、走行路に設けられて高速度区間または低速度区間の一方を特定するための区間特定部と、ビデオカメラ制御装置に設けられて区間特定部によって特定される区間内に走行玩具がいることを判定する区間判定手段とからなる。そして、ビデオカメラ制御装置は、区間判定手段が判定する区間に応じて、走行玩具が所定速度よりも速いのかまたは遅いのかを決定して、フレームレートを変更する撮影条件変更部をさらに備えている。
【0016】
区間特定部及び区間判定手段は、走行玩具の走行路上の位置を検出して、高速度区間または低速度区間のいずれの区間に走行玩具がいるのかを判定できるものであればどのような構成のものであってもよい。例えば、区間特定部は、高速度区間または低速度区間の少なくとも両端に設けられた2以上の永久磁石とすることができる。この場合には、区間判定手段を、2以上の永久磁石の存在を検出するホール素子を備えてホール素子の出力に基づいて走行玩具が走行路の高速度区間または低速度区間のいずれの区間にいるのかを判定するように構成する。また、区間特定部は、高速度区間または低速度区間の少なくとも両端に設けられた2以上の光反射部材とすることができる。この場合には、区間判定手段を、2以上の光反射部材の存在を検出するために、走行路に光を放射する発光素子と光反射部材で反射された光を受光する受光素子とを備えて、受光素子の出力に基づいて走行玩具が走行路の高速度区間または低速度区間のいずれの区間にいるのかを判定するように構成する。区間特定部は、高速度区間または低速度区間の少なくとも一方の走行路に設けられたマーク標識としてもよい。この場合には、区間判定手段は、マーク標識の存在を検出するために、ビデオカメラの映像信号に基づいてマーク標識を判定する映像認識手段を備える。そして、区間判定手段を、映像認識手段の出力に基づいて走行玩具が走行路の高速度区間または低速度区間のいずれの区間にいるのかを判定するように構成する。このように構成すると、走行玩具が所定の区間に進入するだけで、フレームレートを確実に変更することができる。なお、この場合にも、高速度区間及び低速度区間におけるフレームレートを、映像表示装置に表示される映像を見る者に違和感を与えない値にそれぞれ定めてもよい。
【0017】
走行玩具移送装置は、位置エネルギが小さくなる位置から位置エネルギが大きくなる位
置まで走行玩具を移送するものであれば、どのような構成であってもよい。例えば、走行路の途中に設置されて、独自に駆動源を持って走行玩具を搬送するように構成されたものでよい。例えば、走行玩具移送装置の構成は、走行玩具を位置エネルギが大きくなる位置まで移送している間に、電源用蓄電手段を充電するための充電用電力を供給する充電用電力供給装置を備えた構造であってもよい。この場合には、走行玩具移送装置に充電用電力供給装置からの電力を出力するための出力電極を設け、走行玩具に充電用電力供給装置の出力電極と接続される充電用電極及び充電用電力供給装置から供給された電力で電源用蓄電手段を充電する充電回路を設ける。このような構成にすると、走行玩具を位置エネルギが大きくなる位置まで移送している間に、電源用蓄電手段を充電することが可能となる。その結果、走行玩具を移送するたびに電源用蓄電手段を充電することができるので、容量の小さい電源用蓄電手段を用いることが可能になり、システムの価格の低減に寄与する。またこのようにすると、電源用蓄電手段を充電するために、走行玩具システムの動作を止める必要がないという利点がある。
【0018】
走行玩具移送装置が、走行玩具を位置エネルギが大きくなる位置まで移送している間に、電源用蓄電手段を充電するように構成されている場合には、走行玩具システムを、走行玩具の速度が所定速度よりも速くなる高速度区間と速度が所定速度より遅くなる低速度区間とを走行玩具の走行路上の位置により検出する区間検出手段を更に備えるように構成することが好ましい。この場合には、区間検出手段は、ビデオカメラ制御装置に設けられて走行玩具の充電用電極が充電用電力供給装置の出力電極と接続されているか否かを判定することにより、走行玩具が高速度区間または低速度区間のどちらを走行しているかを検出する区間判定手段を備える。そして、ビデオカメラ制御装置は、区間判定手段が判定する区間に応じて、走行玩具が所定速度よりも速いのかまたは遅いかのを決定して、フレームレートを変更する撮影条件変更部をさらに備える。このように構成すると、充電される区間を低速度区間と定めればよいので、低速度区間を簡単に検出することができ、フレームレートを確実に変更できる。さらに、走行玩具が、走行玩具移送装置により移送されて充電されている間は、フレームレートが低くなるので、電力の消費を低減させることが可能であり、十分な充電が可能である。
【0019】
また、走行玩具移送装置を走行玩具に搭載するように構成してもよいのは勿論である。この場合には、走行玩具移送装置としてモータを走行玩具に搭載し、モータを駆動して自走させることにより、走行玩具を位置エネルギが小さくなる位置から位置エネルギが大きくなる位置まで移送する。
【0020】
なお走行玩具移送装置が入口部と出口部とを有している場合には、走行玩具移送装置の入口部と出口部との間に、走行路を連続して形成し、この走行路を、走行玩具移送装置の出口部から出た走行玩具が位置エネルギだけで走行して走行玩具移送装置の入口部まで戻ることができるように構成してもよい。この場合には、外部から走行玩具の動作を止めない限り走行玩具は走行路を走行し続け、かつ、映像信号を送信し続けることが可能であるので、映像を見ている者が走行玩具を移動させる必要がなくなる。
【0021】
また信号送信装置は、フレームレートに応じて映像信号の解像度を変更する解像度変更手段を備えていてもよい。このような場合は、解像度変更手段は、フレームレートが高くなると、映像信号の解像度が低くなるように変更動作をし、フレームレートが低くなると、映像信号の解像度が高くなるように変更動作をするように構成する。送信する情報量(データ量)は、フレームレート×解像度によって決まる。したがってこのように解像度を変更すると、フレームレートが高くなった場合でも、送信するデータ量が少なくなるので、信号送信装置から送信するデータ量が大きくなることを抑制することができ、消費電力の低減に寄与する。また、フレームレートが高い場合には、1つのフレームが表示されている時間は、フレームレートが低い場合よりも短くなる。従ってフレームレートが高い場合には、映像信号の解像度が低くても、すなわち多少粗い映像であっても、映像を見ている者は、ほとんど違和感を感じることはない。なお、ビデオカメラが撮影する映像の解像度を変更することが可能な場合には、信号送信装置に解像度変更手段を備える代わりに、ビデオカメラ制御装置を、ビデオカメラの解像度も変更可能に構成してもよい。
【0022】
映像表示装置は、任意の構成とすることができる。走行玩具システムが、専用のコントローラを備えている場合には、コントローラに映像表示装置を実装することができる。このように構成すると、走行玩具が撮影した映像をみながらコントローラを操作することができ、操作を確実にすることができる。また映像表示装置は、モニタと、映像信号をモニタで再生する再生装置とから構成してもよい。このように構成すれば、いわゆる家庭用テレビゲーム装置を受信装置として利用して、汎用のモニタを映像信号表示装置として映像を見ることが可能になる。なお、コントローラで制御する対象は、走行玩具の動作であってもよいし、走行玩具が撮影した映像を利用するゲームでは、ゲーム内容とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の走行玩具システムによれば、走行玩具の移動速度に応じて走行玩具に搭載したビデオカメラが撮影する映像のフレームレートを変更しているので、玩具でありながら、見ている者が違和感を感じないスムーズな映像を提示することができる。しかも総消費電力を小さくすることができる走行玩具システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図面を参照して、本発明の走行玩具システムの実施の形態を説明する。図1は、本発明の走行玩具システムの第1の実施の形態の一例を示している。走行玩具システム1は、走行玩具3と、走行玩具移送装置5と、表示画面7を備えた専用コントローラ9と、走行路15とから構成されている。この例では、走行玩具移送装置5は、走行玩具3とは別に、走行路15の一部を構成するように設けられている。走行玩具移送装置5は、走行玩具3が進入する入口部11と、走行玩具3を走行路に戻す出口部13とを備えている。なお図1には、走行玩具移送装置5の移送部5Aが示されているだけで、移送部に駆動力を与える駆動部は図示していない。走行玩具移送装置5は、入口部11から進入した走行玩具3を、走行玩具3の位置エネルギが大きくなる位置にある出口部13まで移送する。したがって、走行玩具移送装置5の図1に示した移送部は、走行玩具3の走行路15の一部を構成することになる。
【0025】
図2は、本実施の形態に用いることができる走行玩具3の一例を示しており、図2(A)、(B)、(C)及び(D)は、走行玩具3のそれぞれ正面図、右側面図、底面図及び斜視図である。走行玩具3の玩具本体3Aには、ビデオカメラ17が搭載されている。ビデオカメラ17の本体部は、玩具本体3A内に配置され、玩具本体3Aの前方端面3Bにビデオカメラ17のレンズ19が露出した状態で配置されている。玩具本体3Aの後方端部には、コントローラ9との間で信号を送受信するためのアンテナ21が取り付けられている。また、玩具本体3Aの底面3Cからは、走行玩具3を走行させるための4つの車輪23の一部がそれぞれ露出している。また底面3Cからは、後述する充電用電力供給装置と電気的に接続される一対の集電用ブラシ25が露出している。これら一対の集電用ブラシ25は、図5において説明する充電用電極61を構成するものである。また底面3Cには、走行玩具移送装置5の移送部5Aの突起部37[図3(A)参照]が係合する被係合部27Aを備えた孔27が形成されている。
【0026】
ビデオカメラ17の構造は、任意であり、携帯電話のカメラ等で採用されているCCDカメラを撮像手段として用いる小型のビデオカメラを利用することができる。またビデオカメラ17は、少なくともフレームレートを変更する機能を有しているものを用いる。このような機能を有するビデオカメラ17は、走行玩具3の内部に設けられたビデオカメラ制御装置41(図5参照)からの撮影条件変更指令に基づいてフレームレートを変更する。なおこのビデオカメラ17は、設定されたフレームレートで撮影対象(オブジェクト)を撮影すると、その撮影した情報を映像信号に変換する。ビデオカメラ17から出力された映像信号は、走行玩具3の内部に配置した信号処理回路により処理されて後述する信号送信装置43(図5参照)に伝送される。そして、走行玩具3内に設けられた信号送信装置43は、走行玩具3に設けられたアンテナ21を利用して、表示画面7を備えた専用コントローラ9に映像信号を送信する。
【0027】
走行玩具3の底部3Cから露出する車輪23は、走行路15の走行面と接触している。そして車輪23は、走行路15が下りの斜面の場合には、位置エネルギを利用して摩擦により回転し、走行玩具3を走行路15に沿ってスムーズに走行させる。走行玩具3の速度に比例した信号を出力する速度センサ45(図5参照)として、車輪23が固定された車軸の回転数を測定する光学式または磁気式のエンコーダや加速度センサの出力を積分して速度信号を出力する速度センサ等が用いられている。また、走行玩具3の内部には、図5に示すブロック図に基づいて後に詳しく説明するように、電源用蓄電手段65と、電源用蓄電手段65に充電する充電回路63と、速度センサ45と、ビデオカメラ制御装置41とを含む各種の電気回路部品が内蔵されている。
【0028】
図3(A)は、本実施の形態に用いることができる走行玩具移送装置5の移送部5Aの拡大斜視図を示している。また図3(B)は、移送部5A上に載った走行玩具3を正面側から見た図を示している。また図4(A)乃至(D)は、走行玩具移送装置5の移送部5Aが、走行玩具3を位置エネルギが大きくなる位置まで移送する状態を順番に示す図である。走行玩具移送装置5の移送部5Aは、入口部11から出口部13まで走行玩具3を移送する。また、移送部5Aは、板状のベース30の表面部に、その幅方向の両縁部に沿うようにベース30の長手方向に延びて、走行玩具3の車輪23を受け入れる一対の車輪受け入れ溝31を備えている。そしてベース30の表面部は、一対の車輪受け入れ溝31の内側に、一対の車輪受け入れ溝31に沿うように一対の給電レール33を備えている。走行玩具3に設けた一対の集電ブラシ25は、走行玩具3が移送部5A上を移動している間、一対の給電レール33と接触して、図示しない直流電源から供給される直流電力を受電する。一対の集電ブラシ25と一対の給電レール33とは、走行玩具3が移動している間、集電ブラシ25の先端が一対の給電レール33と確実に接触し、充電を確実に行えるように構造及び材質が選択されている。しかし集電ブラシ25の形状は、走行玩具3が走行玩具移送装置5の移送部5A以外の走行路を走行しているときに、走行路15の表面と接触しない形状となっている。またベース30の中央部には、一対の給電レール33の間に位置するように、ゴム製の無端ベルトで構成されたエスカレータ35が、ベース30の周囲を長手方向に沿って回転するように設けられている。エスカレータ35の表面には、走行玩具3の孔27の一方の内側端部に設けられる係合部27Aと係合する突起部37が、長手方向に一定の間隔をあけて複数個一体に設けられている。エスカレータ35は、移送部5Aの下に配置されて、エスカレータ35の突起部37と係合することにより、エスカレータ35を回転駆動する図示しない駆動装置により駆動される。エスカレータ35の回転により、突起部37が入口部11から出口部13へ移動する過程で、走行玩具3は、係合部27が突起部37に係合した状態でベース30に沿って移動する。そして走行玩具3が、位置エネルギが小さくなる位置(入口部11)から位置エネルギが大きくなる位置(出口部13)に向けて移送部5A上を移動する。なお走行玩具移送装置5の構造は、本実施の形態の構造に限定されるものではない。
【0029】
図5は、本実施の形態における走行玩具システム1の走行玩具3、走行玩具移送装置5及び専用コントローラ9の内部に分けて配置された、図1乃至図4の実施の形態における信号処理回路を構成する各種の手段と、信号及び電力の流れを示すブロック図である。図5では、細線の矢印が信号の流れを示しており、太線の矢印が電力の流れを示している。本実施の形態における信号処理回路は、走行玩具3内にビデオカメラ17、ビデオカメラ制御装置41、信号送信装置43を少なくとも備えている。
【0030】
ビデオカメラ制御装置41は、少なくとも速度センサ45と、撮影条件変更部47とを備えている。そして撮影条件変更部47は、基準レベル判定手段49と、撮影条件変更手段51とを少なくとも備えている。また、本実施の形態においては、信号送信装置43は、解像度変更手段53を備えている。またコントローラ9内には、映像表示装置55を少なくとも備えている。
【0031】
ビデオカメラ制御装置41は、走行玩具3の走行速度を速度センサ45で測定し、測定結果に基づいて撮影条件変更部47によりビデオカメラ17の撮影条件を変更する。速度センサ45は、走行玩具3の走行速度を測定して、測定結果を撮影条件変更部47の基準レベル判定手段49に出力する。基準レベル判定手段49は、速度センサ45から出力される速度のレベルが、予め定めた複数の基準レベル範囲のいずれに属するのかを判定する。基準レベル判定手段49は、判定した結果を撮影条件変更手段51に出力する。本実施の形態においては、複数の基準レベル範囲を、高速基準レベル範囲と低速基準レベル範囲の二つの範囲としている。
【0032】
撮影条件変更手段51は、基準レベル判定手段49が出力する判定結果に応じて、少なくともビデオカメラ17のフレームレートを変更する。撮影条件変更手段51が、フレームレートを変更する態様は任意である。本実施の形態の撮影条件変更手段51は、速度センサ45が検出する速度が含まれる基準レベル範囲が上位の基準レベル範囲になると、下位の基準レベル範囲において使用するフレームレートよりもフレームレートが高くなるようにフレームレートを変更する。なお、撮影条件変更手段51が変更する各基準レベル範囲におけるフレームレートは、映像表示装置55の表示画面7に表示される映像を見る者に違和感を与えない値にそれぞれ定められている。具体的には、上位の基準レベル範囲におけるフレームレートは、30fpsであり、下位の基準レベル範囲におけるフレームレートは、7.5fpsとしている。ただし、フレームレートはこれらの数値に限定されるものではない。なおフレームレートが変更された場合には、映像表示装置55側のリフレッシュレートも、変更されたフレームレートと同期するように変更されることになる。リフレッシュレートの変更は、本実施の形態の場合、コントローラ9側で実行する。フレームレートが変更された情報は、映像信号と一緒に信号送信装置43からコントローラに送信される。
【0033】
ビデオカメラ17は、ビデオカメラ制御装置41で変更された撮影条件で、オブジェクトを撮影し、撮影した情報を映像信号に変換して信号伝送装置43に出力する。信号伝送装置43は、アンテナ21を介して映像表示装置55を備えた専用コントローラ9に映像信号を送信する。本実施の形態において、信号伝送装置43は、解像度変更手段53を備えている。解像度変更手段53は、基準レベル判定手段49が判定した基準レベル範囲に応じて映像信号の解像度を変更する。具体的には、解像度変更手段53は、フレームレートが高くなると、映像信号の解像度が低くなるように変更動作をし、フレームレートが低くなると、映像信号の解像度が高くなるように変更動作をするように構成する。このように構成すると、フレームレートが高くなった場合でも、解像度を変更することにより、送信するデータ量を少なくすることができる。したがって信号送信装置43から送信するデータ量が大きくなることを抑制することができ、消費電力の低減に寄与する。また、フレームレートが高い場合には、1つのフレームが表示されている時間は、フレームレートが低い場合よりも短くなる。従ってフレームレートが高い場合には、映像信号の解像度を低くしても、すなわち多少粗い映像にしても、映像を見ている者は、ほとんど違和感を感じることはない。本実施の形態においては、信号伝送装置43に解像度変更手段53を設けて、送信する映像信号の解像度を変更しているが、解像度を変更しなくてもよいのは勿論である。また、ビデオカメラ17が撮影する映像の解像度を変更することが可能に構成されている場合には、ビデオカメラ制御装置41により、ビデオカメラ17が撮影する映像の解像度を変更してもよい。コントローラ9に実装された映像表示装置55は、アンテナ39で受信した映像信号に基づいて、表示画面7(図1)に映像を表示する。
【0034】
また、本実施の形態においては、走行玩具移送装置5が、充電用電力供給装置57及び出力電極59を備えている。また走行玩具3が、充電用電極61(ブラシ25)、充電回路63及び電源用蓄電手段65を備えている。充電用電力供給装置57は、出力電極59を介して電力を走行玩具3に供給する。充電用電力供給装置57は、電源用蓄電手段65を充電するための直流電力を供給することができる構成であれば、どのような構成であってもよい。本実施の形態においては、出力電極59は、走行玩具移送装置5の移送部5A上に施設された、前述の一対の給電レール33によって構成されている。走行玩具3の充電回路63には、充電用電極61(集電ブラシ25)が出力電極59と接触することにより、充電用電力供給装置57から充電用の電力が供給される。充電回路63は、充電用電極61に印加された電圧で、電源用蓄電手段65を充電する。電源用蓄電手段65は、少なくともビデオカメラ17、信号送信装置43及びビデオカメラ制御装置41に電力を供給することができればよく、一次電池であっても、二次電池またはコンデンサであってもよい。本実施の形態では、電源用蓄電手段65として、比較的短時間のうちに充電を完了する電解二重層コンデンサを用いている。したがって電源用蓄電手段65を充電するために、走行玩具システムの動作を止める必要がないという利点がある。また本実施の形態においては、走行玩具3を走行玩具移送装置5により移送するたびに、電源用蓄電手段65を充電することができるので、容量の小さい電解二重層コンデンサを電源用蓄電手段65として用いることが可能になる。
【0035】
本実施の形態においては、映像信号の送受信を電波信号を用いて無線で行っている。しかし走行路15に映像信号を送信することが可能な導電性のレールを設けて、このレールと映像表示装置とをケーブル等で接続することにより有線で映像信号の送受信を行ってもよい。なお、走行玩具3が専用コントローラ9により動作を制御することが可能な場合には、専用コントローラから送信される制御信号をアンテナ21が受信して、受信した制御信号を信号処理回路で処理して、走行玩具3の動作を制御することができる。
【0036】
専用コントローラ9には、表示画面7に映像信号を表示する映像表示装置55が実装されている。また、専用コントローラ9には、走行玩具3との間で信号を送受信するためのアンテナ39(図1)が取り付けられている。映像表示装置55は、アンテナ39を利用して走行玩具3からの映像信号を受信して、受信した映像信号に基づいて表示画面7に映像を表示する。
【0037】
図6は、図5の信号処理回路の主要部分をマイクロコンピュータを利用して実現する場合に使用するソフトウエアのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。このフローチャートでは、まずステップST1で、走行玩具3のビデオカメラ17が、撮影を開始する。そして、撮影した映像を映像信号に変換して専用コントローラ9に送信し、専用コントローラ9の映像表示装置55は、受信した映像信号に基づいて映像を表示画面7に表示する。ステップST2では、走行玩具3の速度を検出して、走行玩具3の速度の基準レベルを判定する。ステップST3で判定した速度の基準レベルが上位(Yes)である場合には、図7の表に示すように、ステップST4Bで、ビデオカメラ制御装置41は、ビデオカメラ17が撮影する映像のフレームレートを「高」に決定する。また、信号送信装置43の解像度変更手段53がコントローラ9に送信する映像信号の解像度を「低」に決定する。ステップST3で判定した速度の基準レベルが下位(No)である場合には、ステップST4Aでビデオカメラ制御装置41が、ビデオカメラ17が撮影する映像のフレームレートを「低」に決定する。また、信号伝送装置43の解像度変更手段53が、コントローラ9に送信する映像信号の解像度を「高」に決定する。ステップST5では、ステップST4Aまたは4Bで決定したフレームレート及び解像度に従って、撮影条件変更手段51及び解像度変更手段53が、フレームレート及び解像度を変更する。ステップST6では、コントローラ9を操作すること等により、撮影を終了するか否かを判定する。撮影を終了しない(No)場合には、ステップST2へ戻って、再び走行玩具の速度を検出し、基準レベルを判定する。ステップST6で、撮影を終了する場合には、撮影を終了する。上記のアルゴリズムは、一例であり、他のアルゴリズムであってもよい。
【0038】
図8は、本発明の走行玩具システムの第2の実施の形態で用いる信号処理回路及びこの信号処理回路の流れの構成の一部を示すブロック図である。なお図8においては、ビデオカメラ制御装置141が、図5に示した速度センサ45及び基準レベル判定手段49の代わりに、走行玩具103の速度が所定速度よりも速くなる高速度区間と速度が所定速度より遅くなる低速度区間とを、走行玩具103の走行路115上の位置により検出する区間判定手段171を備えている点で、図5に示した第1の実施の形態の構成とは異なる。なお、図8には、図5に示した第1の実施の形態と同様の部分に、図5に付した符号の数に100の数を加えた数の符号を付して詳細な説明を省略する。本実施の形態においては、区間検出手段181は、走行玩具103の充電用電極161(集電用ブラシ)が充電用電力供給装置157の出力電極159及び走行路115上のその他の低速度区間に設けた低速区間表示用電極(図示せず)と接触しているか否かを判定することにより、走行玩具103が高速度区間または低速度区間のどちらを走行しているかを検出する区間判定手段171を備えている。走行路115の設計にもよるが、位置エネルギが最も高い位置から位置エネルギだけで走行する走行玩具3の速度が、予め定めた速度よりも遅くなる低速度区間は、走行玩具移送装置105によって移送される移送部105A以外にも、走行路115中に形成されることは当然にしてある。そこでこのような移送部105A以外の低速度区間を検出するためには、走行路115の低速度区間に対応する走行面に充電用電極161(集電用ブラシ)と接触して低速度区間であることを示す電圧を充電用電極161に印加するレール状の低速区間表示用電極を配置する。なお低速区間表示用電極には、充電に必要な電圧を印加しておく必要はなく、電圧の有無の検出できるレベルの電圧を印加しておければよい。そして充電用電極161とこの低速区間表示用電極または走行玩具移送装置105の出力電力159とが接触している区間を、区間判定手段171が低速度区間と判定し、その他の区間を高速度区間と判定する。充電用電極161は、走行玩具103が走行玩具移送装置105上に進入することにより、走行玩具移送装置105の走行面上に設けられた出力電極159と接触して、充電回路163を介して電源用蓄電手段165に充電する。このときビデオカメラ制御装置141内に設けられた区間判定手段171は、充電用電極161が出力電極159と接続された状態であることを撮影条件変更手段151へ出力する。また充電用電極161が、前述の低速区間表示用電極と接触しているときにも、区間判定手段171は、走行玩具103が低速度区間を走行していることを検出し、その検出結果を撮影条件変更手段151へ出力する。撮影条件変更手段151は、区間判定手段171が出力する検出結果に応じてビデオカメラ117のフレームレートを変更する。なお、撮影条件変更手段151が変更するフレームレートは、映像表示装置155に表示される映像を見る者に違和感を与えない値にそれぞれ定められている。
【0039】
図9は、図8の信号処理回路の主要部分をマイクロコンピュータを利用して実現する場合に使用するソフトウエアのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。まずステップST101で、走行玩具103のビデオカメラ117は、撮影を開始する。そして、撮影した映像を映像信号に変換してコントローラ109に送信し、コントローラ109の映像表示装置155は、受信した映像信号に基づいて映像を表示画面107に表示する。ステップST102では、充電用電極161が出力用電極159または低速度区間表示用電極と接触しているか否かを検出する。ステップST103で充電用電極161が出力用電極159または低速度区間表示用電極と接触していることが検出されなかった(No)場合には、走行玩具は高速度区間を走行していると判定して、ステップST104Aで、ビデオカメラ制御装置141が、ビデオカメラ117が撮影する映像のフレームレートを「高」に決定する。また、信号送信装置143の解像度変更手段153がコントローラ109に送信する映像信号の解像度を「低」に決定する。ステップST103で充電用電極161が出力電極159または低速度区間表示用電極と接触していることを検出した場合(Yes)には、ステップST104Bでビデオカメラ制御装置141が、ビデオカメラ117が撮影する映像のフレームレートを「低」に決定する。また、信号送信装置143の解像度変更手段153がコントローラ109に送信する映像信号の解像度を「高」に決定する。ステップST105では、ステップST104Aまたは104Bで決定したフレームレート及び解像度に従って、撮影条件変更手段151及び解像度変更手段153が、フレームレート及び解像度を変更する。ステップST106では、コントローラ109を操作すること等により、撮影を終了するか否かを判定する。撮影を終了しない(No)場合には、ステップST102へ戻って、再び走行玩具の充電用電極161が出力用電極159または低速度区間表示用電極と接触しているか否かを検出し、高速度区間を走行しているか低速度区間を走行しているかを判定する。ステップST106で、撮影を終了する場合には、撮影を終了する。上記のアルゴリズムは、一例であり、他のアルゴリズムであってもよい。
【0040】
図10は、本発明の走行玩具システムの第3の実施の形態の構成を示す図である。また図11(A)乃至(D)には、この実施の形態で使用するバッテリ内蔵型の自走式の走行玩具203の正面図、側面図、底面図及び斜視図が示されている。さらに図12には、第3の実施の形態の信号処理回路の構成を示してある。なお、図10乃至図12においては、図1乃至図5に示した第1の実施の形態と同様の部分に、図1乃至図5に付した符号の数に200の数を加えた数の符号を付して詳細な説明を省略する。本実施の形態においては、映像表示装置255は、映像信号を受信して再生する再生装置273としていわゆる家庭用テレビゲーム装置を用いており、また表示画面を有する汎用のモニタ207を用いている。また、走行路215上には、高速度区間を特定するための区間特定部として作用する永久磁石275及び277が設けられている。永久磁石275及び277を設ける位置は、高速度区間または低速度区間の両端である。本実施の形態においては、下り坂部分とこの下り坂部分に連続する平坦部分からなる2つの高速度区間の開始位置にそれぞれN極の永久磁石275を埋設し、高速度区間の終了位置にS極の永久磁石277を埋設している。さらに、本実施の形態における走行玩具移送装置は、走行玩具203内に設けられたモータ283からなり、電源用蓄電手段265は、充電不可能な乾電池のような一次電池である。
【0041】
図11に示すように、本実施の形態においては、走行玩具203が、走行路215に設けられた永久磁石275及び277の磁極(N極またはS極)の存在を検出するホール素子からなる磁気センサ279の一部を玩具本体203Aの底面203Cに露出している。区間判定手段271は、磁気センサ279の出力から、N極の永久磁石275を検出した位置を高速度区間の開始位置と判定し、S極の永久磁石277を検出した位置を高速度区間の終了位置と判定する。また登り坂216の開始位置に、S極の永久磁石277を埋設固定し、登り坂の終了位置にN極の永久磁石を固定しておくことにより、区間判定手段271は登り坂216の区間を判定して、モータ制御回路282にモータを駆動する区間であることを知らせる信号を出力する。なおこの場合には、区間判定手段271には、S極の永久磁石の後に続いてS極の永久磁石を検出したときには、登り坂の開始位置と判定する判定基準を持たせておけばよい。モータ制御回路282は、登り坂の開始位置から終了位置までモータ283に内蔵されているドライブ回路に駆動信号を出力してモータ283を回転させる。走行玩具203が上り坂216の頂上に達した後は、モータ283の駆動は停止され、走行玩具203の車輪223は、自由に回転する。したがって以後は、位置エネルギを利用して車輪223は摩擦により回転し、走行玩具203は走行路215上を走行する。
【0042】
図12に示した撮影条件変更手段251は、区間判定手段271が高速度区間を検出している間、ビデオカメラ217のフレームレート及び解像度を変更する。なお、撮影条件変更手段251が変更するフレームレートは、第1及び第2の実施の形態と同様に、映像表示装置255に表示される映像を見る者に違和感を与えない値にそれぞれ定められている。映像表示装置255は、再生装置273が受信した映像信号を再生して、モニタ207に映像を表示する。
【0043】
上記第3の実施の形態では、区間特定手段として、永久磁石を用いたが、永久磁石に代えて走行路215上の例えば高速度区間に光反射部材を配置し、光反射部材の有無により、高速度区間と低速度区間とを区別できるようにしてもよい。この場合には、走行玩具に、走行路に光を放射する発光素子と光反射部材で反射された光を受光する受光素子とを設ける。そして、区間判定手段は、受光素子が光反射部材で反射された光を受光している区間を、走行玩具が特定の区間に存在していると判断するように構成する。なお登り坂の区間については、その区間に光反射部材を不連続に設ける等の工夫を施すことにより、低速度区間であり且つ登り坂の区間であることを判別できるようにすればよい。なお光反射部材の設け方は任意であり、また光反射部材を用いた場合の区間判定手段の区間判定方法も任意である。
【0044】
図13は、図12の信号処理回路の主要部分をマイクロコンピュータを利用して実現する場合に使用するソフトウエアのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。まずステップST201で走行玩具203のビデオカメラ217が、撮影を開始する。そして、撮影した映像を映像信号に変換して再生装置273に送信し、再生装置273は、受信した映像信号に基づいて映像をモニタ207に表示する。ステップST202では、区間判定手段271が永久磁石275及び277の存在により特定の区間にあるか否かを判定する。ステップST203では、特定の区間を検出していない(No)場合には、ステップST202へ戻る。ステップST204では、検出した特定の区間により、現在の撮影条件が高速度区間の撮影条件であるか否かを判定する。高速度区間の撮影条件で撮影していた(Yes)場合には、走行玩具が高速度区間に進入したと判断して、高速度区間の撮影条件にするために、ステップST205Aで、ビデオカメラ制御装置241が、ビデオカメラ217が撮影する映像のフレームレートを「高」に決定し、解像度を「低」に決定する。低速度区間の撮影条件で撮影していた(No)場合には、ステップST205Bでビデオカメラ制御装置241が、ビデオカメラ217が撮影する映像のフレームレートを「低」に決定し、解像度を「高」に決定する。ステップST206では、ステップST205Aまたは205Bで決定したフレームレート及び解像度に従って、撮影条件変更手段251が、ビデオカメラが撮影する映像のフレームレート及び解像度を変更する。ステップST207では、撮影を終了するか否かを判定する。撮影を終了しない(No)場合には、ステップST202へ戻って、再び永久磁石の存在を検出したか否かを判定する。ステップST207で、撮影を終了する場合には、撮影を終了する。上記のアルゴリズムは、一例であり、他のアルゴリズムであってもよい。永久磁石の代わりに、光反射部材を走行路に設けた場合には、ST202で、受光部が反射光を検出したか否かを判定する。
【0045】
図14(A)は、ビデオカメラで撮影した映像を用いて映像認識により、走行玩具が存在する区間が高速度区間または低速度区間でるあるか否かを判定する場合に用いることができる走行路の構成の一部の一例を示す図である。図14(A)では、走行路215の一部に側壁290を設けて、この側壁内面291に走行路215とは異なる色彩を施してある。側壁290が設けられているのは、低速度区間のみである。例えば、本実施の形態においては、位置エネルギが小さくなる位置から位置エネルギが大きくなる位置までの区間、すなわち走行玩具移送装置が機能する区間は低速度区間であるから、必ずこのような側壁290が設けられる。図14(B)は、低速度区間を走行しているときに表示される走行玩具のビデオカメラが撮影した映像である。図14(B)に示すように、走行玩具が低速度区間を走行している場合には、撮影する映像中には、走行路とは異なる着色を施された側壁290の側壁内面291が左右に映し出される。従って、撮影した映像中に側壁内面291に該当する着色領域が含まれているか否かを判定することにより、走行玩具が高速度区間または低速度区間のいずれにいるのかを判断することが可能である。
【0046】
図14(A)では、走行路215の一部に側壁290を設けて、この側壁内面291に走行路215とは異なる色彩を施してある。図15(A)の例では、側壁面291に線等のマーク標識292を所定の間隔を開けて設けている。図15(B)は、ビデオカメラによる撮影画像の例を示している。この場合には、区間判定手段が、ビデオカメラの映像信号に基づいてマーク標識292の存在区間を判定する映像認識手段を備えていればよい。映像認識手段は、映像信号中にマーク標識292が存在するか否かを判定して、区間判定手段に出力する。
【0047】
区間判定手段は、映像認識手段の出力に基づいて走行玩具が走行路の高速度区間または低速度区間のいずれの区間にいるのかを判定する。本実施の形態においては、マーク標識292を低速度区間に設けているが、高速度区間にマーク標識を設けてもよいのは勿論である。画像認識により高速度区間または低速度区間を判定できるようにすれば、特別にセンサを設ける必要がなくなる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の走行玩具システムの実施の形態の一例を示す図である。
【図2】(A),(B),(C)及び(D)は、図1の実施の形態に用いることができる走行玩具の正面図、右側面図、底面図及び斜視図である。
【図3】(A)は図1の走行玩具移送装置の詳細な斜視図であり、(B)は走行玩具が進入した状態を示す正面図である。
【図4】(A)乃至(D)は、図1の走行玩具移送装置が進入した走行玩具を移送する状態を示す図である。
【図5】図1の実施の形態における信号処理回路及び電力の流れの構成の一例の一部を示すブロック図である。
【図6】図5の信号処理回路を実現する場合に用いるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図7】速度基準レベルとフレームレート及び解像度との関係を示す図である。
【図8】図1の実施の形態における信号処理回路及び電力の流れの構成の他の例の一部を示すブロック図である。
【図9】図8の信号処理回路を実現する場合に用いるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図10】本発明の走行玩具システムの実施の形態の他の例を示す図である。
【図11】(A),(B),(C)及び(D)は、図10の実施の形態に用いることができる走行玩具の正面図、右側面図、底面図及び斜視図である。
【図12】図10の実施の形態における信号処理回路及び電力の流れの構成の一例の一部を示すブロック図である。
【図13】図12の信号処理回路を実現する場合に用いるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図14】(A)及び(B)は、走行路の測定区間を画像認識を利用して検出するために走行路に沿って側壁を配置し、その内壁面の色を変えることにより、画像認識を可能にするための例を説明するための図である。
【図15】(A)及び(B)は、走行路の測定区間を画像認識を利用して検出するために走行路に沿って側壁を配置し、その内壁面にマーク標識を表示することにより、画像認識を可能にするための例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0049】
1 走行玩具システム
3 走行玩具
5 走行玩具移送装置
7 表示画面
9 専用コントローラ
11 入口部
13 出口部
15 走行路
17 ビデオカメラ
19 レンズ
21 アンテナ
23 車輪
25 集電用ブラシ
27 孔
31 レール
33 給電レール
35 エスカレータ
37 突起部
39 アンテナ
41 ビデオカメラ制御装置
43 信号送信装置
45 速度センサ
47 撮影条件変更部
49 基準レベル判定手段
51 撮影条件変更手段
53 解像度変更手段
55 映像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置エネルギを利用して走行路上を走行する走行玩具と、
前記走行玩具を位置エネルギが小さくなる位置から位置エネルギが大きくなる位置まで移送する走行玩具移送装置と、
前記走行玩具に搭載されたビデオカメラと、
前記走行玩具に搭載されて、少なくとも前記ビデオカメラのフレームレートを変更可能に制御するビデオカメラ制御装置と、
前記走行玩具に搭載されて、前記ビデオカメラから出力される映像信号を映像表示装置に送信する信号送信装置と、
前記走行玩具に搭載された電源用蓄電手段とを備え、
前記ビデオカメラ制御装置は、前記走行玩具の速度が所定速度よりも速いときには、前記速度が前記所定速度より遅いときよりも前記フレームレートを高くするように構成されている走行玩具システム。
【請求項2】
前記ビデオカメラ制御装置は、前記走行玩具の前記速度を検出する速度センサと、前記速度センサの出力に応じて前記フレームレートを変更する撮影条件変更部とを備えており、
前記撮影条件変更部は、前記速度センサが検出する前記速度のレベルが予め定めた複数の基準レベル範囲のいずれに属するのかを判定する基準レベル判定手段と、前記基準レベル判定手段の判定結果に応じて前記フレームレートを変更する撮影条件変更手段とを備え、
前記撮影条件変更手段は、前記速度センサが検出する前記速度が含まれる前記基準レベル範囲が上位の前記基準レベル範囲になると、下位の前記基準レベル範囲において使用する前記フレームレートよりも前記フレームレートが高くなるように前記フレームレートを変更するように構成されている請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項3】
前記複数の基準レベル範囲における前記フレームレートは、前記映像表示装置に表示される映像を見る者に違和感を与えない値にそれぞれ定められている請求項2に記載の走行玩具システム。
【請求項4】
前記走行玩具システムは、前記走行玩具の前記速度が前記所定速度よりも速くなる高速度区間と前記速度が前記所定速度より遅くなる低速度区間とを前記走行玩具の前記走行路上の位置により検出する区間検出手段を更に備えており、
前記区間検出手段は、前記走行路に設けられて前記高速度区間または前記低速度区間の一方を特定するための区間特定部と、前記ビデオカメラ制御装置に設けられて前記区間特定部によって特定される区間内に前記走行玩具がいることを判定する区間判定手段とからなり、
前記ビデオカメラ制御装置は、前記区間判定手段が判定する前記区間に応じて、前記走行玩具が前記所定速度よりも速いのかまたは遅いのかを決定して、前記フレームレートを変更する撮影条件変更部をさらに備えている請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項5】
前記区間特定部は、前記高速度区間または前記低速度区間の少なくとも両端に設けられた2以上の永久磁石からなり、
前記区間判定手段は前記2以上の永久磁石の存在を検出するホール素子を備えて前記ホール素子の出力に基づいて前記走行玩具が前記走行路の前記高速度区間または前記低速度区間のいずれの区間にいるのかを判定するように構成されている請求項4に記載の走行玩具システム。
【請求項6】
前記区間特定部は、前記高速度区間または前記低速度区間の少なくとも両端に設けられた2以上の光反射部材からなり、
前記区間判定手段は前記2以上の光反射部材の存在を検出するために、前記走行路に光りを放射する発光素子と前記光反射部材で反射された光を受光する受光素子とを備えて、前記受光素子の出力に基づいて前記走行玩具が前記走行路の前記高速度区間または前記低速度区間のいずれの区間にいるのかを判定するように構成されている請求項4に記載の走行玩具システム。
【請求項7】
前記区間特定部は、前記高速度区間または前記低速度区間の少なくとも一方の走行路に設けられたマーク標識からなり、
前記区間判定手段は前記マーク標識の存在を検出するために、前記ビデオカメラの前記映像信号に基づいて前記マーク標識を判定する映像認識手段を備えて、前記映像認識手段の出力に基づいて前記走行玩具が前記走行路の前記高速度区間または前記低速度区間のいずれの区間にいるのかを判定するように構成されている請求項4に記載の走行玩具システム。
【請求項8】
前記高速度区間及び前記低速度区間における前記フレームレートは、前記映像表示装置に表示される映像を見る者に違和感を与えない値にそれぞれ定められていることを特徴とする請求項4に記載の走行玩具システム。
【請求項9】
前記信号送信装置は、前記フレームレートに応じて前記映像信号の解像度を変更する解像度変更手段を備えており、
前記解像度変更手段は、前記フレームレートが高くなると、前記映像信号の解像度が低くなるように変更動作をし、前記フレームレートが低くなると、前記映像信号の解像度が高くなるように変更動作をするように構成されている請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項10】
前記ビデオカメラ制御装置は、前記ビデオカメラの解像度も変更可能に構成されており、
前記撮影条件変更手段は、前記走行玩具の前記速度が所定速度よりも速いときには、前記速度が前記所定速度よりも遅いときよりも前記解像度が低くなるように前記解像度を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項11】
前記走行玩具移送装置は、前記走行玩具を前記位置エネルギが大きくなる位置まで移送している間に、前記電源用蓄電手段を充電するための充電用電力を供給する充電用電力供給装置を備えており、
前記走行玩具は、前記走行玩具移送装置によって移送されている間に、前記充電用電力供給装置の出力電極と接続される充電用電極と、前記充電用電力供給装置から供給された電力で前記電源用蓄電手段を充電する充電回路とを備えている請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項12】
前記走行玩具システムは、前記走行玩具の前記速度が前記所定速度よりも速くなる高速度区間と前記速度が前記所定速度より遅くなる低速度区間とを前記走行玩具の前記走行路上の位置により検出する区間検出手段を更に備えており、
前記区間検出手段は、前記ビデオカメラ制御装置に設けられて前記走行玩具の前記充電用電極が前記充電用電力供給装置の前記出力電極と接続されているか否かを判定することにより、前記走行玩具が前記高速度区間または前記低速度区間のどちらを走行しているかを検出する区間判定手段を備えており、
前記ビデオカメラ制御装置は、前記区間判定手段が判定する前記区間に応じて、前記走行玩具が前記所定速度よりも速いのかまたは遅いかのを決定して、前記フレームレートを変更する撮影条件変更部をさらに備えている請求項11に記載の走行玩具システム。
【請求項13】
前記走行路は、前記走行玩具移送装置の入口部と出口部との間に連続して形成されており、しかも前記出口部から出た前記走行玩具が前記位置エネルギだけで走行して前記入口部まで戻ることができるように構成されている請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項14】
専用のコントローラをさらに備え、前記映像表示装置が前記コントローラに実装されている請求項1に記載の走行玩具システム。
【請求項15】
前記映像表示装置が、モニタと、前記映像信号を前記モニタで再生する再生装置とを備えている請求項1に記載の走行玩具システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−158(P2009−158A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161377(P2007−161377)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】