説明

超電導ケーブルの接続構造

【課題】超電導ケーブルの布設後、接続構造を施工する際に、超電導ケーブルの断熱管端部を切断して断熱管の長さを調整するのに適した超電導ケーブルの接続構造を提供する。
【解決手段】超電導ケーブルの接続構造3aは、ケーブルコアの端部と接続対象とを接続するコア接続部と、端部真空隔壁6と、冷媒容器31と、真空容器32と、内側真空ポート65と、外側真空ポート35と、を備える。そして、端部真空隔壁6は、断熱管2の端部に結合され、真空断熱空間に連通する内側真空空間を形成する。冷媒容器31は、端部真空隔壁6に取り付けられ、コア接続部を収納する。真空容器32は、外管22に取り付けられると共に、端部真空隔壁6及び冷媒容器31の外側に外側真空空間を形成する。内側真空ポート65は、端部真空隔壁6にその径方向に突出するように設けられ、外側真空空間内に収納される。外側真空ポート35は、真空容器31に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの接続構造に関する。特に、超電導ケーブルの布設後、接続構造を施工する際に、超電導ケーブルの断熱管端部を切断して断熱管の長さを調整するのに適した超電導ケーブルの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、既存の常電導ケーブル(例、CVやOFケーブル)と比較して、大容量の電力を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、実線路を模擬した線路に超電導ケーブルを布設し、実証試験が行われつつある。
【0003】
超電導ケーブルは、超電導導体を有するケーブルコアを、内管と外管とを有する二重管構造の断熱管内に収納し、この断熱管内に冷媒(例、液体窒素(LN2))を流通させることで、超電導導体を冷却して超電導状態とする構造のものが代表的である。また、断熱管は、断熱性を高めるために、内管と外管との間に形成される空間が真空に保たれ、この空間が真空断熱空間を形成しており、断熱管の両端部には、この空間を封止する封止部材が設けられている。ここで、断熱管両端部の封止部材には、真空断熱空間に連通する真空ポートが設けられており、この真空ポートから真空断熱空間の真空引きが行われる(例えば、特許文献1参照)。通常、この真空引きは、超電導ケーブルを製造する工場内で行われ、真空断熱空間に存在する水分や内管と外管とに吸着したガスを除去するベーキング処理を行ってから実施される。一般に、真空ポートは、断熱管のクリアランス(内管と外管との間隔)内に収納され、径が15mm程度であり、断熱管の軸方向に突出するように複数本設けられる。
【0004】
また、超電導ケーブルは、製造上、輸送上、布設上などの理由によりケーブルの単位長が制限される(例えば、特許文献2参照)。そのため、超電導ケーブルを用いて単位長を超える長距離に亘る送電線路を構築する場合、線路の途中に超電導ケーブルのケーブルコア端部同士を接続する中間接続部や、線路の終端で超電導ケーブルのケーブルコア端部を他の電力機器(例えば、遮断器)に接続する終端接続部が必要となる(以下、中間接続部及び終端接続部を、単にコア接続部と呼ぶ)。図6を参照して説明すると、通常、超電導ケーブル10のケーブルコア1の端部と接続対象とを接続するコア接続部1jの形成は、断熱管2の端部からケーブルコア1の端部を引き出し、露出させた超電導導体と接続対象とを導電接続部材を介して接続し、その外周に絶縁紙を巻回して補強絶縁層を形成することで行われている。そして、断熱管2の内側(内管21)にコア接続部1jを収納する冷媒容器31を取り付けると共に、更に断熱管2の外側(外管22)にこの冷媒容器31を収納する真空容器32を取り付けることで、接続構造3を施工する。この真空容器32は、筒状部32pとフランジ部32fとで構成され、フランジ部32fを断熱管2の外管22に装着した台座30に溶接することで、断熱管2の外管22に取り付けられている。また、断熱管端部の封止部材20に設けられた真空ポート(図示せず)は、真空容器32から外部に引き出され、接続構造の施工時、施工後において、断熱管2の真空断熱空間の真空度を確認することなどに利用される。
【0005】
ところで、超電導ケーブルを製造する際、接続構造を施工することを考慮して、断熱管の端部からケーブルコアの端部を引き出した状態とし、ケーブルコアの長さが断熱管の設計長よりも所定長さ長くなるように設計している。例えば、従来の一般的な超電導ケーブルは、ケーブルコア先端から断熱管端部までの距離が2000mm〜5000mm程度に設計されている。そして、断熱管の端部に、真空ポート及びケーブルコア端部を保護するためのストレート状の第一保護管及びコルゲート状の第二保護管を、後工程での取り外しを考慮して、スポット溶接でそれぞれ接合する。さらに、第二保護管の端部にプーリングアイに取り付けられた接続管を溶接することでプーリングアイを取り付け、ドラムに巻き取る。通常、ストレート管(第一保護管)の長さは、真空ポートに対応する長さ(150mm〜300mm程度)に設計されている。
【0006】
また、超電導ケーブルを実用化する上で、既存の地中管路内に布設された常電導ケーブルのリプレイスとして利用することが検討されている。超電導ケーブルを管路に布設する場合、超電導ケーブルの一端に取り付けたプーリングアイを牽引することで、管路内に超電導ケーブルを引き込んでいる(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006‐197702号公報(段落0014)
【特許文献2】特開2007‐287388号公報(段落0015、0030)
【特許文献3】特開2009−124855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の超電導ケーブルでは次のような課題があった。
【0009】
(1.断熱管の長さを調整できない問題)
管路に布設された超電導ケーブルの端部は、図6に示すように、例えば管路TからマンホールM内に引き入れられ、マンホールM内で接続構造の施工が行われる。接続構造を施工する場合、従来では、ケーブルコア端部を切断するなどして、ケーブルコアの長さを調整することは考えられていたが、断熱管については、両端部を封止して真空断熱空間を形成しているため、端部を切断して長さを調整することは考えられていなかった。そこで、従来は、超電導ケーブルを製造する際、断熱管の長さが実際に布設したときに必要となる布設長(実際布設長)と等しくなるように設計している。
【0010】
超電導ケーブルを管路に布設する場合、従来は、管路長を予め測定して求めておき、その測定長に基づいて、製造する超電導ケーブル(ケーブルコア及び断熱管)の設計長を決定している。しかし、マンホール内のスペース、接続構造の冷媒容器や真空容器などのサイズは決まっているため、測定誤差が大きいと接続構造を施工することができない虞がある。つまり、断熱管の設計長と実際布設長との差が大きいと、接続構造の施工を行うことができない。例えば、マンホールの長さLm=10000mm、接続構造の長さLj=5500mm、断熱管の端部から真空容器の取付位置までの長さLip=500mm、真空容器の取付位置から管路の開口部が形成されたマンホールの壁面までの長さLpw=2250mmの場合では、測定長(設計長)の誤差範囲は±100mm以内とすることが要求される。そのため、管路長の測定は高精度に行う必要があり、実測により求めることが望まれるが、管路が屈曲していたり傾斜していると測定が難しく、その結果、管路長の測定に多大な時間を要することがある。
【0011】
(2.ケーブル先端部がドラム外形から飛び出す問題)
プーリングアイ先端から断熱管端部までの距離は数mにもなり、断熱管の端部にはストレート管(第一保護管)が接続されている。このストレート管の箇所は、コルゲート管の箇所とは異なり、曲げられないので、ストレート管からプーリングアイ側に延びる先端部をドラム外形に収めることが難しい。
【0012】
(3.布設したケーブル先端部に曲がりが生じる問題)
超電導ケーブルを管路に布設する際、ケーブル先端に取り付けられたプーリングアイを牽引する他、ドラムから巻き出されたケーブルの巻ぐせを取るベンダーに供給し、ケーブルの曲がりを矯正しながら管路内に押し込むことがある。しかし、ストレート管(第一保護管)の接合にはスポット溶接が採用されているため、この箇所は機械的強度が低く、ベンダーに通すことができないので、この箇所に対応するケーブルコアの部分は曲がりが矯正されない。そのため、ケーブルコアにおいて、断熱管に収納される中央部と断熱管から引き出された先端部との間に、曲がりが矯正されない変曲部が存在することになり、ケーブルコアの先端部が断熱管から真っ直ぐに引き出された状態とならない。その結果、ケーブルコアを接続対象に突き合わせてコア接続部を形成することが難しく、接続構造の施工性が悪化する。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、超電導ケーブルの布設後、接続構造を施工する際に、超電導ケーブルの断熱管端部を切断して断熱管の長さを調整するのに適した超電導ケーブルの接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の超電導ケーブルの接続構造について説明する前に、本発明の前提となる超電導ケーブルならびに布設後の超電導ケーブルの端部処理について簡単に説明する。
【0015】
本発明において、超電導ケーブルは、超電導導体を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納し、内管と外管との間で真空断熱空間を形成する断熱管とを備え、断熱管の長さが実際布設長よりも長くなるように設計されている。また、超電導ケーブルは、布設後、接続構造を施工するための位置合わせが行われ、断熱管の実際布設長よりも長い余長部分が切断されることで、断熱管の長さ調整が行われる。そして、接続構造を施工する際に、布設現場において、断熱管の真空断熱空間の真空引きが行われる。以下、本発明の超電導ケーブルの接続構造について説明する。
【0016】
本発明の超電導ケーブルの接続構造は、超電導導体を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納し、内管と外管との間で真空断熱空間を形成する断熱管と、ケーブルコアの端部と接続対象とを接続するコア接続部と、を備える。そして、端部真空隔壁と、冷媒容器と、真空容器と、内側真空ポートと、外側真空ポートと、を備えることを特徴とする。端部真空隔壁は、断熱管の端部に結合され、真空断熱空間に連通する内側真空空間を形成する。冷媒容器は、端部真空隔壁に取り付けられ、コア接続部を収納する。真空容器は、外管に取り付けられると共に、端部真空隔壁及び冷媒容器の外側に外側真空空間を形成する。内側真空ポートは、端部真空隔壁にその径方向に突出するように設けられ、外側真空空間内に収納される。外側真空ポートは、真空容器に設けられる。
【0017】
ここで、布設前の超電導ケーブルは、断熱管の長さが実際布設長よりも長く、断熱管が余長部分を有するため、布設後、接続構造を施工する際に、断熱管の長さが足りないということがなく、また、断熱管端部の余長部分を切断除去することで、断熱管の長さ調整が可能である。そのため、例えば超電導ケーブルを管路に布設する場合、管路長は簡易測定により大まかに求めておけばよいので、測定時間を大幅に短縮することができる。その結果、超電導ケーブルの設計に要する時間を大幅に短縮することができる。なお、実際布設長とは、実際に布設したときに必要となる断熱管やケーブルコアの布設長のことであり、余長部分を除いた長さである。
【0018】
本発明の接続構造の施工は、超電導ケーブルの布設後、断熱管端部を切断し、断熱管の長さ調整後、断熱管端部に端部真空隔壁を結合して内側真空空間を形成し、内側真空ポートから真空断熱空間に連通する内側真空空間の真空引きを行う。また、ケーブルコア端部と接続対象とを接続するコア接続部を形成し、このコア接続部を収納する冷媒容器を端部真空隔壁に取り付ける。次に、真空断熱空間の真空引き及びコア接続部の形成後、外管に真空容器を取り付け、端部真空隔壁及び冷媒容器収納の外側に外側真空空間を形成し、外側真空ポートから外側真空空間の真空引きを行うことで完了する。ここで、内側真空空間(真空断熱空間)の真空引き作業とコア接続部の形成作業とは、並行して実施することができ、並行して実施することで、接続構造の施工工期を短縮することが可能である。
【0019】
超電導ケーブルの布設後、布設現場において、断熱管端部を切断し、新たに形成された断熱管端部に封止部材を取り付けて真空断熱空間を封止する場合、完全に気密封止することが難しい問題がある。本発明の接続構造によれば、内側真空ポートが設けられた端部真空隔壁の外側に外側真空空間が形成されているため、内側真空空間の気密性が低下しても外側真空空間により気密性を保つことができ、真空断熱空間の真空状態が維持され易く、信頼性が向上する。また、例えば何らかの原因で真空容器が損傷し、外側真空空間の真空状態が破壊されたとしても、端部真空隔壁により外側真空空間と内側真空空間とが区画されているため、内側真空空間(真空断熱空間)の気密性は維持されるので信頼性が高い。
【0020】
また、本発明の接続構造によれば、断熱管端部に結合された端部真空隔壁に内側真空ポートが設けられており、この内側真空ポートから真空断熱空間の真空引きが行われる。そのため、内側真空ポートの径が、従来の超電導ケーブルの断熱管端部に設けられた真空ポートのように内管と外管との間隔に制約されないため、従来の真空ポートに比較して、内側真空ポートの径を大きく(例えば20mm以上)することが可能である。これにより、大径の真空ポートにより効率的に真空断熱空間の真空引きを行うことができる他、真空引き作業に要する時間を従来と同程度にしながら真空ポートの本数を減らすことも可能である。
【0021】
ところで、超電導ケーブルの布設後、接続構造を施工する際に、例えば真空容器の取付位置から管路の開口部が形成されたマンホールの壁面までの断熱管が管路から露出する区間(図6中Lpwの区間)であって、外管の外周面に、真空断熱空間に連通する真空ポートを設けることも考えられる。この場合、真空ポートを取り付けるために、真空容器の端面と管路の開口部が形成されたマンホールの壁面との間に十分な作業スペースを確保する必要があるが、マンホール内のスペースが狭い場合、十分な作業スペースを確保することができない虞がある。本発明の接続構造では、真空容器内に内側真空ポートが位置することになるため、真空容器とマンホールの壁面との間に真空ポートを取り付けるための作業スペースを確保する必要がない。
【0022】
本発明の接続構造の一形態として、端部真空隔壁の途中に、断熱管の軸方向に伸縮するベローズを備えることが挙げられる。
【0023】
超電導ケーブルの接続構造が施工され、送電線路が構築されると、ケーブルコアが収納された断熱管内に冷媒を流通させ、超電導導体を超電導状態に維持して、超電導ケーブルの運転が行われる。その際、断熱管が軸方向に熱収縮することが起こり得るが、端部真空隔壁の途中にベローズを設けることで、断熱管の熱収縮による端部真空隔壁の軸方向の変形、変位を吸収することができる。また、接続構造を施工する際に、端部真空隔壁の軸方向の組立公差を吸収することも可能である。
【0024】
本発明の接続構造の一形態として、端部真空隔壁が、外管に接続される外壁筒体と、外管の内側に間隔をあけて配置される内壁筒体と、この内壁筒体と内管との間を接続するストレート状の接続管と、を備えることが挙げられる。
【0025】
通常、断熱管の内管には、可撓性を有するコルゲート管が用いられている。コルゲート管はスパイラル状に波付け加工されているため、内壁筒体と内管とを溶接により直接接続しようとすると、内管に対する内壁筒体の位置合わせが難しい問題がある。そこで、内壁筒体と内管との間にストレート状の接続管を介在させ、内壁筒体と内管との間を接続管を介して溶接により接続することで、内壁筒体の位置合わせが行い易く、作業性が向上する。また、内管と接続管との厚さが異なる場合、両者間の熱容量差が大きくなるため、両者を直接溶接接続することが難しい。そこで、接続管の厚さは、内管の厚さと同程度とすることが好ましく、例えば0.8mm以上2mm以下とすることが好ましい。
【0026】
さらに、上記した内壁筒体と内管との間に接続管を備える形態では、接続管の外周面に当接し、接続管の形状を補強する補強部材を備えることが好ましい。
【0027】
上記したように、接続管の厚さは内管の厚さと同程度とすることが好ましいが、このような厚さでは薄くて、内壁筒体を接続管に溶接接続する際に接続管の強度が不足して、接続管の形状が変形する虞がある。そこで、接続管の外周面に当接するように補強部材を配置することで、接続管の形状を補強、矯正することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の超電導ケーブルの接続構造は、断熱管端部に結合された端部真空隔壁が真空容器内に存在するので、内側真空空間の気密性が低下しても外側真空空間により気密性を保つことができ、真空断熱空間の真空状態が維持され易く、信頼性が高い。特に、超電導ケーブルの布設後、接続構造を施工する際に、断熱管端部を切断して断熱管の長さ調整する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の接続構造に用いる超電導ケーブルの構造の一例を示す概略断面図である。
【図2】超電導ケーブルの先端部構造を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る超電導ケーブルの接続構造を示す要部拡大概略半断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る超電導ケーブルの接続構造を示す要部拡大概略半断面図である。
【図5】変形例1に係る超電導ケーブルの接続構造を示す要部拡大概略半断面図である。
【図6】従来の超電導ケーブルの接続構造を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。また、図中において同一部材には同一符号を付している。ここでは、まず、本発明の前提となる布設前の超電導ケーブルの構造を図1、2を用いて説明し、次いで、本発明の実施形態に係る超電導ケーブルの接続構造を図3〜5を用いて説明する。
【0031】
図1に示す超電導ケーブル10は、3心のケーブルコア1を撚り合わせて断熱管2内に一括に収納した構造である。断熱管2は、内管21と外管22とからなる二重管構造のコルゲート管であり、両管21、22の間で真空断熱空間を形成しており、両端部に、この空間を封止する封止部材が設けられている。外管22上には防食層25が形成されている。また、真空断熱空間には、スーパーインシュレーション(商品名)などの断熱材を配置してもよい。
【0032】
一方、ケーブルコア1は、中心から順にフォーマ11、超電導導体12、絶縁層13、シールド層14、保護層15を配置した構造である。超電導導体12及びシールド層14は、Bi2223系超電導テープ線材を巻回することで形成されている。また、絶縁層13は、PPLP(登録商標、Polypropylene Laminated Paper)を巻回することで形成されている。
【0033】
図2は、布設前における、超電導ケーブルの先端部構造を説明するための概略図である。超電導ケーブルの先端部構造は、超電導ケーブル10の端部にプーリングアイ5が取り付けられており、またこの端部では、ケーブルコア1の先端部が断熱管2の端部から引き出されている。プーリングアイは、超電導ケーブル10の両端部に取り付けられる。この例では、ケーブルコア1先端部のフォーマ11のみを示し、断熱管2から引き出されたケーブルコアの残りの先端部と断熱管に収納される中央部とについては図示を省略する。また、3本のケーブルコアの内、2本のケーブルコアについてのみ図示する。
【0034】
断熱管2の内管21と外管22とのそれぞれの端部には、内側接続管23と外側接続管24とが全周溶接で接合されており、これら内側接続管23と外側接続管24との間に形成された環状空間の開口部が封止部材20により封止されている。これにより、真空断熱空間が封止状態に保たれる。また、この封止部材20には、真空断熱空間に連通し、断熱管2の軸方向に突出するように仮設ポート4が設けられている。この仮設ポート4には、フレキシブルチューブ41が装着されている。
【0035】
プーリングアイ5は、牽引フックを取り付ける孔50を有する頭部51と、この頭部51に繋がる円筒状の胴部52とを備える。胴部52には、ケーブルコア1から露出させたフォーマ11を把持する把持金具53と、把持金具53を固定する保持部材54とが収納され、保持部材54が胴部52の内周面に接合された接続管55に固定されている。そして、フォーマ11の先端を把持金具53で把持し、この把持金具53を保持部材54に固定することにより、ケーブルコア1とプーリングアイ5とが連結される。
【0036】
一方、断熱管2の端部に配置される封止部材20に、仮設ポート4を保護するための第一保護管(ストレート管)45が接合され、さらに第一保護管45の端部に、断熱管2から露出するケーブルコア1の先端部を保護するための第二保護管(コルゲート管)46が接合されている。そして、第二保護管46の端部に、プーリングアイ5(胴部52)に取り付けられた接続管55を接合することにより、断熱管2とプーリングアイ5とが、第一保護管45、第二保護管46及び接続管55を介して、連結される。
【0037】
断熱管2の真空断熱空間は、例えばベーキング処理により、水分が除去された状態で封止されている。また、仮設ポート4は、従来の超電導ケーブルの断熱管端部に設けられた真空ポートとは異なり、接続構造の施工後、真空容器から外部に引き出される必要がなく、従来の真空ポートに比較して短くてよい。仮設ポート4の長さは、例えば50mm〜150mm程度、特に50mm〜100mm程度とすることが挙げられる。上記した第一保護管45の長さは、仮設ポート4の長さに対応する長さ(50mm〜150mm程度)に設計している。
【0038】
ここで、本発明の接続構造に用いる超電導ケーブル10の特徴の一つは、断熱管2の長さが実際布設長よりも長く設計されており、少なくとも一方の端部において、ケーブルコア1先端から断熱管2の端部までの距離Dciが従来に比べて短いところにある。つまり、断熱管2の少なくとも一方の端部に余長部分が設けられている。そのため、プーリングアイ5の先端から断熱管2の端部までの距離Dpiも従来に比べて短くなる。その結果、上述した課題の「ケーブル先端部がドラム外形から飛び出す問題」及び「布設したケーブル先端部に曲がりが生じる問題」を解決することができ、ドラムへの巻き取り及びコア接続部の形成が容易である。
【0039】
ケーブルコア先端から断熱管端部までの距離Dciは、例えば2000mm以下、より好ましくは1000mm以下、特に好ましくは500mm以下とすることが挙げられる。また、この例では、距離Dciを250mmとし、100mm以上に設計している。距離Dciを100mm以上とした理由は、ケーブルコア1から露出させたフォーマ11に把持金具53を取り付ける作業を行い易くするためである。
【0040】
次に、上記した超電導ケーブルの設計製造から、超電導ケーブルを管路に布設するまでの手順について説明する。
【0041】
(超電導ケーブルの設計製造)
まず、超電導ケーブルを製造する前に、超電導ケーブルを布設する管路の長さを測定する。この例では、超電導ケーブルの布設後、断熱管端部の余長部分を切断除去して、断熱管の長さ調整が行われる。そのため、管路長は簡易測定により大まかに求めておけばよく、その測定結果に基づいて、実際布設長より適当に長くなるように断熱管の設計長を決定する。さらに、超電導ケーブルの両端部において、ケーブルコア先端から断熱管端部までの距離を上記した範囲内となるようにし、断熱管の両端部に余長部分を有するように設計することが好ましい。このとき、ケーブルコアについても余長部分を設け、ケーブルコアの長さを実際布設長よりも長くしてもよい。
【0042】
次いで、ケーブルコア及び断熱管の設計に基づき、超電導ケーブルを製造する。断熱管には、真空断熱空間の水分などを除去するベーキング処理を行う。例えば、ベーキング処理は、真空引きと同時に行い、即ち、真空引きしながら水分などを除去する。このベーキング処理は、超電導ケーブルの布設後に実施することが事実上できないので、布設前に行う必要がある。また、ベーキング、真空引きにより、真空断熱空間の水分などを除去した後、真空断熱空間の乾燥空気を乾燥ガスに置換してもよい。真空断熱空間を乾燥ガスで置換して正圧状態として封止することで、真空断熱空間への外気(水分)の侵入を防ぎ、水分が除去された状態を維持し易い。乾燥ガスとしては、乾燥した窒素やアルゴンなどの不活性ガス、特に窒素ガスが好適である。そして、真空断熱空間の水分などを除去した後、真空断熱空間を封止する。この例では、断熱管の両端部に内側接続管と外側接続管とを溶接し、断熱管の両端部に仮設ポートを有する封止部材を取り付けることで、真空断熱空間を封止する。
【0043】
次に、超電導ケーブルの端部にプーリングアイ5を取り付ける(図2参照)。プーリングアイ5を取り付けるときは、ケーブルコア1の先端において露出させたフォーマ11に把持金具53を装着し、把持金具53を保持部材54に固定する。そして、断熱管2の端部に第一保護管45を接合し、次いで、第一保護管45の端部に第二保護管46を接合した後、第二保護管46の端部にプーリングアイ5の接続管55を接合する。例えば、引き込み側の端部においては、超電導ケーブルを布設する際に大きな張力がかかるので、全ての接合を全周溶接とすることが好ましい。また、プーリングアイ5は、超電導ケーブルの引き込み側とは反対の端部にも取り付ける。このとき、引き込み側とは反対の端部においては、布設後の取り外しを考えて、全ての接合をスポット溶接としてもよい。
【0044】
プーリングアイの取り付け完了後、超電導ケーブルをドラムに巻き取る。この例では、断熱管の端部に余長部分を有し、ケーブルコア先端から断熱管端部までの距離が短いため、プーリングアイ先端から断熱管の端部に接続されたストレート管(第一保護管)までの距離が従来に比較して短くなる。そのため、従来のようにケーブル先端部がドラム外形から飛び出す虞が少なく、ケーブル先端部をドラム外形に収め易い。また、仮設ポートを保護する第一保護管は、従来の真空ポートを保護する第一保護管に比較して長さが短いため、プーリングアイ先端からストレート管までの距離がより短くなり、ドラムへの巻き取り性がより向上する。
【0045】
(超電導ケーブルの管路布設)
超電導ケーブルを管路に布設する。超電導ケーブルを布設するときは、例えば、プーリングアイに牽引フックを取り付け、ケーブルを牽引して管路内に引き込むと共に、超電導ケーブルの繰り出し側において、ドラムから巻き出されたケーブルをベンダーに通し、ケーブルの曲がりを矯正しながら管路内に押し込むことが挙げられる。ここで、断熱管の一方の端部にのみ余長部分を有するときは、他方の端部については、従来と同様、布設後の断熱管が管路から露出する区間の長さを厳密に管理する(±50mm)必要がある。これに対し、断熱管の両端部に余長部分を有するときは、布設後の断熱管が管路から露出する区間の長さを厳密に管理する必要がなく、超電導ケーブルの布設施工性が向上する。
【0046】
また、この例では、ケーブルコア先端から断熱管端部までの距離が短いため、ストレート管(第一保護管)の箇所に対応するケーブルコアの部分において曲がりが矯正されなくても、従来に比較してケーブルコアの先端部が断熱管からほぼ真っ直ぐに引き出された状態となる。また、仮設ポートを保護する第一保護管は、従来の真空ポートを保護する第一保護管に比較して長さが短いため、ケーブルコア先端部に生じる曲がりをより抑制することができる。
【0047】
超電導ケーブルの布設後、超電導ケーブルの両端(引き込み側端部、及びその反対の端部)に取り付けたプーリングアイ、第一保護管及び第二保護管を取り外す。
【0048】
(超電導ケーブルの接続構造)
超電導ケーブルの布設後、接続構造を施工する。以下、本発明の実施形態に係る超電導ケーブルの接続構造について説明する。
【0049】
<実施形態1>
図3に示す実施形態1に係る超電導ケーブルの接続構造3aは、ケーブルコアの端部と接続対象とを接続するコア接続部と、端部真空隔壁6と、冷媒容器31と、真空容器32と、内側真空ポート65と、外側真空ポート35と、を備える。
【0050】
端部真空隔壁6は、断熱管2の端部に結合され、真空断熱空間に連通する内側真空空間を形成する。この例では、端部真空隔壁6が、筒状の内壁筒体63と、内壁筒体63の外側に間隔をあけて配置される筒状の外壁筒体64と、を備える。内壁筒体63の断熱管2側とは反対の端部には、径方向外方に突出するフランジ部63fを有する。また、外壁筒体64の断熱管2側の端部には、フランジ部32fが一体成形されている。そして、これら内壁筒体63と外壁筒体64とが一体に組み合わされると共に、断熱管2の端部に結合されることで、内側真空空間を形成する。また、内壁筒体63の径が内管21の径とほぼ同じであり、外壁筒体64の径が外管22の径よりも大きい。
【0051】
冷媒容器31は、端部真空隔壁6に取り付けられ、コア接続部1jを収納する。この冷媒容器31は、径方向に半割れする筒状の部材である。
【0052】
真空容器32は、外管22に取り付けられると共に、端部真空隔壁6及び冷媒容器31の外側に外側真空空間を形成する。この真空容器32は、筒状部32pを備え、この筒状部32pの端部がフランジ部32fに接合されることで構成されている。筒状部32pは、径方向に半割れする筒状の部材である。また、真空容器32(筒状部32p)の外周面には、径方向内方に突出する凹部32cを有する。真空容器32は、接続構造の施工後、外表面に防食処理が施される。
【0053】
端部真空隔壁6(内壁筒体63と外壁筒体64)、冷媒容器31及び真空容器32はいずれも、ステンレス製である。
【0054】
内側真空ポート65は、端部真空隔壁6(外壁筒体64)の外周面にその径方向に突出するように設けられており、内側真空空間に連通する。この内側真空ポート65は、外側真空空間内に収納される。この例では、内側真空ポート65に、径が1インチ(25.4mm)のシールオフバルブを使用している。内側真空ポート65は、外壁筒体64の周方向に複数設けられている。
【0055】
外側真空ポート35は、真空容器32の凹部32cに収納されるように、凹部32cの底面に設けられており、外側真空空間に連通する。この例では、外側真空ポート35に、径が1インチ(25.4mm)のシールオフバルブを使用している。また、真空容器32の凹部32cには、真空容器32の外周面が平坦となるように、蓋(図示せず)が取り付けられる。外側真空ポート35は、真空容器32の周方向に複数設けられている。
【0056】
次に、上記した接続構造3aを施工する手順について説明する。
【0057】
(接続構造の施工)
超電導ケーブルの布設後、接続構造の施工位置に合わせて、断熱管端部の余長部分を切断し、断熱管の長さ調整を行う。このとき、断熱管の切断側端部とは反対の端部に設けられた仮設ポートから乾燥ガスを導入しながら、真空断熱空間を正圧に保つことで、真空断熱空間への外気(水分)の侵入を防ぐことができる。また、断熱管の切断側端部に設けられた仮設ポートは、断熱管の余長部分を切断したときに一緒に除去される。この例では、内管21よりも外管22の方が短くなるように、断熱管2の端部を切断する。
【0058】
断熱管の長さ調整後、新たに形成された断熱管端部に端部真空隔壁6を結合する。この例では、まず、外管22の外周面に、内周面にスパイラル状の溝が設けられた筒状の台座30を外管端部からねじ込んで装着し、台座30を溶接接続する。また、ケーブルコア(図示せず)の先端側からストレート状の接続管61を挿通し、内管21の外周面端部に、内管21の軸方向に延長するように接続管61を溶接接続する。接続管61は、ステンレス製であり、厚さが内管21の厚さとほぼ同じ0.8mmである。
【0059】
次いで、接続管61の外周面に当接する筒状の補強部材62を挿通し、補強部材62を接続管61の外周面に配置する。補強部材62は、FRP(繊維強化プラスチック)製であり、接続管の形状61を補強、矯正する。また、補強部材62は、断熱管2側の端部が外管22の外周面に当接する段差形状をしており、この段差面には、真空断熱空間に連通する連通孔62oを有する。補強部材62がこのような段差形状を有することで、内管61と外管62との変形を抑制して、真空断熱空間の開口部を保持することができる。
【0060】
次に、内壁筒体63を挿通し、接続管61の断熱管2側とは反対の端部に内壁筒体63を溶接接続する。内壁筒体63の接続管61と接続される端部は薄肉に形成されており、内壁筒体63の薄肉端部と接続管61の端部とを溶接接続する。内壁筒体63の厚さ(薄肉端部を除く)は、約5mmである。
【0061】
次に、フランジ部32fが一体成形された外壁筒体64を挿通し、フランジ部32fを台座30に溶接接続すると共に、外壁筒体64のフランジ部32fとは反対の端部を内壁筒体63のフランジ部63fに溶接接続する。これにより、断熱管2の端部に端部真空隔壁6が結合され、内側真空空間を形成する。この内側真空空間と真空断熱空間とは、連通孔62oを通じて連通する。外壁筒体64には、内側真空ポート65が設けられていると共に、その途中に、断熱管2の軸方向に伸縮するベローズ金具64bが設けられている。外壁筒体64の厚さ(ベローズ金具を除く)は、約5mmである。
【0062】
端部真空隔壁6の結合後、内側真空ポート65から内側真空空間の真空引きを行い、内側真空空間に連通する真空断熱空間の真空引きを行う。内側真空ポート65は、超電導ケーブルの布設後に設けるため、管路内径より外側に位置させることができ、また、径や形状に制約が少なく、種々の形状のものを利用することができる。この真空引きは、超電導ケーブルの運転に求められる高真空状態(真空度:10-5〜10-8Pa)まで本引きする。真空断熱空間は、超電導ケーブルを製造する際に水分が除去されているため、この真空引きを行う際に、水分が気化して真空度が低下することがなく、所定の高真空状態を短期間で達成することができる。
【0063】
また、断熱管2端部から引き出されたケーブルコア端部と接続対象とを接続するコア接続部(図示せず)を形成する。上記した真空断熱空間の真空引き作業とこのコア接続部の形成作業とは並行して実施することが可能である。このコア接続部の形成には、通常数週間程度要するので、所定の高真空状態まで真空引きするのに時間的余裕は十分ある。
【0064】
ここで、ケーブルコアにも余長部分が設けられているときは、ケーブルコア端部の余長部分を切断する。この場合、例えケーブルコアの先端部が断熱管から完全に真っ直ぐに引き出された状態となっていなくても、ケーブルコア先端部の曲がりが生じた部分を切断することで、ケーブルコアが断熱管から真っ直ぐに引き出された状態となる。また、ケーブルコア先端から断熱管端部までの距離が上記した範囲内であれば、ケーブルコア端部の切断量も少なくて済む。さらに、ケーブルコア端部の余長部分を切断する場合、次のような利点がある。
【0065】
超電導ケーブルを製造する際、断熱管の端部を封止したり、第一保護管や第二保護管を取り付ける溶接作業などが行われるため、従来は、断熱管から引き出されたケーブルコア先端部において、ダメージを与えないように保護する温度管理や傷防止処置が必要である。しかし、ケーブルコア端部を切断するのであれば、このような管理も不要或いは容易であり、超電導ケーブルの製造を簡略化することが可能である。
【0066】
コア接続部の形成後、端部真空隔壁6(内壁筒体63)の端部に冷媒容器31を溶接接続し、コア接続部を冷媒容器31に収納する。
【0067】
真空断熱空間の真空引き作業及びコア接続部の形成作業の終了後、台座30に溶接接続されたフランジ部32fに筒状部32pを溶接接続することで、真空容器32を外管22に取り付け、端部真空隔壁6及び冷媒容器31の外側に外側真空空間を形成する。筒状部32pの外周面には、吊り具取付部32hが設けられており、この吊り具取付部32hにアイボルトなどの吊り具(図示せず)を取り付け、吊り具にフックを引っ掛けて、チェーンブロックで筒状部32pを吊り上げて作業することが可能である。
【0068】
最後に、外側真空ポート35から外側真空空間を所定の真空度まで真空引きすることで、接続構造3aの施工が完了する。
【0069】
実施形態1に係る超電導ケーブルの接続構造3aは、次の効果を奏する。真空容器32内の端部真空隔壁6により外側真空空間と内側真空空間とが区画されているため、真空断熱空間の真空状態が維持され易く、信頼性が高い。端部真空隔壁6の途中にベローズ金具64bが設けられているため、断熱管2の熱収縮による端部真空隔壁6の軸方向の変形、変位を吸収することができ、また接続構造を施工する際に、端部真空隔壁6の軸方向の組立公差を吸収することも可能である。内壁筒体63と内管21と間に接続管61を介在させ、内壁筒体63と内管21との間を接続管61を介して溶接接続しているため、内管21に対する内壁筒体63の接続作業が行い易い。さらに、接続管61の外周面に当接するように補強部材62を配置しているため、接続管61の形状を補強、矯正することができる。また、外側真空ポート35が真空容器32の凹部32cに収納され、真空容器32の外周面が平坦であるため、真空容器32の外表面に防食処理を施し易く、作業中に外側真空ポート35が衣服に引っ掛かるなどの不具合を未然に防止することができる。
【0070】
この実施形態1の接続構造3aでは、端部真空隔壁6の途中にベローズ金具64bを設けた場合を例に説明したが、冷媒容器31又は真空容器32の途中にも、断熱管2の軸方向に伸縮するベローズを設けてもよい。冷媒容器31又は真空容器32の途中にベローズを設けることで、断熱管2の熱収縮によるこれら部材の軸方向の変形、変位を吸収することができ、また接続構造を施工する際に、これら部材の軸方向の組立公差を吸収することも可能である。
【0071】
<実施形態2>
図4に示す実施形態2に係る超電導ケーブルの接続構造3bは、断熱管2端部の切断状態が図3に示す実施形態1の接続構造3aと相違し、以下ではその相違点を中心に説明する。
【0072】
実施形態2の接続構造3bでは、実施形態1の接続構造3aに比較して、内管21よりも外管22の方がより短くなるように、断熱管2の端部が切断されている。これにより、内管61と外管62とで形成される真空断熱空間の開口部をより大きくとることができ、真空断熱空間の真空引きをより効率的に行うことができる。また、この例では、補強部材62が、接続管61の外周面に当接するのみであり、段差形状をしていない。
【0073】
<変形例1>
上記した実施形態1、2に係る接続構造3a、3bでは、外側真空空間内に内側真空ポート65を収納した場合を例に説明したが、端部真空隔壁に複数設けられた内側真空ポートのうち、少なくとも1つを予備用真空ポートに置き換えてもよい。
【0074】
図5に示す変形例1に係る超電導ケーブルの接続構造3cは、実施の形態1の接続構造3aに備える複数の内側真空ポート65のうち1つを予備用真空ポート70に置き換えた例である。この予備用真空ポート70は、内側真空空間に連通すると共に、真空容器32のフランジ部32fを貫通し、真空容器32の軸方向に突出するように設けられており、真空容器32の外部に引き出されている。具体的には、予備用真空ポート70は、端部真空隔壁6(外壁筒体64)の外周面からその径方向に突出し、屈曲部71により径方向から軸方向に方向転換され、真空容器32の軸方向に突出している。予備用真空ポート70の真空容器32から突出する先端部には、内側真空空間(真空断熱空間)の真空度を計測する真空モニタや真空ポンプを接続するための接続口72が設けられており、接続口72にキャップ73が取り付けられている。また、真空容器32のフランジ部32fには、予備用真空ポート70の先端部を収納する収納箱75がボルトで固定され、収納箱75により予備用真空ポート70の先端部を保護することができる。
【0075】
変形例1の接続構造3cでは、予備用真空ポート70が設けられているため、超電導ケーブルの運転中に、真空モニタにより真空断熱空間の真空度を計測して確認したり、真空ポンプにより真空断熱空間を真空引きして真空度を調整したりすることができる。予備用真空ポート70は、真空度の計測や調整用に利用されるため、内側真空ポートに比較して径を小さくすることが可能であり、この例では、径が従来の真空ポートと同じ15mm程度である。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の超電導ケーブルの接続構造は、超電導ケーブルの分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 超電導ケーブル
1 ケーブルコア 1j コア接続部
11 フォーマ 12 超電導導体 13 絶縁層
14 シールド層 15 保護層
2 断熱管 20 封止部材
21 内管 22 外管 25 防食層
23 内側接続管 24 外側接続管
3,3a,3b,3c 接続構造
30 台座 31 冷媒容器 32 真空容器
32p 筒状部 32f フランジ部
32c 凹部 32h 吊り具取付部
35 外側真空ポート
4 仮設ポート 41 フレキシブルチューブ
45 第一保護管 46 第二保護管
5 プーリングアイ 50 孔
51 頭部 52 胴部
53 把持金具 54 保持部材 55 接続管
6 端部真空隔壁
61 接続管 62 補強部材
62o 連通孔
63 内壁筒体 64 外壁筒体
63f フランジ部 64b ベローズ金具
65 内側真空ポート
70 予備用真空ポート
71 屈曲部 72 接続口 73 キャップ
75 収納箱
M マンホール T 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導導体を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納し、内管と外管との間で真空断熱空間を形成する断熱管と、前記ケーブルコアの端部と接続対象とを接続するコア接続部と、を備える超電導ケーブルの接続構造であって、
前記断熱管の端部に結合され、前記真空断熱空間に連通する内側真空空間を形成する端部真空隔壁と、
前記端部真空隔壁に取り付けられ、前記コア接続部を収納する冷媒容器と、
前記外管に取り付けられると共に、前記端部真空隔壁及び前記冷媒容器の外側に外側真空空間を形成する真空容器と、
前記端部真空隔壁にその径方向に突出するように設けられ、前記外側真空空間内に収納される内側真空ポートと、
前記真空容器に設けられる外側真空ポートと、を備えることを特徴とする超電導ケーブルの接続構造。
【請求項2】
前記端部真空隔壁の途中に、前記断熱管の軸方向に伸縮するベローズを備えることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの接続構造。
【請求項3】
前記端部真空隔壁が、
前記外管に接続される外壁筒体と、
前記外管の内側に間隔をあけて配置される内壁筒体と、
この内壁筒体と前記内管との間を接続するストレート状の接続管と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブルの接続構造。
【請求項4】
前記接続管の外周面に当接し、前記接続管の形状を補強する補強部材を備えることを特徴とする請求項3に記載の超電導ケーブルの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−223754(P2011−223754A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90616(P2010−90616)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】