説明

走行車両

【課題】 車両のバランスを制御するバランサが故障した場合でも車両の走行や制動を安定に制御する走行車両を提供する。
【解決手段】 車体2と、車体2に回転可能に支持された車輪8と、車輪8を駆動する駆動手段7と、を有する走行車両1において、車体2の姿勢を検出する車体姿勢検出手段21と、錘14を移動させることで車体2の姿勢を制御するバランサ10と、車体姿勢検出手段21の検出した車体姿勢に基づきバランサ10を制御する車体姿勢制御手段22と、を備え、車体姿勢制御手段22は、バランサ10が故障した場合、駆動手段7のみで車体2の姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランサを用いて姿勢を安定に制御するようにした走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置の姿勢制御としてカウンタウエイトを適用することでバランス状態を良好に維持するものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、左右の駆動輪を姿勢感知センサの出力に応じて制御駆動することで前後方向のバランス保持のための姿勢制御と走行制御とを行う走行制御部を備えた人用移動機器で、錘を移動することにより、重心位置を変更し、制動時の車体の傾斜を小さくするものがある。
【特許文献1】特開2004−129435号公報
【特許文献2】特開2004−276727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された発明では、車両のバランスを制御するバランサが故障した場合、バランサの位置を適切に制御できず、車両の重心が移動するため、バランサを用いた車両の走行や制動を安定に制御することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、車両の姿勢を制御するためのバランサが故障した場合でも車両の走行や制動を安定に制御する走行車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、車体と、前記車体に回転可能に支持された車輪と、前記車輪を駆動する駆動手段と、を有する走行車両において、前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、錘を移動させることで前記車体の姿勢を制御するバランサと、前記車体姿勢検出手段の検出した車体姿勢に基づき前記バランサを制御する車体姿勢制御手段と、を備え、前記車体姿勢制御手段は、前記バランサが故障した場合、前記駆動手段のみで車体の姿勢を制御することを特徴とする。
【0007】
また、前記バランサが故障した場合、前記バランサの前記錘の位置を固定する錘位置固定手段と、前記錘の位置を検出する錘位置検出手段と、前記車体姿勢制御手段は、前記錘位置検出手段の検出した前記錘の位置から、前記走行車両の新たな重心の位置を算出する重心算出手段と、を備え、前記重心算出手段の算出結果に基づき、前記駆動手段を制御することを特徴とする。
【0008】
また、前記バランサが故障した場合、前記錘が移動可能か否かを判断する錘移動判断手段と、前記錘移動判断手段により移動可能と判断された場合、前記錘を予め決められた所定位置に移動させた後、前記錘固定手段により固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
それによって、車体と、前記車体に回転可能に支持された車輪と、前記車輪を駆動する駆動手段と、を有する走行車両において、前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、錘を移動させることで前記車体の姿勢を制御するバランサと、前記車体姿勢検出手段の検出した車体姿勢に基づき前記バランサを制御する車体姿勢制御手段と、を備え、前記車体姿勢制御手段は、前記バランサが故障した場合、前記駆動手段のみで車体の姿勢を制御するので、故障時でも走行車両を走行させることが可能となり、少なくとも、路肩や修理場まで移動することが可能となる。
【0010】
また、前記バランサが故障した場合、前記バランサの前記錘の位置を固定する錘位置固定手段と、前記錘の位置を検出する錘位置検出手段と、前記車体姿勢制御手段は、前記錘位置検出手段の検出した前記錘の位置から、前記走行車両の新たな重心の位置を算出する重心算出手段と、を備え、前記重心算出手段の算出結果に基づき、前記駆動手段を制御するので、より繊細な制御が可能となる。
【0011】
また、前記バランサが故障した場合、前記錘が移動可能か否かを判断する錘移動判断手段と、前記錘移動判断手段により移動可能と判断された場合、前記錘を予め決められた所定位置に移動させた後、前記錘固定手段により固定するので、走行車両の新たな重心の位置を算出する必要がなく、簡単に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一例としての実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の走行車両を示す。図中、1は走行車両、2は車体、3は乗員搭載部の一例としての座席、4はフットレスト、5は転倒防止バー、6はジョイスティック、7は駆動手段の一例としてのホイールモータ、8は車輪、10はバランサである。
【0013】
走行車両1は、車体2、座席3、フットレスト4、転倒防止バー5、ジョイスティック6左右のホイールモータ7、車輪8及びバランサ10等を備えている。車体2は、上部に、乗員Mの座る座席3を、略中央部に、バランサ10を搭載すると共に、前方に、乗員Mの脚部を載せるフットレスト4、下部に、前後に延びる転倒防止バー5を結合している。座席3は、車体に支持され、乗員Mを搭載する座部3a及び乗員Mの背もたれとなるシートバック3bを有する。シートバック3bの高さは乗員Mの頭部より高いことが好ましい。ジョイスティック6は、座席3に座る乗員Mが操作するもので、車体2に支持されている。左右のホイールモータ7は、共通な軸上で車体2に支持されており、前後駆動力を独立に制御することができ、車体2に回転可能に支持された車輪8と連結される。バランサ10は、車体2に搭載され、走行車両1の姿勢を制御する。
【0014】
図2は、本実施形態のバランサ10を示す図である。バランサ10は、レール11にボールねじ12を設置し、ナットブロック13によりボールねじ12に保持されると共に、錘14を載置したスライダ15を、サーボモータ等のバランサアクチュエータ16によりレール11に沿って移動させるものである。錘14の位置は、バランサ位置センサ17により検出される。錘14としては、バッテリやECU等を利用するとよい。
【0015】
図3は、本実施形態のブロック図を示す。図中、6はジョイスティック、7は駆動手段の一例としてのホイールモータ、71は第1ホイールモータ、72は第2ホイールモータ、21は車体姿勢検出手段の一例としての姿勢センサ、22は車体姿勢制御手段の一例としてのECU、22aは錘移動判断手段、22bは重心算出手段、23は車体姿勢制御手段の一例としてのホイールモータECU、16は錘位置固定手段の一例としてのバランサアクチュエータ、17は錘位置検出手段の一例としてのバランサ位置センサである。
【0016】
ジョイスティック6は、走行車両1の前後進及び旋回等を操作し、その操作量等をECU22に出力するものである。姿勢センサ21は、角速度、傾斜角、加速度等の車体2の姿勢を検出し、ECU22へ信号を出力する。ECU22は、姿勢センサ21の検出値から車体姿勢を制御する信号を各アクチュエータに出力する。
【0017】
通常時、走行車両1は、乗員Mのジョイスティック6による前後進や旋回の操作値、姿勢センサ21による角速度、傾斜角及び加速度等の姿勢検出値並びにホイールモータ7からのレゾルバやバランサアクチュエータ16からのカウンタエンコーダ等を入力とし、ECU22及びホイールモータECU22により第1ホイールモータ71及び第2ホイールモータ72を制御し、ECU22によりバランサアクチュエータ16を制御することによって姿勢を保持し走行する。
【0018】
図4は、バランサ10が故障により制御不能になった場合の本実施形態の故障時制御の概略図を示す。図4(a)に示すように、通常、走行車両1は、バランサ10の錘14を動作させること等により姿勢制御され、転倒しないように走行することができる。図4(b)に示すように、バランサ10が故障により制御不能になった場合には、錘移動判断手段22aにより移動可能かどうか判断した後、バランサアクチュエータ16により錘14を現在位置又は所定位置に固定する。そして、バランサ10の錘14の固定位置をバランサ位置センサ17により検出し、重心算出手段22bにより算出した車両重心位置に基づいてホイールモータ7の駆動トルクで姿勢を制御し、図4(c)に示すように走行する。
【0019】
次に、このような走行車両1のバランサ10故障時制御のフローチャートについて説明する。図5は、本実施形態のバランサ10故障時制御のフローチャートを示す図である。
【0020】
本実施形態の走行車両1では、まず、ステップ1で、バランサ10の異常が発生したかどうかを判断する(ST1)。バランサ10の異常は、バランサアクチュエータ16に指令をしているのに、バランサアクチュエータ16のエンコーダの値が変化せず、バランサ10が動作しない場合、逆に、バランサアクチュエータ16に指令をしていないのに、バランサアクチュエータ16のエンコーダの値が変化し、バランサ10が動作してしまう場合、又は、エンコーダの値のカウントと、レールセンサ17の検出値とが一致しない場合等である。
【0021】
バランサアクチュエータ10の異常の発生があると判断した場合、ST2で、乗員へバランサアクチュエータ10の故障を警告する(ST2)。バランサアクチュエータ10の異常の発生がないと判断した場合、バランサアクチュエータ10故障時制御は実行しない。
【0022】
次に、ステップ3で、走行車両1が走行中であるかどうかを判断する(ST3)。走行車両1が走行中であると判断した場合、ステップ31で走行車両1を停止して、ステップ4へ進む。走行車両1が走行中でないと判断した場合、そのままステップ4へ進む。
【0023】
ステップ4では、バランサ10の錘14が動かないように固定されているかどうかを判断する(ST4)。固定されている場合、ステップ7へ進む。固定されていない場合、ステップ5で、バランサ10の錘14が移動可能かどうかを錘移動判断手段22aにより判断する(ST5)。移動可能でない場合、ステップ51で、錘14をその位置で固定し(ST51)、ステップ7へ進む。移動可能な場合、ステップ6で、錘14を予め決められた所定位置へ移動させる(ST6)。
【0024】
次に、ステップ7で、バランサアクチュエータ15のエンコーダやレールセンサ17の検出値から錘14の位置を検出する(ST7)。次に、ステップ8で、ステップ7で求めた錘14の位置から走行車両1の重心位置を重心算出手段22bにより算出する(ST8)。最後にステップ9で、ステップ8で求めた走行車両1の重心位置から、走行車両1の姿勢制御を実行する(ST9)。例えば、重心位置が前であれば、ホイールモータ7の駆動トルクを制御することで走行車両1を後方に少し傾斜させることで釣り合わせ、重心位置が後ろであれば、ホイールモータ7の駆動トルクを制御することで走行車両1を前方に少し傾斜させることで釣り合わせる。
【0025】
このように、走行車両1のバランサ10が故障により制御不能になった場合、バランサ10による走行車両1の姿勢制御を切断すると共に、バランサ10の錘14の位置を固定し、ホイールモータ7で走行車両1の姿勢制御を実行することで、走行車両1を走行させることが可能となり、路肩や修理場等へ移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の走行車両を示す図
【図2】本実施形態のバランサを示す図
【図3】本実施形態のブロック図
【図4】バランサ故障時制御の概念図
【図5】バランサ故障時制御のフローチャートを示す図
【符号の説明】
【0027】
1…走行車両、2…車体、3…座席(乗員搭載部)、4…フットレスト、5…転倒防止バー、6…ジョイスティック、7…ホイールモータ(駆動手段)、71…第1ホイールモータ、72…第2ホイールモータ、8…車輪、10…バランサ、11…レール、12…ボールねじ、13…ナットブロック、14…錘、15…スライダ、16…バランサアクチュエータ(錘位置移動・固定手段)、17…バランサ位置センサ(錘位置検出手段)、21…姿勢センサ(車体姿勢検出手段)、22…ECU(車体姿勢制御手段)、22a…錘移動判断手段、22b…重心算出手段、23…ホイールモータECU(車体姿勢制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に回転可能に支持された車輪と、
前記車輪を駆動する駆動手段と、
を有する走行車両において、
前記車体の姿勢を検出する車体姿勢検出手段と、
錘を移動させることで前記車体の姿勢を制御するバランサと、
前記車体姿勢検出手段の検出した車体姿勢に基づき、前記バランサを制御する車体姿勢制御手段と、を備え、
前記車体姿勢制御手段は、前記バランサが故障した場合、前記駆動手段のみで車体の姿勢を制御することを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記バランサが故障した場合、前記バランサの前記錘の位置を固定する錘位置固定手段と、
前記錘の位置を検出する錘位置検出手段と、
前記車体姿勢制御手段は、前記錘位置検出手段の検出した前記錘の位置から、前記走行車両の新たな重心の位置を算出する重心算出手段と、を備え、
前記重心算出手段の算出結果に基づき、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
前記バランサが故障した場合、前記錘が移動可能か否かを判断する錘移動判断手段と、前記錘移動判断手段により移動可能と判断された場合、前記錘を予め決められた所定位置に移動させた後、前記錘固定手段により固定することを特徴とする請求項2に記載の走行車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−55951(P2008−55951A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232402(P2006−232402)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】