説明

超音波探傷装置及び超音波探傷プログラム

【課題】複数の超音波探傷法を簡単な操作で切り替えて実施可能にする。
【解決手段】第一の探触子と第二の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路を有し、スイッチング回路は、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第二の探触子で回折波を受信する斜角探傷法とSPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードとを選択可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波探傷装置及び超音波探傷プログラムに関する。更に詳述すると、本発明は、複数の超音波探傷法を実施可能な超音波探傷装置及び超音波探傷プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型軽水炉プラントの再循環系配管における溶接部には、応力腐食割れ(Stress Corrosion Crack, SCC)が発生することが知られている。一方、既設火力発電設備の老朽化は進む傾向にあり、欧米では、経年火力発電プラントの高温蒸気配管において、 熱影響部におけるクリープボイドの発生・連結によるき裂の発生に起因した噴破事故を経験している。この原子力プラントの配管の溶接部のような厚肉配管溶接部に対する非破壊検査には、従来から超音波探傷試験が実施されている。そして、厚肉配管溶接部に対する非破壊検査には、単に傷の有無を検出するだけでなく、傷高さを精度良く測定する必要が高まっている。そして、欠陥のサイジングには発生端と終端を検出することが不可欠である。
【0003】
超音波探傷試験のための超音波探傷法として、従来から種々の方法が提案され改良されている。従来型の探傷方法として、垂直探傷法及び斜角探傷法が挙げられる。垂直探傷法は、垂直探触子により超音波を探傷面に対し垂直に送受信することにより探傷を行うものである。垂直探傷法は、健全部では底面のエコーのみを受信するが、傷のある部分では底面のエコーの前に傷の端部で反射するエコーを受信することを利用し傷高さの測定を行うものである。
【0004】
また、端部エコーを用いた斜角探傷法による超音波探傷も従来から広く用いられてきた。図14に斜角探傷法を説明する図を示す。斜角探傷法では、斜角探触子により超音波を入射し、傷の端部からの回折波と開口部からの反射波によるエコーがそれぞれ最大となる探触子の位置を探し、回折波及び反射波のビーム路程を求め、傷高さの測定を行うものである(非特許文献1)。
【0005】
斜角探触子(プローブ)101を移動させながら、傷102の開口端103からの反射波(コーナーエコーと呼ばれる)104が一番強い場所を求め(図15(A)参照)、次いで傷102の先端105からの反射波(端部エコーと呼ばれる。以下、特に断りがない場合には上端部を単に端部と記す)106が一番強い場所を求める(図15(B)参照)。そして、これら2つのエコー104,106の到達時間t,tの差から傷高さhを算出するようにしている。ここで、超音波ビームの中心軸が傷102の上端部105や開口端103と一致したときに、それぞれに対応するエコー104,106の高さが最大となる。尚、図14中、符号107は発信波である超音波ビームであり、101’,107’は傷102の上端部105に一致したとき位置での斜角探触子と超音波ビームである。
【0006】
このため、2つのエコー104,106は、同時に同じ強さで現れることはない。コーナーエコーが受信され始めた位置から探触子を移動量Lずつスリットに近づけていった場合の受信波形に対するシミュレーション結果を図19に示す。この図から明らかなように、探触子101をスリット102に近づけると、まずコーナーエコー104が最大になり、さらに近づけると端部エコー106が大きくなる。端部エコー106およびコーナーエコー104が最大となるときのエコー立ち上がり時間をtおよびtとすると、ビーム路程は数式1に示すように、
<数1>
=Ct/2,i=t,c
となる。ただし、Cは音速であり、上記の例では横波音速となる。
【0007】
そこで、端部エコー106およびコーナーエコー104が得られた時のビーム路程WtおよびWcを求め、幾何学的な関係から数式2により傷高さhを求めることができる。
<数2>
h=(Wc−Wt)cosθ
ただし、θは屈折角である。横波45°斜角探触子により入射された超音波ビームの中心軸上に傷端部がある場合の超音波の波面を超音波伝播有限要素シミュレーションにより予測した一例を図18に示す。この図から横波がスリットに達した後、スリット端部から縦波および横波回折波が円弧状に広がり、探触子に戻る回折波が端部エコーとして受信される。
【0008】
さらに、改良型の探傷法としてTOFD法による探傷方法が提案されている(非特許文献2)。TOFD法は、図16に示すように傷先端105から見て発信波207とは逆向きに伝播する回折波206を受信するように送信用探触子201と受信用探触子202を配置し、傷の高さhを測定する。TOFD法では、傷高さとビーム路程から、数式3によりhを求めることができる。
<数3>
h=T−Wtsin(cos−1(Ws/2Wt))
ただし、Tは被検査対象物の厚さ、Wsは表面波のビーム路程である。
【0009】
さらに、TOFD法の適用が困難な厚肉のステンレス鋼溶接部等の傷高さ測定を、端部エコー法より簡便かつ精度良く短い検査時間で行えるようにする測定方法である短経路回折波法(Short Path of Diffraction:SPOD法)が提案されている(非特許文献3)。SPOD法は、図17に示すように、試験体中の傷に対し斜め方向から斜角探触子301によって超音波を入射して傷の端部において回折波を発生させると共に、傷の上方へ直接伝播する回折波Lt1と、一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する回折波Lt2とを傷の上方の垂直探触子302で受信し、それらの伝播時間差から傷の端部の裏面からの高さ位置を測定するものである。SPOD法では、回折波Lt1と裏面で反射した後に受信される回折波Lt2のそれぞれのビーム路程Wt1およびWt2の差の半分が傷高さとなる。よって、Wt1およびWt2の伝播時間tt1およびtt2の差分からθによらず数式4により傷高さを求めることができる。
<数4>
h=1/2(Wt2−Wt1)=C/2(tt2−tt1
ただし、Cは縦波音速である。
【0010】
図17に示すように、傷102に対し斜め方向から超音波を入射して傷102の端部105において回折波を発生させると共に、傷102の上方へ伝播する回折波304と、一度裏面で反射した後に傷102の上方に伝播する回折波306とを傷102の上方で受信するように設定されている。
【0011】
斜角探触子301から送信された超音波パルスが傷に到達したとき、図18に示すように、回折波が傷(スリットで代用)の端部で発生する。そして、傷の上方へ直接伝播する回折波と一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する回折波とが強いエネルギをもって受信される。このとき探傷器の表示装置には、図20に示すように、短いビーム路程で回折波を受信することで回折波の拡散減衰や材料の金属組織による散乱減衰が少ない強い信号のまま(強いエコー)、傷先端から傷の上方へ直接伝播する回折波と、裏面で反射してから傷の上方へ向けて伝播する回折波とが同時にそれらの到達時間差をもって示される。
【0012】
この状態を模式する図17に示すように、傷102の端部で発生した回折波のうち、裏面で反射した後に傷の上方に伝播する回折波306の路程Wt2は、傷の上方に直接伝播する回折波304の路程Wt1に傷102の高さhの2倍分の路程(往復分)を含むものであることから、回折波304の路程Wt1と回折波306の路程Wt2との差分が傷高さhを示すものである。そして、路程の差分は縦波あるいは横波の音速から伝播時間の差として求まる。そこで、直接波と裏面反射波との到達時間差だけから、送信用探触子301の超音波パルスの入射角θによらず、前述の数式4により裏面からのきず端部105の高さ位置、この例ではきず高さが求められる。
【0013】
更に、上記述べた超音波探傷法の他にも、例えば超音波横波が試験体裏面で反射する際に生じる二次クリーピング波を用いる方法やフェーズドアレイ探触子を用いる超音波探傷法が提案されている。
【非特許文献1】社団法人 日本非破壊検査協会発行「日本非破壊検査協会規格 端部エコー法によるきず高さの測定方法」 平成9年6月1日発行
【非特許文献2】社団法人 日本非破壊検査協会発行「日本非破壊検査協会規格 TOFD法によるきず高さの測定方法」 平成13年12月1日発行
【非特許文献3】福冨広幸,林山,緒方隆志「超音波探傷試験における簡単な傷サイジング手法の提案」日本保全学会 第2回学術講演会要旨集,2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
垂直探傷法は、鋼板などの検査には適している。しかしながら、超音波を試験体に対して垂直に入射するため、傷の位置を探索することが困難であるという問題がある。また、斜角探傷法はオーステナイト系ステンレス鋼やインコネル(Special Metals Corporationの登録商標)などに対しても使えるが、一般に端部エコーはコーナーエコーよりかなり小さいため、ステンレス鋼溶接部の応力腐食割れを探傷する場合には、回折波が基材での結晶粒界散乱により減衰し、溶接部の溶け込み境界での反射に起因するエコー(ノイズ)と端部エコーは同程度の強度になる場合がある。即ち、ノイズに端部エコーが埋没し、見いだし難い問題がある。また、分岐した応力腐食割れの複数の先端や屈曲部からも端部エコーが得られる。さらに、プローブを移動させながら端部エコーのピークを探すので、本当のピークを把握し切れていないという問題を含む。このような状況で、応力腐食割れの真の先端からの端部エコーを見出し、それに応じたtから精度よくビーム路程Wtを求めるためには、相当の経験と技量が検査員に必要とされ、検査員によるばらつきが大きく、精度良く測定できないものである。さらに、フェーズドアレイ探触子を用いた端部エコー法においても、溶接金属からのエコーと区別して微弱な端部エコーを識別しなければならない傷高さ測定は、端部エコーを用いた傷高さ測定法(斜角探傷法)と同じく難易度が高く、検査員の技量に負うところが大きい。
【0015】
また、TOFD法は傷高さを精度良く測定できるものであるが、傷の位置を測定することは困難である。また、傷高さを精度良く測定できるのは試験体が炭素鋼などに限られるものであり、結晶粒が大きい材質例えばオーステナイト系ステンレス鋼やインコネルなどの厚肉構造物に対しては、回折波の検出が困難であり、使えないという問題がある。つまり、原子力プラントの一次系構造物の炉内構造物や循環配管等に主に使用されているオーステナイト系ステンレス鋼は、炭素鋼やクロム合金鋼と異なり、結晶粒が大きく非均質・弾性異方性を有するため、超音波の減衰や直進性などで端部エコーが検出し難い問題がある。更に溶接部は母材の圧延組織に比べ結晶粒が大きく、また、母材と溶接部では音速が異なる。このため、原子力プラントの運転中に発生するオーステナイト系ステンレス鋼の溶接部周辺の傷特に裏面開口きずの測定では、結晶粒界や溶接部境界で反射、屈折、散乱による減衰や林状エコーが現れ、ノイズとなるエコーときず端部で発生する端部エコーとの判別が困難となることから、溶接部を通過しかつ長い路程を経て微弱な回折波を受信せざるを得ないTOFD法では適用することができない。
【0016】
また、SPOD法は微弱な回折波をより短いビーム路程で受信できるため他の方法に比べ傷検出感度が高い点、TOFD法の適用ができないステンレス鋼等の厚肉構造物に適用が可能である点、計算式が簡単であり測定時間が短い点等、従来の超音波探傷法に比べて非常に優れたものであるが、それでもなお波形を解析し、ビーム路程を求めるには検査員の高度な技量を必要としている。このため探傷試験における波形分析に際し、他の測定方法と組み合わせて実施することによって、より精度の高い傷高さの推定を行うことができると考えられる。
【0017】
以上述べたように種々の超音波探傷法が提案されているが、それぞれ特徴を有しており試験環境により最適な超音波探傷法を選択する必要がある。また、エコーの波形観察には専門性が必要とされ、検査員の熟練した技術が必要となる。したがって、複数の超音波探傷法を組み合わせて実施することができればより精度の高い超音波探傷を実現することが可能となる。
【0018】
しかしながら、複数の超音波探傷法の切り替えを行うためには、その都度、探触子の配置位置の変更や超音波探傷装置における探傷器と探触子の接続形態の変更などの煩雑な作業をする必要があり、検査員は同一の試験体に対して複数の探傷法による探傷試験を実施することは困難であった。そのため、同一の試験体に対して複数の超音波探傷法により探傷試験を行うことは、検査時間がかかり、かつ切り替え作業も困難であって現実的ではなかった。また、従来複数の探傷法を実現させるためには、パルスレシーバの受信部及び送信部を複数設ける必要があった。このような複数のチャンネルを有するパルスレシーバは、一般に高価であり、探傷試験の高コスト化の要因となっていた。
【0019】
そこで、本発明は、複数の超音波探傷法の切り替えを容易にすることで、試験環境に応じて最適な超音波探傷法を選択することができ、更に複数の計測結果から、検査員によるばらつきが少なく傷高さを迅速かつ精度良く測定できる超音波探傷試験装置及び超音波探傷試験プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の超音波探傷装置は、試験体中の傷に対し斜め上方に配置される第一の探触子と、傷の上方に配置される第二の探触子と、第一の探触子と第二の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路とを有し、スイッチング回路は、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第二の探触子で回折波を受信する斜角探傷法とSPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードとを選択可能としたものである。
【0021】
したがって、スイッチング回路のスイッチの切り替え操作のみで、斜角探傷法、SPOD法、斜角探傷法とSPOD法の組合せ及び垂直探傷法による4パターンの超音波探傷法を選択することができる。検査員は、複数の探傷法のうち、試験環境に応じて最適な超音波探傷法をスイッチング回路のオンオフ操作のみで選択することが可能となる。また、同一の試験体について複数の超音波探傷法による探傷試験を迅速かつ簡単に実施することができ、より精度の高い超音波探傷試験を実施することが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の超音波探傷装置は、試験体中の傷に対し斜め上方に配置される第一の探触子と、傷を挟み第一の探触子の反対側の斜め上方に配置される第二の探触子と、第一の探触子と第二の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路とを有し、スイッチング回路は、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第二の探触子で表面波及び回折波を受信する斜角探傷法とTOFD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第四のモードとを選択可能としたものである。
【0023】
したがって、スイッチング回路のスイッチの切り替え操作のみで、第一の探触子による斜角探傷法、TOFD法、斜角探傷法とTOFD法の組合わせ及び第二の探触子による斜角探傷法による4パターンの超音波探傷法を選択することができる。検査員は、複数の探傷法のうち、試験環境に応じて最適な超音波探傷法をスイッチング回路のオンオフ操作のみで選択することが可能となる。また、同一の試験体について複数の超音波探傷法による探傷試験を迅速かつ簡単に実施することができ、より精度の高い超音波探傷試験を実施することが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の超音波探傷装置は、試験体中の傷に対し斜め上方に配置される第一の探触子と、傷の上方に配置される第二の探触子と、傷を挟み第一の探触子の反対側の斜め上方に配置される第三の探触子と、第一の探触子、第二の探触子及び第三の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路とを有し、スイッチング回路は、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第二の探触子で回折波を受信する斜角探傷法とSPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第三の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第五のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第三の探触子で表面波及び回折波を受信する斜角探傷法とTOFD法の組合せによる探傷試験を行う第六のモードと、第三の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第七のモードとを選択可能としたものである。
【0025】
したがって、スイッチング回路のスイッチの切り替え操作のみで、第一の探触子による斜角探傷法、SPOD法、斜角探傷法とSPOD法の組合せ、垂直探傷法、TOFD法、斜角探傷法とTOFD法の組合わせ及び第三の探触子による斜角探傷法による7パターンの超音波探傷法を選択することができる。検査員は、複数の探傷法のうち、試験環境に応じて最適な超音波探傷法をスイッチング回路のオンオフ操作のみで選択することが可能となる。また、同一の試験体について複数の超音波探傷法による探傷試験を迅速かつ簡単に実施することができ、より精度の高い超音波探傷試験を実施することが可能となる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の超音波探傷装置において、更に超音波探傷装置は、予め設定された試験体の厚さ、試験体での音速、探触子の斜角楔内での遅延時間、超音波ビームの屈折角及び推定傷高さからスイッチング回路により選択された超音波探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定手段と、超音波探傷装置が備える出力装置に表示される波形の時間軸に対して、ピーク時推定手段により推定されたエコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示手段を備えるものである。
【0027】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の超音波探傷装置において、更に超音波探傷装置は、予め設定された試験体の厚さ、試験体での音速、探触子の斜角楔内での遅延時間、超音波ビームの屈折角及び第一の探触子と第二の探触子の配置間隔からスイッチング回路により選択された超音波探傷法におけるエコーのピーク時を推定するピーク時推定手段と、超音波探傷装置が備える出力装置に表示される波形の時間軸に対して、ピーク時推定手段により推定されたエコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示手段を備えるものである。
【0028】
また、請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の超音波探傷装置において、更に超音波探傷装置は、予め設定された試験体の厚さ、試験体での音速、探触子の斜角楔内での遅延時間、超音波ビームの屈折角、推定傷高さ及び第一の探触子と第三の探触子の配置間隔からスイッチング回路により選択された超音波探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定手段と、超音波探傷装置が備える出力装置に表示される波形の時間軸に対して、ピーク時推定手段により推定されたエコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示手段を備えるものである。
【0029】
したがって、予め設定されたパラメータの値からそれぞれの超音波探傷法において波形分析の基準となるエコーのピークの出現時間を計算し、推定されたピークの出現時間を示すガイドを超音波探傷装置の出力装置に表示される波形の時間軸に表示する。
【0030】
また、請求項7に記載の発明は、請求項4から6までのいずれかに記載の超音波探傷装置において、更に超音波探傷装置は、出力装置に表示されたガイドの表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を出力装置に拡大して表示する波形拡大表示手段を備えるものである。
【0031】
したがって、それぞれの超音波探傷法毎に得られる波形分析の基準となるエコーのピーク時に表示されるガイドを中心とした一定の範囲を拡大して画面上に表示する。
【0032】
また、請求項8に記載の発明は、請求項4から7までのいずれかに記載の超音波探傷装置において、ガイド表示手段は、いずれの超音波探傷法が選択されているかにより出力装置に表示する波形の背景色を変化させるものである。
【0033】
したがって、それぞれの超音波探傷法毎に表示される波形の背景色が異なるので、検査員は背景色の違いからどの探査法により得られた波形であるのかを一目で認識することができる。
【0034】
また、請求項9に記載の発明は、請求項4から8までのいずれかに記載の超音波探傷装置において、試験体に対し複数の超音波探傷法により超音波探傷試験が成された場合に複数の超音波探傷法による波形を同時に出力装置に表示させるものである。
【0035】
したがって、複数の超音波探傷法により得られた波形が一つの画面上で同時に表示されるので、検査員は複数の探傷法による波形を見ながら波形分析を行い、傷高さの推定を行うことができる。
【0036】
請求項10に記載の超音波探傷プログラムは、試験体中の傷に対し斜め上方に第一の探触子を、傷に対し上方に第二の探触子を配置して行う超音波探傷試験において、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第二の探触子で回折波を受信する斜角探傷法とSPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードのいずれかが選択された場合にスイッチング回路に対しスイッチ構成を変更する信号を発信する回路選択処理と、予め設定された試験体の厚さ、試験体での音速、探触子の斜角楔内での遅延時間、超音波ビームの屈折角及び推定傷高さからからスイッチング回路により選択された探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定処理と、出力装置に表示される波形の時間軸に対して、ピーク時推定処理により推定されたエコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示処理と、ガイドの表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を出力装置に拡大して表示する波形拡大表示処理とをコンピュータに実行させるものである。
【0037】
また、請求項11に記載の超音波探傷プログラムは、試験体中の傷に対し斜め上方に第一の探触子を、傷を挟み第一の探触子の反対側の斜め上方に第二の探触子を配置して行う超音波探傷試験において、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第二の探触子で表面波及び回折波を受信する斜角探傷法とTOFD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第四のモードのいずれかが選択された場合にスイッチング回路に対しスイッチ構成を変更する信号を発信する回路選択処理と、予め設定された試験体の厚さ、試験体での音速、探触子の斜角楔内での遅延時間、超音波ビームの屈折角及び第一の探触子と第二の探触子の配置間隔からスイッチング回路により選択された探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定手段と、出力装置に表示される波形の時間軸に対して、推定手段により推定されたエコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示処理と、ガイドの表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を出力装置に拡大して表示する波形拡大表示処理とをコンピュータに実行させるものである。
【0038】
また、請求項12に記載の超音波探傷プログラムは、試験体中の傷に対し斜め上方に第一の探触子を、傷の上方に第二の探触子を、傷を挟み第一の探触子の反対側の斜め上方に第三の探触子を配置して行う超音波探傷試験において、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第二の探触子で回折波を受信する斜角探傷法とSPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第三の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第五のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第三の探触子で表面波及び回折波を受信する斜角探傷法とTOFD法の組合せによる探傷試験を行う第六のモードと、第三の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第七のモードのいずれかが選択された場合にスイッチング回路に対しスイッチ構成を変更する信号を発信する回路選択処理と、予め設定された試験体の厚さ、試験体での音速、探触子の斜角楔内での遅延時間、超音波ビームの屈折角、推定傷高さ及び第一の探触子と第三の探触子の配置間隔からスイッチング回路により選択された探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定処理と、出力装置に表示される波形の時間軸に対して、ピーク時推定処理により推定されたエコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示処理と、ガイドの表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を出力装置に拡大して表示する波形拡大表示処理とをコンピュータに実行させるものである。
【0039】
したがって、スイッチング回路のスイッチの切り替え制御のみで、複数の超音波探傷法の切り替えをすることができる。よって、検査員は複数の探傷法のうち、試験環境に応じて最適な超音波探傷法をスイッチング回路のオンオフ操作のみで選択することが可能となる。また、同一の試験体について複数の超音波探傷法による探傷試験を簡単に実施することができ、より精度の高い超音波探傷試験を実施することが可能となる。また、予め設定されたパラメータの値からそれぞれの超音波探傷法において波形分析の基準となるエコーのピークの出現時間を計算し、推定されたピークの出現時間を示すガイドを超音波探傷装置の出力装置に表示される波形の時間軸に表示する。更に、それぞれの超音波探傷法毎に得られる波形分析の基準となるエコーのピーク時に表示されるガイドを中心とした一定の範囲を拡大して画面上に表示する。
【発明の効果】
【0040】
本発明の超音波探傷装置及び超音波探傷プログラムによれば、スイッチング回路のスイッチの切り替え操作のみで、複数の超音波探傷法から最適な超音波探傷法を選択することが可能となる。したがって、検査員は簡単な切り替え操作のみで、複数の探傷法を実施することができる。また、同一の試験体について複数の超音波探傷試験を行うことが容易となり、より精度の高い探傷試験を迅速に実施することが可能となる。この際、検査時間の短縮を図ることが可能となる。
【0041】
また、探傷器に必要とされる送信部及び受信部は少なくとも一つで足り、それぞれ一つの送信部及び受信部で4つのモードの全ての受信に対応することが可能である。したがって、複数の受信部を設ける必要がなく、受信用のチャンネルが1チャンネルの最小限の性能を有するパルスレシーバを用いることが可能となる。したがって、パルスレシーバの低コスト化を実現することができ、探傷試験の低コスト化を図ることができる。
【0042】
また、請求項2に記載の超音波探傷装置によれば、第一の探触子による斜角探傷法、第二の探触子による斜角探傷法、TOFD法及び斜角探傷法とTOFD法の組合せによつ探傷をスイッチング回路の切り替えのみで実施することが可能である。
【0043】
また、請求項3に記載の超音波探傷装置によれば、第一の探触子による斜角探傷法、SPOD法、SPOD法と斜角探傷法の組合せ、垂直探傷法、TOFD法、TOFD法と斜角探傷法の組合わせ及び第三の探触子による斜角探傷法による探傷をスイッチング回路の切り替えのみで実施することが可能である。
【0044】
また、請求項4に記載の超音波探傷装置、請求項5に記載の超音波探傷装置及び請求項6に記載の超音波探傷装置によれば、予めパラメータを設定することにより、それぞれの超音波探傷法において波形分析の基準となるエコーのピークの出現時間を計算することができ、さらに推定されたピーク時を示すガイドを超音波探傷装置の出力装置に表示される波形の時間軸に表示させている。検査員は、それぞれの探傷法毎の注目すべき波形の出現位置を知ることができ、表示されたガイド部分を中心に波形観察を行う。よって、検査員による波形分析支援を行うことができ、迅速かつ精度の高い超音波探傷試験を行うことが可能となる。
【0045】
また、請求項7に記載の超音波探傷装置によれば、ガイド部分を中心とした一定の領域が拡大表示されるので、検査員は拡大表示された部分の波形の観察により探傷試験を行うことが可能となる。よって、検査員による波形分析支援を行うことができ、迅速かつ精度の高い超音波探傷試験を行うことが可能となる。
【0046】
また、請求項8に記載の超音波探傷装置によれば、検査員は背景色の違いからどの探査法により得られた波形なのかを一目で理解することができる。したがって、検査員は行っている探査法を取り違えることがなく、迅速かつ精度の高い超音波探傷試験を行うことが可能となる。
【0047】
また、請求項9に記載の超音波探傷装置によれば、検査員は複数の超音波探傷法により得られる波形を一つの画面上で同時に見ることができる。よって、検査員による波形分析支援を行うことができ、迅速かつ精度の高い超音波探傷試験を行うことが可能となる。
【0048】
また、請求項10に記載の超音波探傷プログラム、請求項11に記載の超音波探傷プログラム及び請求項12に記載の超音波探傷プログラムによれば、スイッチング回路のスイッチの切り替え制御のみで、複数の超音波探傷法から最適な超音波探傷法を選択することが可能となり、検査員は簡単な切り替え操作のみで、複数の探傷法を実施することができる。また、同一の試験体について複数の超音波探傷試験を行うことが容易となり、より精度の高い超音波探傷試験を迅速に実施することが可能となる。この際、検査時間を短縮することが可能となる。また、探傷器に必要とされる送信部及び受信部は少なくとも一つで足り、それぞれ一つの送信部及び受信部で4つのモードの全ての受信に対応することが可能である。したがって、複数の受信部を設ける必要がなく、受信用のチャンネルが1チャンネルの最小限の性能を有するパルスレシーバを用いることが可能となる。したがって、パルスレシーバの低コスト化を実現することができ、探傷試験の低コスト化を図ることができる。
【0049】
更に、検査員は、それぞれの探傷法毎の注目すべきエコーの出現時間を知ることができ、さらに拡大表示されたガイド部分を中心に波形観察を行うことが可能となる。よって、検査員による波形分析支援を行うことができ、迅速かつ精度の高い超音波探傷試験を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、図面に基づいて本発明の実施の第一の実施形態を詳細に説明する。図1〜図10に本発明の第一の実施形態を示す。
【0051】
本発明にかかる超音波探傷装置は、試験体中の傷に対し斜め上方に第一の探触子を配置し、傷の上方に第二の探触子を配置し、更に第一の探触子と第二の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路とを有しており、スイッチング回路は、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、かつ第二の探触子で回折波を受信する斜角探傷法とSPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードとを選択可能としたものである。
【0052】
本実施形態での超音波探傷装置は、被検査物中の傷に対し斜め方向から超音波ビームを入射する送信用探触子1と、傷の上方へ伝播する回折波を受信する受信用探触子2と、超音波ビームが傷の端部に達したときに発生する回折波の傷の上方へ伝播する成分と一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する成分とを同時に表示して端傷面への到達時間差を示す探傷器とを備える。
【0053】
図1に本実施形態での超音波探傷装置の構成の一例を示す。本実施形態では、データ収集用並びに制御装置としてパーソナルコンピュータ6を利用し、A/D変換ボード5を介して接続されたパルスレシーバ4とスイッチング回路3とを介して、送信用探触子1並びに受信用探触子2aとを制御するように設けられている。送信用探触子1としては、本実施形態の場合には、斜角探触子1が採用され、受信用探触子2としては垂直探触子2aが採用されている。これら斜角探触子1と垂直探触子2aとはスイッチング回路3を介してパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに対し任意に切り替え可能に接続されている。尚、送信用探触子1と受信用探触子2は、いずれも超音波ビームの送受信が可能であり、選択するスイッチング回路のモードによっては、送信用探触子1で超音波ビームの受信を行う場合及び受信用探触子2から超音波ビームの送信を行うものである。
【0054】
図2にコンピュータ6の構成の一例を示す。パーソナルコンピュータ6は、ディスプレイ等の出力装置7と、キーボード、マウス等の入力装置8と、CPU9と、主記憶装置(RAM)10と、ハードディスク等の補助記憶装置11等により構成される。さらに、コンピュータ6は、いずれかのモードが選択された場合にスイッチング回路に対しスイッチ構成を変更する信号を発信する回路選択処理を実行する回路選択手段14と、予め入力される試験体の厚さ、試験体での音速、探触子の斜角楔内での遅延時間、超音波ビームの屈折角及び推定傷高さ等の種々のパラメータからスイッチング回路により選択された探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定処理を実行するピーク時推定手段15、超音波探傷装置が備える出力装置に表示される波形の時間軸に対して、ピーク時推定手段により推定されたエコーのピーク時を示すガイド27を表示するガイド表示処理を実行するガイド表示手段16及び出力装置に表示されたガイド27の表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を出力装置7に拡大して表示する波形拡大表示処理を実行する波形拡大表示手段17を備えるものである。
【0055】
回路選択手段14、ピーク時推定手段15、ガイド表示手段16及び波形拡大表示手段17は、CPU9で実行されるソフトウェアをコンピュータで実行させることで構成でき、その実行の際に必要なデータは、RAM10にロードされる。尚、コンピュータ6の構成はこれに限られるものではない。尚、上記のハードウェア資源は例えばバス12を通じて電気的に接続され、入出力I/F13を介してA/D変換ボード5と接続される。
【0056】
コンピュータ6は、A/D変換ボード5とパルスレシーバ4とによって、探傷器に相当する機能を構成する。勿論、探傷器を別途使用し、データ収集のみをコンピュータ6で行うようにしても良い。パルスレシーバ4は、コンピュータ6のCPUからの指令に基づいてあるいは当該パルスレシーバ4の直接制御により、送信用探触子1への送信のトリガ、並びに受信用探触子2の駆動を行う。尚、探傷器本体であるパルスレシーバ4とコンピュータ6とはA/D変換ボード5を介して接続されている。出力装置7には、横軸にパルス反射波が戻ってくるのにかかった時間を示し、縦軸に反射して戻った超音波の強さ(エコー高さ)を表している(以下、単に波形という)。尚、補助記憶装置11には本発明の超音波探傷プログラムが記録されており、当該プログラムがCPU9に読み込まれ実行されることによって、コンピュータ6が探傷器として機能する。
【0057】
斜角探触子1と垂直探触子2aとは、本実施形態の場合、図3及び図4に示すように、板状の連結部材18によって連結され、間隔を一定にして同時に移動可能に構成されている。連結部材18は少なくとも1つの探触子例えば受信用の垂直探触子2aに対する取付位置が可変であり、斜角探触子1と垂直探触子2aとの間隔を調整可能とされている。勿論、斜角探触子1と垂直探触子2aとの連結関係は固定的なものとしても良い。本実施形態の場合、連結部材18は、長手方向に穿たれた長孔22を備え、該長孔22を利用して連結する探触子1,2aの間隔を調整可能としている。即ち、連結部材18の一端を一方の探触子例えば斜角探触子1に対して締付けねじ19を介して固定する一方、長孔22を貫通する締付けねじ20並びにストッパ21を介して他方の探触子例えば垂直探触子2aを取り付けるようにしている。斜角探触子1は両側を挟持する治具23に対し締付けねじ19を固着し、垂直探触子2aも同様に両側を挟持する治具24に締付けねじ20を固着している。また、締付けねじ20はストッパ21に対して固定され、ストッパ21を連結部材18に固定することによって垂直探触子2aの連結部材18に対する位置決めが行われる。ストッパ21にはビス25が設けられ、このビス25を締め付けることでストッパ21と連結部材18と一体化して垂直探触子2aの位置を固定可能に構成されている。したがって、締付けねじ19を弛めることによって、長孔22の範囲で垂直探触子2aの固定位置を移動させ、斜角探触子1と垂直探触子2aとの間隔が調整される。
【0058】
斜角探触子1と垂直探触子2aとは必要に応じて接近させて用いたり、あるいは離して使用されるものである。互いに接近させて用いる場合、受信用探触子はウェッジを付けて、受信波の面外変位を増強するように構成することが好ましい。
【0059】
また、超音波ビームとしては、縦波の利用が好ましいがこれに特に限定されるものではなく、横波を用いても良い。縦波を用いる理由としては、横波より速く探触子に到達することのほかに、波長が長いため、金属組織による影響を受け難いためである。しかし、横波も受信できることから、何らかの理由で縦波が受信できない場合には、横波で補完することができる。
【0060】
また、送信用探触子1と受信用探触子2とは、別々に移動させて測定することもできるが、好ましくは一体型にして一緒に移動させながら測定することであり、あるいは一方を固定して他方を移動させること、例えば、受信用探触子1を傷の上方に固定して、送信用探触子2を移動させても良いし、その逆に送信用探触子2を固定して受信用探触子1を移動させることにより探傷することが好ましい。例えばSPOD法の場合、いずれにしても受信するときには、回折波のきずの上方へ直接伝播するエコーと一度裏面で反射した後に傷の上方へ伝播するエコーとが信号の強弱に関係なく必ず同じ到達時間差で同時に現れるため、傷の高さ位置あるいは傷高さそのものを簡単に見つけ出すことができる。さらに、送信用探触子1と受信用探触子2とを連結部材18によって連結して間隔を一定に移動させる場合には、回折波の傷の上方へ直接伝播する成分と一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する成分とが同時に同じ強さで現れるため、傷に接近することで波が現れさらにその強度が変化していっても、到達時間が一切変わらずに現れるため、傷の端部から戻ってくる波が一番強くなる位置を正確に求めなくとも、傷の端部の位置換言すれば傷の高さを測定することができる。また、連結部材18は少なくとも1つの探触子に対する取付位置が可変であり、送信用探触子1と受信用探触子2との間隔が調整可能とされていることが好ましい。
【0061】
さらに、受信用探触子2の配置位置は、裏面で反射した回折波を受信できる範囲において状況に応じて適宜選択することができ、傷の直上に配置することが好ましい。この場合には、最も短いビーム路程で傷先端から直接伝播する回折波と、裏面で反射して伝播する回折波による強いエコーを受信可能となるので、材料種別による超音波の減衰の影響を最も少なくできる。また、受信用探触子2を傷の直上から離して設置する場合には、受信用探触子2に楔(ウェッジ)を付けて使用することが好ましい。受信用探触子2を傷直上から横にずらすと信号は弱くなるが、適正な角度のウェッジを付けると強い信号が得られる。裏面で反射した回折波を受信できる範囲において傷から離して設置しても良い。例えば、受信用探触子2は傷の端部回折波の底面からの反射波を受信できる範囲で斜角探触子1寄りに接近させて配置されることが好ましいこともある。この場合には、送信用探触子1を溶接箇所に接近させて超音波ビームを入射させようとするにも、スペース上の制約から受信用探触子2を送信用探触子1に近づけて使うことを可能とできる。
【0062】
また、送信波としてステンレスなどのように結晶粒の大きな材質内でも減衰の少ない低い中心周波数を用いる一方、受信波として送信波よりも高い中心周波数を用いることが好ましい。この場合には、ステンレスなどのように結晶粒が大きい材質の場合でも、送信時における超音波の減衰が少なく、受信時にはきずの上へ直接伝播する回折波と底面で反射してからきずの上へ伝播する回折波とが分離し易い。
【0063】
本発明にかかる超音波探傷測定装置は、斜角探触子1と垂直探触子2aとを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路3を有している。スイッチング回路3は、コンピュータ6のCPU9からの指令に基づいてあるいは当該パルスレシーバ4の直接制御により、以下に述べる第一から第四のモードとを電気的に切り替え可能としたものである。
【0064】
本実施形態におけるスイッチング回路3について詳細に説明する(図1参照)。本実施形態におけるスイッチング回路3は、SW0からSW4までの5つのスイッチを有している。尚、SW0は主電源スイッチであり、探傷試験開始時にオンにし、試験終了後にオフにすれば良い。また、28は可変増幅器を示す。本実施形態では、回折波は微弱である場合も多いため、可変増幅器28により必要に応じて増幅を行うこととしている。更に、その際に増幅のゲインを適宜、調整するものである。以下に第一から第四のモードについて説明する。尚、図1に示すスイッチング回路のスイッチの位置等の回路構成は一例であってこれに限られるものではない。スイッチのオン、オフにより探触子とパルスレシーバ4の接続のオン、オフを制御可能な回路構成であればよい。
【0065】
(1)第一のモード
第一のモードではSW1とSW2をオン、SW3とSW4をオフに設定する。第一のモードによれば斜角探触子1のみがパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続され、斜角探触子1のみが超音波ビームの送受信を行う。具体的には、図5(a)及び図14に示すように、斜角探触子1が、超音波を入射し端部エコーを受信する。即ち、第一のモードによれば斜角探傷法による超音波探傷を行うことができる。尚、θは屈折角、dは試験体26の厚さを示す。
【0066】
(2)第二のモード
第二のモードではSW1とSW4をオン、SW2とSW3をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子1はパルスレシーバ4の送信部Tに、垂直探触子2aはパルスレシーバ4の受信部Rにそれぞれ接続される。具体的には、図5(b)及び図17に示すように斜角探触子1から入射された超音波により傷の端部において発生する傷の上方へ伝播する回折波と、一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する回折波を垂直探触子2で受信する。即ち、第二のモードによればSPOD法による超音波探傷を行うことができる。
【0067】
(3)第三のモード
第三のモードではSW1とSW2とSW4をオン、SW3をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子1はパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続され、垂直探触子2aはパルスレシーバ4の受信部Rにそれぞれ接続される。具体的には、斜角探触子1が、超音波を入射し端部エコーを受信すると共に、垂直探触子2aは斜角探触子1から入射された超音波により傷の端部において発生する傷の上方へ伝播する回折波と、一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する回折波を受信する。即ち、第三のモードによれば斜角探傷法とSPOD法の組合せによる超音波探傷を行うことができる。
【0068】
(4)第四のモード
第四のモードではSW3とSW4をオン、SW1とSW2をオフに設定する。本モードによれば垂直探触子2aのみがパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続される。具体的には、図5(c)に示すように垂直探触子2aが、超音波を入射し端部エコーを受信する。即ち、第四のモードによれば垂直探傷法による超音波探傷を行うことができる。
【0069】
スイッチング回路3を上記構成とすることにより、複数の超音波探傷法をスイッチング回路3の制御のみで迅速かつ容易に切り替えることが可能となる。また、このようなスイッチング回路3の構成とすることによりパルスレシーバ4は、送信用、受信用の複数のチャンネルを有している必要はなく、少なくとも送信用、受信用の1チャンネルを有していれば足りる。したがって、受信用に複数のチャンネルを有する高性能のパルスレシーバ4を用いる必要はなく、パルスレシーバ4の低コスト化を図ることができる。
【0070】
また、本発明の超音波探傷装置は、出力装置7への波形の表示に際し、種々の検査員の分析支援を行うために、以下に説明する波形表示機能を有することが好ましい。以下、波形表示機能について説明する。
【0071】
本実施形態では、コンピュータ6の出力装置7上に横軸にパルス反射波が戻ってくるのにかかった時間を示し、縦軸に反射して戻った超音波の強さ(エコー高さ)が表示される。尚、本実施形態では、探触子を励起させるパルスレシーバ4のトリガ信号により波形の時間軸(横軸)とスイッチング回路の切り替えの同期をとることとしている。
【0072】
本実施形態では、超音波探傷装置は、予め探傷試験条件をパラメータとして設定することにより探傷法毎に異なるエコー波の受信時刻の推定を行うことができる。具体的には、予想されるエコー波の受信時(出現時間)を示す波形位置に検査員の目視検査による波形分析の支援となるガイド27を表示することとしている。さらに検査員の波形分析を正確かつ迅速に可能とする種々の支援機能を有している。
【0073】
以下、本実施形態での超音波探傷プログラムが実行する処理の概要を説明する。図6に本実施形態の超音波探傷プログラムが実行する処理のフローを示す。本実施形態での超音波探傷装置では、まず実行する超音波探傷法を選択したうえで(S1)、必要なパラメータの入力を行う(S2)。次に、各超音波探傷法におけるエコーの出現時間を計算し出力装置7上にガイド27を表示する(S3)、エコーの出現予想位置を示すガイド27を中心として画面の拡大表示を行い(S4)、最後に終了判定を行い終了する(S5)ものである。以下、各処理について詳細に説明する。
【0074】
先ず、処理開始時に実行する超音波探傷法の選択を行う(S1)。本実施形態では、方法選択は、例えば出力装置7上に選択ボタンが表示され、マウス等の入力装置8で選択することにより選択する。選択ボタンには例えば「垂直探傷」、「斜角探傷」、「SPOD法」、「斜角探傷&SPOD法」(斜角探傷とSPOD法の組合せ)と表示するが、これに限られるものではない。いずれかの超音波探傷法が選択されると、回路選択手段14は、選択された超音波探傷法に併せてスイッチング回路の切り替え制御を行う。尚、スイッチング回路の切り替え制御は、公知の技術を用いればよく、特に限られるものではない。また、各スイッチのON/OFFの切り替えは、手動で行うようにしても良い。尚、いずれの探傷法が選択されたかの情報は、例えば主記憶装置10にフラグメントとして記憶され、処理終了まで参照される。
【0075】
次に、パラメータの設定を行う(S2)。本実施形態ではパラメータとして、
(1)試験体の厚さ
(2)試験体での音速
(3)斜角楔内の遅延時間
(4)超音波ビームの屈折角
(5)推定傷高さ
を用いることとしている。尚、以下に説明するように、すべての探傷法において必ずしも全てのパラメータを入力する必要があるわけではなく、選択する探傷法に応じたパラメータの設定を行えば足りる。例えば垂直探傷を行う場合には「斜角楔内の遅延時間」、「屈折角」及び「推定傷高さ」パラメータは不要であり、斜角探傷を行う場合には「推定傷高さ」パラメータは不要である。これらのパラメータは、例えばパラメータ入力画面を出力装置7に表示させ、検査員が入力することで主記憶装置10等に記憶される。
【0076】
上記パラメータは、例えば次のように求める。
(1)試験体の厚さは、厚さ計により計測することができる。
(2)試験体での音速は、試験体26の材質から一意であるので、当該材質についての音速を設定する。
(3)斜角楔内の遅延時間tは、斜角探傷とSPOD法による場合に必要なパラメータであって、例えば図7に示すような場合であれば数式5で求めることができる。
<数5>
=L/C
尚、Lは楔内での超音波の伝搬距離、C1は楔内の縦波音速を示す。
(4)屈折角は、斜角探傷とSPOD法による場合に必要なパラメータである。例えば屈折角θは、図7に示す角aと斜角楔の材質から求めることができる。
(5)推定傷高さは、SPOD法による場合に必要なパラメータであり予め推定しておくものである。例えば、傷高さは通常は2〜3mmであるので、その値を入力しても良い。また、試験体26の厚さに対して一定の割合(例えば10〜20%)としても良い。また、既に他の探傷法で計測している場合は、その計測値を入力するようにしても良い。これにより、垂直探傷法や斜角探傷法により計測された値を基にSPOD法を用いて、より精度の高い超音波探傷試験を行うことが可能となる。
【0077】
尚、これらのパラメータは一例であって、これに限られるものではない。また、例えば材質、対象製品等毎に予めパラメータの設定例をデータベース化し補助記憶装置11等に記憶させておくことで毎回のパラメータの設定を省略しても良い。
【0078】
次に、ガイド表示処理を実行する。超音波探傷試験では検査員の熟練した技能が要求される。超音波探傷試験においては実施する探傷法毎に注目すべきエコー(エコー高さが最大となる位置)が存在し、検査員は当該エコーの出現時間から傷高さ等の計測を行うものである。本発明の超音波探傷装置では、各探傷法毎に注目すべきエコーの出現時間を推定し、波形の時間軸にその出現時間を示すガイド27を示すことで検査員の波形分析支援を行うものである。以下にエコー高さが最大となる位置について詳細に述べる。
【0079】
図8に、本実施形態でのガイド表示処理の詳細フロー図を示す。まず、いずれの探傷法が選択されているかの判断を行う(S30)。次に、入力されたパラメータから各波形のエコーの最大となる時(ピーク時)を計算する(S31,S33,S35,S37)。尚、各波形のエコーのピーク時とは、垂直探傷であれば底面エコー、斜角探傷であれば底面開口傷のコーナーエコー、SPOD法であれば、端部エコー及びその底面で反射したエコーを指す。
【0080】
垂直探傷法における底面エコーの出現時間tは、数式6により求められる(図5の(c)参照)。尚、dは試験体26の厚さ、cは音速である。
<数6>
=2d/c
【0081】
斜角探傷法における底面開口傷のコーナーエコーの出現時間tは、数式7により求められる(図5の(a)参照)。
<数7>
=2d/(ccosθ)+2t
【0082】
SPOD法におけるきずの端部エコーの出現時間tは、数式8により求められる。また、底面エコーの出現時間はtsbは、数式9により求められる(図5の(b)参照)。
【数8】

【数9】

ただし、Cは縦波音速である。
【0083】
上記の処理により、選択された探傷法でのエコーの出現時間を計算したら、出力装置上に表示されている波形の対応する座標位置にガイド27として“▲”を表示する処理を行う(S32,S34,S36,S38)。図10にガイド表示処理によりガイド27が表示された(a)斜角探傷法(b)SPOD法(c)斜角探傷法とSPOD法(d)垂直探傷法による受信波の波形のイメージ図を示す。尚、27aは斜角探傷法における底面開口傷のコーナーエコー、27bはSPOD法における端部エコー、27cは垂直探傷法底面エコーの出現時間を示す。尚、ガイド27は上記記号に限られるものではなく、種々の記号を用いることが可能である。尚、また予め複数のガイド27を選択可能としておき、検査員の選択したガイド27を表示するようにしても良い。
【0084】
更に、出力装置に表示される画面を4分割し第一から第四までの4つのモードによる超音波探傷によるエコーの波形を一画面上で表示するようにしても良い。具体的には、各探傷法によるエコー受信時の波形を記憶装置に記憶しておき、そのまま継続して表示させておくことにより画面上に表示を複数の波形を同時に表示することが可能となる。したがって、検査員は最大4つの探傷法による結果を同時にみて傷の大きさ、高さ等の計測することが可能となる。これにより分析支援としての役割を果たす。尚、必ずしも4分割である必要はなく、2分割あるいは3分割とし、表示する探傷法を選択するようにしても良い。
【0085】
更に、本実施形態では、選択した探傷法により表示される各波形の背景色を変更させることとしている。本実施形態では、例えば、垂直探傷法による場合は、背景色を茶色、斜角探傷法による場合は青色、SPOD法による場合は黒色としているが、これに限られるものではない。例えば背景色を同一にして、波形を表示する線を異なる色で表示させるようにしても良い。また本実施形態では、波形のタイトルとして選択した探傷方法を表示して、検査員がデータを取り違えることがないようにしている。
【0086】
次に、波形拡大表示処理について説明する(S4)。図9に、波形拡大表示処理の詳細フローチャートを示す。本実施形態では、ガイド表示処理で表示されたガイド27を基準として、その前後の時間領域を拡大表示(以下、ズームイン表示ともいう)することとしている。
【0087】
ズームイン表示が選択された場合(S40:Yes)は、自動または手動のいずれによるのかを選択する(S41)。尚、表示画面の拡大表示(ズームイン)とは、ガイド表示処理で表示されたガイド27を中心として、波形の拡大表示を行うものであり、既存の画像処理技術を用いればよい。例えば、ガイド27を中心とした周辺画素(100×100画素)を拡大表示する(400×400画素)ことによるが、これに限られるものではない。尚、拡大画面は、同一のウィンドウ内での表示であっても、別ウィンドウとして表示しても良い。また、本実施形態では波形拡大表示処理を検査員がマウス等の入力装置の操作を手動で行う場合と自動制御との2パターンを設け、いずれかを選択可能にしているが、これに限られるものではなく、いずれかのパターンのみを設けることとしても良い。
【0088】
手動による場合(S41:No)、拡大表示を行う時間間隔を指定する。具体的には、波形の拡大したい部分について時間軸のスタート時間とエンド時間を入力すると(S42)、指定された時間間隔の波形を拡大表示する(S43)。本実施形態では、指定された時間間隔について、縦軸の範囲を変更せずに、横軸だけを複数倍に拡大して表示するようにしている。尚、手動設定方法は、これに限られるものではなく、例えば、マウス等でクリックした位置を中心として、その周辺領域を拡大表示するようにしても良い。
【0089】
自動による場合(S41:Yes)は、いずれの探傷法が選択されているかを判断する(S44)。本実施形態では、例えば垂直探傷の場合、0とt+0.2tの間の波形をズームインして表示し(S45)、斜角探傷の場合、t−0.5tとt+0.2tの間の波形をズームインして表示し(S46)、SPOD法では、t−0.5tとtsb+0.5tsbの間の波形をズームインして表示し(S47)、斜角探傷&SPOD法の場合、t−0.5tとt+0.2tの間の斜角探傷の波形と、t−0.5tとtsb+0.5tsbの間のSPOD波形を拡大して表示する(S48)。
【0090】
尚、拡大表示を行う時間幅は、一例であってこれに限られるものではなく、適宜選択可能である。また時間幅は試験体26、試験体の厚さ等の試験環境によりパラメータとして設定することが可能である。
【0091】
尚、上記述べたように超音波探傷試験においては、上記求めた各波形の伝播時間から傷高さの計測を行う。図示はしないが、本発明の超音波探傷装置は、傷高さ計測手段を備えており、以下に述べる計算式により傷高さの計測処理を行うものである。以下に本実施形態での各探傷法による傷高さhの推定方法を示す。
【0092】
垂直探傷法による傷高さ測定式を数式10に示す。
【数10】

尚、tはきず端部エコーの出現時間を示す。
【0093】
斜角探傷法による傷高さ測定式を数式11に示す。
【数11】

尚、tはきず端部エコーの出現時間を示す。
【0094】
SPOD法による傷高さの測定式を数式12に示す。
【数12】

【0095】
以上述べたように、本実施形態の超音波探傷装置によれば検査員はコンピュータの出力装置7に表示される探傷法を選択するだけで、複数の超音波探傷法による探傷試験を行うことができる。尚、各探傷法の詳細な実施方法については、上記述べたように既存の探傷法の技術によるものとする。
【0096】
以下、図面に基づいて本発明の実施の第二の実施形態を詳細に説明する。図11及び図12に本発明の第二の実施形態を示す。尚、第一の実施形態と同様の点については説明を省略する。
【0097】
第二の実施形態における超音波探傷装置は、試験体中の傷に対し斜め上方に第一の探触子を配置し、傷を挟み第一の探触子の反対側の斜め上方に第二の探触子を配置して、更に、第一の探触子と第二の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路とを有しており、スイッチング回路は、第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第二の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第二のモードと、第一の探触子で超音波ビームを送信し、第一の探触子で反射波を受信し、第二の探触子で表面波及び回折波を受信する斜角探傷法とTOFD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、第二の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第四のモードとを選択可能としたものである。即ち第二の実施形態では、超音波探傷試験にSPOD法に代えてTOFD法を用いるものである。
【0098】
図11に第二の実施形態での構成図を示す。第二の実施形態では送信用探触子2として垂直探触子2aに代えて斜角探触子2bを用いる。本実施形態では、斜角探触子(以下、受信探触子)2bは、斜角探触子(以下、送信探触子)1の傷を挟んで反対側に配置される(図16参照)。
【0099】
第二の実施形態におけるスイッチング回路3について説明する。尚、SW0は主電源スイッチである。第二の実施形態での第一から第四のモードについて説明する。
【0100】
(1)第一のモード
第一のモードではSW1とSW2をオン、SW3とSW4をオフに設定する。第一のモードによれば斜角探触子1のみがパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続され、斜角探触子1のみが超音波ビームの送受信を行う。具体的には、図12(a)及び図14に示すように、斜角探触子1が、超音波を入射し端部エコーを受信する。即ち、第一のモードによれば斜角探傷法による超音波探傷を行うことができる。
【0101】
(2)第二のモード
第二のモードではSW1とSW4をオン、SW2とSW3をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子1はパルスレシーバ4の送信部Tに、斜角探触子2bはパルスレシーバ4の受信部Rにそれぞれ接続される。具体的には、図12(b)及び図16に示すように斜角探触子1から入射された超音波の回折波及び表面波を斜角探触子2bにより受信する。即ち、第二のモードによればTOFD法による超音波探傷を行うことができる
【0102】
(3)第三のモード
第三のモードではSW1とSW2とSW4をオン、SW3をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子1はパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続され、斜角探触子2bはパルスレシーバ4の受信部Rにそれぞれ接続される。具体的には、斜角探触子1が、超音波を入射し端部エコーを受信すると共に、斜角探触子2bは斜角探触子1から入射された超音波の回折波を受信する。即ち、第三のモードによれば斜角探傷法とTOFD法の組合せによる超音波探傷を行うことができる。
【0103】
(4)第四のモード
第四のモードではSW3とSW4をオン、SW1とSW2をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子2bのみがパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続される。具体的には、斜角探触子2bが、超音波を入射し端部エコーを受信する。即ち、第四のモードによれば斜角探傷法による超音波探傷を行うことができる。
【0104】
以上述べたようなスイッチング回路を備えることにより、第二の実施形態での超音波探傷装置は、2つの探触子による2方向からの斜角探傷、TOFD法、斜角探傷とTOFD法の組合せによる超音波探傷試験を実施することが可能となる。
【0105】
本実施形態でのパラメータの設定について述べる。本実施形態では、以下のパラメータを用いる。
(1)試験体の厚さ
(2)試験体での音速
(3)斜角楔内の遅延時間
(4)超音波ビームの屈折角
(5)探触子間隔
パラメータ(1)〜(4)は第一の実施形態と同様である。(5)探触子間隔は、TOFD法による超音波探傷試験に用いられるパラメータであって斜角探触子1と斜角探触子2bとの間の距離を指す。尚、探触子間隔は予め設定しておけば良い。
【0106】
第二の実施形態でのピーク時推定処理について説明する。TOFD法におけるエコーのピーク時とは、底面エコーとラテラルエコー(表面波によるエコー)をいう。尚、TOFD法における底面エコーの出現時間tは、数式13により求められる。
【数13】

また、ラテラルエコーの出現時間tは、数式14により求められる。
<数14>
=2s/c+2t
尚、sは探触子間隔の半分、cは縦波の音波を示す。
【0107】
第二の実施形態での拡大表示処理において、TOFD法が選択されている場合、t−0.2tとt+0.5tの間の波形をズームインして表示する。尚、拡大する範囲は一例であって、これに限られるものではない。また本実施形態では、TOFD法による場合は、表示する波形の背景色を灰色としている。
【0108】
また、TOFD法における傷高さの測定方法は、数式15で示される。
【数15】

尚、t,tはそれぞれ傷の上端と下端のエコーの出現時間を示す。
【0109】
以下、図面に基づいて本発明の実施の第三の実施形態を詳細に説明する。図13に本発明の第三の実施形態を示す。第三の実施形態は、上述の第一の実施形態及び第二の実施形態において説明した超音波探傷装置を一の超音波探傷装置により実現するものである。尚、上述した点については説明を省略する。
【0110】
本実施形態におけるスイッチング回路3について詳細に説明する(図13参照)。本実施形態におけるスイッチング回路3は、SW0からSW6までの7つのスイッチを有している。尚、SW0は主電源スイッチである。
【0111】
(1)第一のモード
第一のモードではSW1とSW2とSW5をオン、SW3とSW4とSW6をオフに設定する。第一のモードによれば斜角探触子1のみがパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続され、斜角探触子1のみが超音波ビームの送受信を行う。具体的には、図5(a)及び図14に示すように、斜角探触子1が、超音波を入射し端部エコーを受信する。即ち、第一のモードによれば斜角探傷法による超音波探傷を行うことができる。尚、θは屈折角、dは試験体26の厚さを示す。
【0112】
(2)第二のモード
第二のモードではSW1とSW4とSW5をオン、SW2とSW3とSW6をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子1はパルスレシーバ4の送信部Tに、垂直探触子2aはパルスレシーバ4の受信部Rにそれぞれ接続される。具体的には、図5(b)及び図17に示すように斜角探触子1から入射された超音波により傷の端部において発生する傷の上方へ伝播する回折波と、一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する回折波を垂直探触子2で受信する。即ち、第二のモードによればSPOD法による超音波探傷を行うことができる。
【0113】
(3)第三のモード
第三のモードではSW1とSW2とSW4とSW5をオン、SW3とSW6をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子1はパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続され、垂直探触子2aはパルスレシーバ4の受信部Rにそれぞれ接続される。具体的には、斜角探触子1が、超音波を入射し端部エコーを受信すると共に、垂直探触子2aは斜角探触子1から入射された超音波により傷の端部において発生する傷の上方へ伝播する回折波と、一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する回折波を受信する。即ち、第三のモードによれば斜角探傷法とSPOD法の組合せによる超音波探傷を行うことができる。
【0114】
(4)第四のモード
第四のモードではSW3とSW4とSW5をオン、SW1とSW2とSW6をオフに設定する。本モードによれば垂直探触子2aのみがパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続される。具体的には、図5(c)に示すように垂直探触子2aが、超音波を入射し端部エコーを受信する。即ち、第四のモードによれば垂直探傷法による超音波探傷を行うことができる。
【0115】
(5)第五のモード
第五のモードではSW1とSW6をオン、SW2とSW3とSW4とSW5をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子1はパルスレシーバ4の送信部Tに、斜角探触子2bはパルスレシーバ4の受信部Rにそれぞれ接続される。具体的には、図12(b)及び図16に示すように斜角探触子1から入射された超音波の回折波及び表面波を斜角探触子2bにより受信する。即ち、第五のモードによればTOFD法による超音波探傷を行うことができる
【0116】
(6)第六のモード
第六のモードではSW1とSW2とSW5とSW6をオン、SW3とSW4をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子1はパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続され、斜角探触子2bはパルスレシーバ4の受信部Rにそれぞれ接続される。具体的には、斜角探触子1が、超音波を入射し端部エコーを受信すると共に、斜角探触子2bは斜角探触子1から入射された超音波の回折波を受信する。即ち、第六のモードによれば斜角探傷法とTOFD法の組合せによる超音波探傷を行うことができる。
【0117】
(7)第七のモード
第七のモードではSW3とSW5とSW6をオン、SW1とSW2とSW4をオフに設定する。本モードによれば斜角探触子2bのみがパルスレシーバ4の送信部T並びに受信部Rに接続される。具体的には、斜角探触子2bが、超音波を入射し端部エコーを受信する。即ち、第七のモードによれば斜角探傷法による超音波探傷を行うことができる。
【0118】
次に、パラメータの設定を行う(S2)。本実施形態ではパラメータとして、
(1)試験体の厚さ
(2)試験体での音速
(3)斜角楔内の遅延時間
(4)超音波ビームの屈折角
(5)推定傷高さ
(6)探触子間隔
を用いることとしている。各パラメータの設定、各モードでの探傷法については、上述した通りである。
【0119】
以上、述べたように本発明の超音波探傷装置及び超音波探傷プログラムによれば、斜角探傷法、垂直探傷法、TOFD法、SPOD法及びその組合せといった種々の超音波探傷法をスイッチング回路のスイッチパターンを切り替えることにより簡単に制御することができる。
【0120】
これにより、試験環境に最も適した探傷法を選択することができる。複数の探傷法を組み合わせて実行することが容易に可能であり、それぞれの長所を生かした測定も行うことが可能となるため、より精度の高い超音波探傷試験を行うことができる。
【0121】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施能である。例えば、本発明の超音波探傷装置は、例えばフェーズドアレイ探触子を用いたフェーズドアレイ法についても用いることが可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 送信用探触子(斜角探触子)
2a 受信用探触子(垂直探触子)
2b 受信用探触子(斜角探触子)
3 スイッチング回路
4 パルスレシーバ
5 A/D変換ボード
6 パーソナルコンピュータ
7 出力装置
14 回路選択手段
15 ピーク時推定手段
16 ガイド表示手段
17 波形拡大表示手段
26 試験体
27 ガイド
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第一の実施形態における超音波探傷装置の一例を示すブロック図である。
【図2】第一の実施形態におけるコンピュータの一例を示すブロック図である。
【図3】探触子ホルダーを示す平面図である。
【図4】探触子ホルダーの側面図である。
【図5】エコーのピーク時を示す説明図であって、(a)は斜角探傷法によるエコーのピーク時、(b)はSPOD法によるエコーのピーク時、(c)は垂直探傷法によるエコーのピーク時を示す。
【図6】本発明の超音波探傷プログラムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】斜角楔内の遅延時間及び超音波ビームの屈折角の一例を示す図である。
【図8】ガイド表示処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】波形拡大表示処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】ガイド表示処理によりガイドが表示された(a)斜角探傷法(b)SPOD法(c)斜角探傷法とSPOD法(d)垂直探傷法による波形のイメージ図である。
【図11】第二の実施形態における超音波探傷装置の一例を示すブロック図である。
【図12】エコーのピーク時を示す説明図であって、(a)は斜角探傷法によるエコーのピーク時、(b)はTOFD法によるエコーのピーク時を示す。
【図13】第三の実施形態における超音波探傷装置の一例を示すブロック図である。
【図14】端部エコー法の代表例として、斜角探触子を用いた場合(斜角探傷法)の原理を示す説明図である。
【図15】従来の端部エコーを用いた傷高さ測定法において探傷器に表示される反射波の状態を示す説明図であり、(a)は傷の開口端からの反射波であるコーナーエコーが一番強い場所を求めたときの状態、(b)は探触子を移動させて傷の先端からの端部エコーを受信した状態をそれぞれ示す。
【図16】TOFD法による測定原理を示す説明図である。
【図17】SPOD法による測定原理を示す説明図である。
【図18】超音波ビームが傷に達して回折波を生ずる状態を説明するシュミレーションの図である。
【図19】端部エコー法においてコーナーエコーが受信され始めた位置から探触子を移動量Lずつスリットに近づけていった場合(x=0→x=5l)の受信波形に対するシミュレーション結果を示す。
【図20】探傷器に表示される傷の上方へ直接伝播する回折波と、一度裏面で反射した後に傷の上方に伝播する回折波とを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体中の傷に対し斜め上方に配置される第一の探触子と、前記傷の上方に配置される第二の探触子と、前記第一の探触子と前記第二の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路とを有し、前記スイッチング回路は、前記第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第一の探触子で反射波を受信し、かつ前記第二の探触子で前記回折波を受信する前記斜角探傷法と前記SPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと前記第二の探触子で前記超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードとを選択可能としたものであることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
試験体中の傷に対し斜め上方に配置される第一の探触子と、前記傷を挟み前記第一の探触子の反対側の斜め上方に配置される第二の探触子と、前記第一の探触子と前記第二の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路とを有し、前記スイッチング回路は、前記第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第二の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第二のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第一の探触子で反射波を受信し、かつ前記第二の探触子で前記表面波及び前記回折波を受信する前記斜角探傷法と前記TOFD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、前記第二の探触子で前記超音波ビームの送受信を行う前記斜角探傷法により探傷試験を行う第四のモードとを選択可能としたものであることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項3】
試験体中の傷に対し斜め上方に配置される第一の探触子と、前記傷の上方に配置される第二の探触子と、前記傷を挟み前記第一の探触子の反対側の斜め上方に配置される第三の探触子と、前記第一の探触子、前記第二の探触子及び前記第三の探触子とを探傷器の送信部並びに受信部に対し任意に切り替え可能とするスイッチング回路とを有し、前記スイッチング回路は、前記第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第一の探触子で反射波を受信し、かつ前記第二の探触子で前記回折波を受信する前記斜角探傷法と前記SPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、前記第二の探触子で前記超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第三の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第五のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第一の探触子で反射波を受信し、かつ前記第三の探触子で前記表面波及び前記回折波を受信する前記斜角探傷法と前記TOFD法の組合せによる探傷試験を行う第六のモードと、前記第三の探触子で前記超音波ビームの送受信を行う前記斜角探傷法により探傷試験を行う第七のモードとを選択可能としたものであることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項4】
更に前記超音波探傷装置は、予め設定された前記試験体の厚さ、前記試験体での音速、前記探触子の斜角楔内での遅延時間、前記超音波ビームの屈折角及び推定傷高さから前記スイッチング回路により選択された超音波探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定手段と、前記超音波探傷装置が備える出力装置に表示される波形の時間軸に対して、前記ピーク時推定手段により推定された前記エコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項5】
更に前記超音波探傷装置は、予め設定された前記試験体の厚さ、前記試験体での音速、前記探触子の斜角楔内での遅延時間、前記超音波ビームの屈折角及び前記第一の探触子と前記第二の探触子の配置間隔から前記スイッチング回路により選択された超音波探傷法におけるエコーのピーク時を推定するピーク時推定手段と、前記超音波探傷装置が備える出力装置に表示される波形の時間軸に対して、前記ピーク時推定手段により推定された前記エコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波探傷装置。
【請求項6】
更に前記超音波探傷装置は、予め設定された前記試験体の厚さ、前記試験体での音速、前記探触子の斜角楔内での遅延時間、前記超音波ビームの屈折角、推定傷高さ及び前記第一の探触子と前記第三の探触子の配置間隔から前記スイッチング回路により選択された超音波探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定手段と、前記超音波探傷装置が備える出力装置に表示される波形の時間軸に対して、前記ピーク時推定手段により推定された前記エコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の超音波探傷装置。
【請求項7】
更に前記超音波探傷装置は、前記出力装置に表示された前記ガイドの表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を前記出力装置に拡大して表示する波形拡大表示手段を備えることを特徴とする請求項4から6までのいずれかに記載の超音波探傷装置。
【請求項8】
前記ガイド表示手段は、いずれの前記超音波探傷法が選択されているかにより前記出力装置に表示する前記波形の背景色を変化させることを特徴とする請求項4から7までのいずれかに記載の超音波探傷装置。
【請求項9】
前記試験体に対し複数の前記超音波探傷法により前記超音波探傷試験が成された場合に複数の前記超音波探傷法による波形を同時に出力装置に表示させることを特徴とする請求項4から8までのいずれかに記載の超音波探傷装置。
【請求項10】
試験体中の傷に対し斜め上方に第一の探触子を、前記傷に対し上方に第二の探触子を配置して行う超音波探傷試験において、前記第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第一の探触子で反射波を受信し、かつ前記第二の探触子で前記回折波を受信する前記斜角探傷法と前記SPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと前記第二の探触子で前記超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードのいずれかが選択された場合にスイッチング回路に対しスイッチ構成を変更する信号を発信する回路選択処理と、予め設定された前記試験体の厚さ、前記試験体での音速、前記探触子の斜角楔内での遅延時間、前記超音波ビームの屈折角及び推定傷高さから前記スイッチング回路により選択された探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定処理と、出力装置に表示される波形の時間軸に対して、前記ピーク時推定処理により推定された前記エコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示処理と、前記ガイドの表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を前記出力装置に拡大して表示する波形拡大表示処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする超音波探傷プログラム。
【請求項11】
試験体中の傷に対し斜め上方に第一の探触子を、前記傷を挟み前記第一の探触子の反対側の斜め上方に第二の探触子を配置して行う超音波探傷試験において、前記第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第二の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第二のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第一の探触子で反射波を受信し、かつ前記第二の探触子で前記表面波及び前記回折波を受信する前記斜角探傷法と前記TOFD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、前記第二の探触子で前記超音波ビームの送受信を行う前記斜角探傷法により探傷試験を行う第四のモードのいずれかが選択された場合にスイッチング回路に対しスイッチ構成を変更する信号を発信する回路選択処理と、予め設定された前記試験体の厚さ、前記試験体での音速、前記探触子の斜角楔内での遅延時間、前記超音波ビームの屈折角及び前記第一の探触子と前記第二の探触子の配置間隔から前記スイッチング回路により選択された探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定手段と、出力装置に表示される波形の時間軸に対して、前記推定手段により推定された前記エコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示処理と、前記ガイドの表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を前記出力装置に拡大して表示する波形拡大表示処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする超音波探傷プログラム。
【請求項12】
試験体中の傷に対し斜め上方に第一の探触子を、前記傷の上方に第二の探触子を、前記傷を挟み前記第一の探触子の反対側の斜め上方に第三の探触子を配置して行う超音波探傷試験において、前記第一の探触子で超音波ビームの送受信を行う斜角探傷法により探傷試験を行う第一のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第二の探触子で回折波を受信するSPOD法により探傷試験を行う第二のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第一の探触子で反射波を受信し、かつ前記第二の探触子で前記回折波を受信する前記斜角探傷法と前記SPOD法の組合せによる探傷試験を行う第三のモードと、前記第二の探触子で前記超音波ビームの送受信を行う垂直探傷法により探傷試験を行う第四のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第三の探触子で表面波及び回折波を受信するTOFD法により探傷試験を行う第五のモードと、前記第一の探触子で前記超音波ビームを送信し、前記第一の探触子で反射波を受信し、かつ前記第三の探触子で前記表面波及び前記回折波を受信する前記斜角探傷法と前記TOFD法の組合せによる探傷試験を行う第六のモードと、前記第三の探触子で前記超音波ビームの送受信を行う前記斜角探傷法により探傷試験を行う第七のモードのいずれかが選択された場合にスイッチング回路に対しスイッチ構成を変更する信号を発信する回路選択処理と、予め設定された前記試験体の厚さ、前記試験体での音速、前記探触子の斜角楔内での遅延時間、前記超音波ビームの屈折角、推定傷高さ及び前記第一の探触子と前記第三の探触子の配置間隔から前記スイッチング回路により選択された探傷法によるエコーのピーク時を推定するピーク時推定処理と、出力装置に表示される波形の時間軸に対して、前記ピーク時推定処理により推定された前記エコーのピーク時を示すガイドを表示するガイド表示処理と、前記ガイドの表示位置を中心として予め指定された範囲の領域を前記出力装置に拡大して表示する波形拡大表示処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする超音波探傷プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図19】
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【図3】
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【図4】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−315820(P2007−315820A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143394(P2006−143394)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】