説明

超電導接続構造体および超電導線材の接続方法、超電導コイル装置

【課題】本発明は、接続強度が高い超電導接続構造体、簡単な接続作業で形成できる超電導線材の接続方法、超電導コイル装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の超電導接続構造体1Aは、基材11と、該基材11上に設けられた酸化物超電導層17と、該酸化物超電導層17上に設けられた安定化層19とを備え、その一端部が接続端21、31とされた少なくとも2本の超電導線材2、3と、各超電導線材2、3の各接続端21、31どうしを接続する複数の接続用超電導テープ4とを有し、各超電導線材2、3は、各安定化層19側の表面21a、31aが同じ側となり、且つ、前記各接続端21、31の側端面どうしが隣接するように配されており、各接続用超電導テープ4は、互いに間隔を空けて配列するように、それぞれ、その安定化層19側の表面4aが、各接続端21、31の各安定化層19側の表面21a、31aに亘って接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2本の超電導線材どうしが接続された超電導接続構造体および超電導線材の接続方法、超電導コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年になって発見されたRE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度以上で超電導性を示すことから実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体として用いることが強く要望されている。そして、酸化物超電導体を線材に加工するための方法として、強度が高く、耐熱性もあり、線材に加工することが容易な金属を長尺のテープ状に加工し、この金属基材上に酸化物超電導体を薄膜状に形成する方法が研究されている。
【0003】
また、酸化物超電導体は電気的異方性を有しているので、基材上に酸化物超電導体を形成する場合に、結晶の配向制御を行う必要がある。しかしながら、金属基材自体は非結晶もしくは多結晶体であり、その結晶構造も酸化物超電導体と大きく異なるために、基材上に上記のような結晶配向性の良好な酸化物超電導体膜を形成することは困難である。
そこで、上記のような問題を解決するために、まず金属基材上に熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が基材と酸化物超電導体との中間的な値を示すMgO、YSZ(イットリア安定化ジルコニウム)、SrTiO等の材料から成る中間層を形成し、この中間層の上に酸化物超電導薄膜を形成することが行われている。
【0004】
そして、上記中間層の製造方法の一例として、イオンビームアシスト法(IBAD法:Ion Beam Assisted Deposition)が知られており、この方法は、スパッタリング法によりターゲットから叩き出した構成粒子を基材上に堆積させる際に、イオン銃から発生されたアルゴンイオン等を同時に斜め方向(例えば、45度)から照射しながら中間層を堆積させる方法として知られている。このIBAD法によれば、基材上の成膜面に対して、高いc軸配向性およびa軸面内配向性を有する中間層を得ることができるので、この中間層上に酸化物超電導薄膜を形成することで超電導特性の優れた酸化物超電導導体を得ることができる。
また、このような酸化物超電導体では、酸化物超電導層上に、銀や銅のような良導電性金属材料よりなる安定化層が設けられるのが一般的である。安定化層は、超電導層が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたとき、該超電導層の電流を転流させるバイパスとして機能する。
【0005】
ところで、このような酸化物超電導導体を、線材として実用機器に応用するには、酸化物超電導線材の接続技術の確立が不可欠であり、接続技術に関しての検討が進められている(例えば、特許文献1〜4参照)。
まず、特許文献1には、基材テープ上に酸化物超電導層と安定化銀層とがこの順に設けられた2本の酸化物超電導線材どうしを、安定化銀層側の表面を対向させ、ハンダを介して接続した構造が提案されている。
しかし、この接続構造は、接続された超電導線材どうしで表裏が反転する問題があり、超電導線材どうしの安定化銀層が同じ側を向いている場合、安定化銀層側の表面どうしを対向させるために一方のコイル線材の端部を反転させなくてはならない問題がある。
また、特許文献1には、超電導線材端部の超電導層どうしを面一に配置してから接続用超電導テープをのせて安定化銀層で覆って接続した構造も開示されているが、この構造では接続強度などの面において満足するものではない。なお、この接続用超電導テープの酸化物超電導層には、接続対象となる酸化物超電導層よりも低融点のものが選択され、低融点の酸化物超電導層が接続対象側の各酸化物超電導層に溶融、接着されているが、前述の融点関係を満たすために、各酸化物超電導層の構成材料が制限される問題がある。
【0006】
また、特許文献2〜4には、2本の酸化物超電導線材の各接続端に、各接続端間を跨いで双方の各酸化物超電導層と接触する接続用超電導層を成膜することによって、各酸化物超電導層どうしを接続した接続方法が提案されている。
ここで、接続用超電導層は、気相成膜技術によって成膜されるため、この接続方法を行うには、大掛かりな成膜装置が必要となり、また、接続用超電導層を成膜するのに時間がかかり、接続作業が長時間に亘ってしまう。したがって、この接続方法は、作業現場で行うには適さず、実用性に欠ける問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−133067号公報
【特許文献2】特開2001−319750号公報
【特許文献3】特開2005−63695号公報
【特許文献4】特開2008−66399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、複数の超電導線材どうしを接続抵抗が低く、接続強度が高い状態で接合可能な超電導接続構造体、このような超電導接続構造体を特別な装置を用いることなく、簡便な接続作業で形成できる超電導線材の接続方法、及び、このような超電導接続構造体を用いた超電導コイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を有する。
本発明の超電導接続構造体は、基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備え、その端部が接続端とされた少なくとも2本の超電導線材と、基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備え、前記各超電導線材の各接続端どうしを接続する複数の接続用超電導テープとを有し、前記各超電導線材は、互いに、前記各導電層側の表面が同じ側となり、且つ、前記各接続端の側端面どうしが隣接するように配されており、前記各接続用超電導テープは、互いに間隔を空けて配列するように、それぞれ、その導電層側の表面を前記各接続端の前記各導電層側の表面の双方に亘って接合されていることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記各接続端と、前記各接続用超電導テープとの間に、それぞれ、金属板が介在しており、前記各金属板は、前記各接続端の前記導電層側の表面と、前記接続用超電導テープの前記導電層側の表面に接合されている構造を採用できる。
本発明において、金属板が、前記接続用超電導テープの配列と並んで、前記各接続端の前記各導電層側の表面の双方に亘って接合されている構造を採用できる。
本発明において、前記接続端の長さ方向に並ぶ各接続用超電導テープを覆うとともに、前記各接続端の導電層側表面の双方に亘って、少なくとも両端部を各接続端の導電層表面に接合した金属カバーが設けられている構造を採用できる。
【0011】
本発明の超電導線材の接続方法は、基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備える少なくとも2本の超電導線材を、前記各導電層側の表面が同じ側となり、且つ、前記各接続端の側端面どうしが隣接するように配置する工程と、基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備える複数の接続用超電導テープを用意し、前記各接続用超電導テープを、互いに間隔を空けて配列させ、それぞれ、その導電層側の表面を、前記各接続端の各導電層側表面の双方に亘って、ハンダを介して接合する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の超電導線材の接続方法は、基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備える少なくとも2本の超電導線材を、前記各導電層側の表面が同じ側となり、且つ、前記各接続端の側端面どうしが隣接するように配置する工程と、複数の金属板を、互いに間隔を空けて配列させ、それぞれ、前記各接続端の前記各導電層側表面の双方に亘って、第1のハンダを介して接合する工程と、基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備える複数の接続用超電導テープを用意し、各接続用超電導テープの導電層側の表面を、前記各金属板の表面に、第2のハンダを介して接合する工程とを有することを特徴とする。
本発明において、前記第2のハンダは、前記第1のハンダよりも融点が低いことが好ましい。
【0013】
本発明の超電導コイル装置は、導電層側の表面を外側にして巻回された超電導線材の巻回体からなる少なくとも2つの超電導コイルを有し、各超電導線材が、各接続端が接続されて超電導接続構造体を構成している超電導コイル装置であって、前記超電導接続構造体は、本発明の超電導接続構造体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の超電導接続構造体によれば、少なくとも2本の超電導線材を、各導電層側の表面が同じ側となり、且つ、各接続端どうしが隣接するように配し、また、各接続用超電導テープを、互いに間隔を空けて配列させ、それぞれ、それらの導電層側の表面を各接続端の導電層側表面の双方に亘って接合するため、各接続端どうしが複数の接続用超電導テープを介して連結される。これにより、接続抵抗が低く、接続強度の高い超電導接続構造体を得ることができる。
【0015】
また、この超電導接続構造体は、複数の接続用超電導テープが間隔を空けて配されているので、常温と冷却状態の低温との間で温度変化したとき、接続用超電導テープの接合材や接合材との接着部に生じる熱膨張差に起因する応力が分散され、各接続端の各導電層側表面に対する各接続用超電導テープの接合状態が保持される。
また、この超電導接続構造体では、接続された超電導線材どうしで裏表が一致しているため、超電導接続構造体として良好な取り扱い性を得ることができる。
【0016】
また、この超電導接続構造体は、各超電導線材の各接続端の表面と、各接続用超電導テープとの間に、それぞれ、金属板が介在している場合に、接続用超電導テープによる接合部が金属板によって補強され、より高い接続強度を得ることができる。
金属板が、前記複数の接続用超電導テープの配列と並んで、各接続端の各導電層側表面の双方に亘って接合されている場合には、各接続端が、各接続用超電導テープによって連結されるとともに、金属板によっても連結され、より高い接続強度を得ることができる。
各接続端の各導電層側表面の双方に亘って、各接続用超電導テープを覆うように金属カバーが設けられている場合には、各接続端が、各接続用超電導テープによって連結されるとともに、金属カバーによっても連結され、より高い接続強度を得ることができる。
更に、金属カバーで各接続用超電導テープを覆うとともに、金属カバーの少なくとも両端部を接続端の表面側に接合している構造であると、冷媒による冷却時において、酸化物超電導層及び基材よりも金属カバーの材料の方が熱膨張係数が大きくので、より多く収縮する結果、金属カバーが各接続用超電導テープを超電導線材側に押し付けるので、各接続端の表面に対する各接続用超電導テープの密着性が向上する。これにより、冷媒で冷却して超電導線材に通電する場合の実使用時に、各接続用超電導テープと各超電導線材間のコンタクト抵抗を低くすることができる。
また、本発明の超電導線材の接続方法によれば、以上のような超電導接続構造体を、成膜装置などの特別な装置を用いることなく、簡単な接続作業で接続することができる。このため、接続作業現場であっても、作業に支障なく短時間に各超電導線材を接続することができる。
【0017】
また、本発明の超電導コイル装置によれば、前述の超電導接続構造体を用いるため、超電導線材(コイル線材)間の接続抵抗が低く抑えられ、良好なコイル特性を得ることができる。また、常温と低温の間で温度変化したときにも、各接続用超電導テープの超電導線材への接合状態を保持することができ、低い接続抵抗および高い接続強度を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の超電導接続構造体の第1実施形態を示す概略斜視図。
【図2】図1に示す超電導接続構造体が備える第1の超電導線材および第2の超電導線材を示す概略斜視図。
【図3】本発明の超電導接続構造体の第2実施形態を示す概略斜視図。
【図4】本発明の超電導接続構造体の第3実施形態を示す概略斜視図。
【図5】本発明の超電導接続構造体の第4実施形態を示す概略斜視図。
【図6】本発明の超電導コイル装置の実施形態を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る超電導接続構造体の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の超電導接続構造体の第1実施形態を示す概略斜視図、図2は、図1に示す超電導接続構造体が備える第1の超電導線材および第2の超電導線材を示す概略斜視図である。なお、図1および後述する図3〜5では、説明を簡単にするため、各超電導線材の一部の層を省略して示している。
【0020】
図1に示す超電導接続構造体1Aは、2本の超電導線材(第1の超電導線材2および第2の超電導線材3)と、各超電導線材2、3どうしを電気的および機械的に接続する複数の接続用超電導テープ4とを有している。
第1の超電導線材2および第2の超電導線材3は、それぞれ、各基材11と反対側の表面(後述する各安定化層19の表面)が上側となり、且つ、各接続端21、31の一方の側端面どうしが隣接するように配されており、各接続端21、31の上面(安定化層19の表面)21a、31aに、それぞれ、複数の(図1の形態では3つの)接続用超電導テープ4が接着されている。以下の説明では、第1の超電導線材2の接続端21の上面21aを「第1の接続領域21a」と称し、第2の超電導線材の接続端31の上面31aを「第2の接続領域31a」と称する。
図2に示すように、各超電導線材2、3は、それぞれ、テープ状の基材11の上にベッド層12と中間層15とキャップ層16と酸化物超電導層17とが積層されるとともに、酸化物超電導層17の上に安定化基層18と安定化層(導電層)19が積層され、全体が絶縁性の被覆層20で覆われて概略構成されている。なお、各超電導線材2、3においてベッド層12は略することもできる。また、第1の超電導線材2および第2の超電導線材3の端部側において被覆層20が除去され、被覆層20から引き出された接続端21、31の部分どうしが後述する如く接合されている。
【0021】
本実施形態の各超電導線材2、3に適用できる基材11は、通常の超電導線材の基材として使用でき、高強度であれば良く、長尺のケーブルとするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。例えば、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ等のニッケル合金等の各種金属材料、もしくはこれら各種金属材料上にセラミックスを配したもの、等が挙げられる。各種耐熱性の金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。基材11の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmである。
ベッド層12は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層12は、必要に応じて配され、例えば、イットリア(Y)、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)等から構成される。このベッド層は、例えばスパッタリング法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10〜200nmである。
【0022】
中間層15は、単層構造あるいは複層構造のいずれでも良く、その上に積層される酸化物超電導層17の結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から選択される。中間層15の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、AlO3、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示することができる。
この中間層15をIBAD法により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度15゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層16の結晶配向性を良好な値(例えば結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層16の上に成膜する酸化物超電導層17の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できるようにすることができる。
【0023】
中間層15の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、0.005〜2μmの範囲とすることができる。
中間層15は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する)、化学気相成長法(CVD法)等の物理的蒸着法;熱塗布分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層17やキャップ層の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、下地の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、GdZr、MgO又はZrO−Y(YSZ)からなる中間層15は、IBAD法における結晶配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
【0024】
キャップ層16は、前記中間層15の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層は、前記金属酸化物層からなる中間層15よりも高い面内配向度が得られる。
キャップ層の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層の材質がCeOである場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
【0025】
このCeO層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが望ましい。PLD法によるCeO2層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。
CeO層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましく、500nm以上であれば更に好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、500〜1000nmとすることが好ましい。
【0026】
酸化物超電導層17は公知のもので良く、具体的には、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のものを例示できる。この酸化物超電導層17として、Y123(YBaCu7−X)又はGd123(GdBaCu7−X)などを例示することができる。
酸化物超電導層17は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等の物理的蒸着法;熱塗布分解法(MOD法)等で積層することができ、なかでも生産性の観点から、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)、PLD法又はCVD法を用いることが好ましい。
このMOD法は、金属有機酸塩を塗布後熱分解させるもので、金属成分の有機化合物を均一に溶解した溶液を基材上に塗布した後、これを加熱して熱分解させることにより基材上に薄膜を形成する方法であり、真空プロセスを必要とせず、低コストで高速成膜が可能であるため長尺のテープ状酸化物超電導導体の製造に適している。
【0027】
ここで前述のように、良好な配向性を有するキャップ層16上に酸化物超電導層17を形成すると、このキャップ層16上に積層される酸化物超電導層17もキャップ層16の配向性に整合するように結晶化する。よって前記キャップ層16上に形成された酸化物超電導層17は、結晶配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層17を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、金属基材11の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、金属基材11の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って得られた酸化物超電導層16は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、金属基材2の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流密度が得られる。
【0028】
酸化物超電導層17の上に積層されている安定化基層18はAgなどの良電導性かつ酸化物超電導層17と接触抵抗が低くなじみの良い金属材料からなる層として形成される。
安定化層2は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層17が超電導状態から常電導状態に遷移したときに、安定化基層18とともに、酸化物超電導層17の電流が転流するバイパスとして機能する。
安定化層2を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、Cu等の比較的安価なものを用いるのが好ましい。これにより、材料コストを低く抑えながら安定化層2を厚膜化することが可能となり、事故電流に耐える各超電導線材2、3を安価に得ることができる。
【0029】
図1に示すように、以上のように構成された第1の超電導線材2および第2の超電導線材3においては、各接続端21、31の各安定化層19の表面(第1の接続領域21aおよび第2の接続領域31a)に、複数枚(本実施形態では3枚)の接続用超電導テープ4が接合されている。各接続用超電導テープ4は、各超電導線材2、3どうしを電気的および機械的に接続するものであり、第1の接続領域21と第2の接続領域31との合計幅Wと略同じ長さの帯状をなしている。
各接続用超電導テープ4としては、各超電導線材2、3と同様のものを用いることができる。ここで、各超電導線材2、3と各接続用超電導線材4とは、同じ層構成(設けられる層の種類および構成材料が同じ)であってもよく、異なる層構成であってもよいが、同じ層構成とする方が、各超電導線材2、3の一部を切断して接続用超電導テープ4として用いることができるため、簡便である。本実施形態では、各接続用超電導テープ4として、各超電導線材2、3と同じ層構成のものを用いる場合を例にする。
【0030】
各接続用超電導テープ4は、それぞれ、それらの安定化層19の表面4aが、各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aに対向し、その長さ方向を各接続領域21a、31aの幅方向と略直交するように、各接続領域21a、31aどうしの境界を横切って配されており、互いに間隔Wをあけて並列されている。そして、各接続用超電導テープ4の各安定化層19の表面4aが、ハンダを介して各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aに接合されている。
これにより、第1の超電導線材2と第2の超電導線材3は、各接続用超電導テープ4によって各接続端21、31どうしが連結され、電気的および機械的に接続されている。このように各超電導線材2、3どうしを、接続用超電導テープ4を介して接続することにより、接続抵抗が低く抑えられ、各超電導線材2、3どうしを強固に接続することができる。
【0031】
そして、本実施形態の超電導接続構造体1Aは、複数の接続用超電導テープ4が、互いに間隔Wを空けて設けられている点に特徴がある。これにより、超電導接続構造体1Aが常温と低温の間で温度変化しても、各接続領域21a、31aに対する各接続用超電導テープ4の接合状態が保持され、低い接続抵抗および高い接続強度を維持することができる。
すなわち、超電導接続構造体1Aは、常温から低温、低温から常温への温度変化(常温・低温サイクル)が負荷されることがある。この温度変化に伴って、超電導接続構造体1Aを構成する各部が、それぞれの熱膨張率に応じて負荷がかかることがある。
【0032】
ここで、本発明と異なり、幅広の接続用超電導テープを用いた場合、超電導接続構造体1Aの温度が、常温から低温、低温から常温に変化すると、ハンダやハンダとの接着部に比較的大きな応力が生じる。その結果、幅広の接続用超電導テープを接合しているハンダの一部が剥離し、密着性が損なわれるおそれがある。
これに対して、幅狭の接続用超電導テープ4を複数枚用い、互いに間隔を空けて設けると、超電導接続構造体1Aが常温と低温と間で温度変化しても、各接続用超電導テープの接合材や接合材との接着部に生じる応力を分散できるので、各接続領域21a、31aに対する各接続用超電導テープ4の接合状態を保持し易い。
また、この超電導接続構造体1Aでは、接続された超電導線材2、3どうしで裏表が一致するため、良好な取り扱い性を得ることができる。
【0033】
次に、本発明に係る超電導線材の接続方法の第1実施形態について、図1に示す超電導接続構造体1Aを形成する場合を例にして説明する。
まず、接続対象となる2本の超電導線材(第1の超電導線材2および第2の超電導線材3)と複数枚(本実施形態では3枚)の接続用超電導テープ4を用意する。
次に、各接続領域21a、31aの各接続用超電導テープの接合領域に、ハンダを介して、各接続用超電導テープ4を接着する。
ハンダとしては、特に限定されず、例えば、Pb−Sn系合金ハンダの他、Sn−Ag系合金、Sn−Bi系合金、Sn−Cu系合金、Sn−Zn系合金等の鉛フリーハンダ等が挙げられ、これらのうちから1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、ハンダとしては、融点が300℃以下のものを用いるのが好ましい。これにより、300℃以下の温度でハンダ付けすることが可能となるので、ハンダ付けの熱によって酸化物超電導層17の酸素が抜け、その特性が劣化するのを抑止することができる。
【0034】
このように、本実施形態の超電導線材の接続方法では、2本の超電導線材2、3を、特別な装置を用いることなく、簡単なハンダ付け作業で接続することができる。このため、この超電導線材の接続方法によれば、場所を選ぶことなく、無理なく短時間に各超電導線材2、3を接続することができる。なお、ハンダについては、メッキ法により接続用超電導テープ4の安定化層19の表面に予め形成しておいたものを加熱圧着するなどの方法を採用することができる。
【0035】
次に、本発明の超電導接続構造体および超電導線材の接続方法の各第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の超電導接続構造体の第2実施形態を示す概略斜視図である。
以下、第2実施形態に係る超電導接続構造体および超電導線材の接続方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる超電導接続構造体1Bは、各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aと、各接続用超電導テープ4との間に、それぞれ、金属板5が介在されている以外は、前記第1実施形態の超電導接続構造体1Aと同様の構成とされている。
【0036】
各金属板5は、それぞれ、その上方に設けられた各接続用超電導テープ4と同じ平面形状をなしており、各接続領域21a、31aに、第1のハンダを介し接合されている。
また、各接続用超電導テープ4は、それぞれ、各金属板5の各接続領域21a、31a側と反対側の表面に、その安定化層19側の表面4aを対向させ、第1のハンダよりも融点の低い第2のハンダを介し接合されている。
【0037】
この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、第2実施形態の超電導接続構造体1Bでは、特に、各接続領域21a、31aと各接続用超電導テープ4との間に、それぞれ、各金属板5が介在されていることにより、各接続用超電導テープ4が各金属板5によって補強され、より高い接続強度を得ることができる。
各金属板5の構成材料としては、機械的強度に優れるとともに、良導電性を有するものであるのが好ましい。各金属板5の構成材料としては、銀や銅が好適である。
【0038】
次に、本発明の超電導線材の接続方法の第2実施形態について、図3に示す超電導接続構造体1Bを形成する場合を例にして説明する。
まず、接続対象となる2本の超電導線材(第1の超電導線材2および第2の超電導線材3)と、複数枚(本実施形態では3枚)の接続用超電導テープ4と、各接続用超電導テープ4と同じ枚数の金属板5を用意する。
そして、各超電導線材2、3を、安定化層19側の表面(各接続領域21a、31a)が上方となり、各接続端部21、31の側端面が隣接するように設置した後、各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aの各金属板接合領域に、第1のハンダを介して、各金属板5をハンダ付けする。
次に、各金属板5上に、第1のハンダよりも融点の低い第2のハンダを介して、各接続用超電導テープ4をハンダ付けする。
ここで、各接続用超電導テープ4を接着するハンダとして、第1のハンダよりも融点の低い第2のハンダを用いることにより、各金属板5の接着工程よりも低い温度で各接続用超電導テープ4のハンダ付けを行うことができる。これにより、この工程で、第1のハンダが溶融して金属板5が位置ズレするのを抑えることができ、各金属板4および各接続用超電導テープ4を位置精度よく接着することができる。
以上の工程により、図3に示す超電導接続構造体1Bを形成することができる。
【0039】
次に、本発明の超電導接続構造体および超電導線材の接続方法の各第3実施形態について説明する。
図4は、本発明の超電導接続構造体の第3実施形態を示す概略斜視図である。
以下、第3実施形態にかかる超電導接続構造体および超電導線材の接続方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0040】
本実施形態にかかる超電導接続構造体1Cは、各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aに、接続用超電導テープ4の配列と並んで、金属板6が配設されている以外は、前記第1実施形態の超電導接続構造体1Aと同様の構成とされている。
金属板6は、各超電導線材2、3の第1の接続領域21aと第2の接続領域31aとの合計幅Wと略同じ長さの帯状をなしている。
金属板6は、その長さ方向が各接続領域21a、31aの幅方向と略直交するように、各接続領域21a、31aどうしの境界を横切って配されており、最前列の接続用超電導テープ4の前方に、該接続用超電導テープ4と間隔を空けて配されている。そして、この金属板6は、ハンダを介して各接続領域21a、31aに接合されている。
【0041】
この第3実施形態においても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、第3実施形態の超電導接続構造体1Cでは、特に、各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aに、接続用超電導テープ4の配列と並んで、金属板6が配設されていることにより、各超電導線材2、3の各接続端21、31が、各接続用超電導テープ4によって連結されるとともに、この金属板6によっても連結される。したがって、より高い接続強度を得ることができる。
また、このように接続端21、31の表面に、各接続用超電導テープ4と金属板6を並べる構成では、金属板の上に接続用超電導テープ4を重ねる構成に比べて各接続端21、31の厚さを薄くできるという効果も得られる。
【0042】
次に、本発明の超電導接続構造体および超電導線材の接続方法の各第4実施形態について説明する。
図5は、本発明の超電導接続構造体の第4実施形態を示す概略斜視図である。
以下、第4実施形態にかかる超電導接続構造体および超電導線材の接続方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0043】
本実施形態にかかる超電導接続構造体1Dは、各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aの双方に亘って、各接続用超電導テープ4を覆うように金属カバー7が設けられている以外は、前記第1実施形態の超電導接続構造体1Aと同様の構成とされている。
金属カバー7は、その中央領域が撓んだ帯状をなし、各超電導線材2、3の第1の接続領域2と第2の接続領域3の合計幅Wと略同一の幅と、接続用超電導テープ4の配列長より長い長さを有している。
この金属カバー7は、凹側の表面を各接続領域21a、31aに対峙させ、その長手方向が各超電導線材2、3の長手方向と略一致するように、各接続用超電導テープ4を覆うように配され、各接続領域21a、31aおよび各接続用超電導テープ4の上に、ハンダを介して接合されている。
【0044】
この第4実施形態においても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、第4実施形態の超電導接続構造体1Dでは、特に、各接続領域21a、31aに、各接続用超電導テープ4を覆うように金属カバー7が設けられていることにより、各超電導線材2、3の各接続端21、31が、各接続用超電導テープ4によって連結されるとともに、この金属カバー7によっても連結される。また、各接続用超電導テープ4が金属カバー7によって補強される。したがって、さらに高い接続強度を得ることができる。
【0045】
金属カバーの構成材料としては、機械的強度に優れるとともに、良導電性を有するものであるのが好ましい。金属板7が良導電性を有することにより、超電導線材2、3の超電導層が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたとき、該金属カバー7が、超電導線材2、3の電流を転流するバイパスとして機能する。これにより、超電導線材2、3の接合部分及び各接続用超電導テープ4の部分において発熱することを防止できる。このような点から、金属板カバー7の構成材料としては、良電導性の銀や銅が好適である。
【0046】
また、金属カバー7は銅や銀などの良導電性の金属材料からなり、各超電導線材2、3の酸化物超電導層17を構成するセラミックス、基材11を構成するハステロイ等の耐熱合金あるいは希土類系の酸化物超電導材料よりも熱膨張率が大きいため、超電導接続構造体1Dが冷媒により冷却されたとき、各超電導線材2、3よりも大きく収縮しようとする。その結果、金属カバー7は、長手方向の両側から引っ張られた状態で縮小することになり、各接続用超電導テープ4に対しては、これらを各接続領域21a、31a側に押し付けるように押圧力が作用する。これにより、各接続用超電導テープ4と各接続領域21a、31aとの密着性を高くすることができる。
【0047】
図5に示す超電導接続構造体1Dを形成するには、図1に示す構造を作製した後、各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aに、各接続用超電導テープ4を覆うように、ハンダを介して、金属カバー7を接続端21、31の表面にハンダ付けすれば良い。
ここで、各接続用超電導テープ4が互いに間隔を空けて設けられていることにより、各接続用超電導テープ4どうしの間にもハンダを充填することができる。その結果、各接続用超電導テープ4上に、金属カバー7を均一かつより強固に接着することができる。
以上の工程により、図5に示す超電導接続構造体1Dを形成できる。
このように、本実施形態の超電導線材の接続方法では、2本の超電導線材2、3を、特別な装置を用いることなく、簡単な接続作業で接続することができる。このため、この超電導線材の接続方法によれば、作業場所を選ぶことなく、無理なく短時間に各超電導線材2、3を接続することができる。
【0048】
次に、本発明に係る超電導コイル装置の一実施形態について説明する。
図6は、本発明の超電導コイル装置の一実施形態を示すものであり、図6(a)は概略斜視図、図6(b)は側面図である。
この超電導コイル装置100は、第1の超電導線材2によって構成された第1の超電導コイル101と、第2の超電導線材3によって構成された第2の超電導コイル102と、各超電導線材2、3どうしを接続する複数枚(本実施形態では3枚)の接続用超電導テープ4を有している。
各超電導線材2、3および各接続用超電導テープ4としては、前記第1実施形態と同様のものを用いることができる。
第1の超電導コイル101は、第1の超電導線材2が、安定化層19の表面を外側にして、左回りに多数回巻回されて構成されている。
また、第2の超電導コイル102は、第1の超電導コイル101の上方に重ねられ、第2の超電導線材3が、安定化層19の表面を外側にして右回りに多数回巻回されて構成されている。
そして、第1の超電導線材2および第2の超電導線材3の外側の各端部(接続端21、31)は、側端面どうしが隣接するように配されており、各接続端21、31の外側面に、複数の接続用超電導テープ4が接着されている。
以下の説明では、第1の超電導線材2の接続端21の外側面を「第1の接続領域21a」と言い、第2の超電導線材3の接続端31の外側面を「第2の接続領域31a」と言う。
【0049】
各接続用超電導テープ4は、それぞれ、その安定化層19の表面4aが、各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aに対向し、その長さ方向が各接続領域21a、31aの幅方向と略直交するように、各接続領域21a、31aどうしの境界を横切って配されており、互いに間隔Wを空けて並列されている。そして、各接続用超電導テープ4の各安定化層19の表面が、ハンダを介して各超電導線材2、3の各接続領域21a、31aに接合されている。すなわち、各接続用超電導テープ4は、互いに間隔Wを空けて配列するように、それぞれ、その安定化層19の表面4aが、各接続領域21a、31aの双方に亘って接合されている。
これにより、第1の超電導線材2(第1の超電導コイル101)と第2の超電導線材3(第2の超電導コイル102)とは、各接続用超電導テープ4によって各接続端21、31どうしが連結され、電気的および機械的に接続される。このように各超電導線材2、3どうしを、各接続用超電導テープ4を介して接続することにより、接続抵抗が低く抑えられ、良好なコイル特性を得ることができる。また、各超電導線材2、3どうしが強固に連結され、優れた接続強度を得ることができる。
【0050】
以上、本発明の超電導接続構造体および超電導線材の接続方法、超電導コイル装置について説明したが、各実施形態において、超電導接続構造体の各部、超電導線材の接続方法の各工程、超電導コイル装置を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、第4実施形態の超電導コイル装置では、第1実施形態の超電導接続構造体を用いているが、本発明の超電導コイル装置としては、第2実施形態〜第3実施形態の超電導接続構造体を用いたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば超電導モータ、限流器など、各種電力機器に用いられる超電導接続構造体に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1A、1B、1C、1D…超電導接続構造体、2…第1の超電導線材、21…接続端、21a…第1の接続領域、3…第2の超電導線材、31…接続端、31a…第2の接続領域、4…接続用超電導テープ、5、6…金属板、7…金属カバー、11…基材、12…ベッド層、15…中間層、16…キャップ層、17…酸化物超電導層、18…安定化基層、19…安定化層、100…超電導コイル装置、101…第1の超電導コイル、102…第2の超電導コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備え、その端部が接続端とされた少なくとも2本の超電導線材と、
基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備え、前記各超電導線材の各接続端どうしを接続する複数の接続用超電導テープとを有し、
前記各超電導線材は、互いに、前記各導電層側の表面が同じ側となり、且つ、前記各接続端の側端面どうしが隣接するように配されており、
前記各接続用超電導テープは、互いに間隔を空けて配列するように、それぞれ、その導電層側の表面を前記各接続端の前記各導電層側の表面の双方に亘って接合されていることを特徴とする超電導接続構造体。
【請求項2】
前記各接続端と、前記各接続用超電導テープとの間に、それぞれ、金属板が介在しており、
前記各金属板は、前記各接続端の前記導電層側の表面と、前記接続用超電導テープの前記導電層側の表面に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導接続構造体。
【請求項3】
金属板が、前記接続用超電導テープの配列と並んで、前記各接続端の前記各導電層側の表面の双方に亘って接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導接続構造体。
【請求項4】
前記接続端の長さ方向に並ぶ各接続用超電導テープを覆うとともに、前記各接続端の導電層側表面の双方に亘って、少なくとも両端部を各接続端の導電層表面に接合した金属カバーが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超電導接続構造体。
【請求項5】
基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備える少なくとも2本の超電導線材を、前記各導電層側の表面が同じ側となり、且つ、前記各接続端の側端面どうしが隣接するように配置する工程と、
基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備える複数の接続用超電導テープを用意し、前記各接続用超電導テープを、互いに間隔を空けて配列させ、それぞれ、その導電層側の表面を、前記各接続端の各導電層側表面の双方に亘って、ハンダを介して接合する工程とを有することを特徴とする超電導線材の接続方法。
【請求項6】
基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備える少なくとも2本の超電導線材を、前記各導電層側の表面が同じ側となり、且つ、前記各接続端の側端面どうしが隣接するように配置する工程と、
複数の金属板を、互いに間隔を空けて配列させ、それぞれ、その導電層側の表面を、前記各接続端の前記各導電層側表面の双方に亘って、第1のハンダを介して接合する工程と、
基材と、該基材上に設けられた超電導層と、該超電導層上に設けられた導電層とを備える複数の接続用超電導テープを用意し、各接続用超電導テープの導電層側の表面を、前記各金属板の表面に、第2のハンダを介して接合する工程とを有することを特徴とする超電導線材の接続方法。
【請求項7】
前記第2のハンダは、前記第1のハンダよりも融点が低いことを特徴とする請求項6に記載の超電導線材の接続方法。
【請求項8】
導電層側の表面を外側にして巻回された超電導線材の巻回体からなる少なくとも2つの超電導コイルを有し、各超電導線材が、各接続端が接続されて超電導接続構造体を構成している超電導コイル装置であって、
前記超電導接続構造体は、前記請求項1〜4のいずれかに記載の超電導接続構造体であることを特徴とする超電導コイル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−134610(P2011−134610A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293416(P2009−293416)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】