説明

起泡性水中油型乳化組成物

【課題】生クリームを含有する起泡性水中油型乳化組成物でありながら、保存時の乳化安定性及びホイップ後の安定性が良好であり、しかも簡単な方法で安定して製造することができる起泡性水中油型乳化組成物を提供すること。
【解決手段】生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)、及び、油分含量が該生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)よりも大であり、生クリームを含まない水中油型乳化物(B)を混合してなることを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生クリームを含有する起泡性水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生クリームは牛乳から遠心分離によって作られ、風味・コク味の点で他に類するものがないほど優れているとされる。そして、油分含量が40%以上の生クリームは起泡性を有することから、起泡(ホイップ)させることで『ホイップドクリーム』として製菓、製パン用途に広く使用されている。油分含量が48%のものが最適の起泡性を有していることから、45〜48%程度の生クリームがこれらの用途に広く使用されている(非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、生クリームはホイップ後の硬化(シマリ現象)が強く短時間で口溶けが悪くなること、また経時的な離水・軟化(保形性の低下、モドリ現象)等のホイップ後の安定性が悪いという問題があった。また、ホイップ前の生クリームの状態では、保存中の品温上昇や輸送中の振動によって、いわゆるボテと呼ばれる急激な粘度の上昇や固化が起こりやすく、保存時の乳化安定性や取り扱い面でも問題があった。
【0004】
そのため、乳脂肪の一部又は全部を植物油脂に置き換え、乳蛋白質、乳化剤、水等を乳化した水中油型乳化組成物は、合成クリームあるいは起泡性水中油型乳化組成物と呼ばれ、生クリーム同様の起泡性を有することに加え、上記物性面の諸問題が改善されていることから、製菓、製パン業界等において広く利用されている。しかし、この合成クリームは、安定した製造を行う目的や、物性コントロールのため、多量のリン酸塩、乳化剤、ガム類を使用しているので、風味・コク味の点では十分とはいえなかった(例えば特許文献1、2参照)。
【0005】
そこで、生クリームの持つ優れた風味と合成クリームの安定した物性を両立させた起泡性水中油型乳化組成物を得るべく、生クリームを使用した起泡性水中油型乳化組成物に関する様々な検討が行われている(例えば特許文献3〜5参照)。
【0006】
特許文献3では、ラウリン系油脂を70%以上含有する特定の融点と物性のホイップクリーム用組成物と生クリームを混合した起泡性水中油型乳化組成物が提案されている。しかし、この方法では口溶けと風味は極めて良好であるが、ホイップ後の安定性及び保存時の乳化安定性の優れた起泡性水中油型乳化組成物を得ることが出来なかった。
【0007】
また、特許文献4には、植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物と、乳脂を油相中の主成分とするメジアン径が0.5μm〜2.9μmの水中油型乳化油脂組成物とを混合してなる起泡性水中油型乳化物に関する発明が開示されている。しかし、この方法では、乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物として生クリームを使用する場合、生クリームの油分含量が低い場合(40質量%未満)は該メジアン径とすると乳化が極めて不安定となり、高油分(40質量%以上)であると激しい増粘を起こすため、安定した起泡性水中油型乳化物の製造が不可能であった。また、得られた起泡性水中油型乳化物も、ホイップ後の安定性が悪いことに加え、ホイップ後の物性がばらつきやすいという問題があった。
【0008】
特許文献5では、構成脂肪酸組成においてC16〜C18の飽和脂肪酸の含有量が30〜80質量%で且つC6〜C14の飽和脂肪酸の含有量が10質量%以下である油脂A、構成脂肪酸組成においてC6〜C14の飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上である油脂B、及び乳脂を混合した乳脂含有水中油型乳化物の製造方法について開示されている。この方法では保存時の乳化安定性が良好で、口溶けの良いホイップクリームが得られるが、風味やコク味の点では生クリームに及ばないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平3−62387号公報
【特許文献2】特開昭63−267250号公報
【特許文献3】特開平11−56283号公報
【特許文献4】特開2009−278969号公報
【特許文献5】特開2009−189246号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】乳製品製造I、乳業技術講座編集委員会編、朝倉書店、11頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、生クリームを含有する起泡性水中油型乳化組成物でありながら、保存時の乳化安定性及びホイップ後の安定性が良好であり、しかも簡単な方法で安定して製造することができる起泡性水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討したところ、ホイップ性が良好であることで広く製菓、製パン用に使用されてきた油分含量の生クリームではなく、ホイップ後の安定性が悪いか全く起泡しないため起泡性水中油型乳化組成物としての使用がなされていなかった低油分の生クリームを使用してコンパウンドクリームを製造すると、意外にも上記問題を全て解決可能であることを知見した。特に、低油分コンパウンドクリームを製造の際は、植物性ホイップクリームは低油分でも安定した物性のものが得られることから、生クリームと植物性ホイップクリームを混合して製造する場合、従来、前者の油分含量よりも後者の油分含量を低くして製造していたところ、全く逆に、前者の油分含量よりも後者の油分含量を高くして製造すると、保存時の粘度上昇(ボテ)を抑制できるとともに、ホイップ後の保形性や安定性が良好で、しかも、コク味、口溶けに優れることを知見した。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(9)を提供するものである。
(1)生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)、及び、油分含量が該生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)よりも大であり、生クリームを含まない水中油型乳化物(B)を混合してなることを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物。
(2)上記生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)の油分含量が40質量%以下である上記(1)の起泡性水中油型乳化組成物。
(3)上記水中油型乳化物(B)がカルシウム封鎖剤を含まない上記(1)又は(2)の起泡性水中油型乳化組成物。
(4)油分含量が40質量%以下である上記(1)〜(3)のいずれかの起泡性水中油型乳化組成物。
(5)上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、ラウリン系油脂を40質量%以上含有する上記(1)〜(4)のいずれかの起泡性水中油型乳化組成物。
【0014】
(6)上記水中油型乳化物(B)の油脂のトリグリセリド組成において、SUS(Sは炭素数16以上の飽和脂肪酸を示し、Uは炭素数16以上の一価不飽和脂肪酸を示す)で表されるトリグリセリドの占める割合が10〜60質量%である上記(1)〜(5)のいずれかの起泡性水中油型乳化組成物。
(7)上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換してなるエステル交換油脂を、10〜50質量%含有する上記(1)〜(6)のいずれかの起泡性水中油型乳化組成物。
【0015】
(8)上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が20〜50質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が35〜70質量%である油脂配合物をランダムエステル交換してなるエステル交換油脂を含有する上記(1)〜(7)のいずれかの起泡性水中油型乳化組成物。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかの起泡性水中油型乳化組成物を製造する方法であって、生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)、及び、油分含量が該生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)よりも大であり、生クリームを含まない水中油型乳化物(B)を混合することを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の起泡性水中油型乳化組成物は、保存時の乳化安定性が良好であることに加え、安定性が良好で、コク味、口溶けに優れるホイップドクリームを得ることができる。しかも、本発明の起泡性水中油型乳化組成物は、簡単な方法で安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づいて詳述する。
【0018】
まず、本発明の起泡性水中油型乳化組成物で使用する、生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)(以下、(A)成分ともいう)について述べる。
本発明において、上記生クリームは、乳等省令で定められた「生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分が18.0質量%以上にしたもの」を指す。
【0019】
また、本発明において、上記生クリーム含有水中油型乳化物は、上記生クリームに、水、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、乳蛋白質、乳化剤、安定剤、香料等のその他の食品素材を添加して調製したものであって水中油型乳化物の形態の組成物である。但し、その他の食品素材として、乳脂以外の油脂分を含むものは使用しないことが好ましい。
【0020】
上記生クリーム含有水中油型乳化物における生クリームの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上とする。即ち、その他の食品素材の添加量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下とする。
【0021】
また、上記生クリーム含有水中油型乳化物の油脂中の乳脂含量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%、最も好ましくは100質量%である。
【0022】
上記生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)の油分含量は、特に制限されるものではないが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。この理由は、以下の通りである。
【0023】
下述するように、本発明の効果を得るためには、上記水中油型乳化物(B)(以下、(B)成分ともいう)の油分含量を(A)成分の油分含量よりも大とする必要がある。ここで、(A)成分の油分含量が40質量%を超えると、必然的に(B)成分の油分含量を通常の起泡性水中油型乳化組成物の油分含量である45質量%を超えるものとする必要があり、このような高油分の水中油型乳化物は、製造工程で攪拌や均質化を行う場合に増粘しやすく、そのような増粘した水中油型乳化物を使用した場合、得られる起泡性水中油型乳化組成物の品質がばらついてしまい、またホイップ後の物性もばらついたものとなってしまう。
また、下述するように、より高い本発明の効果を得るためには、(B)成分の油分含量と(A)成分の油分含量との差を大とする必要があり、その場合は、さらに(B)成分の油分含量を高めることとなり、(B)成分の製造そのものが不可能となってしまう。
【0024】
(A)成分の油分含量の下限は、好ましくは10質量%、より好ましくは20質量%である。尚、油分含量には、上記生クリーム含有水中油型乳化物の調製時に油脂を含有する原料を添加した場合は、それらに含まれる油分含量も含めて算出するものとする。
また、(A)成分は、水分含量が50〜90質量%であることが好ましい。
【0025】
上記生クリーム含有水中油型乳化物は、生クリーム中の乳脂肪分にもよるが、例えば生クリームを20〜90質量%含有することが好ましい。上記生クリーム含有水中油型乳化物としては、例えば、乳脂肪分30〜50質量%の生クリームと水とを、油分含量が上述の好ましい範囲内となるように、1〜9:9〜1(生クリーム:水、質量基準)の範囲から両者の比率を適宜選択して混合したものを用いることができる。
【0026】
生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)の調製方法を以下に例示する。まず、(A)成分として生クリームを使用する場合は、そのまま使用することができる。また、生クリーム含有水中油型乳化物の場合は、加温した生クリームに、水、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、乳蛋白質、乳化剤、安定剤、香料等のその他の食品素材を添加して、十分攪拌して溶解し、水中油型乳化物とすることによって得ることができる。この時の温度は、添加するその他の食品素材等が溶解できる温度であるならば特に問題なく、例えば50℃〜80℃で作製できる。
【0027】
上記生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)は、続いて均質化することが好ましい。均質化することにより、保存時の乳化安定性及びホイップ後の安定性が特に良好である起泡性水中油型乳化組成物を得ることができる。上記均質化の方法としては、例えば、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により圧力0〜100MPaの範囲で均質化する方法が用いられる。
【0028】
続いて、冷却する。尚、必要に応じ、殺菌、エージングを行なってもよい。
上記冷却は、急速冷却、徐冷却のどちらであってもよい。冷却後における粘度(5℃、B型粘度計)は、好ましくは300cp以下、さらに好ましくは240cp以下である。300cpよりも大きいと、得られる起泡性水中油型乳化組成物の乳化安定性が劣るものとなる可能性が高くなる。粘度の下限は、特に制限されるものではなく低いほど好ましい。
【0029】
上記殺菌工程としては、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・低温殺菌、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理を施してもよく、あるいは直火等の加熱調理により加熱してもよい。UHT加熱処理をする場合の温度条件は、好ましくは120〜150℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒である。また加熱後に再度均質化してもよい。
【0030】
上記エージングの際の温度は、好ましくは10℃以下であり、下限値は0℃以上とすることが好ましい。また、エージングに費やす時間は特に限定されるものではないが、好ましくは数時間〜数十時間である。
【0031】
次に、本発明で使用する、油分含量が(A)成分よりも大であり、生クリームを含まない水中油型乳化物(B)について述べる。
【0032】
水中油型乳化物(B)に使用する油脂としては、例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、コクム脂、デュパー脂、モーラー脂、フルクラ脂、チャイニーズタローシア脂、ヤシ油、パーム核油、ババス油、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動植物性油脂が例示でき、これらの動植物性油脂は単独油又は混合油として用いることができ、あるいはこれらに硬化、分別、エステル交換等の加工を施した加工油脂として用いることもできる。
【0033】
なかでも、本発明においては、上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、ラウリン系油脂を40質量%以上、特に50質量%以上含有することが、一層良好な口溶けのホイップドクリームが得られる点、及び、ホイップ後のシマリの防止効果が一層高い点で好ましい。ラウリン系油脂含量の上限は、上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、好ましくは95質量%、さらに好ましくは80質量%である。
尚、上記のラウリン系油脂の含量は、上記水中油型乳化物(B)の油脂量を基準とした値である。また、ラウリン系油脂としてエステル交換油脂を使用した場合は、エステル交換に使用したラウリン系油脂の量も合わせて含有量を算出するものとする。
【0034】
上記ラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油、又はこれらに硬化、分別及びエステル交換から選択される一以上の加工を実施した油脂等が例示できるが、これらの中でも、ヤシ油の分別硬部油、及び/又はパーム核油の分別硬部油を使用することが好ましい。また、ラウリン系油脂の融点は、20〜36℃であることが好ましい。
【0035】
また、本発明においては、上記水中油型乳化物(B)の油脂のトリグリセリド組成において、SUS(Sは炭素数16以上の飽和脂肪酸を示し、Uは炭素数16以上の一価不飽和脂肪酸を示す)で表されるトリグリセリドの占める割合が、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは10〜40質量%である。SUSの占める割合が10質量%未満であると、起泡後のホイップドクリームの口溶けが悪化しやすく、60質量%を超えるとボテ現象が発生しやすくなることに加え、得られるホイップドクリームにモドリ現象が発生しやすい。
【0036】
トリグリセリド組成において、SUSで表されるトリグリセリドの占める割合を上記割合とするためには、「SUSで表されるトリグリセリド」及び/又は「SUSを含有する油脂」を使用する。
【0037】
上記「SUSで表されるトリグリセリド」としては、天然に存在するSUSでも構わないし、分別により純度を上げたものでも構わない。更に、トリ飽和トリグリセリド(SSS)とトリ不飽和トリグリセリド(UUU)、又はトリ不飽和トリグリセリド(UUU)と飽和脂肪酸とをエステル交換し(酵素による選択的エステル交換が好ましい)、更に蒸留や分別によりSUSの純度を上げたもの等、どのような方法によって得られたものでも構わない。
【0038】
上記「SUSを含有する油脂」としては、例えば、パーム油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、コクム脂、デュパー脂、モーラー脂、フルクラ脂、チャイニーズタロー等の各種植物油脂、これらの各種植物油脂を分別した加工油脂、並びに下記に記載するエステル交換油脂、該エステル交換油脂を分別した加工油脂を用いることができる。本発明では、これらの油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
上記エステル交換油脂としては、例えば、パーム油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加及び/又は分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油脂が挙げられる。エステル交換の方法としては、酵素を用いても、化学触媒を用いてもよく、またランダムエステル交換でも、1,3位置選択性のあるエステル交換でも構わない。
【0040】
本発明に使用する水中油型乳化物(B)においては、上記「SUSを含有する油脂」として、エステル交換油脂を使用するか、及び/又は、水素添加した加工油脂を含有しない油脂を使用することが好ましい。水素添加した加工油脂を含有しない油脂の中でも、パーム油や、パーム分別硬部油(パームステアリン)、パーム分別軟部油(パームオレイン、スーパーオレイン、ダブルオレイン)、パーム分別中部油等のパーム分別油、これらを用いて製造したエステル交換油脂のうちの1種又は2種以上を使用することが更に好ましい。また、SUSを含有する油脂の融点は、25〜48℃であることが好ましい。
【0041】
また、本発明においては、上記水中油型乳化物(B)は、ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%含有する油脂配合物(以下、油脂配合物aということもある)をエステル交換してなるエステル交換油脂(以下、エステル交換油脂aということもある)を、上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%含有することが望ましい。本発明に使用する水中油型乳化物(B)において、上記水中油型乳化物(B)の油脂中の該エステル交換油脂aの含有量が10質量%未満であると、乳化安定性が低下するためボテ現象が発生しやすくなり、50質量%を超えると、口溶けが悪化し冷涼感が損なわれやすい。尚、上記エステル交換油脂aの含量は、上記水中油型乳化物(B)の油脂量を基準とした値である。また、上記エステル交換油脂aの融点は、25〜35℃であることが好ましい。
【0042】
上記油脂配合物aに使用するパーム分別軟部油は、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の常法の分別方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であって、ヨウ素価52〜75のものである。
上記パーム分別軟部油としては、ヨウ素価が52以上のパームオレインを使用することがより好ましく、ヨウ素価54以上のパームオレインを使用することが更に好ましく、ヨウ素価60以上のパームスーパーオレインを使用することが特に好ましい。
【0043】
上記油脂配合物aにおける、上記パーム分別軟部油以外の油脂は適宜選択することができる。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
上記エステル交換油脂aを得るためのエステル交換反応は、常法により行うことができ、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、また、ランダムエステル反応であっても、位置選択性のエステル交換反応であってもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル反応であることがより好ましい。
【0045】
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
【0046】
さらに、本発明においては、上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、構成脂肪酸組成において、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が20〜50質量%、好ましくは30〜45質量%であり、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が35〜70質量%、好ましくは40〜65質量%である油脂配合物(以下、油脂配合物bということもある)をランダムエステル交換してなるエステル交換油脂(以下、エステル交換油脂bということもある)を含有することが、ホイップドクリームのシマリ現象が一層起こりにくくすることができる点で好ましい。エステル交換油脂bの融点は、34〜48℃であることが好ましい。
【0047】
上記エステル交換油脂bは、上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、5〜40質量%含有されていることが好ましく、10〜25質量%含有されていることがさらに好ましい。尚、上記含量は、上記水中油型乳化物(B)の油脂量を基準とした値である。
【0048】
上記油脂配合物bにおいては、炭素数構成脂肪酸組成において炭素数4以下の飽和脂肪酸は1質量%以下とすることが好ましい。
また、上記油脂配合物bにおいては、炭素数構成脂肪酸組成において炭素数20以上の飽和脂肪酸は2質量%以下とすることが好ましい。2質量%超であると得られるホイップドクリームの口溶けが悪化してしまうおそれがある。
【0049】
上記油脂配合物bは、その構成脂肪酸中に炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂、及びその構成脂肪酸中に炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂を用いて、上記構成脂肪酸組成となるように配合することにより得ることができる。上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂において、炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は、その構成脂肪酸中に好ましくは30〜100%、より好ましくは65〜100%である。上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂において、炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は、その構成脂肪酸中に好ましくは30〜100%、より好ましくは70〜100%である。
【0050】
上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂としては、例えば、パーム核油、ヤシ油及びババス油、並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの油脂の中の1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、好ましくはパーム核油及び/又はヤシ油を使用する。
【0051】
また、上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂としては、例えば、パーム油、米油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油(キャノーラ油)、ハイエルシンナタネ油、カカオ脂、ラード、牛脂、豚脂及び魚油、並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの油脂の中の1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、好ましくは、パーム硬化油、大豆硬化油、米硬化油及びコーン硬化油の中の1種又は2種以上、さらに好ましくは、これらの中でも飽和脂肪酸含量を最大限に高めた極度硬化油、即ちパーム極度硬化油、大豆極度硬化油、米極度硬化油及びコーン極度硬化油の中の1種又は2種以上、最も好ましくはパーム極度硬化油を使用する。
【0052】
上記油脂配合物bにおいて、上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂は、上記油脂配合物bの構成脂肪酸組成において、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が20〜50質量%、好ましくは30〜45質量%となるように配合される。ここで、炭素数14以下の飽和脂肪酸が20質量%未満であると、口溶けが悪くなるおそれがあり、また、炭素数14以下の飽和脂肪酸が50質量%より多いと、ホイップ後の安定性が悪くなるおそれがある。
【0053】
また、上記油脂配合物bにおいて、上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂は、上記油脂配合物bの構成脂肪酸組成において、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が35〜70質量%、好ましくは40〜65質量%となるように配合される。ここで、炭素数16以上の飽和脂肪酸が35質量%より少ないと、ホイップ後の安定性が悪くなるおそれがある。また、炭素数16以上の飽和脂肪酸が70質量%より多いと、口溶けが悪くなるおそれがある。
【0054】
なお、上記油脂配合物bには、その構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含量及び炭素数16以上の飽和脂肪酸の含量が上記の範囲であれば、その他の油脂を加えてもよい。
【0055】
そして、上述した油脂配合物bに対し、ランダムエステル交換を行なうことにより、エステル交換油脂bが得られる。該ランダムエステル交換の方法は、常法によればよく、化学的触媒による方法でも酵素による方法でもよく、特に制限されるものではない。
【0056】
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
【0057】
本発明で使用する水中油型乳化物(B)の油分含量は、好ましくは30〜60質量%、より好ましくは35〜48質量%である。これは、下述するように、本発明の効果を得るためには、(B)成分の油分含量を上記(A)成分の油分含量よりも大とする必要があり、ここで、(B)成分の油分含量が30質量%未満であると、必然的に得られる起泡性水中油型乳化組成物の油分含量が30質量%未満となり、良好な起泡性が得られない場合がある。また、油分含量が60質量%を超えると、(B)成分の粘度が極めて高いものとなり、(A)成分を均質に混合することが極めて困難となることに加え、製造工程で攪拌や均質化を行う場合にさらに増粘し、その場合、本発明の起泡性水中油型乳化組成物の製造そのものが不可能になってしまう場合がある。
なお、上記油分含量には、水中油型乳化物(B)の調製時に油脂を含有する原料を添加した場合は、それらに含まれる油分含量も含めて算出するものとする。
【0058】
また、上記水中油型乳化物(B)には、上述した各種油脂、水に加え、必要に応じ、乳化剤、安定剤、蛋白質、乳及び乳製品、糖類及び甘味料、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品等の呈味成分、調味料、食塩、酸味料、着香料、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤等の、一般の起泡性水中油型乳化組成物の製造に使用されるその他の成分(ただし生クリームを除く)を任意に配合してもよい。これらのその他の成分の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲において、通常の使用量の範囲で使用することができる。
【0059】
上記水中油型乳化物(B)は、水分含量が30〜70質量%、特に40〜60質量%であることが好ましい。ここでいう水分には、水のほか、上記その他の成分のうち水分を含有する成分を使用する場合は、それらの水分も算入する。
【0060】
上記乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。これらの乳化剤は単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。乳化剤を使用する場合、水中油型乳化物(B)中の乳化剤の含有量は0.1〜2質量%とすることが好ましい。
【0061】
上記安定剤としては、リン酸塩(ヘキサメタリン酸、第2リン酸、第1リン酸)、炭酸塩等の無機塩類、クエン酸や酒石酸等の有機酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、アルギン酸塩、ファーセルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カードラン、澱粉、リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉等の化工澱粉、結晶セルロース、ゼラチン、デキストリン、寒天、デキストラン等の安定剤が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
水中油型乳化物(B)における上記安定剤の含有量は、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、最も好ましくは上記安定剤を用いないのが望ましい。尚、使用する場合は、使用効果を確保する観点から0.03質量%以上とすることが好ましい。
【0062】
本発明では、水中油型乳化物(B)にカルシウム封鎖剤を使用しなくても、上記(A)成分と混合することで、最終的に得られる起泡性水中油型乳化組成物は、乳化安定性の低下が抑制されているため、上記安定剤のうち、カルシウム封鎖剤については、得られるホイップドクリームの風味を良好なものとするため、特に使用しないことが好ましい。
【0063】
上記カルシウム封鎖剤は、過剰に存在するカルシウムによる乳化安定性の低下を防ぐため、必要に応じてカルシウムイオン封鎖の目的で使用するものである。その具体例としては、上記安定剤のうち、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ウルトラポリリン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム等の各種リン酸塩、並びにクエン酸、酒石酸等の有機酸のアルカリ金属塩類、及び炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)等の無機塩類が挙げられる。
【0064】
上記蛋白質としては、特に限定されないが、例えば、α−ラクトアルブミンやβ−ラクトグロブリン、血清アルブミン等のホエイ蛋白質、カゼイン、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等のカゼイン蛋白質、その他の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド等の卵蛋白質、グリアジン、グルテニン等の小麦蛋白質、プロラミン、グルテリン等の米蛋白質、その他動物性及び植物性蛋白質等の蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて1種ないし2種以上の蛋白質として、或いは1種ないし2種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で添加してもよい。蛋白質を使用する場合、上記水中油型乳化物(B)中の蛋白質の含有量は0.3〜8質量%とすることが好ましい。
【0065】
上記蛋白質としては、乳蛋白質、即ちホエイ蛋白質、カゼイン蛋白質、その他の乳蛋白質を使用することが好ましく、また、乳蛋白質を含有する食品素材を使用することも好ましい。乳蛋白質を含有する食品素材としては、脱脂粉乳、トータルミルクプロテイン、ホエイパウダー、ミネラル濃縮ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー(WPC)、バターミルクパウダー、カゼインナトリウム等が挙げられる。乳蛋白質を含有する食品素材を使用する場合は、上記水中油型乳化物(B)において、該食品素材の含有量は0.1〜10質量%とすることが好ましい。
【0066】
上記糖類としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。また、上記甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0067】
次に、水中油型乳化物(B)の調製方法を以下に例示する。
まず、加温した水に、蛋白質、乳化剤、糖類、安定剤等の水溶性のその他の成分を添加し、十分攪拌して溶解し、水相を作製する。この時の温度はその他の成分が溶解できる温度であるならば特に問題なく、例えば50℃〜80℃で作製できる。一方で加温して融解した油脂に、乳化剤、香料等の油溶性のその他の成分を添加し、完全に溶解させ、油相を作製する。この時の温度は油脂及びその他の成分が完全に溶解する温度であれば特に問題なく、例えば50℃〜80℃で作製できる。
【0068】
上記のようにして作製した水相と油相を予備乳化し、均質化し、冷却する。また、必要に応じ、殺菌、エージングを行なう。
上記予備乳化は、上記のようにして作製した水相に油相を添加し、攪拌しながら行う。均質化、殺菌、冷却については、上記生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)と同様の方法で行うことができ、必要により急速冷却、徐冷却等の冷却操作を施してもよい。冷却後における粘度(5℃、B型粘度計)は、好ましくは300cp以下、さらに好ましくは240cp以下である。300cpよりも大きいと、起泡性水中油型乳化組成物を調製した際の乳化安定性が劣るものとなる。粘度の下限は、特に制限されるものではなく低いほど好ましい。
【0069】
本発明の起泡性水中油型乳化組成物は、以上に詳述した生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)、及び、油分含量が(A)成分よりも大であり、生クリームを含まない水中油型乳化物(B)を混合してなるものである。
即ち、本発明の起泡性水中油型乳化組成物は、上記生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)と、上記生クリームを含まない水中油型乳化物(B)を混合して起泡性水中油型乳化組成物を製造する際に、(A)成分の油分含量よりも(B)成分の油分含量が大であるように(A)成分及び(B)成分を選択して混合することによって得ることができる。
ここで、生クリームを含まない水中油型乳化物(B)の油分含量よりも生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)の油分含量が大きいと、起泡性水中油型乳化組成物を調製した際の保存安定性が低下し、さらにはホイップ後の保型性、安定性が低下してしまう。
【0070】
(A)成分の油分含量と(B)成分の油分含量との差については、(B)成分の油分含量(質量%)−(A)成分の油分含量(質量%)≧5を満たすことが好ましく、さらに好ましくは(B)成分の油分含量(質量%)−(A)成分の油分含量(質量%)≧10であり、最も好ましくは(B)成分の油分含量(質量%)−(A)成分の油分含量(質量%)≧15である。
尚、(B)成分の油分含量(質量%)−(A)成分の油分含量(質量%)の値の上限については、好ましくは50であり、より好ましくは30である。
【0071】
本発明では、生クリームを含有するにも拘わらず、起泡性水中油型乳化組成物の油分含量が少ない場合であっても良好な保存時の乳化安定性を有するため、口溶けの良い油性感の面から、本発明の起泡性水中油型乳化組成物の油分含量は、40質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは35質量%以下とする。また、該油分含量は、25質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは30質量%以上とする。
【0072】
上記生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)及び上記水中油型乳化物(B)を混合する際の混合比は、質量比で好ましくは20:1乃至1:20、より好ましくは10:1乃至1:10である。
【0073】
混合方法としては特に制限されず、ボール中での混合や、連続ミキサー等を例示できる。尚、混合後、必要に応じ、殺菌、均質化、エージング等を行なってもよいが、均質化については行わないほうが好ましい。
【0074】
本発明の起泡性水中油型乳化組成物は、主としてホイップドクリームとして用いられる他、洋菓子用素材、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、及びパン練り込み等の用途に用いることができる。また、本発明の起泡性水中油型乳化組成物は、さらにカスタードクリーム等のフラワーペースト類、ジャム、果汁、チョコレートペースト等のカカオ製品等の呈味性素材と混合しブレンド物としても、本発明の起泡性水中油型乳化組成物の特性を失うことがない。また、起泡済みクリームとして、冷蔵、冷凍、常温の保管流通条件で用いることもできる。
【実施例】
【0075】
次に、実施例及び比較例等を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
【0076】
<生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)の製造>
〔製造例(A)−1〕乳脂25質量%生クリーム含有水中油型乳化物(A)−1の調製
生クリーム(明治乳業(株)製、乳脂肪分45質量%)55.6質量部に水44.4質量部を加え55℃まで昇温し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、乳脂肪含量25質量%の生クリーム含有水中油型乳化物(A)−1を調製した。生クリーム含有水中油型乳化物(A)−1の5℃での粘度は、26cpであった(ビスコテスターVT−04E、ローターNo.3(リオン株式会社製)使用、以下同じ)。
【0077】
〔製造例(A)−2〕乳脂30質量%生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の調製
生クリーム(明治乳業(株)製、乳脂肪分45質量%)66.7質量部に水33.3質量部を加え55℃まで昇温し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、乳脂肪含量30質量%の生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2を調製した。生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の5℃での粘度は30cpであった。
【0078】
〔製造例(A)−3〕乳脂35質量%生クリーム含有水中油型乳化物(A)−3の調製
生クリーム(明治乳業(株)製、乳脂肪分45質量%)77.8質量部に水22.2質量部を加え55℃まで昇温し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、乳脂肪含量35質量%の生クリーム含有水中油型乳化物(A)−3を調製した。生クリーム含有水中油型乳化物(A)−3の5℃での粘度は38cpであった。
【0079】
〔製造例(A)−4〕乳脂40質量%生クリーム含有水中油型乳化物(A)−4の調製
生クリーム(明治乳業(株)製、乳脂肪分45質量%)88.9質量部に水11.1質量部を加え55℃まで昇温し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、乳脂肪含量40質量%の生クリーム含有水中油型組成物(A)−4を調製した。生クリーム含有水中油型組成物(A)−4の5℃での粘度は80cpであった。
【0080】
〔製造例(A)−5〕乳脂45質量%生クリーム(A)−5の調製
生クリーム(明治乳業(株)製、乳脂肪分45質量%)100質量部を55℃まで昇温し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、乳脂肪含量45質量%の生クリーム(A)−5を調製した。生クリーム(A)−5の5℃での粘度は350cpであった。
【0081】
〔製造例(A)−6〕乳脂28質量%生クリーム含有水中油型乳化物(A)−6の調製
生クリーム(明治乳業(株)製、乳脂肪分45質量%)62.2質量部に水37.8質量部を加え55℃まで昇温し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、乳脂肪含量28質量%の生クリーム含有水中油型乳化物(A)−6を調製した。生クリーム含有水中油型乳化物(A)−6の5℃での粘度は28cpであった。
【0082】
<水中油型乳化物(B)の製造>
水中油型乳化物(B)の製造に使用した油脂は以下の通りである。
・パーム分別中部油
ヨウ素価52のパーム油を2段分別して得られた中融点画分(融点33℃)。
・パーム核分別硬部油
パーム核油を20〜25℃で分別して得られた高融点部(即ち溶融していない固形部分;融点32℃)。
・エステル交換油脂I
ヨウ素価65のパーム分別軟部油を、化学触媒を用いてランダムエステル交換したエステル交換油脂(融点28℃)。
・エステル交換油脂II
パーム核油及びパーム極度硬化油を80:20(前者:後者)の質量比率で混合した油脂を、化学触媒を用いてランダムエステル交換したエステル交換油脂(融点33℃)。
[該エステル交換油脂の構成脂肪酸中、炭素数14以下の飽和脂肪酸:58.0質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸:27.6質量%]
・エステル交換油脂III
パーム核油及びパーム極度硬化油を50:50(前者:後者)の質量比率で混合した油脂を、化学触媒を用いてランダムエステル交換したエステル交換油脂(融点43℃)。
[該エステル交換油脂の構成脂肪酸中、炭素数14以下の飽和脂肪酸:35.6質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸:53.6質量%]
・パーム核油
【0083】
〔製造例(B)−1〕
パーム分別中部油を4質量部、エステル交換油脂Iを4質量部、パーム核分別硬部油を22質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部混合し、油相を調製した。
一方、水を63質量部、脱脂粉乳を5質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−1を得た。
水中油型乳化物(B)−1は、5℃での粘度40cp、油脂含量30質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合73.3質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量12.0質量%であった。
【0084】
〔製造例(B)−2〕
パーム分別中部油を6質量部、エステル交換油脂Iを5質量部、パーム核分別硬部油を22質量部、エステル交換油脂IIを2質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部を混合し、油相を調製した。
一方、水を58質量部、脱脂粉乳を5質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−2を得た。
水中油型乳化物(B)−2は、5℃での粘度85cp、油脂含量35質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合67.4質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量15.2質量%であった。
【0085】
〔製造例(B)−3〕
パーム分別中部油を8質量部、エステル交換油脂Iを6質量部、パーム核分別硬部油を22質量部、エステル交換油脂IIを4質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部混合し、油相を調製した。
一方、水を53質量部、脱脂粉乳を5質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−3を得た。
水中油型乳化物(B)−3は、5℃での粘度140cp、油脂含量40質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合63.0質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量17.6質量%であった。
【0086】
〔製造例(B)−4]
パーム分別中部油を10質量部、エステル交換油脂Iを7質量部、パーム核分別硬部油を22質量部、エステル交換油脂IIを6質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部混合し、油相を調製した。
一方、水を48質量部、脱脂粉乳を5質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−4を得た。
水中油型乳化物(B)−4は、5℃での粘度230cp、油脂含量45質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合59.6質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量19.5質量%であった。
【0087】
〔製造例(B)−5]
パーム核分別硬部油を40質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部混合し、油相を調製した。
一方、水を53質量部、脱脂粉乳を5質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−5を得た。
水中油型乳化物(B)−5は、5℃での粘度165cp、油脂含量40質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合100質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量0質量%であった。
【0088】
〔製造例(B)−6〕
パーム分別中部油を5質量部、パーム核分別硬部油を35質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部混合し、油相を調製した。
一方、水を53質量部、脱脂粉乳を5質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−6を得た。
水中油型乳化物(B)−6は、5℃での粘度160cp、油脂含量40質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合87.5質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量10.1質量%であった。
【0089】
〔製造例(B)−7〕
エステル交換油脂Iを5質量部、パーム核分別硬部油を35質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部混合し、油相を調製した。
一方、水を53質量部、脱脂粉乳を5質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−7を得た。
水中油型乳化物(B)−7は、5℃での粘度160cp、油脂含量40質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合87.5質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量1.1質量%であった。
【0090】
〔製造例(B)−8〕
エステル交換油脂IIIを5質量部、パーム核油を30質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部混合し、油相を調製した。
一方、水を58質量部、脱脂粉乳を5質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−8を得た。
水中油型乳化物(B)−8は、5℃での粘度150cp、油脂含量35質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合92.9質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量0.3質量%であった。
【0091】
〔製造例(B)−9〕
パーム分別中部油を8質量部、エステル交換油脂Iを6質量部、パーム核分別硬部油を22質量部、エステル交換油脂IIを4質量部、さらにグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを0.1質量部、レシチンを0.2質量部、ソルビタン脂肪酸エステルを0.1質量部混合し、油相を調製した。
一方、水を52.9質量部、脱脂粉乳を5質量部、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.1質量部、トータルミルクプロテインを1質量部、ショ糖脂肪酸エステルを0.1質量部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を0.5質量部混合し、水相を調製した。
続いて上記油相及び上記水相を55℃まで昇温し、水相に油相を添加して攪拌し、バルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、2MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度3MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却することにより、水中油型乳化物(B)−9を得た。
水中油型乳化物(B)−9は、5℃での粘度110cp、油脂含量40質量%、油脂中のラウリン系油脂の割合57.0質量%、トリグリセリド組成におけるSUSの含有量17.6質量%であった。
【0092】
<起泡性水中油型乳化組成物の製造>
〔実施例1〕
製造例(A)−6で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−6の50質量部と、製造例(B)−1で得られた水中油型乳化物(B)−1の50質量部とを、無菌タンクで混合した。続いて攪拌機により均一に混合しさらに10℃で24時間エージングを行い、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0093】
〔実施例2〕
製造例(A)−1で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−1の50質量部と、製造例(B)−2で得られた水中油型乳化物(B)−2の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0094】
〔実施例3〕
製造例(A)−2で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の40質量部と、製造例(B)−2で得られた水中油型乳化物(B)−2の60質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0095】
〔実施例4〕
製造例(A)−3で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−3の50質量部と、製造例(B)−3で得られた水中油型乳化物(B)−3の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0096】
〔実施例5〕
製造例(A)−2で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の50質量部と、製造例(B)−9で得られた水中油型乳化物(B)−9の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0097】
〔実施例6〕
製造例(A)−2で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の50質量部と、製造例(B)−4で得られた水中油型乳化物(B)−4の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0098】
〔実施例7〕
製造例(A)−3で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−3の20質量部と、製造例(B)−4で得られた水中油型乳化物(B)−4の80質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0099】
〔実施例8〕
製造例(A)−3で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−3の50質量部と、製造例(B)−4で得られた水中油型乳化物(B)−4の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0100】
〔実施例9〕
製造例(A)−3で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−3の80質量部と、製造例(B)−4で得られた水中油型乳化物(B)−4の20質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0101】
〔実施例10〕
製造例(A)−4で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−4の60質量部と、製造例(B)−4で得られた水中油型乳化物(B)−4の40質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0102】
〔実施例11〕
製造例(A)−2で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の50質量部と、製造例(B)−5で得られた水中油型乳化物(B)−5の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0103】
〔実施例12〕
製造例(A)−2で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の50質量部と、製造例(B)−6で得られた水中油型乳化物(B)−6の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0104】
〔実施例13〕
製造例(A)−2で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の50質量部と、製造例(B)−7で得られた水中油型乳化物(B)−7の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0105】
〔実施例14〕
製造例(A)−2で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−2の50質量部と、製造例(B)−8で得られた水中油型乳化物(B)−8の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0106】
〔比較例1〕
製造例(A)−3で得られた生クリーム含有水中油型乳化物(A)−3の50質量部と、製造例(B)−1で得られた水中油型乳化物(B)−1の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0107】
〔比較例2〕
製造例(A)−5で得られた生クリーム(A)−5の50質量部と、製造例(B)−5で得られた水中油型乳化物(B)−5の50質量部とを用いて、実施例1と同様にして、起泡性水中油型乳化組成物を得た。
【0108】
得られた起泡性水中油型乳化組成物について、下記<評価方法>のi)に従って、保存時の乳化安定性(ボテ)の評価を行った。
また、得られた起泡性水中油型乳化組成物を用いて、下記<ホイップドクリームの製造>に従ってホイップドクリームを得た。得られたホイップドクリームについて、下記<評価方法>のii)〜v)に従って、常温保管時の軟化(モドリ現象)、常温保管時の硬化(シマリ現象)、コク味、口溶けの評価を行った。
これらの評価結果を下記〔表1〕及び〔表2〕に示す。尚、下記〔表1〕及び〔表2〕には、ホイップドクリームを得た際の起泡化時間及びオーバーランについても併せて示す。
【0109】
<ホイップドクリームの製造>
得られた起泡性水中油型乳化組成物(ただし、比較例3では生クリーム(A)−5、比較例4では水中油型乳化物(B)−5)をミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーを使用して毎分700回転の速度で最適起泡状態に達するまで起泡させ、ホイップドクリームを得た。
【0110】
<評価方法>
i)保存時の乳化安定性(ボテ)
得られた起泡性水中油型乳化組成物(ただし、比較例3では生クリーム(A)−5、比較例4では水中油型乳化物(B)−5)を20℃で1時間調温した後、振動器を用い100回/37秒で水平方向に振動させた。起泡性水中油型乳化油脂組成物が流動性を失うまでの振動回数が10000回以上のものを◎、5000回以上〜10000回未満のものを○、5000回未満のものを×とした。
【0111】
ii)常温保管時の軟化(モドリ現象)
得られたホイップドクリームを5℃の恒温槽中で24時間放置した後、その状態を観察しモドリの程度について、下記(評価基準)に従って4段階評価を行なった。
(評価基準)
◎:離水も軟化も見られなかった。
○:やや離水が見られるが軟化していなかった。
△:軟化していた。
×:流動状となってしまった。
【0112】
iii)常温保管時の硬化(シマリ現象)
得られたホイップドクリームを絞り袋で星型口金を用いて造花した際のシマリの程度について、下記(評価基準)に従って3段階評価を行なった。
(評価基準)
◎:絞り袋から抵抗なく絞り出すことができ、得られた造花は滑らかな表面で先端もきちんとツノがある状態であった。
○:絞り袋から抵抗なく絞り出すことができ、得られた造花はやや表面が荒れたが、きちんとツノがある状態であった。
△:絞り袋からの絞り出しが経時的にやや抵抗があるものとなり、得られた造花も徐々に表面が荒れツノの先端が切れた状態のものとなってしまった。
×:絞り袋からの絞り出しが経時的に抵抗があるものとなり、得られた造花も表面が荒れツノの先端が切れた状態のものとなってしまった。
【0113】
iv)コク味
得られたホイップドクリームのコク味について、15人のパネラーにて官能試験を行った。評価は、コク味が良好なもの、コク味が不良なもの、及びどちらともいえないもの、の3段階で評価し、良好なものに2点、どちらともいえないものに1点、不良なものに0点を与え、合計点が25点以上を◎、20〜24点を○、15〜19点を△、14点以下を×とした。
【0114】
v)口溶け
得られたホイップドクリームを口に含んだときの溶け易さを、15人のパネラーにて官能試験した。評価は、口溶け性が良好なもの、口溶け性が不良なもの、及びどちらともいえないもの、の3段階で評価し、良好なものに2点、どちらともいえないものに1点、不良なものに0点を与え、合計点が25点以上を◎、20〜24点を○、15〜19点を△、14点以下を×とした。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
上記〔表1〕及び〔表2〕の評価結果からわかる通り、生クリーム含有水中油型組成物(A)、及び、油脂含量が(A)成分より大である水中油型乳化物(B)を混合してなる本発明の起泡性水中油型乳化組成物は、保存時の乳化安定性に優れ、ホイップ後の安定性、コク味及び口溶けも良好なものであった(実施例1〜14)。
それに対し、生クリーム含有水中油型組成物(A)と、油脂含量が(A)成分より小である水中油型乳化物(B)から得られた起泡性水中油型乳化組成物は、保存時の乳化安定性に劣り、ホイップクリームとして使用した際の安定性、コク味及び口溶けにも劣るものであった(比較例1、2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)、及び、油分含量が該生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)よりも大であり、生クリームを含まない水中油型乳化物(B)を混合してなることを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項2】
上記生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)の油分含量が40質量%以下である請求項1記載の起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項3】
上記水中油型乳化物(B)がカルシウム封鎖剤を含まない請求項1又は2記載の起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項4】
油分含量が40質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項5】
上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、ラウリン系油脂を40質量%以上含有する請求項1〜4のいずれかに記載の起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項6】
上記水中油型乳化物(B)の油脂のトリグリセリド組成において、SUS(Sは炭素数16以上の飽和脂肪酸を示し、Uは炭素数16以上の一価不飽和脂肪酸を示す)で表されるトリグリセリドの占める割合が10〜60質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項7】
上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、ヨウ素価52〜75のパーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換してなるエステル交換油脂を、10〜50質量%含有する請求項1〜6のいずれかに記載の起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項8】
上記水中油型乳化物(B)の油脂中に、構成脂肪酸組成において炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が20〜50質量%であり炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が35〜70質量%である油脂配合物をランダムエステル交換してなるエステル交換油脂を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の起泡性水中油型乳化組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の起泡性水中油型乳化組成物を製造する方法であって、
生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)、及び、油分含量が該生クリーム又は生クリーム含有水中油型乳化物(A)よりも大であり、生クリームを含まない水中油型乳化物(B)を混合することを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−205959(P2011−205959A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76547(P2010−76547)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】