説明

走行軌跡の表示方法,表示装置,表示制御用プログラム及びその表示制御用プログラムを記録した記録媒体

【課題】 車両の走行軌跡の表示方法を更に改善し、より簡易な方法で車両の走行軌跡を表示させることを目的とする。
【解決手段】 2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する走行軌跡の表示方法である。前記描画ポイントの始点P0の座標値を所定値に定めるとともに始点P0における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて始点P0以降の各描画ポイントPnにおける回転角θn及び移動量dRn,dxnを算出し、この回転角θn及び移動量dRn,dxnに基づいて各描画ポイントPnの座標値Xn,Ynを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に四輪車の走行軌跡を表示するための表示方法,表示装置,表示制御用プログラム及びその表示制御用プログラムを記録した記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特にサーキットレース場等を走行する車両においては、レースにおける走行状態を把握するために所定時間中(走行中)の車速,エンジン回転数,アクセル開度,加速度等の車両情報をデータ化して記録することが望まれていた。所定時間中の車両情報を記憶させるものしては、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
前述のような前記車両情報をデータ化して記録する装置はデータロガーと称される。データロガーによって記録された車両情報データは、専用のデータロガーソフトを用いることでその数値の変化を時系列でパソコン等の表示装置に表示でき、走行中の車両の状態を詳細に解析することによって故障の原因追求や最適なセッティングの選択、あるいは自己の運転技術の分析等を行う参考情報とすることができる。
【0004】
また、前記車両情報データを前記表示装置にて表示する際には、特に前記車両情報の変化と対比するべく、前記車両情報データの記録中に走行した走行軌跡を表示可能であることが望まれている。
【特許文献1】特開2000−46588号公報
【特許文献2】特開平11−125584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行軌跡を表示する方法としては、車両にGPSセンサを搭載し、このGPSセンサで受信したGPS衛星からの位置情報(経度及び緯度)を前記車両情報とともにデータ化して記憶させ、かかる位置情報データに基づいて車両の走行軌跡を描画する方法がある(例えば特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、かかる方法においてはGPSセンサを搭載していない車両については走行軌跡を表示することができないといった問題点があった。したがって、車両の走行軌跡の表示に関しては、より簡易な方法で車両の走行軌跡を表示することが望ましいといった点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、前述の問題点に鑑み、車両の走行軌跡の表示方法を更に改善し、より簡易な方法で車両の走行軌跡を表示させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両の走行軌跡の表示方法は、前記課題を解決するために、2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する走行軌跡の表示方法であって、前記描画ポイントの始点の座標値を所定値に定めるとともに前記始点における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて前記始点以降の各描画ポイントにおける回転角及び移動量を算出し、この回転角及び移動量に基づいて前記各描画ポイントの座標値を算出することを特徴とする。
【0009】
また、クローズドコース描画の補正として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と360度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第一の角度補正値及び第一の座標補正値を算出し、この第一の角度補正値及び第一の座標補正値を前記描画ポイントにおける回転角及び座標値に加算することを特徴とする。
【0010】
また、立体交差コース描画の補正として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と0度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第二の角度補正値及び第二の座標補正値を算出し、この第二の角度補正値及び第二の座標補正値を前記描画ポイントの回転角及び座標値に加算することを特徴とする。
【0011】
本発明の表示装置は、前記課題を解決するために、2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する表示装置であって、前記描画ポイントの始点の座標値を所定値に定めるとともに前記始点における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて前記始点以降の各描画ポイントにおける回転角及び移動量を算出し、この回転角及び移動量に基づいて前記各描画ポイントの座標値を算出する制御手段を備えてなることを特徴とする。
【0012】
また、前記制御手段は、クローズドコース描画の補正として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と360度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第一の角度補正値及び第一の座標補正値を算出し、この第一の角度補正値及び第一の座標補正値を前記描画ポイントにおける回転角及び座標値に加算することを特徴とする。
【0013】
また、前記制御手段は、立体交差コース描画の補正として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と0度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第二の角度補正値及び第二の座標補正値を算出し、この第二の角度補正値及び第二の座標補正値を前記描画ポイントの回転角及び座標値に加算することを特徴とする。
【0014】
本発明の制御用プログラムは、2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する表示制御処理を表示装置の制御手段に実行させる表示制御用プログラムであって、前記描画ポイントの始点の座標値を所定値に定めるとともに前記始点における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて前記始点以降の各描画ポイントにおける回転角及び移動量を算出し、この回転角及び移動量に基づいて前記各描画ポイントの座標値を算出する処理を含むことを特徴とする。
【0015】
また、クローズドコース描画の補正処理として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と360度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第一の角度補正値及び第一の座標補正値を算出し、この第一の角度補正値及び第一の座標補正値を前記描画ポイントにおける回転角及び座標値に加算する処理を含むことを特徴とする。
【0016】
また、立体交差コース描画の補正処理として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と0度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第二の角度補正値及び第二の座標補正値を算出し、この第二の角度補正値及び第二の座標補正値を前記描画ポイントの回転角及び座標値に加算する処理を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の表示制御用プログラムを記録した記録媒体は、前記課題を解決するために、2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する表示制御処理を表示装置の制御手段に実行させる表示制御用プログラムを記録した記録媒体であって、前記表示制御用プログラムは、前記描画ポイントの始点の座標値を所定値に定めるとともに前記始点における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて前記始点以降の各描画ポイントにおける回転角及び移動量を算出し、この回転角及び移動量に基づいて前記各描画ポイントの座標値を算出する処理を含むことを特徴とする。
【0018】
また、前記制御表示用プログラムは、クローズドコース描画の補正処理として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と360度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第一の角度補正値及び第一の座標補正値を算出し、この第一の角度補正値及び第一の座標補正値を前記描画ポイントにおける回転角及び座標値に加算する処理を含むことを特徴とする。
【0019】
また、前記表示制御用プログラムは、立体交差コース描画の補正処理として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と0度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第二の角度補正値及び第二の座標補正値を算出し、この第二の角度補正値及び第二の座標補正値を前記描画ポイントの回転角及び座標値に加算する処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、車両、特に四輪車の走行軌跡を表示するための表示方法,表示装置,表示制御用プログラム及びその表示制御用プログラムを記録した記録媒体に関するものであり、車両の走行軌跡の表示方法を更に改善し、より簡易な方法で車両の走行軌跡を表示させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態である表示装置1における電気的構成を示している。
【0022】
表示装置1は、汎用の情報処理装置であるパーソナルコンピュータであって、操作手段2と、制御手段3と、表示手段4と、から主に構成される。また、表示装置1は、メモリーカードA及び記録媒体Bとデータ通信可能に接続されている。
【0023】
操作手段2は、複数の押しボタンスイッチを有するキーボードあるいはマウス等からなり、表示装置1に任意の制御処理を実行させるための操作を行うものである。
【0024】
制御手段3は、主としてマイクロコンピュータからなり、所定の処理動作プログラムを実行するCPUと、前記処理動作プログラム等が記憶されたROMと、前記CPUにより処理されたデータ等を一時的に記憶するRAMと、データを不揮発的に記憶するEEPROMやバックアップRAM等からなる記憶部と、から主に構成されている。制御手段3は、前記処理動作プログラムに基づいて表示手段4の各種表示制御処理を行うものである。また、特に、本実施形態においては、所定のドライバを介して記録媒体Bより車両の走行軌跡を描画するためのソフトウェアを構成する表示制御用プログラムをインストールし、かかる表示制御用プログラムに基づいて表示制御処理を実行して表示手段4の表示画面に車両の走行軌跡を表示させる。
【0025】
表示手段4は、例えばドットマトリクス型の液晶ディスプレイからなり、制御手段の表示制御処理に応じて種々の情報を表示するものであって、本実施形態においては特に車両の走行軌跡をその表示画面において2次元的に表示する。
【0026】
メモリーカードAは、データを書き込み及び読み出し可能なフラッシュメモリをケース体内に備えてなる小型の記憶手段であり、例えば表示装置1に設けられるカードスロットに着脱可能に配設され、制御手段3とデータ通信可能に接続されるものである。メモリーカードAは少なくとも車速データ及び横方向の加速度データ(以下、横加速度データという)とを含む所定時間中の車両情報データを記録するものである。ここで、横方向の加速度とは、車両の走行に伴って車体の側方方向に加わる加速度をいう。なお、前記車両情報データは、周知のデータロガー装置によってメモリーカードAに書き込み処理される。
【0027】
記録媒体Bは、磁気ディスク,CD−ROMあるいはDVD−ROM等のプログラムを記録可能な記録媒体であって、本実施形態においては、特に、走行軌跡を描画するためのソフトウェアを構成する表示制御用プログラムが記録されるものである。なお、かかる制御表示用プログラムは、後で詳述するクローズドコース描画の補正処理と立体交差コース描画の補正処理とを含むものである。
【0028】
以上の各部により、本発明の表示装置1が構成されている。
【0029】
次に、図2及び図3を用いて、本実施形態における車両の走行軌跡の表示方法を説明する。
【0030】
制御手段3は、車両の走行軌跡を描画するために、メモリーカードAから読み込みされる所定時間中の車速データ及び横加速度データとに基づいて2次元座標上に複数の描画ポイントを設定する。前記車速データ及び前記横加速度データは所定時間単位(例えば20ms)毎にデータ化されており、かかる時間単位毎に描画ポイントが得られることとなる。
【0031】
前記描画ポイントの算出方法として、制御手段3は、まず描画ポイントの始点P0の座標値を原点(0,0)とし(X値及びY値を0とし)、始点P0の車両の向きをY軸正方向(図2中のL0)に定めるとともに回転角を0度とする。なお、始点P0の座標値は所定値に定められるものであればよく、また、車両の向きは2次元座標上の任意の方向に定められるものであればよい。
【0032】
次いで、制御手段3は、始点P0以降の描画ポイントPn(nは正の整数)の座標値を算出する。制御手段3は、前記車速データに基づいて前の描画ポイントPn-1からの移動量dRnを算出し、また、前記横加速度データに基づいて前の描画ポイントPn-1における車両の向きLn-1に対して90度方向の移動量dxnを算出する。そして移動量dRn及び移動量dxnに基づいて前の描画ポイントPn-1における車両の向きLn-1に対する角度差dθnをdθn=sin−1(dxn/dRn)より算出し、さらに、始点P0からの回転角θnをθn=θn-1+dθnより算出する。
【0033】
次いで、制御手段3は、前の描画ポイントPn-1の座標値のX値Xn-1に対するX値の増加量dXnをdXn=dRn×sin(θn)より算出し、描画ポイントPnの座標値のX値XnをXn=dXn+Xn-1より算出する。また、制御手段3は、前の描画ポイントPn-1の座標値のY値Yn-1に対するY値の増加量dYnをdYn=dRn×cos(θn)より算出し、描画ポイントPnの座標値のY値YnをYn=dYn+Yn-1より算出する。
【0034】
以上の処理を行うことによって、制御手段3は、所定時間中の前記車速データ及び前記横加速度データとに基づいて2次元座標上に各描画ポイントP0〜Pnを設定することができる。制御手段3は、各描画ポイントP0〜Pnを結ぶようにして車両の走行軌跡10を描画する(図3参照)。なお、図2には上記処理を簡単に説明するために描画ポイントとしてP0,Pn-1及びPnのみが開示されているが、描画ポイントは前記車速データ及び前記横加速度データのデータ数(記録時間)に応じて任意の数量が設定される。
【0035】
次に、本実施形態におけるクローズドコース描画の補正処理について説明する。なお、クローズドコースとは、1ラップの始点と終点が一致し、かつ、立体交差のないコースをいう。
【0036】
制御手段3は、操作手段2の任意の操作によって走行軌跡の描画条件として、クローズドコース描画が選択されると、前述の描画ポイントPnの回転角θn及び座標値Xn,Ynを以下のように補正する。
【0037】
制御手段3は、回転角θnの補正として、始点P0から終点Pnまでの回転角θnと360度との差θsa1を算出する(θsa1=360−|θn|)。さらに、制御手段3は、差θsa1を補正対象となる描画ポイント数Ndで除算して第一の角度補正値θho1を算出する(θho1=θsa1/Nd)。なお、補正対象となる描画ポイントは、描画ポイント設定における前記横加速度データが直線マスク値(直線走行時における横方向の加速度の計測誤差を考慮した閾値)以下であるものとする。そして、制御手段3は、補正対象となる描画ポイントPnの回転角θnに第一の角度補正値θho1を加える補正処理を行う。補正される描画ポイントPnの回転角θnはθn=θn-1+dθn+θho1×Sign(ただし、θn≧0のときSign=+1,θn<0のときSign=−1)によって得られる。
【0038】
また、制御手段3は、補正した回転角θnに基づいて描画ポイントPnの座標値のX値Xn及びY値Ynを算出した後、さらに、座標値のX値Xn及びY値Ynの補正として、描画ポイントにおける始点P0の座標値と終点Pnの座標値との差を算出する。なお、本実施形態においては始点P0の座標値のX値及びY値は0であるため、終点Pnの座標値のX値Xn及びY値Ynがそのまま両者の差となる。制御手段3は、X値Xn及びY値Ynをそれぞれの補正対象となる描画ポイント数Nx及びNyで除算して第一の座標補正値である第一のX補正値Xho1及び第一のY補正値Yho1を算出する(Xho1=Xn/Nx×−1,Yho1=Yn/Ny×−1)。なお、座標値のX値Xnの補正対象となる描画ポイントは、X値Xnの絶対値が所定値以上(すなわち始点P0の座標値のX値との差の絶対値が所定値以上)であるものとする。また、座標値のY値Ynの補正対象は始点P0を除く全ての描画ポイントとする。そして、制御手段3は、補正対象となる描画ポイントPnの座標値のX値Xn及びY値Ynに第一のX補正値Xho1及び第一のY補正値Yho1をそれぞれ加える補正処理を行う。補正される描画ポイントPnの座標値のX値XnはXn=dXn+Xn-1+Xho1によって得られ、Y値YnはYn=dYn+Yn-1−Yho1によって得られる。
【0039】
以上の補正処理によって、制御手段3は、前記車速データ及び前記横加速度データに計測誤差が生じる場合であっても、図4に示すような、1ラップにおける始点と終点が一致したクローズドコースを表した走行軌跡11を描画することができる。
【0040】
次に、本実施形態における立体交差コース描画の補正処理について説明する。なお、立体交差コースとは、1ラップの始点と終点が一致し、かつ、立体交差する個所があるコースをいう。
【0041】
制御手段3は、操作手段2の任意の操作によって走行軌跡の描画条件として、立体交差コース描画が選択されると、前述の描画ポイントPnの回転角θn及び座標値Xn,Ynを以下のように補正する。
【0042】
制御手段3は、回転角θnの補正として、始点P0から終点Pnまでの回転角θnと0度との差θsa2を算出する(θsa2=0−|θn|)。さらに、制御手段3は、差θsa2を補正対象となる描画ポイント数Ndで除算して第二の角度補正値θho2を算出する(θho2=θsa2/Nd)。なお、補正対象となる描画ポイントは、描画ポイント設定における前記横加速度データが前記直線マスク値以下であるものとする。そして、制御手段3は、補正対象となる描画ポイントPnの回転角θnに第二の角度補正値θho2を加える補正処理を行う。補正される描画ポイントPnの回転角θnはθn=θn-1+dθn+θho2×Sign(ただし、θn≧0のときSign=+1,θn<0のときSign=−1)によって得られる。
【0043】
また、制御手段3は、補正した回転角θnに基づいて描画ポイントPnの座標値のX値Xn及びY値Ynを算出した後、さらに、座標値のX値Xn及びY値Ynの補正として、描画ポイントにおける始点P0の座標値と終点Pnの座標値との差を算出する。制御手段3は、X値Xn及びY値Ynをそれぞれの補正対象となる描画ポイント数Nx及びNyで除算して第二の座標補正値である第二のX補正値Xho2及び第二のY補正値Yho2を算出する(Xho2=Xn/Nx×−1,Yho2=Yn/Ny×−1)。なお、座標値のX値Xnの補正対象となる描画ポイントは、X値Xnの絶対値が前記所定値以上であるものとする。また、座標値のY値Ynの補正対象は始点P0を除く全ての描画ポイントとする。そして、制御手段3は、補正対象となる描画ポイントPnの座標値のX値Xn及びY値Ynに第二のX補正値Xho2及び第二のY補正値Yho2をそれぞれ加える補正処理を行う。補正される描画ポイントPnの座標値のX値XnはXn=dXn+Xn-1+Xho2によって得られ、Y値YnはYn=dYn+Yn-1−Yho2によって得られる。
【0044】
以上の補正処理によって、制御手段3は、前記車速データ及び前記横加速度データに計測誤差が生じる場合であっても、図5に示すような、1ラップにおける始点と終点が一致し、かつ、立体交差する個所のある立体交差コースを表した走行軌跡12を描画することができる。
【0045】
かかる車両の走行軌跡の表示方法は、描画ポイントの始点P0の座標値を所定値に定めるとともに始点P0における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された前記車速データと前記横加速度データとに基づいて始点P0以降の各描画ポイントPnにおける回転角θn及び移動量dRn,dxnを算出し、この回転角θn及び移動量dRn,dxnに基づいて各描画ポイントPnの座標値Xn,Ynを算出するものである。
【0046】
したがって、従来の方法のようにレース用の車両に位置情報を取得するために専用のGPSセンサを取り付ける必要がなく、より簡素な方法で車両の走行軌跡10を描画することができる。なお、前記横加速度データを得るためにはいわゆるGセンサが必要とされるが、レース用の車両においては加速度データの収集のために既に搭載されていることが多いため走行軌跡の描画のために専用にセンサを取り付ける必要性が低く、また、取付作業もGPSセンサと比較して容易である。
【0047】
また、かかる車両の走行軌跡の表示方法は、クローズドコース描画の補正として、前記描画ポイントにおける始点P0から終点Pnまでの回転角θnと360度との差θsa1と、始点P0の座標値と終点Pnの座標値との差Xn,Ynと、を算出し、これらの差をそれぞれの補正対象となる描画ポイント数Nd,Nx,Nyで除算して第一の角度補正値θho1及び第一の座標補正値Xho1,Yho1を算出し、この第一の角度補正値θho1及び第一の座標補正値Xho1,Yho1を描画ポイントPnにおける回転角θn及び座標値Xn,Ynに加算するものである。したがって、前記車速データ及び前記横加速度データに計測誤差が生じる場合であっても、1ラップにおける始点と終点が一致したクローズドコースを表した走行軌跡11を描画することができ、車両の走行軌跡の表示方法としての安定性を向上させることができる。
【0048】
また、かかる車両の走行軌跡の表示方法は、立体交差コース描画の補正として、前記描画ポイントにおける始点P0から終点Pnまでの回転角θnと0度との差θsa2と、始点P0の座標値と終点Pnの座標値との差Xn,Ynと、を算出し、これらの差をそれぞれの補正対象となる描画ポイント数Nd,Nx,Nyで除算して第二の角度補正値θho2及び第二の座標補正値Xho2,Yho2を算出し、この第二の角度補正値θho2及び第二の座標補正値Xho2,Yho2を描画ポイントPnの回転角θn及び座標値Xn,Ynに加算するものである。したがって、前記車速データ及び前記横加速度データに計測誤差が生じる場合であっても、立体交差コースを表した走行軌跡12を描画することができ、車両の走行軌跡の表示方法としての安定性を向上させることができる。
【0049】
かかる車両の走行軌跡の表示方法は、表示装置1の制御手段3,表示制御用プログラムあるいは表示制御用プログラムを記録した記録媒体Bによって実施することができるものである。
【0050】
また、本実施形態における表示装置1は、汎用のパーソナルコンピュータであったが、本発明における表示装置はこれに限定されるものではなく、例えばデータロガー装置の一部を構成し、所定時間記録された車両情報データを専用に表示する表示装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態の表示装置の電気的構成を示すブロック図。
【図2】同上の走行軌跡の表示制御処理の制御方法を説明するための図。
【図3】同上の走行軌跡の表示例を示す図。
【図4】同上の走行軌跡の表示例を示す図。
【図5】同上の走行軌跡の表示例を示す図。
【符号の説明】
【0052】
1 表示装置
2 操作手段
3 制御手段
4 表示手段
10〜12 走行軌跡
A メモリーカード
B 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する走行軌跡の表示方法であって、
前記描画ポイントの始点の座標値を所定値に定めるとともに前記始点における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて前記始点以降の各描画ポイントにおける回転角及び移動量を算出し、この回転角及び移動量に基づいて前記各描画ポイントの座標値を算出することを特徴とする走行軌跡の表示方法。
【請求項2】
クローズドコース描画の補正として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と360度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第一の角度補正値及び第一の座標補正値を算出し、この第一の角度補正値及び第一の座標補正値を前記描画ポイントにおける回転角及び座標値に加算することを特徴とする請求項1に記載の走行軌跡の表示方法。
【請求項3】
立体交差コース描画の補正として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と0度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第二の角度補正値及び第二の座標補正値を算出し、この第二の角度補正値及び第二の座標補正値を前記描画ポイントの回転角及び座標値に加算することを特徴とする請求項1に記載の走行軌跡の表示方法。
【請求項4】
2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する表示装置であって、
前記描画ポイントの始点の座標値を所定値に定めるとともに前記始点における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて前記始点以降の各描画ポイントにおける回転角及び移動量を算出し、この回転角及び移動量に基づいて前記各描画ポイントの座標値を算出する制御手段を備えてなることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、クローズドコース描画の補正として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と360度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第一の角度補正値及び第一の座標補正値を算出し、この第一の角度補正値及び第一の座標補正値を前記描画ポイントにおける回転角及び座標値に加算することを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御手段は、立体交差コース描画の補正として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と0度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第二の角度補正値及び第二の座標補正値を算出し、この第二の角度補正値及び第二の座標補正値を前記描画ポイントの回転角及び座標値に加算することを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する表示制御処理を表示装置の制御手段に実行させる表示制御用プログラムであって、
前記描画ポイントの始点の座標値を所定値に定めるとともに前記始点における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて前記始点以降の各描画ポイントにおける回転角及び移動量を算出し、この回転角及び移動量に基づいて前記各描画ポイントの座標値を算出する処理を含むことを特徴とする表示制御用プログラム。
【請求項8】
クローズドコース描画の補正処理として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と360度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第一の角度補正値及び第一の座標補正値を算出し、この第一の角度補正値及び第一の座標補正値を前記描画ポイントにおける回転角及び座標値に加算する処理を含むことを特徴とする請求項7に記載の表示制御用プログラム。
【請求項9】
立体交差コース描画の補正処理として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と0度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第二の角度補正値及び第二の座標補正値を算出し、この第二の角度補正値及び第二の座標補正値を前記描画ポイントの回転角及び座標値に加算する処理を含むことを特徴とする請求項7に記載の表示制御用プログラム。
【請求項10】
2次元座標上に設けられる複数の描画ポイントを結ぶように走行軌跡を描画して表示画面に表示する表示制御処理を表示装置の制御手段に実行させる表示制御用プログラムを記録した記録媒体であって、
前記表示制御用プログラムは、前記描画ポイントの始点の座標値を所定値に定めるとともに前記始点における車両の向きを所定方向に定め、所定時間毎に記録された車速データと横方向の加速度データとに基づいて前記始点以降の各描画ポイントにおける回転角及び移動量を算出し、この回転角及び移動量に基づいて前記各描画ポイントの座標値を算出する処理を含むことを特徴とする表示制御用プログラムが記録された記録媒体。
【請求項11】
前記制御表示用プログラムは、クローズドコース描画の補正処理として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と360度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第一の角度補正値及び第一の座標補正値を算出し、この第一の角度補正値及び第一の座標補正値を前記描画ポイントにおける回転角及び座標値に加算する処理を含むことを特徴とする請求項10に記載の表示制御用プログラムを記録した記録媒体。
【請求項12】
前記表示制御用プログラムは、立体交差コース描画の補正処理として、前記描画ポイントにおける前記始点から終点までの回転角と0度との差と、前記始点の座標値と前記終点の座標値との差と、を算出し、これらの差を補正対象となる描画ポイント数で除算して第二の角度補正値及び第二の座標補正値を算出し、この第二の角度補正値及び第二の座標補正値を前記描画ポイントの回転角及び座標値に加算する処理を含むことを特徴とする請求項10に記載の表示制御用プログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−292536(P2007−292536A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118985(P2006−118985)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】