説明

超音波センサ

【課題】超音波の受波のみを行う圧電素子が収容された収容部の振動を抑制し、より超音波の指向性を安定させるとともに、残響特性を良化することができる超音波センサを提供すること。
【解決手段】圧電素子26aは、送波する超音波の中心周波数が72kHzタイプのものであって、その周波数が設定されている場合における振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が、2:1となるように、振動ケースの高さ及び連結部23を設定した。これにより、収容部21bの振動を抑制し、より超音波の指向性を安定させるとともに、残響特性を良化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用障害物検知装置などに用いられる超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波センサを車両前方又は後方のバンパーに支持するとともに、この超音波センサから所定の超音波パルス信号を送信し、物体からの反射波を受波することにより、前方又は後方に存在する障害物を検知する車両用障害物検知装置が知られている。このような車両用障害物検知装置に用いられる超音波センサには、例えば、特許文献1のような構造のものがある。
【0003】
特許文献1の超音波センサ40は、図9に示すように、1つの金属製の振動ケース50に、有底円筒状の2つの収容部51a,51bが離間して凹設されており、2つの収容部51a,51bは、連結部(平板部)52によって連結されている。なお、特許文献1の超音波センサ40において、連結部52の厚みは、振動ケース50の高さよりもはるかに短く形成されている(例えば、振動ケース50の高さ:連結部52の厚み=10:1)。そして、各収容部51a,51bには、超音波を送受波する圧電素子53a,53bがそれぞれ収容されており、圧電素子53aが超音波の送受波を行う一方で、圧電素子53bが超音波の受波のみを行うようになっている。そして、圧電素子53aが超音波を受波するまでの時間と、圧電素子53bが超音波を受波するまでの時間との差から、障害物が存在する方向や位置を検知することができるようになっている。
【特許文献1】特開2004−253911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、デザイン性や見た目上の問題などから、超音波センサを小型化することが考えられている。そこで、特許文献1の超音波センサ40を、連結部52の厚みや、振動ケース50の高さなどにおける比率関係を利用し、同じ比率関係のままで超音波センサ40自体を小型化することも考えられる。しかしながら、そのまま、特許文献1の超音波センサ40の小型化を図ると、小型化する前と後では、超音波の指向性や残響波の長さが変わってしまう虞があった。
【0005】
そして、超音波センサには、超音波の指向性の形状が、検知エリアにそのまま反映するという特性や、残響波が長くなってしまうと、反射波が残響波と重なってしまい、その結果として近くの障害物を検知し難くなるという特性がある。これらの現象は、圧電素子53aを収容する収容部51aの振動が、圧電素子53bを収容する収容部51bに伝播することによって起こるようになっている。しかしながら、超音波センサがどのような大きさ又は形状であっても、超音波の指向性を安定させるとともに、残響波が長くなってしまうことを抑制しなければならない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波の受波のみを行う圧電素子が収容された収容部の振動を抑制し、より超音波の指向性を安定させるとともに、残響特性を良化することのできる超音波センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、超音波が出射及び入射する入出射面を有し、該入出射面の反対側に底面を有する複数個の収容部が並設された振動ケースと、前記複数個の収容部を連結する連結部と、前記収容部の底面に配設された複数個の圧電素子と、を備え、前記圧電素子のうち少なくとも1つは超音波を送波するために用いられる送波用の圧電素子であって、圧電素子のうち少なくとも2つは超音波を受波するために用いられる受波用の圧電素子である超音波センサにおいて、前記圧電素子は、送波する超音波の中心周波数が72kHzタイプのものであって、その周波数が設定されている場合における前記振動ケースの高さと前記連結部の厚みとの比を、2:1〜3:1の範囲に設定したことを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、超音波の受波のみを行う圧電素子が収容された収容部の振動を抑制し、より超音波の指向性を安定させるとともに、残響特性を良化することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波センサおいて、前記連結部は、樹脂形成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超音波センサにおいて、前記連結部は、ゴム材で形成されていることを要旨とする。
請求項2及び請求項3に記載の発明によれば、2つの振動ケースを並べるだけで、樹脂やゴム材のような比較的コストのかからない部材によって2つの振動ケースを連結させることができるので、超音波センサの製造にかかるコストを削減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超音波の受波のみを行う圧電素子が収容された収容部の振動を抑制し、より超音波の指向性を安定させるとともに、残響特性を良化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を車両用障害物検知装置に用いられる超音波センサに具体化した第1の実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の超音波センサ10を構成するハウジング11は、水平方向への断面視が略楕円状をなしている(図2参照)。ハウジング11には、圧電素子26a,26bを収容するための複数個(本実施形態では2個)の収容部21a,21bを長手方向に並べて凹設した金属製の振動ケース20が、ハウジング11の開口部側から挿入されている。
【0012】
振動ケース20には、各収容部21a,21bと同一方向に開口する仕切り凹部22が、収容部21aと収容部21bの間を仕切るように形成されている。仕切り凹部22の深さは、各収容部21a,21bの深さよりも浅く、本実施形態では振動ケース20の高さの半分の長さに相当する深さで形成されている。そして、振動ケース20において、仕切り凹部22の底面に対応する部位は、収容部21a,21bを連結する連結部23とされている。なお、本実施形態において、連結部23の厚みは、仕切り凹部22の深さと同一長さであって、振動ケース20の高さの半分の長さに相当する厚みで形成されている。また、連結部23は、収容部21a,21bの凹設によって収容部21a,21bよりも底側に形成された残部23a,23bと連結している。本実施形態における振動ケース20は、1つの収容部が形成された振動ケースが、2つ連結されることで形成されているのではなく、1つの振動ケース20に2つの収容部21a,21bが凹設されることで構成されている。なお、連結部23の厚みは、振動ケース20の高さの約半分となっており、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比は、2:1となっている。
【0013】
なお、連結部23、及び残部23a,23bの裏面には、振動ケース20の長手方向に離間されて突設された2個の筒状部24が形成されており、筒状部24の内部が収容部21a,21bとなるとともに、筒状部24に挟まれた部位が仕切り凹部22となっている。
【0014】
また、各収容部21a,21bの底面25には、超音波を送受波する円盤状の圧電素子26a,26bがそれぞれ配設されている。詳しくは、収容部21aに圧電素子26aが配設されているとともに、収容部21bに圧電素子26bが配設されている。そして、圧電素子26a,26bの一方の電極は、各収容部21a,21bの底面25に接触して振動ケース20とリード線Rとを介して引き出され、他方の電極は、リード線Rを介して引き出され、それぞれ圧電素子26a,26bの出力を解析するための外部の回路に接続され、超音波の受波に用いられる。また、一方の圧電素子26aは、超音波を発生させるための駆動回路にも接続されており、超音波の送波に用いられる。つまり、各圧電素子26a,26bは、超音波を受波するために用いられる受波用の圧電素子であって、さらに、駆動回路に接続された圧電素子26aは、超音波を送波するために用いられる送波用の圧電素子も兼ねている。そして、圧電素子26a,26bが送受波する超音波は、残部23a,23bに形成された底面25の反対側に位置する入出射面27で入射及び出射される。さらに、各収容部21a,21bには、残響を抑制するための緩衝充填材28がそれぞれ充填されている。
【0015】
そして、振動ケース20は、ハウジング11の開口から入出射面27を露出させる形でハウジング11に収容されている。その一方で、振動ケース20の開口部側は、ハウジング11の底面と対向するようにハウジング11に収容されている。
【0016】
また、ハウジング11と振動ケース20との間には、圧電素子26aが送波する超音波に対する吸音率が、振動ケース20の材料よりも高い弾性材料(例えば、合成ゴム)からなる保持体30が設けられている。保持体30には、保持凹部31が長手方向に2つ並設されている。保持体30の外周の寸法はハウジング11の内周と同程度に形成され、保持凹部31の内周の寸法は、振動ケース20の筒状部24の外周の寸法と同程度に形成されている。そして、振動ケース20の各筒状部24が、それぞれ保持凹部31に圧入されるとともに、保持体30がハウジング11に圧入されることにより、振動ケース20がハウジング11に保持されることになる。したがって、本実施形態における超音波センサ10では、図2に示すように、外側から順に、ハウジング11、保持体30、振動ケース20、緩衝充填材28、圧電素子26a(圧電素子26b)の順に配置されている。
【0017】
次に、超音波センサ10による障害物の検知方法について図3に従って説明する。
本実施形態の超音波センサ10は、超音波を検知範囲に送波するとともに、障害物で反射された反射波を受波することによって障害物の存在を検知する。そして、反射波を受波する2つの圧電素子26a,26bの出力を比較することによって障害物の方向を検知することができる。詳述すると、圧電素子26aが検知範囲に向かって超音波パルスを間欠的に送波し、検知範囲に存在する障害物Pに反射された反射波を、圧電素子26a,26bが、それぞれ受波し、超音波を送波してから反射波を受波するまでの時間によって障害物Pまでの相対距離Lを検知することができる。そして、圧電素子26aが超音波を受波するまでの時間と、圧電素子26bが超音波を受波するまでの時間との差から、圧電素子26a,26bが並ぶ方向に沿った直線を法線Hとする平面に対して超音波センサ10と障害物Pとを結ぶ直線Fがなす角度θを検知することができる。そして、角度θに基づいて、障害物Pの方向を検知することができる。
【0018】
そして、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が、2:1となっている超音波センサ10によれば、図4〜図7に示すような試験結果を得ることができた。
図4は、本実施形態における超音波センサ10の受波の波形を示す。なお、図4では、圧電素子26aにおける出力信号波形を「送受波側」と示し、圧電素子26bにおける出力信号波形を「受波側」と示す。
【0019】
障害物Pが、圧電素子26bに近い側に存在する場合(図3参照)、図4に示すように、圧電素子26aよりも圧電素子26bが先に反射波を受波することになる。即ち、圧電素子26bは、圧電素子26aから超音波が送波された送波開始時刻T0から受波時間t1経過後に反射波C1を受波する。受波時間t1は、圧電素子26aから超音波が送波されてから障害物Pに反射して圧電素子26bに入射するまでの時間である。圧電素子26aは、圧電素子26bが反射波C1を受波してから受波時間差t2経過後に反射波C2を受波する。なお、反射波と同時に圧電素子26a及び圧電素子26bには、残響波B1,B2が受波される。そして、超音波を送波してから反射波を受波するまでの時間t1,t2によって障害物Pまでの相対距離Lや障害物Pの方向を検知することができる。
【0020】
なお、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が、略10:1のような超音波センサでは、送受波用の圧電素子を収容した収容部の振動が、受波用の圧電素子を収容した収容部に伝播し、その影響を受けて残響波が長くなってしまい、反射波が残響波に重なる虞がある。
【0021】
一方、図4の結果からも明らかなように、本実施形態の超音波センサ10では、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比を2:1とすることで、収容部21aの振動が収容部21bに伝播し難くなり、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が略10:1の超音波センサよりも、残響波を短縮することができた。
【0022】
つまり、本実施形態の超音波センサ10では、連結部23自体もある程度の厚みを持っているので、図4の結果から、収容部21aの振動が、収容部21bに伝播し難くなり、その結果、残響波B1,B2も短縮されたということが分かる。このことにより、本実施形態の超音波センサ10では、残響波が短縮される(残響特性が良化される)ことによって、残響波と反射波が重なり難くなり、正確な検知範囲を与えることができる。
【0023】
図5(a)は、本実施形態の超音波センサ10で送波される超音波の指向性ビーム形状を示す一方で、図5(b)は、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が略10:1の超音波センサで送波される超音波の指向性ビーム形状を示す。
【0024】
図5(b)の結果からも明らかなように、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が略10:1のような超音波センサでは、超音波の指向性ビーム形状が脈動してしまい、超音波センサ10の検知エリアに歪みが生じてしまっていた。
【0025】
一方、図5(a)の結果からも明らかなように、本実施形態の超音波センサ10では、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比を、2:1とすることで、収容部21aの振動が収容部21bに伝播し難くなり、超音波の指向性ビーム形状の脈動が抑制された。
【0026】
超音波センサには、超音波の指向性の形状が、検知エリアにそのまま反映するという特性があるので、図5(a),(b)の結果より、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比を2:1とすることで、超音波の指向性ビーム形状の脈動が抑制され、それによって超音波センサ10の検知エリアを安定化することができるということが分かる。また、収容部21aの振動が収容部21bに伝播しにくくなることで、超音波を送波するために必要な振動エネルギーが減少してしまうことを抑制することができるということが分かる。すなわち、連結部23に厚みを持たせることで、今まで、収容部21bに伝播していた分の振動エネルギーが、収容部21bに伝播しにくくなるので、超音波を送波するために必要な振動エネルギーに加算されることになる。また、収容部21aの振動量の低減による超音波センサ10の感度低下も抑制することができるということが分かる。
【0027】
図6は、本願発明の超音波センサ10における振動の分布と、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が略10:1の超音波センサにおける振動の分布を示している。なお、図6に示す横軸は、振動ケース20の位置を示しており、縦軸は、振動量を示している。また、横軸において「0」と示す値は、振動ケース20の中心を示しており、中心線を挟んでグラフの右側が、収容部21a(送受波)における振動を示す一方で、グラフの左側が、収容部21b(受波)における振動を示している。
【0028】
図6の結果から、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が略10:1の超音波センサでは、送受波用の収容部の振動が、受波用の収容部に伝播しやすくなっていることにより、受波用の収容部においても振動が発生したことが分かる。一方、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比を2:1とした本実施形態の超音波センサ10では、収容部21bでの振動が抑えられるとともに、収容部21aの振動が、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が略10:1の超音波センサにおける振動よりも増大したことが分かる。
【0029】
図6の結果から、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比を2:1とすることで、収容部21bでの振動が抑えられ、超音波を送波するために必要な振動エネルギーの減少を抑制することができるということが分かる。また、収容部21aの振動量の低減による超音波センサ10の感度が低下することも抑制できるということが分かる。
【0030】
図7は、振動ケース20の高さ及び連結部23の厚みとの比と、収容部21bの振動量との相関を示している。なお、図7に示す横軸は、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比を示しており、縦軸は、振動量(μm)を示している。なお、本実施形態の超音波センサ10では、圧電素子26aの周波数帯域は、60〜80kHzであって、詳しくは67〜77kHzが好ましく、より最適な値は72kHzである。
【0031】
図7の結果から明らかなように、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が3:1よりも大きい場合、つまり、振動ケース20の高さが連結部23の厚みよりもはるかに長い場合、連結部23の振動量は0.05(μm)よりも大きくなりがちである。しかし、振動ケース20の高さ:連結部23の厚み=2:1〜3:1の範囲内では、連結部23はほとんど振動しない。また、振動ケース20の高さ:連結部23の厚みとの比が2:1よりも小さい場合、つまり、振動ケース20の高さが連結部23の厚みと略同じ高さ、又は振動ケース20の高さよりも連結部23の厚みの方が長い場合であっても、連結部23はほとんど振動しない。
【0032】
一方、収容部21bでは、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が3:1よりも大きい場合、つまり、振動ケース20の高さが連結部23の厚みよりもはるかに長い場合、収容部21bの振動量は0.05(μm)よりも大きくなる。そして、振動ケース20の高さ:連結部23の厚み=2:1〜3:1の範囲内では、収容部21bの振動量が0.05(μm)以下となる。また、振動ケース20の高さ:連結部23の厚み<2:1の場合、つまり、振動ケース20の高さと連結部23の厚みに差がなくなってくると、徐々に、収容部21bの振動量が増加する。そして、振動ケース20の高さ:連結部23の厚み<2:1であって、ある一定の比率に近づくと、徐々に、収容部21bの振動量が減少するが、0.05(μm)以下になることはない。
【0033】
つまり、図7の結果から、圧電素子26aが送波する超音波の中心周波数が72kHzタイプのものである本実施形態の超音波センサ10では、振動ケース20の高さ:連結部23の厚み=2:1〜3:1の範囲において、連結部23及び収容部21bの振幅量を0.05(μm)以下に抑えることができたというと極めて良好な結果を示すことがわかった。
【0034】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)圧電素子26aが送波する超音波の中心周波数が72kHzタイプのものであって、その周波数が設定されている場合における振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が2:1となるように、振動ケース20の高さ、及び連結部23の厚みを設定するようにした。このことにより、収容部21bの振動を抑制し、より超音波の指向性を安定させるとともに、残響特性を良化することができる。
【0035】
(2)また、連結部23自体がある程度の厚みを持つことで、連結部23が振動しにくくなり、超音波の指向性ビーム形状が脈動し、超音波センサ10の検知エリアに歪みが生じてしまうことを抑制することができる。
【0036】
(3)また、収容部21aの振動を収容部21bに伝播しにくくすることで、超音波の送波に必要な振動エネルギーが減少してしまうことを抑制し、収容部21aの振動量の低減による超音波センサ10の感度が低下することも抑制することができる。
【0037】
(4)収容部21aの振動が、収容部21bに伝播しにくくなって残響波が短縮されることにより、残響波と反射波が重なり難くなることで、正確な検知範囲を与えることができる。
【0038】
(5)振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が2:1となるように、振動ケース20の高さ及び連結部23の厚みを設定するだけで、収容部21bの振動を抑制するための別部材(例えば、ゴム材)を、収容部21aと収容部21bとの間に新たに設けたりすることなく、収容部21bの振動を抑制することができる。
【0039】
(6)振動ケース20において、圧電素子26aが収容された収容部21aと圧電素子26bが収容された収容部21bとの間に仕切り凹部22が設けられるようにした。このことにより、それぞれ1個の収容部が設けられた複数の振動ケースを用いる場合に比べて見栄えが良くなる上に、部品点数が減少するので、コストを低減することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明を車両用障害物検知装置に用いられる超音波センサに具体化した第2の実施形態を図8にしたがって説明する。以下に説明する実施形態では、既に説明した実施形態と同様の構成については同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0041】
本実施形態では、1つの振動ケースに2つの収容部が離間して凹設されているのではなく、収容部21a又は収容部21bが1つだけ形成された有底円筒状の振動ケース20が、水平方向に2つ並設されている。そして、各振動ケース20における収容部21(21a,21b)の底面には、超音波の送受波を行う圧電素子26a、及び超音波の受波のみを行う圧電素子26bが、それぞれ配設されている。そして、水平方向に並設された2つの振動ケースは、樹脂形成された連結部23によって連結されている。
【0042】
なお、本実施形態においても、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が2:1となっており、本実施形態の超音波センサ10でも図4〜図7に示したような実験結果が得られる。
【0043】
本実施形態によれば、第1の実施形態に記載の効果(1)〜(6)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(7)連結部23を樹脂形成したことにより、2つの振動ケース20を水平方向に並設するだけで、樹脂のような比較的コストのかからない部材によって2つの振動ケース20を連結させることができるので、超音波センサ10の製造にかかるコストを削減することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第2の実施形態において、連結部23を、例えば、合成ゴム、天然ゴムのようなゴム材や、コイルバネなどのような弾性材料で構成しても良い。
【0045】
○ 各実施形態において、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が3:1となるように、振動ケース20の高さ及び連結部23の厚みを設定しても良い。また、振動ケース20の高さと連結部23の厚みとの比が、2:1〜3:1の範囲内となるように、振動ケース20の高さ及び連結部23の厚みを設定しても良い。
【0046】
○ 各実施形態において、収容部21a,21bを、振動ケース20の凹設によって形成したが、収容部21a,21bを、振動ケース20を貫通するように形成し、底面25を別部材で形成して、底面25によって蓋をするように設置しても良い。
【0047】
○ 各実施形態において、振動ケース20に3個以上の収容部を形成し、各収容部に圧電素子を収容しても良い。すなわち、超音波センサが備える圧電素子の個数を3個以上としても良い。
【0048】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記振動ケースの入出射面の反対面には、送波用の圧電素子が収容される収容部と受波用の圧電素子が収容される収容部との間を仕切る仕切り凹部が設けられており、前記連結部は、前記入出射面と前記仕切り凹部の底面との間に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の超音波センサ。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態における超音波センサを示す使用形態における水平方向への断面図。
【図2】第1の実施形態における超音波センサを示すA−A線断面図。
【図3】超音波センサが障害物を検知する原理を示す模式図。
【図4】第1の実施形態における超音波センサの受波波形を示す模式図。
【図5】(a)は、第1の実施形態の超音波センサにおける超音波の指向性ビーム形状を示すグラフ、(b)は、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が略10:1の超音波センサにおける超音波の指向性ビーム形状を示すグラフ。
【図6】第1の実施形態における超音波センサにおける振動の分布と、振動ケースの高さと連結部の厚みとの比が略10:1の超音波センサにおける振動の分布を示すグラフ。
【図7】振動ケースの高さ及び連結部の厚みとの比と、受波用の収容部の振動量との相関を示すグラフ。
【図8】変更例として連結部が樹脂形成された超音波センサを示す断面図。
【図9】従来の超音波センサを示す断面図。
【符号の説明】
【0050】
B1,B2…残響波、C1,C2…反射波、10…超音波センサ、20…振動ケース、21a,21b…収容部、23…連結部、25…底面(収容部)、26a,26b…圧電素子、27…入出射面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波が出射及び入射する入出射面を有し、該入出射面の反対側に底面を有する複数個の収容部が並設された振動ケースと、
前記複数個の収容部を連結する連結部と、
前記収容部の底面に配設された複数個の圧電素子と、を備え、
前記圧電素子のうち少なくとも1つは超音波を送波するために用いられる送波用の圧電素子であって、圧電素子のうち少なくとも2つは超音波を受波するために用いられる受波用の圧電素子である超音波センサにおいて、
前記圧電素子は、送波する超音波の中心周波数が72kHzタイプのものであって、その周波数が設定されている場合における前記振動ケースの高さと前記連結部の厚みとの比を、2:1〜3:1の範囲に設定したことを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記連結部は、樹脂形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記連結部は、ゴム材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−32328(P2010−32328A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194054(P2008−194054)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】