説明

超安定な多孔性アルミノ珪酸塩構造体

【課題】慣用のアルミン珪酸塩組成物の好ましくない大規模な脱アルミナ及び水蒸気不安定性がない六角形、立方体、虫孔又は泡沫の骨格構造を有する超安定な多孔性アルミン珪酸塩の組み立て物(assembly)を提供する。
【解決手段】イオン性の構造誘導剤を用いてプロトゼオライト的な種から導かれるメソ多孔性の六角形、立方体、層状、虫孔、又はセル状泡沫のアルミノ珪酸塩、ガロ珪酸塩及びチタノ珪酸塩について記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に関する相互引照)
本出願は2000年5月25日出願の一連番号09/578,315の部分継続である。
【0002】
(連邦によって資金提供される研究及び開発に関する言及)
本発明はNatinonal Science Foundatoion Grant 第CHE−9633798号及びCHE−9903706号の下でなされた。この発明に対して米国連邦政府はいくらかの権利を有する。
【0003】
本発明は高温度でそして水熱条件下で安定である独特な構造を有する多孔性のアルミノ珪酸塩組成物に関する。特に、本発明は構造誘導剤(a structure directing agent)とともにゼオライトの種を使用する、多孔性のアルミノ珪酸塩組成物を製造する方法に関する。さらに、本発明は油及び他の有機分子のための新規な分解触媒に関する。本発明は、慣用のアルミン珪酸塩組成物の好ましくない大規模な脱アルミナ及び水蒸気不安定性がない六角形、立方体、虫孔又は泡沫の骨格構造を有する超安定な多孔性アルミン珪酸塩の組み立て物(assembly)を提供する。
【背景技術】
【0004】
これまで報告されたアルミノ珪酸塩のメソ構造体はすべて、直接アルミナ化又は合成後のアルミナ化のいずれかによって製造されるため、か焼に際して骨格の大規模な脱アルミン酸塩が起きる(Ryoo, R.ら、Chem. Commun. 2225 (1997);及びLuan, Z. H.ら、J. Phys. Chem. 99 10590 (1995))。この好ましくない性質は、か焼過程で発生する水蒸気による骨格のAlの加水分解に帰せられている(Corma, A.ら、J. Catal. 148 569 (1994);及びLuan, Z. H.ら,J. Phys. Chem. 99 10590 (1995))。脱アルミナ過程の原因となるメカニズムに関わりなく、有機化学的転化のためのこれらの物質の酸触媒特性が著しく損なわれる。さらに、これまで報じられているアルミノ珪酸塩のメソ構造はすべて、石油用触媒を処理する際に通常遭遇する温度で水蒸気に暴露される時、その骨格のメソ多孔性を完全に喪失する。
【0005】
メソ多孔性のMCM−41分子篩の発見(Peck, J. S.ら、J. Am. Chem. Soc. 114 10834 (1992))後間もなく、アルミニウムを骨格内に取り込むと穏和な酸官能性が導入されるが、特に、意図するアルミニウム荷量が約8モル%を越える場合、アルミニウムの広範囲の整列及び四面体の位置どりが損なわれることが判明した(Chen, C-Y.ら、Microporous Mater. 2 17 (1993); Borade,. R. B.ら、Catal. Lett 31 267 (1994); Luan, Z. H.ら、J. Phys. Chem. 99 10590 (1995))。穏和な酸性及び構造的一体性の喪失は、再生条件下での劣悪な水蒸気安定性とあいまって、六角形のAl−MCM−41組成物を高分子量の石油留分を処理するに関して候補として魅力的でないものとしている。より最近には、直接的な組み立てを通じてのAl−MCM−41の構造的一体性の改善(Janicke, M. T.ら、Chem. Mater. 11 1342 (1999))、及び合成後の変性方法(Hamdan, H.ら、J. Chem. Soc. Faraday Trans 92 2311 (1996); Mokaya, R.ら、Chem. Commun. 2185 (1997); Ryoo, R.ら、J. Chem. Commun. 2225 (1997);及びRyoo, R.ら、Chem. Mater. 9 1607 (1998))の改善に大きな発展がなされている。しかしながら、低い酸性及び劣悪な水蒸気安定性は石油精製における用途の可能性を以前として限定してしまう(Corma, A.、Chem. Rev. 2373 (1997))。
【0006】
以上から、特に水蒸気の存在下で安定であるより大きな細孔寸法を有しメソ構造である改善されたアルミノ珪酸塩組成物に対する需要がある。特に、本発明は安定な骨格構造を有するアルミノ珪酸塩に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔を画定しまた約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有し、また約2〜100nmの間の基底間隔(basal spacing)に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして該組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物に関する。
【0008】
本発明はまた、結合したSiO4及びAlO4単位の骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔を画定しまた約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有し、また2〜100nmの間の少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして該組成物が、20容積%の600℃の水蒸気に4時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも75%保持する、アルミノ珪酸塩組成物にも関する。
【0009】
本発明は、結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、この骨格が細孔内に有機界面活性剤を有する細孔を画定し、また1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有し、また約2〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして、該組成物が、有機界面活性剤、任意により共界面活性剤、及び予めつくられたゼオライトの種から誘導される、アルミノ珪酸塩組成物にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(a)水溶液、ゲル、懸濁液で湿潤された粉末及びこれらの混合物からなる群から選択されるプロトゼオライトアルミノ珪酸塩(protozeolitic aluminosilicate)の種を供給し;
(b)水性媒体中の該種を混合物中で有機界面活性剤と反応させ;
(c)段階(b)の混合物を25〜200℃の温度で熟成して、組成物の沈殿を得;そして
(d)組成物を段階(c)の混合物から分離する
ことを包含する多孔性のアルミノ珪酸塩組成物を形成する方法にも関する。
【0011】
本発明は、結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含む構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が界面活性剤及び任意により共界面活性剤を内部に有するメソ細孔を画定し、約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有し、また約2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして該組成物がか焼されるとき、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物にも関する。
【0012】
さらに本発明は、結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含む多孔性のアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が、約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有するメソ細孔を画定し、また約2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして、BET表面積が200〜1400m2/gであり、骨格の平均細孔寸法が約1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が約0.1〜3.5cm3/gの間であり、また該組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物に関する。
【0013】
さらに本発明は、結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含むハイブリッドな多孔性アルミノ珪酸塩−炭素組成物であって、該骨格が、約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比及び0.01〜10重量%の間のメソ細孔中に埋め込まれた炭素を有するメソ細孔を画定し、また約2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして、BET表面積が200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が約1.0〜100nmであり、そして骨格の細孔容積が約0.1〜3.5cm3/gであり、また組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩−炭素組成物に関する。
【0014】
さらに本発明は、
(a)塩基性pHで珪酸ナトリウム溶液をアルミン酸ナトリウム溶液とアルミニウム対珪素比約1000対1〜1対1で反応させ、混合物を25〜200℃で48時間までの期間にわたって熟成してゼオライトの種を形成し;
(b)得られる混合物を界面活性剤及び任意により共界面活性剤と反応させ;
(c)(b)から得られる混合物をプロトン酸によって酸性化して、OH-/(Si+Al)比が0.10〜10の範囲にある混合物を得;
(d)段階(c)からの混合物を20〜200℃の温度で熟成して組成物の沈殿を得;そして
(e)段階(d)の混合物から組成物を分離する
ことを包含するメソ多孔性のアルミノ珪酸塩組成物を形成する方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、
(a)水溶液、ゲル、懸濁液、湿潤粉末、又はこれらの組み合わせとしてゼオライトの種を供給し;
(b)水性媒体中のゼオライトの種を界面活性剤と反応させ、この場合、溶液は0.10〜10の範囲のOH-/(Si+Al)比を有し、
(c)段階(b)からの混合物を20〜200℃の温度で熟成して組成物の沈殿を得;そして
(d)段階(c)の混合物から組成物を分離する
ことを包含するメソ多孔性アルミノ珪酸塩組成物を形成する方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、
(a)結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が、約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有するメソ細孔を画定し、また約2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして、BET表面積が200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が約1.0〜100nmであり、そして骨格の細孔容積が約0.1〜3.5cm3/gであり、また組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物;及び
(b)アルミノ珪酸塩組成物のためのバインダー
を含む、有機分子を流動床触媒クラッキング(FCC)又は水添分解するために有用な触媒に関する。
【0017】
さらに本発明は、
(a)結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩−炭素組成物であって、該骨格が、約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比及び0.01〜10重量%の間のメソ細孔中に埋め込まれた炭素を有するメソ細孔を画定し、また約2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、BET表面積が200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が約1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が約0.1〜3.5cm3/gの間であり、炭素含有率が0.01〜10重量%の間であり、また組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩−炭素組成物;及び
(b)アルミノ珪酸塩−炭素組成物のためのバインダー
を含む、有機分子を流動床接触分解(FCC)又は水添分解するために有用な触媒に関する。
【0018】
さらに本発明は、
(a)結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が、約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有するメソ細孔を画定し、また約2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、BET表面積が200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が約1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が約0.1〜3.5cm3/gの間であり、また組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する上記アルミノ珪酸塩組成物及びアルミノ珪酸塩組成物のためのバインダーを含む接触分解触媒を反応器内に供給し;そして
(b)有機分子の反応を惹起する温度及び圧力で有機分子を触媒上に導入すること
を含む、分子量がより小さい成分へと有機分子を接触反応させる方法に関する。
【0019】
さらに本発明は、
(a)四面体の結合したSiO4及びAlO4単位の骨格を含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩−炭素組成物であって、該骨格が、約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比及び0.01〜10重量%の間のメソ細孔中に埋め込まれた炭素を有するメソ細孔を画定しまた約2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、BET表面積が約200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が約1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が約0.1〜3.5cm3/gの間であり、また組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩−炭素組成物及びアルミノ珪酸塩−炭素組成物のためのバインダーを含む接触分解触媒を反応器内に供給し;そして
(b)有機分子の反応を惹起する温度及び圧力で有機分子を触媒上に導入すること
を含む、分子量がより小さい成分へと有機分子を接触反応させる方法に関する。
【0020】
さらに本発明は、
(a)結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、当該骨格が細孔を画定しまた約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有し、また約1〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして、この組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物;及び
(b)アルミノ珪酸塩組成物のためのバインダー
を含む、有機分子を流動床接触分解(FCC)又は水添分解するために有用な触媒に関する。
【0021】
さらに本発明は、
(a)結合した四面体のSiO4及びAlO4単位の骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔を画定しまた約1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有し、また約1〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして、この組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された時に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物を供給し;そして
(b)有機分子の反応を惹起する温度及び圧力で有機分子を触媒上に導入すること
を含む、分子量がより小さい成分へと有機分子を反応させる方法に関する。
【0022】
本発明は、接触された有機反応において、多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩、ガロ珪酸塩、チタノ珪酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択され、結合した四面体のSiO4及びAlO4、GaO4又はTiO4単位の骨格を含む触媒によって反応を行い、該骨格が細孔を画定し、またSi対Ga、Ti及びAlを一緒にしたもののモル比が約1000対1〜1対1の間であり、また約2〜100nmnの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして組成物が、20容積%の600℃の水蒸気に4時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、改良にも関する。
【0023】
本発明は、結合した四面体のSiO4と、AlO4単位、GaO4単位、TiO4単位及び混合した単位からなる群から選択される単位との骨格を含む多孔性の構造化された珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔を画定し、またSi対Ga、Ti及びAlを一緒にしたもののモル比が約1000対1〜1対1の間であり、約1〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そして、組成物が20容積%の600℃の水蒸気に4時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、珪酸塩組成物にも関する。
【0024】
本発明の組成物は、石油の水添処理のために、特に石油留分例えば溜出油又は残渣留分が有用な炭化水素である分子量がより小さい留分へと水素ガスの存在下で分解される水添分解プロセスのために、使用されることができる。接触分解のための床は流動化されてよい。水添分解のための床は通常固定される。
【0025】
(図面の簡略な説明)
図1は、慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩前駆体から調製される2%Al−MCM−41アルミノ珪酸塩メソ構造の製造されたままの形態及びか焼された(540℃)形態に関する27Al MAS NMRスペクトルを示す。矢印は、0ppm近傍での共鳴を指し示し、これは、か焼されたメソ構造における6−配位された(6−coordinated)AlO6中心を示す。
【0026】
図2は、ファウジャス石ゼオライト(faujastic zeolite)Y(10%Al−Yと称される)の核形成及びMFIゼオライトZSM−5(5%Al−ZSM−5と称される)の核形成のために核形成の中心(種)として働くアルミノ珪酸塩のナノクラスター(nanocluster)に関する27Al MAS NMRスペクトルを示す。図2AはゼオライトYの種(10%Al−Y−種と称される)を空気乾燥しそしてエタノールの添加によってゼオライトYの種を沈殿することにより生成される固体(10%Al−Y−種+EtOHと称される)に関するX線粉末回折パターンを示す。
【0027】
図3は、540℃でか焼されている20%Al−MSU−Sの六角形のアルミノ珪酸塩メソ構造に関するXRDパターンである。
【0028】
図4は、Al−MSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造のか焼された形態及びゼオライトY(HYと称される)のプロトン形態に関する27Al MAS NMRスペクトルを示す。62ppmという化学シフトの値は、ゼオライト様のSiO4中心への連結性を有する四面体のAlO4中心を示す。0ppm近傍の化学シフトを有する八面体のAlO6中心は示されない。
【0029】
図5は、ナノクラスター化されたゼオライトYの種から組み立てられた、か焼された立方体の10%Al−MSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造、及び慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩の前駆体から製造されるか焼された立方体の2%Al−MCM−48のXRDパターンを示す。
【0030】
図6は、ゼオライトYの種から製造される2%Al−MSU−S及び慣用の前駆体から製造される2%Al−MCM−41に関する27Al MAS NMRスペクトルを示す。矢印は、AlO6中心を示す0ppm近傍での共鳴線を指し示す。
【0031】
図7は、ゼオライトYの種から組み立てられた10%Al−MSU−Sの虫孔構造に関する透過電子顕微鏡写真を示す。
【0032】
図8は、ゼオライトZSM−5及びゼオライトYの種からそれぞれ組み立てられた2%Al−MSU−S及び10%Al−MSU−Swの虫孔構造に関する窒素の吸着/脱着等温線を示す。書き込みは等温線から得られるBET表面積(SBET)及び細孔容積(P.V.)を示す。明瞭さのためには、等温線は200cc/gだけ補われている。
【0033】
図9は、虫孔骨格構造を有するメソ多孔性のアルミノ珪酸塩である10%Al−MSU−S(ゼオライトYの種から組み立てられた)及び2%Al−MSU−S(ゼオライトZSM−5の種から組み立てられた)に関するXRDパターンを示す。
【0034】
図10は、20容積%の水蒸気に800℃で5時間暴露された後の20%Al−MSU−S、10%Al−MSU−S及び2%Al−MCM−41アルミノ珪酸塩メソ構造に関するXRDパターンを示す。
【0035】
図11A、11B及び11Cは、Mokayaの方法(Angew. Chem. Int. Ed. 38 No.19, 2930 (1999))に従う、2次的なシリカメソ構造のAl13オリゴカチオンとのグラフト反応によって製造される『超安定な』14%Al−MCM−41アルミノ珪酸塩の新規にか焼されたもの、及び窒素中の水蒸気20容積%に800℃で5時間暴露された後の同じメソ構造に関するXRDパターン(11A)及び窒素の吸着/脱着等温線(11B)を示す。この図には、水蒸気への暴露後の試料の27Al MAS NMRスペクトル(11C)もまた含まれる。
【0036】
図12A及び12Bは、窒素中の20容積%の水蒸気に800℃で5時間暴露する前(12A)及び後(12B)の、か焼された(540℃、7時間)メソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩のXRDパターンを示す。(A)はゼオライトYの種から製造される六角形の10%Al−MSU−Sであり;(B)はMokayaのグラフト方法(Angew. Chem. Int. Ed. 38 No.19, 2930 (1999))によって製造された『超安定な』六角形の14%Al−MCM−41であり;(C)は慣用の珪酸塩及びアルミン酸塩前駆体からの直接合成によって製造される、整列されていない10%Al−MCM−41である。強度の尺度は水蒸気処理の前及び後の試料について同一である。800℃で水蒸気に暴露される前及び後に認められるBET表面積及び細孔容積を、六角形の単位セルのパラメータとともに表1に示す。
【0037】
図13A及び13Bは、水蒸気(N2中の20容積%のH2O)に800℃で5時間暴露する前(13A)及び後(13B)の、か焼された(540℃、7時間)メソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩に関するN2の吸着/脱着等温線を示す。(A)は六角形の10%Al−MSU−Sであり;(B)はMokayaのグラフト方法によって製造された『超安定な』14%Al−MCM−41であり;(C)は慣用の前駆体からの直接合成によって製造される10%Al−MCM−41である。明瞭さのために、等温線は200cc/gだけ補われている。
【0038】
図14は、300〜450℃の温度範囲でのメソ多孔性アルミノ珪酸塩上のクメンの転化を示すグラフである。A及びCは、10%Al−MSU−Sのそれぞれか焼された及び水蒸気処理された試料について得られる転化率であり;B及びDは直接合成によって製造された10%Al−MCM−41のそれぞれか焼された及び水蒸気処理された試料に関する転化率である。反応条件は、内径6mmの固定床の石英反応器;触媒200mg;クメンの流量、4.1モル/分;N2搬送ガス、20cc/分;転化率は水蒸気上で30分処理の後に報告する。
【0039】
図15は、慣用の前駆体から製造される5%Al−MCM−41及びゼオライトZSM−5の種から製造される2%Al−MSU−Sに関する、400〜800cm-1の領域の赤外吸収スペクトルを示す。比較のために、ZSM−5の真正な試料のスペクトルも含める。
【0040】
図16は、粉末化された形態の(A)テンプレート(template)としてのTPA+の存在下で製造されたゼオライトZSM−5の種、(B)テンプレートとしてのTEA+から製造されたゼオライトBetaの種、及び(C)TPA+又はTEA+の代わりにTMA+を使用して製造される慣用のアルミノ珪酸塩アニオンのIRスペクトル(KBr)を示すグラフである。
【0041】
図17A、17B及び17Cは、20%水蒸気に600℃及び800℃で5時間暴露する前(A)及び後(B)の、か焼された(550℃、4時間)メソ多孔性のアルミノ珪酸塩分子篩のXRDパターンを示すグラフである。(A)はゼオライトZSM−5の種から製造される六角形の1.5%Al−MSU−S(MFI);(B)はゼオライトベータの種から製造される六角形の1.5%Al−MSU−Sである。強度尺度は水蒸気処理の前及び後の試料について同一である。六角形の単位セルのパラメータを表2に示す。
【0042】
図18A及び18B及び18Cは、水蒸気処理(N2中の20容積%のH2O、600℃、5時間)の前及び後の、か焼(550℃、5時間)された六角形のメソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩に関するN2吸着/脱着等温線を示すグラフである。(A):ゼオライトZSM−5の種からの1.5%Al−MSU−S;(B):ゼオライトベータの種からの1.5%Al−MSU−S;(C):慣用の前駆体からの1.5%Al−MCM−41。明瞭さのために、等温線は200cc/gだけ補ってある。
【0043】
図19は、か焼された六角形のメソ構造のIRスペクトルを示すグラフである。(A)はゼオライトZSM−5の種から組み立てられた1.5%Al−MSU−S;(B)はゼオライトベータの種から組み立てられた1.5%Al−MSU−Sそして(C)慣用のアルミノ珪酸塩前駆体からつくられた1.5%Al−MCM−41である。
【0044】
図20は、800℃で2時間水蒸気処理する前(A)及び後(B)の六角形のMSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造(Si/Al=49)のXRDパターンを示すグラフである。組成物はゼオライトYの種(Si/Al=5.67)と珪酸ナトリウムとの混合物からPluronic P123(登録商標)界面活性剤の存在下で製造された。
【0045】
図21は、800℃で2時間水蒸気処理する前(A)及び後(B)のMSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。組成物はゼオライトYの種と珪酸ナトリウムとの混合物からPluronic P123(登録商標)界面活性剤の存在下で製造された。図21Aは細孔寸法を示す。
【0046】
図22は、例23のか焼された生成物のXRDパターンを示すグラフである。
【0047】
図23は、例23のか焼された生成物のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図23Aは、細孔寸法を示す。
【0048】
図24は、例24のか焼された生成物のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図24Aは、細孔寸法を示す。
【0049】
図25は、(A)2モル%のAl及び(B)5モル%のAlを含有するセル状泡沫の骨格構造を有する、例25のか焼されたアルミノ珪酸塩組成物のアルミノ珪酸塩組成物のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図25Aは細孔寸法を示す。
【0050】
図26は、(A)空気中での600℃のか焼の後の、及び(B)20%の水蒸気に600℃で4時間暴露の後、及び(C)20%の水蒸気に800℃で2時間暴露の後の、例26のか焼されたアルミノ珪酸塩セル状泡沫組成物(Si/Al=67)のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図26Aは細孔寸法を示す。
【0051】
図27A及び27Bは、20%の水蒸気に650℃で4時間暴露の前(図27A)及び後(図27B)のか焼されたメソ多孔性アルミノ珪酸塩のセル状泡沫(Si/Al=50)のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである:(A)はZSM−5の種から、(B)はゼオライトBetaの種からそして(C)は慣用の前駆体から製造される。
【0052】
図28は、例29のか焼された生成物のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図28Aは、細孔寸法を示す。
【0053】
図29は、650℃で4時間水蒸気処理される前(A)及び後(B)の、例30の超微小多孔性のアルミノ珪酸塩組成物のXRDパターンを示すグラフである。
【0054】
図30は、20%の水蒸気に650℃で4時間暴露される前(A)及び後(B)の、例30のか焼された超微小多孔性組成物に関するN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図30Aは、細孔寸法を示す。
【0055】
図31は、アルミノ珪酸塩構造を20%の水蒸気に暴露するために使用される装置のスケッチを示す。図31Aは試料チャンバーの部分的な拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
(好ましい態様の説明)
本発明は、石油精製のようなプロセスにおける触媒の再生で遭遇する苛酷な水蒸気処理条件の下で安定な固体酸触媒である、大きな細孔(超微小多孔性)から、極めて大きな細孔(メソ多孔性)を経て、異例に大きな細孔(巨大多孔性)に至るアルミノ珪酸塩の構造的に独特な群を提供する。この結果は、反応剤を添加することなくあるいは、同じ寸法範囲内の骨格細孔を有する慣用のアルミノ珪酸塩構造を製造するための費用と比較して追加の費用なしに達成されている。大きなメソ多孔性骨格の細孔寸法(1.0〜100nm)は、これらの新規な物質を、固体の酸触媒、特に極めて大きな分子量の留分を含有する『重質原油』を精製するための分解触媒又は水添分解触媒として特に好適にする。
【0057】
超安定なアルミノ珪酸塩メソ構造を形成する方法は、第一に、結合された四面体のAlO4及びSiO4単位として4−配位されたアルミニウム及び珪素を主として含むナノメートル寸法をもつ、プロトゼオライトアニオンアルミノ珪酸塩クラスターの反応混合物を、所望のナノクラスターを形成する構造誘導剤の存在下で調製することである。これらプロトゼオライト的なナノクラスター化されたアルミノ珪酸塩アニオンは次いで、構造誘導性の界面活性剤、最も好ましくはオニウムイオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤の存在下で、超分子(supramolecular)組み立て反応によって多孔性骨格構造へとさらに結合される。オニウムイオン界面活性剤は有機分子中にアンモニウム、ホスホニウム又はアルソニウムイオンを含むことができる。非イオン界面活性剤は、親水性の部分が1つ以上のポリエチレンオキサイド鎖(PEO)xでありまた疎水性の部分がポリプロピレンオキサイド鎖(PPO)yアルキル鎖、ポリブチレンオキサイド鎖、置換されたアリール鎖又はこれらの混合物であるジ−、トリ−又はテトラ−ブロックコポリマーである。PLURONIC(BASF)、TETRONIC(BASF)、TRITON、TERGITOL(Union Carbide)、BRIJ、SORBATANなどの商品名で市販されている非イオンPEO界面活性剤が有用な界面活性剤である。中性アミンもまた有用な構造誘導性界面活性剤であり、虫孔及び層状骨格構造を組み立てるのに特に有用な構造誘導性界面活性剤である(Kimら、Science, 282 1302 (1998))。共界面活性剤は構造誘導性の界面活性剤ミセルの寸法、従って、骨格の細孔寸法を大きくする際に有用である。HO(CH216N(CH33+のようなボラフォーム(bolaform)界面活性剤は、超微細多孔性骨格を組み立てるのに有効である(Bagshawら、Chem. Commun. 533-534 (2000))。界面活性剤及び任意による共界面活性剤の選定は、水蒸気に安定な本発明の組成物の開放した骨格構造の種類を決定するのに重要な役割を果たす。一般に、六角形、立方体、層状及び整列されていない虫孔骨格構造はゼオライトの種の前駆体から組み立てられ得る。加えて、ゼオライトの種の存在下で、界面活性剤及び共界面活性剤の乳濁液からセル状の泡沫構造を得ることができる。添付の例はいくつかの種類の開放骨格構造の組み立てを例示する。各々の種類の構造は特徴的なX線回折パターンを示す。すべての場合、各々の種類の構造は少なくとも2.0nmの間隔に相当する少なくとも1つの反射を示す。構造の種類は、骨格の壁及び細孔の画像を与える高解像度の透過電子顕微鏡写真によっても確認される。
【0058】
作成したままの構造からアルカリ金属イオン、有機イオン及び界面活性剤を取り除くことにより、これまで開示されているアルミノ珪酸塩構造と比較して、独特な熱安定性及び水熱安定性を有する多孔性の骨格が与えられる。最も好ましいのは、アンモニウムイオン(NH4+)の溶液での処理によってナトリウムイオン、有機イオン及びいくらかの界面活性剤を取り除くことにより得られる多孔性構造である。このNH4+−交換された形態の組成物を約500℃を越える温度でか焼すると、残留する界面活性剤が除去され、またアンモニウムイオンがプロトンに転換され、従って、様々な有機化学的転化、特にアルキル化反応、異性化反応、分解反応、水添分解反応及び水添処理反応を触媒するための安定な固体酸が与えられる。得られる酸性組成物は、接触転化を改善するために、慣用の触媒粒子の活性成分として容易に取り込まれ得る。組み立てプロセスで存在するアルカリ金属イオンの濃度が低いならば、このようなイオンはほとんど既製の製品中にほとんど取り込まれない。この場合、水蒸気に安定な生成物は、界面活性剤及び共界面活性剤のか焼による除去によって得ることができる。このことは、界面活性剤の除去に先立って又は除去に引き続いてアルカリ金属イオンを除去するためのイオン交換反応の必要性をなくす。
【0059】
特に、石油の残渣又は重質留分を含む石油の高留分を分解できる成分として本発明の水蒸気に安定な多孔性の組成物を粒子マトリックスに組み込むことにより、FCC(流動床接触分解)及び水添分解触媒粒子の触媒性能特性の強化を期待することができる。水蒸気に安定なこの組成物は、アセタール生成、芳香族のアルキル化、オレフィンの二量体化及びオリゴマー化、オレフィンとアルコールのエステル化、アルコールのエステル化、アルコールのエーテル化、オレフィンの水和、異性化、トランスアルキル化、トランスエステル化、加水分解反応を特に含む様々な化学合成のための不均一な酸触媒中の成分として使用されることもできる。水蒸気安定性は、空気中でのか焼、つまりかなりの水蒸気を発生する過程によって失活性副生物を使った触媒から除去することを可能にするので、これらの接触的応用にとって極めて重要である。
【0060】
本発明の安定なメソ構造を形成するために使用されるプロトゼオライト的なナノクラスター化されたアルミノ珪酸塩アニオンは、ゼオライト化学の技術において核形成剤としてあるいはより一般的に『ゼオライトの種』として知られる。このアニオンには、それを溶液、ゲル又は湿潤固体として高温で熟成する際に原子的に整列された特定のゼオライトへと結晶化されることができるので、この用語が与えられる。加えて、種が添加されていない同等な条件下で、関心のある所望のゼオライトを通常は生成しないであろう珪酸塩イオン及びアルミン酸塩イオンの反応混合物にいくつかのゼオライトの種が少量添加される時、それは特定のゼオライトの核形成及び結晶化を促進することができる。一般にゼオライトの種は2つの物理的形態を有することができる。つまりそれは、それが核形成する同じゼオライトのマイクロメートル未満の結晶性粒子の形態であることができ、あるいは溶液、ゲル又は溶媒−懸濁された形態の非結晶ナノクラスターであってよい。マイクロメートル未満の形態のものは、『結晶性の種』としばしば称されるが、非結晶のナノクラスター化された形態はしばしば『核形成性の中心、ゲル、溶液、薬剤など』としばしば称され、また時には『非結晶ゼオライト』と称される。例えばLechertら、Stud. Surf. Sci. Catal., 84, 147 (1994)では、Y型ゼオライトの種のための結晶性形態の核形成剤と非結晶ゲル形態の核形成剤とが区別される。しかしながら、本発明の技術を提示するために、本発明者はこれら双方の形態のゼオライト核形成反応剤を、それらがマイクロメートル未満の結晶であろうと非結晶のナノクラスターであろうと、『ゼオライトの種』又は単に『種』と称する。
【0061】
一般に、本発明の水蒸気に安定な多孔性構造体を組み立てるために使用する好ましいゼオライトの種の組成物は、BraggX線反射の積分強度から判断されるように、同一のBraggX線反射を有する完全結晶化されたゼオライトと比較して、原子的な結晶の形をした結合したSiO4及びAlO4の四面体を約5%より少なく含む。本発明の水蒸気に安定なアルミノ珪酸塩組成物を生成するために使用する最も好ましいゼオライトの種は典型的に、水性懸濁液の形態又は粉末化された形態のいずれでもBraggX線反射を示さない。
【0062】
本発明の水蒸気に安定な好ましい超微細多孔性の(1.0〜2.0nm)、メソ多孔性の(2.0〜50nm)及びマクロ多孔性の(50〜100nm)アルミノ珪酸塩骨格構造は、原子的に整列されたゼオライトのBraggX線反射特性をやはり示さない。しかしながら、原子的に整列されたゼオライト相を本発明の水蒸気に安定な多孔性アルミノ珪酸塩組成物と混合し得る可能性は排除されない。大きな細孔から極度に大きな細孔までのアルミノ珪酸塩相の存在は、約2.0nmより大きい基底間隔又は細孔と細孔とを相関する距離に対応する少なくとも1つのX線回折ピークによって示される。ただし、この相関距離は通常3.0nmより大きい。開放された骨格構造は、細孔の網状組織を明らかにする透過電子顕微鏡写真の画像によって、また1.0〜100nmの範囲の細孔の窒素吸着等温線の特性によって確認される。骨格の細孔を画定する壁に原子的整列がないことは、原子距離に対応するX線回折ピークが存在しないことにより確認される。本発明の開放骨格のアルミノ珪酸塩構造はすべて、800℃の20容積%水蒸気に2時間にわたって暴露した後、その最初の骨格表面積及び骨格細孔容積の少なくとも50%を留保する。これまで開示された他の開放骨格のアルミノ珪酸塩組成物はいずれも、比肩する水熱安定性を示さない。本発明の技術と、開放骨格のアルミノ珪酸塩組成物を組み立てるためのすでに開示されたすべての技術との主な差異は、超分子組み立てプロセスのための珪酸塩及びアルミン酸塩前駆体の選定にある。すべてのこれまで開示された技術では慣用の珪酸塩では、及びアルミン酸塩前駆体が利用される一方、本発明の技術では、骨格の壁を組み立てるためのプロトゼオライト的なアルミノ珪酸塩ナノクラスター又は『ゼオライトの種』が活用される。
【0063】
ゼオライトの種は特定の無機及び有機カチオンの存在下で塩基性のpH及び通常は高温度の条件の下で珪酸塩アニオン及びアルミン酸塩アニオンの混合物を熟成することによって生成される。カチオンは、種の形成に際してそれらが『テンプレート』として、あるいはより正確には構造誘導剤として作用するように選定される。例えば、ゼオライトYの種、より正確にはファウジャス石ゼオライト、を形成するための無機ナトリウムカチオンの使用は、Robson ACS Sym. Ser., 398, 436 (1989)によって、Vaughanらの米国特許第4,178,352号(1979)、Lechertら、Stud. Sur. Sci. Catal., 84, 147 (1994)によって、またMcDanielらの米国特許第3,574,538号及び第3,808,326号、Maherらの米国特許第3,671,191号ならびにElliottの米国特許第3,789,107号によって開示されている。ゼオライトの異なる多くの族の種を形成するために有機カチオンを使用することは、LokらZeolites, 3, 282 (1983); J. N. WatsonらJ. Chem. Soc., Faraday Trans. (94) 2181 (1998); P. P. E. A. de Moor,らChem. Mater. (11) 36 (1999); P. P. E. A. de Moor,らJ. Phys. Chem. B (103) 1639 (1999) and S. I. Zonesら., Microporous Mesoporous. Mater. 21, 199 (1998)によって述べられている。
【0064】
非結晶のナノクラスター化された種の構造は知られていないが、ナノクラスターが、結晶性ゼオライト中に見いだされる2次的な構成ブロックに似ているSiO4及びAlO4の四面体の結合を含むことが仮定されている。この2次的な構成ブロックは、四面体的に配位されている珪素及びアルミニウムの中心を架橋する空間を埋める特定の数の酸素原子の環、例えば、単一の及び二重の4員環、5員環、6員環などを含んでよい。ここで上記の数は環における酸素化を指す。ナノクラスター化されたアルミノ珪酸塩の種におけるSiO4単位とAlO4単位との連結性がいかなるものであろうと、これらの単位はゼオライト相の核形成において強力な構造誘導反応剤である。ナノクラスターは、ゼオライトの結晶化を容易に促進する構造又はそのような四面体構成ブロック連結性を有することにより『プロトゼオライト的』であるとみなすことができる。本発明の技術は、これらの同一のプロトゼオライト的な種は、その骨格の壁が、慣用のゼオライトの原子的に十分に整列された骨格の壁と比較して、大部分整列していないままであるとはいえ、高度に安定な構造化されたアルミノ珪酸塩分子篩の超分子組み立てのための好ましい前駆体であることを開示している。しかしながら、上記したように本発明者は、安定な構造化されたアルミノ珪酸塩分子篩の組み立てに、結晶性のミクロン未満のゼオライトの種を前駆体として使用することを、開示した技術から排除しない。このような小さい結晶性のゼオライトの種は、安定な骨格壁へと少なくとも部分的に転換されることができ、開放骨格構造を組み立てるのに用いる条件下で下位構造が形成される。
【0065】
アルミノ珪酸塩メソ構造の構造的な整列、酸性度及び水蒸気安定性はすべて、微細多孔性のゼオライト、特にY型ゼオライト及びZSM−5の結晶化において核形成を通常行うナノクラスター化された前駆体の組み立てによって実質的に改善されることができる。これらのゼオライトの種は、結晶性ゼオライト中にある2次的な構造要素に類似するAlO4及びSiO4の四面体連結性を採ることにより、ゼオライトの核形成を促進するものと想定される。まさにこれらのゼオライトの種をメソ構造へと組み立てることにより、たとえ骨格壁が大部分原子的に整列していないにせよ、ゼオライトに近づき始める酸性度及び水熱安定性が付与される。
【0066】
本発明の教示に従う、ゼオライトの種からの水熱的に安定なアルミノ珪酸塩メソ構造の組み立ては、無機カチオンから形成されるゼオライトYに、又は有機カチオンから形成されるゼオライトベータもしくはZSM−5ゼオライトの種に限定されない。慣用の前駆体から調製される同一のメソ構造と比較して実質的に改善されている水熱安定性を有するアルミノ珪酸塩メソ構造を形成するために、ゼオライトの種の任意の組成物を使用することができる。本発明者が上記に述べたように、珪酸塩及びアルミン酸塩アニオンを、結晶性ゼオライトの核形成において種となるナノクラスター化された単位へと組織化する(又は『テンプレートにする』)有機の分子及びイオンの多くの例が文献によって開示されている(例えば、B. M. Lokら、Zeolites (3) 282 (1983); R. E. Boyettら、Zeolites (17) 508 (1996); S. I. Zonesら、Microporous Mesoporous Mater. (21) 199 (1998)参照)。有機テンプレート剤から形成されるこれらのプロトゼオライト的な種の組成物はすべて、水熱安定性が強化されたアルミノ珪酸塩メソ構造の界面活性剤で誘導される超分子組み立てのための好ましい前駆体である。
【0067】
ゼオライトの種、特に非結晶のナノクラスター化された種をメソ多孔性の骨格へと組み立てると、か焼の後でさえ、珪酸塩四面体と共有されるAlO4単位の隅角として骨格アルミニウムが大部分四面体内に留保せられる。また、アルミニウムの位置どりは、アルミニウムのnmr化学シフトによってあるいは赤外スペクトルにおける一定の吸収バンドによって部分的に示されるように、水熱的に安定なゼオライト中に見いだされるものに似ている。ゼオライトYの種を利用することにより35モル%までのアルミニウムがメソ構造であるアルミノ珪酸塩骨格中に容易に組み込まれることができる。ZSM−5ゼオライトの種又はゼオライトベータの種から形成されるアルミノ珪酸塩メソ構造内に13%までのAlが組み込まれた。比率が1:1のSiO4及びAlO4の四面体単位を含むゼオライトの種をメソ構造に組み込ませることが原則として可能である。例えばA型のゼオライト(LTAと略す)は、珪素に代わってアルミニウムによって占められる骨格四面体の部位を50%まで有してよい。本発明の多孔性のアルミノ珪酸塩組成物に関しては、典型的に75%より多いあるいは90%より多くさえあるアルミニウムの部位が540℃でのか焼の後に四面体のままであることが重要である。ゼオライトYの種から形成されるメソ構造の27Al−NMR化学シフト、そしてまた共鳴の形及び幅は微細多孔性のゼオライトYに極めて似ていた。この結果は、アルミニウムの局所的な環境が石油化学産業において最も安定でそして最も広汎に使用されるゼオライトの1つに見られる局所的環境に類似していることを示す。従って、この新規な超安定なメソ構造は、細孔寸法が1.0nmより小さく制限されていることを理由にゼオライトY及び他のゼオライトが使用できない多くの用途のために極めて有用である。加えて、このメソ構造は20%水蒸気中で800℃で5時間まで処理した後でさえ、多孔性のままであり、このため、この構造は、ゼオライトYによって処理されることができない高分子量の石油留分の分解又は水添分解に好適になる。
【0068】
Si/Alの比が約6.7より大きいアルミノ珪酸塩メソ構造が、通常、ベータ型のゼオライト及びZSM−5の結晶化において核形成するアルミノ珪酸塩ナノクラスターから組み立てられている。アルミニウムの含有率は、Si/Alの比を1000及びそれ以上に増大することにより極めて小さくすることができる。1000を越えるSi/Alの比においてメソ構造は、すべての意図及び目的に関して、アルミノ珪酸塩メソ構造というよりむしろ本質的にシリカである。ゼオライトの種を製造するために使用される珪酸塩前駆体のほとんどは、1000部あたり1部から10000部あたり1部の水準でアルミニウムを不純物として含有する。ベータゼオライト及びZSM−5の種から組み立てられか焼されたメソ構造は20%の水蒸気に対して800℃で4時間安定である。このメソ構造の固有の酸性度は、300〜450℃の温度範囲にわたってクメンを分解するのに十分であり、ナノクラスター化されたゼオライトの種が、微細多孔性のゼオライト上で十分に精製されることができない高分子量の石油留分を酸−接触処理するための水熱的に安定なメソ構造の設計のための有望な前駆体であることを示唆する。
【0069】
構造的に妥当ないくつかの特性は、本発明の安定なメソ構造化されたアルミノ珪酸塩組成物を具体的に表現し、またこれを、以前から開示されているメソ構造から区別する。本発明の構造上の一般的な1つの態様において、無機カチオン(例えばナトリウム)によってテンプレートされたゼオライトの種から形成される好ましい組成物は、化学シフトの外部標準としての1.0Mの水性の硝酸アルミニウムに対して、実験的に認められた57〜65ppmの範囲の27Al MAS NMRの化学シフトを有する。これは、ゼオライトY及び他のファウジャス石ゼオライトを含めて多くの結晶性ゼオライトについて認められる化学シフトの範囲である。慣用の珪酸塩及びアルミン酸塩前駆体から調製されるこれまで報告されているすべてのメソ構造化されたアルミノ珪酸塩は、BeckらのもともとのAl−MCM−41組成物を含めて、53〜56ppmの化学シフトを示す。57〜65ppmの範囲の化学シフト値は、たとえ骨格の壁が大分部整列されていなくとも、メソ構造の骨格の壁をなすSiO4単位及びAlO4単位のゼオライトに似た連結性を示す。本発明者は、上記の四面体単位のゼオライト的な連結性は、ゼオライトの構造上のサブユニットを模倣し、従って、このメソ構造化された好ましい組成物の水熱安定性の改善にかなり寄与する、と仮定している。
【0070】
構造上の第2の態様において、好ましい組成物の27Al MAS NMRの化学シフトは、これまで開示されているメソ構造化されたアルミノ珪酸塩組成物の範囲に、つまり53〜56ppmにあるが、500〜600cm-1の振動数範囲にある赤外線吸収バンドの存在によって、及び組成物を沸騰水に5時間又は20%の水蒸気に600℃で5時間暴露する時に最初の骨格のメソ細孔容積の少なくとも80%が保持されることによって識別される。500〜600cm-1にある赤外線バンドは非結晶の骨格壁内にゼオライトに似た2次的な構成ブロック(例えば5員環又は6員環構造)の存在を示す。これらの組成物は20%の水蒸気に対して800℃で2時間安定であり、これらの条件下で水蒸気に暴露される前に認められる骨格の表面積及び細孔容積を50%より多く保持する。ペンタシル(pentasil)ゼオライトの種、特にZSM−5、ZSM−11及びベータゼオライトの種は、上記の第2の構造上の態様によって特徴づけられる水蒸気に安定な組成物を供与するのに特に有効である。
【0071】
第3の構造上の態様において、本発明の好ましいアルミノ珪酸塩組成物は、ナトリウム交換カチオンを含まず、57〜65ppmの範囲にゼオライトに似た27Al MAS NMRの化学シフトを示し、また骨格のメソ細孔内に埋め込まれた炭素を0.01〜10重量%含む。作成したままのメソ構造中のナトリウムイオンは、骨格メソ細孔中の構造誘導性界面活性剤の存在下で水溶液中のアンモニウム塩、最も好ましくは硝酸アンモニウムとのイオン交換反応によって除去される。この交換反応は、かなりの量の界面活性剤もまたメソ細孔から除去する。アンモニウムイオンとのイオン交換反応に引き続いて、メソ構造は残留する界面活性剤を除去しまたアンモニウム交換イオンをプロトンに転換するのに十分な温度で、最も好ましくは540℃で約5時間にわたって、空気中でか焼される。このか焼手続きは、残留する骨格の界面活性剤のいくらかを、おそらくは骨格の酸性のメソ細孔中の界面活性剤の分解反応を通じて炭素に転化する。か焼条件に応じて、か焼されたメソ構造の0.01〜10重量%に達し得る埋め込まれた炭素は、おそらくは、水熱条件下での崩壊に対して骨格を強化することにより、メソ構造の水熱安定性において重要な役割を果たすことができる。
【0072】
本発明で開示されている技術のさらに別な重要な特質は、ゼオライトの種と慣用の珪酸塩前駆体との混合物からの水蒸気に安定な開放した骨格構造の形成である。添付する例で教示されるように、ゼオライトの種は慣用の珪酸塩前駆体を、水蒸気に安定な開放した骨格構造の超分子的組み立てのために好適なプロトゼオライト的なナノクラスターへと転換するのに有効である。技術上のこの特質は、小さいSi/Al比において最もよく調製されるゼオライトの種から、大きなSi/Al比を有する特に安定な骨格構造を形成するのに極めて有用である。例えばY型ゼオライトの種は、テンプレートとしてのNa+イオンの存在で10より小さいSi/Al比で最もよく調製される。Yゼオライトの種を慣用の珪酸ナトリウム前駆体によって薄めることにより、Si/Alの比がかなりより大きい(例えばSi/Al=50)水蒸気に安定な開放した骨格構造を組み立てることができる。
【0073】
本発明の構造化されたすべてのアルミノ珪酸塩組成物は、20%水蒸気に800℃で2時間暴露される時、その最初の骨格表面積及び骨格細孔容積の少なくとも50%を保持するという共通の特性を分有する。しかしながら、六角形、立方体、層状及び虫孔の骨格構造及び2.0〜500nmの範囲の細孔寸法を有する本発明のか焼されたメソ多孔性アルミノ珪酸塩組成物は一般に、超微細多孔性の骨格構造(1.0〜2.0nm)又はセル状の泡沫構造及び10〜100nmの骨格細孔を有する組成的に同等なか焼された組成物に比べて水蒸気への暴露に対して一層安定である。このメソ構造は20%水蒸気に800℃で4時間又はさらに長くさえある暴露時間にわたって安定である。この超微細多孔性でまたセル状泡沫のアルミノ珪酸塩は、20%の水蒸気中における800℃での2時間の暴露時間の後、その最初の表面積及び骨格細孔容積を少なくとも50%保持するが、このものは、この条件下での水蒸気へのより長い暴露時間に際して急速に劣化するであろう。しかしながら、本発明の超微細多孔性の構造及びセル状の泡沫は、20容積%の水蒸気に650℃で暴露される時、より長い有用寿命を有する。この後者の水蒸気処理条件の下で、これらの構造は、4時間より長い暴露時間の後それらの骨格細孔容積及び骨格表面積の50%より多くを保持する。超分子的組み立ての過程を通じて形成される別の超微細多孔性の又はセル状泡沫のアルミノ珪酸塩組成物はいずれも、20%水蒸気に対する650℃での同等な期間にわたる暴露に耐えることができないことが知られている。
【0074】
ペンタシルゼオライトのプロトゼオライト的な種は、水蒸気に安定なアルミノ珪酸塩構造体を形成するのに特に価値が高い。少なくとも3つの型式のゼオライト構造、つまりZSM−5、ZSM−11、及びベータであり、またそれぞれ一般にMFI、MEL、及びBEAの構造型式であると一般に述べられるものは、ゼオライトのペンタシル族に属する。これらの構造型式はそれぞれテトラプロピル、テトラブチル、及びテトラエチルアンモニウムイオンによってテンプレートされる。さらに、これらのゼオライト中のアルミニウム中心は、ガリウム及びチタンによって容易に置換されることができ、Si/Ga及びSi/Tiの比が1000〜約10であり、また一層好ましくは約100〜約20である同類のMFI、MEL及びBEAのガロ珪酸塩及びチタノ珪酸塩が生成する。従って本発明の技術は、Si/Ga及びSi/Tiの比が1000〜約10の範囲にある、ガロ珪酸塩の水熱的に安定な六角形、立方体、層状、虫孔及びセル状泡沫の骨格構造を組み立てるために使用することもできる。例えば、MFI又はBEAのガロ珪酸塩のナノクラスター化された種は、アルミン酸ナトリウムを没食子酸ナトリウム、塩化ガリウム又は硝酸ガリウムによって単に置き換えることにより例3、20、及び21に従って簡単に調製される。例27のアルミニウムアルコキシドをガリウムアルコキシド又はチタンアルコキシドによって単に置き換えそして消化時間を3〜10時間に調節することによりMFI又はBEAのガロ珪酸塩又はチタノ珪酸塩の種を調製することもまた可能である。得られる種は次いで、1〜100nmの範囲の細孔寸法そして1000〜約10の範囲のSi/Ti及びSi/Gaの比を有する、例12、18、20、21、27等に従う所望の水蒸気に安定な虫孔、六角形、立方体、層状又はセル状泡沫の骨格構造へと組み立てられることができる。
【0075】
本発明で具体物化される好ましい組成物の特徴づけを行う際の27Al MAS NMR化学シフト測定の重要性に鑑みて、本発明者はこの診断パラメータの測定について簡潔に述べる。マジックアングルスピニング(magic angle spinning)(MAS)核磁気共鳴(NMR)分光学測定においては、磁気核のいくつかのエネルギー水準は負荷される磁場によって分割される。これらのエネルギー水準の間の遷移は、無線周波数範囲、典型的にはメガヘルツ範囲の電磁放射線の吸収によって惹起される。電磁放射線の吸収は、調べようとしている核に関する磁気エネルギー水準の間のエネルギー落差にエネルギー的に等価である周波数における『共鳴』線を発生する。試料は、共鳴線の間を拡大しそしてスペクトルを複雑化する可能性のある双極子相互作用を平均化するように、負荷された磁場に対するある角度(いわゆる磁気角)だけ回転される。核を包囲する電子は核に加わる磁場に寄与するので、共鳴周波数は化学的な環境に依存する。従って、共鳴周波数は化学的環境に応じて『シフト』する。共鳴周波数におけるこれらの『化学シフト』は、既知の化学環境を有しまた化学シフトが恣意的に0ppmと指定されている標準化合物の周波数に対して、『parts per million』(ppm)の周波数単位で記録される。化学シフトの大きさはMAS NMRによって調べられる化学的化合物での核の化学的環境に関する情報を導き出すためにしばしば用いられる。
【0076】
4重の27Al核の場合、核エネルギー水準の分割は、核磁気スピン量子数I=5/2によって決定される。観察されるMAS NMRスペクトルは、(+1/2、−1/2)中心遷移によって典型的に支配される。この遷移に対応する共鳴線に関して実験的に観察される化学シフトは、核における電場勾配による核の4極相互作用によって影響され得る。一般的に、観察された27Al MAS NMR化学シフトは、化学シフトの真の値を得るために4極相互作用について補正すべきである。しかしながら、核における電場勾配が小さいならば、(+1/2、−1/2)遷移に関して観察された共鳴位置の誤差は小さく(誤差は約1ppm程度)、また観察された化学シフトに補正は不要であり、特に、比較される化学シフトにおける差異が、4極効果によって惹起される誤差より著しく大きいならばなおさらである。このことは、ほとんどのゼオライト及びアルミノ珪酸塩中のAlO4四面体の場合に(Lippmaaら、J. Amer. Chem. Soc. 108 1730 (1986)参照)、そして27Al MAS NMR分光学で化学シフト標準として使用されるAl(H2O)63+カチオンの場合にあてはまる。この理由のため、本明細書で報告されるそしてアルミノ珪酸塩メソ構造に関する文献中の化学シフトは4極効果について補正されない。
【0077】
本発明では、水蒸気に安定なアルミノ珪酸塩メソ構造は、無機又は有機のゼオライトの種及び前駆体を第4級アンモニウム化合物とともに使用することにより製造される。ゼオライトの種は、典型的に約25〜100℃の間の温度で消化(熟成)することが許容される。無機ゼオライトの種(つまり無機構造誘導剤から形成される種)の形成に関しては、Si対Alのモル比は、メソ構造を形成するために10以下である(しかし1.0より大きい)。有機ゼオライトの種(つまり、有機テンプレートから形成される種)については、Si対Alの比は10以上であり、一層好ましくは20以上である。結果は、無機構造誘導剤(つまりアルカリ金属イオン)から形成される無機ゼオライトの種を使用することは、約57〜65ppmの化学シフトを有する構造である。有機テンプレート(つまり、有機オニウムイオン)から形成されるゼオライトの種については、化学シフトは約53〜56ppmであるが、この種は、無機テンプレートから形成される種とは異なり、500〜600cm-1の領域に明確な赤外線吸収バンドをやはり示す。
【0078】
消化が十分な時間(1〜48時間)にわたって起きることは極めて重要である。Bragg XRDは、完全に形成されたゼオライトのようには得られず、従って、ゼオライトの種は塩基性のpH(10〜14のpH)で十分に形成される。
【0079】
細孔を形成する界面活性剤及び任意による共界面活性剤が、種の溶液にあまりにも早く添加されると、水蒸気安定性が限定された又はそれがない通常のアルミノ珪酸塩構造が得られる結果になる。ゼオライトの種が完全に形成される(核形成される)のが許容されるなら、微細多孔性である通常のゼオライトが形成される。本発明の多孔性構造体は、細孔直径が約1〜100nmであり、また六角形、立方体、層状、虫孔又はセル状泡沫の骨格構造のいずれかを有することができる。いずれにせよこれらの構造体は水蒸気に安定である。
【0080】
本発明者のアルミノ珪酸塩構造体の水蒸気安定性は、文献に報じられている一般的な合成方法のほとんどすべてによって比較されている。いずれも本出願におけるほどには水蒸気に対して安定でない。結晶性ゼオライトの水蒸気安定性はアルミニウムの含有率が増加すると一般に低下するが、このことは、末端SiOH基を含む非結晶のアルミノ珪酸塩メソ構造体については該当しないであろう。アルミニウムはこのようなメソ構造体における骨格架橋を実際に改善し得る。例えば、ナトリウムの不在下に製造される純粋なシリカMCM−41は、そのAlがグラフト化された類縁体程の水熱安定性がなく、また水熱安定性はAl含有率の増加とともに大きくなる。ナトリウムを含まず、Alでグラフト化されたこのMCM−41の水熱安定性が調べられそしてそれが水熱安定性に関してMSU−S組成物より著しく劣ることが見いだされた。MFI及びBEAの種のAl含有率は、最終的なメソ構造体の水蒸気安定性を認識できる程に変化させずに3.0%にまで倍増されることができる。
【0081】
比較例1
本発明者の新規に発明したアルミノ珪酸塩のメソ多孔性の分子篩に対する対照例をもつために、本発明者は全体のSi/Alのモル比が49/1である慣用の(良好に整列された)六角形のMCM−41アルミノ珪酸塩分子篩を調製した。この例1の試料は2%Al−MCM−41と称する。合成のための処方は以下の通りであった。適当な量のアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)を含有する溶液と珪酸ナトリウム溶液とを混合し、次に、透明な溶液を得るのに必要な量のH2SO4酸を撹拌下で添加した。次いで、水中の所要量のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)を添加しそして混合物を周囲温度で30分激しく撹拌した。得られる混合物をテフロン(登録商標)(R)で内張りされたオートクレーブ内で100℃で2日間撹拌せずに熟成した。濾過及び脱イオン水での完全な洗浄によって生成物を回収した。この特定の合成のためのモル組成は以下の通りであった。
0.02モルのNaAlO2
1.0モルの珪酸ナトリウム溶液(27重量%)
0.25モルのCTBA
0.28モルのH2SO4
130モルのH2
最初の溶液の組成は以下の通りであった。
0.28モルの水中の6.56×10-4モルのアルミン酸ナトリウム
3.28×10-2モルの珪酸ナトリウム(シリカ27重量%)
3.9モルの水中の8.20×10-3モルの界面活性剤
0.08モルの水中の9.18×10-3モルの硫酸
【0082】
650℃でのか焼の後、試料はBET表面積1037m2/g、総細孔容積0.77cc/g及びHorvath−Kawazoeモデルから決定される有効細孔寸法33Åを示した。X線回折パターンは、43.2、24.9、及び21.6Åにおいて、そして六角形のメソ構造の(100)、(110)及び(200)反射にそれぞれ相当するd−間隔を有する3つの回折線を示した。この特定的な試料に関する27Al−NMRスペクトルを図1に示す。Corma及び彼の共同研究者によって報告されている所見と一致して、この手順によって形成されるMCM−41アルミノ珪酸塩メソ構造体は、か焼の後、Al−部位の約1/3が八面体配置にありそして残りの部分が四面体配置にある。四面体のAl−部位は、1.0Mの硝酸アルミニウム溶液に対して53ppmにおいて化学シフトを示すが、八面体の部位におけるアルミニウムに関する化学シフトは0〜10ppmであった。これらの化学シフトは、典型的な文献値(つまり、慣用のAl−MCM−41の場合、四面体のアルミニウムについては53〜56ppmそして八面体のアルミニウムについては〜0.0ppm)と一致する。
【0083】
例2〜3
これらの2つの例は、水蒸気に安定である、六角形、立方体、層状、虫孔及びセル状泡沫の骨格構造を超分子組み立てするために有用であるプロトゼオライト的なアルミノ珪酸塩前駆体(ゼオライトの種)の調製を、慣用のアルミノ珪酸塩前駆体から得られる構造化された同様な組成物と比較しつつ、本発明の教示に従って説明する。本発明の好ましいアルミノ珪酸塩前駆体は、アルミニウムが四面体配置にあり、またおおまかにみて他の四面体に連結している珪素の四面体に架橋酸素原子を介して結合しているナノ寸法のアルミノ珪酸塩クラスターを含む。これらのナノ寸法のアルミノ珪酸塩前駆体は、好適なゲルと混合されそして水熱的条件の下で熟成されるとき、原子的に整列されたゼオライト相の結晶化を促進することができる。Y型ゼオライト(一層詳細にはファウジャス石ゼオライト)及びZSM−5(一層詳細にはMFIゼオライト)のようなゼオライト的な相の核形成を行うことができる能力のために、この高度に架橋された前駆体はしばしば『ゼオライトの種』と称される。従って、例2のアルミノ珪酸塩前駆体は、Y型ゼオライトの結晶化を促進することが知られているので、ここでは『Y型ゼオライトの種』と称される。同様に、例3の架橋されたアルミノ珪酸塩前駆体は、ZSM−5ゼオライトの結晶化において核形成を行うことが知られているので、ここではこの前駆体は『ZSM−5の種』と称される。しかしながら、これらのゼオライトの種は、原子的に整列されてはいない(非結晶の)壁を有するが、メソスコピック(mesoscopic)な長さの規模で良好に整列されていて、下記骨格構造を示す粉末X線回折パターンに相関ピークを示し、また透過電子顕微鏡法(TEM)の画像を示す六角形、立方体、虫孔、層状及びセル状の骨格構造を有するメソ多孔性の分子篩アルミノ珪酸塩への前駆体として使用することができる。
【0084】
以下の方法で、10モル%のアルミニウムを含む(Si/Al=9/1)例2のY型ゼオライトの種の組成物を調製した。0.088モルのNaOH及び8.5モルのH2Oを有するNaOH水溶液を調製し、そして透明な溶液が生成するまでこのNaOH溶液に0.10モルのNaAlO2を撹拌下で添加した。この塩基性のアルミン酸ナトリウム溶液に、均質な乳光ゲルが生成するまで、27重量%の珪酸ナトリウム溶液から1.0モルの珪酸ナトリウムを激しく撹拌しつつ添加した。Y−種組成物を得るために、ゲルを周囲温度で一晩、次いで100℃で一晩逐次的に熟成した。
【0085】
例3では、deMoorら、J. Phys. Chem. B 103 1639 (1999)によって述べられている一般的方法に従って、1.5モル%のアルミニウムを含有するZSM−5ゼオライトの種の溶液を調製することについて述べる。1270ミリモルの水中に、ゼオライトの種の構造誘導剤としての6.7ミリモルのテトラプロピルアンモニウムイオン(1.0Mのテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド6.7ml)、0.50ミリモルのアルミン酸ナトリウム(Strem Chemical)及び33.3ミリモルのヒュームドシリカ(Aldrich Chemical)を含有する反応混合物を、撹拌しつつ50℃で18時間熟成して種を生成した。
【0086】
プロトゼオライト的な種の組成物の27Al−MAS NMRスペクトルを、それぞれ2kHz及び900Hzの回転速度にあるジルコニアのロータ内のVarian VRX 400S計測器に記録した。スペクトルを図2に示す。図2Aは、アルミノ珪酸塩前駆体の凝集を促進するために、エタノール不在下(裏面)又はエタノール存在下(表面)ガラス板上にY−種のゲルを付着することにより得られる10%Al−Y−種のX線回折パターンを示す。55及び59ppmの化学シフトを有する単独の27Al NMR線は、ゼオライトに似た四面体環境内のアルミニウムに対応する。換言すると、前駆体組成物中のアルミノ珪酸塩化学種は、典型的なゼオライトの種に関する文献(Whiteら、J. Chem. Soc., Faraday Trans. 1998, 94, 2181; van Santenら、J. Phys. Chem. 1999, 103, 1639)に報告されているように、ナノ寸法のアルミノ珪酸塩クラスターの存在に整合する27Al NMRパターンを示す。
【0087】
以下の例のいくつかは、慣用の前駆体の溶液から調製されるメソ多孔性のアルミノ珪酸塩分子篩と比較して、水蒸気処理条件下で超安定である六角形、立方体、虫孔及びセル状泡沫の骨格構造を有するアルミノ珪酸塩メソ構造体を組み立てるための前駆体として、例2及び3のナノクラスター化されたゼオライトの種、そしてまた他のゼオライトの種を使用することを例示するであろう。
【0088】
例4〜6
これらの3つの例は、骨格中の四面体アルミニウムの濃度が高いにせよ、広範囲の六角形の整列を有する水蒸気に安定なメソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩(ゼオライトYの種からの六角形のAl−MSU−Sと称する)を製造するために、本発明の技術に従ってナノクラスター化されたゼオライトYの種を使用することを説明するように企図した。六角形の整列は、界面活性剤を除去するためにメソ構造体がか焼された後でさえ、保持される。ゼオライトYの種から形成されるとき、このメソ構造体は、56ppmよりかなり大きな化学シフトを有する27Al−NMR共鳴をやはり示し、これは骨格の壁にSiO4及びAlO4単位のY型ゼオライト連結性を指示した。ゼオライトYの種から形成される本発明者の新規なアルミン酸塩のメソ構造体に関するこの最小の化学シフト値は、メソ構造の広範囲の構造的整列が何であろうと、あるいはアルミン酸塩化された誘導体を生成するように用いられる方法が何であろうとも、シリカのメソ構造体の既知のすべてのアルミン酸塩化された誘導体に関してこれまで報告されている文献値より大きい。さらに、ゼオライトYの種から形成される本発明者の新規なアルミノ珪酸塩メソ構造体に関するアルミニウムNMRの化学シフトは、水蒸気に安定なゼオライトYそのもののアルミニウム中心の位置どりについて典型的に認められる値と肩を並べる。
【0089】
これらの例は本発明でY型のゼオライトの種を使用すると、意図されている広範囲の六角形整列を有するメソ多孔性アルミノ珪酸塩を組み立てる際に慣用のアルミノ珪酸塩前駆体が使用される場合に通常遭遇する、直接のアルミニウム組み込みの構造的整列を妨げる効果を、いかにして克服されるかについてやはり説明する。例4、5、及び6の3つのメソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩は2モル%、10モル%及び20モル%のAl装荷率を有し、またそれぞれ2%Al−、10%Al−及び20%Al−MSU−SHと称される。これらの例の水蒸気に安定な組成物を調製するために使用する反応混合物のモル組成は以下の通りであった。
例4、5、及び6の組成物に対応してそれぞれ0.02、0.10又は0.20モルのNaAlO2
0.088モルのNaOH
1.0モルの珪酸ナトリウム
0.25モルのCTAB界面活性剤
0.62モルのH2SO4
130モルのH2O。
【0090】
例2の一般的方法に従って、所望のアルミニウム含有率を有するゲル様のY型ゼオライトアルミノ珪酸塩を調製し、そして127モルの水で希釈した。希釈された混合物に、0.044モルのH2SO4及び0.20モルのCTABを撹拌しつつ室温で30分にわたって逐次添加した。得られる混合物を0.48モルのH2SO4でさらに酸性化しそして100℃で20時間熟成した。次に混合物を激しく撹拌しつつ0.098モルのH2SO4によって酸性化しそして100℃で20時間再度熟成して、作成したままのアルミノ珪酸塩メソ構造体(as-made aluminosilicate mesostructure)を得た。この作成したままのメソ構造体を0.1MのNH4NO3溶液によって交換し、室温で乾燥し、そして540℃で7時間か焼して界面活性剤を除去した。
【0091】
図3は、ゼオライトYの種からの六角形の20%Al−MSU−S(例6)のか焼された形態の粉末X線回折パターンを示す。良く現れた4つの反射を、六角形のメソ相の(100)、(110)、(200)及び(210)の反射に対応させた。か焼された六角形の2%Al−及び10%Al−MSU−Sメソ構造体は同等な回折パターンを示した。同等に重要なことに、か焼された各々のメソ構造体は約〜62ppmに27Al MAS NMR化学シフトを示し、これは水蒸気に安定なゼオライトYのシフトに肩を並べる(図4)。例4〜6で調製されたメソ構造体のBET表面積(m2/g)及び細孔容積(cc/g)はそれぞれ、1037及び0.80、978及び0.70、そして599及び0.51であった。各々の場合、窒素吸着等温線から決定される平均のHovarth−Kawazoe細孔寸法は平均で約3.3nmであった。
【0092】
例7
本例は、例4〜6に従ってY型ゼオライトの種から調製される本発明者の新規なアルミノ珪酸塩のメソ多孔性分子篩は、構造誘導剤としてセチルトリメチルアンモニウムイオンに限定されないこと、またそれが、他の第4級アンモニウムイオン界面活性剤を使用することによっても同様に形成されることを例示する。本例では、CTABの代わりにテトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(TTAB)を構造誘導剤として使用した。界面活性剤構造誘導剤としての0.25モルのTTAB及び20モル%AlのY型ゼオライトアルミノ珪酸塩前駆体を含有する反応混合物を調製し、そして例4〜6に記載のものと同様な方法で処理した。得られるか焼された生成物は、六角形のメソ構造の(100)、(110)、(200)及び(210)の反射にそれぞれ対応する、基底間隔が37.0、21.3、18.5及び14.0Åである良く現れた六角形のX線回折パターンを示した。か焼された試料に関する磁気角回転は化学シフトが62ppmの共鳴を示した。
【0093】
例8〜10
これらの例8及び9では、広範囲に立方体整列を有する、本発明者の新規なアルミノ珪酸塩メソ構造体を調製するための本発明の技術を例証するように企図した。この立方体整列を本発明者はゼオライトYの種からの立方体Al−MSU−Sと称する。これらの立方体の組成物は、56ppmより大きくまたHYゼオライトの化学シフトに類似する化学シフトにおいて、四面体27Al−NMR共鳴もまた示す。例8及び9にそれぞれ応じて、Al含有率が2モル%及び10モル%である2つの立方体メソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩を調製した。
【0094】
上記の立方体のメソ構造体を得るために、適当なAl含有率を有するゲル様のY型ゼオライトのアルミノ珪酸塩の種の前駆体を例2に従って得そして127モルの水で希釈した。反応混合物中に使用した珪素1モルずつについて、希釈されたゲルを0.044モルのH2SO4でまず処理してpHを低下した。次いで、0.12モルのCTAB及び共界面活性剤としての3.0モルのエタノールを周囲温度で激しく撹拌しつつを逐次添加した。40分撹拌した後、反応混合物のpHを0.14モルのH2SO4の添加によって低下させた。得られる混合物をテフロン(登録商標)(R)で内張りしたオートクレーブに移しそして150℃で15時間熟成した。作成したままの生成物を濾過によって回収し、空気乾燥し、次いで540℃で7時間か焼して界面活性剤を除去した。
【0095】
図5において、最上方の回折パターンは、例9に記載のY型ゼオライトの種から調製した10%Al−MSU−Sのか焼された試料に関する。下方の回折パターンは対照試料としての2%Al−MCM−48(例10)に関する。この対照試料は、希釈した珪酸ナトリウム(1.0モル)及びアルミン酸ナトリウム(0.02モル)及びNaOH溶液(0.088モル)を混合して透明な溶液を得、次いで0.18モルのH2SO4によってpHを直ちに低下することにより慣用の前駆体から調製した。次に、反応混合物をテフロン(登録商標)(R)で内張りしたオートクレーブ内に移して150℃で15時間熟成するのに先立って、珪素1モルあたり0.12モルのCTAB及び3モルのエタノールを周囲温度で激しく撹拌しつつ逐次添加した。次いで生成物を洗浄しそして540℃でか焼して界面活性剤を除去した。反応混合物からアルミニウムが取り除かれる場合、この手順そのものによって、良好に整列された立方体のMCM−48に似たシリカを得た。
【0096】
図5のか焼された立方体の10%Al−MSU−Sメソ構造体に関するXRDパターンから、良好に整列された立方体のメソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩が、無機前駆体としてのY型ゼオライトの種から得られたことが明らかである。対照的に図5は、慣用のアルミン酸ナトリウム、珪酸ナトリウム前駆体及び界面活性剤から調製されるか焼された2%Al−MCM−48メソ構造体は、小さい角度のX線反射が広いことから判断されるように、整列されていないこともまた示す。
【0097】
例8の2%Al−MSU−S及び例10の2%Al−MCM−48の27Al−NMRスペクトルを図6に示す。62ppmの化学シフトでのゼオライト様の共鳴は、立方体の2%Al−MSU−Sについて四面体のAl−部位が専ら存在することを明らかに示す。例9で調製された立方体の10%−MSU−Sメソ構造体について類似する結果を得た。しかしながら、2%Al−MCM−48中の四面体アルミニウムに関する共鳴は56ppmの化学シフトで起きた。加えて、この後者のメソ構造体は、八面体のAl−部位に対応する0ppmに共鳴を示す(矢印で示す)。従って本発明者は、プロトゼオライト的な(Y型ゼオライト)アルミノ珪酸塩ナノクラスターを予め生成することは、立方体のメソ構造体の広範囲な整列そしてまたこれらのメソ多孔性分子篩中のAlの位置どりを確実に改善する、と結論づけることができる。例8及び9から調製されたMSU−S試料に関するN2吸着等温線から測定されるBET表面積(そして細孔容積)は976(0.70)及び599m2/g(0.51cc/g)であった。Hovarth−Kawazoeモデルから算出される有効細孔寸法は両試料について2.6nmであった。
【0098】
例11及び12
これらの2つの例では、それぞれY型ゼオライトの種及びZSM−5ゼオライトの種からの虫孔Al−MSU−Sと称される虫孔骨格構造を有し、ゼオライト様の四面体のAl−部位を有し(27Al NMR化学シフトから判断される)、そしてまた触媒として有用である組織としての多孔性を有するメソ多孔性の分子篩を組み立てるために、予め生成されたY型ゼオライト及びZSM−5ゼオライトを使用することの有用性を例示することが意図された。
【0099】
例11では、例2に記載のように調製した予め生成されたY型ゼオライト(ファウジャス石)の種を利用した。例12では、例3に記載のように予め生成されたZSM−5の種が使用された。例11では例2に記載のように10%Alを含有する種の組成物を調製し、次いで周囲温度で30分間激しく撹拌しつつSi1モルあたり0.073モルのCTABを添加した。得られる混合物を100℃で2時間熟成しそして生成物を濾過し、洗浄しそして空気乾燥した。
【0100】
例12については、1.5%Al−ZSM−5の種の透明な溶液が、例3の一般的手順に従って記載されているように得られ、次いで5.50ミリモルのCTABと1000ミリモルの水を撹拌しつつ周囲温度で添加した。得られる混合物を100℃で2日間熟成しそして生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。例11及び12から得られる試料中の界面活性剤を、540℃で7時間空気中でか焼することにより骨格の細孔から除去した。
【0101】
図7A及び7Bは、例11で調製された虫孔MSU−S試料について得られたTEM画像を示す。同様な画像を例12の生成物について得た。CeB6ガンを使用して120kVで加速される電子ビームによって画像をJEOL 100CX計測器上に記録した。画像を得るために銅−格子上に試料を散布した。両方の試料について、虫孔様の骨格の細孔チャンネル及び粒子間の組織としてのメソ細孔がともに認められた。組織的な細孔(textural pores)は1次粒子のナノ規模の骨格領域が内部成長することから生じる。TEM画像中で顕著な組織的な多孔性に見合って、例11の生成物に関して図8に示すように、N2吸着−脱着等温線は、0.80を越える分圧におけるヒステリシスループによって明らかになるように、組織的な多孔性を大いに有する。例12のか焼された生成物について同様な等温線を得た。0.25〜0.45の間の分圧において吸着等温線中に存在する段によって、骨格の虫孔細孔の充填(filling)が示される。虫孔構造と合致して、例11のか焼されたアルミノ珪酸塩のメソ多孔性分子篩に関するX線回折パターン(図9)は虫孔細孔とより大きな散乱角でのより高次な弱い反射との間の相関長さに対応する単一の強いX線回折線を含んだ。例12のか焼された生成物について類似するXRDパターンを得た。またやはり、Y型ゼオライトの種から組み立てられた虫孔のメソ構造に関する27Al−NMRスペクトルは、例4〜6で調製された試料について認められたシフトに合致して、ゼオライト的な化学シフトを〜61ppmに示した。
【0102】
例13
本例の目的は、本発明に従ってナノクラスター化されたY型ゼオライトの種から調製された六角形のアルミノ珪酸塩メソ構造体は、少なくとも、これがナトリウムイオン及び界面活性剤を含まない時に、800℃の水蒸気への暴露に耐え得ることを示すことであった。
【0103】
実施例4〜6に記載の一般的手順に従ってナノクラスター化されたY型ゼオライトの種から、六角形の10%Al−MSU−S及び20%Al−MSU−Sの試料を調製した。作成したままの各々の試料の1gの量を、0.1MのNH4NO3溶液100mlによって100℃で一晩別個に処理した。処理した試料を濾過によって回収しそして空気中で540℃で7時間か焼して、メソ細孔内の界面活性剤を除去した。か焼したこれらの試料を水蒸気安定性試験のために使用した。各々の試料を20%の水蒸気を含有する窒素流中で800℃において5時間水蒸気処理した。次に、水蒸気処理後のメソ多孔性構造の保持を調べるためにX線回折パターン及び窒素吸着等温線を用いた。
【0104】
本例の試料、そしてまた後続するすべての例の試料を水蒸気処理するのに使用した装置10を図31及び31Aに示す。蒸気圧156トールで62±1℃に加熱された水のフラスコに、大気圧下の窒素流(〜20cc/分)を通過した。水蒸気によって飽和した窒素の細かい気泡を生成するために、注射針を使用した。試料チャンバーの設計により、試料を通過する水蒸気の均一な通過が確保される。
【0105】
図10に示すように、800℃での5時間の水蒸気処理の後、予め生成されたアルミノ珪酸塩ナノクラスターから形成したアルミノ珪酸塩メソ構造体はその六角形の構造的一体性を保持したが、慣用のMCM−41様の六角形メソ構造は崩壊したことは明らかである。このことは、慣用の前駆体から調製されるMCM−41の安定性に関してRyoo及び彼の共同研究者によってすでに報告されていることと一致する(Ryoo, J. Phys. Chem. 1995, 99, 16742)。
【0106】
水蒸気処理前のか焼された試料の化学分析によると、約0.8%の炭素の存在が示された。8時間より長い又は短い時間にわたってか焼された試料は、0.8重量%という値よりそれぞれ少ない又は多い量の酸素を含有した。またやはり、水蒸気処理の後に、六角形のX線回折パターン及び骨格のメソ多孔性を試料が保持する程度は一般に炭素含有率に並行した。従って本発明者は、骨格に埋め込まれた炭素そしてまた骨格壁のゼオライト様の連結性はこれらの物質の水蒸気安定性に寄与するのに役立つことを結論する。
【0107】
比較例14
本実施例の目的は、Angew. Chem. Int. Ed. 1999, 38 No.19, 2930に記載のようなR.Mokayaの製造技術に従っていわゆる超安定な14%Al−MCM−41メソ構造体を調製した。Mokayaの方法(下記参照)に従って、『2次的な』MCM−41シリカのか焼された試料1.0gを調製した。この2次的なシリカに50mlのアルミニウムクロロハイドレート(ACH)溶液(Alに関して0.48M)を添加し、そして混合物を80℃で2時間撹拌した。得られる固形物を濾過によって回収しそしてCl-イオンが無くなるまで100mlの蒸留水によって洗浄し、室温で乾燥し、そして空気中で550℃で4時間か焼した。
【0108】
Mokayaの教示に従って、『2次的な』MCM−41シリカを調製するために本発明者はまず『1次的な』MCM−41シリカを調製した。1次的なMCM−41シリカを得るために、24gのH2O中に3.0gのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)及び0.610gのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)を含有する溶液にヒュームドシリカを撹拌下で1時間にわたって2.0g添加した。さらに1時間撹拌の後、SiO2が1.0;CTABが0.25;TMAOHが0.2そしてH2Oが40のモル組成である得られる合成ゲルを放置して室温で20時間熟成し、次いで混合物をテフロン(登録商標)(R)で内張りしたオートクレーブに移しそして150℃で48時間加熱した。濾過によって固形の組成物を得、これを蒸留水で洗浄し、室温で空気乾燥しそして550℃で8時間か焼した。次いで、1次的なMCM−41シリカから『2次的な』MCM−41シリカを調製した。2次的なMCM−41を調製するために、同じモル比の合成ゲルを調製したが、ただしシリカ源としてヒュームドシリカの代わりに1次的なか焼されたMCM−41を使用した。合成手順は1次的な合成について述べたのと同じであった。
【0109】
水蒸気安定性試験のための手順は以下の通りであった:0.2gの超安定なMCM−41をY字形の石英管反応器に入れそして大気圧下のN2中の20容積%の水の蒸気(水蒸気)の流れを800℃で5時間導入した。62±1℃の液体の水が装入された飽和器中に窒素流を通過することによりN2中の20%の水蒸気を発生させた。この温度での水の蒸気圧は156トールである。水蒸気処理の後に残留する構造を評価するために、X線回折パターン及びN2の収着及び脱着の等温線を使用した。
【0110】
図11A、11B及び11C中のX線及びN2吸着のデータによって示されるように、Mokayaの超安定な14%Al−MCM−41は800℃での5時間の水蒸気処理の後、構造的な崩壊を起こした。表面積が92%減少し(760m2/gから62m2/gに)また、窒素分圧0.96で測定されるように、水蒸気処理によって骨格の細孔容積は88%減少した(0.58cc/gから0.07cc/gに)。やはりまた、図11の27Al MAS NMRスペクトルによると、アルミニウムの約半分のみが四面体環境(〜51ppm)にありまた他の半分が八面体環境(〜0ppm)にある。本発明者は、この物質が触媒における多くの実用の用途のために、特に石油の接触分解のために、望まれる水熱安定性に欠けると結論づける。
【0111】
比較例15及び16
例15では、ファウジャス石Y型ゼオライトの結晶化において通常核形成する種から誘導された、典型的な六角形のアルミノ珪酸塩メソ構造体、つまり六角形10%Al−MSU−S(Si:Al=9:1)の合成及び特性について述べる。Y型ゼオライトの種を生成するためにここで用いる手順は、文献(Robson, H. ACS Symp. Ser. 398 436 (1989);及びLechert, L.,ら、Stud. Surf. Sci. Catal. 84 147 (1994))に記載されている一般的方法に従う。
【0112】
例16では、慣用の珪酸塩及びアルミン酸塩の前駆体からの10%Al−MCM−41の調製について述べる。例16で10%Al−MCM−41を生成するのに用いた手順は、例15で用いた手順と等しいが、ただし本発明者は、例15で10%Al−MSU−Sを調製するのに用いたゼオライトの種を生成する段階は省いた。次いで本発明者は、XRD及び窒素吸着特性に基づいて、これらの2つのメソ構造体の水蒸気安定性を比較した。加えて本発明者は、水蒸気安定性の比較に、例14に述べたようにMokayaの方法を用いて調製した『超安定な』Al−MCM−41を含めた。
【0113】
例15の六角形Al−MSU−Sは、Y型ゼオライトの種から以下のように調製した。まず5.0mlの水中の0.116gのNaOHの溶液に0.269gのNaAlO2を溶解して透明な溶液を得た。この溶液に7.29gの珪酸ナトリウム溶液(27重量%のSiO2、14重量%のNaOH)を激しく撹拌しつつ添加して均一な混合物を得た。ファウジャス石Y型ゼオライトの種を生成するために、得られる混合物を室温で一晩熟成し、次いで定常的な状態でさらに24時間にわたって100℃で熟成した。ゼオライトの種の混合物を75mlの水で希釈して乳白色の懸濁液を得た。種の混合物に濃硫酸(0.142g)を添加し、続いて激しく撹拌しつつ2.45gのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)を30分にわたって添加した。次いで追加の0.781gの硫酸を添加し、そして混合物を定常的な状態で一晩100℃で熟成させた。この熟成段階に続いて追加の硫酸の増分0.156gを添加しそして混合物を再び定常的な状態で100℃で一晩熟成させ、メソ構造体をつくった。この時、反応混合物のpHは約9.0であった。ゼオライトの種の前駆体から調製されて得られる10%生成物を濾過し、洗浄しそして空気中で周囲温度で乾燥した。1.0gの量の空気乾燥された生成物を100mlの1.0MNH4NO3によって100℃で一晩処理して、ナトリウムイオンと界面活性剤の大体半分をメソ細孔から取り除き、空気中で乾燥し、次いで540℃で7時間か焼して、残留する界面活性剤を除去しそして電荷を均衡させるアンモニウムイオンをプロトンに転化した。か焼された生成物の化学分析により、0.80重量%の炭素が存在することとともにSi:Alのモル比が9:1であることが示された。本発明者は炭素の生成を、か焼の間の六角形Al−MSU−Sメソ構造ゼオライト様骨格の極めて酸性であるメソ細孔中での界面活性剤の分解に帰する。
【0114】
慣用のアルミノ珪酸塩前駆体から、例16の整列されていない六角形10%Al−MCM−41の比較用の試料を以下のように調製した。0.269gのNaAlO2と7.29gの珪酸ナトリウムとの混合物(27重量%のSiO2、14重量%のNaOH)を激しく撹拌して均一な混合物を生成し、次いで75mlの水を添加して乳白色の懸濁液をつくった。この乳白色の懸濁液に0.142gの濃硫酸、2.45gのセチルトリメチルアンモニウムブロマイドを激しく撹拌しつつ30分にわたって逐次添加し、そして0.781gの濃硫酸を添加した。得られる混合物を100℃で一晩定常的な状態で1日熟成させた。次に0.156gの硫酸を添加し、そして混合物をさらに1日100℃で熟成した。慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩の前駆体から調製された10%Al−MCM−41のメソ構造体を濾過し、空気中において周囲温度で乾燥した。1.0gの量の空気乾燥させた生成物を、100mlの1.0MのNH4NO3によって100℃で一晩処理してナトリウムイオンと界面活性剤のいくらかをメソ細孔から取り除き、空気中で乾燥し、次に540℃で7時間か焼して残留する界面活性剤を除去しそして電荷を均衡させるアンモニウムイオンをプロトンに転化した。化学分析によると、Si/Alの比9/1が示されたが、炭素の存在は0.04%より少なかった。
【0115】
図12A及び12Bは、以下のか焼されたアルミノ珪酸塩メソ構造の20%水蒸気中で水蒸気処理する前及び後のXRDパターンを例示する:ゼオライトYの種からの10%Al−MSU−S(例15)、慣用の前駆体からの10%Al−MCM−41(例16)。図12A及び12Bには、ナトリウムを含有しないMCM−41シリカとAl13オリゴカチオンとの間のごく最近報告された合成後のグラフト化反応(R. Mokaya, Angew. Chem. Int. Ed., 38, 2930 (1999))を用いる、例14に記載されるように調製された14%Al−MCM−41に関する対応するパターンが含まれる。この後者のグラフト化された形態のAl−MCM−41は、これまで報告されているAl−MCM−41誘導体と比較して水熱的に『超安定』であると述べられている。か焼された10%Al−MSU−S及び超安定な14%Al−MCM−41の水蒸気処理の前のXRDパターンは、六角形のメソ構造を示すhkl回折線をよく表す。例16の直接的な合成経路によってつくられた10%Al−MCM−41についての回折線は実質的に広がっている。回折線のこの拡大は、特に、骨格中のアルミニウムによる珪素の置換について意図する水準が約8モル%より高い時に、慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩の前駆体からAl−MCM−41を直接に組み立てることに通常伴う不整列を示す。
【0116】
図12B中のXRDパターンは、ナノクラスター化されたゼオライトの種から組み立てられた10%Al−MSU−Sメソ構造が800℃での水蒸気処理に際して良好に整列された六角形の構造を保持することを明瞭に示す。これと比べて、慣用の珪酸塩及びアルミン酸塩の前駆体からの直接的な組み立てによって、及び、いわゆる超安定なグラフト化反応によって、調製されたAl−MCM−41メソ構造体はともに、水蒸気処理によってほとんど完全に破壊される。これらの所見は、同じ系列のメソ構造体についての図13A及び13Bに示すN2の収着等温線を比較することにより支持される。これらの収着等温線から導かれる表面積、骨格細孔寸法、及び細孔容積を表1に示す。この表には、試料のXRDパターンから得られる六角形の単位セルのパラメータが含まれる。表1中の括弧内の値は、水蒸気処理の後の表面積及び骨格細孔容積の値の保持百分率を、水蒸気処理の値と比較して報告する。
【0117】

【0118】
例15の10%Al−MSU−Sの試料は、水蒸気処理の後、その表面積の90%より多くとその骨格細孔容積の約75%とを保持する。加えて、水蒸気処理は、0.50を越える分圧でのヒステリシス挙動によって明らかなようにメソ構造体の組織的な多孔性を改善する。対照的に、例14及び16に従って調製された2つのAl−MCM−41はいずれについても水蒸気処理の後に表面積又は骨格細孔容積はほとんど又は全く保持されない。
【0119】
ゼオライトYの種からの10%Al−MSU−Sの独特な水熱安定性は、ゼオライトの種をメソ構造体に組み立てる際に、AlO4及びSiO4の四面体のゼオライト様の連結性が保持されることに一部帰せられる。やはりまた、より多くの炭素を除去するために541℃以上の温度でより長い時間にわたってか焼される試料は、水蒸気処理に際して表面積及び細孔容積のいくらかより多い減少を示したので、包蔵された炭素は構造的な安定性に寄与するのに役割を果たす。しかしながら、骨格の壁におけるSiO4及びAlO4単位のゼオライト様の連結性の重要性を裏付けるように、作成したままの及びか焼されたAl−MSU−SHにおける四面体アルミニウムの27Alは、種の溶液と同じ値のδ=60ppmで、そしてほとんどのゼオライトについて認められる59〜65ppmの範囲(Lippma, E.,ら、J. Am. Chem. Soc. 108 1730 (1986))内で起きる。この化学シフト値はアルミノ珪酸塩メソ構造体のうちで独特である。この研究でのAl−MCM−41試料を含めて以前報告されているメソ構造化されたすべてアルミノ珪酸塩は、53〜56ppmの化学シフトを示す。Lippmaら(J. Am. Chem. Sa., 108, 1730 (1986))によって提出された骨格アルミノ珪酸塩における27Alの化学シフトと平均結合角の間の関係に基づいて、平均的なAl−O−Siの角度は、例15の10%Al−MSU−SHに関するものは、例14及び16に述べたように調製される2つのAl−MSU−Sに関するものより実質的に小さい(8度だけ小さい)。
【0120】
例17
例15に述べた手順に従ってゼオライトYの種から調製された六角形10%Al−MSU−Sの酸性特性を、300〜450℃の温度範囲にわたるクメン分解について、慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩の前駆体から例16に従って組み立てられた10%Al−MCM−41のそれと図14で比較する。か焼されたこれらの2つのメソ構造体は活性がほとんど同じであるが、水蒸気への暴露の後は、10%Al−MSU−Sが活性がはるかに高い触媒である。この結果は、触媒的な用途のために水熱的に安定なメソ構造体を設計するための前駆体としての、ナノクラスター化されたゼオライトの種の重要性を説明する。
【0121】
水蒸気に安定なアルミノ珪酸塩メソ構造体を組み立てるための前駆体としてゼオライトの種を使用するのは、10モル%のアルミニウムを含む組成物に限定されることはない。本例の一般的な方法を用いる際にゼオライトYの種を用いて本発明者は10%Al−MSU−Sについて見いだされる構造的な水蒸気安定性、及び酸性特性を保持する、38モル%のAlを含む六角形Al−MSU−S組成物も調製した。加えて、以下の例で説明するように、この方法はY型ゼオライトの種を使用することに限定されない。
【0122】
例18
例18では、水熱安定性が優れた六角形2%Al−MSU−Sアルミノ珪酸塩分子篩を形成するために、テトラプロピルアンモニウムイオンによってテンプレートされたZSM−5(MFI型としても知られている)ゼオライトの種を利用する。27Al MAS NMR化学シフトが57〜65ppmのゼオライト的な範囲に十分に入る例4、5、6及び8で報告したAl−MSU−S組成物とは対照的に、本例の生成物について認められる27Al MAS NMRシフトは、初めのZSM−5の種の前駆体について見いだされたシフトに等しく、慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩の前駆体から組み立てられたアルミノ珪酸塩メソ構造体について典型的に見いだされたシフト(53〜56ppm)と肩をならべた。しかしながら、得られるメソ構造体は、骨格壁中にZSM−5型の2次的な構成ブロックの存在を指示する赤外吸収バンドを示した。本例の生成物について安定なゼオライト様の骨格壁構造が存在することは、水蒸気及び沸騰水の双方に対する水熱安定性によって確められた。TEOSからつくられた種はヒュームドシリカからつくられたものほど良くはなかった。
【0123】
テトラエチルオルト珪酸塩(6.83g)を7.22mlの1.0Mのテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドに撹拌下で添加し、次いで0.17gのアルミニウム第2ブトキシドを添加して、透明な溶液を生成した。撹拌された溶液に75mlの水を添加し、そしてこの溶液を85℃で一晩(16時間)定常的な状態で熟成させてZSM−5ゼオライトの種の透明な溶液を生成した。激しい撹拌下で2.45gのセチルトリメチルアンモニウムブロマイドを30分にわたって添加し、そして得られる混合物を定常的な状態で100℃において一晩(16時間)熟成させた。1.0Mの硫酸の添加によって反応混合物のpHの値を9.0に低下し、そして定常的な状態で100℃で一晩再度熟成した。メソ構造化された沈殿を濾過し、洗浄し、空気中で乾燥し、次いで550℃でか焼し界面活性剤を除去した。か焼された2%Al−MSU−S生成物のX線粉末回折パターンは、六角形のメソ構造に合致する4つの回折線(100、110、200、210)を示した。か焼された生成物の27Al MAS NMRスペクトルはZSM−5の種におけるのと同様な結合したAlO4四面体環境に合致する(図2のZSM−5の種の27Al MAS NMRスペクトルを参照)単一の共鳴線を示した。
【0124】
プロトゼオライト的な骨格壁構造に関する別な証拠は、か焼された2%Al−MSU−Sメソ構造体の赤外吸収スペクトルから得た。図15に示されるように、2次的な5員環の下位単位の存在に合致する500〜600cm-1の間の吸収バンドが認められる。2次的な5員環の下位単位は、ZSM−5ゼオライトを包含するゼオライトのファミリーである結晶性ペンタシルゼオライトを特徴的づける特性である。このようにして、本発明者は、メソ構造体の壁がゼオライトの原子的な結晶性に欠けるにせよ、メソ構造体の壁はペンタシルゼオライトの下位単位を含むことを結論づける。比較のために、2%Al−ZSM−5ゼオライトの真正な試料に関する、そして慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩の前駆体から組み立てられた整列されていない六角形の5%Al−MCM−41に関する赤外線スペクトルを図15に含める。ZSM−5ゼオライトについて500〜600cm-1の間に同じバンドが見いだされたが、慣用の前駆体からつくられた5%Al−MCM−41はこれらのゼオライト様の吸収バンドを示さなかった。
【0125】
Kloetstraら(Chem.Commun.,2281(1997))は、500〜600cm-1の間のIRバンドに基づいて、ZSM−5ゼオライトの2次的な構成ブロックに類似する5員環構造体もまた含む六角形のアルミノ珪酸塩メソ構造体を報告している。この物質は、慣用のAl−MCM−41をテトラプロピルアンモニウムイオンによって交換し、交換されたメソ構造体を引き続いてグリセロール中で加熱して骨格のいくらかを萌芽的なZSM−5単位へと転換することにより調製した。しかしながら、この研究を反復する際に本発明者は、Kloetstraらのメソ構造体は水熱的に不安定であることを見いだしている。この物質を水中で5時間沸騰するか、あるいはこれを600℃で窒素流中の20%水蒸気に5時間暴露すると、骨格のメソ多孔性がほとんど完全に失われる結果となる。対照的に例18の六角形の2%Al−MSU−Sは、これらの条件下でその骨格のメソ構造をほとんどすべて保持する。従って、Kloetstraの方法によるZSM−5型の構成ブロックのMCM−41の骨格壁内への導入は、テトラプロピルアンモニウムカチオンに隣接する骨格の特定の領域に局所化されるようだが、例18に従って、ゼオライトの種を前駆体として使用すると、SiO4及びAlO4単位のプロトゼオライト的な連結性のより均一な骨格を与え、従って、大幅に改善された水熱安定性を与える。
【0126】
本例19では、水熱的に安定なアルミノ珪酸塩メソ構造体の組み立てのためのゼオライトの種の調製は、27重量%のSiO2、14重量%のNaOHを含有する珪酸ナトリウム前駆体溶液を使用することに限定されないことを例証する。シリカ対水酸化ナトリウムのより高い比率を有する珪酸ナトリウム溶液は、水熱的に安定なアルミノ珪酸塩メソ構造体を超分子組み立てするのに必要であるゼオライトの種を生成するためにやはり好適である。
【0127】
例19では、Y型ゼオライト核形成中心(種)を調製するために28.43重量%のSiO2と8.93重量%のNaOHとを含有する珪酸ナトリウム溶液を使用し、次いで57〜65ppmの範囲のゼオライト様の27Al MAS NMR化学シフトを有するアルミノ珪酸塩メソ構造体を調製するためにこのゼオライトの種を使用することを説明する。この種を調製するために用いる方法は、35モル%のアルミニウム(Si/Al=1.88)を含有するゼオライトYの種の組成物についてVaughanによって提案された(米国特許第4,178,352号)一般的手順に従う。1.013モルのNaOHと7.6モルのH2Oを含有するNaOH水溶液を調製し、そして透明な溶液が生成するまでこのNaOH溶液に撹拌下で0.54モルのNaAlO2を添加した。この塩基性のアルミン酸ナトリウム溶液に、6.6モルのH2O中の1.0モルの珪酸ナトリウム(28.43%のSiO2、8.93重量%のNaOH、41°、Be′)を激しく撹拌しつつ添加した。生成物は混合終了後2分以内に堅いゲルへと硬化した。このゲルはY型ゼオライトの種又は核形成中心を含む。水蒸気に安定なメソ多孔性アルミノ珪酸塩を形成するために、ゼオライトYの種、127モルのH2Oを添加した。この希釈された混合物に0.5065モルのH2SO4及び0.20モルのCTABを撹拌しつつ室温下で30分にわたって逐次的に添加した。得られる混合物をさらに0.15モルのH2SO4によって酸性化しそして100℃で20時間熟成した。次に混合物を0.029モルのH2SO4によって激しく撹拌しつつ酸性化しそして100℃で20時間再度熟成して作成したままのメソ構造体を得た。作成したままのメソ構造体を水で完全に洗浄しそして空気中で乾燥した。生成物を540℃で7時間か焼して界面活性剤を除去した。か焼された生成物は虫孔骨格構造に見合った単一のXRD線を示し、これをゼオライトYの種からの虫孔35%Al−MSU−Sと称した。対応するXRD基底間隔は約5.0nmであった。か焼された生成物に関する化学シフトは59ppmであり、ゼオライトYの種から組み立てられた水熱的に安定なアルミノ珪酸塩メソ構造体について期待される57〜65ppmの範囲に入った。
【0128】
例20
本実施例でもまた、TEOS(テトラエチルオルト珪酸塩)をシリカ源として使用することによりゼオライトBetaの種から整列されていないアルミノ珪酸塩メソ構造体の形成を説明する。
【0129】
ゼオライトBetaの種を生成するためのテンプレートとしてテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)を使用した(J. Perez-Pariente, J. A. MartensとP. A. Jacobs, Applied Catalysis, 31, 35, 1998)。TEAOH(0.00665モル)を1.2モルのH2O中のNaAlO2(0.0005モル)と撹拌下で混合して透明な溶液を周囲温度で得た。次いでTEOS(0.0333モル)を添加して撹拌下で不透明な溶液を得た。溶液を35℃で100時間熟成して、曇りのあるゼオライトBetaの種の溶液を生成した。35℃のこの溶液に0.00823モルのCTABを撹拌下で35℃において添加した。得られる混合物をテフロン(登録商標)(R)で内張りしたオートクレーブ内で100℃で2日間熟成した。固形の生成物を濾過し、熱水で洗浄しそして室温で乾燥した。550℃で4時間か焼することにより界面活性剤を除去した。虫孔構造又は歪んだ六角形構造に対して期待されるように、XRDは3.8nmの間隔及び弱小の肩状部(weak shoulder)に対応する単一の回折線を示した。
【0130】
TEOS誘導Betaゼオライトの種及びこの種から形成されて得られるメソ構造体のIRスペクトルは、550〜560cm-1の近辺のIRバンドを示し、このことは5員環の下位単位の存在を指示した。しかしながら、XRDパターンが広いことは、六角形の骨格対称性がよく表されたアルミノ珪酸塩メソ構造体を組み立てるためのゼオライトベータの種を生成するためには、TEOSがヒュームドシリカほど好ましくないことを示した(例21参照)。このことは、水蒸気に安定なゼオライトを組み立てるために好適なゼオライトの種を生成するための前駆体としてTEOSが一般に有用であることを排除しない。例えば、この例で得られるメソ構造体は20%の水蒸気に600℃で5時間安定であり、水蒸気処理の前に認められた表面積及び骨格細孔容積の少なくとも88%を保持した。
【0131】
実施例21
本例では、ペンタシルゼオライトの種を調製するためにヒュームドシリカを使用するのが好ましいこと、そしてこの種を、ゼオライトの種を生成するための構造誘導剤によってテンプレートされてはいないアルミノ珪酸塩溶液と比べて水蒸気に安定な良好に整列されたアルミノ珪酸塩メソ構造体を形成するために使用することを説明する。水蒸気に安定なMSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造体の超分子組み立ては極めて一般的であり、またいかなるプロトゼオライトアルミノ珪酸塩溶液から形成されることもできるが、ペンタシルゼオライトの種、特にゼオライトZSM−5(MFI)及びベータ(BEA)の種は、ヒュームドシリカから生成されるとき、殊に好ましい。本例の水蒸気安定性試験によって示されるように、これらのプロトゼオライト的な種から生成される六角形MSU−Sメソ構造体は20%の水蒸気への600〜800℃でのかなりの時間にわたる暴露に対して安定である。また、これらの構造体は、慣用のアルミノ珪酸塩前駆体から形成される六角形のアルミノ珪酸塩メソ構造体と比較して酸性触媒のための活性に優れている。
【0132】
テトラプロピルアンモニウム(TPA+)及びテトラエチルアンモニウム(TEA+)をそれぞれテンプレートとして使用して、ナノクラスター化されたZSM−5及びベータゼオライトの種(Si/Al=67)の水溶液を調製した(Camblor,ら、Stud. Surf. Sci. Catal. 105 341 (1997); deMoorら、J. Phys. Chem. 13 103 1639 (1999))。比較のために、TPA+及びTEA+の代わりにテトラメチルアンモニウムイオン(TMA+)を使用して慣用のアルミノ珪酸塩アニオンを調製した。TMA+が、MFI又はBEAゼオライトの種のためのテンプレートとして機能することは知られていない。
【0133】
水(1270ミリモル)中の1.0Mのテトラプロピルアンモニウム(TPA+)ハイドロオキサイド(6.7ミリモル)、アルミン酸ナトリウム(0.50ミリモル、Strem Chemicals,Inc.)及びヒュームドシリカ(33.3ミリモル、Aldrich Chemical)を50℃で18時間反応させることにより、ナノクラスター化されたZSM−5の種(Si/Al=67)の水溶液を調製した。ゼオライトベータの種の溶液を調製するために、同じ化学量論的比率のテトラエチルアンモニウム(TEA+)ハイドロオキサイド、アルミン酸ナトリウム、ヒュームドシリカ及び水を100℃で使用した。TPA+及びTEA+の代わりにTMA+を使用することを除いて同じ実験的方法を用いて、慣用のアルミノ珪酸塩前駆体溶液を調製した。
【0134】
各々のアルミノ珪酸塩溶液を蒸発すると、非結晶のX線回折パターンを有する粉末が得られた。しかしながら、図16に示すように、粉末化された形態のMFI及びBEAゼオライトの種のIRスペクトルは500〜600cm-1の間に明瞭な振動を示した。対照的に、TPA+又はTEA+ハイドロオキサイドの代わりにTMA+ハイドロオキサイドを使用するときに生成する慣用のアルミノ珪酸塩アニオンについては、この範囲内にIRバンドは認められなかった。ペンタシルZSM−5及びベータゼオライトにおける550cm-1近辺のバンドは5員環の存在を指示する。従って、TPA+及びTEA+アルミノ珪酸塩前駆体の場合に類似するバンドが存在することは、ペンタシルゼオライトの種の存在を確証する。
【0135】
ZSMの種からのMSU−SH及びBetaの種からのMSU−SHと一般に称される六角形のアルミノ珪酸塩メソ構造体を、それぞれのゼオライトの種の溶液をセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)と、界面活性剤対シリカ比0.25で150℃において2日間反応させることにより組み立てた。整列されていないMCM−41メソ構造体へと慣用のTMA+アルミノ珪酸塩前駆体を組み立てるために同じ手順を用いた。作成したままの生成物を550℃でか焼して界面活性剤を除去し、0.1MのNH4NO3によって室温で処理して交換可能なナトリウムイオンを取り除き、次いで550℃で再びか焼して交換部位のNH4+をプロトンに転化した。化学分析によると、包蔵されている炭素がないこと及びSi/Alの比が初めのゼオライトの種に伴う比と一致することが示された。
【0136】
図17には、N2中の20%(容積/容積)の水の蒸気に600〜800℃で5時間暴露する前後の、ZSM−5の種からのか焼された1.5%Al−MSU−S及びBetaの種からの1.5%Al−MSU−SのXRDパターンを例示する。XRDの結果は、メソ構造体が水蒸気処理に際して六角形整列を保持することを明瞭に示す。整列していない1.5%Al−MCM−41もまた、600℃で水蒸気に暴露した後に広範囲の構造的な整列を保持したが、800℃ではメソ構造体はほとんど完全に失われた。(XRDパターンは示されなかった)。1.5%Al−MCM−41試料が最初に伴う不整列は、広範囲の整列を喪失することの原因でない。4つの六角形hkl反射を有する良好に整列されたAl−MCM−41試料でさえ、800℃での水蒸気処理に際してメソ構造を喪失する。
【0137】
図18は、20%水蒸気に600℃で暴露する前後のか焼された2つのMSU−Sメソ構造体に関するN2の収着及び吸着の等温線を、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAOH)、アルミン酸ナトリウム及びヒュームドシリカから形成される1.5%Al−MCM−41に関する等温線との比較において示す。表2は水蒸気に600℃及び800℃で暴露する前後の表面積、骨格細孔寸法、及び細孔容積を表示する。ZSM−5の種からの1.5%Al−MSU−SH及びベータの種のメソ構造体からの1.5%Al−MSU−SHは、600℃で水蒸気に暴露された後も、それらの表面積を95%より多くそしてそれらの骨格細孔容積を87%より多く保持し、細孔の収縮はほとんど又は全く無い。対照的に慣用のアルミノ珪酸塩アニオンから組み立てられた1.5%Al−MCM−41は、同等な水蒸気処理条件下でその表面積の63%とその骨格細孔容積の36%しか保持しない。ZSM−5及びBetaゼオライトの種から組み立てられたMSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造体は、水蒸気に800℃で暴露する際に、XRDによって判断されるように(図17A、17Bを参照)、広範囲の六角形整列を保持する。加えて、20%水蒸気に800℃で暴露した後、表面積及び骨格細孔容積のかなりの割合が保持される。表2に示す結果によって示されるように、MSU−Sメソ構造体は2時間の暴露時間の後、表面積に少しの減少がみられ、また初めの骨格細孔容積を少なくとも50%保持する。800℃での5時間に暴露時間の後、細孔容積は初めの骨格細孔容積の50%未満に減少した。対照的に、1.5%Al−MCM−41のメソ構造化された骨格はこれらの条件下で完全に失われる。
【0138】


a反応条件:内径6mmの固定床石英反応器;200mgの触媒;クメン流量、4.1マイクロモル/分;N2搬送ガス、20cc/分;転化率は60分の流通の後に報告された。b1.5%Al−MCM−41は、ヒュームドSiO2、NaAlO2、及びTMAOHから生成される慣用のアルミノ珪酸塩アニオンを直接に組み立てることにより調製した。
【0139】
ゼオライトZSM−5及びベータの種からの水蒸気に安定なMSU−Sメソ構造体の超分子組み立ては、骨格中の特定のアルミニウム装荷率に限定されることはない。Si/Alの比が約300〜20の範囲にある水蒸気に安定なMSU−Sメソ構造体を組み立てるために、ペンタシルゼオライトの種もまた使用することができる。本発明者は、ゼオライトYの種からの六角形MSU−Sと称されるファウジャス石Y型ゼオライトの種から組み立てられたMSU−S誘導体は、20%水蒸気に800℃で数時間暴露した後にその細孔構造のほとんどすべてを保持することを見いだした。しかしながら、ゼオライトYの種ははるかに小さいSi/Alの比(典型的には約2.5〜10の範囲にある)でのみ得ることができる。A型Linde(又はA型ゼオライト)の種のような他のゼオライトの種はSi/Alの比が1.0であるメソ構造体を与えると期待される。ゼオライト組成物は1.0より小さいSi/Alの比を回避することは、Lowensteinの法則に従ってよく知られている。ゼオライトYの種から形成されるメソ構造体のアンモニウムイオン交換は、界面活性剤の存在下で達成されることができよう。
【0140】
ゼオライトYの種から組み立てられて得られるメソ構造体は、界面活性剤を除去するためのか焼条件に応じて、包蔵された炭素を骨格メソ細孔内に含んでよい。か焼の間の界面活性剤の分解を通じて生成すると想定されるこの包蔵された炭素は、表面の極性を変化させまた骨格壁を加水分解に対して一層耐久性にする。しかしながら、ZSM−5及びベータゼオライトの種から形成された作成したままのメソ構造体は、Si/Alの比がはるかに高い(Si/Alは約300〜20)水蒸気に安定な組成物を提供するという大きな利点を有する。また、ペンタシルゼオライトの種から形成されたメソ構造体は界面活性剤を除去するためにか焼され、引き続いて、広範囲の整列を喪失することなくあるいは炭素を包蔵することなくNH4+−交換されることができる。このことは、ペンタシルゼオライトの種から導かれるメソ構造体は、Y型ゼオライトの種から導かれるメソ構造体に比べて酸性が弱く、またその水蒸気安定性は骨格壁上の炭素の存在に関係しないことを意味する。
【0141】
27Al MAS NMR測定によって、か焼された1.5%Al−MSU−S中の及び1.5%Al−MSU−S中のアルミニウム中心の90%より多くは、0ppm近傍の極めて弱い八面体的な共鳴に対比される53ppm近傍の四面体的な共鳴の強度から判断されるように、四面体的に配位された部位にあることが示される。
【0142】
アルミニウムの四面体的な位置どりに関連して、これらの水蒸気に安定なメソ構造体のクメン分解活性によってブレンステッド酸性が確証された。ZSM−5の種からのか焼された形態の1.5%Al−MSU−S、ベータの種からの1.5%Al−MSU−S及び1.5%Al−MCM−41に関する300℃でのクメンの転化を表2に含める。Al−MSU−S誘導体は慣用のアルミノ珪酸塩前駆体から調製されるAl−MCM−41に比べて活性が著しく大きい酸性触媒であることは明らかである。
【0143】
水熱安定性及び触媒活性の双方における大幅な改善は、アルミノ珪酸塩のメソ構造体の骨格壁中のAlO4及びSiO4の四面体のゼオライト様の連結性によると上記の実施例に基づいて結論された。ZSM−5の種からのか焼されたMSU−Sの、及びベータの種のメソ構造からのMSU−Sの骨格壁におけるゼオライト的な種の構造の保持に関する証拠は、初めのゼオライトの種について見いだされた同じ5員環の吸収バンドの保持によって与えられる。例えば、か焼された1.5%Al−MSU−S及び1.5%Al−MCM−41のメソ構造体に関する図19のIRスペクトルを、初めのアルミノ珪酸塩の前駆体に関する図16のスペクトルと比較されたい。5員環のバンド特性はZSM−5の種からのMSU−S及びベータの種からのMSU−Sのスペクトルに良好に表現されているが、MCM−41の誘導体についてはそうではない。
【0144】
アルミノ珪酸塩のメソ構造体に関する水蒸気安定性及び酸性の改善は、骨格壁内に他の部類のゼオライト的な種を組み込むことにより期待することができる。水蒸気に安定な誘導体の超分子組み立てに対するこの極めて有望なアプローチに関して、研究が将来集中することが期待できる。
【0145】
例22
本例の目的は、水蒸気に安定なアルミノ珪酸塩のメソ構造は、ゼオライトYの種とシリカ源としての慣用の珪酸ナトリウムとの混合物から組み立てられ得ることを示すことであった。この方法の利点の一部は、それが、通常は10より小さいSi/Al比で調製されるゼオライトYの種の組成物からの、Si/Alの比が10より大きいか10に等しい安定な構造化されたアルミノ珪酸塩の製造を可能にすることである。本例で使用される構造誘導性界面活性剤は、Pluronic 123であり、オニウムイオン界面活性剤の代わりに非イオン界面活性剤が使用できることがさらに示された。
【0146】
例2に記載した方法に従って、15%AlゼオライトYの種の組成物(Si/Al=5.67)を調製した。0.6MのNaOH溶液0.6mlに、0.00074モルのNaAlO2を撹拌下で添加し、次いで均質な乳光ゲルが生成するまで激しく撹拌しつつ0.0042モルの珪酸ナトリウム(27%のSiO2、14%のNaOH)を添加した。ゼオライトYの種の組成物を得るために、ゲルを周囲温度で(18時間)、次に100℃で一晩(20時間)逐次的に熟成した。種の溶液に、25mlのH2O及び0.0328モルの珪酸ナトリウム(27%のSiO2、14%のNaOH)を撹拌下で添加した。得られる混合物は2モル%のAl又は約49のSi/Al比を有した。
【0147】
2.4gのPluronic 123を40mlのH2Oに撹拌下で12時間にわたって添加することにより界面活性剤の溶液を調製した。上記のゼオライトの種の溶液を界面活性剤の溶液に添加し、そしてH2SO4:水が1:10(容積:容積)のものを滴下により添加することにより、混合物のpHを5.5〜6.5の範囲の値に調整した。反応混合物を50℃で40時間撹拌した。最終的な生成物を濾過により回収し、水洗しそして空気乾燥した。600℃で4時間か焼することにより界面活性剤を除去した。MSU−Sと称される試料の水蒸気安定性試験を、20%の水蒸気中で800℃において2時間実施した。
【0148】
図20は、か焼されたMSU−S試料の水蒸気処理の前後のXRDパターンを示す。XRDの結果は、800℃での水蒸気処理に際して、良好に整列された六角形構造を生成物が保持することを明瞭に示す。
【0149】
図21は、800℃、2時間の水蒸気処理の前後のメソ構造体のN2の吸着及び脱着の等温線を示す。
【0150】
本例23の目的は、細孔寸法が10nmより大きい骨格細孔寸法を有する構造化されたアルミノ珪酸塩組成物(Si/Al=49)は、非イオンポリエチレンオキサイド界面活性剤(Pluronic 123)及び共界面活性剤としてのアルコール(1−ブタノール)の存在下で、ゼオライトYの種と慣用の珪酸ナトリウムとの混合物から組み立て得ることを示すことである。
【0151】
ゼオライトYの種と、2モル%のAl(Si/Al−49)を含有する慣用の珪酸ナトリウムとの混合物を例22に記載のように調製した。2.4gのPluronic 123及び2.4gの1−ブタノールを40mlのH2Oに撹拌下で12時間にわたって添加することにより界面活性剤の溶液を調製した。アルミノ珪酸塩溶液を界面活性剤の溶液に添加した。H2SO4:水が1:10(容積:容積)のものを添加することにより、混合物のpHを5.5〜6.5の範囲内にあるように調整した。反応混合物を50℃で40時間撹拌し、次いで100℃で20時間定常的な状態に保持した。生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。600℃で4時間か焼することにより界面活性剤を除去した。
【0152】
図22は、か焼された生成物のXRDパターンを示す。図23はか焼された生成物のN2−吸着及び脱着の等温線を示す。
【0153】
例24
本例の目的は、PEO−PPO−PEO系列中にポリプロピレンオキサイド(PPO)及びポリエチレンオキサイド(PEO)セグメントを含むトリブロック非イオン界面活性剤の存在下で、そして共界面活性剤(1−ドデカノール)の存在下で、Si/Al比が5.67である構造化された大きな細孔のアルミノ珪酸塩組成物をゼオライトYの種から調製することを例証することであった。
【0154】
例2の方法に従って、15モル%のAlを含むゼオライトYの種の組成物を調製した。0.0058モルのNaAlO2を5mlの0.6MのNaOH溶液に撹拌下で添加した。次いで、均質な乳光ゲルが生成するまで激しく撹拌しつつ0.0328モルの珪酸ナトリウム(27%のSiO2、14%のNaOH)を添加した。最終的なゼオライトの種の組成物を得るために、ゲルを周囲温度で、次に100℃で一晩逐次的に熟成した。次に、ゼオライトYの種の組成物を25mlのH2Oによって希釈した。
【0155】
40mlのH2Oに2.4gのPluronic 123及び2.0gの1−ドデカノールを添加することにより、界面活性剤及び共界面活性剤の混合物を調製した。12時間の撹拌の後、界面活性剤の溶液にゼオライトYの種の溶液を添加した。濃縮されたH2SO4:水が1:10(容積:容積)であるものの添加により、混合物のpHを5.5〜6.5の範囲の値(HydrionのpH指示紙から判断される)に調整した。反応混合物を45℃で20時間撹拌し、次いで100℃で2時間定常的に保持した。最終生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。600℃で4時間か焼することにより界面活性剤を除去した。
【0156】
図24は、か焼された生成物のN2−吸着及び脱着の等温線を示す。
【0157】
例25
本例の目的は、ゼオライトの種と慣用の珪酸ナトリウム前駆体との混合物から、セル状の泡沫の骨格構造を有する極めて大きな細孔のアルミノ珪酸塩組成物を組み立てうることを示すことであった。
【0158】
2モル%及び5モル%のアルミニウムを含有する2つのゼオライト溶液を、例22の一般的方法に従ってゼオライトYの種(Al15モル%)と珪酸ナトリウムとの混合物から調製した。
【0159】
2.4gのPluronic 123を40mlのH2Oに撹拌下で添加することにより界面活性剤の溶液を調製した。12時間の後、トリメチルベンゼンを添加して乳濁液を生成した。この乳濁液に上記の種の溶液の1つを添加し(2モル%アルミニウム)、そして濃縮されたH2SO4:水が1:10(容積:容積)であるものによってpHの値を5.5〜6.5の範囲内の値に調整した。5モル%のアルミニウムを含有する種の溶液を使用して第2の反応混合物を調製するために類似の手順を用いた。反応混合物を45℃で20時間撹拌し、次いで100℃の定常的な状態に20時間保持した。最終的な生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。600℃で4時間か焼することにより界面活性剤を除去した。
【0160】
図25は、2%及び5%のAlを含有するか焼された生成物のN2−吸着及び脱着の等温線を示す。図25Aは対応する細孔寸法の分布を示す。
【0161】
例26
本例の目的は、ペンタシルゼオライトの種及び、非イオンポリエチレンオキサイド界面活性剤(Pluronic 123)と構造誘導剤としての芳香族の有機共界面活性剤(トリメチルベンゼン)とから生成される乳濁液を使用することにより、セル状の泡沫の骨格構造を有する水蒸気安定性の大きな細孔のアルミノ珪酸塩組成物の組み立てを示すことであった。
【0162】
種の構造誘導剤としての40%のテトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド(TBA+)溶液(6.7ミリモル)、アルミン酸ナトリウム(0.50ミリモル、Strem Chemicals, Inc.)及びヒュームドシリカ(33.3ミリモル、Aldrich Chemicals)を水(2700ミリモル)中で130℃において3時間反応させることにより、Si/Alの比が67である、ナノクラスター化されたペンタシルゼオライトZSM−11の種(MELとしても知られている)の水溶液を調製した。
【0163】
2.4gのPluronic 123を撹拌下で30mlのH2Oに添加することにより界面活性剤の溶液を調製した。12時間の撹拌の後、トリメチルベンゼンを界面活性剤溶液に添加して乳濁液を生成した。この乳濁液に上記の種の溶液を添加しそして濃縮されたH2SO4:水が1:10(容積:容積)であるものの添加によりpHを5.5〜6.5の値に調整した。反応混合物を45℃で20時間撹拌し、次いで100℃で定常的に20時間保持した。最終的な生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。600℃で4時間か焼することにより界面活性剤を除去した。
【0164】
図26は、水蒸気に650℃で4時間そして800℃で2時間暴露する前後の、か焼した組成物のN2−吸着及び脱着の等温線を示す。図26Aから、650℃及び800℃での水蒸気処理に際して細孔寸法が20nmから36及び50nmにそれぞれ増大したことに留意されたい。
【0165】
例27
本例の目的は、ペンタシルゼオライトベータ及びZSM−5の種からの水蒸気に安定なアルミノ珪酸塩のセル状泡沫構造体の組み立てを示すことであった。
【0166】
6.7ミリモルの35%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(ゼオライトベータの種の調製のため)又はテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(ZSM−5の種の調製のため)、アルミニウムトリ−第2級−ブトキシド(0.42ミリモル、Aldrich Chemicals,Inc)及びTEOS(21.2ミリモル、Aldrich Chemicals)を水(330ミリモル)中で100℃において3時間反応させることにより、ナノクラスター化されたアルミノ珪酸ゼオライトの種(Si/Al=50)の水溶液を調製した。
【0167】
2.4gのPluronic 123を30mlのH2Oに撹拌下で添加することにより界面活性剤溶液を調製した。12時間の撹拌の後、界面活性剤溶液にトリメチルベンゼンを添加して乳濁液を生成した。乳濁液に所望の種の溶液を添加した。混合物のpHを37%のHClの添加により2〜3の範囲に調整した。反応混合物を35℃で20時間撹拌し、次いで100℃で定常的に20時間保持した。最終的な生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。600℃で4時間か焼することにより界面活性剤を除去した。
【0168】
図27は、水蒸気に650℃で4時間暴露する前後の、か焼した生成物のN2−吸着及び脱着の等温線を示す。比較のために、例28に述べるように慣用の前駆体から調製されたメソ多孔性のセル状泡沫の組成物を含める。
【0169】
例28
本発明者の新規に発明したセル状泡沫の骨格を有する水蒸気に安定なアルミノ珪酸塩組成物に関する対照例をもつために、本発明者はStucky及び共同研究者の一般的な製造技術に従って、J. Am Chem. Soc. 121 : 254 (1999)に記載のように2モル%のアルミニウムを含有するメソ多孔性の泡沫組成物を調製した。Pluronic 123(2.0g)を75mlの1.6MのHCl溶液中に周囲温度で溶解した。トリメチルベンゼン(2.0g)を添加して乳濁液を生成した。この乳濁液にTEOS(21ミリモル)及びアルミニウムトリ−第2−ブトキシド(0.42ミリモル)の混合物を添加した。35℃で20時間熟成した後、混合物を100℃に24時間保持した。最終生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。550℃で8時間か焼することにより界面活性剤を除去した。
【0170】
図27において『C』と表示された曲線は、水蒸気への暴露(650℃、4時間、20%H2O)の前後のか焼された生成物のN2−吸着及び脱着の等温線を示す。例28の生成物の水蒸気安定性は例27の生成物の安定性より著しく劣ることが分かる。
【0171】
例28のか焼された生成物が、250時間沸騰水中の懸濁液(0.10g/20cc)とした時にその初めの表面積の23%しか保持しないこともまた知られた。対照的に、例27のか焼された生成物は同じ処理の後、その初めの表面積の75%を保持した。
【0172】
例29
本例の目的は、ゼオライトの種と骨格前駆体としての珪酸ナトリウムとの混合物から、セル状泡沫の骨格の多孔性を有するアルミノ珪酸塩組成物が得られることを示すことであった。非イオン界面活性剤としてPluronic 123を使用しまた1−ドデカノールが共界面活性剤であった。
【0173】
例22に記載の方法を用いて、2%のAlを含有するゼオライトの種の溶液をゼオライトYの種及び珪酸ナトリウムの混合物から調製した。
【0174】
2.4gのPluronic 123及び2.0gの1−ドデカノールを40mlのH2Oに撹拌下で添加することにより界面活性剤溶液を調製した。12時間の撹拌の後、上記の種の溶液を界面活性剤溶液に添加し、そして濃縮されたH2SO4:水が1:10(容積:容積)であるものによってpHを5.5〜6.5の範囲の値に調整した。反応混合物を50℃で40時間撹拌し、次いで100℃で定常的に20時間保持した。最終的な生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。600℃で4時間か焼することにより界面活性剤を除去した。
【0175】
図28は、か焼した生成物のN2−吸着及び脱着の等温線を示し、また図28Aは骨格の細孔寸法分布を示す。
【0176】
例30
本例の目的は、超微細多孔性(1.0〜2.0nm)及び整列されていない虫孔の骨格を有する水蒸気に安定な構造化されたアルミノ珪酸塩組成物がゼオライトの種から組み立てられ得ることを示すことである。デシルトリメチルアンモニウムブロマイドを構造誘導性の界面活性剤として使用した。
【0177】
例2に述べた一般的な方法に従って、15モル%のAlを含有するゼオライトYの種を調製した。5mlの0.6MのNaOH溶液に0.0058モルのNaAlO2を撹拌下で添加した。次いで、均一な乳光ゲルが生成するまで、0.0328モルの珪酸ナトリウム(27%のSiO2、14%のNaOH)を激しい撹拌下で添加した。所望のゼオライトYの種の組成物を得るために、ゲルを周囲温度(18時間)で、次に100℃で一晩(20時間)逐次的に熟成した。
【0178】
種の溶液に75mlのH2O及び0.0068モルのデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを撹拌しつつ周囲温度で50分にわたって添加した。次いで、混合物を0.020モルのH2SO4によって激しい撹拌下で酸性化し、そして100℃で40時間加熱した。最終的な生成物を濾過によって回収し、洗浄しそして空気乾燥した。
【0179】
合成したままの超微細多孔性物質を0.1MのH2SO4によって100℃で処理することにより交換可能なナトリウムイオンを取り除いた。生成物を550℃で4時間か焼して界面活性剤を除去した。XRDによると、虫孔構造に合致する回折線が1つ存在することが示された。
【0180】
図29は20%の水蒸気に650℃で4時間暴露する前後の、整列されていないか焼した組成物のXRDパターンをしめす。図30は20%の水蒸気に650℃で4時間暴露する前後の、整列されていないか焼した組成物のN2−吸着及び脱着の等温線である。
【0181】
上記の記載は本発明の単なる説明にすぎないこと、また本発明は前記に含めた特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩前駆体から調製される2%Al−MCM−41アルミノ珪酸塩メソ構造体の製造されたまま、及びか焼された(540℃)形態に関する27Al MAS NMRスペクトルである。矢印は、0ppm近傍での共鳴を指し示し、これは、か焼されたメソ構造体における6−配位されたAlO6中心を示す。
【図2】ファウジャス石ゼオライトY(10%Al−Yと称される)の核形成及びMFIゼオライトZSM−5(5%Al−ZSM−5と称される)の核形成のために核形成の中心(種)として働くアルミノ珪酸塩のナノクラスターに関する27Al MAS NMRスペクトルを示す。図2Aは、ゼオライトYの種(10%Al−Y−種と称される)を空気乾燥しそしてエタノールの添加(10Al−Y−種+EtOHと称される)によってゼオライトYの種を沈殿することにより生成される固体に関するX線粉末回折パターンを示す。
【図3】540℃でか焼された20%Al−MSU−Sの六角形のアルミノ珪酸塩メソ構造体に関するXRDパターンである。
【図4】Al−MSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造体のか焼された形態及びゼオライトY(HYと称される)のプロトン形態に関する27Al−MAS NMRスペクトルを示す。62ppmという化学シフトの値は、ゼオライトに類似するSiO4中心への連結性を有する四面体のAlO4中心を示す。0ppm近傍の化学シフトを有する八面体のAlO6中心は示されない。
【図5】ナノクラスター化されたゼオライトYの種から組み立てられた、か焼された立方体の10%Al−MSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造体の、そして慣用のアルミン酸塩及び珪酸塩の前駆体から製造されるか焼された立方体の2%Al−MCM−48のXRDパターンを示す。
【図6】ゼオライトYの種から製造される2%Al−MSU−S及び慣用の前駆体から製造される2%Al−MCM−41に関する27Al MAS NMRスペクトルを示す。矢印は、AlO6中心を示す0ppm近傍での共鳴線を指し示す。
【図7】ゼオライトYの種から組み立てられた10%Al−MSU−Sの虫孔構造に関する透過電子顕微鏡写真を示す。
【図8】ゼオライトZSM−5及びゼオライトYの種からそれぞれ組み立てられた2%Al−MSU−S及び10%Al−MSU−Swの虫孔構造に関する窒素の吸着/脱着等温線を示す。書き込みは等温線から誘導されるBET表面積(SBET)及び細孔容積(P.V.)を示す。明瞭さのためには、等温線は200cc/gだけ補われている。
【図9】虫孔骨格構造を有するメソ多孔性のアルミノ珪酸塩である10%Al−MSU−S(ゼオライトYの種から組み立てられた)及び2%Al−MSU−S(ゼオライトZSM−5の種から組み立てられた)に関するXRDパターンを示す。
【図10】20容積%の水蒸気に800℃で5時間暴露された後の20%Al−MSU−S、10%Al−MSU−S及び2%Al−MCM−41アルミノ珪酸塩メソ構造に関するXRDパターンを示す。
【図11】Mokayaの方法(Angew. Chem. Int. Ed. 38 No.19, 2930 (1999))に従う、2次的なシリカメソ構造のAl13オリゴカチオンとのグラフト反応によって製造される『超安定な』14%Al−MCM−41アルミノ珪酸塩の新規にか焼されたものに関する、そして窒素中の20容積%の水蒸気に800℃で5時間暴露された後の同じメソ構造に関するXRDパターン(A)及び窒素の吸着/脱着等温線(B)を示す。この図には、水蒸気への暴露後の同じものの27Al MAS NMRスペクトル(C)もまた含まれる。
【図12】窒素中の20容積%の水蒸気に800℃で5時間暴露する前(A)及び後(B)の、か焼された(540℃、7時間)メソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩のXRDパターンを示す。(A)はゼオライトYの種から製造される六角形の10%Al−MSU−Sであり;(B)はMokayaのグラフト方法(Angew. Chem. Int. Ed., 38 No.19, 2930 (1999))によって製造された『超安定な』六角形の14%Al−MCM−41であり;(C)は慣用の珪酸塩及びアルミン酸塩前駆体からの直接合成によって製造される、整列されていない10%Al−MCM−41である。強度の尺度は水蒸気処理の前及び後の試料について同一である。800℃で水蒸気に暴露される前及び後に認められるBET表面積及び細孔容積を、六角形の単位セルのパラメータとともに表1に示す。
【図13】水蒸気(N2中の20容積%のH2O)に800℃で5時間暴露する前(A)及び後(B)の、か焼された(540℃、7時間)メソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩に関するN2の吸着/脱着等温線を示す。(A)は六角形の10%Al−MSU−Sであり;(B)はMokayaのグラフト方法によって製造された『超安定な』14%Al−MCM−41であり;(C)は慣用の前駆体からの直接合成によって製造される10%Al−MCM−41である。明瞭さのためには、等温線は200cc/gだけ補われている。
【図14】300〜450℃の温度範囲での間のメソ多孔性アルミノ珪酸塩上のクメンの転化を示すグラフである。A及びCは、10%Al−MSU−Sのか焼された及び水蒸気処理された試料についてそれぞれ得られた転化率であり;B及びDは直接合成によって製造された10%Al−MCM−41のか焼された及び水蒸気処理された試料それぞれに関する転化率である。反応条件は、内径6mmの固定床の石英反応器;触媒200mg;クメンの流量、4.1モル/分;N2搬送ガス、20cc/分;転化率は水蒸気上で30分処理の後に報告する。
【図15】慣用の前駆体から製造される5%Al−MCM−41に関するそしてゼオライトZSM−5の種から製造される2%Al−MSU−Sに関する、400〜800cm-1の領域の赤外吸収スペクトルを示す。比較のために、ZSM−5の真正な試料のスペクトルも含める。
【図16】粉末化された形態の(A)テンプレートとしてのTPA+の存在下で製造されたゼオライトZSM−5の種、(B)テンプレートとしてのTEA+から製造されたゼオライトベータの種及び(C)TPA+又はTEA+の代わりにTMA+を使用して製造される慣用のアルミノ珪酸塩アニオンのIRスペクトル(KBr)を示すグラフである。
【図17】20%水蒸気に600℃及び800℃で5時間暴露する前(A)及び後(B)の、か焼された(550℃、4時間)メソ多孔性のアルミノ珪酸塩分子篩のXRDパターンを示すグラフである。(A)はゼオライトZSM−5の種から製造される六角形の1.5%Al−MSU−S(MFI);ゼオライトBetaの種から製造される六角形の1.5%Al−MSU−Sである。強度尺度は水蒸気処理の前及び後の試料について同一である。六角形の単位セルのパラメータを表2に示す。
【図18】水蒸気処理(N2中の20容積%のH2O、600℃、5時間)の前及び後の、か焼(550℃、5時間)された六角形のメソ多孔性アルミノ珪酸塩分子篩に関するN2吸着/脱着等温線を示すグラフである。(A):ゼオライトZSM−5の種からの1.5%Al−MSU−S;(B):ゼオライトベータの種からの1.5%Al−MSU−S;(C):慣用の前駆体からの1.5%Al−MCM−41。明瞭さのためには、等温線は200cc/gだけ補われている。
【図19】か焼された六角形のメソ構造のIRスペクトルを示すグラフである。(A)はゼオライトZSM−5の種から組み立てられた1.5%Al−MSU−S;(B)はゼオライトベータの種から組み立てられた1.5%Al−MSU−Sそして(C)慣用のアルミノ珪酸塩前駆体からつくられた1.5%Al−MCM−41である。
【図20】800℃で2時間水蒸気処理する前(A)及び後(B)の六角形のMSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造(Si/Al=49)のXRDパターンを示すグラフである。組成物はゼオライトYの種(Si/Al=5.67)と珪酸ナトリウムとの混合物からPluronic P123(登録商標)界面活性剤の存在下で製造された。
【図21】800℃で2時間水蒸気処理する前(A)及び後(B)のMSU−Sアルミノ珪酸塩メソ構造のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。組成物はゼオライトYの種と珪酸ナトリウムとの混合物からPluronic P123(登録商標)界面活性剤の存在下で製造された。図Aは細孔寸法を示す。
【図22】例23のか焼された生成物のXRDパターンを示すグラフである。
【図23】例23のか焼された生成物のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図Aは細孔寸法を示す。
【図24】例24のか焼された生成物のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図Aは細孔寸法を示す。
【図25】(A)2モル%のAl及び(B)5モル%のAlを含有するセル状泡沫の骨格構造を有する、例25のか焼されたアルミノ珪酸塩組成物のアルミノ珪酸組成物のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図Aは細孔寸法を示す。
【図26】(A)空気中での600℃のか焼の後の、及び(B)20%の水蒸気に600℃で4時間暴露の後、及び(C)20%の水蒸気に800℃で2時間暴露の後の、例26のか焼されたアルミノ珪酸塩のセル状泡沫組成物(Si/Al=67)のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図Aは細孔寸法を示す。
【図27】20%の水蒸気に650℃で4時間暴露の前(図A)及び後(図B)のか焼されたメソ多孔性アルミノ珪酸塩のセル状泡沫(Si/Al=50)のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。(A)はZSM−5の種から、(B)はゼオライトベータの種からそして(C)は慣用の前駆体から製造される。
【図28】例29のか焼された生成物のN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図Aは細孔寸法を示す。
【図29】650℃で4時間水蒸気処理される前(A)及び後(B)の、例30の超微小多孔性のアルミノ珪酸塩組成物のXRDパターンを示すグラフである。
【図30】20%の水蒸気に650℃で4時間暴露される前(A)及び後(B)の、例30のか焼された超微小多孔性組成物に関するN2の吸着及び脱着等温線を示すグラフである。図Aは細孔寸法を示す。
【図31】アルミノ珪酸塩構造を20%の水蒸気に暴露するために使用される装置のスケッチである。
【図31A】試料チャンバーの部分的な拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔を画定し、1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比、2〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピーク、200〜1400m2/gの間のBET表面積、1〜100nmの間の平均細孔寸法及び0.1〜3.5cm3/gの間の細孔容積を有し、そして該組成物が20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物。
【請求項2】
四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔を画定し、1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比、2〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピーク、200〜1400m2/gの間のBET表面積、1〜100nmの間の平均細孔寸法及び0.1〜3.5cm3/gの間の細孔容積を有し、そして該組成物が20容積%の600℃の水蒸気に4時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも75%保持する、アルミノ珪酸塩組成物。
【請求項3】
予めつくられたゼオライトの種から組み立てられた請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ゼオライトの種が有機オニウムイオン、アルカリ金属イオン及びこれらの混合物からなる群から選択される構造誘導剤を用いて生成される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔内部に有機界面活性剤を有する細孔を画定し、1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比、2〜100nmの基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピーク、200〜1400m2/gの間のBET表面積、1〜100nmの間の平均細孔寸法及び0.1〜3.5cm3/gの間の細孔容積を有し、そして該組成物が有機界面活性剤、任意により共界面活性剤、及び予め形成されたゼオライトの種から誘導される、上記アルミノ珪酸塩組成物。
【請求項6】
有機界面活性剤が有機オニウムイオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤が非イオンポリエチレンオキサイド界面活性剤及び非イオンアミン界面活性剤からなる群から選択される非イオン界面活性剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ゼオライトの種が有機オニウムイオン、アルカリ金属イオン及びこれらの混合物からなる群から選択される構造誘導剤を用いて形成される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
骨格の細孔内に0.1〜10重量%の炭素を含む、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項10】
500〜600cm-1の間の赤外吸収バンドを有する請求項1及び2に記載の組成物。
【請求項11】
有機界面活性剤が、アルキル中に2〜36個の間の炭素原子を含み、芳香族炭化水素中に6〜36個の間の炭素原子を含むアルキルアルコール、アルキルアミン、芳香族炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選択される共界面活性剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
(a)水溶液、ゲル、懸濁液で湿潤された粉末及びこれらの混合物からなる群から選択されるプロトゼオライトアルミノ珪酸塩の種を供給し;
(b)水性媒体中の種を混合物中で有機界面活性剤と反応させ;
(c)段階(b)の混合物を25〜200℃の温度で熟成して、組成物の沈殿を得;そして
(d)組成物を段階(c)の混合物から分離する
ことを含む、多孔性のアルミノ珪酸塩組成物を形成する方法。
【請求項13】
種がゼオライトの種である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有機界面活性剤がオニウムイオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤からなる群から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
有機界面活性剤が、アルキル中に2〜36個の間の炭素原子を含み、芳香族炭化水素中に6〜36個の間の炭素原子を含むアルキルアルコール、アルキルアミン、芳香族炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選択される共界面活性剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ゼオライトの種が有機オニウムイオン、アルカリ金属イオン及びこれらの混合物からなる群から選択される構造誘導剤を用いて形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
さらに組成物がか焼される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項18】
さらに組成物が400℃以上でか焼される請求項12、13又は16に記載の方法。
【請求項19】
四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が界面活性剤及び任意により共界面活性剤を内部に有する該組成物のメソ細孔を画定し、1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比、また2.0〜100nmの基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピーク、200〜1400m2/gの間のBET表面積、1〜100nmの間の平均細孔寸法及び0.1〜3.5cm3/gの間の細孔容積を有し、そして該組成物がか焼された場合、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する上記アルミノ珪酸塩組成物。
【請求項20】
界面活性剤が、
(a)式R1234+(式中、Qは窒素又は燐であり、またR部分の少なくとも1つが炭素原子6〜36個のアリール、アルキル及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、R部分の残りが水素、炭素原子1〜5個のアルキル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される)のアンモニウム又はホスホニウムイオン、及び
(b)親水性ブロック内にポリエチレンオキサイド単位を含みまた疎水性ブロック内にポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、アルキル、又はアリール単位を含む非イオンブロック界面活性剤、及び6〜36個の炭素原子を含む非イオンアミン界面活性剤
からなる群から選択される請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
アルキルアミン、アルキルアルコール、芳香族炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選択される共界面活性剤が存在し、該共界面活性剤中の炭素原子の数が2〜36の間である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
骨格が六角形、立方体、層状、虫孔又はセル状泡沫である構造を有する、請求項1、2、5又は19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
オニウムイオン界面活性剤及び任意により共界面活性剤がか焼、イオン交換、あるいはイオン交換及びか焼との組み合わせにより除去される、請求項5又は19に記載の組成物。
【請求項24】
四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が、1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有するメソ細孔を画定し、2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そしてBET表面積が200〜1400m2/gであり、骨格の平均細孔寸法が1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が0.1〜3.5cm3/gの間であり、該組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、上記アルミノ珪酸塩組成物。
【請求項25】
骨格が六角形、立方体、層状、虫孔又はセル状泡沫である構造を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含むハイブリッドな多孔性アルミノ珪酸塩−炭素組成物であって、該骨格が、1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比及び0.01〜10重量%のメソ細孔中に埋め込まれた炭素を有するメソ細孔を画定し、2.0〜100nmの基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、そしてBET表面積が200〜1400m2/gであり、骨格の平均細孔寸法が1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が0.1〜3.5cm3/gの間であり、また組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩−炭素組成物。
【請求項27】
骨格が六角形、立方体、層状、虫孔又はセル状泡沫である構造を有する、請求項26項に記載の組成物。
【請求項28】
請求項19に記載の組成物を0〜200℃の間の温度で24時間までの期間にわたってアンモニウム塩溶液で処理し、そしてアンモニウムイオンを該組成物に導入するためにこの処理を10回まで反復し、得られる組成物を収集しそして乾燥し、次いで400〜900℃の間の温度でか焼して界面活性剤を除去し、界面活性剤のある割合をメソ細孔中に埋め込まれた炭素へと転換することにより製造される組成物。
【請求項29】
(a)塩基性のpHで珪酸ナトリウム溶液をアルミン酸ナトリウム溶液とアルミニウム対珪素比1000対1〜1対1の間で反応させ、混合物を25〜200℃で48時間までの期間にわたって熟成してゼオライトの種を形成し;
(b)得られる混合物を界面活性剤及び任意により共界面活性剤と反応させ;
(c)(b)から得られる混合物をプロトン酸によって酸性化して、OH-/(Si+Al)比が0.10〜10の範囲にある混合物を得;
(d)段階(c)からの混合物を20〜200℃の温度で熟成して組成物の沈殿を得;そして
(e)段階(d)の混合物から組成物を分離する
ことを含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩組成物を形成する方法。
【請求項30】
コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、シリカゲル、シリコンアルコキシド及びこれらの混合物からなる群から選択される珪素源に水酸化ナトリウムを反応させることにより珪酸ナトリウムが調製される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アルミン酸ナトリウムが水酸化ナトリウムを可溶性アルミニウム塩、カチオン性アルミニウムオリゴマー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド及びこれらの混合物からなる群から選択されるアルミニウム源に反応させることにより製造される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
界面活性剤が
(a)炭素原子8〜36個を含む疎水性部分を有するアルキル第4級アンモニウム界面活性剤、
(b)親水性部分としてポリエチレンオキサイドブロックを含む非イオン界面活性剤、及び
(c)非イオンアミン界面活性剤
からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
組成物が1.0Mの硝酸アルミニウムの外部標準に対して57〜65ppmの範囲にある化学シフトを示す27Al−NMR共鳴線を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
(a)水溶液、ゲル、懸濁液、湿潤粉末、又はこれらの組み合わせとしてゼオライトの種を供給し;
(b)水性媒体中のゼオライトの種を界面活性剤と反応させ、ここで溶液は0.10〜10の範囲のOH-/(Si+Al)比を有し、
(c)段階(b)からの混合物を20〜200℃の間の温度で熟成して組成物の沈殿を得;そして
(d)段階(c)の混合物から組成物を分離する
ことを含む、メソ多孔性アルミノ珪酸塩組成物を形成する方法。
【請求項35】
(a)四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有するメソ細孔を画定し、2.0〜100nmの基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、BET表面積が200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が0.1〜3.5cm3/gの間であり、また組成物が20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物;及び
(b)アルミノ珪酸塩組成物のためのバインダー
を含む、有機分子の流動床接触分解(FCC)又は水添分解に有用な触媒。
【請求項36】
(a)四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩−炭素組成物であって、該骨格が1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比及び0.01〜10重量%のメソ細孔中に埋め込まれた炭素を有するメソ細孔を画定し、2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、BET表面積が200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が0.1〜3.5cm3/gであり、炭素含有率が0.01〜10重量%であり、また組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩−炭素組成物;及び
(b)アルミノ珪酸塩−炭素組成物のためのバインダー
を含む、有機分子の流動床接触分解(FCC)又は水添分解に有用な触媒。
【請求項37】
(a)四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有するメソ細孔を画定し、また2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、BET表面積が200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が0.1〜3.5cm3/gの間であり、また組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物及びアルミノ珪酸塩組成物のためのバインダーを含む接触分解触媒を反応器内に供給し;そして
(b)有機分子の反応を惹起する温度及び圧力で有機分子を触媒上に導入すること
を含む、分子量がより小さい成分へと有機分子を接触反応させる方法。
【請求項38】
(a)四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含むメソ多孔性のアルミノ珪酸塩−炭素組成物であって、該骨格が、1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比及び0.01〜10重量%のメソ細孔中に埋め込まれた炭素を有するメソ細孔を画定し、2.0〜100nmの間の基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、BET表面積が200〜1400m2/gの間であり、骨格の平均細孔寸法が1.0〜100nmの間であり、そして骨格の細孔容積が0.1〜3.5cm3/gの間であり、また組成物が20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩−炭素組成物及びアルミノ珪酸塩−炭素組成物のためのバインダーを含む接触分解触媒を反応器内に供給し;そして
(b)有機分子の反応を惹起する温度及び圧力で有機分子を触媒上に導入すること
を包含する、分子量がより小さい成分へと有機分子を反応させる方法。
【請求項39】
(a)四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔を画定しまた1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有し、2〜100nmの基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、該組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物;及び
(b)アルミノ珪酸塩組成物のためのバインダー
を含む、有機分子の流動床接触分解(FCC)又は水添分解に有用な触媒。
【請求項40】
(a)四面体のSiO4単位及び四面体のAlO4単位を結合することによって作られた骨格を含む多孔性の構造化されたアルミノ珪酸塩組成物であって、該骨格が細孔を画定し、1000対1〜1対1の間のSi対Alモル比を有し、1〜100nmの基底間隔に対応する少なくとも1つのX線回折ピークを有し、該組成物が、20容積%の800℃の水蒸気に2時間暴露された後に、最初の骨格の細孔容積を少なくとも50%保持する、アルミノ珪酸塩組成物を供給し;そして
(b)有機分子の反応を惹起する温度及び圧力で有機分子を触媒上に導入すること

含む、分子量がより小さい成分へと有機分子を反応させる方法。
【請求項41】
1.0Mの硝酸アルミニウムの外部標準に対して、57〜65ppmの間の27Al−NMRの化学シフトを有する、請求項1及び2に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図31A】
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【公開番号】特開2008−110919(P2008−110919A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24718(P2008−24718)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【分割の表示】特願2001−588133(P2001−588133)の分割
【原出願日】平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願人】(594114134)ミシガン ステイト ユニバーシティー (22)
【Fターム(参考)】