説明

超音波噴霧器を使用して接着促進剤組成物を適用する方法

本発明は、少なくとも1つの基材表面に接着促進剤組成物を適用するための超音波噴霧器の使用、および少なくとも2つの基材を接着もしくはシーリングするための方法であって、接着またはシーリング前に、超音波噴霧器を使用して、接着促進剤組成物が少なくとも1つの基材に適用される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解可能な液体、とりわけ、接着促進剤組成物を表面に適用するための適用技術の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
接着促進剤組成物などの加水分解可能な液体は、従来から接着、とりわけ、接着剤およびシーリング剤の接着を改善するために使用されている。特にシラン化合物およびチタネート化合物は、その様な接着促進剤組成物として従来から知られている。これらの接着促進剤組成物は、接着剤による結合またはシーリングを実施する表面の前処理のためのプライマーまたは接着促進剤として使用されている。
【0003】
これらの加水分解可能な液体の表面への適用は、たとえば、スプレー、塗布、またはローリング工程によって達成される。しかしながら、すべての既知の方法は、適用量の測定が困難であるという問題にさらされている。かくして、ブラシ、布、フェルト、またはスポンジによって適用を実施する際は、ある場合には、第二の工程において、過剰に計測するのを避けるために別の布、フェルト、またはスポンジを用いて適用量の一部をふき取る必要があり、これには時間がかかり、かつ、費用がかかる。さらに、布、フェルト、またはスポンジを用いるプライマーなどの比較的高粘度の接着促進剤組成物の適用は、粗い表面の場合には、この適用方法を用いては、プライマーが全ての孔に浸透できず、表面全体を濡らすことができないため、滑らかな表面にのみ実用的なものである。そのため、プライマーを用いて事前処理した物品の表面に適用する接着剤またはシーリング剤は、すべての点において均等に良好に接着しない。
【0004】
スプレー方法の場合には、オーバースプレー、つまり、スプレーの過程において、被覆する領域の範囲を正確に区切ることができず、加水分解可能な液体を接着剤またはシーリング剤と接着させない位置においてまで適用されるという問題が存在する。これにより、材料の不要な消費が生じ、見栄えを悪くする可能性があるか、または更なるクリーニング工程が必要となる。
【非特許文献1】Kirk Othmer,”Encyclopedia of Chemical Technology”,4th Ed.,John Wiley & Sons,New York,vol.11,pp.227−241
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すべての従来の適用方法には、少量の接着促進剤組成物を適用することが困難であるという問題が存在する。表面への少量の適用を可能にするため、ある場合においては、接着促進剤組成物を希釈し、好ましくは揮発性溶媒で希釈する。したがって、加水分解可能な液体を薄い皮膜で少量において適用し、かつ、均一に分布させ、限られた所定の領域に適用することを可能にする方法が必要とされている。接着促進剤組成物は被服の製造工場において頻繁に使用されており、溶媒の揮発は労働者にとって健康上の危険があるため、溶媒を含まない接着促進物質の適用も可能にする方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する方法を提供すること、とりわけ、加水分解可能な液体を所定の領域の表面に適用し、さらに特には不均一な表面であっても均一な分布を可能にすることである。
【0007】
驚くべきことに、請求項1に係る超音波噴霧器が当該目的を達成するためのその様な手段の一つであることを見出した。
【0008】
当該方法は、とりわけ、接着剤およびシーリング剤の接着を改善するために使用される接着促進剤組成物のために特に適切である。次いで、本発明の利点の一つは、接着促進物質が、溶媒なしで、薄い薄膜において、表面に適用できることである。
【0009】
超音波噴霧器の使用によって、2成分の加水分解可能な液体を適用することもできる。さらに、超音波噴霧器の使用によって、迅速且つ信頼できる接着促進剤組成物の適用方法を可能にし、接着剤の結合およびシーリングの際に迅速且つ信頼できる塗布を生じさせ、材料コストおよび労働コストをより低くする。
【0010】
したがって、本発明の別の態様は、接着剤の結合およびシーリング方法、接着剤で結合またはシーリングした物品、および組み立て構造物または輸送手段である。
【0011】
本発明の好ましい実施態様は、添付の特許請求の範囲に記載の態様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、超音波噴霧器を使用して、加水分解可能な液体を少なくとも1つの基材表面に適用することに関する。
【0013】
超音波噴霧器として、圧電素子が電気的な振動から機械的な振動を発生させる、超音波振動子を備えた従来の超音波噴霧器を使用することができる。本発明の場合には、圧電素子は反応液で濡らされ、超音波によって振動される。前記液体は、微細な液滴が分離および創出される頂上から表面張力波へと刺激される。圧電素子の動作周波数は、好ましくは、1から1000kHz、とりわけ10から500kHz、より好ましくは20から200kHz、更により好ましくは50から100kHzである。
【0014】
超音波噴霧器は、好ましくは、霧状にする液体を保持する容器とともにハウジング部分を備え、かつ、液滴の方向を制御して、基材表面に対する液体の適用量の均一な分布により、加水分解可能な液体が所望の皮膜の厚みを有する液体の限られた領域の皮膜を形成するアプリケーターノズルを備えた直接スプレーミストを発生させる噴霧器の一部である。特に好ましくは、超音波噴霧器は、アプリケーターノズルの一部である。
【0015】
特に適切な超音波噴霧器は、大部分、つまり、度数分布の最大が、200μm未満、好ましくは1から100μm、より好ましくは10から70μm、最も好ましくは20から60μmの間の直径を有する液滴を含有する、噴霧された液体を発生させるものである。
【0016】
好ましくは、約10nmから15μmの間、好ましくは50nmから1μmの間、より好ましくは70から150nmの間の乾燥皮膜の厚みを有する加水分解可能な液体の皮膜を基材表面上に生じさせ得るように設定することができる超音波噴霧器を使用することが好ましい。2またはそれ以上の皮膜を連続的に適用することが可能である。これによって、好ましくは、加水分解可能な液体が、5から200g/m、とりわけ10から100g/mの量で適用され、接着促進剤組成物が有機ケイ素、有機チタン、および/または有機ジルコニウム化合物を含む場合には、0.02から40g/m、とりわけ0.1から20g/m、好ましくは0.5から10g/mの有機ケイ素、有機チタン、および/または有機ジルコニウム化合物の量で適用される。
【0017】
特に適切である事が実証されている超音波噴霧器は、ドイツ国のLechler GmbH社製のものであり、とりわけタイプUS2またはUS1の超音波噴霧器である。
【0018】
加水分解可能な液体、とりわけ接着促進剤組成物が少なくとも1つのキャリアガスを用いて基材表面に適用される噴霧器を備えた超音波噴霧器は、特に有利であることが実証されている。適切なキャリアガスは、一般的には、空気、酸素、二酸化炭素、または例えば窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガスである。担体ガス、とりわけ空気は、ある量の水分、とりわけ水を含有してよい。空気がキャリアガスとして使用される場合は、空気の20℃における湿度は、好ましくは20%から70%である。水の量は、好ましくは、加水分解可能な液体が、処理しようとする表面に衝突するまで加水分解または部分的に加水分解を起こすことができるように計算される。圧力の下で、キャリアガスが、超音波噴霧器によって生じた液滴を基材表面に輸送することができる。ここで、噴霧器の圧力は、液滴が比較的大きな間隔埋めることができ、乱された雰囲気によって大きな影響を受けないように選択されてよい。しかしながら、圧力は、液滴が一般的に基材表面から大きく反発を受けず、適用領域の縁を重度に汚染しないようなレベルでのみ選択されるべきである。圧力は、好ましくは、0から5barの間、好ましくは1から2barの間、より好ましくは約1barである。これは、液滴が、追加のキャリアガスを使用してまたは使用せずに、基材表面に適用されてよいことを意味する。第一の態様では、液滴が重力によって基材表面に滴下され、第二の態様では、保護雰囲気であっても適当な場合に、液滴を目的の方法で表面に適用する。
【0019】
本発明の1つの実施態様では、キャリアガスは、少なくとも1つの加水分解可能な液体を含む第一の成分K1の超音波噴霧器によって生じる液滴とともに基材表面に適用される少なくとも1つの追加の成分K2を含んでよい。第二の成分K2が、同様に、第二の成分K2を液滴に噴霧する第二の超音波噴霧器を通過する場合に有利であってよい。次いで、キャリアガスによって、第二の成分K2の液滴は、加水分解可能な液体の第一の成分K1のための超音波噴霧器を通過し、基材表面上で、成分K2の液滴が成分K1の液滴と混合され、場合によっては互いに反応するか、または第二の成分K2の液滴が成分K1の縮合を開始するか、または触媒する。第一の成分K1または第二の成分K2のいずれが最初にキャリアガスによって輸送され、次いで、各々の場合において他の成分を通過するかという、順序の選択は任意である。
【0020】
少なくとも1つの成分が加水分解可能な液体を含む、少なくとも2つの成分を適用する際の本発明の利点は、成分が少量の液滴において互いに混合され、効果的な混合、それによる迅速な反応を発生させることである。
【0021】
1つの好ましい態様では、第一の成分K1は、少なくとも1つの官能基Yを有し、第二の成分K2は、少なくとも1つの官能基Zを有し、官能基Yと官能基Zは互いに化学的に反応し、とりわけ付加反応を経て反応する。
【0022】
官能基Yは、とりわけ、オキシラン、(メタ)アクリロイルオキシ、NCO、アルコキシシラン、およびビニル基、とりわけ、NCO、エポキシ、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、およびアルコキシシランを含む群から選択され、官能基Zは、とりわけ、COOH、NH、NH、SH、およびOHを含む群から選択される。
【0023】
成分K1と反応するか、または成分K1の縮合を開始もしくは触媒する成分K2は、好ましくは、有機スズ化合物または酸である。
【0024】
1つの好ましい実施態様では、成分K2は有機スズ化合物であり、好ましくは、ジアルキルスズジアセチルアセトネートまたはジアルキルスズジカルボキシレートを構成し、とりわけ、ジブチルスズジラウレートまたはジブチルスズジアセテートである。成分K2は好ましくはジブチルスズジラウレートである。
【0025】
他の好ましい実施態様では、成分K2は酸である。酸は、有機酸または無機酸であってよい。典型的には、酸は6未満のpKa1を有する。
【0026】
無機酸として適切なものは、とりわけ、リン酸または硫酸である。スルホン酸またはリン酸、とりわけ、スルホン酸は、特に適切であることが実証されている。
【0027】
有機酸として適切なものは、とりわけ、蟻酸、酢酸、アミノ酸である。酢酸が特に適切であることが実証されている。
【0028】
更に別の態様では、第一の成分K1は、第二の成分K2中に存在する触媒または開始剤の影響下において重合する少なくとも1つの化合物を含む。
【0029】
当該態様の1つの好ましい実施態様では、成分K2の触媒または開始剤の影響下で重合する成分K1の化合物は、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、ビニルエーテル、および不飽和ポリエステルからなる群から選択される不飽和の化合物であり、好ましくは(メタ)アクリレートである。当該実施態様の第二の成分K2は、開始剤として、フリーラジカル開始剤、とりわけ、過酸化物、ヒドロペルオキシド、またはペルエステル、好ましくは有機化酸化物を含む。
【0030】
成分K1およびK2は、二成分系組成物についての当業者に既知の種類の更に別の成分を含んでもよい。この種類の別の成分は、とりわけ、可塑剤、フィラー、接着促進剤、UV吸収剤、UV安定剤および/または熱安定剤、抗酸化剤、難燃剤、増白剤(optical brightner)、触媒、色素、あるいは染料などの添加剤である。特に好ましいその様な別の成分はフィラーである。好ましいフィラーは、カーボンブラックおよびチョークであり、双方共にコーティングされていても、されていなくてもよい。
【0031】
本明細書を全体に亘って、本発明に従って超音波噴霧器で適用可能な「加水分解可能な液体」は、水と反応して開裂される液体である。本発明による特に適切なものは、低い粘度であり、約10から100mPa*s、好ましくは約20から60mPa*sまでの動粘性係数を有する液体である。特に好ましいものは、固体を含まない液体である。しかしながら、カーボンブラックなどの微粒子である固体を含む液体も適切である。加水分解可能な液体は、とりわけ、接着促進剤組成物であり、特に、シラン、チタネート、および/またはジルコニウム化合物を含むか、またはそれらからなる、少なくとも1つの加水分解可能な接着促進物質を含む接着促進剤組成物である。
【0032】
少なくとも1つの加水分解可能な接着促進物質は、有機ケイ素化合物であってよい。主に適切なものは、接着促進剤として使用される当業者に既知の全ての有機ケイ素化合物である。当該有機ケイ素化合物は、好ましくは、酸素−ケイ素結合を介してケイ素原子に直接結合する少なくとも1つ、とりわけ少なくとも2つのアルコキシ基を有する。有機ケイ素化合物は、さらに、ケイ素−炭素結合を介してケイ素に結合し、任意にオキシラン、ヒドロキシル、(メタ)アクリロイルオキシ、アミノ、メルカプト、およびビニル基を含む群から選択される官能基を有する少なくとも1つの置換基を有する。
【0033】
特に適切な有機ケイ素化合物は、式(I)、(II)、または(III)の有機ケイ素化合物である。
【0034】
【化1A】

【化1B】

【0035】
式中、Rは、直鎖または分枝鎖の、任意に環状の、1から20の炭素原子を有するアルキレン基であって、任意に芳香族の部分を有し、任意に1または複数の複素原子、とりわけ窒素原子を有する。
【0036】
は、1から5の炭素原子を有するアルキル基、とりわけメチルまたはエチル、あるいはアシル基である。
【0037】
は、1から8の炭素原子を有するアルキル基、とりわけメチルである。
【0038】
Xは、Hまたはオキシラン、OH、(メタ)アクリロイルオキシ、アミン、SH、アシルチオ、およびビニルを含む群から選択される官能基であり、好ましくはアミンである。完全を期すために、本明細書におけるアルキルチオは下式の置換基を意味することをここで述べる。
【0039】
【化2】

【0040】
式中、Rは、アルキル、とりわけ1から20の炭素原子を有するアルキルであり、点線は置換基Rに対する結合を表わす。
【0041】
は、NH、S、S、およびSを含む群から選択される官能基である。
【0042】
は、Nおよびイソシアヌレートを含む群から選択される官能基である。
【0043】
aは0、1、または2の1つであり、好ましくは0である。
【0044】
置換基Rは、とりわけ、メチレン、プロピレン、メチルプロピレン、ブチレン、またはジメチルブチレン基である。置換基Rとして、プロピレン基が特に好ましい。
【0045】
アミノ、メルカプト、またはオキシラン基を含有する有機ケイ素化合物は、「アミノシラン」、「メルカプトシラン」、または「エポキシシラン」とも称される。
【0046】
式(I)の適切な有機ケイ素化合物の例は、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン;3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン;3−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルジメトキシメチルシラン、4−アミノ−3−メチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、7−アミノ−4−オキサへプチルジメトキシメチルシラン、N−(メチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン;3−アシルチオプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ならびにビニルトリエトキシシランを含む群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0047】
例えばオクチルトリアセトキシシラン(オクチルSi(O(O=C)CH)などの、アルコキシ基がアセトキシ基に置換されている有機ケイ素化合物も好ましい。この種類の有機ケイ素化合物は、加水分解によって酢酸を生じる。
【0048】
これらの有機ケイ素化合物のうち好ましいものは、官能基を更に有する、つまりアルキル基ではないケイ素原子に結合している有機置換基を有するものであり、XがHではない式(I)に合致する。
【0049】
式(II)の適切な有機ケイ素化合物の例は、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、4,4,15,15−テトラエトキシ−3,16−ジオキサ−8,9,10,11−テトラチア−4,15−ジシラオクタデカン(ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたはビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを含む群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0050】
式(III)の適切な有機ケイ素化合物の例は、トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、トリス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、1,3,5−トリス[3−(トリメトキシシリル)2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、7−アミノ−4−オキサへプチルジメトキシメチルシラン、N−(メチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン;3−アシルチオプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ならびにビニルトリエトキシシランを含む群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0051】
例えばオクチルトリアセトキシシラン(オクチルSi(O(O=C)CH)などの、アルコキシ基がアセトキシ基によって置換されている有機ケイ素化合物も好ましい。この種類の有機ケイ素化合物は、加水分解によって酢酸を生じる。
【0052】
これらの有機ケイ素化合物のうち好ましいものは、官能基を更に有する、つまりアルキル基ではないケイ素原子に結合した有機置換基を有するものであり、XがHではない式(I)に合致する。
【0053】
式(II)の適切な有機ケイ素化合物の例は、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、4,4,15,15−テトラエトキシ−3,16−ジオキサ−8,9,10,11−テトラチア−4,15−ジシラオクタデカン(ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたはビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを含む群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0054】
式(III)の適切な有機ケイ素化合物の例は、トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、トリス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、1,3,5−トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン−尿素(つまり、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート)、および1,3,5−トリス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン−尿素(すなわち、トリス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート)を含む群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0055】
好ましい有機ケイ素化合物は、アミノシラン、とりわけ、XがNHまたはNH−CH−CH−NHであり、X=NHであり、かつ、X=Nであるアミノシランである。特に好ましくは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス[3−(トリメトキシリル)プロピル]アミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、およびビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ならびにそれらの互いの混合物である。とりわけ、アミノシラン、特に当該段落に記載のアミノシランの場合には、熱硬化シリコーンコーティングの微視亀裂発生が低減される。
【0056】
少なくとも1つの加水分解可能な接着促進物質は、さらに、有機チタン化合物であってよい。主に適切なものは、接着促進剤として使用されている当業者に既知の全ての有機チタン化合物である。
【0057】
とりわけ適切なものは、アルコキシ基、スルホネート基、カルボキシレート基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルピロホスフェート基、およびアセチルセトネート基、またはそれらの混合物を含む群から選択され、酸素−チタン結合を介してチタン原子に直接結合する少なくとも1つの官能基を有する有機チタン化合物である。
【0058】
特に適切な化合物は、チタンに結合している全ての置換基が、アルコキシ基、スルホネート基、カルボキシレート基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルピロホスフェート基、およびアセチルアセトネート基を含む群から選択されるものであり、前記置換基の全てが互いに同一であるか、または異なる可能性がある。
【0059】
アルコキシ基として特に適切であることを実証しているものは、とりわけ、ネオアルコキシ置換基として既知の置換基、とりわけ以下の式(IV)のものである。
【0060】
【化3】

【0061】
スルホン酸として特に適切であることを実証しているものは、とりわけ、芳香族がアルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸である。好ましいと解されているスルホン酸は、以下の式(V)の基である。
【0062】
【化4】

【0063】
カルボキシレート基として特に適切であることを実証しているものは、とりわけ、脂肪酸のカルボキシレートである。デカノエートは、好ましいカルボキシレートであると解されている。
【0064】
上記の式(IV)および(V)では、点線は酸素−チタン結合を示す。
【0065】
有機チタン化合物は市販されており、例えば、Kenrich Petrochemical社またはDuPont社製のものである。適切な有機チタン化合物の例は、例えば、Kenrich Petrochemicals社製のKen−React(登録商標)KR TTS、KR 7、KR9S, KR 12、KR 26S、KR 33DS、KR 38S、KR 39DS、KR44、KR 134S、KR 138S、KR 158FS、KR212、KR 238S、KR 262ES、KR 138D、KR 158D、KR238T、KR 238M、KR238A、KR238J、KR262A、LICA 38J、KR 55、LICA 01、LICA 09、LICA 12、LICA 38、LICA 44、LICA 97、LICA 99、KR OPPR、KR OPP2、またはDuPont社製のTyzor(登録商標) ET、TPT、NPT、BTM、AA、AA−75、AA−95、AA−105、TE、ETAM、OGTである。好ましいと解されているものは、Ken−React(登録商標) KR 7、KR 9S、KR 12、KR 26S、KR 38S、KR44、LICA 09、LICA 44、NZ 44、およびDuPont社製のTyzor(登録商標) ET、TPT、NPT、BTM、AA、AA−75、AA−95、AA−105、TE、ETAMである。
【0066】
特に好ましいものは、酸素−チタン結合を介してチタン原子に結合している式(IV)および/または式(V)の置換基を有する有機チタン化合物である。
【0067】
少なくとも1つの加水分解可能な接着促進物質は、さらに、有機ジルコニウム化合物であってよい。適切なものは、主に、接着促進剤として使用されている当業者に既知の全ての有機ジルコニウム化合物である。とりわけ適切なものは、アルコキシ基、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、またはそれらの混合物を含む群から選択され、酸素−ジルコニウム結合を介してジルコニウム原子に直接結合している少なくとも1つの官能基を有する有機ジルコニウム化合物である。
【0068】
アルコキシ基として特に適切なものであることが実証されているものは、とりわけ、イソプロポキシ置換基であり、ネオアルコキシ置換基として知られている置換基、とりわけ上述の式(IV)の基であって、点線は酸素−ジルコニウム結合を示す。
【0069】
スルホン酸基として特に適切なものであることが実証されているものは、とりわけ、芳香族がアルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸である。好ましいと解されているスルホン酸は、上述の式(V)の基であって、点線は酸素−ジルコニウム結合を示す。
【0070】
特に適切なものであることが実証されているカルボキシレート基は、とりわけ、脂肪酸のカルボキシレートである。ステアレートおよびイソステアレートは、好ましいと解されているカルボキシレートである。
【0071】
オルガノジルコニウム化合物は市販されており、例えばKenrich Petrochemicals社製である。適切な有機ジルコニウム化合物の例は、例えば、Ken−React(登録商標) NZ 38J、NZ TPPJ、KZ OPPR、KZ TPP、NZ 01、NZ 09、NZ 12、NZ38、NZ 44、NZ 97である。
【0072】
本発明の組成物の接着促進物質は、少なくとも1つの有機ケイ素化合物と、少なくとも1つの有機チタン化合物と、および/または少なくとも1つの有機ジルコニウム化合物との混合物をさらに含んでよい。少なくとも1つの有機チタン化合物と少なくとも1つの有機ジルコニウム化合物との混合物であってもよい。好ましい混合物は、少なくとも1つの有機ケイ素化合物と少なくとも1つの有機チタン化合物との混合物である。
【0073】
特に好ましい混合物は、2またはそれ以上の有機ケイ素化合物、あるいは1つの有機ケイ素化合物と1つの有機チタン化合物または有機ジルコニウム化合物との混合物の各々である。
【0074】
有機ケイ素化合物の混合物として特に適切なものは、とりわけ、式(I)の接着促進剤、置換基XとしてHを有するこれらの置換体の少なくとも1つ、および置換基Xとしてオキシラン、(メタ)アクリロイルオキシ、アミン、SH、およびビニルを含む基から選択される官能基を有するこれらの置換体の少なくとも1つの混合物である。これらの混合物は、好ましくは、少なくとも1つのアルキルトリアルコキシシランとアミノアルキルトリアルコキシシランおよび/またはメルカプトアルキルトリアルコキシシランとの混合物である。
【0075】
接着促進剤組成物は、上述の加水分解可能な接着促進物質とともに、更に別の成分も含んでよい。適切な更に別の成分は、例えば、少なくとも1つの溶媒である。適切な溶媒は、1つの実施態様では、とりわけ、揮発性溶媒であり、換言すると760torrにおける沸点が25℃から140℃の間、とりわけ50℃から120℃の間、好ましくは65℃から99℃の間であるものである。
【0076】
他の実施態様では、より少ない揮発性溶媒が、更に特に適切であり、換言すると760torrにおける沸点が焼き付け温度超である溶媒である。とりわけ、それらは、100℃以上、好ましくは100℃から200℃の間、より好ましくは140℃から200℃の間の沸点を有する。
【0077】
加えて、とりわけ、異なる溶媒の混合物が有利である。複数の炭化水素の互いの混合物または構造式に少なくとも1つの炭化水素と少なくとも1つの複素原子を有する少なくとも1つの極性溶媒との混合物を使用する場合に、特に適切なものである。炭化水素は、飽和またはオレフィンもしくは芳香族として不飽和であってよい。好ましくは、炭化水素は飽和している。極性溶媒中の複素元素として考えられる適切なものは、とりわけ、O、N、およびSである。好ましくは、少なくとも1つの複素原子が酸素原子であり、好ましくはヒドロキシル、カルボニル、エーテル、カルボン酸、またはカルボン酸誘導体の基、例えば、エステル、アミド、またはカルボキシレート基の形態で極性溶媒の構造式中において存在する。好ましい極性溶媒は、水、アルコール、およびケトンである。最も好ましい極性溶媒はアルコール、とりわけ、飽和の分枝鎖または直鎖または環式の1から8の炭素原子を有するアルコールである。
【0078】
好ましい溶媒はアルコールであり、脂肪族および脂環式の炭化水素、とりわけエタノール、イソプロパノール、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、またはオクタン、およびそれらの混合物である。好ましくは、前記溶媒はエタノールまたはヘプタンである。
【0079】
考えられる特に好ましいものは、アルコールと脂肪族または脂環式の炭化水素との溶媒混合物であり、とりわけ、エタノールまたはイソプロパノールとヘキサンまたはシクロヘキサンまたはヘプタンまたはオクタンとの混合物、ならびにそれらの混合物である。特に好ましい溶媒混合物は、エタノールとヘプタンとの混合物である。
【0080】
考えられるより弱い揮発性の溶媒は、とりわけ、炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、または120℃から200℃、とりわけ120℃から140℃の間の沸点を有する炭化水素混合物である。
【0081】
この種類の溶媒を使用して、均質に低濃度の接着促進物質、つまり、有機ケイ素化合物および/または有機チタン化合物を表面に適用することができる。溶媒量は、好ましくは、有機ケイ素化合物および/または有機チタン化合物量が0.1重量%から10重量%、とりわけ0.5重量%から10重量%であるように選択される。
【0082】
しかしながら、接着促進剤組成物が溶媒を含まず、有機ケイ素化合物、有機ジルコニウム化合物、および/または有機チタン化合物量が90重量%超、とりわけ99重量%超であることも有利である。このようにして、例えば、VOC制御によって与えられる欠点または制限を回避することができる。
【0083】
加水分解可能な液体、とりわけ接着促進剤組成物を、超音波噴霧器を使用して、溶媒を使用せずに薄膜で基材表面に均一に適用できることは、本発明に特有の特徴である。これまで、例えば布またはスポンジを使用する従来の適用方法によって、溶媒無しで接着促進剤組成物を適用することは、ほぼ不可能であった。均一にするために、溶媒を使用する各々の場合には適当に濡らすことが必要である。
【0084】
接着促進剤組成物中に存在してよい更に別の成分は、反応性バインダーであり、この場合、とりわけイソシアネート基および/またはシラン基を有するポリウレタンプレポリマーであり、またはポリイソシアネートが存在してよく、例えば、トリス(4−イソシアナトフェニル)メタン、トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート、上述のモノマーMDI、TDI、HDI、およびIPDI、ならびにこれらのモノマーのオリゴマー、ポリマー、またはコポリマー、例えば、HDIポリマー、MDIポリマー、市販のもの、例えば、Voranate(登録商標)M 229 (Dow)、Desmodur(登録商標) VL R 20 (Bayer)、またはこれらのモノマーのアロファネート、ビウレット、ウレトジオン、およびイソシアヌレート、とりわけHDIビウレット、例えば、Desmodur(登録商標) N−100 (Bayer)、Luxate(登録商標) HDB 9000 (Lyondell/Bayer)として市販のもの、HDIトリマー、例えば、Desmodur(登録商標) N−3300 (Bayer)、Desmodur(登録商標) N−3600 (Bayer)、Luxate(登録商標) HT 2000 (Lyondell/Bayer)、Desmodur(登録商標) XP 2410として市販のもの、HDIダイマー、例えば、Desmodur(登録商標) N−3400 (Bayer)、Luxate(登録商標) HD 100 (Lyondell/Bayer)として市販のもの、IPDIトリマー、例えば、Desmodur(登録商標) Z 4470 (Bayer)、Vestanat(登録商標) T 1890 (Degussa)、Luxate(登録商標) IT 1070 (Lyondell/Bayer)として市販されているもの、HDIおよびIPDIアロファネート、TDIトリマー、例えば、Desmodur(登録商標) IL (Bayer)として市販されているもの、TDI付加体、例えば、Desmodur(登録商標) L (Bayer)として市販されているもの、TDI/HDIポリマー、例えば、Desmodur(登録商標) HL (Bayer)、Polurene(登録商標) IK D (Sapici)、Hartben AM 29 (Benasedo)として市販されているものである。
【0085】
接着促進剤組成物の成分として同様に有用なものは、加水分解のための触媒、例えば、シラン基の加水分解のための触媒、特に、例えば、安息香酸またはサリチル酸などの有機カルボン酸、無水フタル酸または無水ヘキサヒドロフタル酸などの無水有機カルボン酸、有機カルボン酸のシリルエステル、p−トルエンスルホン酸または4−ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸、あるいは他の有機または無機酸、または上述の酸の混合物の形態における触媒;ならびにイソシアネート基の反応のための触媒、例えば、スズ化合物、例えば、オクタン酸スズ(II)、三塩化モノブチルスズ、二塩化ジブチルスズ、酸化ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、二アセチルアセトン酸ジブチルスズ、ジカルボン酸ジブチルスズ、ジカルボン酸ジオクチルスズ、アルキルスズチオエステル、ビスマス化合物、例えば、オクタン酸ビスマス(III)、ネオデカン酸ビスマス(III)、亜鉛化合物、例えば、オクタン酸亜鉛(II)、ならびにアミノ基を有する化合物、例えば、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン;ならびに他の触媒、例えば、チタネートおよびジルコネートである。その様な触媒は、上述のように、接着促進剤組成物と共に液滴の形態で第二の成分K2として混合されてよい。換言すると、前記触媒は、加水分解可能な液体、とりわけ接着促進剤組成物中に直接存在するか、または最初に加水分解可能な液体の液滴と混合して、その直後に加水分解可能な液体、とりわけ接着促進剤組成物を適用する。
【0086】
加えて、プライマー(下塗剤)化学において典型的な添加剤、フィラー、および湿潤剤を使用することができる。その例は、タルク、カーボンブラック、有機および無機色素、安定剤、ならびに化学的および物理的な乾燥剤であるが、それらに限らない。
【0087】
更に別の成分として同様に適切なものは、UV吸収剤および増白剤である。その様な増白剤は、UV光を吸収して、可視光を放出し、通常は青色光を放出する。1つの好ましい増白剤は、Ciba Speciality Chemicals社製のCiba Uvitex(登録商標)OBである。更に別の適切な増白剤は、例えば、Kirk Othmer,”Encyclopedia of Chemical Technology”,4th Ed.,John Wiley & Sons,New York,vol.11,pp.227−241に開示されている。UV吸収剤は、例えば、本質的に有機であってよく、例えば、Ciba Speciality Chemicals社製のTinuvin(登録商標)製品ラインであってよく、または本質的に無機であってよく、例えば、着色顔料、とりわけ、カーボンブラックまたは二酸化チタンであってよい。
【0088】
表面に加水分解可能な液体が超音波噴霧器によって適用される基材は、広範に亘って変化して良い。特に適切なものは、無機基材、例えば、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、漆喰、および天然石、例えば、花崗岩または大理石;金属または合金、例えば、アルミニウム、鉄、非鉄金属、亜鉛メッキ金属;有機基材、例えば、木、合板、プラスチック、例えば、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂;コーティングされた基材、例えば、パウダーコーティング金属または合金;ならびに塗料および仕上げ剤、とりわけ、自動車のトップコート仕上げ剤である。最も好ましい基材は、ガラス、とりわけ、セラミックコーティングしたガラス、塗装した基材、例えば、塗装した金属フランジ、およびプラスチック、とりわけPVCである。
【0089】
本発明は、加水分解可能な液体、とりわけ、接着促進剤組成物を少なくとも1つの基材表面に適用する方法であって、上述の超音波噴霧器を前記適用のために使用する方法も提供する。好ましくは、基材表面に対する正確な適用を可能にし、更なる環境の汚染を妨げる、噴霧器のアプリケーターノズルの一部である超音波噴霧器を使用する。噴霧器は、好ましくは、ハウジングを使用して機械的接触に対して保護し、超音波噴霧器から出される破壊的な放射を遮るように設計される。前記ハウジングは、液滴が所望の限られた領域の基材表面に適用されるように、液滴の噴出を方向付けるように構築されてもよい。
【0090】
とりわけ、接着剤またはシーリング剤で後に結合しようとする基材表面の事前処理に関連して、本発明を使用してよい。この場合における事前処理は、好ましくは、上述の超音波噴霧器の使用による接着促進物質の適用である。適切な適用は、したがって、例えば、建築または土木建築および工業製品または生活用品、とりわけ、窓、家庭用機械、または水上もしくは陸上の乗り物などの輸送手段、特に自動車、バス、トラック、電車、もしくは船の製造または補修、工業的な製造もしくは補修または建築もしくは土木建築における接合部、継ぎ目、または空洞のシーリングにおける部材の接着剤による結合である。本発明は、接着促進物質のシート、好ましくはガラスシートへの適用と関連して特に適切であって、前記シートは、少なくとも1つの更に別のガラス、木、コーティング材料、またはプラスチック、とりわけ、塩化ポリビニル(PVC)の基材と接着剤による結合によって接合される。したがって、本発明の方法は、好ましくは、ガラスが塗装コーティングされた車体に結合される乗り物の製造、またはガラスが木もしくはプラスチック製のフレームと結合するドアもしくは窓の製造において実施され得る。
【0091】
本発明は、さらに、(i)少なくとも1つの基材表面S1および/またはS2に対して、上述の超音波噴霧器を使用して、接着剤またはシーリング剤を適用する工程;(ii)少なくとも1つの基材表面S1および/もしくはS2または基材S1とS2との間に接着剤またはシーリング剤を適用する工程;(iii)適用した接着剤または適用したシーリング剤を介して基材S1とS2とを接触させる工程;ならびに(iv)適用した接着剤またはシーリング剤を硬化させる工程を含む、少なくとも2つの基材表面S1とS2との接着剤による結合および/またはシーリングの方法を提供し、前記基材S1およびS2は互いに同様であるか、または異なるものである。
【0092】
シーリング剤としての使用では、組成物が、基材S1とS2との間に適用され、次いで、硬化が実施される。典型的に、シーリング剤は接合部に注入される。
【0093】
接着剤またはシーリング剤の適用は、好ましくは均一に行われる。
【0094】
それら双方の適用において、基材S1は、基材S2とは同様であるか、または異なるものであってよい。
【0095】
適切な基材S1またはS2の例は、無機基材、例えば、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、漆喰、および天然石、例えば、花崗岩または大理石;金属または合金、例えば、アルミニウム、鉄、非鉄金属、亜鉛メッキ金属;有機基材、例えば、木、プラスチック、例えば、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂、;コーティングされた基材、例えば、パウダーコーティング金属または合金;ならびに塗料および仕上げ剤、とりわけ、自動車のトップコート仕上げ剤である。
【0096】
ポリウレタン接着剤、(メタ)アクリレート接着剤、エポキシ樹脂接着剤、またはアルコキシシラン官能性プレポリマーに基づく接着剤が、接着剤による結合のために特に適切である。
【0097】
適切なポリウレタン接着剤は、一方で、一成分系湿気硬化性接着剤または二成分系ポリウレタン接着剤である。この種類の接着剤は、ポリイソシアネートを、とりわけイソシアネート基を含有するプレポリマーの形態で含む。好ましいものは、Sikaflex(登録商標)、SikaPower(登録商標)、およびSikaForce(登録商標)の製品ラインでSika Schweiz AG社によって市販されている種類のポリウレタン接着剤である。
【0098】
(メタ)アクリレート接着剤は、第一の成分がアクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステルを含み、かつ、第二の成分がフリーラジカル開始剤、とりわけ過酸化物を含む二成分系接着剤である。好ましいその様な接着剤は、Sika Schweiz AG社からSikaFast(登録商標)の製品ラインで市販されている。
【0099】
エポキシ樹脂接着剤は、グリシジルエーテル、とりわけ、ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのジグリシジルエーテルに基づいて製剤化される接着剤である。特に適切な二成分系エポキシ樹脂接着剤は、第一の成分がビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのジグリシジルエーテルを含み、かつ、第二の成分がポリアミンおよび/またはポリメルカプタンを含むものである。好ましいものは、Sika Schweiz AG社からSikadur(登録商標)の製品ラインで市販されている種類の二成分系エポキシ樹脂接着剤である。皮膜の接着剤による結合のために特に適切なものは、Sika Schweiz AG社から市販されている、二成分系エポキシ樹脂接着剤であるSikadur(登録商標)Combiflex(登録商標)、Sikadur(登録商標)31、Sikadur(登録商標)31DW、およびSikadur(登録商標)33、好ましくは、Sikadur(登録商標)Combiflex(登録商標)である。
【0100】
アルコキシシラン官能性プレポリマーに基づく接着剤は、とりわけ、MSポリマーまたはSPUR(シラン末端ポリウレタン)プレポリマーに基づく接着剤である。この種類のアルコキシシラン官能性プレポリマーは、例えば、少なくとも2つのC=C二重結合を有するポリエーテル、とりわけ、アリル末端ポリオキシアルキレンポリマーとヒドロシランとからヒドロシリル化反応によって、またはポリオールもしくはヒドロキシル官能性ポリウレタンプレポリマーを用いるイソシアナトアルキルアルコキシシランの付加反応によって、またはイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを用いるアミノアルキルアルコキシシランの付加反応によって調製してよく、前記ポリウレタンプレポリマー自体は、既知の方法においてポリイソシアネートおよびポリオールおよび/またはポリアミンの反応によって得てよい。アルコキシシラン官能性プレポリマーに基づく接着剤は、湿気硬化性であり、室温で反応する。
【0101】
主に、SikaMelt(登録商標)という製品ラインでSika Schweiz AG社から市販されている、反応性ホットメルト接着剤を使用することも可能である。しかしながら、好ましくは、室温硬化性接着剤である。
【0102】
必要な場合には、接着剤またはシーリング剤の適用の前に、基材に、さらに接着促進剤組成物の適用のための事前処理をしてよい。接着促進剤、接着促進剤溶液、またはプライマーの適用に加えて、この種類の事前処理は、とりわけ、物理的および/または化学的クリーニング方法、例えば、研磨、サンドブラスティング、またはブラッシングなど、あるいは洗浄剤または溶媒を用いた処理を含む。
【0103】
本発明の方法に従う基材S1およびS2の接着剤による結合またはシーリングは、接着剤により結合またはシーリングした物品を生じさせる。この種類の物品は、組み立て構造物、とりわけ、建築もしくは土木建築の組み立て構造物、または輸送手段であってよい。好ましくは、前記物品は、輸送手段、例えば、水上または陸上の乗り物、例えば、とりわけ、自動車、バス、トラック、電車、もしくは船、またはそれらに取り付ける部品である。特に好ましくは、接着剤により結合またはシーリングした物品は、輸送手段、とりわけ、自動車、または輸送手段、とりわけ、自動車に取り付ける部品である。
【0104】
本発明は例示した実施態様に限定されるものではないと解されるであろう。上述の本発明の特徴は、具体的に示されている組み合わせだけでなく、他の変形、組み合わせ、および補正またはそれら自体が、本発明の範囲を逸脱すること無く使用されてよい。
【実施例】
【0105】
接着促進剤組成物の調製
超音波噴霧器を用いるスプレー実験のために、表1の接着促進剤組成物を使用した。
【0106】
【表1】

【0107】
実験設定
超音波噴霧器に接着促進剤組成物を供給するために、12チューブロールで内径が1.09mmのチューブを用いて、スイス国のIsmatec SA社製のREGLO Digital typeの蠕動ポンプを使用した。ポンプを調整した後に、所定の量に必要な回転速度が自動で算出される。接着促進剤組成物を、約0.75または0.95ml/分の一定の供給速度でLechler GmbH社製のUS2タイプの超音波噴霧器に注入し、58kHzで噴霧した。超音波噴霧器の出射孔は、基材から6.5cm離して設置した。使用した基材は、Rochol GmbH社製のガラスセラミック試験要素であった。適用速度は、約20cm/秒を選択した。つまり、超音波噴霧器の出射孔は、ガラスセラミック表面に対して20cm/秒の速度で移動した。外部からの空気の撹乱に影響を受けない所定の霧の噴射を発生させるために、約25l/分のキャリア空気流が噴霧器を通過した。
【0108】
このシステムを用いて、約2.5cmの適用幅で接着促進剤組成物を基材に適用することができた。約15秒のフラッシュオフ時間の後に、接着促進剤組成物の乾燥した皮膜の厚さは、0.08から0.14μmであった。本発明の当該方法を使用して、限られた領域に対して、比較的一定な皮膜の厚みで接着促進剤組成物を適用することができた。それによって、オーバースプレーと称される問題を最小化することを可能にした。
【0109】
接着剤による結合の試験
ガラスセラミック表面に対する接着促進剤組成物の適用の約24時間後に、イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを含み、Sika Schweiz AG社から市販されている、一成分系湿気硬化性ポリウレタン接着剤であるSikaflex(登録商標)250 DM−2(「DM2」)を、カートリッジプレスとノズルとを使用して、平らな三角形のビードの形態で適用し、5日間に亘って23℃で50%の相対湿度(気候保存(CL))において硬化した。
【0110】
接着剤の接着は、「ビードテスト」によって試験した。この試験では、接着面の真上の末端でビードに刻みを入れる。ビードの刻みを入れた末端は、先の丸いピンセットで保持して、基材から引き離した。これは、ピンセットの先端のビードを注意深く巻き上げ、裸の基材に対して下方向のビードを引っ張る方向に対して垂直に切れ目を配置することで行われる。ビードを取り除く速度は、切れ目が約3秒ごとに作製されるように選択される。試験の長さは、少なくとも8cmでなければならない。ビードが離れた後に基材上に残存している接着剤(凝集破壊)について評価する。接着特性を、接着面の凝集破壊の推定によって評価する。
1=凝集破壊95%より大
2=凝集破壊75〜95%
3=凝集破壊25〜75%
4=凝集破壊25%未満
5=0%凝集破壊(純粋に凝集破壊)
75%未満の凝集破壊の結果、つまり、評価が3、4、または5である試験結果は、不適切であると考えられる。
【0111】
表2の接着剤の結果は、接着促進剤組成物が0.95ml/分の量で適用され、25l/分のキャリアガス(CA)流を使用する際に、ガラスセラミック表面に対する接着剤の効果的な接着が得られることを示す。
【0112】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基材表面に対して加水分解可能な液体を適用するための超音波噴霧器の使用。
【請求項2】
前記加水分解可能な液体が接着促進剤組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記接着促進剤組成物が、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、および有機ジルコニウム化合物からなる群から選択される、少なくとも1つの接着促進物質を含むことを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記接着促進剤組成物が少なくとも1つの溶媒を更に含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の使用。
【請求項5】
前記超音波噴霧器がアプリケーターノズルの一部であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記超音波噴霧器が少なくとも1つの圧電素子を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記超音波噴霧器が、度数分布における最大で100μm未満の直径を有する液滴を発生させることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記加水分解可能な液体が、少なくとも1つのキャリアガスを用いて基材表面に適用されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記キャリアガスが、少なくとも1つの加水分解可能な液体を含む第一の成分K1の超音波噴霧器によって発生する液滴と共に基材表面に適用される、追加の成分K2を含むことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記第一の成分が少なくとも1つの官能基Yを有し、かつ、前記第二の成分K2が少なくとも1つの官能基Zを有し、官能基Yと官能基Zとが互いに化学的に、とりわけ、付加反応を経て反応することを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記第二の成分K2が触媒を含むことを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記基材が、ガラス、金属、またはセラミックであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
少なくとも1つの基材表面に対して加水分解可能な液体を適用する方法であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用に従って超音波噴霧器を前記適用のために使用する、方法。
【請求項14】
基材S1とS2とを接着剤により結合する方法であって、
−基材S1および/または基材S2に対して、請求項13の方法に従って接着促進剤組成物を適用する工程;
−基材S1および/または基材S2に対して接着剤を適用する工程;
−適用した接着剤を介して基材S1とS2とを接触させる工程;ならびに
−接着剤を硬化させる工程
を含み、前記基材S1およびS2が互いに同様であるか、または異なる、方法。
【請求項15】
シーリング方法であって、
−基材S1および/または基材S2に対して、請求項13の方法に従って接着促進剤組成物を適用する工程;
−基材S1および基材S2の間にシーリング剤を適用する工程;ならびに
−シーリング剤を硬化させる工程
を含み、前記基材S1およびS2が互いに同様であるか、または異なる、方法。
【請求項16】
前記基材S1またはS2の少なくとも1つが、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、漆喰、天然石、例えば、花崗岩または大理石;金属または合金、例えば、アルミニウム、鉄、非鉄金属、亜鉛メッキ金属;木、プラスチック、例えば、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂;パウダーコーティング、塗料、または仕上げ剤、とりわけ、自動車の仕上げ剤であることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
請求項14または16に記載の接着剤により結合する方法によって製造される、接着剤によって結合された物品。
【請求項18】
請求項15または16に記載のシーリング方法によって製造される、シーリングされた物品。
【請求項19】
前記物品が、組み立て構造物、工業製品、または輸送手段、とりわけ、水上または陸上の乗り物、好ましくは、自動車、バス、トラック、電車、もしくはボート、またはそれらの部品であることを特徴とする、請求項17または18に記載の接着剤により結合された物品またはシーリングされた物品。

【公表番号】特表2009−537303(P2009−537303A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510452(P2009−510452)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054750
【国際公開番号】WO2007/132013
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】