説明

超純水製造システムの洗浄方法

【課題】超純水製造システムから金属不純物を効率よく除去でき、しかも洗浄時間も短くて済む超純水製造システムの洗浄方法を提供する。
【解決手段】1次純水タンク21に塩酸を添加し、ポンプ22によって熱交換器23、紫外線酸化装置24、バイパスライン30,31,32、流路6a、ユースポイント4及び流路6bの順に循環させ、次いで浸漬状態とする。その後、タンク21内を1次純水とし、同一の順番にて1次純水を通水し、洗浄液を流路6bの末端から系外に排出する。酸洗浄に際し、脱ガス装置25、イオン交換樹脂塔26、UF装置27をバイパスさせる。UF装置27をバイパスすることにより、塩酸含有液の押し出し洗浄時間が短縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等で用いられる超純水製造システムを洗浄する方法に係り、特に洗浄後に超純水中の金属濃度を早期に低下させることができる超純水製造システムの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造等の分野における洗浄工程では、洗浄水として超純水が用いられている。この超純水としては、洗浄トラブルの原因となる微粒子、有機物や無機物を含まないことが要求され、例えば抵抗率:18.2MΩ・cm以上、直径0.05μmの微粒子:1個/mL以下、生菌:1個/L以下、TOC (Total Organic Carbon)
:1μg/L以下、金属類:1ng/L以下、イオン類:1ng/L以下であることが要求水質となっている。
【0003】
超純水の使用場所(ユースポイント)は、超純水製造装置と配管(流路)で接続され、このユースポイントで使用されなかった残余の超純水は別の流路を介して前記超純水製造装置に戻されることにより循環系が形成され、全体として超純水製造システムが構成されている。
【0004】
超純水製造システムを新規に建設したり長期間休止させた場合には、システム内に不純物が混入して超純水の水質が低下するので、適宜洗浄を行うことが必要となる。
【0005】
特に、工場の建設に伴って上記システムを新設する場合、その施工時に微粒子や汚れ(有機物や金属など)がシステムの内部に混入することから、これを除去するための洗浄作業が長期化し(例えば1カ月)、工場の稼動率が低下する。
【0006】
このようなことから、超純水製造システムを洗浄してから所定の要求水質を満たす超純水が得られるまでの時間を短縮すること(超純水製造システムの垂直立上げ)が要望されており、洗浄効率を高めるために、例えば洗浄水として、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)等の塩基性洗浄液や過酸化水素水を用いることが行われている(特開2000−317413号公報、特開2004−122020号公報、特開2007−260211号公報)。また、特開平7−195073号公報には、洗浄力の大きいアルコールを用いた洗浄方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、これらの洗浄方法は、金属を十分に除去するには適していない。
【0008】
上記特開2004−122020号公報の0043、0045段落には、超純水製造システムの洗浄液としてpH4以下の塩酸、硫酸、硝酸等の酸の水溶液を用いることが記載されている。また、同号公報には、塩基性洗浄液や酸洗浄液による洗浄時に、洗浄液がイオン交換装置をバイパスするように通液することが記載されている。これは、塩基や酸がイオン交換樹脂でイオン交換処理されることを防止するためである(同号公報0050段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−195073号公報
【特許文献2】特開2000−317413号公報
【特許文献3】特開2004−122020号公報
【特許文献4】特開2007−260211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の通り、過酸化水素や塩基性洗浄液、アルコールによる洗浄は、超純水製造システムから金属不純物を除去するのに適していない。
【0011】
上記特開2004−122020号公報のように酸水溶液を用いると、超純水製造システムから金属を効率よく除去することができる。しかしながら、後述の実施例の欄における試験例に見られる通り、限外濾過膜装置(UF装置)などの除濁膜装置は、酸洗浄後にリンス(純水による押し出し洗浄)を行っても、酸が抜けにくく、酸を完全に洗い出すには極めて長い日時がかかり、トータルの洗浄時間が著しく長くなってしまう。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決し、超純水製造システムから金属不純物を効率よく除去でき、しかもリンスを含めたトータルの洗浄時間も短くて済む超純水製造システムの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明(請求項1)の超純水製造システムの洗浄方法は、一次純水を処理して超純水を製造するサブシステムと、ユースポイントと、該サブシステムとユースポイントを接続する流路とを備えた超純水製造システムを洗浄する方法であって、該サブシステムは除濁膜濾過装置を備えている超純水製造システムの洗浄方法において、該サブシステムを鉱酸含有液で洗浄するサブシステム酸洗浄工程を有しており、該サブシステム酸洗浄工程では、鉱酸含有液を該除濁膜濾過装置をバイパスさせて通液することを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の超純水製造システムの洗浄方法は、請求項1において、前記サブシステムはイオン交換装置を備えており、前記サブシステム酸洗浄工程では、鉱酸含有液を前記除濁膜濾過装置及び該イオン交換装置をバイパスさせて通液することを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の超純水製造システムの洗浄方法は、請求項2において、前記サブシステムは脱ガス装置を備えており、前記サブシステム酸洗浄工程では、鉱酸含有液を前記除濁膜濾過装置、前記イオン交換装置及び該脱ガス装置をバイパスさせて通液することを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の超純水製造システムの洗浄方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、更に、前記ユースポイント及び前記流路の少なくとも一方を酸洗浄することを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の超純水製造システムの洗浄方法は、請求項4において、前記サブシステム酸洗浄工程において鉱酸含有液をサブシステムの通水方向に通液し、サブシステムから流出する鉱酸含有液を該ユースポイント及び該流路に循環通液することを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の超純水製造システムの洗浄方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、鉱酸が塩酸であり、その濃度が0.0001〜10wt%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の超純水製造システムの洗浄方法では、サブシステムを鉱酸含有液で洗浄するので、サブシステムから金属不純物を効率よく除去することができる。本発明では、このサブシステム酸洗浄工程において鉱酸含有液を除濁膜濾過装置に通液しないので、鉱酸洗浄後の鉱酸含有液の押し出し洗浄時間が短くて済み、トータルの洗浄時間が短時間で足りる。また、除濁膜濾過装置の膜が酸で劣化することも防止される。
【0020】
本発明では、サブシステム酸洗浄工程において、鉱酸含有液をイオン交換装置又はイオン交換装置と脱ガス装置をバイパスさせてもよい。鉱酸含有液がイオン交換装置をバイパスすることにより、鉱酸がイオン交換されることが防止される。また、鉱酸含有液が脱ガス装置をバイパスすることにより、脱ガス装置内での鉱酸含有液の滞留をなくし、鉱酸含有液の押出し洗浄時間が短くて済み、トータルの洗浄時間が短時間で足りる。また、脱ガス装置が酸で劣化することも防止される。
【0021】
本発明では、サブシステム酸洗浄工程において、鉱酸含有液をサブシステム通水方向に通液し、サブシステムから流出する鉱酸含有液をユースポイント及びユースポイントとの接続流路に循環通液することが好ましい。これにより、該ユースポイント及び流路の金属不純物も効率よく除去される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の超純水製造システムの洗浄方法の実施の形態を示す系統図である。
【図2】実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
【図3】試験例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、本発明の超純水製造システムの洗浄方法の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態では、ファイナルフィルタとしての除濁膜装置に限外濾過膜装置が用いられているが、精密濾過膜装置などを用いてもよい。
【0024】
第1図は、本発明による超純水製造システムの洗浄方法の実施の形態を示す系統図である。この超純水製造システム1は、サブシステム2、超純水のユースポイント4、及びこれらを接続する超純水の流路6a,6bから成っている。そして、サブシステム2で製造された超純水は流路6aを介してユースポイント4へ送られて該ユースポイント4でその一部が使用され、未使用の超純水は流路6bを経てサブシステム2に戻る。
【0025】
サブシステム(2次純水装置)2は、1次純水タンク21、ポンプ22、熱交換器23、紫外線酸化装置24、脱ガス装置25、イオン交換装置26及び限外濾過膜装置27並びにこれらの間の接続ライン(配管等)を備えており、1次純水タンク21からの1次純水をポンプ22で送り出し、熱交換器23で加温した後、紫外線酸化装置24で紫外線照射処理して有機物を有機酸に分解し、脱ガス装置25で脱ガス処理し、イオン交換装置(この実施の形態ではイオン交換樹脂塔)26で脱イオン処理した後、限外濾過膜装置(UF装置)27で微粒子を除去することにより、例えば前述の要求水質を満たす超純水を製造するものである。脱ガス装置25としては、真空脱気装置、膜脱気装置、窒素脱気装置などを用いることができる。
【0026】
タンク21へ供給される1次純水10は、原水を例えば逆浸透膜で処理した後、アニオン性及びカチオン性のイオン交換樹脂による処理を順に行い、さらに逆浸透膜処理することにより得られる。ただし、1次純水の製造方法はこれに限定されるものではない。例えば、真空脱気処理が行われてもよく、逆浸透膜処理は1回でもよい。
【0027】
この実施の形態においては、サブシステム2の入口側に1次純水タンク21が設けられており、1次純水10及びユースポイント4から戻された未使用の超純水を収容する。このタンク21に収容された純水はポンプ22を介して熱交換器23へ送り出され、上記の一連の処理が行われる。なお、逆浸透膜、その他の膜処理装置がサブシステム2に組み込まれる場合もある。
【0028】
ユースポイント4は超純水の使用場所を示し、対象物(例えば半導体)を洗浄するための洗浄装置(洗浄槽)4aの他、適宜配管やノズル類等を含んでもよい。なお、ユースポイント4で使用された超純水は、適宜排水として回収される。
【0029】
サブシステム2とユースポイント4とを接続する超純水の流路6a,6bは基本的には配管やチューブで構成されるが、本発明では流路の途中に適宜タンク、ポンプ、継手、及び弁、その他の設備を配置したものも含めて流路と称する。流路6a,6bに用いる材料としては、超純水中にその成分が溶出するものでなければよく、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PVDF(ポリビニルジフロライド)、FRP(繊維強化プラスチック)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ステンレス等を用いることができる。
【0030】
この実施の形態では、サブシステム2の酸洗浄時に通水されるバイパスラインとして、脱ガス装置25を迂回するバイパスライン30、イオン交換樹脂塔26を迂回するバイパスライン31及びUF装置27を迂回するバイパスライン32が設けられている。図示はしないが、液をバイパスラインに流通させる流路選択と、バイパスラインを通過せずに機器及びその接続ラインを流れる流路選択とを切り替えるための弁が各バイパスライン及び接続ラインに設けられている。
【0031】
超純水製造システムの酸洗浄を行うときには、好ましくはタンク21に酸を添加し、所定のpHとする。この酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、好ましくは塩酸又は硫酸特に好ましくは塩酸が用いられ、タンク21内のpHが5以下、例えば5〜1となるように添加される。塩酸の場合、タンク21内の濃度が0.0001〜10wt%特に0.01〜1wt%となるように添加されるのが好ましい。
【0032】
なお、酸以外に界面活性剤等をさらに添加してもよい。この界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のいずれもが使用できるが、陰イオン界面活性剤、殊に、アルキル硫酸塩系で炭素数が10〜14のもの、特に炭素数12のもの(ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))や、コール酸ナトリウム(SC)などが好ましい。これらの界面活性剤は、混合して使用することができ、また、他の界面活性剤と併用することもできる。併用される界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の他、高分子ポリマー、DNA、タンパク質などの分散剤でもよい。
【0033】
このタンク21内の酸含有液をポンプ22を用いて超純水製造時と同様に熱交換器23に向って送り出し、超純水洗浄システム1の酸洗浄工程を行う。
【0034】
この酸洗浄工程においては、少なくともイオン交換樹脂塔26とUF装置27をバイパスライン31,32によってバイパスするように酸含有液を通液する。これにより、酸がイオン交換されることが防止される。また、UF装置の限外濾過膜が酸と接触することがないので、システム全体の洗浄時間(特に酸洗浄後の押し出し洗浄時間)が短くて済むようになる。また、この実施の形態では、この酸洗浄に際し脱ガス装置25もバイパスライン30によってバイパスさせているので、UFと同様に洗浄時間の短縮という効果が得られる。ただし、酸洗浄工程においては、脱気装置25に酸含有液を通液してもよく、この場合には、後の押し出し洗浄工程において脱気装置25にも純水を通水する。
【0035】
酸洗浄工程では、熱交換器23によって、超純水製造システムを構成する部材や配管の耐熱温度を超えない範囲でなるべく高い温度となるように酸含有液を加温するのが洗浄力を高くする点で好ましく、具体的には20〜100℃に加温するのがよい。例えば、耐熱温度が約45℃であるPVCを構成材料とする場合は酸含有液の温度を40℃程度とし、耐熱温度が約80℃であるPVDFの場合は酸含有液の温度を75〜80℃とすればよい。また、ステンレスを構成材料とする場合は100℃程度の温度の酸含有液で酸洗浄することができる。
【0036】
酸洗浄工程では、タンク21内の酸含有液をポンプ22によって送り出し、サブシステム2、ユースポイント4及び流路6a,6bを循環させ、これらに存在する液が酸含有液に置換された後、ポンプ22を停止し、所定時間(例えば1〜24時間特に3〜6時間程度)接液部分が酸含有液と接触したままとなる浸漬状態とするのが好ましい。なお、洗浄開始当初には、タンク21から酸含有液を送り出し、流路6bから超純水がタンク21に流入することにより、タンク21内の酸含有液が希釈されることになるが、タンク21に酸を添加してタンク21内の酸含有液を上記範囲のpH又は酸濃度に保つのが好ましい。
【0037】
その後、超純水製造システム内の残留液を1次純水又は超純水で押し出し洗浄する。具体的には、好ましくは、タンク21内の酸含有液を排出し、タンク21内を1次純水で洗浄してタンク21内に1次純水を貯留した後、この1次純水をポンプ22で熱交換器23へ送り出し、サブシステム2、ユースポイント4及び流路6a,6bを押し出し洗浄する。この際も、1次純水はバイパスライン30,31,32を通過する。流路6bからの押し出し洗浄排水は、図示しないイオン交換樹脂と接触させた後、放流するのが好ましい。押し出し洗浄は、押し出し洗浄排水中の酸が検出限界以下となるか、又は規定濃度以下となるまで十分に行う。
【0038】
このように超純水製造システムを酸洗浄することにより、該システムの流路内の金属(例えば、Ca、Al、Fe、Ni、Zn)、有機物、微粒子、生菌が除去される。本発明では、洗浄液を酸含有液としているので、該流路内の金属不純物を効率よく除去することができる。
【0039】
上記説明では、サブシステム2、流路6a,6b及びユースポイント4のすべてを酸洗浄しているが、サブシステム2のみを酸洗浄してもよく、サブシステム2と流路6aのみを酸洗浄してもよく、サブシステム2とユースポイント4のみを酸洗浄してもよく、サブシステム2と流路6a,6bのみを酸洗浄してもよく、サブシステム2と流路6aとユースポイント4のみを酸洗浄してもよい。ただし、この実施の形態の通り、サブシステム2、流路6a,6b及びユースポイント4を酸洗浄するのが好ましい。
【0040】
上記の説明ではタンク21内に酸を添加しているが、その他の箇所で酸を添加してもよい。
【0041】
なお、本発明では、上記の押し出し洗浄中に、或いは、押し出し洗浄前に系内に過酸化水素やオゾンを注入してシステム内に液を循環させ、殺菌洗浄を行ってもよい。
【実施例】
【0042】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、以下の実施例及び比較例では、脱ガス装置としては真空脱気装置を用いた。
【0043】
実施例1
次のようにして図1に示す超純水製造システムの洗浄を行った。
【0044】
まず、サブシステム2のタンク21に塩酸を1000mg/L含むpH3.5の酸含有液(塩酸水溶液)を収容し、ポンプ22で熱交換器23、紫外線酸化装置24、バイパスライン30,31,32、流路6a、ユースポイント4及び流路6b、タンク21の順に1Hr循環通水した。熱交換器23による加温後の温度は25℃であった。この酸洗浄工程では、酸含有液をバイパスライン30,31,32に通液し、脱ガス装置25、イオン交換塔26、UF装置27には通液しなかった。その後、ポンプ22を停止して12Hr浸漬を行い、このシステムを塩酸で洗浄した(循環:1Hr、浸漬12Hr)。
【0045】
次いで、タンク21に1次純水を収容し、この1次純水をポンプ22によって上記と同様に熱交換器23、紫外線酸化装置24、バイパスライン30,31,32、流路6a、ユースポイント4及び流路6bの順に6Hr通水して酸含有液を押し出した。洗浄排水は6bの末端から系外に排出し、強塩基性のアニオン交換樹脂に通液して吸着処理後、放流した。
【0046】
上記洗浄が終了した後、通常の運転を行い、ユースポイント11における超純水中のCa濃度を測定し、その経時変化を第2図に示した。
【0047】
実施例2
サブシステム2のタンク21に塩酸を10mg/L含むpH=5.5の酸含有液(塩酸水溶液)を収容し、ポンプ22で熱交換器23、紫外線酸化装置24、バイパスライン30,31,32、流路6a、ユースポイント4及び流路6b、タンク21の順に1Hr循環通水した。熱交換器23による加温後の温度は25℃であった。この酸洗浄工程では、酸含有液をバイパスライン30,31,32に通液し、脱ガス装置25、イオン交換塔26、UF装置27には通液しなかった。その後、ポンプ22を停止して12Hr浸漬を行い、このシステムを塩酸で洗浄した(循環:1Hr、浸漬:12Hr)。
【0048】
実施例3
実施例1と同様の条件で塩酸の代わりに硝酸を用いて超純水製造装置を洗浄した(循環:1Hr、浸漬12Hr)。
【0049】
比較例1
実施例1において、塩酸水溶液の代わりに炭酸ガス溶解液を用いてシステムを洗浄した。即ち、タンク21に塩酸を添加せず、1次純水を貯留したままとし、代わりに、ポンプ22を作動させた状態で脱ガス装置25の真空側に炭酸ガスを供給し、炭酸濃度100mg/Lの炭酸水溶液をバイパスライン31,32、流路6a、ユースポイント4、流路6b、タンク21、ポンプ22、熱交換器23、紫外線酸化装置24、脱ガス装置25の順に1Hr循環させ、次いでポンプ22及び炭酸ガス供給を停止し、12Hr浸漬を行い、このシステムを洗浄した(循環:1Hr、浸漬12Hr)。このように、この比較例1では、炭酸溶液を、イオン交換樹脂塔26及びUF装置27をそれぞれバイパスライン31,32によってバイパスさせた。
【0050】
次に実施例1と同様にして炭酸溶液の押し出しを行った。なお、システム内部からの炭酸含有排水は、強塩基性のアニオン交換樹脂に通液して吸着処理した後、放流した。
【0051】
上記洗浄が終了した後、通常の運転を行い、ユースポイント11における超純水中のCa濃度を測定し、その経時変化を第2図に示した。
【0052】
比較例2,3
洗浄液を25℃(比較例2)又は40℃(比較例3)の1次純水に代え、超純水製造システムの洗浄を行った。この場合、1次純水を、タンク21、ポンプ22、熱交換器23、紫外線酸化装置24、バイパスライン30,31,32、流路6a、ユースポイント4及び流路6bの順に通水し、流路6bの末端から排出した。1次純水は、熱交換器23によって上記温度となるように加温した。
【0053】
上記洗浄が終了した後、通常の運転を行い、ユースポイント11における超純水中のCa濃度を測定し、その経時変化を第2図に示した。
【0054】
比較例4
サブシステム2のタンク21にTMAHを500mg/L含むpH=11の液を収容し、ポンプ22で熱交換器23、紫外線酸化装置24、バイパスライン30、31、32、流路6a、ユースポイント4及び流路6b、タンク21の順に1Hr循環通水した。熱交換器23による加温後の温度は25℃であった。このアルカリ洗浄工程では、TMAH含有液をバイパスライン30,31,32に通液し、脱ガス装置25、イオン交換塔26、UF装置27には通液しなかった。その後、ポンプ22を停止して1Hr浸漬を行った。その後TMAHの押出し洗浄を3Hr(pH<9を確認)後、サブシステム2のタンク21に過酸化水素を0.1wt%含む溶液を収容し、ポンプ22で熱交換器23、紫外線酸化装置24、バイパスライン30,31,32、流路6a、ユースポイント4及び流路6b、タンク21の順に1Hr循環通水した。熱交換器23による加温後の温度は25℃であった。この過酸化水素洗浄工程では、過酸化水素含有液をパイプライン30、31、32に通液し、脱ガス装置25、イオン交換塔26、UF装置27には通液しなかった。その後、ポンプ22を停止して12Hr浸漬を行った。
【0055】
第2図の通り、ユースポイント4における超純水中のCa濃度は、実施例1では検出限界(0.1ng/L)以下にまで低下するのは約1日であるが、比較例1では2日、比較例2では8日、比較例3では5日と長い日時を要する。
【0056】
[試験例(UF膜の塩酸洗浄後のClイオンの除去テスト)]
UF装置に塩酸を通液した後、超純水を通水し、透過水中のClイオン濃度の経時変化を測定した。使用したUF装置は旭化成製OLT−6036であり、塩酸濃度は5wt%、1wt%又は0.1wt%とし、通液時間は3時間、通液速度は15m/Hr/本とした。超純水の通水速度は15m/Hr/本とした。その結果を第3図に示す。
【0057】
第3図の通り、UF装置を塩酸で洗浄すると、塩酸濃度が0.1wt%の場合であっても、完全にClイオンが抜け切るには約20日と長時間を要することが認められる。なお、塩酸の代わりに硫酸を用いた場合も同様であった。
【符号の説明】
【0058】
1 超純水製造システム
2 サブシステム
4 ユースポイント
6a,6b 流路
21 タンク
22 ポンプ
23 熱交換器
24 紫外線酸化装置
25 脱ガス装置
26 イオン交換樹脂塔
27 限外濾過膜分離装置(UF装置)
30,31,32 バイパスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水を処理して超純水を製造するサブシステムと、ユースポイントと、該サブシステムとユースポイントを接続する流路とを備えた超純水製造システムを洗浄する方法であって、該サブシステムは除濁膜濾過装置を備えている超純水製造システムの洗浄方法において、
該サブシステムを鉱酸含有液で洗浄するサブシステム酸洗浄工程を有しており、
該サブシステム酸洗浄工程では、鉱酸含有液を該除濁膜濾過装置をバイパスさせて通液することを特徴とする超純水製造システムの洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、前記サブシステムはイオン交換装置を備えており、
前記サブシステム酸洗浄工程では、鉱酸含有液を前記除濁膜濾過装置及び該イオン交換装置をバイパスさせて通液することを特徴とする超純水製造システムの洗浄方法。
【請求項3】
請求項2において、前記サブシステムは脱ガス装置を備えており、
前記サブシステム酸洗浄工程では、鉱酸含有液を前記除濁膜濾過装置、前記イオン交換装置及び該脱ガス装置をバイパスさせて通液することを特徴とする超純水製造システムの洗浄方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、更に、前記ユースポイント及び前記流路の少なくとも一方を酸洗浄することを特徴とする超純水製造システムの洗浄方法。
【請求項5】
請求項4において、前記サブシステム酸洗浄工程において鉱酸含有液をサブシステムの通水方向に通液し、サブシステムから流出する鉱酸含有液を該ユースポイント及び該流路に循環通液することを特徴とする超純水製造システムの洗浄方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、鉱酸が塩酸であり、その濃度が0.0001〜10wt%であることを特徴とする超純水製造システムの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−161418(P2011−161418A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30286(P2010−30286)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】